説明

採血初流除去バッグ及び採血初流除去セット並びに血液バッグ

【課題】採血初流除去バッグを逆さにしても、真空採血管に空気を吸い込まずに血液を採取することができる採血初流除去バッグ及び採血初流除去セットを提供すること。
【解決手段】供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、バッグ本体(21)に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)を形成し、バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)を形成し、これによりバッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画するとともに、血液通路(W1)と空気通路(W2)を形成し、前記バッグ本体(21)の外部に前記血液通路(W1)と前記空気通路(W2)を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着した採血初流除去バッグ(BE、BF)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初流血液を採取するとともに、検査用血液の採取を容易に行うことのできる採血初流除去バッグ及び採血初流除去セットに関する。
【背景技術】
【0002】
採血針から採取した血液を血液バッグに導入する際、供血者の穿刺位置をアルコール等で消毒を行うが、消毒を行なっても、皮膚や皮下に存在する細菌が採取した血液の中に混入することがある。
混入した細菌は、細菌の種類によっては、血液バッグを保存している間にも増殖し、細菌の増殖に気づくことなく輸血などに用いられると輸血された患者に感染症などを引き起こし、重篤な事態となるおそれもある。
そこで、採取された血液の細菌汚染防止を図ることができるように、特に採血時の初流の血液を除去するシステムが発明されるようになった。
【0003】
特許文献1には、献血手順の最初において、供血者と収集容器との間の無菌性を保ちながら、検査用血液が採取できるサンプリングシステムが記載されている。
略円形の内部チャンバ54に排出チューブ43を伸長し、排出チューブ43に連絡している出口ポート50には、液体サンプルバイアル70を保持するホルダー60が接続できるように形成されている。また、内部チャンバ54内で、入口ポート46近くまで伸長した排出チューブ43により、容器42からサンプリングバイアルに内部チャンバ54内部の血液等を引き出したとき、サンプリングバイアル内には空気が入らない構造となっている。
【0004】
特許文献2から特許文献5には、採取した採血初流を採取することができる容器連結体について記載されており、採血血液の細菌検査の精度と、細菌検査における作業性とを向上できるとともに、採血血液を使用する際の安全性を向上することができる旨が記載されている。
具体的には、例えば特許文献4において、チューブ15により接続された採血バッグ10と採血針152を有する採血器具1の、チューブ15の途中に形成した分岐コネクタ92にはチューブ91が接続され、その端部には血液を一時的に収納する血液バッグ20が接続されている。このバッグ20には、先端にサンプリングポート71が形成されているチューブ96が接続されている。採血器具1は、採取した初流血液をサンプリングポート71に接続した採血管へ、容易で安全に導入して細菌検査を行うことができるので、細菌検査の信頼性が高くなるというものである。
【0005】
また、特許文献6には、採血バッグ32内に仕切部40を形成することで血液成分の収納室42と血液成分の下層の流出路41に分画した血液バッグが記載されている。仕切部40が形成する通路39の上流近傍には、閉塞部材10、20、43が装着される。
仕切部40で血液バッグ内を分画することにより、遠心分離処理による上層・中間層・下層に分離後、各血液成分が互いに混入しない状態を維持しながら、中間層が血液バッグ32に残るように、上層は上部流出口39aから分離バッグ33へ、下層は閉塞部材10、20、43を破壊し、仕切部40により形成される流出路41を経て流出口39b、分離バッグ34へと分離排出させることができる。
【0006】
特許文献1の発明では、容器42内の血液を採取する際、排出チューブ43により、サンプリングシステムを逆さにしても空気を取り込みにくいが、排出チューブ43内部の空気をサンプリングバイアルに取り込むことを防止できない。また、排出チューブ43を介して血液を取り込むため、サンプリングバイアルには少量ずつしか血液を取り込めず、容器42からサンプリングバイアルへの血液採取作業が迅速に行うことができない。また、容器42内の血液を採取する際、サンプリングシステムを必ず逆さにしなければいけないという制限がある。
