説明

掛吊穴閉鎖部材及び掛吊穴閉鎖部材が装着された複室型輸液バッグ

【課題】混合前の薬剤を患者に投与するのをより効果的に防ぐことができる掛吊穴閉鎖部材を提供する。
【解決手段】複室型輸液バッグに固着され、掛吊穴と一致する位置に第1の開口が形成された第1の挟持部と、第1の挟持部とともに収容室を挟持するための第2の挟持部と、第1及び第2の挟持部を連結する、屈曲可能な連結部と、第1及び第2の挟持部の一方面同士を対向させた状態で、第2の挟持部が掛吊穴を閉鎖するとともに第1及び第2の挟持部の少なくとも一部が収容室を挟持するよう、第2の挟持部を保持する第1の保持手段と、第1及び第2の挟持部の他方面同士を対向させた状態で、掛吊穴が露出するよう第2の挟持部を保持する第2の保持手段と、を備え、第2の保持手段は、易剥離シール仕切り部が開通した状態において、第2の挟持部を保持可能となり、第2の保持手段により前記第2の挟持部を保持することで掛吊穴が使用可能となる、掛吊穴閉鎖部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛吊穴閉鎖部材及び掛吊穴閉鎖部材が装着された複室型輸液バッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静脈注射により患者に投与される薬剤の中には、予め配合すると経時変化を起こすような不安定な薬剤がある。経時変化としては、例えばアミノ酸輸液とブドウ糖輸液を配合して保存しておくと褐変する、いわゆるメイラード反応が挙げられる。また、脂肪乳剤と電解質溶液とを配合して保存しておくと脂肪分が凝集を生じ、リン酸含有液とカルシウム含有液を配合しておくとリン酸カルシウムの沈殿を生じ、望ましくない変化を起こす。
【0003】
このような薬剤に対しては、次のような輸液バッグが用いられることが多い。この輸液バッグは、薬剤を収容する2つの収容室を有するプラスチックフィルム製の輸液バッグ本体と、この輸液バッグ本体から薬剤を排出する薬剤排出部とを備えている。2つの収容室は、輸液バッグ本体の内壁面同士を熱融着した易剥離シール仕切り部によって仕切られている。使用に際しては、いずれかの収容室の中央付近を押圧し、収容室内の圧力を高めて易剥離シール仕切り部を開封する。これによって両収容室が連通し、2つの薬剤が混合される。その後、薬剤排出部を刺入等によって開封し、輸液バッグ本体を吊り下げて、混合後の薬剤を患者に投与する(例えば特許文献1)。上記輸液バッグでは、易剥離シール仕切り部を開通させる前、すなわち薬剤を混合させる前に、薬剤排出部を刺入等によって開封して、混合前の薬剤を患者に投与しないように注意喚起表示が輸液バッグ本体の表面に印刷等されている。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献2では、上述したような輸液バッグを吊り下げるための掛吊穴に対して使用する掛吊穴閉鎖部材が提案されている。この掛吊穴閉鎖部材は一対の挟持部を備えており、初期状態ではこの一対の挟持部が掛吊穴を閉鎖するよう収容室を挟持している。収容室が押圧されると、易剥離シール仕切り部が開通されるとともに一対の挟持部の挟持状態が解除され、掛吊穴が出現するようになっている。すなわち、上記掛吊穴閉鎖部材においては、挟持部の挟持状態が解除されるまでは掛吊穴を使用することができないようになっており、これにより、混合前の薬剤を患者に投与するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−229099号公報
【特許文献2】実登3118291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような掛吊穴閉鎖部材は、収容室を挟持している一対の挟持部が手で無理に抉じ開けられてしまう可能性がある。