説明

採血装置、特に新生児及び小児又は小動物用の採血装置

本発明は、特に新生児及び小児又は小動物用の採血装置(1)であって、採血容器(2)が設けられていて、該採血容器がその前端部に、鋭く尖った先端(4)を有するカニューレ(5)を備えている形式のものに関する。このような形式の採血装置において、本発明の構成では、採血容器(2)内に、規定されたポジションに押し込まれていて、採取される血液の流れを自動的に停止する空気透過性で多孔性の制限エレメント(8)が配置されており、採血容器(2)の後端部が、採血のために一時的に通気可能なプランジャ(11)によって閉鎖されていて、該プランジャ(11)が、採取された血液を試料容器に放出するために、採血容器(2)内においてシールされて案内される行程によって、制限エレメント(8)の前に閉じ込められた血液の少なくとも部分量を、過圧により押し出して空にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血装置、特に新生児及び小児又は小動物用の採血装置であって、採血容器が設けられていて、該採血容器がその前端部に、鋭く尖った先端を有するカニューレを備えている形式のものに関する。
【0002】
DE3932112C2に開示された採血装置は、その後端部においては気密にかつ前端部においては空気抜き孔を除いて閉鎖された外側の採血容器を備えており、この外側の採血容器は同心的に、内側の試料管を受容している。この試料管はその前端部に、患者の静脈に穿刺可能なカニューレを備えており、このカニューレの後端部は採血容器と流れ接続している。カニューレは、試料管の円錐部に被せ嵌められるホルダもしくはルアー付加部に配置されている。外側の採血容器と内側の試料管とから成るこの採血装置は、極めて大きな構造を有していて、ゆえに、採血容器及び試料管のために透明な材料が使用されているにもかかわらず中が見えにくく、このことは、血流の観察を困難にし、かつ取扱いを面倒にしてしまう。さらに、採取された大量の血液から、規定された少量の試料を検査目的のために取り出すことは、困難である。
【0003】
静脈採血後にはまず初めに、カニューレを保持する被せ嵌められたホルダもしくはルアー付加部が、注意深く取り外され、そして廃棄処分されねばならない。これによって、少なからず血液の付着したカニューレ自体による怪我のおそれが回避される。次いで、毛管状の内部の試料管が引き出されて、取り出された血液量を外側の採血容器に空けることができる。試料管の引出し時にも同様に、血液の減少を回避することができない。
【0004】
上述のことを無視したとしても、この公知の採血装置は、特に新生児及び小児もしくは小動物において僅かな血液量だけを採取する場合には、それらの生理学的な条件に基づいて、特に、極めて低い静脈圧に基づいて、適してない。このような患者の低い静脈圧は、まず初めにカニューレの中空室を通って流れる血液を、接続している試料管内に必ず存在する空気に抗して流し続けるためには、不十分であるので、血流はカニューレにおいて停滞してしまう。新生児等における採血のためには従って、予め引き出されたルアーカニューレだけが使用され、そしてこのルアーカニューレの、被せ嵌め付加部の中空室が、採取された血液量を収容する。ルアー付加部だけによる採血は極めて困難であり、使用者における豊富な経験を必要とする。さらに、僅かな試料容量に比して試料容器への放出時になおルアー付加部内に残る残留血液量は、極めて多く、従って試料量の規定された採取はまったく不可能である。
【0005】
上述のことは、特にルアー付加部に残る残留量を回避するためにルアー付加部を除去して、カニューレだけを使用する場合においても、同様に言える。この場合には、カニューレの開放した、場合によっては曲げられた後端部から、血液試料は直接、試料容器に滴下することができる。捕集容器を適宜な形式で、開放したカニューレ端部の下に保持することには、極めて問題があるので、一人が患者を保持して穿刺を行い、他の一人が血液を収容する試料容器を保持する必要がある。
【0006】
