説明

接地RFI/EMIシールドを接地するための延出可能なドレイン部材

【課題】 織編した導電性および非導電性フィラメント(14)で形成したRFI/EMIシールド(10)を提供する。
【解決手段】 シールド(10)は、長手方向に継ぎ目(30)を有するスリーブ(12)の形状をなし、継ぎ目(30)を画定する自由縁(32,34)が重なり合う関係に位置するように偏倚されている。1対のフィラメント状ドレイン線(16,18)が、スリーブ(12)を形成するフィラメント部材(14)と連続的に織編され、別のドレイン線(16,18)が、スリーブ(12)に沿って長手方向に織編されている。取付領域の間において、ドレイン線(16,18)はスリーブ(12)の表面上で浮遊し、スリーブ(12)から離れるように延出し、電気接地に取り付けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2001年6月20日に出願された米国予備特許出願第60/299,656号に基づき、優先権を主張する。
本発明は、電磁干渉および無線周波数干渉に対する遮蔽を行うスリーブを接地するために使用可能な導電性ドレイン部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁干渉(EMI)および無線周波数干渉(RFI)には、時間可変電流を搬送する近隣の導電体または電磁波の伝搬の影響を受ける導体間の誘導結合による干渉に起因して、電子部品の適正な機能を妨げるという潜在的な問題がある。例えば、自動車において点火システムまたは電力システムに関連する導体における電流は、エンジンまたは制動システムの機能を制御する電子モジュールのような、種々の電子部品に疑似信号を誘発する虞れがある。かかる疑似信号によって、事故を招いたり、疑似誘導信号が実際の状態を表すかのように制御モジュールを誤動作または応答させ、車両の制御を不能にする潜在的な可能性がある。
【0003】
同様に、コンピュータ・ネットワークやその他の通信システムにおいてデータを搬送する電気配線やライン間の誘導結合は、ネットワーク上を伝送されるデータを破壊させる作用を及ぼす場合がある。
【0004】
EMIおよびRFIの悪影響を効果的に排除するには、EMIの影響を受けやすい部品を適正に遮蔽し接地するとよい。例えば、望ましくない誘導性干渉の影響を受け得る制御信号を搬送するワイヤは、グラッドフェルタ(Gradfelter)の米国特許第4,684,762号(特許文献1)に記載されているような保護スリーブを用いることによって遮蔽することができる。この特許では、スリーブは導電性および非導電性の織編糸(製織(woven)、編組(braided)または編成(knitted))によって形成され、スリーブの製造時にこれらの糸と織編されたドレイン線を通じて、導電性糸が接地され、ドレイン線は導電性糸と電気的に接触する。
【特許文献1】米国特許第4,684,762号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるRFI/EMIスリーブは、電気的干渉を排除するには有効であるが、このスリーブは適正に接地するのが難しい。まず、接地に接続するための自由長のドレイン線を用意するために、遮蔽する線をただ覆うために必要な長さよりも長くスリーブを切断する。次に、ドレイン線周囲でスリーブの一部を切除することによって、自由長のドレイン線を形成する。遮蔽する線の周囲にスリーブを配置し、自由長のドレイン線を接地に接続する。このプロセスは、スリーブを無駄に消費すると共に、設置に時間がかかる。設置者は、必要量よりも長くスリーブを切断し、次いでドレイン線を損傷することなく、スリーブの一部を切除してこれを露出させ、接地に接続しなければならない。RFI/EMI遮蔽を改善して、浪費を減らし、手間を少なくして接地に要する時間を短縮できるようにする必要性があることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無線周波数および電磁干渉に対して、長尺状導電体を保護するシールドに関する。その好適な実施形態では、シールドは、導体を受容する中央空間を有する長尺状スリーブを備えている。スリーブは、複数の互いに織編された可撓性かつ弾性の第1フィラ
メント状部材で形成されている。複数の第1フィラメント状部材は、少なくともその一部に導電性フィラメント部材を含む。1対のフィラメント状ドレイン部材が、スリーブに沿って実質的に長手方向に配向され、第1フィラメント状部材と織編されている。ドレイン部材は、可撓性と導電性とを有し、互いに電気的に接触すると共に、複数の第1フィラメント部材を構成する導電性フィラメント状部材とも電気的に接触している。ドレイン部材の一方は、その長手方向部分がスリーブから離れるように延出可能であり、スリーブを接地するために電気接地に接続可能となっている。
