説明

接点信号送受信機及びそれを用いた通信システム

【課題】無線通信によりデータ送受信が可能な接点信号送受信機を複数台用いて、一の接点信号送受信機において接点入力をデジタル信号に変換し、他の接点信号送受信機において受信したデジタル信号をシリアル出力へ変換し、その逆の送受信も可能とする。
【解決手段】親機(1a)と子機(1b)あるいは中継機(1c〜1e)を介して無線通信によりデータ送受信が可能な通信システムにおいて、当該親機、子機、中継機として用いられる接点入力をデジタル信号に信号処理すると共に、受信したデジタル信号をシリアル出力に変換する無線通信モジュール7と、上記無線通信モジュール7を制御する制御部としてのCPU2とを備えたことを特徴とする接点信号送受信機が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレメータシステム等に好適な接点信号送受信機(Contact signal transceiver)及びそれを用いた通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場やプラントなどの敷地内で各設備や監視機器の接点入出力を管理、制御装置まで伝送するために、接点ケーブルが埋設されていた。
【0003】
一方、特許文献1では、センサー端末、センサーネットワークシステム及びその制御方法が開示されている。即ち、同技術では、無線通信ネットワークを各装置間の中継伝送で実現することにより電波の送信出力を抑え省電力化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−122550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術のように接点ケーブルを埋設すると、当該接点ケーブルの定期的な交換が必要であり、煩雑であった。また、接点ケーブルが物理的な外力によって破断した場合、修復作業が為されるまで通信機能は途絶してしまうと共に、修復には都度の作業費用も伴うことが問題となっていた。更に接点ケーブルは目視可能な為、ケーブルの外観を辿ることでシステムの機能を外部から推察されてしまう場合もあった。また、工事費、撤去費等の費用が機器設備費用よりも多額になる場合もあった。そして、試験プラントや仮設工場など一時的簡易的に管理、制御する場合には不向きであった。
【0006】
また、無線LANや有線LAN、RS-232、RS-485等の通信規格機器などにより接点入出力を制御するにはPLC(Programmable Logic Controller)やコンピュータとの通信を介して制御機器に信号を送る構造となっているために、単純な接点の送受信に用いられるケーブルの代用が求められていた。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、無線通信によりデータ送受信が可能な接点信号送受信機を複数台用いて、一の接点信号送受信機において接点入力をデジタル信号に変換し、他の接点信号送受信機において受信したデジタル信号を接点出力へ変換し、その逆の送受信も可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の第1の態様の接点信号送受信機では、無線通信により親機、子機、中継機として、構成されるデータ送受信が可能な通信システムにおいて、データ入力部と、受信したデジタル信号をシリアル出力に変換する無線通信モジュールと、上記無線通信モジュールを制御する制御部とを備え、無線通信において接点信号を送受信することを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の態様に係る通信システムでは、親機と子機との間を無線通信により接続して通信網を構成する通信システムであって、前記子機は、接点データを入力するデータ入力部と、前記親機への無線通信をするための信号処理を行う子機無線通信モジュール部と、前記データ入力部及び前記無線通信モジュール部を制御する子機制御部とを備え、前記中継機は、前記親機から送信されたデジタル信号を前記子機へと中継し、前記子機から送信されたデジタル信号を前記親機へと中継するための信号処理を行う中継機無線通信モジュール部と、前記無線通信モジュール部を制御する中継機制御部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明の接点信号送受信機及びそれを用いた通信システムによれば、無線通信によりデータ送受信が可能な接点信号送受信機を複数台用いて、一の接点信号送受信機において接点入力をデジタル信号に変換し、他の接点信号送受信機において受信したデジタル信号を接点出力へ変換し、その逆の送受信も可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機の構成を示す図である。