新生児もしくは未熟児、乳児及び小児における静脈血の採取を改善するために、DE10060302A1に基づいて公知の構成では、遠位端部に鋭く尖った先端を備えて形成された中空ニードルもしくはカニューレは、その後端部である近位端部に、その長手方向軸線に対して側方に曲げられた血液出口を備えている。カニューレはホルダに配置されており、このホルダの、血液出口の後ろに位置するグリップ領域は、把持もしくは案内の可能性を提供する。採血時には、カニューレの出口開口の下に、流出する血液を捕集する容器が保持される。汎用的に使用される注射針の場合とは異なり、この採血装置のカニューレはもはや特別に準備される必要はない。例えばルアー円錐の破断はもはや不要である。しかしながら、採取される血液量を眼で監視することは極めて不十分にしか可能でない。なぜならば、小さなサイズのこの公知の採血装置では、採血をする人の指及び/又はグリップ部材が、出口開口に対する視野を著しく制限する、もしくは場合によっては完全に覆ってしまうからである。側方に屈曲された出口開口に基づいてさらに、カニューレはただ1つの使用位置においてしか、最適な血液流出を可能にしない。側方に屈曲された湾曲したカニューレの製造が面倒もしくは高コストであるということを無視しても、屈曲によって生ぜしめられるカニューレにおける大きな流れ抵抗は、いずれにせよ僅かな量だけ取り出される血液の血流を妨げるという欠点が存在する。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の採血装置における上記欠点を排除して、特に使用者の使いやすさ及び操作性の良さを改善し、かつ少量の血液量をも確実に取り出すことができるようにすることである。
【0008】
この課題を解決するために本発明の構成では、採血容器内に、規定されたポジションに押し込まれていて、採取される血液の流れを自動的に停止する空気透過性で多孔性の制限エレメントが配置されており、採血容器の後端部が、採血のために一時的に通気可能なプランジャによって閉鎖されていて、該プランジャが、採取された血液を試料容器に放出するために、採血容器内においてシールされて案内される行程によって、制限エレメントの前に閉じ込められた血液の少なくとも部分量を、過圧により押し出して空にするようにした。
【0009】
本発明のように構成されていると、極めて細身に形成されていてカニューレにおける特別な取扱いを必要としない採血装置を得ることができ、しかも本発明による採血装置では、血流を妨げられることなく観察することができ、そして血液損失の生じることがなく、正確に規定された採血が可能であり、しかも正確に所望の試料量を放出することができる。カニューレは採血容器と一体的に形成されていても、採血容器と被せ嵌め可能に結合されていてもよい。
【0010】
空気透過性の制限エレメントは、最初の血液接触時に、つまり決定された充填容量が得られるやいなや、さらなる採血を停止する。この制限エレメントは、収容される血液試料の正確な容量測定もしくは容量規定のために働く。それというのは、制限エレメントにおいては、採血容器内における変わらずに維持される規定された位置決めが、有利には内部のストッパによって得られるからであり、この内部ストッパに向かって制限エレメントは、製造時に所望のように導入されかつ押し込まれる。例えばピペット先端に設けられる自体公知の多孔性のフィルタエレメントにおける意味及び目的は、これとはまったく異なっている。公知のフィルタエレメントは、例えばエーロゾルによるピペットの汚染を回避することを目的としており、この場合収容される液体との接触は望まれない。このようなピペット先端の機能性を保証するために、規定されたフィルタポジションを正確に維持することは、重要ではない。
【0011】
本発明による採血装置ではさらに次のことが可能である。すなわち本発明の採血装置では、カニューレの中空室を含めて採血容器内に収容された血液量を、分析のために所望の調量量だけ押し出すことが可能である。それというのは、血液量はプランジャ行程によって完全に、もしくは択一的に段階的に調量されて、空にされることができるからである。プランジャの通気可能性、例えば、採血装置の出荷状態から、ゆえに採血ポジションもしくは血液収容ポジションにおいて気密性のないプランジャ保持体を介してのプランジャ通気可能性、又はプランジャにおける、有利にはプランジャの上端部に設けられた通気口によるプランジャ通気可能性によって、試料量を取り出すために必要な通気性が得られる。これに対して、過圧による強制放出のために必要な、プランジャと容器ハウジングとの間におけるシール性は、通気性を中断することによって可能になる。つまりこのようなシール性は、通気状態になる非シール性の出発ポジションから、シールされた放出区間へのプランジャの移動時に、又は始めからシールされて配置されたプランジャでは指による孔の閉鎖によって、可能になる。
【0012】
本発明の別の有利な構成では、採血容器の、カニューレ及び制限エレメントを有する前端部が、毛管として形成されている。この毛管は、フィルタエレメントによって制限された採血装置の収容室への血液の吸込みを助成する。
【0013】
次に、図面を参照しながら本発明の1実施例を説明する。
【0014】