特許文献2から特許文献5の発明では、初流血液の除去、血液のサンプリングはでき得るものの、バッグの構成上、供血者からの採血時には、採血用器具が低位置にあるため、作業者が屈みこんだりしゃがんだりといった無理な体勢から、血液をサンプリングしなければならず、特に献血車などの狭い場所で、何度も同様の作業を行なうのは、非常に苦痛となる。
また、バッグに規定量を採血する際にバッグにつけられた目印を注視する必要があり、さらにサンプリングの際も屈みこむなどの姿勢をとるため、ドナーの観察がおろそかになり、ドナーの状態の変化に即座に対応できない恐れがある。
また、特許文献6の、バッグ31内に形成されている仕切部40は、分離した血液の流出口であり、閉塞部材10、20、43の装着を必要としている。
【0007】
【特許文献1】特表2003−505185号公報([特許請求の範囲]、[0026]、[0034])
【特許文献2】特開平10−84942号公報([特許請求の範囲]、図1)
【特許文献3】特開平11−197236号公報([特許請求の範囲]、図1)
【特許文献4】特開2001−17539号公報([0085]〜[0093]、図1)
【特許文献5】特開2005−279289号公報([0037]、図1)
【特許文献6】特許第3179208号公報([請求項3]、[0015]、[0016]、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、採血初流除去バッグに貯留した血液を真空採血管ホルダ等の外部への血液採取手段から真空採血管に採取する際、真空採血管内にどうしても空気を取り込んでしまう点、また空気を取り込まないようにするためには、血液バッグの構成上、採血時には採血初流除去システムが低位置にあることから、作業者が屈みこんだりしゃがんだりといった無理な体勢から血液をサンプリングしなければならない点、また、従来は初流血除去バッグに血液が規定量採血できたことをバッグにつけられた印と血液の液面が一致することによって確認していたが、誤差が大きく、採血に過不足が生じる場合がある点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明は、供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)を形成し、
バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)を形成し、
これによりバッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画するとともに、血液通路(W1)と空気通路(W2)を形成し、
前記バッグ本体(21)の外部に前記血液通路(W1)と前記空気通路(W2)を
閉塞可能な閉塞手段(C)を装着した採血初流除去バッグ(BE、BF)を提供する。
[2]本発明は、供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)と空気の出口(23´)を形成し、
当該空気の出口(23´)に連結チューブ(T7)を介して空気溜容器(S2´)を接続し、
バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)に接続された初流血液導入チューブ(T2)と前記連結チューブ(T7)に、当該チューブ(T2、T7)の流路を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着した採血初流除去バッグ(BG)を提供する。
[3]本発明は、供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)内部に仕切部(P)を形成し、バッグ本体(21)内部を血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
バッグ本体(21)の血液溜(S1)側に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)と空気の出口(23´)を形成し、
バッグ本体(21)の空気溜(S2)側に空気の入口(23´´)を形成し、
前記空気の出口(23´)と前記空気の入口(23´´)を連結チューブ(T7)を介して接続し、
バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)に接続された初流血液導入チューブ(T2)と前記連結チューブ(T7)に、当該チューブ(T2、T7)の流路を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着した採血初流除去バッグ(BH)を提供する。
[4]本発明は、前記血液溜(S1)の容積を、採取すべき血液の規定量と実質的に同じになるように形成した[1]記載の採血初流除去バッグ(BE、BF、BG、BH)を提供する。
[5]本発明は、[1]から[4]のいずれか1項に記載の採血初流除去バッグ(BE、BF、BG、BH)の初流血液の出口(24)に、外部容器への血液採取手段を形成した採血初流除去セット(1E、1F、1G、1H)を提供する。
