説明

採取用具及び採取方法

【課題】サンプルの採取に際して、利用者が屈曲操作を容易に行えるようにし得る、採取用具を提供する。
【解決手段】対象物の一部を採取するための採取用具10を用いる。採取用具10は、一方向に延びる本体部1と、対象物の採取を行うための採取部2とを備えている。採取部2は、本体部1の先端部分に設けられている。本体部1の先端部分以外の部分には、本体部1が延びる一方向と異なる方向における長さが、先端部分よりも長く設定された拡幅部分6が設けられている。拡幅部分6は、本体部1の先端からの距離が一方向における全体の長さの半分となる位置よりも、先端部分側に設けられているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物からサンプルを採取するための採取用具、それを用いた採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療の分野では、生体の検査のために、生体の一部、及び排泄物がサンプルとして採取され、サンプルに対して種々の分析が行われている。代表的な生体の検査としては、例えば、「検便」が知られている。
【0003】
検便では、排泄された便から設定量が、サンプルとして採取される。そして、このとき、サンプル採取用具として、いわゆる「採便棒」が用いられる。採便棒としては、例えば、図9(a)及び(b)に示す採便棒が知られている。図9(a)は、従来からの採便棒を示す図であり、図9(b)は従来からの採便棒の使用方法を示す図である。
【0004】
図9(a)に示すように、採便棒40の先端部分には、リング状の複数の突起41が一定間隔で設けられている。利用者は、図4(b)に示すように、採便棒40の基端部分を保持し、先端部分で便30をなぞるように操作する。この操作の結果、隣接する突起41間の溝42に便30が充填され、結果、所定量の便が採取される。
【0005】
但し、上記図9(a)及び(b)に示した採便棒40では、便30の採取の際に、採便棒40と便30とを平行に近い状態とする必要があり、利用者20の手が便30に近づいた状況になる。このため、採便棒30を用いた場合には、採取の際に、利用者20の手が便30に接触して汚れてしまう可能性が高くなっている。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1は、棒状の本体が、先端部分と基端部分との間で屈曲している採便棒を提案している。特許文献1に開示された採便棒では、突起が設けられた先端部分と、利用者が把持する基端部分とは角度をなしている。このため、上記図9(a)及び(b)に示した採便棒40と異なり、利用者の手が便に近づく状況が回避され、利用者の手と便とが接触し難くなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第2607686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された採便棒には、以下の問題点がある。先ず、屈曲角度は採取が容易となるように設定する必要があるが、最適な屈曲角度は、便の硬さ、及び便の形状等によって異なっている。これに対して、特許文献1に開示された採便棒では、屈曲角度は固定されているため、便の状態によっては、サンプルの採取が困難になる可能性がある。
【0009】
また、サンプルの採取後、採便棒は、溶液の入った採便容器に収容されるが、採便棒が屈曲していると、採便容器への収容が難しくなり、利用者における操作性が低下してしまう。
【0010】
一方、採便棒の屈曲角度の固定に起因する上記問題は、図9(a)及び(b)に示した
採便棒41に可撓性を付与しておき、利用者が採便棒41を屈曲させながらサンプルの採取を行うことで解決できるとも考えられる。
【0011】
しかしながら、図9(a)及び(b)に示した採便棒41を屈曲させるためには、利用者は指先に力をかける必要がある。このため、採便棒に単に可撓性を付与しただけでは、屈曲させている際に、利用者の指が採便棒41から外れてしまい、結局、手が便に接触する可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、上記問題を解消し、サンプルの採取に際して、利用者が屈曲操作を容易に行えるようにし得る、採取用具、及びそれを用いた採取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明における採取用具は、対象物の一部を採取するための採取用具であって、一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられ、前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
このように、上記本発明における採取用具では、採取部の基端側(利用者側)に拡幅部分が設けられているため、利用者が採取用具に荷重をかけやすくなっており、利用者は、採取用具を簡単に屈曲させることができる。また、この結果、利用者が、荷重をかけている際に、指が採取用具から外れてしまう、といった事態の発生も抑制される。
【0015】
上記本発明における採取用具においては、前記一方向と異なる方向は、前記一方向に直交する方向であるのが良い。この場合は、採取用具への荷重がよりかけやすくなる。また、上記本発明における採取用具においては、前記拡幅部分は、前記本体部の先端からの距離が前記一方向における全体の長さの半分となる位置よりも、前記先端部分側に設けられているのが好ましい。この場合、利用者は、採取用具に対して効率良く荷重をかけることができる。