【0007】
好ましくは、一方のドレイン部材は、スリーブに沿って長手方向に離間した関係で配置された複数の不連続な取付領域において、第1フィラメント状部材と織編されている。こうして、一方のドレイン部材は、スリーブの表面に沿って浮遊する複数のセグメントを構成し、これらのセグメントの1つは、不連続な取付領域の各々の間に位置する。一方のドレイン部材は、セグメントの1つにおいて引き出し可能であり、これによって電気接地に接続するためにスリーブから延出可能となっている。表面に沿って浮遊するドレイン部材のセグメントは、取付領域よりも長いことが好ましい。
【0008】
また、本発明によるシールドは、スリーブに沿って長手方向に延び、中央空間に到達できるようにする継ぎ目も備えている。この継ぎ目は、スリーブに沿って長手方向に延びる1対の自由縁によって画定される。偏倚手段がスリーブ内部に配置され、両縁を弾性的に偏倚して、互いに重なり合う関係に置き、継ぎ目を閉鎖する。両縁の一方は、好ましくは、他方と重なり合うように位置し、ドレイン部材は、この一方の縁によって覆われるように、スリーブ上に位置する。
【0009】
好ましくは、ドレイン部材は、撚り合わせた銅線から成り、第1フィラメント状部材は製織によって織編され、ドレイン部材は、第1フィラメント状部材と相互製織されている。効果的なRFI/EMI遮蔽のためには、導電性フィラメント状部材は、重量百分率で、スリーブの約10%〜約80%を構成する。
【0010】
本発明の目的は、容易に接地可能なRFI/EMIシールドを提供することにある。
本発明の別の目的は、長尺状導体に適したスリーブの形状をなすRFI/EMIシールドを提供することにある。
【0011】
本発明の更に別の目的は、ドレイン部材を有するRFI/EMIシールドであって、ドレイン部材がシールドから延出可能であり、電気接地に取付可能としたシールドを提供することにある。
【0012】
本発明のこれらの目的およびその他の目的ならびに利点は、以下の図面および好適な実施形態および代替実施形態の説明を検討することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、無線周波数および電磁干渉に対して長尺状導電体を保護するシールド10を示す。シールド10は、互いに織編した複数の可撓性かつ弾性を有するフィラメント状部材14で形成されている。フィラメント状部材という用語は、ここで用いる場合、繊維、フィラメント、糸、あるいは編成、製織、編組、またはその他の方法で織編しある構造を形成するのに適した形態の材料による1本または複数本の連続的な撚糸に対する包括的な用語とする。フィラメント状部材は、互いに撚り合わされた多数の繊維、撚らずに集合的に配置した多数の繊維、集合的に配置または互いに撚り合わせた多数のフィラメント、およびモノフィラメント(monofilament)を含む。
【0014】
フィラメント状部材14の織編(interlacing)は、製織(weaving
)によって行うことが好ましいが、編組または編成によって行ってもよい。フィラメント状部材14の少なくとも一部は導電性である。導電性フィラメント状部材は、好ましくは、銀被覆ナイロン・モノフィラメントであり、非導電性フィラメント状部材は、好ましくは、撚り合わせた二成分ポリエステル糸(twisted bi−component polyester yarn)である。効果的な遮蔽のためには、導電性フィラメント状部材は、重量百分率では、スリーブ12の約10%〜約80%を構成することが好ましい。
【0015】
1対のフィラメント状ドレイン部材16,18を、フィラメント部材14と織編する。ドレイン部材16,18は、導電性であり、互いに電気的に接触していると共に、導電性フィラメント状部材14とも電気的に接触している。(ドレイン部材16,18は、図1では便宜上、物理的に離間して示されているが、実際には、これらはスリーブ12内において物理的に接触している。)ドレイン部材は、可撓性のためには撚った銅線から形成することが好ましく、耐腐食性のためには錫を被覆することが好ましい。ドレイン部材の実用的なサイズは、18ゲージ〜24ゲージの範囲であり得る。好適な24ゲージ・ドレイン部材は、互いに撚り合わせた36ゲージ錫被覆銅線から成る19本の撚り線から成る。32ゲージ線の7本の撚り線というような、その他の構成も実用可能である。
【0016】
