説明

探査治具およびこれを用いたアンカーピンニング工法

【課題】外壁における浮きの位置を特定することができる探査治具およびこれを用いたアンカーピンニング工法を提供すること。
【解決手段】コンクリート躯体2およびコンクリート躯体2表面に塗着した仕上げ材3からなる壁体1の浮き部6,7を改修するためのアンカーピンニング工法において穿孔した、アンカーピン45用の挿填穴8を介して、壁体1における浮き部6,7の位置を探査する探査治具41であって、挿填穴8に挿入される手持ち部42と、手持ち部42の先端側に設けられ、挿填穴8の穴壁をなぞることで浮き部6,7に引っ掛かるように構成したフック部43と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる「浮き部」が生じた外壁や内壁等の壁体の補修に使用されるアンカーピンニング工法用の探査治具およびこれを用いたアンカーピンニング工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、躯体と、躯体表面に塗着したモルタルと、モルタルに張った仕上げ材(タイルや石材)と、からなる壁体の経時的変化により、躯体とモルタルとの界面、あるいはモルタルと仕上げ材との界面に生じた「浮き部」を改修する方法として、仕上げ材を貫通し且つ躯体の所定の深さまで挿填穴を穿孔し、接着剤注入器により、装填穴および浮きに接着剤を注入した後、アンカーピンにより仕上げ材を躯体にアンカリングするピンニング工法(アンカーピンニング工法)が知られている(特許文献1参照)。
この場合における接着剤の注入は、先ず接着剤注入器における接着剤の吐出口を挿填穴の最深部に挿入して行い、続いて吐出口を浮きの位置に移動させて行われる。
【特許文献1】特開2008−069521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、建築物の外壁(壁体)に生ずる浮き部は、躯体とモルタルとの界面やモルタルと仕上げ材との界面に生ずる。また、モルタルにおいても、下地モルタルと調整モルタルとの界面に生ずる。このため、接着剤の注入時における浮き部の位置は、打診による感触や施工図(外壁断面図)等から判断している。しかしながら、打診では、熟練を要すると共に複数の界面に浮き部が生じている場合を判断することができない。また、実際の施工と施工図とが食い違っている場合や、モルタルの厚みが場所によって異なっている場合があり、浮き部に対して接着剤を適切に注入することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、壁体における浮きの位置を特定することができる探査治具およびこれを用いたアンカーピンニング工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の探査治具は、躯体および躯体表面に塗着した仕上げ材からなる壁体の浮き部を改修するためのアンカーピンニング工法において穿孔した、アンカーピン用の挿填穴を介して、壁体における浮き部の位置を探査する探査治具であって、挿填穴に挿入される手持ち部と、手持ち部の先端側に設けられ、挿填穴の穴壁をなぞることで浮き部に引っ掛かるように構成したフック部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、手持ち部は、挿填穴の深さより長く形成されており、フック部は、手持ち部の先端に設けられていることが、好ましい。
【0007】
これらの構成によれば、手持ち部によりフック部を挿填穴の最深部まで挿入しておいて、これを引抜くようにして挿填穴の穴壁をなぞると、フック部が浮き部に引っ掛かる。このとき、例えば引っ掛かった位置を覚えておいて、フック部との距離を測れば、挿填穴の開口部から浮き部の位置までの距離を測定することができる。もちろん、穴壁をなぞる動作を開口部に達するまで行えば、浮き部が複数あっても全ての浮き部を測定することができる。
【0008】
さらに、手持ち部には、フック部からの寸法を表した目盛りが設けられていることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、フック部が引っ掛かった位置で目盛りを読み取れば、挿填穴の開口部から浮き部の位置までの距離を瞬時に知ることができ、開口部から浮き部までの正確な距離および浮き部の箇所数を、迅速に測定することができる。
【0010】
この場合、目盛りは、手持ち部の外周全体に設けられていることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、穴壁における上下左右のいずれの位置をなぞっても、すなわち、手持ちの姿勢の如何にかかわらず、目盛りを適切に読み取ることができる。
【0012】