[6]本発明は、血液を採取する親バッグ(4)と複数の子バッグ(5、6)からなる血液バッグ(2)において、
上流に採血針(8)を接続した採血チューブ(T1)の途中に配置された分岐管(13a)に、初流血液導入チューブ(T2)を接続し、当該初流血液導入チューブ(T2)の下流に[1]から[5]のいずれか1項に記載の採血初流除去セット(1E、1F、1G、1H)を接続した血液バッグ(2)を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の採血初流除去バッグ及び採血初流除去セットは、前記のように構成することにより、
(1)作業者が屈みこんだりといった、無理な体勢にならずに、採血初流除去バッグBから迅速に血液をサンプリングすることができる。
(2)バッグ本体21内に形成した空気通路W2により、初流採血時に空気溜S2に追いやられた空気が血液溜S1へと再び移動することはないので、真空採血管に血液を採取する場合に、採血初流除去バッグBを逆さにしても、真空採血管に空気を吸い込まない。
(3)採血初流除去バッグB内に採取すべき血液の規定量が採血できたことを容易に判定することができる。
(4)血液通路W1と空気通路W2(初流血液導入チューブT2と連結チューブT7)を閉塞した後は、バッグをどのように扱っても、空気溜S2(空気溜容器S2´)内に封じこめた空気が、血液溜S1内へ逆流することもなく、初流血液採取中に真空採血管に空気を吸い込む懸念もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、採血初流除去セット1Eの概略図、図2は、血液バッグ2の概略図である。図3、4、5は、図1のその他の実施例を示す採血初流除去セット1F、1G、1Hの概略図である。
[採血初流除去セット1E、1F、1G、1H]
採血初流除去セット1Eは、採血時等に、供血者の初流血液を採血初流除去バッグBE、BF、BG、BHに採取することで、針穿刺部の皮膚や皮下に存在する細菌等の混入を防止するとともに、採血初流除去バッグBE、BF、BG、BHに採取した初流血液を検査用の血液としても用いるためのものである。
この採血初流除去セット1E、1F、1G、1Hは、採血初流除去バッグBE、BF、BG、BHと血液採取手段(例えば後述する採血管ホルダ22)とからなり、例えば図2の血液バッグ2において、採血チューブT1の途中に配置された分岐管13aに接続された初流血液導入チューブT2の下流(端部)に接続される。
【0012】
[採血初流除去バッグBE、BF]
採血初流除去バッグBE、BFには、供血者より採取した初流血液を貯留する。
採血初流除去バッグBE、BFのバッグ本体21の上部には、採取する初流血液をバッグ本体21内に取り込むための入口23が形成され、バッグ本体21の下部には、採取した血液を取り出すための出口24が形成されている。
バッグ本体21内部に、例えば熱溶着等の手段により、第1仕切部P1と第2仕切部P2を形成している。
第1仕切部P1と第2仕切部P2は、バッグ本体21の略縦方向に形成している。このようにしてバッグ本体21内部を、血液溜S1と空気溜S2に区画している。
仕切部P1とP2の間に形成される空気通路W2と仕切部P2とバッグ本体21側部の間に形成される血液通路W1を、バッグ本体21の外部から閉塞手段Cにより、閉塞するようにしたものである。
閉塞手段Cとは、例えばクランプ、かん子等、要するにバッグ本体21の外部に装着でき、空気通路W2と血液通路W1を、外からの圧力により、閉塞できるものであれば何でも良い。
閉塞手段Cは閉塞前には血液が規定量に達したときに採血速度を低減させ血液の過量採取を防止する目的、及び閉塞後には一度空気溜S2へ移動させた空気が、真空採血管ホルダ22から真空採血管に採取する際などに逆流することを防止する目的で装着する。
【0013】
図1に例示した採血初流除去バッグBEは、第1仕切部P1と第2仕切部P2は、バッグ本体21の略縦方向に形成している。
図3に例示した採血初流除去バッグBFは、第1仕切部P1と第2仕切部P2を近接して形成し、これらの間の空気通路W2を狭く形成したものである。すなわち第1仕切部P1上部を途中から斜め方向に形成し(これらを屈曲部R´という)、当該屈曲部R´の終端部からさらに縦方向(下方)に延設している。
空気通路W2を狭く形成することにより、広く形成する場合よりも、閉塞が容易となり、閉塞手段Cもコンパクトなものを使用することができる。
以上のようにしてバッグ本体21内部を、血液溜S1と空気溜S2に区画している。
第1仕切部P1と第2仕切部P2の間に、上開放部O1と下開放部O2を形成し、第2仕切部P2とバッグ本体21側部の間に下開放部O2´を形成している。
初流血液を空のバッグ本体21の血液溜S1に貯留する時、血液は血液通路W1を通り血液溜S1に貯留する。血液通路W1は血液を確実に血液溜S1に導き血液が空気より先に空気通路W2へ混入することを防止する。