ドレイン部材16,18は、スリーブに沿って実質的に長手方向に配向され、ドレイン部材16の長手方向部分20はスリーブから延出可能であり(仮想線で示す)、スリーブ12を接地するため電気接地22(模式的に示す)に接続可能である。
【0017】
図1に示す実施形態では、ドレイン部材18は、スリーブ12の長さに沿って実質的に連続的にフィラメント状部材14と織編されており、一方ドレイン部材16は、スリーブに沿って長手方向に離間した関係で配置された複数の不連続な取付領域24において、フィラメント状部材14と織編されている。取付領域の間では、ドレイン部材16のセグメント26が、スリーブ12の表面28上で浮遊して複数の部分20を形成する。これらは、スリーブおよびドレイン部材を切断して個々の遮蔽する長尺状導体の長さにスリーブを合わせる際に、スリーブから延出可能となっている。この実施形態では、浮遊セグメント26を取付領域24よりも長くして、スリーブ12を切断する位置には無関係に、2カ所の取付領域24の間にあるセグメント26において切断し易くすることが好ましい。
【0018】
図1Aに示すスリーブの好適な実施形態では、ドレイン部材16,18の双方が、スリーブに沿って長手方向に離間された関係で設けられた複数の不連続領域24においてフィラメント状部材14と織編されている。これらの取付領域の間では、両ドレイン部材のセグメント26がスリーブ12の表面28上部で浮きあがっており、接地に取り付けるためにスリーブから延出可能な複数の部分を形成する。ドレイン部材16の取付領域24は、ドレイン部材18上の浮遊セグメント26に隣接して配置することが好ましく、ドレイン部材18の取付領域24は、ドレイン部材16上の浮遊セグメント26に隣接して配置することが好ましい。この配置によって、スリーブの長手方向のどの位置でセグメント26を切断しても、スリーブ12から延出させるためにセグメント26を確実に利用できるようになる。
【0019】
好ましくは、スリーブ12は、長手方向に延びる継ぎ目30を有し、これは、同様にスリーブに沿って長手方向に延びる1対の自由縁32,34によって画定される。継ぎ目30から、スリーブ12に包囲されている中央空間36に到達し、スリーブ内部に長尺状導体を配置することができる。スリーブは、偏倚手段38を有し、これが縁32を弾性的に偏倚して縁34と重なるようにして、表面上継ぎ目30を閉鎖している(継ぎ目は、縁32,34を手で離間させることによって、容易に開くことができる)。ドレイン部材16,18は、スリーブ12上に配置され、自由縁32によって被覆され、これによって、浮
遊セグメント26との間で生ずる虞れがある短絡を防止する。ドレイン部材16,18の好ましい位置は、図1に示すように、自由縁34に隣接する。
【0020】
偏倚手段38は、好ましくは、フィラメント状部材14と織編され、スリーブ12の長軸42に対して実質的に横断方向に配向された、補助フィラメント状部材30から成る。補助フィラメント状部材40は、好ましくは、熱プラスチックのような弾性的に硬化可能な材料、あるいはステンレス鋼またはニチノールのような金属から成るモノフィラメントである。かかる材料から成るモノフィラメントは、例えば、円形曲線に補助フィラメント状部材を弾性的に固定し、自由縁32を弾性的に偏倚させ、自由縁34と重なり合う関係に置くことができる。
【0021】
使用時には、図1に示すシールド10の好適な実施形態を、遮蔽する長尺状導体に適した長さに切断する。縁32,34を手作業で離間し、導体周囲にスリーブを配置する。セグメント26の引き離した部分20を、自由縁32,34の間から引き出し、近隣の電気接地に取り付ける。セグメント26は、導体に合わせるためにスリーブを切断した結果として引き離すこともでき、その場合、引き離されたセグメント26は、スリーブの切断端付近で、スリーブから延出する。セグメント26上ではなく、取付領域24においてスリーブを切断すると、切断された取付領域からドレイン部材16を引き出し、スリーブから延出することができる。また、セグメント26だけを引き離し、スリーブの長さに沿ったいずれかの位置において両縁間からこれを引き出し、接地に取り付けることも可能である。
(代替実施形態)
図2は、本発明によるスリーブの代替実施形態50を示し、二重織編ドレイン部材52,54を有する。スリーブ50は、好ましくは、製織構造とし、導電性および非導電性フィラメント状部材56,58の双方から成る。
【0022】