図1は、本発明による採血装置の1実施例を示す縦断面図である。
【0015】
図面に示された採血装置1は採血容器2を有しており、この採血容器2は図示の実施例ではその前端部においてトランペット状の形をして毛管3を有していて、この毛管3内には、先端4を鋭く削られたカニューレ5が配置されており、採血容器2は、後方に向かって接続していて直径が極めて大きいシリンダ区分6に、一体的に移行している。カニューレ5はシリンダ区分6の室容積7から、多孔質の制限エレメント8によって隔てられ、この制限エレメント8は規定されて採血容器2のストッパ9に向かって押し込まれており、毛管3の収容容積は、この正確な位置決めに基づいて正確に規定されている。採取された血液が制限エレメント8に達するやいなや、カニューレ5を介しての吸込みは停止される。これによって試料容積10を完全に正確に測定もしくは決定することができる。採血装置1の前端部に、ここでは採血容器2の毛管3に、カニューレ5を直接取り付けることによって、血流及び取扱いにとって不都合な如何なる輪郭移行部も回避される。採血装置1はさらにそれ自体閉鎖されているので、汚染のおそれも回避される。
【0016】
採血容器2の、毛管3から離れている端部には、採血のための出発位置で示されたプランジャ11が配置されている。採血時における空気抜きのために、シリンダ区分6内に進入するプランジャヘッド12は、最初からシールされて採血容器2内に配置されている。そしてプランジャヘッド12は、このシールされた係合状態を、収容された血量を空にするための放出区間13にわたる行程中においても維持し、そのために、血液収容のためにプランジャ11の図示の出発状態においてその上端部に設けられた空気抜き孔14は、移動の間中、使用者の指を載せることによって閉鎖される。択一的にプランジャヘッド12は容器内壁に対する空隙を備えて形成されていてもよく、この場合この空隙は、例えばプランジャヘッド12とシリンダ区分6の内壁との互いに向かい合った壁の相補的な構造形状によって、放出区間13へのプランジャヘッド12の進入と共に閉鎖される。
【0017】
所定の試料量を取り出すために、制限エレメント8のストップによってカニューレ5の中空室を含めて毛管3内に規定されて収容された血液量は、簡単にプランジャヘッド12によって、有利には調量された全体量として、しかしながらまた調量された部分量として、別体の試料容器(図示せず)に押し出されることができ、この試料容器に試料量はカニューレ5を介して流入する。この場合試料量における損失なしに、残留物のない空の状態が可能であり、このことは僅かな血液量を採取する場合に特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による採血装置の1実施例を示す縦断面図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血装置、特に新生児及び小児又は小動物用の採血装置であって、採血容器が設けられていて、該採血容器がその前端部に、鋭く尖った先端を有するカニューレを備えている形式のものにおいて、
採血容器(2)内に、規定されたポジションに押し込まれていて、採取される血液の流れを自動的に停止する空気透過性で多孔性の制限エレメント(8)が配置されており、採血容器(2)の後端部が、採血のために一時的に通気可能なプランジャ(11)によって閉鎖されていて、該プランジャ(11)が、採取された血液を試料容器に放出するために、採血容器(2)内においてシールされて案内される行程によって、制限エレメント(8)の前に閉じ込められた血液の少なくとも部分量を、過圧により押し出して空にすることを特徴とする採血装置、特に新生児及び小児又は小動物用の採血装置。
【請求項2】
採血容器(2)の、カニューレ(5)及び制限エレメント(8)を有する前端部が、毛管(3)として形成されている、請求項1記載の採血装置。

【公表番号】特表2007−535348(P2007−535348A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509872(P2007−509872)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000737
【国際公開番号】WO2005/104947
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(597154612)ザルシュテット アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】Sarstedt AG & Co. KG
【Fターム(参考)】