この場合、易剥離シール仕切り部が開封されていなくても掛吊穴が使用可能となってしまうため、混合前の薬剤を患者に投与してしまうのを確実に防止することができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、混合前の薬剤を患者に投与するのをより効果的に防止することができる掛吊穴閉鎖部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る掛吊穴閉鎖部材は、易剥離シール仕切り部により隔てられた複数の収容室を有し掛吊穴が形成された複室型輸液バッグに装着される掛吊穴閉鎖部材であって、複室型輸液バッグに固着され、掛吊穴と一致する位置に第1の開口が形成された第1の挟持部と、前記第1の挟持部とともに収容室を挟持するための第2の挟持部と、前記第1及び第2の挟持部を連結する、屈曲可能な連結部と、前記第1及び第2の挟持部の一方面同士を対向させた状態で、前記第2の挟持部が掛吊穴を閉鎖するとともに前記第1及び第2の挟持部の少なくとも一部が収容室を挟持するよう、前記第2の挟持部を保持する第1の保持手段と、前記第1及び第2の挟持部の他方面同士を対向させた状態で、掛吊穴が露出するよう前記第2の挟持部を保持する第2の保持手段と、を備え、前記第2の保持手段は、易剥離シール仕切り部が開通した状態において、前記第2の挟持部を保持可能となり、前記第2の保持手段により前記第2の挟持部を保持することで掛吊穴が使用可能となる。
【0009】
本発明に係る掛吊穴閉鎖部材が装着された輸液バッグを使用する場合、まず、易剥離シール仕切り部を開通して各収容室内の薬剤を混合するため、いずれかの収容室を押圧する。このとき、収容室を押圧することによって収容室が膨張し、収容室を挟持していた第1及び第2の挟持部が互いに離反するよう、第1及び第2の挟持部に力が作用して、第1の保持手段による第2の挟持部の保持が解除される。しかしながら、第2の保持手段により第2の挟持部が保持されるまでは掛吊穴を使用することができない。このため、連結部を折り返して第1及び第2の挟持部の他方面同士を対向させ、掛吊穴が使用可能となるよう、第2の保持手段によって第2の挟持部を保持する必要がある。このように第2の保持手段によって第2の挟持部を保持することで、掛吊穴が露出し、掛吊穴を使用することができるようになる。ここで、上記第2の保持手段は、易剥離シール仕切り部が開通した状態において初めて第2の挟持部の保持が可能となる。これは、易剥離シール仕切り部が開通される前は、内部の薬剤や気体によって収容室に厚みがあり、この厚みが第2の保持手段による第2の挟持部の保持を妨げるためである。このように、易剥離シール仕切り部を開通するまでは第2の保持手段が第2の挟持部を保持することができず、掛吊穴を使用することができないため、輸液バッグを使用することができない。この結果、混合前の薬剤を患者に投与するのを効果的に防止することができる。また、本発明によれば、第1の狭持部が掛吊穴から外れないので、特許文献2のように掛吊穴のみで、輸液バッグを保持することがないため掛吊穴の強度を高める効果もある。さらに、輸液バッグと掛吊穴を同時に廃棄することができる利点もある。なお、第1の挟持部において、第1の開口が掛吊穴と一致する位置とは、掛吊穴が使用可能なように第1の開口が掛吊穴と重なっていればよく、完全に一致している必要はない。
【0010】
上記掛吊穴閉鎖部材は、第1の保持手段による保持解除後も第2の挟持部が掛吊穴を覆った状態を維持しており、第2の挟持部又は連結部に第2の開口が形成されていてもよい。この第2の開口は、第2の保持手段により第2の挟持部が保持されたときに掛吊穴を露出させるよう構成される。この構成によれば、第2の保持手段によって第2の挟持部が保持されるまでは第2の開口から掛吊穴が露出せず、掛吊穴を使用することができないため、混合前の薬剤を患者に投与するのを確実に防止することができる。
【0011】
上記掛吊穴閉鎖部材は、第1の開口が破断可能なフィルムで覆われていてもよい。この構成によれば、使用者に対し、掛吊穴を使用可能な状態としたかどうか注意喚起することができるため、混合前の薬剤を患者に投与するのをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明に係る掛吊穴閉鎖部材は、第1の開口が破断可能なフィルムで覆われており、第2の挟持部又は連結部が第2の保持手段によって第2の挟持部が保持されたときに上記フィルムを破断する破断手段を有するよう構成されていてもよい。この構成によれば、フィルムが破断されるまでは掛吊穴を使用することができないため、使用者が掛吊穴を無理に使用するのを防止することができる。
【0013】