【0016】
また、上記本発明における採取用具は、前記拡幅部分に、1又は2以上の凹部が設けられている態様とするのが好ましい。更に、この態様では、前記拡幅部分に、2以上の前記凹部が設けられており、前記凹部それぞれは、隣接する他の凹部との距離が一定となった状態で配置されていても良い。また、上記本発明における採取用具は、前記拡幅部分の前記先端部分側の位置に、突起が設けられている態様とするのも好ましい。
【0017】
上記の二つの態様によれば、利用者の荷重をかけるための指を確実に採取用具1に設置できるので、利用者は、採取用具に対してより効率的に荷重をかけることができる。更に、これらの態様によれば、利用者の指が滑る等して対象物に接触してしまう事態の発生を回避できる。
【0018】
加えて、上記本発明における採取用具は、前記採取部が、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、前記先端部分に設けられた前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている態様とするのも好ましい。この態様によれば、利用者は、対象物の硬さに影響されることなく、効率良く、サンプルを採取できる。
【0019】
上記態様においては、前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、前記先端部分に設けられた前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置しているのが好ましい。この場合は、採取部の作成を容易なものとすることができる。
【0020】
また、上記本発明における採取用具においては、前記本体部が、樹脂材料及び金属材料のうち少なくとも一方を用いて形成され、可撓性を有しているのが好ましい。
【0021】
また、上記目的を達成するため、本発明における第1の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられ、前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0022】
上記第1の採取方法によれば、対象物は、開口部の周辺の部分によって削り取られる。よって、対象物が硬いものであっても、利用者は、簡単にサンプルを取得できる。また、凹部によってサンプルを計量できるので、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0023】
更に、上記目的を達成するため、本発明における第2の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられ、前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0024】
第2の採取方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。また、第2の採取方法においても、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明における採取用具及び採取方法によれば、サンプルの採取に際して、利用者が屈曲操作を容易に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例(第1例)を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した採取用具の採取部の構造を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、図3(a)は採取部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は採取部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第2例)を示す図である。このうち、図5(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)中の切断線B−B´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第3例)を示す図である。このうち、図6(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)中の切断線C−C´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第4例)を示す図である。このうち、図7(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)中の切断線D−D´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第5例)を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は、従来からの採便棒を示す図であり、図9(b)は従来からの採便棒の使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における採取用具及び採取方法について、図1〜図8を参照しながら説明する。最初に、図1を用いて、本実施の形態における採取用具の一例(第1例)の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例(第1例)を示す斜視図である。
