説明

接合部材及び建具

【課題】結合される2つの枠部材間に間隙が生じにくい接合部材及び建具を提供する。
【解決手段】環状に連結される複数の枠部材のうちの隣接する2つの枠部材を、互いの端部同士を突き合わせて接合する接合部材であって、前記隣接する2つの枠部材のうちの一方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記一方の枠部材とが離間することを規制する規制部と、前記隣接する2つの枠部材のうちの他方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記他方の枠部材とが離間することを許容しつつ前記他方の枠部材を前記一方の枠部材側に押圧する押圧部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の枠部材の端部同士を突き合わせて接合する接合部材及び前記接合部材を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の枠部材の端部同士を突き合わせて接合する接合部材及び建具としては、例えば、端部同士を当接させた2つの枠部材を結合するための接合部材(結合金具)および結合部材にて結合された枠体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような枠体の結合金具は、爪先が金具の中央側に向う返り爪が両端部にそれぞれ設けられており、結合する2つの枠部材のうちの一方の枠部材に一方の返り爪を掛止し、結合する2つの枠部材のうちの他方の枠部材に他方の返り爪を掛止して、2つの枠部材を結合しているものがある。
【特許文献1】特開2001−200679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の結合金具は、2つの返り爪を有し、端部同士が当接されて結合される2つの枠部材に2つの返り爪のうちの1つずつがそれぞれ掛止されている。このため、2つの枠部材が結合金具にて接合された際には枠部材が互いに引き合う方向に返り爪による力が各々の枠部材に作用する。そして、各々の枠部材に作用する力のバランスが悪い場合には、一方の枠部材が他方の枠部材を押し過ぎて2つの枠部材の端部の突き合わされた部位にずれが生じ、結合(接合)された2つの枠部材間に隙間が生じる畏れがあるという課題があった。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接合される2つの枠部材間に隙間が生じにくい接合部材及び建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の接合部材は、環状に連結される複数の枠部材のうちの隣接する2つの枠部材を、互いの端部同士を突き合わせて接合する接合部材であって、前記隣接する2つの枠部材のうちの一方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記一方の枠部材とが離間することを規制する規制部と、前記隣接する2つの枠部材のうちの他方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記他方の枠部材とが離間することを許容しつつ前記他方の枠部材を前記一方の枠部材側に押圧する押圧部と、を有することを特徴とする接合部材である。
【0006】
このような接合部材によれば、互いの端部同士が突き合わされた2つの枠部材は、規制部により一方の枠部材から離間することが規制され、また押圧部により他方の枠部材を一方の枠部材側に押圧するので、2つの枠部材が近接する方向に引き寄せられる。このため、接合される2つの枠部材間に隙間が生じることを抑えることが可能である。また、接合部材は他方の枠部材から離間することが許容されているので、2つの枠部材が突き合わされた端部において、他方の枠部材の端部が一方の枠部材の端部に沿わされるように移動可能である。このため、2つの枠部材の間では無理な力が作用しないので、一方の枠部材の端部と他方の枠部材の端部を十分に当接させることが可能である。
【0007】
また、複数の枠部材は連結されて環状をなしているので、他方の枠部材の長手方向に沿って当該他方の枠部材から接合部材が離間することを許容したとしても、環状の枠体に接合された際には他方の枠部材から接合部材は離間し難くなり各枠部材を強固に接合することが可能である。
【0008】
かかる接合部材であって、前記規制部を有する第1部位と、前記押圧部を有する第2部位との境界部が屈曲して繋がっており、前記第1部位と前記第2部位とがなす角度は、前記一方の枠部材と前記他方の枠部材とがなす角度より小さいことが望ましい。