弾性可撓性補助フィラメント状部材60は、これらを特定の形状に偏倚または固定し、弾性的にその形状に戻すことができる材料から成り、好ましくは、フィラメント状部材56,58と相互に製織して、スリーブに所望の形状および剛性を与えるようにする。好適な形状は、実質的に管状であり、開放継ぎ目62が管に沿って長手方向に形成され、重ね合わせた関係に置かれた縁64,66によって画定される。補助フィラメント状部材60は可撓性であるので、縁64,66を引き離すと、継ぎ目62を一時的に開くことができ、これによってスリーブ内部に到達することができる。部材60の弾性的偏倚のために、継ぎ目を閉じることができ、スリーブの両縁はその重ね合わせの関係に戻り、スリーブは両縁の解放時に再度その管形状に戻る。
【0023】
この代替実施形態では、スリーブ50は、撚った二成分糸から成り、導電性糸56は銀めっきしたナイロンであり、非導電性糸58はポリエステルである。製編した実施形態では、導電性糸56は、縦方向および横方向双方にあり、横糸は縦糸よりも比較的大きな割合の銀めっき含有量を有する。弾性補助フィラメント状部材60は、縦方向に互いに製編されており、好ましくは、ポリエステルのように、部材60を熱によって管形状に硬化(set)または偏倚(bias)させる熱プラスチックから成るモノフィラメントである。
【0024】
製編によって糸を織編することに加えて、スリーブを編組(braided)または編成(knitted)することもできる。カーボン、グラファイト、または導電性ポリマのような導電性材料で形成したその他の導電性糸、および銀以外の導電性被膜を有する非導電性糸も、導電性糸56を構成することができる。効果的なRFI/EMI遮蔽が得られるのは、導電性糸56が、重量百分率で、スリーブを形成する織物の約10%〜約80%を構成する場合である。
【0025】
2つのドレイン部材52,54を導電性および非導電性糸56,58、ならびに弾性部材60と共に織編し、図2および図3に示す実施形態では、スリーブ50に沿って長手方向に並んで織り混ぜる。ドレイン部材52,54は、互いに電気的に接触し、更にスリーブのほぼ全長に沿ってスリーブと電気的に接触するので、スリーブを確実に接地することができる。好ましくは、ドレイン部材を撚り合わせ、銅で構成すると、可撓性を高め、優れた導電性が得られる。銅の撚り線は、錫を被覆して腐食を防止することが好ましく、ドレイン部材の実用的なサイズは、18ゲージ〜24ゲージの範囲を取り得る。好適な24ゲージ・ドレイン部材は、36ゲージの錫被覆銅線を互いに撚り合わせた、19本の撚り線から成る。32ゲージ線から成る7本の撚り線というような、その他の構成も実用可能である。
【0026】
本発明によるスリーブを接地するには、ドレイン部材の一方を接地に、例えば、自動車の金属シャーシまたは本体部、あるいは電子ハウジング自体を接地してあればその金属支持枠に接続しなければならない。かかる接続は、図4に示すように、容易に行われ、その際、ドレイン部材52の1つを部分的にスリーブから引き出し、部分68がスリーブから延出するようにする。延出部分68は、ラグまたはボルトを接地することによって、容易に接地に取り付けることができる。ドレイン部材52の一部をスリーブ10から引き出す場合であっても、ドレイン部材54はほぼスリーブの全長にわたってスリーブと接触していることには変わりなく、したがってスリーブの全長にわたって、接地への効果的な導通路を設けることができる。
【0027】
また、スリーブ50は、外側(図4に示すように)または内側に、非織物被覆(non−textile covering)または被膜51を有してもよい。非織物被覆は、ポリプロピレン、ABSおよびポリエステルのような可撓性ポリマから形成することができ、スリーブを電気的に絶縁し、スリーブに防水性を与え、あるいはスリーブを磨滅またはその他の物理的な損傷から保護する層を設ける。
【0028】
スリーブ50が比較的長い場合、ドレイン部材と導電性および非導電性の線、ならびに織編されている弾性部材60との間の摩擦のために、ドレイン部材を引き出すことが困難な場合もあり得る。この困難は、図5に示すように、スリーブ50の端部72から離れた位置70においてドレイン部材52を切断し、この位置70からドレイン部材を引き出すことによって、容易に解消される。位置70を選択する際、適当な長さの線74がスリーブから延出し、そして都合のよい接地に容易に接続することができるが、なおもスリーブと織編した十分な長さ76を残し、(1)他のドレイン部材54および導電性糸56との適正な電気的接続を維持すること、および(2)長さ76を非常に長くして摩擦のために容易に引き出すことが困難となることもなく、スリーブ50に対する確実な物理的接続を維持することができるようする。
【0029】
図6から図8は、本発明によるスリーブの更に別の代替実施形態を示す。ここでは、ドレイン部材52,54は、現時点における好適な実施形態とは異なる構成となっている。