上述したような掛吊穴閉鎖部材が装着される複室型輸液バッグは、薬剤が収容される収容室を有する輸液バッグ本体を備えており、この輸液バッグ本体の一方端には収容室から薬剤を排出するための薬剤排出部が形成されている。また、輸液バッグ本体の他方端には掛吊穴が形成されており、この掛吊穴は掛吊穴閉鎖部材によって閉鎖されている。
【0014】
上記複室型輸液バッグは、輸液バッグ本体の他方端から掛吊穴まで延びるスリットが形成されているのが好ましい。この構成によれば、掛吊穴閉鎖部材が複室型輸液バッグから取り外された状態では、フック等がスリットから抜けてしまうため、複室型輸液バッグを吊り下げることができない。これにより、使用者が掛吊穴閉鎖部材を無理に取り外して使用するのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混合前の薬剤を患者に投与するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る掛吊穴閉鎖部材が装着される前の複室型輸液バッグの正面図である。
【図2】同掛吊穴閉鎖部材の側面図(a)及び平面図(b)である。
【図3】同掛吊穴閉鎖部材の使用状態を示す側面図である。
【図4】同掛吊穴閉鎖部材を複室型輸液バッグに装着した状態を示す正面図(a)、背面図(b)、及び側面断面図(c)である。
【図5】同掛吊穴閉鎖部材の使用方法を示す側面断面図である。
【図6】同掛吊穴閉鎖部材の図5(c)における背面部分拡大図である。
【図7】同掛吊穴閉鎖部材の変形例を示す側面図(a)及び平面図(b)である。
【図8】同掛吊穴閉鎖部材の変形例を示す側面図(a)及び平面図(b)である。
【図9】同掛吊穴閉鎖部材の変形例の使用方法を示す側面断面図(a)及び正面部分拡大図(b)である。
【図10】同掛吊穴閉鎖部材の変形例の使用方法を示す側面断面図(a)及び正面部分拡大図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る掛吊穴閉鎖部材及び掛吊穴閉鎖部材が装着された複室型輸液バッグの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
まず、掛吊穴閉鎖部材が装着される前の複室型輸液バッグについて説明する。図1に示すように、複室型輸液バッグ1は、薬剤を収容する2つの収容室21、22を有する輸液バッグ本体2と、薬剤を排出する薬剤排出部3とを備えている。輸液バッグ本体2は、可撓性のある柔軟な透明プラスチック製であって、輸液バッグ本体2の内壁面同士を熱融着した易剥離シール仕切り部23が形成されており、この易剥離シール仕切り部23で収容室21、22が隔てられている。また、輸液バッグ本体2は、輸液バッグ1を吊り下げるための掛吊穴24が上端部に形成されている。なお、輸液バッグ本体2において、掛吊穴24から上端まで延びるスリットを形成し、後述する掛吊穴閉鎖部材を外してしまうと輸液バッグ1をハンガーやフック等に吊るすことができないような態様であればなおさら良い。
【0019】
次に、掛吊穴閉鎖部材について説明する。図2に示すように、掛吊穴閉鎖部材4は、連結部7によって連結された第1及び第2の挟持部5、6を有している。連結部7は、図2(b)に示すように、中央に開口部73が形成されるとともに、連結部7を折り曲げるための第1及び第2の薄肉部71、72が形成されている。なお、第1の薄肉部71は、図3(a)に示すように、第1及び第2の挟持部5、6が内側面(一方面)53、63同士を対向させた状態となるように連結部7を折り曲げ可能であり、第2の薄肉部72は、図3(b)に示すように、第1及び第2の挟持部5、6が外側面(他方面)54、64同士を対向させた状態となるように連結部7を折り曲げ可能である。なお、連結部7の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物、更には、ポリアセタール、ポリカーボネイト等を挙げることができる。
【0020】
図2に示すように、第1の挟持部5に第1の開口51が形成されるとともに、第2の挟持部6の内側面63に嵌合突起61が形成されている。この第1の開口51及び嵌合突起61は、図3(a)に示すように、連結部7の第1の薄肉部71を折り曲げて第1及び第2の挟持部5、6の内側面53、63同士を対向させることによって、互いに嵌合するように構成されている。なお、第1の開口51及び嵌合突起61が本発明の第1の保持手段に相当する。
