説明

排稈カッターの切断排出装置

【課題】コンバインの後部に装着した排稈カッターで切断した切断排稈を刈取跡地に集中排出させて、切断排稈の集中条(ウインドロー)を形成しながらコンバイン作業する場合には、刈取最終行程での刈取穀稈条数乃至刈取幅が、刈取装置の刈取幅よりも狭くなって、コンバインの刈取装置の分草杆が、隣接の既に刈取跡地に形成されたウインドローを引っ掻いて掻き乱したり、この切断排稈を刈取装置部へ掻き込んで、刈取を乱すことがある。
【解決手段】コンバインの刈取幅D方向に沿う拡散軸1の周りに回転して切断排稈を受けて刈取跡地へ放出する拡散ロータ2を有する排稈カッターにおいて、この拡散ロータ2は、刈取幅D方向の株元部及び中央部の切断排稈を穂先側へ放出可能の株元、及び中央羽根螺旋板3,4を配置して、該刈取幅Dの中央部よりも穂先側へ集中排出して、ウインドローWを形成することを特徴とする切断排出装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後部の排稈カッターで短く切断された切断排稈を、刈取幅方向に沿って拡散と集中とに切替えて排出可能の多条刈形態のコンバインにおいて、この排稈カッターから排出される切断排稈の集中排出条(刈取跡地に形成されるウインドロー)を、コンバイン自体の分草杆で引っ掛けないようにする排稈カッターの切断排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刈取幅の中央部から株元側と穂先側とに向けて放出する螺旋を設け、この株元側の羽根板の中央寄りに逆螺旋を設けた技術(例えば特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2003−116334号公報(第2頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンバインの後部に装着した排稈カッターで切断した切断排稈を刈取跡地に集中排出させて、切断排稈の集中条(ウインドロー)を形成しながらコンバイン作業する場合には、刈取最終行程での刈取穀稈条数乃至刈取幅が、刈取装置の刈取幅よりも少なく、乃至狭くなって、コンバインの刈取装置の左右両側端に突出される分草杆が、隣接の既に刈取跡地に形成されたウインドローを引っ掻いて進行することがあり、ウインドローを掻き乱したり、この切断排稈を刈取装置部へ掻き込んで、刈取を乱すことがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、コンバインの刈取幅D方向に沿う拡散軸1の周りに回転して切断排稈を受けて刈取跡地へ放出する拡散ロータ2を有する排稈カッターにおいて、この拡散ロータ2は、刈取幅D方向の株元部及び中央部の切断排稈を穂先側へ放出可能の株元、及び中央羽根螺旋板3,4を配置して、該刈取幅Dの中央部よりも穂先側へ集中排出して、ウインドローWを形成することを特徴とする切断排出装置の構成とする。コンバイン作業では、刈取装置によって一定の刈取幅Dの穀稈条を刈取しながら、この刈取跡地には排稈カッターで切断される切断排稈を、拡散A、又は集中Bさせて排出する。このうち拡散ロータ2の回転によって切断排稈を集中B排出する。株元羽根螺旋板3と、中央羽根螺旋板4とによって放出される切断排稈は、刈取幅Dの中央部よりも穂先側の刈取跡地に集中B排出されて、この穂先側に偏位してウインドローWが形成される。このため、刈取幅Dよりも狭い最終刈取条の刈取行程F5では、この既成のウインドローW3,W4株元側の外側に沿って刈取走行することにより、刈取装置の分草杆が前行程で形成されたウインドローW3,W4を引っ掻き難い状態として、刈取作業を行うことができる。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記拡散軸1の穂先部側には、この穂先部切断排稈を中央側へ放出する螺旋5を設けたことを特徴とするものである。株元部、及び中央部の切断排稈は株元羽根螺旋板3と中央羽根螺旋板4によって、穂先側へ向けて放出される。又穂先部の切断排稈は螺旋5によって中央側へ向けて放出される。これら各羽根螺旋板3,4と螺旋5によって放出される切断排稈はこの刈取幅Dの中央部よりも穂先側に偏位した領域で衝突する形態となって刈取跡地に集中B排出される。