説明

採光遮熱シート及び合わせガラス

【課題】季節や時間帯のように太陽光などの熱電源の位置が変化した場合、遮熱効果を自動的に調整することができ、さらに遮熱装置の構造の簡略化及びコストを低減することができる採光遮熱シートを得る。
【解決手段】光入射面2a及び光出射面2bを有する透光性の樹脂からなるシート本体2内に設けられており、光入射面2aと交差する方向に延びる複数の遮熱部材3が光入射面2aの面方向に複数配置されている、採光遮熱シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性と遮熱性とを有する採光遮熱シートに関し、特に、透光性のシート本体に遮熱構造が設けられている採光遮熱シート及び該採光遮熱シートを用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から、窓を通して室内に入ってくる太陽光による熱を抑制する遮熱性部材が種々提案されている。また、室内では、冷暖房効率を高めるために、外界との境界部分に様々な断熱構造が設けられている。例えば、断熱性の高い壁材等や建築物等に広く用いられている。
【0003】
他方、採光のためにガラス窓を設置するのが一般的である。しかしながら、ガラス窓では壁材等に比べて断熱効果が低いという問題があった。家屋等の建築物では、熱エネルギー損失分の全体の45%が窓などの採光部における損失分であるとされている。
【0004】
また、自動車などにおいても、窓を通した熱の移動によるエネルギーロスが問題となっており、窓部における断熱性の向上が強く求められている。
【0005】
ところで、窓において断熱性を高めるには、太陽光に含まれている赤外線による室内や車両内部における熱の発生が大きな課題となっている。そのため、例えば下記の特許文献1には、合わせガラスにおいて、一対のガラス板間の中央層のフィルムに、熱線遮蔽性を有する物質を分散させた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−156422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の合わせガラスでは、熱線遮蔽性を有する物質が、中間層のフィルムの全体に均一に分散されているため、合わせガラスの光線透過率が低くなるという問題があった。また、冬季などにおいては、遮熱性能は必要ではなく、むしろ太陽光による熱を室内で利用することが望ましい。すなわち、夏季には、遮熱性の高いことが求められるが、冬季には、太陽光による熱を積極的に利用することが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載の合わせガラスでは、遮熱性能は優れているものの、冬季に太陽光の熱を有効に利用することはできなかった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、十分な採光を図ることができ、朝夕と昼間、あるいは夏季と冬季のように、太陽光が入射する方向が変化した場合に、遮熱が望ましい場合には、十分な遮熱能力を有し、太陽光の熱を利用したい場合には熱を有効に利用することを可能とする採光遮熱シート及び該採光遮熱シートを用いた合わせガラスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る採光遮熱シートは、光入射面と、光入射面と対向する光出射面とを有する透光性のシート本体と、前記シート本体内に設けられており、前記光入射面と交差する方向に延びる複数の遮熱部材とを備える。光入射面から入射された光が光出射面の一部の領域から出射されるように、前記複数の遮熱部材は前記光入射面の面方向において複数配置されている。
【0010】
本発明に係る採光遮熱シートのある特定の局面では、前記遮光部材が延びる方向が、前記光入射面と直交する方向である。この場合には、太陽光などの熱源からの熱線進入方向が変化した場合の遮熱性の制御をより効果的に行うことができる。
【0011】
本発明に係る採光遮熱シートの他の特定の局面では、前記遮熱部材が、樹脂と、熱線遮蔽機能を有する遮光性酸化物粒子及び/または熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物とを含有する樹脂組成物からなる。この場合には、遮光性酸化物粒子及び/または熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物により、遮光性を効果的に高めることができる。
【0012】