血液溜S1内の空気は、前記下開放部O2、空気通路W2、上開放部O1を経て、前記空気溜S2へ収納される。
空気通路W2の幅は、2〜5mm程度に設定して形成するのが好ましい。
【0014】
空気通路W2の幅が狭すぎると、血液を採取する際に、空気溜S2へと空気がスムーズに移動できない可能性があり、逆に空気通路W2があまり広すぎると、空気が確実に空気溜S2に移動できない、また閉塞手段Cで閉塞しずらくなり一度空気溜S2へ移動させた空気が、真空採血管ホルダ22から真空採血管に採取する際などに逆流するおそれがあるため好ましくない。
さらに、第1仕切部P1の上開放部O1(非溶着部分)についても、空気通路W2の幅の設定と同様の理由により、2〜5mm程度に設定するのが好ましい。
また空気溜S2を十分広く成形すると、採血時にバッグや空気による弾力が、流入する血液を押し戻そうとする力が働くことがなく採血量が不足する恐れが少なくなるため好ましい。
さらに、血液溜S1の容積を、採取すべき血液の規定量と実質的に同じになるように設計・形成することにより、血液溜S1内に血液が満杯(一杯)になったとき、血液が空気溜S2へとあふれる瞬間に、規定量に達したことを容易に確認できる。
【0015】
[外部容器への血液採取手段]
採血初流バッグB内に採取した血液を、検査等のために外部容器へ採取する手段として、バッグ本体21の出口24に、真空採血管ホルダ22またはコネクタ付きチューブ(チューブ先端にコネクタを接続したもの)を形成しても良い。要するに、外部容器に血液を採取することが可能であれば、何でも良い。
例えば血液を外部容器に採取する具体的な手段として、例えば、図1に示すような真空採血管ホルダ22を採用する場合、出口24に、初流血液の採取針25が装着され、採取針25の外周に真空採血管ホルダ22が装着される。採取針25はシース26で覆われる。
バッグ本体21の血液溜S1内に血液を採取後、真空採血管ホルダ22に真空採血管(図示せず)を差し込んで、バッグ本体21内の血液を真空採血管に回収する。
【0016】
[血液バッグ2]
血液バッグ2は、例えば図2に示すように、親バッグ4、採血初流除去セット1、血液フィルタ3、第1子バッグ5、第2子バッグ6及び赤血球保存液入バッグ7から構成される。
親バッグ4の上流には、採血チューブT1が接続されている。採血チューブT1には、先端(上流)からその途中にわたって、採血針8、分岐管13a及び流路閉塞手段12が接続・配置されている。分岐管13aには、初流血液導入チューブT2(途中にクランプ11を装着)を介して採血初流除去セット1Eが接続される。
流路閉塞手段12は、図1に例示するように採血チューブT1の内側に配置される連通ピース12(一部を破断して液体流路を開通するもの)でも良いし、図1に例示するように各チューブT1、T2、T3の外側に装着し、その開閉により液体流路を開通・閉塞できるクランプ11a、11b、11cでも良い。
さらに親バッグ4の下流には、連結チューブT3を介して血液フィルタ3及び第1子バッグ5を接続している。さらに第1子バッグ5は、連結チューブT4、分岐管13b、連結チューブT5、T6を介して、第2子バッグ6、赤血球保存液入バッグ7を接続している。
親バッグ4及び赤血球保存液入りバッグ7には、採血時または輸血保存時における血液の凝固の防止または保存のために、例えばACD液、CPD液、MAP液のような抗凝固剤または赤血球保存液を収納している。
【0017】
採血初流除去バッグBE等及び血液バッグ2のバッグ類を構成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の可撓性合成樹脂が用いられる。
【0018】
[採血初流除去セット1Eの使用例]
(1)供給者より採血された初流血液は、供血者に穿刺した採血針8から分岐管13a、初流血液導入チューブT2を経て、バッグ本体21の血液通路W1を通って血液溜S1に貯留される。血液が貯留されるに従い、血液溜S1内の空気は血液に追いやられて、下開放部O2、空気通路W2、上開放部O1を経て、空気溜S2へ収納される。
空気を空気溜S2へ収納した後、空気通路W2と血液通路W1を、バッグ本体21の外部から閉塞手段Cにより、閉塞することにより、空気溜S2内の空気を、より確実に空気溜S2の中に封じ込めることが可能となる。
(2)初流血液の採取が規定量に達した時点で、クランプ11aを閉じ、採血初流除去バッグBへの血液の流れを遮断するとともに、連通ピース12を破断して、親バッグ4に血液を貯留する。
(3)一方、バッグ本体21の血液溜S1内に貯留した血液を、バッグ本体21の出口24に接続される真空採血管ホルダ22から真空採血管へと採取する。その際、作業者が、屈んだりしゃがみこんだりすることなく、立ち上がった楽な姿勢のまま、採血初流除去バッグBを逆さにして真空採血管への採取作業を行っても、空気溜S2へ収納された空気は、上開放部O1、空気通路W、下開放部O2を経て、血液溜S1に再び空気が入り込むことはなく、したがって真空採血管へ空気が混入することもない。