図6が示すドレイン部材52,54は、互いに撚り合わされ、スリーブ50を形成するフィラメント状部材および補助部材と織編されている。撚り合わせた線によって、ドレイン部材間に接触点を確実に維持するが、ドレイン部材をスリーブから引き出す際の容易性がいくらか犠牲となる。
【0030】
図7は、スリーブ50の長さに沿って実質的に直線状となっているドレイン部材54周囲に螺旋状に巻回されたドレイン部材52を示す。この実施形態では、直線性のために、ドレイン部材54を容易に引き出して接地に接続できると考えられる。ドレイン部材52の螺旋状巻回によって、効果的な接触も引き続き維持されている。
【0031】
図8は、同様にスリーブ50に沿って実質的に直線状のドレイン部材54、一連の相互接続されたセグメント78の形状に織編されたドレイン部材52を示す。セグメント78は、ドレイン部材54全域にわたって交差している。ドレイン部材52の各セグメント78は、ドレイン部材54に対して角度80に配向され、各セグメントの角度は、隣接するセグメントの角度とは逆の傾きを有し、したがって、ドレイン部材52はスリーブに沿ってジグザグ・パターンに配されており、交差点82においてドレイン部材54と接触している。
【0032】
図9は、代替実施形態のスリーブ54を示し、これは開放長手方向継ぎ目を有していない。スリーブ84は製織または編成してもよいが、好ましくは、導電性および非導電性フィラメント状部材56,58を編組し、織物(braid)内に織り込まれたドレイン部材52,54を有する。ドレイン部材を相互編組せずに、編組パターンを崩すことなく、これらを互いに、そしてスリーブを構成する導電性フィラメント状部材56と容易に接触させることができるようにすることが好ましい。また、ドレイン部材を編み込むことによって、これらを更に簡単にスリーブから引き出し、接地接続を行うことが可能となる。何故なら、ドレイン部材は実質的に直線状であり、これらが相互編組されている場合よりも少ない交差点によってスリーブに結合され、したがってスリーブとドレイン部材との間の摩擦が減少するからである。編組構造にのみ伴う「格子効果」(trellis effect)によって、編組されたスリーブは、長手方向に圧縮を受けたときには半径方向に伸張し、長手方向に張力を受けたときには半径方向に収縮する。これは、ドレイン部材におけるレイド(laid)の引き出しを容易にするのに特に有用である。スリーブを長手方向に圧縮することによって、付随する半径方向の伸張が発生すると、スリーブを形成するフィラメント状部材は互いに離間し、ドレイン部材上におけるこれらの把持力が弱まり、これらを容易に外側に引き出すことが可能となる。ドレイン部材の相対的な剛性や直線性も、スリーブにかかる圧縮力に抵抗するのに役立ち、スリーブが圧縮されるときにドレイン部材の端部をスリーブから延出させ、こうして端部を手でまたは器具を用いて握るための便利な力点(purchase)が得られる。
【0033】
また、本発明では、図10に示すスリーブの実施形態86が織編フィラメント状部材で形成されたのではない、二重ドレイン部材の概念の使用も想定している。非織編スリーブ86は、好ましくは、複数の層から成る積層体であり、少なくとも外層88および内層90を有し、これらの間にドレイン部材52,54が封入されている。好ましくは、ドレイン部材をチャネル92内部に閉じ込め、通路92がこれらを互いに接触させ、更にそれぞれ内層および外層の境界面94,96と接触させた状態を保つ。導電性被膜98を境界面94または96のいずれかに配置すれば、RFI/EMI遮蔽を設けることができる(被膜は表面96上に示されている)。ドレイン部材は、被膜98と接触し、通路92内部で摺動可能であり、通路から外に引き出して、接地への接続を行うことができる。
【0034】
非織編スリーブは、ポリエステル、ポリプロピレン、およびABSのような弾性、可撓性ポリマから形成することが好ましく、導電性被膜98は、比較的薄い真空被覆アルミニウム層とするとよい。
【0035】
本発明による延出可能ドレイン部材は、図11に示すような、平坦状織物シールド100上でも用いることができる。この場合、ドレイン部材52,54は、シールドを形成する導電性および非導電性フィラメント状部材56,58と織り交ぜられる。
【0036】
本発明による延出可能ドレイン部材を用いたRFI/EMIスリーブは、RFI/EMI遮蔽の一層効率的な適用を可能にする。何故なら、ドレイン部材を切断する必要がないのでスリーブを接地するために必要なステップが少なくて済み、更にスリーブを必要以上
