説明

採水装置

【課題】複雑な構造の内管や外管を使用せずに水封用ロッドと採水管を組み合わせた簡単な構造の、深度毎に連続的に採水が可能な採水装置を提供する。
【解決手段】縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な水封用ロッド1と、水封用ロッド1を通して縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な採水管2とからなる採水装置であって、水封用ロッド1はその上端に上部接続具9、下端には下部接続具10が固定され、下部接続具10と上部接続具9が接続可能に形成され、下部接続具10の外周には採水管2の下部の内周面に接して水封するOリング13が取り付けられ、最下位の水封用ロッド1の下部接続具10には採水管2を支持する採水管支持用底蓋3取り付けられ、上部接続具9には水封用ロッド1支持する落下防止用ピン14を挿入するピン挿入孔15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔、井戸、海、河川などの水中に降ろして各深度の水を一度で採水することができる採水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物、重金属、農薬、油などによる地下水汚染を把握するためボーリング孔などの水中に採水装置を降ろして採水し、汚染物質や濃度を分析している。また、海洋汚染では特に大都市に近接した閉鎖性海域における富栄養化の調査や河川の生態系に影響する水質調査も同様である。
【0003】
従来の採水装置では、所定の深度で一箇所のみの採水装置がほとんどであり、深度毎に連続的して採水できるものは見られなかった。そのため各深度の採水には手間がかかっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、ボーリング孔や井戸に降ろして深度毎の地下水を一工程で採水することができる地下水採水装置を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
前記特許文献1に記載された地下水採水装置は、ボーリング孔に降ろされて深度毎の地下水を採水する地下水採水装置において、ボーリング孔内に先に降ろされて地下水が採水される縦方向に接続・分離可能な有底の内管と、接続された各内管に地下水が採水された後に内管を取り囲んでボーリング孔に降ろされる縦方向に接続・分離可能な外管とからなる。前記内管は、最下位の内管がその下端に最下位の外管を支持する外管支持用フランジを有し、前記内管の上部には内管のボーリング孔への挿入時および引き上げ時に内管の落下を防止するためにボーリング孔の開口部を取り囲んで設置された環状の開口部カラーに支持される落下防止用ピンを挿入するピン挿入孔が対向して形成されるとともに、地下水が流入流出する通水開口が設けられ、前記外管は、その先端部に、ボーリング孔内で各内管を取り囲んで水封した状態にする、内管の外周に接する幅のOリングが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4187226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の採水装置は、内管と外管で構成されているが、内管は上部が開放された有底の筒状の容器の外周に地下水が通るスリット、孔、メッシュなどの通水開口を設け、内管どうしを螺合により接続するために、上端の外周に外ネジおよび下端の内周に内ネジを形成する必要がある。また、外管は、上端の外周に外ネジおよび下端の内周に内ネジを形成し、下端の内周に段部を形成し、Oリングを取り付ける必要がある。そのため、内管及び外管はいずれも形状、構造が複雑となって製作に手間がかかり、製作コストも高くついていた。
【0008】
また、外管の先端部に設けるOリングは、水漏れを防ぐため、上下の外管の外ネジと内ネジの締め付けにより内管との接触の程度を調整して固定しなくてはならないため、締め付けによるセッティングに手間がかかっていた。
【0009】