このため最終刈取条のコンバイン作業では、左右に隣接する前行程F3,F4のウインドローW3,W4の間隔部C内に沿って、最終刈取行程F5のウインドローW5を形成することができる。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記中央羽根螺旋板4は、拡散ロータ2の回転方向の正転、逆転の切替えにともなって、羽根板角αを拡散放出状態と、集中放出状態とに切替可能に設けたことを特徴とするものである。拡散ロータ2を正転と逆転とに切替えることによって、切断排稈を拡散A排出と集中B排出に切替えることができる。この切替時には中央羽根螺旋板4の羽根板角αをも切替える。拡散A排出時は、拡散ロータ2を正転方向とすると、株元羽根螺旋板3による株元部の切断排稈はこの株元側外方へ向けて放出され、中央部の切断排稈は中央羽根螺旋板4によって穂先側へ放出され、又穂先部の切断排稈は穂先側外方へ向けて放出されることとなり、刈取跡地に幅広く拡散A排出される。又、集中B排出時は、拡散ロータ2を逆転方向へ回転させて、中央羽根螺旋板4の羽根板角αをも逆向きに切替える。これによって各羽根螺旋板3,4による株元部と中央部の切断排稈が共に刈取幅Dの中央部よりも穂先部側へ偏位して放出され、穂先部の切断排稈は前記螺旋5等によってこの中央部側へ放出されて、刈取幅Dの中央部よりも穂先側に偏位した領域に集中B排出される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、拡散ロータ2によって、刈取幅D方向の株元部及び中央部の切断排稈を株元、中央羽根螺旋板3,4によって穂先側へ放出させて、この刈取幅Dの中央よりも穂先側へ偏位した領域へ集合B排出させることができるため、圃場の最終刈取条の左右両側には、各外側への集中B排出によって形成されるウインドローW3,W4の間隔部Cを、刈取幅Dよりも広く形成することができ、この刈取幅Dにコンバインを進行させて最終条の刈取を行っても、分草杆によるウインドローW3,W4の掻き乱しを少くすることができ、円滑な刈取作用を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記拡散ロータ2の株元中央羽根螺旋板3,4に対向して、穂先部の切断排稈を螺旋5の回転によって中央側へ向けて放出するものであるから、この穂先部の切断排稈を株元部側から放出される切断排稈と衝突させて、この穂先域における集中B排出を的確に行わせることができ、穂先側外方への飛散を少なくすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、拡散ロータ2の各羽根螺旋板3,4のうち、中央部に設けられる中央羽根螺旋板4のみ、この拡散ロータ2の正転、逆転の切替にともなって、羽根板角αを正、逆に切替えて、拡散A排出と集中B排出を選択することができるため、前記切断排稈の穂先側位置への集中B排出を安定して行わせることができ、構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面に基づいて、コンバインは、クローラ8走行形態の車体9上に脱穀装置10、運転席11、エンジンE、グレンタンク12等を搭載し、この前側には6条刈等の多条刈形態の刈取装置13を昇降制御可能に設け、後側の脱穀排稈を排送する排稈装置14の後端に、この排稈を受けて短く切断する排稈カッター15を設けている。この排稈カッター15で切断された切断排稈を排出する拡散ロータ2が、この排稈カッター15の下側に一体的に構成される。該刈取装置13の左右外側には分草杆16が設けられる。脱穀装置10の運転席11側とは反対の側には、前後方向に沿うフィードチェン17が設けられて、この前端には刈取装置13で刈取られる穀稈を搬送する搬送装置18をのぞませる。又、このフィードチェン17の後端には、脱穀済排稈を穂先側寄り後方へ搬送して排稈カッター15へ供給する排稈装置14が構成される。これら排稈装置14は、排稈の株元部をフィードチェン17側に向け、穂先部をグレンタンク12側に向けた略横向きの姿勢にして後方へ搬送する。又、排稈カッター15は、この排稈の稈身方向と平行状の一対のカッター軸19,20を有し、これらカッター軸19,20に沿って所定間隔に切断刃や掻込ロータ等を配置して、これらのカッター軸19,20間に沿って供給される排稈を短く切断することができる。