これらの場合、手持ち部にスライド自在に装着され、挿填穴の開口部に突き当ててフック部から開口部までの距離を確定する読取りコマを、更に備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、浮き部の位置までの距離を精度良くかつ簡単に確定することができる。
【0014】
本発明のアンカーピンニング工法は、躯体および躯体表面に塗着した仕上げ材からなる壁体の浮き部を改修するために、上記の探査治具および注入ノズルを有する接着剤注入器を用いて行うアンカーピンニング工法であって、壁体を所定の深さまで穿孔して挿填穴を形成する穿孔工程と、探査治具により、挿填穴に対する浮き部の位置を探査する探査工程と、注入ノズルを挿填穴の底部まで挿入して接着剤を注入する初期注入工程と、初期注入工程の後、探査した浮き部の位置まで注入ノズルを後退させて接着剤を注入する浮き部注入工程と、接着剤が注入された挿填穴に、仕上げ材を躯体にアンカリングするためのアンカーピンを装填するピン装填工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、浮き部が複数ある場合、挿填穴の深い位置にある浮き部から順に浮き部注入工程を実施することが、好ましい。
【0016】
これらの構成によれば、開口部からの浮き部の距離を測ることができ、その測定結果に基づいて、最深部から挿填穴および浮き部に満遍なく接着剤を注入することができ、壁体の補修を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る探査治具を用いたアンカーピンニング方法について説明する。このアンカーピンニング工法は、「浮き」が生じた建物の外壁、吹き抜けやホール等の内壁(壁体)の要補修箇所に穿孔した挿填穴に、その開口部から接着剤注入器の注入ノズルを挿入して接着剤を注入し、その後、アンカーピンを挿填して、これを補修するものである。以下、建物の外壁を施工する場合について説明する。
【0018】
図1に示すように、建物の壁体1は、下地となるコンクリート躯体(躯体)2と、その表面に塗着させた仕上げ材3と、で構成されており、仕上げ材3は、モルタル4と、これに貼ったタイルや石材などの装飾材5と、で、構成されている。この場合、コンクリート躯体2およびモルタル4の間には第1浮き部6が、またモルタル4および装飾材5の間には第2浮き部7が生じているものとする。また、壁体1には、第1浮き部6および第2浮き部7を補修すべく、装飾材5およびモルタル4を貫通し、且つコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔した挿填穴8が形成されている。そして、その挿填穴8に対し、接着剤注入器11による接着剤Rの注入とアンカーピン45の挿填(図7および図8参照)とが行われることで、壁体1の補修が行われる。
【0019】
ここで、図2を参照して、接着剤注入器11について説明する。接着剤注入器11は、主体を為し接着剤Rを供給するポンプ形式の注入器本体12と、注入器本体12の先端部に着脱自在に装着されたアンカーピンニング工法用の注入ノズル13と、で構成されている。注入器本体12は、基端側に延在する筒状のケーシング14と、ケーシング14が着脱自在に取り付けられるポンプ本体15と、ポンプ本体15に保持された略「L」字状のレバー16と、を備えている。ケーシング14内には、接着剤Rが充填されており、ポンプ本体15には、基端側からケーシング14がセットされ、先端側から注入ノズル13が装着される。そして、注入器本体12は、手動でレバー16を操作(ポンピング)することにより、接着剤Rを一定量ずつ注入ノズル13から吐出させるようになっている。なお、本実施形態において接着剤Rには、エポキシ樹脂接着剤を用いているが、これに限らず、例えば各種有機接着剤は元より、粘性を有する無機接着剤等であってもよい。
【0020】
図2および図3に示すように、注入ノズル13は、一端を注入器本体12に着脱自在に装着され、全体が「L」字状に形成された接続アーム21と、接続アーム21に支持された円筒状のノズル外筒22と、ノズル外筒22の内部に進退自在に支持された注射針様のノズル内筒23と、ノズル内筒23の尾端に連なりノズル内筒23を進退させる操作ロッド34と、を備えている。ポンピングにより注入器本体12から送り出された接着剤Rは、接続アーム21を通ってノズル外筒22の内部に流れ込み、ノズル外筒22の内部からノズル内筒23の内部を通ってその先端から吐出される。また、ノズル内筒23は挿填穴8の深さに合うように、操作ロッド34により進退される(詳細は後述する)。
【0021】