【図2】(a)は本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機の外観図であり、(b)は当該接点信号送受信機の背面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機を用いた通信システムの構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機を用いた通信システムの構成を示す図である。
【図5】(a)は設定PCを用いた初期設定の様子を示す図であり、(b)は接点信号送受信機を用いた通信システムによる双方向通信の様子を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機における基本設定画面を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機における通信設定画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の接点信号送受信機及びそれを用いた通信システムに係る好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の接点信号送受信機及びそれを用いた通信システムは、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
【0013】
図1には本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機の構成を示し説明する。
【0014】
同図に示されるように、この接点信号送受信機1は、全体の制御を司るCPU2と、設定PC18との接続インターフェースとして機能するRS−232Cインターフェース部4と、RS−485インターフェース部10と、シリアル変換部5と、メモリ6と、無線通信モジュール7と、アンテナ8と、デジタル(接点)入力部11と、リレー(接点)出力部12、通信異常警報出力部3とを備えている。CPU2は、電源9にも接続されている。
【0015】
RS−232Cインターフェース部4は、設定PC18等を接続してアドホックモードでの通信設定や機能設定などを行う事が可能である。RS−485インターフェース部10には、設定PC19が接続される。
【0016】
なお、RS−232Cインターフェース部4に接続される設定PC18としては、ノート型パーソナルコンピュータでも良く、専用の電子機器であっても良い。設定PC19についても同様である。
【0017】
デジタル(接点)入力部11は、センサー13等に直接接続することもでき、種々の測定機器の如き外部装置14に接続してデータの接点入力を受けるようにすることが可能である。リレー(接点)出力部12の出力には、センサー15等が接続され、或いは種々の測定機器の如き外部装置16が接続され、データが出力される。
【0018】
メモリ6には、プログラムやデータなどが格納される。そして、無線通信モジュール7は、ZigBee(登録商標)規格に準拠する信号を作成するチップであり、アンテナ8を介してデータの送受信を行う。即ち、無線通信モジュール7では、所定の周波数(例えば2.4GHz)によるDSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)変調方式等が採用され、帯域が例えば16チャンネルに分割されて、無線通信が行われる。また、無線通信モジュール7が採用するZigBee規格は、IEEE 802.15.4に準拠しており共通鍵暗号アルゴリズムのAES(Advanced Encryption Standard)による暗号化も行われる。
【0019】
CPU2等に接続される電源9は、電灯線などの給電手段の他、太陽電池、乾電池、蓄電池、燃料電池、或いはその他の無停電電源などの給電手段を用いることもできる。本実施形態に係る接点信号送受信機では、前述の如きZigBee(登録商標)規格が採用されていることから、長時間の運転においても低消費電力化が可能であり、太陽電池や乾電池などの独立した給電手段でも機能することになる。
【0020】
尚、無線通信モジュール7を1つのチップとして説明したが、CPU2やメモリ6を含めてチップ化した回路構成とすることも可能である。また、外部機器とのインターフェース部を、RS−232Cではなく、イーサネット(登録商標)等の有線LANケーブル、USBやその他の接続方式にすることも可能である。
