説明

採光構造の施工方法、及び採光構造

【課題】採光構造を既設屋根に対して容易に適用でき、室内の採光性を向上することができる採光構造の施工方法、及び採光構造を提供する。
【解決手段】本発明の採光構造の施工方法は、山状部分1Aと谷状部分1Bとが交互に連続する既設屋根1を構成する傾斜面部11に採光部2を設ける採光構造の施工方法であって、既設屋根1の傾斜面部11に採光体2よりも小さい開口部111を形成する第1の工程の後、開口部111を覆うように採光体2を配設して取り付ける第2の工程と、を実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採光構造を既設屋根に対して容易に適用でき、室内の採光性を向上することができる採光構造の施工方法、及び採光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化防止及び節電等の目的で、室内の採光性を向上し、室内照明や暖房の軽減などに利用する試みがなされている。従来の採光部を備える屋根構造としては、一般的に金属板材にて形成される折板屋根板に対し、谷部、即ち略平坦状の底面部とその左右に位置する傾斜面部とからなる略U字状部分を透光性合成樹脂板にて形成し、ハゼ締め部等を金属板材にて形成してこれらを一体化させた屋根板を用いる方法(例えば特許文献1参照)が知られている。
また、露結水の落下を防止する目的で山部と谷部とを有する透光性の折板を所定間隔を隔てて上下に配して採光部とする方法(例えば特許文献2参照)も提案されている。
さらに、山部と谷部とを有する折板屋根の山部頂部に配設する嵌合カバー材に代えて枠体に透光板を組み付けた採光用枠体を取り付ける方法(例えば特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−93335号公報
【特許文献2】特開2001−49807公報
【特許文献3】特開2004−137824公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の方法は、屋根板の一部を透光性合成樹脂板にて形成するものであって、金属板材と透光性合成樹脂板とを一体化させた透光性屋根板を敷設する方法であるから、新たな屋根施工に限定されるものであり、既設屋根に適用されるものではなかった。また、前記特許文献2の方法も、前記特許文献3も、基本的に新設屋根用として開発されたものであって、仮に既設屋根に適用する場合には、所定の寸法の屋根形状或いは嵌合カバー材(幅間隔)でなければ対応することができないものであった。
【0005】
そこで、本発明は、採光構造を既設屋根に対して容易に適用でき、室内の採光性を向上することができる採光構造の施工方法、及び採光構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根を構成する傾斜面部に採光部を設ける採光構造の施工方法であって、既設屋根の傾斜面部に透光材よりも小さい開口部を形成する第1の工程の後、開口部を覆うように採光体を配設して取り付ける第2の工程と、を実施することを特徴とする採光構造の施工方法に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記施工方法において、開口部は、底部と頂部を繋ぐ傾斜面部のみに形成されていることを特徴とする採光構造の施工方法をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記施工方法において、採光体は、透光材と、その周縁を押さえる押さえ部及び傾斜面部又は山状部分の頂部又は谷状部分の底部に固定する固定部を備えるフレーム材と、からなることを特徴とする採光構造の施工方法をも提案する。即ちこの場合、第2工程は、予め一体化した採光体を開口部へ取り付けるか、或いは透光材を開口部へ配設した後にフレーム材を取り付けるものとなる。
【0009】
さらに、本発明は、山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根を構成する傾斜面部に採光部を設けてなる採光構造であって、既設屋根の傾斜面部に採光体よりも小さい開口部を形成し、開口部を覆うように採光体を配設して取り付けてなることを特徴とする採光構造をも提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の採光構造の施工方法は、既設の折板屋根の傾斜面部に開口部を形成する第1の工程も、開口部を覆うように採光体を配設して取り付ける第2の工程も、平坦状の一面に対するものであるため、極めて容易に実施できるので、実用的価値が極めて高いものである。
そして、施工された本発明の採光構造では、既設屋根に対して容易に適用でき、室内の採光性を向上することができ、室内照明や冬季の暖房を軽減することができる。
【0011】
また、開口部が、底部と頂部とを繋ぐ傾斜面部のみに形成されている場合には、折板屋根の強度に寄与する底部と傾斜面部との繋ぎ(折曲部分)や傾斜面部と頂部との繋ぎ(折曲部分)が損なわれないので、折板屋根の強度特性を殆ど低下させることがなく、前述の効果が有効に発揮されるものとなる。