【0011】
前記排稈カッター15は、箱形のカッタフレーム21の内部にカッター軸19,20の両端部を軸装し、このカッター軸19の株元側端には伝動ベルト22を掛けわたして、前記排稈装置14の一部から伝動される。又、このカッター軸19の穂先側端と、この下側に軸装される拡散軸1の軸端との間にはベルト23が掛けわたされて伝動される。カッタフレーム21の上側には、開閉可能の案内板24を設け、この案内板24を上方へ開くことによって排稈装置14で送出される排稈を下側のカッター口部へ案内して切断させることができる。又、この案内板24を下側へ回動してカッタフレーム21上を閉鎖することによって、排稈装置14により搬送される排稈をカッタフレーム21の後側へ送出して、切断しない状態で切取跡地に排出することができる。
【0012】
排稈カッター15の下部には、カッタフレーム21の後側に案内板25が前後回動可能に軸支26される。切断排稈を排出するときはこの案内板25を後側へ開くことができる。又、この株元側には株元側板27を設けて、側板軸28の周りに内側へ回動させて、切断排稈の株元部を案内排出させる。拡散ロータ2は、前記カッター軸19,20の長さと略同長にわたって配置されて、これら排稈カッターの切断部で短く切断された切断排稈を受けて、排稈の株元側(左側)又は穂先側(右側)へ向けて偏位案内するように放出落下させる。この切断排稈を刈取幅Dにわたって拡散Aさせるように排出(図2)するときの拡散軸1の回転方向を正転方向とし、集中B排出(図1)するときの回転方向を逆転方向とすると、この正転方向における拡散軸1上には、刈取幅Dの略中央部に対向して切断排稈を穂先側へ向けて放出案内するように中央羽根螺旋板4が設けられる。この中央羽根螺旋板4の株元側には、切断排稈を株元側へ向けて放出案内するように株元羽根螺旋板3が設けられる。又、中央羽根螺旋板4の穂先側には、切断排稈を穂先側へ放出案内するように螺旋5が設けられる。このような拡散ロータ2の形態によって、切断排稈は、株元部がこの株元側へ向けて排出され、中央部及び穂先部が穂先側へ向けて排出されて、刈取跡地の刈取幅Dにわたって広く薄層に拡散A排出させることができる。このとき、前記案内板25は後側へ開き、株元側板27は垂下側へ回動させて、株元側拡散域を広くしておく。
【0013】
コンバイン作業時は、刈取装置13の左側分草杆16を未刈取側の穀稈条Mと、これから刈取る穀稈条K1との間に介入させて刈取推進する。これによってコンバインは刈取穀稈条K(K1〜K6)の6条刈取幅Dを刈取ることができる。そして、この刈取幅Dで刈取られた穀稈は、排稈カッター15で切断されて、この刈取幅Dの刈取跡地にわたって拡散ロータ2の回転によって拡散Aされる。このとき穂先側は既刈取地N側となるため、切断排稈を穀稈条K6と隣接の既刈取地N域へ排出させるように放出案内させることもできる。
前記拡散ロータ2の中央羽根螺旋板4は、この羽根板角αを前記正転時の放出方向と、逆転時の放出方向とが同じ穂先側方向に向うように傾斜角を正、逆に切替えることができる。この羽根板角αの切替えは拡散軸1に対する中央羽根螺旋板4の傾斜角を正、逆に切替えてボルト締め等で固定できる形態としたり、この拡散軸1内を通す操作軸によって切替連動することもできる。又、拡散軸1の正転、逆転の切替回転によって自動的に羽根板角αが切替る形態とすることもできる。切断排稈を前記拡散A形態から集中B形態に切替えるときは、前記ベルト23からの伝動回転を正転から逆転に切替える。このベルト23から拡散軸1に対して伝動するギヤケース29内のギヤ機構には逆転ギヤが設けられて、このギヤケース29内のギヤを正転、逆転に切替操作することができる。
【0014】
この拡散ロータ2を逆転伝動回転すると、固定の株元羽根螺旋板3、及び中央羽根螺旋板4による切断排稈は共に穂先側へ向けて放出される。しかもこれら各羽根螺旋板3,4により放出される切断排稈は、刈取幅Dの中央部である刈取穀稈条K3とK4との条間部よりも穂先側の刈取跡地に集中B状態に排出される。又、穂先側で逆転される螺旋5によって穂先部の切断排稈が中央部側寄へ放出されて、株元側から放出される切断排稈と合流されて、刈取跡地の中央部よりも穂先側地面に集中B排出される。このような集中B排出時は、前記案内板25を後側へ開くと共に、株元側板27を内側へ向けて傾斜しておくことによって、株元域側への散乱を少なくすることができる。