本発明に係る合わせガラスは、一対のガラス板と、該一対のガラス板内間に挟持されている本発明に従って構成された採光遮熱シートとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る採光遮熱シートによれば、透光性の樹脂からなる樹脂シート本体内に光入射面と交差する方向に延びる複数の遮熱部材が設けられているため、光入射面に対して太陽光などの赤外線を含む光が入射する方向によって、光出射面から出射される赤外線量が変化する。例えば夏季の場合、冬季に比べて太陽が高い位置にあるので、本発明の採光遮熱シートを例えば窓ガラスに適用した場合、夏季には十分な遮熱効果を得ることができ、逆に冬季には、遮熱効果を減じて採光量を高めることができる。同様に、朝夕と昼間との間でも太陽の高さの位置が変化することで、朝夕には遮熱効果を低め、昼間の温度が高い時間帯には高い遮熱効果を得ることができる。すなわち、赤外線発生源の位置により、遮熱量が自動的に変化する採光遮熱シートを提供することができる。
【0014】
また、従来のブラインドを用いた採光遮熱構造では、窓ガラス周りが煩雑となり、紐の絡み合い等が生じることがあったのに対し、本発明に係る採光遮熱シートでは、窓ガラスに適用するだけでよいため、窓ガラスの周りの構造が複雑にならず、スペースを低減することができ、しかもユーザーにおいて煩雑な操作を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る採光遮熱シート及びその作用効果を説明するための模式的正面断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る採光遮熱シートの正面断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る採光遮熱シートの正面断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る採光遮熱シートの正面断面図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る採光遮熱シートの正面断面図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る採光遮熱シートの正面断面図である。
【図7】(a)は本発明の第1の実施形態に係る採光遮熱シートを用いた合わせガラスを示す断面図であり、(b)は第1の実施形態の採光遮熱シートを窓ガラスに適用した状態を示す断面図である。
【図8】(a)は第1の実施形態の採光遮熱シートを得るのに用いられる金型を示す斜視図であり、(b)は該金型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る採光遮熱シートの断面形状及び該採光遮熱シートの作用効果を説明するための模式的断面図である。
【0018】
図1を参照して、採光遮熱シート1は、透光性の樹脂からなるシート本体2を有する。シート本体2は、光入射面2aと光入射面2aと対向する光出射面2bとを有する。透光性の樹脂としては、光透過性である限り特に限定されない。好ましくは、全光線透過率が80%以上である樹脂を用いることが望ましく、それによって十分な採光量を得ることができる。
【0019】
上記透光性の樹脂としては、シクロオレフィン系ポリマー、ポリエステル、アクリル樹脂、EVA樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。この透光性の樹脂に、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などが添加されていてもよい。
【0020】
シート本体2の光入射面2aと直交する方向に延びるように、複数の遮熱部材3が光入射面2aの面方向に配置されている。特に限定されるわけではないが、本実施形態では、遮熱部材3の一端が光入射面2aに露出しており、他端は光出射面2bには至っていない。図示の断面形状において、遮熱部材3は、細長い矩形の形状を有するが、この図面の紙面−紙背方向に、この断面形状を維持しつつ延ばされている。従って、図1では、遮熱部材3の横断面形状が示されている。なお、遮熱部材3の横断面形状は、後述の第2の実施形態以下において説明するように、細長い矩形形状に限定されるものではない。
【0021】
上記複数の遮熱部材3は、光入射面2aから入射された光が光出射面2bの一部の領域から出射されるように、光入射面2aの面方向において複数配置されている。
【0022】
上記遮熱部材3は、熱線すなわち赤外線を遮蔽する材料からなる。ここで、赤外線を遮蔽する程度は特に限定されず、シート本体2を構成している透光性の樹脂よりも赤外線遮蔽機能が高い適宜の遮熱材料により形成することができる。このような遮熱材料としては、例えば、樹脂やガラスに熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽粒子や熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物を含有させた材料を用いることができる。
【0023】
熱線遮蔽機能を有する粒子としては、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛などの酸化物の粒子や、LaB粒子などの熱線遮蔽機能を有する無機材料の粒子を用いることができる。