【0021】
次に図2(a)には本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機1の外観図を示し、図2(b)には当該接点信号送受信機1の背面図を示し説明する。
【0022】
図2(b)に示されるように、接点信号送受信機1の背面には、各種の入出力ポートが設けられている。即ち、デジタル入力ポート21、リレー出力ポート22、通信異常警報出力ポート23、RS−485ポート24、RS−232Cポート25、電源入力ポート26が設けられている。
【0023】
次に、図3には本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機を複数用いた通信システムの基本機能について説明する。
【0024】
同図に示されるように、一の接点信号送受信機(親機)1aには警報盤30が接続されており、当該親機1aとWiMoSによる無線通信が可能な他の接点信号送受信機(子機)1bには警報ランプ31や警報ベル32、ドアスイッチ33、押しボタン34等が接続されている。各接点信号送受信機1a,1bは、ZigBee(登録商標)通信規格に準拠した通信モジュールを搭載しており、2.4GHz帯を利用した無線通信が可能である。特に、ZigBee(登録商標)規格に準拠することで、他の無線通信規格ではできない低消費電力での作動が可能となり、十分な給電が困難な子機に対しても例えば太陽電池などの給電手段により無理なく作動させることもできる。親機1aは、警報ランプ31や警報ベル32等を集中的に管理するための警報盤30に接続されており、異常などが発生した場合には、警報を行って異常事態を伝えることができる。
【0025】
通信方式について更に説明すると、通信規格はZigBee(登録商標)無線(IEEE802.15.4準拠)、認証済みモジュールを使用、周波数帯域は2410〜2475MHz、1チャンネル周波数帯域が5MHz、利用チャネル数14、グループID6000〜6009の10ID、変調方式はO−QPSK,DSSS、通信速度は250Kbps、CSMA/CA方式を採用している。通信距離は最大800m〜1000mとなっているが、周辺環境により変動する。
【0026】
ここで、図4には本発明の一実施形態に係る接点信号送受信機の中継機能を用いた通信システムの構成を示し説明する。
【0027】
同図に示されるように、この通信システムは、警報盤30が接続された一の接点信号送受信機(親機)1aと、警報ランプ31や警報ベル32、ドアスイッチ33、押しボタン34等が接続された他の接点信号送受信機(子機)1bの間に、接点信号送受信機(中継機)1c〜1eが介在し、中継機能により柔軟な通信経路を設定可能としている。
【0028】
即ち、接点信号送受信機(中継機)1c〜1eが中継機能を有しており、通信距離を延ばしたい場合や、雨や樹木などの障害物がある場合など、フィールドの状況に応じて柔軟に通信経路を設定することができる。
【0029】
従って、この通信システムによれば、無線通信によりデータ送受信が可能な接点信号送受信機を複数台用いて、一の接点信号送受信機において接点入力をデジタル信号に変換し、他の接点信号送受信機において受信したデジタル信号を接点出力へ変換し、その逆の送受信も可能とすることができる。
【0030】
このような通信システムにおいて、中継機1c〜1eや子機1bは、個別に設定PCと接続すれば、各種の設定について再設定することができる。
【0031】
図5(a)は、中継機1c〜1eや子機1bを初期設定しているところを示す模式図であり、設定PC18をRS−232Cインターフェース部4を介して接続させることで中継機1c〜1eや子機1bの諸機能を設定できる。この中継機1c〜1eや子機1bと設定PC18を接続する際には、親機1aとの無線通信によるデータ送受信は不要である。単に子機1b等の通信設定に不具合が生じた場合などにおいては、親機1aを介して全部の子機を再設定するような作業は必要なく、不具合が生じた中継機1c〜1eや子機1bの通信設定だけをその場で素早く直す作業が可能である。
【0032】
図5(a)の初期設定では、設定項目として無線周波数帯や通信グループID、通信の暗号化の有無等が設定されることになる。詳細は後述する。そして、このような初期設定の後、図5(b)に示されるように各機にケーブルを接続して電源を投入すれば、設置が完了することになる。同図においては、子機1bに警報ランプ41が接続されており、親機1aに押しボタン40が接続されており、双方向通信が可能となっている。
【0033】