前記拡散ロータ2の穂先部側の螺旋に代えて、図3のように株元羽根螺旋板3と同形態の穂先羽根螺旋板30を設けることもできる。又、これら拡散ロータ2の各羽根螺旋板3,4,30は、中心部を羽根軸31,32,33の周りに回動可能にして、拡散軸1に対して取付ける。各羽根螺旋板3,4,30共に、これら羽根軸31,32,33の周りに適宜回動して傾斜角を調節できる形態とすることができる。又、前記のように中央羽根螺旋板4は、この羽根軸32の周りに略90度回動させて、羽根板角αを正、逆に切替えることができる構成である。
【0015】
圃場におけるコンバイン作業では、左右外周畦際に沿って6条毎の刈取行程F(F1〜F5)を経ながら、圃場中央部にわたって順次作業処理を進める。そして、最終行程F5を経ることによって圃場全体のコンバイン作業を終了する。各行程F1〜F4においては、6条刈形態を進めることができるが、最終行程F5は、6条以下の狹い刈取幅であることが多い。各行程F1〜F4における刈取穀稈を収穫処理しながら、この排稈を排稈カッター15で切断して集中B形態で刈取跡地に排出させると、この集中B排稈によって刈取跡地にはウインドローW(W1〜W4)が形成される。各ウインドローW1〜W4では、前記集中B排出が刈取幅Dの中央部よりも穂先側に偏位して行われるために、最終刈取条行程F5の左、右直前行程F3,F4で形成される各ウインドローW3とW4との間隔部Cは、刈取装置13の左右両側部の分草杆16間隔部である刈取幅Dよりも広幅C>Dになっている。このため最終行程F5を刈取走行する刈取装置13は、これら外側のウインドローW3,W4を掻き乱すことのないように推進させることができる。又、この最終行程F5によるウインドローW5は、これら左、右前行程F3,F4のウインドローW3,W4の間隔部Cに沿って形成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】排稈カッター部の作用を示す背面図と、その一部の拡大図。
【図2】その作用を示す同背面図。
【図3】その一部拡散ロータ部の拡大図と、その一部別例を示す同拡大図。
【図4】排稈カッターの左側面図と、右側面図。
【図5】コンバインの略平面図。
【図6】コンバインの作業状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0017】
1 拡散軸
2 拡散ロータ
3 羽根螺旋板
4 羽根螺旋板
5 螺旋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの刈取幅(D)方向に沿う拡散軸(1)の周りに回転して切断排稈を受けて刈取跡地へ放出する拡散ロータ(2)を有する排稈カッターにおいて、この拡散ロータ(2)は、刈取幅(D)方向の株元部及び中央部の切断排稈を穂先側へ放出可能の株元、及び中央羽根螺旋板(3),(4)を配置して、該刈取幅(D)の中央部よりも穂先側へ集中排出して、ウインドロー(W)を形成することを特徴とする切断排出装置。
【請求項2】
前記拡散軸(1)の穂先部側には、この穂先部切断排稈を中央側へ放出する螺旋(5)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排稈カッターの切断排出装置。
【請求項3】
前記中央羽根螺旋板(4)は、拡散ロータ(2)の回転方向の正転、逆転の切替えにともなって、羽根板角(α)を拡散放出状態と、集中放出状態とに切替可能に設けたことを特徴とする請求項1、又は2に記載の排稈カッターの切断排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−109788(P2006−109788A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302362(P2004−302362)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)
【Fターム(参考)】