【0021】
また、図2に示すように、第1の挟持部5の外側面54に弾力性を有する頭部付きの係合突起52が形成されるとともに、第2の挟持部6に係合穴62が形成されている。この係合突起52及び係合孔62は、図3(b)に示すように、連結部7の第2の薄肉部72を折り曲げて第1及び第2の挟持部5、6の外側面54、64同士を対向させることによって、互いに係合するように構成されている。なお、係合穴62の径を係合突起52の頭部の径よりも小さくすることによってこれらが係合したときにその状態が容易に解除されないようになっており、係合突起52及び係合穴62は本発明の第2の保持手段に相当する。
【0022】
以上のように構成された掛吊穴閉鎖部材4は、図4に示すように、輸液バッグ1に装着される。具体的には、第1の挟持部5の第1の開口51周辺に立設された周壁部55が輸液バッグ2の掛吊穴24に挿入された状態で、熱融着等によって第1の挟持部5の内側面53の少なくとも一部を輸液バッグ2に固着されることで、掛吊穴閉鎖部材4は輸液バッグ1に装着される。このとき、第1の挟持部5の第1の開口51の位置は、輸液バッグ本体2の掛吊穴24の位置と一致している。なお、掛吊穴閉鎖部材4を輸液バッグ1に固着する方法としては、接着剤による装着の他、掛吊穴24の周縁部を第1の開口51周縁部に巻き込んでかしめる、あるいは掛吊穴24の周縁部に数個の穴を開け掛吊穴閉鎖部材4に凸部を付けて組み込む等の方法が考えられるが、これらの方法に限らず、掛吊穴閉鎖部材4が輸液バッグ1から外れないような手段であれば、どのような手段でもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る複室型輸液バッグ2に装着された掛吊穴閉鎖部材4の使用方法について、図5も参照しつつ説明する。
【0024】
図5(a)に示すように、複室型輸液バッグ1が使用される前の状態では、掛吊穴閉鎖部材4の第1及び第2の挟持部5、6の先端部は輸液バッグ本体2の収容室21を挟持しており、この第1及び第2の挟持部5、6の挟持状態は第1の挟持部5の第1の開口51に第2の挟持部6の嵌合突起61が嵌合することにより保持されている。また、輸液バッグ本体2の掛吊穴24は第2の挟持部6によって閉鎖されている。
【0025】
掛吊穴閉鎖部材4が装着された輸液バッグ1を使用する場合、まず、収容室21の中央付近を押圧して収容室21の内圧を上昇させ、易剥離シール仕切り部23を開通させる。このとき、収容室21が膨張するため、収容室21を挟持していた第1及び第2の挟持部5、6に対し、第1及び第2の挟持部5、6が離反する方向に力が作用する。これにより、図5(b)に示すように、第1の挟持部5の第1の開口51と第2の挟持部6の嵌合突起61との嵌合が解除され、第2の挟持部6が輸液バッグ本体2から離反する。しかしながら、第2の挟持部6は、連結部7の第1の薄肉部71が折り曲げられていることにより、掛吊穴24を覆うような状態で静止する。
【0026】
上述した状態では、第2の挟持部6によって掛吊穴24が覆われているため、輸液バッグ1を使用することができない。このため、図5(c)に示すように、連結部7の第2の薄肉部72を折り曲げ、第1及び第2の挟持部5、6の外側面54、64同士を対向させる。そして、第1の挟持部5の係合突起52の位置と第2の挟持部6の係合穴62の位置とを整合させ、第2の挟持部6を輸液バッグ本体2に向かって押圧して係合突起52の頭部を係合穴62に押し込むことで係合突起52及び係合穴62を係合させる。係合突起52及び係合穴62の係合は、係合突起52の頭部の径が係合穴62の径よりも大きいため、容易に解除されないようになっている。このように係合突起52と係合穴62とを係合させることで、図5(c)及び図6に示すように、掛吊穴24を使用するのに邪魔にならないよう第2の挟持部6が固定され、また、連結部7の第2の開口73から掛吊穴24が露出するため、掛吊穴24が使用可能な状態となる。なお、係合突起52と係合穴62とを係合させるためには易剥離シール仕切り部23が開通されている必要がある。すなわち、易剥離シール仕切り部23が未開通の状態では、収容室21には内部の薬剤や気体による厚みがあり、第2の挟持部6を輸液バッグ本体2に向かって押圧した際、収容室21の厚みによって第2の挟持部6が押し返されるため、係合突起52及び係合穴62を係合させることができない。