【0024】
また、上記熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物としては、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体及びチオール金属錯体などを挙げることができる。
【0025】
なお、熱線遮蔽機能を有する粒子の粒径は、特に限定されないが、熱線遮蔽機能を高めるには、熱線遮蔽機能を有する粒子を高い割合で含有することが好ましい。従って、粒子の粒径は小さい方が好ましい。
【0026】
上記熱線遮蔽粒子や熱線遮蔽性有機色素化合物を分散させる樹脂としては、特に限定されないが、例えばシクロオレフィン系ポリマー、ポリエステル、アクリル樹脂、EVA樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0027】
また、製造コストを低減する上では、シート本体2を構成する樹脂と、有機遮熱部材3に用いる樹脂は同一であることが好ましい。
【0028】
本実施形態の採光遮熱シート1の作用効果を説明する。採光遮熱シート1は、例えば建築物の窓ガラスに貼り合わせて用いられる。なお、窓ガラスに貼り合わせる必要は必ずしもなく、窓ガラスを合わせガラスとし、合わせガラスの中間層として採光遮熱シート1を用いてもよい。あるいは、採光遮熱シート1は、窓ガラスと隙間を隔てて配置されてもよい。好ましくは、窓ガラスに貼り合わせることにより、スペースを低減することができるとともに、採光遮熱作用をより効果的に得ることができる。
【0029】
窓ガラスは、通常、地面と垂直な方向に延びるように配置されている。この場合、図1に示すように、夏季には太陽Sが比較的高い位置にあるため、矢印Aで示すように太陽光の進入方向は光入射面2aと直交する方向Zに対して比較的大きな傾斜角度θ1を有する。従って、太陽光に含まれる赤外線の多くが遮熱部材3に到達する。そのため、光出射面2bに至る赤外線の量を著しく小さくすることができる。それによって、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
他方、冬季には、太陽はSwで示すように比較的低い位置にある。そのため、太陽光の進入方向Awが光入射面2aと直交する方向に対する傾斜角度が比較的小さくなる。そのため、多くの赤外線が遮熱部材3,3間を通り抜け、光出射面2bに至る。よって、室内温度を高めたい冬季には、光出射面2bから多くの赤外線が室内に入射されることになるため、室内の温度を高めることができる。
【0031】
すなわち、夏季と冬季とにおける太陽の高さの違いを利用して遮熱効果を自動的に変化させることができる。なお、夏季と冬季と例に説明したが、朝夕と昼間においても、太陽の高さの位置が異なるため、上記と同様に、遮熱効果を自動的に変化させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、赤外線発生源、すなわち熱源として太陽を例にとり説明したが、本発明の採光遮熱シートは、太陽に限らず、他の熱源の位置が変化する場合にも、同様に遮熱作用を変化させることができる。
【0033】
遮熱作用効果の説明から明らかなように、遮熱部材3は、遮熱作用を正すものであるが、可視光を透過させる可視光透過性遮熱材料により形成されていてもよい。その場合には、赤外線の光出射面2bからの出射量を小さくして遮熱効果を得ることができるだけでなく、十分な採光を得ることができる。その為には、樹脂としては可視光透過率の高い、例えばシート本体2に用いた樹脂が好ましく、また、熱線遮熱材としての微粒子の直径が、百nmを超えないことが望ましい。
【0034】
本実施形態では、上記遮熱部材3は、横断面形状が細長い矩形であり、長さaと幅wとの比であるアスペクト比を調整することにより、遮熱効果を制御することができる。好ましくは、アスペクト比L/Wは1〜20の範囲であることが望ましい。アスペクト比が1未満の場合には、後述するように遮熱状態とされた場合に遮熱部材3による遮熱領域を充分に広くし難い。他方、アスペクト比が20を超えると、シート本体2の厚みか増加する。従って、薄型化が困難となることがある。また、複数の遮熱部材3は、等間隔に配置されているが、その間隔Dを小さくすることにより、遮熱作用を高めることができる、他方、間隔Dを大きくすることにより採光量を多くすることができる。このように、遮熱部材3の横断面形状や複数の遮熱部材3のピッチを調整することにより、遮熱効果や採光量を高精度に調節することができる。従って、用途や環境に応じて遮熱制御量や採光量を容易に調整することができる。
【0035】
上記遮熱部材3の幅Wは、50μm以下であることが好ましい。遮熱部材3の幅が50μmよりも大きくなると、人間の目で見た場合に遮熱部材3が光透過時に目立ちやすくなり、かつ遮熱状態においては可視光線透過率が低下するおそれがある。