このような接合部材によれば、規制部を有する第1部位と押圧部を有する第2部位とがなす角度が、一方の枠部材と他方の枠部材とがなす角度より小さいので、一方の枠部材と他方の枠部材を接合部材にて接合すると、第1部位と第2部位とのなす角度が僅かに大きくなるように接合部材が変形する。このとき接合部材に作用する、変形を戻す方向の力が一方の枠部材と他方の枠部材をより近づけるように作用する。このため、2つの枠部材間に隙間がより生じにくく、かつ強固に接合することが可能である。
【0009】
また、前記接合部材にて接合される枠部材と、前記枠部材が接合された枠体に設けられた障子と、を有することを特徴とする建具である。
このような建具によれば、建具を構成する枠体が有する各枠部材間が隙間なく接合されるので、美観に優れた建具を実現することが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記枠部材は、前記複数の枠部材が接合された状態において外周側に位置する部位が開放されていることが望ましい。
このような建具によれば、枠体の外周側に位置する部位が開放されているので、複数の枠部材が接合された状態であっても、接合部材が外部に露出される。このため、2つの枠部材の突き合わせ部を接合部材にて接合しやすい枠体を有する建具を実現することが可能である。特に、枠部材とは反対側から枠部材側に接合部材を押圧することが可能なのでより強固に枠部材同士を接合することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結合される2つの枠部材間に間隙が生じにくい接合部材及び建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る接合部材及び建具について図面を参照して説明する。
【0013】
以下の説明では、建物等に取り付けられた建具を屋内側から見たときに上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。
【0014】
本実施形態の建具10は、図1、図2に示すように、引き違いの障子14と、障子14が案内されるレールを有するサッシ枠12と、サッシ枠12の屋内側に設けられる膳板23を含む枠部材が矩形状に接合された枠体20を有している。
【0015】
本実施形態の枠体20は、サッシ枠12と同様に矩形状に形成され、上下に配置される枠部材としての横枠22と、左右に配置される枠部材としての縦枠24とが環状に連結されている。ここで、下側に配置される横枠22が膳板23であるが、以下では上側と同様に横枠22として説明する。これら横枠22及び縦枠24のうち隣接する横枠22と縦枠24とは、図1、図2に示すように接合部材30にて接合されている。すなわち、矩形状に連結された枠体20は、2本の横枠22と2本の縦枠24との突き合わせ部となる4箇所の角部がそれぞれ接合部材30にて接合されている。
【0016】
4箇所の角部における接合構造は、いずれも同様の構成なので、ここでは屋内側から見て左下の角部にて隣接する2つの枠部材としての下側の横枠22と左の縦枠24とを接合部材30にて接合した例について説明する。
【0017】
横枠22と縦枠24とは、いずれも同一の金型にて押出成形されたアルミニウム製の成形部材である。横枠22と縦枠24とは、図3に示すように、矩形状に接合された際に、内側に位置する内周面部22a、24aと、内周面部22a、24aの屋内側の縁と繋がって屋内側に向く面22b、24b及び内周面部22a、24aと間隔を隔てて対向し建物の内壁との間を繋ぐ部位22c、24cを構成する屋内部22d、24dと、内周面部22a、24aの屋外側に設けられてサッシ枠12と接合される屋外部22e、24eとを有し、外周側に位置する部位は開放されている。
【0018】
内周面部22a、24aの外面側、すなわち、開放されている側の面22f、24fには、接合部材30が挿入されるガイド突部22g、24gが設けられている。ガイド突部22g、24gは、接合部材30が横枠22又は縦枠24(本実施形態では横枠22)に挿入される際にガイドとしても機能し、見込み方向に間隔を隔てて2箇所に設けられている。ガイド突部22g、24gは、内周面部22a、24aとほぼ直交するように突出された壁部22h、24hと、壁部22h、24hの先端から内周面部22a、24aと間隔を隔てて対向するガイド部22i、24iとを有している。2つのガイド突部22g、24gの各ガイド部22i、24iは互いに対向する側に突出され、また各ガイド部22i、24iの先端22j、24j同士は互いに間隔が隔てられて位置している。
【0019】
横枠22と縦枠24とは、それらの端部22k、24k同士を突き合わせて接合した際に、横枠22と縦枠24とがほぼ直交するように、各々の接合される端部22k、24kがそれぞれ約45°に切断されている。