【0027】
上記のようにして掛吊穴24を使用可能な状態とした後、掛吊穴24を使用して輸液バッグ1を吊り下げ、薬剤排出部3を刺入等によって開封して、混合済みの薬剤を患者に投与する。
【0028】
以上のように、上記掛吊穴閉鎖部材4においては、輸液バッグ本体2の掛吊穴24を使用するためには、第1及び第2の挟持部5、6の挟持状態を解除するだけでなく、第1及び第2の挟持部5、6の外側面同士を対向させ、第1の挟持部5の係合突起52と第2の挟持部6の係合穴62とを係合させる必要がある。しかしながら、易剥離シール仕切り部23の開通前は、収容室21に厚みがあることによって、係合突起52及び係合穴62を係合させることができないようになっている。すなわち、易剥離シール仕切り部23が開通されて収容室21、22内の薬剤が混合されるまでは、掛吊穴24が使用できず、輸液バッグ1を使用することができない。これにより、混合前の薬剤を患者に投与するのを効果的に防止することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態において、第1の開口51が破断可能なフィルムで覆われていてもよい。この場合は、輸液バッグ1を吊り下げる際に点滴スタンドのフック等で上記フィルムを破断する。この構成によれば、使用者に対し、掛吊穴を使用可能な状態としたかどうか注意喚起することができ、混合前の薬剤を患者に投与するのを確実に防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、第1の保持手段は、第1及び第2の挟持部5、6それぞれに形成された第1の開口51及び嵌合突起61であったが、第1及び第2の挟持部が輸液バッグの収容室を挟持するよう第2の挟持部を保持できるものであればこれに限定されず、例えば、第1及び第2の挟持部5、6の内側面53、63同士の摩擦によるものや、凹凸係合によるもの、テーパーによる嵌合等でもよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、第2の保持手段は、第1及び第2の挟持部5、6それぞれに形成された係合突起52及び係合穴62であったが、第1及び第2の挟持部の外側面同士が対向する状態を維持するよう第2の挟持部を保持できるものであって、易剥離シール仕切り部開通後に保持可能となり、かつ保持後に容易に外れないようなものであればこれに限定されず、例えば、第1及び第2の挟持部5、6の外側面54、64同士の摩擦によるものや、凹凸係合によるもの、テーパーによる嵌合等でもよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、第2の開口73は、連結部7に形成されていたが、第2の保持手段により第2の挟持部が保持されたときに掛吊穴を露出させるようなものであればよく、第2の挟持部に形成されていてもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、掛吊穴閉鎖部材4が複室型輸液バッグ1に装着されたときに連結部7の第1の薄肉部71が折り曲げられていたが、第1の保持手段による第2の挟持部の保持が解除された後も掛吊穴を覆った状態を維持することができればこれに限定されない。例えば、連結部を折り返して第1及び第2の挟持部の外側面同士を対向させただけでは連結部又は第2の挟持部によって掛吊穴が覆われており、第2の保持手段によって第2の挟持部材を保持して初めて掛吊穴が露出するような位置に第2の開口を形成することもできる。
【0035】
また、図7のように構成することで、第2の挟持部が掛吊穴を覆った状態を維持していなくても、第2の保持手段によって第2の挟持部を保持する前に掛吊穴を使用するのを防止することができる。すなわち、図7に示すように、掛吊穴閉鎖部材40は、第1の開口51が破断可能なフィルム8で覆われており、連結部70の外側面704において第2の開口703の周縁部に、フィルム8を破断するための第1の突起91(破断手段)が形成されていてもよい。あるいは、図8に示すように、開口703の周縁部に形成された第2の突起92(破断手段)が開口51に嵌合する際に周壁部55を押し広げることによるフィルム8の破断が生じるような構造でもよい。