【0019】
採血初流除去バッグBE、BFは、前記説明、図1、図3に例示した形態のみに限定されない。要するに、空気通路W2の幅、第1仕切部P1の上開放部O1(非溶着部分)、第2仕切部P2の下開放部O2(非溶着部分)及び下開放部O2´(非溶着部分)の大きさ(長さ、広さ)等は、初流血液を空のバッグ本体21の血液溜S1に貯留する時、血液溜S1内の空気が、下開放部O2、空気通路W、上開放部O1を経て、空気溜S2へ収納され、血液を取り出す時も含めて、空気溜S2に収納された空気が、上開放部O1、空気通路W2、下開放部O2を経て血液溜S1内に逆流しない形態であれば何でも良い。
【0020】
図1、図3に例示した採血初流除去バッグBE、BF(採血初流除去セット1E、1F)のその他の実施例について、以下に詳述する。
【0021】
[採血初流除去バッグBG]
図4に例示した採血初流除去バッグBG(採血初流除去セット1G)は、図1、図3に例示した採血初流除去バッグBE、BF(採血初流除去セット1E、1F)と比較して、バッグ本体21内部の各仕切部P1、P2をなくし、そのかわりに、連結チューブT7を介して空気溜容器S2´を接続したものである。
採血初流除去バッグBGでは、バッグ本体21内部に初流血液を採取し、バッグ本体21内部の空気を、出口23´、連結チューブT7、入口23´´を介して空気溜容器S2´へ追い出し、図4に例示するように、初流血液導入チューブT2と連結チューブT7のそれぞれバッグ本体21、空気溜容器S2´に近い側の位置を、閉塞手段Cで閉塞するものである。これにより空気溜容器S2´内の空気を、より確実に同容器S2´の中に封じ込めることが可能となる。
【0022】
[採血初流除去バッグBH]
図5に例示した採血初流除去バッグBH(採血初流除去セット1H)は、図4に例示した採血初流除去バッグBG(採血初流除去セット1G)のバッグ本体21と空気溜容器S2´を一体化したものである。
さらに詳述すれば、バッグ本体21内部に仕切部Pを形成し、バッグ本体21内部を血液溜S1と空気溜S2に区画している。
バッグ本体21の血液溜S1側に初流血液の入口23と初流血液の出口24と空気の出口23´を形成し、空気溜S2側に空気の入口23´´を形成している。これらの空気の出口23´と入口23´´を連結チューブT7を介して接続し、図4の採血初流除去バッグBGと同様に、バッグ本体21の初流血液の入口23に接続された初流血液導入チューブT2と連結チューブT7を閉塞可能な閉塞手段Cを装着したものである。
【0023】
各採血初流除去バッグBE、BF、BG、BHとも血液溜S1が満タン(一杯)になったときが規定採血量に設計しておくのが好ましい。血液通路W1(チューブT2)と空気通路W2(チューブT7)を閉塞手段Cで、同時に閉塞(または別々に閉塞しても良い)することにより、一度、血液通路W1と空気通路W2を閉塞した後は、バッグをどのように扱っても、空気溜S2(空気溜容器S2´)内に封じこめた空気が、血液溜S1内へ逆流することもなく、初流血液採取中に真空採血管(図示せず)に空気を吸い込む懸念もなくなる。
【0024】
閉塞手段Cの一例について説明する。
閉塞手段Cの一例として、図6に例示するクランプ31が使用される。
クランプ31は、ヒンジ部32の両側に二つの挟持部(第一挟持部33、第二挟持部34)を形成し、当該挟持部33、34のどちらか一方の端部に、他方の挟持部33、34の端部35の係合部36を形成している。
ヒンジ部32の内側にチューブT2、T7の装着溝37を形成しても良い。
要するに、閉塞手段Cは、バッグ本体21の血液通路W1と空気通路W2、チューブT2、T7の流路を閉塞可能な二つの挟持部(第一挟持部33、第二挟持部34)を有するものであれば何でも良い。ヒンジ部32、係合部34、装着溝36等はオプションで形成しても良い。
【0025】
[閉塞手段C(クランプ31)の使用例]
図1、図3の採血初流除去バッグBE、BFでは、二つの挟持部(第一挟持部33、第二挟持部34)の間に、バッグ本体21を挟んで、当該バッグ本体21を外部から挟持して、血液通路W1と空気通路W2を閉塞し、閉塞状態を維持するために例えば第一挟持部33の端部を係合部36に係合する。
図4、図5の採血初流除去バッグBG、BFでは、二つの挟持部(第一挟持部33、第二挟持部34)の間に、チューブT2、T7を挟んで、当該チューブT2、T7を外部から挟持して、流路を閉塞し、閉塞状態を維持するために例えば第一挟持部33の端部を係合部36に係合する。チューブの装着溝36がある場合は、クランプ31を、チューブT2またはT7のどちらか一方に装着しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】採血初流除去セット1E(採血初流除去バッグBE)の概略図
【図2】血液バッグ2の概略図
【図3】図1のその他の実施例を示す採血初流除去セット1F(採血初流除去バッグBF)の概略図