【0020】
接合部材30は、例えばステンレス製の部材であり、図3、図4に示すように、2つの枠部材のうちの一方の枠部材としての横枠22の長手方向に沿って、内周面部22aと2つのガイド突部22gとに囲まれる空間に挿入される第1部位としての枠挿入部32と、2つの枠部材のうちの他方の枠部材としての縦枠24を横枠22側に押圧する押圧部34と、枠挿入部32と押圧部34とを繋ぐ腕部36と、を有している。そして、枠挿入部32と腕部36とは屈曲して繋がっている。ここで、押圧部34と腕部36とが第2部位の一例である。
【0021】
枠挿入部32は、ほぼ平板状をなし、挿入方向の先端側に幅方向に延出された延出部32aを有しており、延出部32aからは挿入方向と反対方向に向かって突起32bが設けられている。そして、接合部材30が横枠22に挿入された際に内周面部22aとガイド部22iとの間に位置する突起32bは、延出部32aが幅方向の外側に向かってガイド部22i側に傾斜し、突起32bが挿入方向と反対方向に向かってガイド部22i側に傾斜している。このため、接合部材30の枠挿入部32が横枠22に挿入された際に、突起32bが横枠22のガイド部22iに接触し、ガイド突部22gのガイド部22iを下方に押圧するように付勢し、接合部材30が横枠22から抜けることを防止している。すなわち、この突起32bが、接合部材30と横枠22とが離間することを規制する規制部の一例である。
【0022】
枠挿入部32の延出部32aとは反対側は、腕部36と繋がっており、境界部が屈曲されるとともに腕部36の先端側は押圧部34と繋がっている。腕部36と枠挿入部32とがなす角度は、接合される横枠22と縦枠24とがなす角度(ここでは約90°)より小さな角度、例えば約45°に屈曲されている。腕部36の先端に設けられている押圧部34は、枠挿入部32と約90°をなすように腕部36と繋がっている。腕部36及び押圧部34は、見込み方向の幅が縦枠24に設けられた2つのガイド突部24gの先端24j間の間隔より狭く形成されている。
【0023】
上記接合部材30にて、横枠22と縦枠24とを接合する際には、横枠22と縦枠24との約45°に形成された端部22k、24k同士を突き合わせ、縦枠と24横枠22が約90°をなすように配置した後に、接合部材30の枠挿入部32を横枠22の長手方向に沿って内周面部22aと2つのガイド突部22gとの内側の空間に挿入する。このとき、接合部材30の枠挿入部32と腕部36との屈曲している境界部35を、横枠22と縦枠24との端部22k、24k同士が密着するように木槌等にて横枠22の長手方向に打ち込み、押圧部34を縦枠24の2つのガイド突部24g間にて内周面部24aに当接させる。このとき、押圧部34は縦枠24に当接されているだけなので、縦枠24は接合部材30から離間することが許容されている。
【0024】
また、接合部材30を木槌等にて打ち込むことにより、接合部材30が弾性変形して枠挿入部32と腕部36とのなす角度を僅かに開かせると、押圧部34にて縦枠24を横枠22側に押圧させることが可能であり、横枠22と縦枠24との端部22k、24k同士をより引き寄せて当接させ、横枠22と縦枠24とをより強固に接合することが可能である。
【0025】
本実施形態の接合部材30によれば、互いの端部22k、24k同士が突き合わされた横枠22と縦枠24とは、突起32bにより横枠22から離間することが規制され、また押圧部34により縦枠を横枠22側に押圧するので、横枠22と縦枠24とが近接する方向に引き寄せられる。このため、横枠22と縦枠24との間に隙間が生じることを抑えることが可能である。また、接合部材30は縦枠24から離間することが許容されているので、横枠22と縦枠24とが突き合わされた端部22k、24kにおいて、横枠22の端部22kに縦枠24の端部24kが沿わされるように移動可能である。このため、横枠22と縦枠24との間では無理な力が作用しないので、横枠22の端部22kと縦枠24の端部24kとを十分に当接させることが可能である。
【0026】
また、2本の横枠22と2本の縦枠24とは連結されて環状をなしているので、縦枠24の長手方向に沿って縦枠24から接合部材30が離間することを許容したとしても、環状の枠体20として接合された際には横枠22及び縦枠24から接合部材30は離間し難くなり横枠22及び縦枠24を強固に接合することが可能である。
【0027】
また、接合部材30の、突起32bを有する枠挿入部32と押圧部34と繋がった腕部36とがなす角度が、横枠22と縦枠24とがなす角度より小さいので、横枠22と縦枠24とを接合部材30にて接合すると、枠挿入部32と腕部36とのなす角度が僅かに大きくなるように接合部材30が変形する。このとき接合部材30に作用する、変形を戻す方向の力が横枠22と縦枠24とをより近づけるように力が作用する。このため、押圧部34の押圧力が大きくなる。このため、横枠22と縦枠24との間に隙間がより生じにくく、かつ強固に接合することが可能である。