そこで、本発明は、複雑な形状の構造の内管やOリングを備えた外管を使用せずに、水封用ロッドと採水管を組み合わせた簡単な構造の、深度毎に連続的に採水が可能な採水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の採水装置は、縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な水封用ロッドと、前記水封用ロッドを通して縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な採水管とからなる、水中に降ろされて深度毎の水を採水する採水装置であって、前記水封用ロッドは、その上端には上部接続具が固定されるとともに、下端には下部接続具が固定され、接続される上下の水封用ロッドにおいて上の水封用ロッドの前記下部接続具とその下の水封用ロッドの前記上部接続具が接続可能に形成され、前記下部接続具の外周には前記採水管の下部の内周面に接して水封するOリングが取り付けられ、最下位の前記水封用ロッドの前記下部接続具には最下位の前記採水管を支持する採水管支持用底蓋が取り付けられ、前記上部接続具は前記水封用ロッドの下降時および引き上げ時に前記水封用ロッドの落下を防止する前記水封用ロッドを支持する落下防止用ピンを挿入するピン挿入孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の採水装置は、従来の前記特許文献1に記載された複雑な構造の内管、外管を使用をやめて加工部分の少ない形状の水封用ロッドと採水管の組み合わせで採水管の下部を水封するため、構造が簡単で且つ手間を掛けることなく容易に組み立て、採水が可能となる。また、内管及び外管を利用した採水装置に比べて加工部分の少ないので、製作も容易でありコストを低減させることができる。
【0012】
従来の前記特許文献1では外管どうしの締め付けでOリングによる内管との接触の程度を調整するためセッティングに手間がかかっていたが、本発明では水封用ロッドの下部接続具の外周に採水管の下部の内周面に接するOリングが取り付けられているので、Oリングの調整が不要となり、セッティングに手間がかからない。
【0013】
本発明の採水装置は、引き上げ時に採水管が規定長さで独立して水封状態の採水器となっているので、所定深度での地下水を確実に採水することができる。
【0014】
本発明の採水装置は水封用ロッドと採水管がネジの接続により自由に延長・短縮することができるので、あらゆる深度に対応することが可能となる。
【0015】
本発明の採水装置は、水封用ロッドどうしおよび採水管どうしをネジで接続する簡単な構造なので、深度が浅い場合は、軽いので手作業で保持しながら簡単な操作で1人でも作業可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の採水装置をボーリング孔にセットした状態を示す模式図である。
【図2】本発明の採水装置の採水管と水封用ロッドを示す分解斜視図である。
【図3】(a)は上下の採水管を接続した断面図、(b)は採水管を分離し、落下防止ピンをピン挿入孔にセットした状態を示す断面図である。
【図4】本発明の採水装置の採水管を降ろす際に使用する採水管保持具の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の採水装置の水封用ロッドを接続する状態を示す図である。
【図6】本発明の採水装置の水封用ロッドを接続してボーリング孔底に下降させた状態を示す図である。
【図7】本発明の採水装置の採水管を接続する手順の説明図である。
【図8】本発明の採水装置の採水管を下降させ採水した状態を示す説明図である。
【図9】本発明の採水装置の採水管の引き上げ深度毎のサンプル採水手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1において、本発明の採水装置は、複数の水封用ロッド1が垂直方向に接続され、この水封用ロッド1を通して取り囲んで採水管2が垂直方向に接続される。採水管2は、最下位の水封用ロッド1aの採水管支持用底蓋3に支持される。接続された水封用ロッド1及び採水管2は、最上位の水封用ロッド1の上部に取り付けられたフック接続具4にフック5を掛けてワイヤ6によりやぐら7からボーリング孔8や井戸の中に吊り下げられてセットされる。海や河川などで採水する場合は、水中にやぐらを組むかあるいは台船にストレーナーが施されたガイド管を固定して、その中で接続された水封用ロッド1及び採水管2を水中に吊り下げてセットする。
【0019】
図1〜図3において、水封用ロッド1は円形断面のパイプや棒材で、ステンレスなどの化学変化しない材質で製作する。水封用ロッド1は、採水する単位深さにより決定し、例えば、長さ1m程度にして約1mごとに採水する。
【0020】
水封用ロッド1の上端には上部接続具9が固定され、下端には下部接続具10が固定される。上部接続具9の上面には外周に外ネジが形成されたネジ棒11が設けられ、下部接続具10の下面には内周に内ネジが形成されたネジ孔12が設けられ、上下の水封用ロッド1は、上部接続具9と下部接続具10が対向し、ネジ棒11とネジ孔12により接続あるいは分離可能となる。
【0021】