このように構成された掛吊穴閉鎖部材40は、図9に示すように、連結部70の第2の薄肉部702を折り曲げて係合突起52及び係合穴62を係合させた場合に、第1の突起91がフィルム8を破断する。又は、図10に示すように、第2の突起92が開口51に嵌合する際に周壁部55を押し広げることによりフィルム8を破断する。このように、係合突起52及び係合穴62を係合、又は第2の突起92を開口51に嵌合させるまでは掛吊穴24を使用することができず、使用者が掛吊穴24を無理に使用するのを防止することができる。なお、第2の突起92及び開口51も本発明の第2の保持手段に相当する。上記掛吊穴閉鎖部材においては、係合突起52及び係合穴62が係合、又は第2の突起92及び開口51が嵌合したとき、すなわち第2の保持手段による保持がなされたときにフィルム8を破断するような破断手段を備えていればよく、例えば、第2の挟持部に突起が形成されていてもよい。また、フィルム8には注意喚起等の表示を施すこともできる。
【符号の説明】
【0036】
1 複室型輸液バッグ
2 輸液バッグ本体
21、22 収容室
23 易剥離シール仕切り部
24 掛吊穴
3 薬剤排出部
4、40 掛吊穴閉鎖部材
5 第1の挟持部
6 第2の挟持部
51 第1の開口
51、61 第1の開口、嵌合突起(第1の保持手段)
52、62 係合突起、係合穴(第2の保持手段)
51、92 第1の開口、第2の突起(第2の保持手段)
7、70 連結部
73、703 第2の開口
8 フィルム
91、92 第1及び第2の突起(破断手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易剥離シール仕切り部により隔てられた複数の収容室を有し掛吊穴が形成された複室型輸液バッグに装着される掛吊穴閉鎖部材であって、
複室型輸液バッグに固着され、掛吊穴と一致する位置に第1の開口が形成された第1の挟持部と、
前記第1の挟持部とともに収容室を挟持するための第2の挟持部と、
前記第1及び第2の挟持部を連結する、屈曲可能な連結部と、
前記第1及び第2の挟持部の一方面同士を対向させた状態で、前記第2の挟持部が掛吊穴を閉鎖するとともに前記第1及び第2の挟持部の少なくとも一部が収容室を挟持するよう、前記第2の挟持部を保持する第1の保持手段と、
前記第1及び第2の挟持部の他方面同士を対向させた状態で、掛吊穴が露出するよう前記第2の挟持部を保持する第2の保持手段と、を備え、
前記第2の保持手段は、易剥離シール仕切り部が開通した状態において、前記第2の挟持部を保持可能となり、
前記第2の保持手段により前記第2の挟持部を保持することで掛吊穴が使用可能となる、掛吊穴閉鎖部材。
【請求項2】
前記第2の挟持部は、前記第1の保持手段が解除された後、掛吊穴を覆った状態を維持しており、
前記第2の挟持部又は連結部は、第2の開口が形成され、
前記第2の保持手段により前記第2の挟持部を保持したときに、掛吊穴が前記第2の開口から露出して使用可能となる、請求項1に記載の掛吊穴閉鎖部材。
【請求項3】
前記第1の開口は、破断可能なフィルムで覆われている、請求項2に記載の掛吊穴閉鎖部材。
【請求項4】
前記第1の開口は、破断可能なフィルムで覆われており、
前記第2の挟持部又は連結部は、前記第2の保持手段により前記第2の挟持部を保持したときに前記フィルムを破断する破断手段を有する、請求項1に記載の掛吊穴閉鎖部材。
【請求項5】
薬剤を収容するための複数の収容室を有する輸液バッグ本体と、
前記輸液バッグ本体の一方端に形成された、前記収容室から薬剤を排出するための薬剤排出部と、
前記輸液バッグ本体の他方端側に形成された掛吊穴と、を備え
請求項1から4のいずれかに記載の掛吊穴閉鎖部材が、前記掛吊穴を閉鎖するよう、前記輸液バッグ本体に装着されている、複室型輸液バッグ。
【請求項6】
前記輸液バッグ本体の他方端から前記掛吊穴まで延びるスリットが形成されている、請求項5に記載の複室型輸液バッグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−284400(P2010−284400A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142064(P2009−142064)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】