【0028】
また、枠体20の外周部が開放されているので、横枠22と縦枠24とが環状に接合された状態でも、接合部材30が露出されるので、横枠22と縦枠24との突き合わせ部を接合部材30にて接合しやすい枠体20を実現することが可能である。特に、接合部材30を横枠22及び縦枠24とは反対側から横枠22及び縦枠24側に押圧することが可能なのでより強固に横枠22と縦枠24とを接合することが可能である。
【0029】
そして、上記枠体20と、この枠体20に設けられた障子14と、を有する建具10は、建具10を構成する枠体20が有する横枠22と縦枠24との間が隙間なく接合されるので、美観に優れた建具10を実現することが可能である。
【0030】
上記実施形態においては、横枠22に接合部材30の枠挿入部32を挿入し、押圧部34を縦枠24に当接させる例について説明したが、縦枠に枠挿入部を挿入し横枠に押圧部を当接させても良い。
【0031】
また、上記実施形態では、横枠と縦枠とがいずれも外周部が開放されている例について説明したが、これに限るものではなく、例えば、横枠と縦枠とが中空の部材であっても良い。この場合には、押圧部が当接される側の部材に、接合部材を例えば棒状の部材を介して木槌等にて打ち込むことが可能なように、棒状の部材が挿入可能な穴を設けておくことが望ましい。
【0032】
上記実施形態においては、枠体を膳板を含みサッシ枠の屋内側に設けられる枠体としたが、これに限るものではない。例えば、躯体に取り付けられて障子が嵌め付けられるサッシ枠のような枠体や、ドアが取り付けられる枠体、障子を構成し例えば矩形状に接合された框、など、複数の枠部材にて枠を構成し、隣接する2つの枠部材が互いの端部同士が突き合わされて環状に連結される枠体であれば構わない。さらに、また矩形状に限らず例えば六角形、八角形などの多角形状でも構わない。
【0033】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る枠体及び建具を屋内側からみた外観図である。
【図2】本実施形態に係る枠体の接合部の斜視図である。
【図3】横枠と縦枠との接合部を説明するための分解斜視図である。
【図4】横枠と縦枠との接合部を説明するためのイメージ図である。
【符号の説明】
【0035】
10 建具、14 障子、20 枠体、22 横枠、
22g ガイド突部、22i ガイド部、22k 横枠の端部、
24 縦枠、24g ガイド突部、24k 横枠の端部、
30 接合部材、32 枠挿入部、32b 突起、
34 押圧部、36 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に連結される複数の枠部材のうちの隣接する2つの枠部材を、互いの端部同士を突き合わせて接合する接合部材であって、
前記隣接する2つの枠部材のうちの一方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記一方の枠部材とが離間することを規制する規制部と、
前記隣接する2つの枠部材のうちの他方の枠部材の長手方向に沿って前記接合部材と前記他方の枠部材とが離間することを許容しつつ前記他方の枠部材を前記一方の枠部材側に押圧する押圧部と、を有することを特徴とする接合部材。
【請求項2】
請求項1に記載の接合部材であって、
前記規制部を有する第1部位と、前記押圧部を有する第2部位との境界部が屈曲して繋がっており、
前記第1部位と前記第2部位とがなす角度は、前記一方の枠部材と前記他方の枠部材とがなす角度より小さいこと特徴とする接合部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接合部材にて接合される枠部材と、前記枠部材が接合された枠体に設けられた障子と、を有することを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記枠部材は、前記複数の枠部材が接合された状態において外周側に位置する部位が開放されていることを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144370(P2009−144370A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321260(P2007−321260)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】