【0028】
図1に示す本実施の形態における採取用具10は、対象物の一部を採取するための採取用具である。本実施の形態では、対象物としては、便が想定されており、採取用具10は、検便用の便のサンプル採取に用いることができる。以降においては、対象物が便であるとして説明を行う。
【0029】
図1に示すように、採取用具10は、一方向に延びる本体部1と、対象物、即ち、便の採取を行うための採取部2とを備えている。採取部2は、本体部1の先端部分に設けられている。また、本体部2の先端部分以外の部分には、拡幅部分6が設けられている。拡幅部分6では、本体部が延びる一方向(即ち、長手方向)と異なる方向における長さは、先端部分における幅方向の長さよりも長く設定されている。本実施の形態では、一方向と異なる方向は、一方向に直交する方向、即ち、幅方向であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
このように、採取用具10には、採取部2の基端側に、幅の広くなった部分が設けられているので、利用者による採取用具10への荷重が容易となる。よって、利用者は、採取用具10を簡単に屈曲させることができる。更に、この結果、利用者が、荷重をかけている際に、指が採取用具10から外れてしまう、といった事態の発生も抑制される。
【0031】
なお、後述する図3(b)及び図4(b)に示すように、本体部1において、利用者が使用時に保持する側を「基端側」とし、便に接触する側を先端側(又は先端部分側)とする。先端部分とは、本体部1において、使用時に、便に接触することが予想される部分をいう。
【0032】
ここで、図1に加え、図2を用いて、採取用具10の構成を更に具体的に説明する。図2は、図1に示した採取用具の採取部の構造を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【0033】
本実施の形態では、本体部1は、一方向に延びる板状の部分を有している。具体的には
、図1及び図2に示すように、本体部1は、細長い板状に形成されている。また、本実施の形態では、採取部2は、本体部1の先端部分に設けられた凹部3を備えている。凹部3の底4の一部分には、開口部5が設けられている。
【0034】
また、開口部5は、その開口縁が凹部3の基端側の壁面と一致するように設けられている。なお、開口部5の位置は、限定されるものではなく、開口部5は、凹部3の底4における中央部分や先端側の部分に設けられていても良い。但し、後述する使用方法の点から、開口部5の位置は、図1及び図2の例に示すように、凹部3の底4における基端側の部分に設けられているのが好ましい。
【0035】
また、本実施の形態では、凹部3は、板状の部分の一方の面1aに設けられ、凹部3の底4に設けられた開口部5は、板状の部分の他方の面1bに位置している。更に、凹部3は、その底4における厚みが、開口部5に近い程、小さくなるように、形成されている。具体的には、図2に示すように、凹部3の底面には、開口部5に向かって下がる傾斜がつけられている。そして、開口部5の縁を形作っている部分4aは、厚みが薄くなっており、鉋の刃のように構成されている。これは、後述する使用方法を実行した場合に、簡単にサンプルを削りとることができるようにするためである。この点については図3(a)及び(b)を用いて後述する。
【0036】
更に、本実施の形態では、採取用具10の屈曲が可能となるようにするため、本体部1には、可撓性が付与されている。このため、本体部1は、樹脂材料、及び金属材料のいずれかによって、又は両方によって形成されているのが好ましい。なお、本体部1は、可撓性を有しているため、利用者が荷重を除去すると、その弾性力によって元の形状に復帰する。
【0037】
また、採取用具1を屈曲させたときに生じる弾性力により、本体部2の先端部分(凹部3が設けられた部分)は、対象物に対して、強く押し付けられるので、本実施の形態では、サンプルの採取効率が向上する。なお、この点についても、図3(a)及び(b)、図4(a)及び(b)を用いて後述する。
【0038】
本体部1の形成材料の具体例としては、樹脂材料、金属材料、これらを組み合わせた材料が挙げられる。また、樹脂材料の好ましい例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニール樹脂等が挙げられる。更に、金属材料の好ましい例としては、ステンレス(例えば、バネ材料として用いられる、SUS301CSP、SUS304CSP、SUS631CSP等)、リン青銅(例えば、C5210P)等が挙げられる。
【0039】
また、本実施の形態では、凹部3の容積は、採取が求められる量に設定されており、凹部3がいっぱいになるように採取を行えば、採取量は設定量となる。このような構成により、採取用具10を用いれば、利用者は、対象物、即ち、便の硬さに影響されることなく、設定量のサンプルを簡単に採取することができる。
【0040】
次に、本実施の形態における採取用具10の使用方法について図3及び図4を用いて説明する。本実施の形態における採取用具10では、以下に示すように二つの使用方法が主に利用される。また、本実施の形態における採取方法は、採取用具1を使用することによって実施される。よって、以下に示す二つの使用方法は、それぞれ、本実施の形態における採取方法に相当する。