下部接続具9の外周には採水管2の下部の内周面に接するOリング13が取り付けられる。Oリング13は、弾性を有する化学変化しないシリコンゴム等を使用する。採水管2内に水封用ロッド1が通されると、採水管2の内周面に接するOリング13が押圧されて採水管2の下部が水封されて、採水深度毎の分離と採水管2の引き上げ後の地上での水の移し替えの際に水漏れを防ぐことができる。
【0022】
下部接続具10のうち、最下位の水封用ロッド1aの下部接続具10には、さらに最下位の採水管2aを支持するため、下部接続具10の外周から張り出した採水管支持用底蓋3が取り付けられる。採水管支持用底蓋3は下部接続具10と一体に形成したり、下部接続具10の下端にネジを形成して螺合させて取り付けたりしてもよい。
【0023】
上部接続具9には、水封用ロッド1の下降時および引き上げ時に水封用ロッド1の落下を防止するために水封用ロッド1を支持する落下防止用ピン14(図3)を挿入するピン挿入孔15が水平方向に貫通している。ピン挿入孔15は、図3(a)に示すように、上下の採水管2を接続した状態では、上の採水管2で取り囲まれ、上下の採水管2の螺合を緩めて上の採水管2を分離すると、図3(b)に示すように、上下の採水管2の間に現れる位置に形成する。ピン挿入孔に挿入された落下防止用ピン14は、採水管2を取り囲んで設置されたピン支持台16に支持される。
【0024】
採水管2は、上下が開放された筒状の管で形成される。採水管2は、上下の採水管2をネジ接合するため、その上端及び下端に外ネジ17又は内ネジ18が形成され、外ネジ17と内ネジ18との螺合により接続される。採水管2はステンレスなどの化学変化しない材質で製作する。採水管2は、その下部の内周面に下部接続具10の外周に取り付けられたOリング13が接して押圧されて下部が塞がれて水封状態となる。
【0025】
図4において、採水管2を降ろす際に使用する採水管保持具19は、採水管2を取り囲むように対向する2分割された、シリコンゴムパッキン等の弾性材20を内周に備えた弾性材保持体21を蝶ナット22により締め付けて採水管2を挟んで保持し、採水管2を取り囲んで設置されたピン支持台16に支持される。
【0026】
次に、図5〜図9により本発明の地下水採水装置の使用手順について説明する。
【0027】
(1)水封用ロッドの接続
図5、図6において、下端に採水管支持用底蓋3を有する最下位の水封用ロッド1aの上部接続具9に形成されているピン挿入孔15に落下防止用ピン14を挿入し、水封用ロッド1をボーリング孔8の開口部の回りに設置されたピン支持台16に支持する。
【0028】
落下防止用ピン14で支持した最下位の水封用ロッド1aの上に接続する2番目の水封用ロッド1を位置決めした後、2番目の水封用ロッド1を回転させて下部接続具10のネジ孔12と最下位の水封用ロッド1の上部接続具9のネジ棒11とを螺合させて接続する。
【0029】
上下の水封用ロッド1の接続が終了すると、フック接続具4を接続した2番目の水封用ロッド1の上部接続具9にフック接続具4を取り付け、フック接続具4にワイヤ6のフック5を掛け、下の水封用ロッド1のピン挿入孔15から落下防止用ピン14を抜き、接続された水封用ロッド1を下降させる。
【0030】
その後、接続された2番目の水封用ロッド1のピン挿入孔15に落下防止用ピン14を通してピン支持台16に支持する。接続された水封用ロッド1は深度が浅い場合は、軽いので手作業で保持しながら下降させることができるが、深度が深くなると下降時の万が一の落下を防ぐため、下降の際には、フック接続具4を水封用ロッド1に取り付け、フック5を掛けて降下させ、水封用ロッド1のピン挿入孔15に落下防止用ピン14を通してピン支持台16に支持するようにする。
【0031】
以上のように、落下防止用ピン14による水封用ロッド1の支持、水封用ロッド1どうしの接続、接続された水封用ロッド1の下降の手順を繰り返して水封用ロッド1を接続していく。この接続作業を最下位の水封用ロッド1がボーリング孔8の底に達するまで繰り返し行う。
【0032】
(2)採水管の接続
深度毎の採水をするために、各水封用ロッド1で採水管2を水封した状態にセッティングする。
【0033】
図7、図8において、まず、最下位の水封用ロッド1を取り囲む最下位の採水管2aに図4に示す採水管保持具19を締め付けて保持した状態で採水管内に水封用ロッド1を通して採水管2をボーリング孔8内に下降させ、採水管保持具19をボーリング孔8の開口部のピン支持台16に支持する。
【0034】
次いで、最下位の採水管2aに接続する2番目の採水管2を採水管に形成されているネジ17,18を螺合させて接続する。2番目の採水管2の接続が完了すると、2番目の採水管2に採水管保持具19を取り付けた後、接続されている最下位の採水管2aに取り付けていた採水管保持具19を外し、接続された2番目の採水管2を、ボーリング孔8内の地下水が撹乱しないようにワイヤ6を緩めてゆっくり下降させる。
【0035】