接続アーム21は、エルボ状のステンレスやスチールの素材で内部に注入器本体12に連なる接着剤流路24が形成されており、両端に形成された接続用の雄ねじ25,25によりノズル外筒22および注入器本体12に装着可能になっている。ノズル外筒22は、円筒状の外筒本体26と、外筒本体26の先端を閉止する先端閉止キャップ27と、外筒本体26の尾端を閉止する尾端閉止キャップ28と、先端閉止キャップ27から突出するように設けた封止部材29と、を有しており、内部に上記の接着剤流路24に連通する中間流路30が構成されている。封止部材29は、フッ素ゴムやブチルゴム等の耐溶剤性の弾性材で構成されており、その軸心には、ノズル内筒23が液密に且つスライド自在に挿通する挿通孔31が形成されている。
【0022】
ノズル内筒23は、ストレートの注射針様に形成されており、その先端部には、斜めにカットされた吐出口32が形成されている。操作ロッド34は、ノズル内筒23の尾端部に連結されており、操作ロッド34を進退操作すると、ノズル内筒23が前進位置と後退位置との間で進退する。また、操作ロッド34の外周全体には、メモリが設けられており、後述する探査工程の測定結果に基づいて、封止部材29に対するノズル内筒23の吐出寸法を調整するのに用いられる。
【0023】
次に、図4を参照して、第1実施形態に係る探査治具41について説明する。探査治具41は、挿填穴8に挿入される手持ち部42と、手持ち部42の先端に設けられ、挿填穴8の穴壁をなぞることで浮き部6,7に引っ掛かるように構成したフック部43と、で一体に形成されている。
【0024】
手持ち部42は、挿填穴8の深さより十分長い棒状に形成されている。そして、手持ち部42の先端部を、略直角に折り曲げるようにしてフック部43が形成されている。フック部43は、正面視略三角形に且つ薄手に形成され、挿填穴8の穴壁をなぞったときに、浮き部6,7に落ち込んでこれに引っ掛かるようになっている。このフック部43の厚さは約0.2mmであり、浮き部6,7に引っ掛かったときに探査治具を前後させることで、浮き部6,7の奥行き寸法を推定することができるようになっている。
【0025】
次に、図5を参照して、探査治具41による開口部10から浮き部6,7までの距離の測定方法および封止部材29に対するノズル内筒23の突出寸法の調整方法について説明する。まず、探査治具41を挿填穴8の最深部に挿入して(図5(a)参照)、フック部43で挿填穴8の穴壁をなぞるように手持ち部42を手前に引いてくる。これにより、浮き部6,7が存在した場合、フック部43が浮き部6,7に引っ掛かる(図5(b)参照)。フック部43が浮き部6,7に引っ掛かったら、開口部10まで指を滑らせて、手持ち部42の開口部10位置を摘み(図5(c)参照)、別途用意したスケール44によって、摘んだ位置とフック部43との距離を測る(図5(d)参照)。これにより、浮き部6,7から開口部10までの距離を測定する。なお、操作ロッド34によるノズル内筒23の封止部材29(の挿入時の開口部10位置)からの突出寸法の調整(上記浮き部6,7の距離)は、操作ロッド34にマーキングを行うか、操作ロッド34に突出寸法のメモリを刻設しておき、測定結果の記憶に従って調整する(図示省略)。
【0026】
次に、図6ないし図8を参照して、本発明に係る探査治具41を用いたアンカーピンニング工法について説明する。このアンカーピンニング工法は、ハンマー等を用いて壁体1を打診し、その打診音に基づいて壁体1の要補修箇所を探査し、挿填穴8の穿孔位置を決定する。これに続いて、穿孔位置に適宜、マーキングが行われた後に行われ、壁体1を所定の深さまで穿孔して挿填穴8を形成する穿孔工程と、探査治具41により、挿填穴8に対する第1浮き部6および第2浮き部7の位置を探査する探査工程と、注入ノズル13を挿填穴8の底部まで挿入して接着剤Rを注入する初期注入工程と、初期注入工程の後、探査した第1浮き部6および第2浮き部7の位置まで注入ノズル13を後退させて接着剤Rを注入する浮き部注入工程と、接着剤Rが注入された挿填穴8に、仕上げ材3をコンクリート躯体2にアンカリングするためのアンカーピン45を装填するピン装填工程と、から構成されている。
【0027】
穿孔工程では、ダイヤモンドコアドリル等の穿孔工具46を使用して、マーキングした壁体1の各穿孔位置に挿填穴8を穿孔する。すなわち、装飾材5およびモルタル4を貫通するようにしてコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔を行い、挿填穴8を形成する(図6(a)参照)。この際、壁体1に対する穿孔は直角に行い、コンクリート躯体2への穿孔深さは30mm以上とする。また、挿填穴8は、アンカーピン45が遊嵌できるようにアンカーピン45より一回り大きな径(1mm〜2mm太径)のストレート穴に形成する。その後、コンクリート躯体2の切粉等を挿填穴8内から除去すべくブロア等で噴気、または真空集塵機等で吸引、清掃し除去する(図示省略)。もっとも、冷却水を用いる穿孔であって、冷却水と共に切粉が流出する場合には、この除去工程は、省略される。