【0012】
また、採光体が、透光材と、その周縁を押さえる押さえ部及び傾斜面部又は山状部分の頂部又は谷状部分の底部に固定する固定部を備えるフレーム材と、からなる場合、前記第2工程は、予め一体化した採光体を開口部へ取り付けるか、或いは透光材を開口部へ配設した後にフレーム材を取り付けるものとすればよく、ビス孔を形成することができない性質の透光材でも、フレーム材と開口部縁部との間に挟み込んで固定することができる。さらに、フレーム材として、金属板材等を用いることにより、補強作用が果たされるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の採光構造の施工方法の一実施例(第1実施例)における第1の工程を終えた状態を示す斜視図、(b)第2の工程を終えた状態の採光構造を示す斜視図である。
【図2】(a)第1実施例にて構築された採光構造を示す断面図、(b)第1の工程を終えた状態を示す正面図、(c)採光部の下方縁部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の採光構造の施工方法は、山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根を構成する傾斜面部に採光部を設ける方法であって、既設屋根の傾斜面部に採光体よりも小さい開口部を形成する第1の工程の後、開口部を覆うように採光体を配設して取り付ける第2の工程と、を実施することを特徴とする。
【0015】
本発明における採光構造の取付対象は、山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根であって、傾斜面部のみにて構成される屋根でも、山状部分の頂部と谷状部分の底部とを傾斜面部が繋ぐ(連絡する)構成の屋根でもよく、このような既設屋根を構成する傾斜面部に開口部を設ける。
この開口部の形状は特に限定するものではなく、後述する図示実施例のように必ずしも矩形状でなくてもよい。
【0016】
本発明における採光体は、透光材(透光板)のみで構成されるものでもよいし、透光材と、その周縁を押さえる押さえ部及び傾斜面部又は山状部分の頂部又は谷状部分の底部に固定する固定部を備えるフレーム材と、からなるものでもよい。
前者の場合には、透光材の周縁をビスにて固定するために、直接的にビス止めできる特性(性質)を有する素材であるか、予めビス止め用の孔を穿設しておくことができる特性(性質)を有する素材であれば、特に素材を限定するものではない。
後者の場合には、透光材の特性(性質)に前述のような制限はなく、フレーム材と開口部縁部との間にその端縁を挟み込んで固定することができる。なお、フレーム材の固定部は、専ら傾斜面部に固定することが多いが、固定部のうち、上側の固定部のみを山状部分の頂部に固定してもよいし、下側の固定部のみを谷状部分の底部に固定してもよく、或いは上側の固定部を頂部に、下側の固定部を底部に、左右の固定部を傾斜面部に固定してもよい。
【0017】
透光材としては、採光が可能な程度に透光性を有し、且つ雨水の浸入を防止できる程度に遮水性(非透水性)を有するものであれば、特にその素材や構成を限定するものではなく、ガラスや網入りガラス等のガラス類、或いは透明、乳白色等のポリカーボネート、アクリル等の透明な硬質樹脂成形体が用いられる。
前記採光体が透光材のみで構成される場合には、透光材として前述の透明な硬質樹脂成形体を用いればよく、前記採光体がフレーム材を含む場合には、透光材として制限がないので、前述のガラス類をも用いることができる。
【0018】
また、フレーム材は、透光材の各辺毎に別々のフレーム材を配して押さえるようにしてもよいし、透光材の周縁を一つのフレーム材にて額縁状に押さえるようにしてもよい。
このフレーム材は、前述のように前記透光材の周縁を押さえる押さえ部と折板屋根の傾斜面部に固定する固定部を備えるものであるが、このフレーム材が強度を補強する作用を果たすので、金属板材又は金属成形材にて形成されることが望ましい。
【0019】
前記第1の工程では、既設屋根の傾斜面部に採光体よりも小さい開口部を形成する。
この既設屋根は前述のように傾斜面部のみにて構成されるものでも、山状部分の頂部と谷状部分の底部とを傾斜面部が繋ぐ(連絡する)構成でもよいが、開口部は、前者の屋根態様では一つの傾斜面部のみに、後者の屋根態様では傾斜面部のみに形成されていることが望ましい。前者の屋根態様では、二面の傾斜面部に跨る傾斜面部の上端(折曲部分)と下端(折曲部分)とが損なわれないので、折板屋根の強度特性を殆ど低下させることがない。後者の屋根態様では、底部と傾斜面部との繋ぎ(折曲部分)や傾斜面部と頂部との繋ぎ(折曲部分)が損なわれないので、折板屋根の強度特性を殆ど低下させることがない。
【0020】
前記第2工程は、採光体が透光材のみで構成される場合には、開口部を覆うように透光材を配設してビス留めすればよい。採光体が、透光材とフレーム材とからなる場合には、予め一体化した採光体を開口部へ取り付けるか、或いは透光材を開口部へ配設した後にフレーム材を取り付ければよい。