に長い長さに切断する必要がないのでスリーブ材料を無駄にすることがなく、十分な長さのドレイン部材を設けて接地に接続すればよいからである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による、延出可能なドレイン部材を有するRFI/EMIシールドの好適な実施形態の斜視図。
【図1A】図1に示すシールドの一部を拡大した斜視図。
【図2】本発明による、延出可能なドレイン部材を有するRFI/EMIシールドの代替実施形態の斜視図。
【図3】図2の線3−3に沿った断面図。
【図4】図2に示したシールドの斜視図であり、ドレイン部材の1つをシールドから引き出して示す図。
【図5】図2に示したシールドの斜視図であり、ドレイン部材の1つを切断しシールドから引き出して示す図。
【図6】本発明による、延出可能なドレイン部材を有するRFI/EMIシールドの代替実施形態の斜視図。
【図7】本発明による、延出可能なドレイン部材を有するRFI/EMIシールドの代替実施形態の斜視図。
【図8】本発明による、延出可能なドレイン部材を有するRFI/EMIシールドの代替実施形態の斜視図。
【図9】編組され長手方向の縫い目がない本発明によるRFI/EMIシールドの、代替実施形態の斜視図。
【図10】織り合わせたフィラメント状部材で形成したのではない、本発明によるRFI/EMIシールドの実施形態の斜視図。
【図11】平坦なRFI/EMIシールド上で用いられるドレイン部材の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数および電磁干渉に対して前記導体を保護すると共に、前記導体からの電磁放射線を防止する長尺状導電体用シールドであって、
前記導体を受容する中央空間を有し、かつ前記中央空間を包囲する導電性表面を有するスリーブと、
前記スリーブに沿って実質的に長手方向に配向された1対のフィラメント状ドレイン部材であって、該ドレイン部材は、可撓性および導電性を有し、互いに電気的に接触していると共に前記導電性表面とも電気的に接触し、前記ドレイン部材の一方が、前記スリーブから離れるように延出可能であり、前記スリーブを接地するために電気接地に接続可能な長手方向部分を有するフィラメント状ドレイン部材とを備えたシールド。
【請求項2】
前記スリーブは、互いに織編された複数のフィラメント状部材から成り、前記フィラメント状部材の少なくとも一部が導電性を有し、前記導電性表面を形成する前記スリーブ全域に分散し、前記ドレイン部材は前記フィラメント状部材と織編され、前記ドレイン部材の一方が、前記スリーブに沿って長手方向に摺動可能であり、前記スリーブの一端から延出可能であることにより、前記スリーブを接地するために電気的接地に接続可能な前記長手方向部分を形成する、請求項1記載のシールド。
【請求項3】
前記可撓性長尺状スリーブは、互いに実質的に接触する境界面を有し、同軸状に装着された1対の第1スリーブ部材および第2スリーブ部材を備え、前記境界面の一方が前記導電性表面であり、前記境界面間で前記ドレイン部材を捕捉し、前記ドレイン部材の一方が、前記境界面間において前記スリーブに沿って長手方向に摺動可能であり、前記スリーブの一端から延出可能であり、これによって前記スリーブを接地するために電気接地に接続可能な前記長手方向部分を形成する、請求項1記載のシールド。
【請求項4】
前記同軸状に装着されたスリーブ部材は、実質的に連続するプラスチック・メンブレーンから成る、請求項3記載のシールド。
【請求項5】
前記導電性表面が前記境界面の一方の上に位置する金属被膜から成る、請求項4記載のシールド。
【請求項6】
前記導電性表面が金属箔から成る、請求項5記載のシールド。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−193106(P2008−193106A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35875(P2008−35875)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【分割の表示】特願2003−507864(P2003−507864)の分割
【原出願日】平成14年6月13日(2002.6.13)
【出願人】(503170721)フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッド (32)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Powertrain, Inc.
【住所又は居所原語表記】26555 Northwestern Highway, Southfield, Michigan 48034, U.S.A.
【Fターム(参考)】