同様の手順で3番目の採水管2を2番目の採水管2に螺合させ、下降させる。
【0036】
こうして、接続する採水管2への採水管保持具19の取り付け、ボーリング孔8のピン支持台16への採水管保持具19による採水管2の支持、採水管2どうしの接続、接続された採水管2への採水管保持具19の取り付けと前行程の採水管保持具19の取り外し、接続された採水管2の下降、採水管保持具19によるピン支持台16への採水管2の支持の手順を繰り返して採水管2を接続し、水を撹乱しないようにゆっくりと下降させていく。この接続作業を最下位の採水管2が水封用ロッド1の採水管支持用底蓋3に達するまで行う。
【0037】
こうして、各水封用ロッド1が各採水管2に取り囲まれ、各採水管2の内周面は水封用ロッドの下部接続具10に固定されたOリング13との接触により押圧されてそれぞれ水封構造となり、採水管2内には、各深度の水が採水されて保持される。
【0038】
(3)水封用ロッドおよび採水管の引き上げ
図9において、最上位の水封用ロッド1bの上部接続具9にフック接続具4を取り付け、フック接続具4にフック5を掛けてワイヤ6を引くことにより水封用ロッド1aを引き上げる。この引き上げに伴って、水封用ロッド1の採水管支持用底蓋7に支持されている採水管2も引き上げられる。
【0039】
次いで、最上位の採水管2bを回転させて最上位から2番目の採水管2と分離させて上昇させると、最上位から2番目の水封用ロッド1の上部接続具9のピン挿入孔15が現れるので、このピン挿入孔15に落下防止用ピン14を挿入して、ピン支持台16に支持して、最上位から2番目以下の水封用ロッド1と採水管2を支持して落下を防止する。
【0040】
この状態で最上位の水封用ロッド1bを回転させて下部接続具10と上部接続具9によるネジ接続を外して2番目の水封用ロッド1から切り離す。フック5はフック接続具4に自転可能に取り付けられているので、水封用ロッド1の回転にワイヤ6が捩れることはない。
【0041】
最上位の採水管2bの下端は、下部接続具10のOリング9に接して水封状態になっているので、採水した地下水の漏れを抑えることができる。
【0042】
切り離された水封用ロッド1および採水管2を取り出し、採水管2内の水を分析用の試料容器に移す。
【0043】
以上のように、採水管をその下の採水管から切り離し、水封用ロッドをピン挿入孔に落下防止用ピンを挿入して支持した後、上の水封用ロッドをその下の水封用ロッドから切り離し、切り離された採水管内の水を分析用の試料容器に移す手順を繰り返すことにより、深度毎の水を順次採水することができる。
【0044】
水を採取した後の水封用ロッド1および採水管2は、次の採水に備えて水または中性洗剤でブラシ、タオルなどを用いて丁寧に洗浄して、汚染水が残留しないようにする。
【符号の説明】
【0045】
1:水封用ロッド
1a:最下位の水封用ロッド
1b:最上位の水封用ロッド
2:採水管
2a:最下位の採水管
2b:最上位の採水管
3:採水管支持用底蓋
4:フック接続具
5:フック
6:ワイヤ
7:やぐら
8:ボーリング孔
9:上部接続具
10:下部接続具
11:ネジ棒
12:ネジ孔
13:Oリング
14:落下防止用ピン
15:ピン挿入孔
16:ピン支持台
17:外ネジ
18:内ネジ
19:採水管保持具
20:弾性材
21:弾性体保持体
22:蝶ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な水封用ロッドと、前記水封用ロッドを通して縦方向に接続して水中に降ろす複数の接続・分離可能な採水管とからなる、水中に降ろされて深度毎の水を採水する採水装置であって、
前記水封用ロッドは、その上端には上部接続具が固定されるとともに、下端には下部接続具が固定され、接続される上下の水封用ロッドにおいて上の水封用ロッドの前記下部接続具とその下の水封用ロッドの前記上部接続具とが接続可能に形成され、
前記下部接続具の外周には前記採水管の下部の内周面に接して水封するOリングが取り付けられ、最下位の前記水封用ロッドの前記下部接続具には最下位の前記採水管を支持する採水管支持用底蓋が取り付けられ、
前記上部接続具は前記水封用ロッドの下降時および引き上げ時に前記水封用ロッドの落下を防止する前記水封用ロッドを支持する落下防止用ピンを挿入するピン挿入孔が形成されていることを特徴とする採水装置。
【請求項2】
前記上部接続具は水封用ロッドを吊るフックを掛けるフック接続具が接続可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の採水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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