【0028】
探査工程では、上記した浮き部6,7の測定方法により、開口部10から第1浮き部6までの距離を測定する(図6(b)参照)。次に、フック部43を第1浮き部6から浮かして、再度フック部43で穴壁をなぞるように手持ち部42をさらに引いてくる。そして、第2浮き部7が存在した場合、フック部43が第2浮き部7に引っ掛かる(図6(c)参照)。引っ掛かったところで、開口部10から第2浮き部7までの距離を測定する。なお、これを開口部10まで繰り返すことで、開口部10から第1浮き部6および第2浮き部7以外の浮き部までの距離を測定することも可能である。
【0029】
初期注入工程では、ノズル内筒23の突出寸法を調整した後、ノズル内筒23を挿填穴8に挿入する(図7(a)参照)。次に、封止部材29により開口部10を封止した(押し付ける)状態で、注入器本体12のレバー16を操作(ポンピング)して、接着剤Rを挿填穴8に注入していく。ポンピングを開始すると、ノズル内筒23の吐出口32から接着剤Rが吐出され、接着剤Rが挿填穴8の最深部から徐々に注入されてゆく。やがて、接着剤Rは第1浮き部6の手前の位置まで達する。
【0030】
浮き部注入工程では、接着剤注入器(注入ノズル13)11の注入姿勢を維持したまま、ノズル内筒23の突出寸法を探査工程の結果に基づき、第1浮き部6の位置に合わせるように調整し、再度ポンピングを開始する(図7(b)参照)。ポンピングの重さから第1浮き部6への接着剤R注入を感覚的に察知できたら、続いて上記と同様に、探査工程の結果に基づき、ノズル内筒23の突出寸法を第2浮き部7の位置に合わせるように調整する。ここで、再度ポンピングを行い、第2浮き部7へも接着剤Rを十分に注入する(図7(c)参照)。なお、第1浮き部6および第2浮き部7以外に、例えば調整モルタル等による他の浮き部があっても、上記と同様の手順で接着剤Rの注入を行なうようにする。
【0031】
ピン挿填工程では、接着剤Rが注入された挿填穴8に対し、アンカーピン45のピン胴部を案内させながら挿填していく(図8参照)。アンカーピン45は、挿填穴8内の接着剤Rを押し退けるように最深部に対し挿填されていく。それに伴い、接着剤Rは、ピン胴部となじむように隙間に流動し、さらにその一部は挿填穴8の開口部10に向かって押し出されていく。そして、アンカーピン45の先端が最深部に達するところで、アンカーピン45の頭部が開口部10を閉止する。
【0032】
この場合、初期注入工程および浮き部注入工程において、ノズル内筒23を引き抜いた後に生ずる接着剤Rが注入されていない未注入部分の体積と、アンカーピン45の体積とがほぼ同一となるように構成しておけば、挿填穴8にアンカーピン45を挿入したときに、挿填穴8から接着剤Rがほとんど漏れ出ることなく、挿填穴8を接着剤Rでほぼ満たすことができる。なお、装飾材5にザグリ穴を形成し、この部分にアンカーピン45の頭部を係止してもよい。かかる場合には、別途開口部10を閉止する化粧キャップを設けるようにする(共に図示省略)。また、注入孔付きアンカーピンを用いる場合も、注入孔付きアンカーピンを装填する前に、上記のように接着剤Rを注入することが、好ましい。
【0033】
以上の構成によれば、手持ち部42によりフック部43を挿填穴8の最深部まで挿入しておいて、挿填穴8の穴壁をなぞるようにこれを引抜くと、フック部43が浮き部6,7に引っ掛かる。このとき、開口部10までの距離をスケール44で読み取れば、挿填穴8の開口部10から浮き部6,7の位置までの距離を測定することができる。すなわち、壁体1における浮き部6,7の位置を特定することができる。
【0034】
次に、図9を参照して、第2実施形態に係る探査治具41について説明する。この探査治具41では、方形断面の手持ち部42を有すると共に、手持ち部42の外周全体に目盛り47と、目盛り47を読み取るための読取りコマ50と、が設けられている。
【0035】
読取りコマ50は、直方体の箱状に形成されており、手持ち部42に幾分抵抗をもってスライド自在に装着されている。読取りコマ50の長辺方向の両面には、手持ち部42にスライドさせるためのスライド穴52がそれぞれ形成されている。また、4つの周側面には、手持ち部42の目盛りを見るための読取り窓53がそれぞれ形成されており、各読取り窓53の縁部には、目盛りを読み取るためのマーク51が形成されている。
【0036】