【0041】
先ず、図3を用いて第1の使用方法(第1の採取方法)について説明する。図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、
図3(a)は採取部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0042】
図3(a)及び(b)に示すように、第1の使用方法では、先ず、利用者20は、凹部3の底に設けられた開口部5を便30に向けた状態で、拡幅部分6及びその周辺で採取用具10を保持する。次に、利用者20は、拡幅部分6を指で押さえて、採取用具10を屈曲させ、そして、凹部3の底に設けられた開口部5を便30に接触させた状態で、採取用具1を、手元に引き寄せるように動かす。
【0043】
これにより、便30の一部30aは、開口部5の縁を形作っている部分4aによって剪断される。第1の使用方法では、採取用具10は、開口部5を形作っている部分4aを刃とする鉋のように機能し、便30を削り取ることができる。
【0044】
また、利用者20による押圧は、拡幅部分6によって、確実、且つ、安定的に行われるので、採取用具10には安定して弾性力が生じる。このため、採取部2は、便30に継続して押し付けられ、便30の一部30aは、確実に開口部5へと導かれ、剪断される。
【0045】
このように、第1の使用方法は、便30の硬さの程度に関係なく利用できるが、便30を剪断できるため、特に、便が硬い場合に有用である。また、便30の削り取りを、凹部3内がいっぱいになるまで行うことで、設定量の便30の採取が達成される。
【0046】
また、図2に示すように、板状の部分の厚みをT、凹部3の底4における厚みの最小値をtとすると、板状の部分の厚みTに対する、底4における厚みの最小値tの比(t/T)は、0.01〜0.5、特には、0.05〜0.1に設定されているのが好ましい。このような設定を行った場合は、上述の機能を有効に発揮させることが可能となる。なお、底4における厚みの最小値tが小さい程、便を剪断する能力は向上するが、部分4aが摩耗したり、欠損したりする可能性が高まる。tの値の設定は、摩耗や欠損を考慮して行うのが好ましい。
【0047】
また、第2の使用方法(第2の採取方法)は、図4に示す通りである。図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は採取部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0048】
図4(a)及び(b)に示すように、第2の使用方法では、先ず、利用者20は、第1の使用方法とは反対に、凹部3の開口を便30に向け、開口部5を便側の反対側に向けた状態で、拡幅部分6及びその周辺で採取用具10を保持する。次に、利用者20は、拡幅部分6を指で押さえて、採取用具10を屈曲させ、そして、凹部3の中に便30を侵入させた状態で、採取用具10を、手元に引き寄せるように動かす。
【0049】
これにより、便30の一部30aは、凹部3の開口の縁で剪断されながら、凹部3の中に充填される。このとき、凹部3が便30でいっぱいになるようにすれば、採取された便30の量は設定量となる。
【0050】
また、第2の使用方法でも、利用者20による押圧は、拡幅部分6によって、確実、且つ、安定的に行われるので、採取用具10には安定して弾性力が生じる。このため、採取部2は、便30に継続して押し付けられ、便30の一部30aは、確実に凹部3の開口からその中へと導かれる。
【0051】
第2の使用方法では、便30は、第1の使用方法と異なり、凹部3の中に、その開口を
介して直接充填される。このため、第2の使用方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。但し、第2の使用方法は、対象となる便30が硬すぎない場合に有用となる。便30が硬すぎて、その粘着性が乏しい場合は、凹部3内への充填が困難となるからである。
【0052】
このように、図3及び図4を用いて説明したように、採取用具10を用いれば、利用者は、屈曲操作を容易に行えることができ、確実、且つ、安定的に採取用具を屈曲させることができる。また、利用者は、便の状態に応じて、採取用具10の屈曲角度を調整でき、更に、この調整も拡幅部分6があるため簡単に行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態では、図1に示すように、拡幅部分6は、本体部1の先端からの距離が長手方向における全体の長さ(全長)Lの半分となる位置よりも、先端部分側に設けられているのが好ましい。この場合は、採取部2を便30(図3及び図4参照)に確実に押しつけることができ、採取部2による便の採取を確実に行うことができる。なお、全長Lの半分となる位置は、図1において点Cで示している。
【0054】
次に、本実施の形態における採取用具の他の例の構成について図5〜図8を用いて説明する。先ず、図5を用いて本実施の形態における採取用具の第2例について説明する。図5(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第2例)を示す図である。このうち、図5(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)中の切断線B−B´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【0055】