【図4】図1のその他の実施例を示す採血初流除去セット1G(採血初流除去バッグBG)の概略図
【図5】図1のその他の実施例を示す採血初流除去セット1H(採血初流除去バッグBH)の概略図
【図6】閉塞手段の一例を示す概略図
【符号の説明】
【0027】
1E、1F、1G、1H 採血初流除去セット
2 血液バッグ
BE、BF、BG、BF 採血初流除去バッグ
3 血液フィルタ
4 親バッグ
5 第1子バッグ
6 第2子バッグ
7 赤血球保存液入バッグ
8 採血針
10 針カバー
11a、11b、11c クランプ
12 連通ピース
13a、13b 分岐管
21 バッグ本体
22 真空採血管ホルダ
23 (初流血液の)入口
23´ (空気の)出口
23´´ (空気の)入口
24 (初流血液の)出口
25 (初流血液の)採取針
26 シース
S1 血液溜
S2 空気溜
S2´ 空気溜容器
P1 第1仕切部
P2 第2仕切部
P 仕切部
O1 上開放部
O2、O2´ 下開放部
W1 血液通路
W2 空気通路
R´ 屈曲部
T1 採血チューブ
T2 初流血液導入チューブ
T3、T4、T5、T6、T7 連結チューブ
C 閉塞手段
31 クランプ
32 ヒンジ
33 第一挟持部
34 第二挟持部
35 端部
36 係合部
37 チューブの装着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)を形成し、
バッグ本体(21)内部に、第1仕切部(P1)と第2仕切部(P2)を形成し、
これによりバッグ本体(21)内部を、血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画するとともに、血液通路(W1)と空気通路(W2)を形成し、
前記バッグ本体(21)の外部に前記血液通路(W1)と前記空気通路(W2)を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着したことを特徴とする採血初流除去バッグ(BE、BF)。
【請求項2】
供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)と空気の出口(23´)を形成し、
当該空気の出口(23´)に連結チューブ(T7)を介して空気溜容器(S2´)を接続し、
バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)に接続された初流血液導入チューブ(T2)と前記連結チューブ(T7)に、当該チューブ(T2、T7)の流路を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着したことを特徴とする採血初流除去バッグ(BG)。
【請求項3】
供血者より採取する初流血液を貯留するための採血初流除去バッグであって、
バッグ本体(21)内部に仕切部(P)を形成し、バッグ本体(21)内部を血液溜(S1)と空気溜(S2)に区画し、
バッグ本体(21)の血液溜(S1)側に初流血液の入口(23)と初流血液の出口(24)と空気の出口(23´)を形成し、
バッグ本体(21)の空気溜(S2)側に空気の入口(23´´)を形成し、
前記空気の出口(23´)と前記空気の入口(23´´)を連結チューブ(T7)を介して接続し、
バッグ本体(21)の初流血液の入口(23)に接続された初流血液導入チューブ(T2)と前記連結チューブ(T7)に、当該チューブ(T2、T7)の流路を閉塞可能な閉塞手段(C)を装着したことを特徴とする採血初流除去バッグ(BH)。
【請求項4】
前記血液溜(S1)の容積を、採取すべき血液の規定量と実質的に同じになるように形成したことを特徴とする請求項1記載の採血初流除去バッグ(BE、BF、BG、BH)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1の請求項に記載の採血初流除去バッグ(BE、BF、BG、BH)の初流血液の出口(24)に、外部容器への血液採取手段を形成したことを特徴とする採血初流除去セット(1E、1F、1G、1H)。
【請求項6】
血液を採取する親バッグ(4)と複数の子バッグ(5、6)からなる血液バッグ(2)において、
上流に採血針(8)を接続した採血チューブ(T1)の途中に配置された分岐管(13a)に、初流血液導入チューブ(T2)を接続し、当該初流血液導入チューブ(T2)の下流に請求項1から5のいずれか1の請求項に記載の採血初流除去セット(1E、1F、1G、1H)を接続したことを特徴とする血液バッグ(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−110043(P2008−110043A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294611(P2006−294611)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】