【0036】
図2〜図6は、本発明の第2の実施形態〜第6の実施形態に係る各採光遮熱シートの正面断面図である。
【0037】
図2に示すように、第2の実施形態の採光遮熱シート21では、シート本体2に用いられている複数の遮熱部材22の横断面形状が台形とされている。より具体的には、光入射面2a側が下底、先端が上底である等脚台形の横断面形状を有するように遮熱部材22が設けられている。
【0038】
他方、図3に示す第3の実施形態の採光遮熱シート31では、複数の遮熱部材32は、横断面形状が、側面が曲面状の楔形形状とされている。さらに、図4に示す第4の実施形態の採光遮熱シート41では、遮熱部材42は、光入射面2aに位置する三角形形状の横断面形状を有する。図2〜図4に示したように、本発明の採光遮熱シートでは、遮熱部材の横断面形状は細長い矩形に限らず、様々な形状とすることができる。
【0039】
また、図5は、本発明の第5の実施形態に係る採光遮熱シート51を示す正面断面図である。第5の実施形態の採光遮熱シート51では、シート本体2の光入射面2aから光出射面2bに貫くように複数の遮熱部材52が形成されている。本実施形態においても、遮熱部材52の延びる方向は光入射面2aと直交する方向とされている。図5に示すように、遮熱部材は光入射面2aと光出射面2bとを貫くように設けられてもよい。
【0040】
また、図1〜図5に示した構造では、遮熱部材の延びる方向は光入射面2aと直交する方向であったが、図6に示す第6の実施形態の採光遮熱シート61のように、複数の遮熱部材62の延びる方向は、光入射面2aと直交する方向ではなく、直交する方向に対して傾斜されている方向であってもよい。すなわち、本発明においては、遮熱部材の延びる方向は、光入射面2aと交差する方向であれば、その方向は特に限定されるものではない。
【0041】
従って、使用環境によって、すなわち熱源の位置の変化の程度や熱源の方向等に応じ、遮熱部材の延びる方向は光入射面2aに交差する方向において適宜選択すればよい。
【0042】
また、第1〜第6の実施形態では、複数の遮熱部材は等間隔に配置されていたが、必ずしも等間隔に配置される必要はない。
【0043】
さらに、複数の遮熱部材は、光入射面2aに至っている必要は必ずしもなく、シート本体2内に埋設されていてもよく、あるいは一端が光出射面2bにのみ露出していてもよい。
【0044】
図7(a)は、本発明の第1の実施形態に係る採光遮熱シート1を用いた合わせガラスを示す断面図である。合わせガラス71では、採光遮熱シート1の両面にガラス基板72,73が積層されている。このような一対のガラス基板72,73間に採光遮熱シート1を配置することにより、合わせガラス71を構成することができ、本発明に従って遮熱効果を自動的に変化させ得る窓ガラスなどを提供することができる。なお、図7(b)に示すように、ガラス74の片面に上記採光遮熱シート1を積層し、それによって本発明の遮熱制御効果が得られる窓ガラスを構成してもよい。
【0045】
なお、本発明の採光遮熱シート1の製造方法は特に限定されず、例えば、図8(a)及び(b)に示す金型81を用い、上記シート本体2を得るとこができる。ここでは、金型81は、ベースプレート82の上面に上記遮熱部材3と同じ形状を有する複数の薄板状の凸部83が等間隔で配置された構造を有する。金型81上に、溶融樹脂を供給し、硬化させ、シート本体2を得ることができる。このシート本体2の上記薄板状の凸部83に応じた部分に形成されている凸部に、遮熱部材3を構成する材料を充填することにより、採光遮熱シート1を得ることができる。
【0046】
上記金型81を用いた製造方法に限らず、上記遮熱部材3が充填される凹部を反転させた凸部を外周面を有する型ロールを用い、溶融押出された樹脂を型ロールに密着させることにより、シート本体2を形成してもよい。その他、フォトリソグラフィー法などにより、凹部を有するシート本体2を得てもよい。
【0047】
以下、本発明の採光遮熱シートの具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明の効果を明らかにする。
【0048】
(実施例)
図1に示したシート本体2の光入射面2a側の形状を反転させた形状の金型面を有するニッケルからなる図8(a),(b)に示す金型を用意した。すなわち、ニッケルからなり、平板状の50mm×50mmのベースプレート82上に、横断面形状が矩形の凸部83が形成されており、凸部83の幅Wが10μm、高さh=100μm、凸部間の間隔D=100μmである金型を用意した。この金型の表面をフッ素系離型剤で処理した後、アクリル樹脂板(日東樹脂工業社製、商品名:クラレックス、厚み0.3mmの平坦なシート)を金型温度180℃、プレス圧力4MPaとしてプレス成形し、上記アクリル樹脂板の表面に凹部を形成し、シート本体を得た。このシート本体の表面形状を観察すると、上記金型の凸部が反転された凹部が正確に転写されていた。