【実施例】
【0021】
図1(a),(b)に示す第1実施例の採光構造の施工方法は、山状部分1Aと谷状部分1Bとが交互に連続する既設屋根1を構成する傾斜面部11に採光部2を設ける方法であって、既設屋根の傾斜面部11に採光体3よりも小さい開口部111を形成する第1の工程の後、開口部111を覆うように採光体3を配設して取り付ける第2の工程と、を実施する。
【0022】
図示実施例の既設屋根1は、ハゼ締め式の折板屋根であって、山状部分1Aの頂部12と谷状部分1Bの底部13とを傾斜面部11が繋ぐ(連絡する)構成であり、山状部分1Aの頂部12の略中央に左右の屋根板の端縁をハゼ締めしたハゼ締め部121が突出状に形成されている。
本発明の第1の工程では、この既設屋根1の傾斜面部11に、図1(a)及び図2(b)に示すように横長矩形状の開口部111を形成する。
【0023】
図示実施例の採光体2は、ポリカーボネイト製の透光材(透光板)3と、その周縁を押さえる押さえ部41及び傾斜面部11に固定する固定部42を備えるフレーム材4と、からなる。
【0024】
前記フレーム材4は、前記透光材3の四辺毎に別々のフレーム材4o,4s,4s,4uを配して押さえるものであり、本発明の第2の工程では、前記開口部111を覆うように透光材3を配した後、その下辺(下方縁部)にフレーム材4uを配してビス5にて固定し、その左辺及び右辺(側方縁部)にフレーム材4s,4sを配してビス5にて固定し、その上辺(上方縁部)にフレーム材4oを配してビス5にて固定するようにしてもよいし、予め透光材3の周縁に各フレーム材4o,4s,4s,4uを一体化した後、開口部111の開口縁部に取り付けてビス5にて固定するようにしてもよい。
【0025】
なお、図示実施例では、図2(c)に示すようにフレーム材4の押さえ部41と採光材3との間、固定部42と折板屋根(開口縁部)1との間、並びに採光材3と折板屋根(開口縁部)1との間に止水材6を介在させてビス止め部分や接合部分からの浸水を防止している。
【0026】
このように本発明の採光構造の施工方法は、既設の折板屋根1の傾斜面部11に開口部111を形成する第1の工程も、開口部111を覆うように採光体2を配設して取り付ける第2の工程も、平坦状の一面に対するものであるため、極めて容易に実施できるので、実用的価値が極めて高いものである。
そして、施工された本発明の採光構造では、既設屋根1に対して容易に適用でき、室内の採光性を向上することができ、室内照明や冬季の暖房を軽減することができる。
【0027】
また、開口部11が、谷状部分1Bの底部13と山状部分1Aの頂部12とを繋ぐ傾斜面部11のみに形成されているので、折板屋根1の強度に寄与する底部13と傾斜面部11との繋ぎ(折曲部分)や傾斜面部11と頂部12との繋ぎ(折曲部分)が損なわれないので、折板屋根1の強度特性を殆ど低下させることがなく、前述の効果が有効に発揮されるものとなる。
さらに、採光体2が、透光材3と、その周縁を押さえる押さえ部41及び傾斜面部11に固定する固定部42を備えるフレーム材4と、からなるので、フレーム材4が補強作用を果たし、前述の折板屋根1の強度特性を低下させない効果に寄与するものとなる。
【符号の説明】
【0028】
1 既設屋根
1A 山状部分
1B 谷状部分
11 傾斜面部
111 開口部
12 頂部
13 底部
2 採光部、採光体
3 採光材
4 フレーム材
41 押さえ部
42 固定部
5 ビス
6 止水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根を構成する傾斜面部に採光部を設ける採光構造の施工方法であって、
既設屋根の傾斜面部に採光体よりも小さい開口部を形成する第1の工程の後、
開口部を覆うように採光体を配設して取り付ける第2の工程と、
を実施することを特徴とする採光構造の施工方法。
【請求項2】
開口部は、山状部分の底部と谷状部分の頂部とを繋ぐ傾斜面部のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の採光構造の施工方法。
【請求項3】
採光体は、透光材と、その周縁を押さえる押さえ部及び傾斜面部又は山状部分の頂部又は谷状部分の底部に固定する固定部を備えるフレーム材と、からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の採光構造の施工方法。
【請求項4】
山状部分と谷状部分とが交互に連続する既設屋根を構成する傾斜面部に採光部を設けてなる採光構造であって、
既設屋根の傾斜面部に採光体よりも小さい開口部を形成し、開口部を覆うように採光体を配設して取り付けてなることを特徴とする採光構造。

【図1】
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【図2】
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