図5(a)及び(b)に示す第2例では、拡幅部分6に凹部7が設けられている。凹部7は、本体部1の板状の部分の一方の面1aと他方の面1bとの両方に一つずつ設けられている。また、凹部7の底面7aには、利用者が指を配置し易いように傾斜が設けられている。
【0056】
このような構成により、第2例によれば、利用者は、荷重をかけるための指を確実に採取用具10に設置でき、採取用具10に対してより効率的に荷重をかけることができる。また、第2例によれば、利用者の指が滑る等して便に接触してしまう事態の発生も回避できる。
【0057】
なお、傾斜の方向は特に限定されるものではなく、例えば、第2例では、傾斜は、先端部分に近づくほど凹部7の深さが深くなるように設けられている。また、凹部7は、底面7aが傾斜しないように形成されていても良い。更に、凹部7の深さは、採取用具10の使用状況等に応じて適宜設定される。また、凹部7は、本体部1の一方の面のみに形成されていても良い。
【0058】
次に、図6を用いて本実施の形態における採取用具の第3例について説明する。図6(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第3例)を示す図である。このうち、図6(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)中の切断線C−C´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【0059】
図6(a)及び(b)に示す第3例では、拡幅部分6の先端部分側の位置に、突起8が設けられている。また、突起8は、第2例の凹部7と同様に、本体部1の面1a側と面1b側との両方に設けられている。具体的には、突起8は、本体部1の法線方向からそれを見たときに円弧状を呈するように形成されている。
【0060】
このような構成により、第3例によっても、利用者は、荷重をかけるための指を確実に採取用具10に設置でき、採取用具10に対してより効率的に荷重をかけることができる
。更に、採取時において、利用者の指が滑る等して便に接触してしまう事態の発生も回避できる。
【0061】
なお、突起8の高さは、採取用具10の使用状況等に応じて適宜設定される。また、突起8の形状は限定されるものではない。突起8は、その他、本体部1の法線方向からそれを見たときに直線状を呈するように形成されていても良い。更に、突起8は、本体部1の一方の面のみに形成されていても良い。
【0062】
次に、図7を用いて本実施の形態における採取用具の第4例について説明する。図7(a)及び(b)は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第4例)を示す図である。このうち、図7(a)は、採取用具の全体を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)中の切断線D−D´に沿って切断して得られた断面を示す断面図である。
【0063】
図7(a)及び(b)に示す第4例では、拡幅部分6の一方の面において、2以上の凹部9が設けられている。また、凹部9は、第2例の凹部7と同様に、本体部1の面1a側と面1b側との両方に設けられている。この多数の2以上の凹部9は、隣接する凹部9間の距離が一定となった状態で整然と配置されている。具体的には、各凹部9は、同一の円形の開口形状を有しており、行列状に配置されている。
【0064】
このような構成により、第4例によれば、利用者の指と拡幅部分6との間の摩擦力が高まり、利用者が荷重をかけているときに、指が滑りにくくなる。よって、第4例によっても、利用者は、荷重をかけるための指を確実に採取用具10に設置でき、採取用具10に対してより効率的に荷重をかけることができる。更に、採取時において、利用者の指が滑る等して便に接触してしまう事態の発生も回避できる。
【0065】
なお、凹部9の開口形状、開口の大きさ、深さ等は、採取用具10の使用状況等に応じて適宜設定される。また、凹部9の個数や配置態様も限定されるものではない。更に、凹部9は、本体部1の一方の面のみに形成されていても良い。
【0066】
ところで、第1例〜第4例では、本体部1は全て板状に形成されているが、本実施の形態では、本体部1は、一方向に延びる形状であれば良く、例えば、断面が円形状、三角形状、矩形状等の棒状であっても良い。また、採取部2は、特に限定されるものではなく、例えば、図9に示した採便棒40と同様に、複数条の突起41を備えていても良い。
【0067】
ここで、本体部が板状でなく、且つ、採取部が凹部を有していない例を第5例として、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例(第5例)を示す斜視図である。
【0068】
図8に示す採取用具11は、図1〜図10に示した採取用具10と異なり、断面が円形の棒状の本体部1を備えている。拡幅部分6は、棒状の本体部1の側面の対向する2箇所から突き出すように形成されている。
【0069】
また、採取用具11において、採取部2は、リング状の複数の突起12を備えている。複数の突起12は、一定間隔をおいて本体部1の先端部分に長手方向に沿って配置されている。採取部2の構成は、図9(a)及び(b)に示した例と同様である。よって、採取部2を便に擦りつけることによって、突起12間の溝13に便が充填され、所定量の便が採取される。