【0049】
他方、遮熱部材を形成するための樹脂組成物として、光重合性官能基(アクリレート基)を10mol%含有するアクリルポリマー(ポリn−ブチルアクリレート、Mn=20,000、MWD=2.5)を20重量部と、錫ドープ酸化インジウム(平均一次粒子径:20nm)50重量部と、イルガキュアー651(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)7.0重量部とを含む遮熱部材形成用組成物を用意した。
【0050】
上記シート本体の凸部領域をマスキングし、上記遮熱部材形成用組成物を印刷し、凹部に組成物を充填し、10,000mJ/cmの量の紫外線を照射し、遮熱部材形成用組成物を硬化した。しかる後、マスキングに用いたマスクを除去した。このようにして、光と遮熱部材が凹部に充填された実施例の採光遮熱シートを得た。
【0051】
(比較例)
特許文献1の実施例1に準じ、Nbを水酸化カリウム水溶液に仕込みニオブ水酸化物を沈殿させ、チタニル硫酸の水溶液に、Nb換算で3%(Ti換算で97%)になるように添加した。得られた沈殿物をフィルター濾過により回収し、蒸留水で2回洗浄し、乾燥させた後に、空気中、400℃で焼成して、NbドープTiO微粒子を得た。この微粒子微粒子1重量部をトリエチレングリコール−2−ジエチルヘキサノエート40重量部に加え、さらにリシノール酸0.1重量部を加えた後ビーズミルを用いて分散させた。
重合度1700、ブチラール化度69モル%のポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、調製された可塑剤分散液41重量部を加え、さらにMg含有量が0.006重量%となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機を用いて150℃で30分間プレス成形を行って膜厚0.76mmのシートを製造した。
【0052】
(実施例及び比較例の評価)
実施例及び比較例の遮熱シートを、それぞれ一対のガラス板間に挟持し、合わせガラスを作製した。この合わせガラスの300〜2100nmの波長の光透過率を自記式分光光度計(日立製作所社製、品番:U−4000)で測定した。この測定結果に基づき、JIS R 3106「板ガラス類の透過率・反射率・日射熱取得率の試験方法」に従って、上記合わせガラスの380nm〜700nmにおける可視光線透過率(Tv)、及び300〜2100nmの日射透過率(Ts)を求めた。その場合、JIS R 3106に従って可視光透過率(Tv)及び日射透過率(Ts)を測定すると共に、光入射面から45°傾いた方向から光を入射させ、同様に、可視光透過率(Tv45)及び日射透過率(Ts45)を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示す通り、実施例に於いて、光入射面に対して45°傾いた方向から入る日射透過率(Ts45)のみ大きく下がっており、斜め方向からの熱線に対しての遮蔽性の高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0055】
1…採光遮熱シート
2…シート本体
2a…光入射面
2b…光出射面
3…遮熱部材
21…採光遮熱シート
22…遮熱部材
31…採光遮熱シート
32…遮熱部材
41…採光遮熱シート
42…遮熱部材
51…採光遮熱シート
52…遮熱部材
61…採光遮熱シート
62…遮熱部材
71…ガラス
72,73…ガラス基板
74…ガラス
81…金型
82…ベースプレート
83…凸部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面と、光入射面と対向する光出射面とを有する透光性のシート本体と、
前記シート本体内に設けられており、前記光入射面と交差する方向に延びる複数の遮熱部材とを備え、光入射面から入射された光が光出射面の一部の領域から出射されるように、前記複数の遮熱部材が前記光入射面の面方向において複数配置されている、採光遮熱シート。
【請求項2】
前記遮光部材が延びる方向が、前記光入射面と直交する方向である、請求項1に記載の採光遮熱シート。
【請求項3】
前記遮熱部材が、樹脂と、熱線遮蔽機能を有する遮光性酸化物粒子及び/または熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物を含有する樹脂組成物からなる、請求項1または2に記載の採光遮熱シート。
【請求項4】
一対のガラス板と、該一対のガラス板内間に挟持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮熱シートとを備える、合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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