目盛り47は、読取りコマ50を探査治具41の先端に突き当てた状態でのマーク51位置が「0」となるように形成されている。この場合における開口部10から浮き部6,7までの距離は、フック部43が浮き部6,7に引っ掛かったときに、読取りコマ50を開口部10に当接させて、マーク51の位置の目盛り47を読み取ることで測定することができる。なお、読取りコマ50は、なくてもよい。係る場合、目盛り47は、フック部43から設けられており、手持ち部42が浮き部6,7から開口部10までの距離を測定するスケールとなる。この場合の開口部10から浮き部6,7までの距離は、フック部43が浮き部6,7に引っ掛かったときに、開口部10位置での目盛り47を読み取ることで、測ることができる。また、目盛り47は、手持ち部42の外周全体に設けられているため、手持ち部42の姿勢の如何にかかわらず、開口部10から浮き部6,7までの距離を適切に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】接着剤注入器を、外壁の挿填穴に対して使用している状態の断面模式図である。
【図2】接着剤注入器の平面図である。
【図3】注入ノズルの断面図である。
【図4】第1実施形態に係る探査治具の表裏外観斜視図である。
【図5】(a)探査治具を挿填穴の最深部まで挿入した図であり、(b)はフック部が浮き部に引っ掛かったときの図であり、(c)は開口部位置を摘んだ図であり、(d)はスケールで浮き部までの距離を測るときの図である。
【図6】(a)は穿孔工程の図であり、(b)第1浮き部に対する探査工程の図であり、(c)は第2浮き部に対する探査工程の図である。
【図7】(a)は挿填穴に対する注入ノズルの挿入図であり、(b)は初期注入工程の図であり、(c)は浮き部注入工程の図である。
【図8】装填工程の図である。
【図9】第2実施形態に係る探査治具の表裏外観斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1…外壁 2…コンクリート躯体 3…仕上げ材 6…第1浮き部 7…第2浮き部 8…挿填穴 11…接着剤注入器 41…探査治具 42…手持ち部 43…フック部 45…アンカーピン 47…目盛り 55…読取りコマ R…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体および前記躯体表面に塗着した仕上げ材からなる壁体の浮き部を改修するためのアンカーピンニング工法において穿孔した、アンカーピン用の挿填穴を介して、前記壁体における前記浮き部の位置を探査する探査治具であって、
前記挿填穴に挿入される手持ち部と、
前記手持ち部の先端側に設けられ、前記挿填穴の穴壁をなぞることで前記浮き部に引っ掛かるように構成したフック部と、を備えたことを特徴とする探査治具。
【請求項2】
前記手持ち部は、前記挿填穴の深さより長く形成されており、
前記フック部は、前記手持ち部の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の探査治具。
【請求項3】
前記手持ち部には、前記フック部からの寸法を表した目盛りが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の探査治具。
【請求項4】
前記目盛りは、前記手持ち部の外周全体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の探査治具。
【請求項5】
前記手持ち部にスライド自在に装着され、前記挿填穴の開口部に突き当てて前記フック部から前記開口部までの距離を確定する読取りコマを、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の探査治具。
【請求項6】
躯体および前記躯体表面に塗着した仕上げ材からなる壁体の浮き部を改修するために、請求項1ないし4のいずれかに記載の前記探査治具および注入ノズルを有する接着剤注入器を用いて行うアンカーピンニング工法であって、
前記壁体を所定の深さまで穿孔して挿填穴を形成する穿孔工程と、
前記探査治具により、前記挿填穴に対する前記浮き部の位置を探査する探査工程と、
前記注入ノズルを前記挿填穴の底部まで挿入して接着剤を注入する初期注入工程と、
前記初期注入工程の後、探査した前記浮き部の位置まで前記注入ノズルを後退させて接着剤を注入する浮き部注入工程と、
前記接着剤が注入された前記挿填穴に、前記仕上げ材を前記躯体にアンカリングするためのアンカーピンを装填するピン装填工程と、を備えたことを特徴とするアンカーピンニング工法。
【請求項7】
前記浮き部が複数ある場合、前記挿填穴の深い位置にある前記浮き部から順に前記浮き部注入工程を実施することを特徴とする請求項6に記載のアンカーピンニング工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−106639(P2010−106639A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282325(P2008−282325)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】