【0070】
但し、図8に示す採取用具11が用いられた場合は、図9(a)及び(b)に示した例と異なり、利用者は、拡幅部分6を押して、採取用具10を屈曲させることができる。そ
して、利用者は、採取用具10を屈曲させながら、採取部2を便に擦りつけることができる。このため、利用者の手が便に近づいてしまう事態は回避される。
【0071】
なお、以上の説明では、上述したように、サンプルの採取対象となる対象物が便である場合について述べているが、本実施の形態では、対象物は便のみに限定されず、以下のものを対象物とすることもできる。具体的には、他の生体に関連する対象物としては、生体の粘膜、皮膚の角質、細胞等が挙げられる。また、対象物は、生体に関連する物に限定されず、土壌、食品、化粧品等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明によれば、採取用具によってサンプルの採取を行う際において、利用者が採取用具の屈曲操作を容易に行えるようにすることができ、結果、サンプルの採取が容易となる。本発明は、分析対象物からのサンプルの採取に用いられる採取用具に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 本体部
1a、1b 本体部の主面
2 採取部
3 凹部
4 凹部の底
4a 底面
5 開口部
6 拡幅部分
7 拡幅部分に設けられた凹部
7a 凹部の底面
8 突起
9 拡幅部分に設けられた凹部
10 採取用具
11 採取用具
12 リング状の突起
13 溝
20 利用者
30 対象物(便)
30a 対象物(便)の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の一部を採取するための採取用具であって、
一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、
前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられ、
前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、ことを特徴とする採取用具。
【請求項2】
前記一方向と異なる方向が、前記一方向に直交する方向である、請求項1に記載の採取用具。
【請求項3】
前記拡幅部分は、前記本体部の先端からの距離が前記一方向における全体の長さの半分となる位置よりも、前記先端部分側に設けられている、請求項1または2に記載の採取用具。
【請求項4】
前記拡幅部分に、1又は2以上の凹部が設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の採取用具。
【請求項5】
前記拡幅部分に、2以上の前記凹部が設けられており、前記凹部それぞれは、隣接する他の凹部との距離が一定となった状態で配置されている、請求項4に記載の採取用具。
【請求項6】
前記拡幅部分の前記先端部分側の位置に、突起が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の採取用具。
【請求項7】
前記採取部が、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、
前記先端部分に設けられた前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、請求項1〜6のいずれかに記載の採取用具。
【請求項8】
前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、
前記先端部分に設けられた前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、
前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置している、請求項5に記載の採取用具。
【請求項9】
前記本体部が、樹脂材料及び金属材料のうち少なくとも一方を用いて形成され、可撓性を有している、請求項1〜8のいずれかに記載の採取用具。
【請求項10】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられ、前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項11】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記対象物の採取を行うための採取部とを備え、前記採取部は、前記本体部の先端部分に設けられた凹部を備え、前記凹部の底の一部分には、開口部
が設けられ、前記本体部の前記先端部分以外の部分には、前記一方向と異なる方向における長さが、前記先端部分よりも長く設定された拡幅部分が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59052(P2011−59052A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211702(P2009−211702)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】