次に、図6、図7は、それぞれ子機1bや中継機1c〜1eに接続して再設定する場合の設定PC13側のモニター画面を示す図であり、図6は基本設定の画面を示し、図7は通信設定の画面を示す。
【0034】
先ず、図6に示す子機1bや中継機1c〜1e等の基本設定画面51においては、データ送信間隔を設定することができ、プルダウンメニュー53で分、時間、日などの単位を選択し、その前のボックス52に設定する数値を入力する。また、4つの接点信号線の使用若しくは未使用を設定するために、各チェックボックス55が設けられており、チェックボックス55にチェックが入れられた接点信号線は使用できるように設定される。画面の下段に位置するチェックボックス56は、接点信号変化時にその変化した信号を即時送信するか否かの設定のためのものであり、チェックボックス56にチェックを入れることで、接点信号が変化した時に即時送信することが可能となる。また、設定を確定させるOKボタン57と、設定をキャンセルするキャンセルボタン58も設けられている。
【0035】
次に、図7に示す子機1bや中継機1c〜1e等の通信設定の画面61においては、PAN型ネットワークのIDを入力する入力欄62と、チャンネル番号を入力する入力欄63と、暗号化キーの入力欄64とを有しており、また、設定を確定させるOKボタン65と、設定をキャンセルするキャンセルボタン66も設けられている。これらの数値を入力することで、所定のネットワークとしての設定がなされる。
【0036】
このように、本実施形態の接点信号送受信機では、アドホックモードで子機や中継機を親機と無線接続せずに、個別に設定PCと接続させて各種の設定を行うことができる。このため、例えば一部の子機や中継機で通信設定などの設定事項にずれ等が生じた場合でもシステム全体を再設定するような大掛かりなことをせずに、問題のある子機だけを再設定して迅速な復旧を図ることができる。
【0037】
以上詳述したように、本発明の実施形態によれば、親機(1a)と子機(1b)との間を中継機(1c〜1e)を介して無線通信によりデータ送受信が可能な通信システムにおいて、当該親機、子機、中継機として用いられる接点信号送受信機において、接点入力をデジタル信号に信号処理すると共に、受信したデジタル信号をシリアル出力に変換する無線通信モジュール7と、上記無線通信モジュール7を制御する制御部としてのCPU2とを備えたことを特徴とする接点信号送受信機が提供される。
【0038】
更に、本発明の実施形態によれば、親機(1a)と子機(1b)との間を中継機(1c〜1e)を介して無線通信により接続して通信網を構成する通信システムであって、前記子機(1b)は、前記親機(1a)への無線通信をするための信号処理を行う子機無線通信モジュール部7、前記データ入力部及び前記無線通信モジュール部を制御する子機制御部としてのCPU2とを備え、前記中継機(1c〜1e)は、前記親機から送信されたデジタル信号を前記子機へと中継し、前記子機から送信されたデジタル信号を前記親機へと中継するための信号処理を行う中継機無線通信モジュール部7と、前記無線通信モジュール部を制御する中継機制御部としてのCPU2とを備えることを特徴とする通信システムが提供される。
【符号の説明】
【0039】
1 接点信号送受信機
2 CPU
3 通信異常警報出力部
4 RS−232Cインターフェース部
5 シリアル変換部
6 メモリ
7 無線通信モジュール
8 アンテナ
9 電源
10 RS−485インターフェース部外部装置
11 デジタル(接点)入力部
12 リレー(接点)出力部
13,15 センサー
14,16,17 外部装置
18,19 設定PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により親機、子機、中継機として、構成されるデータ送受信が可能な通信システムにおいて、データ入力部と、受信したデジタル信号をシリアル出力に変換する無線通信モジュールと、上記無線通信モジュールを制御する制御部とを備え、無線通信において接点信号を送受信することを特徴とする接点信号送受信機。
【請求項2】
通信異常警報機能を具備することを特徴とする請求項1に記載の接点信号送受信機。
【請求項3】
親機と子機との間を無線通信により接続して通信網を構成する通信システムであって、
前記子機は、
接点データを入力するデータ入力部と、
前記親機への無線通信をするための信号処理を行う子機無線通信モジュール部と、
前記データ入力部及び前記無線通信モジュール部を制御する子機制御部とを備え、
前記中継機は、
前記親機から送信されたデジタル信号を前記子機へと中継し、前記子機から送信されたデジタル信号を前記親機へと中継するための信号処理を行う中継機無線通信モジュール部と、
前記無線通信モジュール部を制御する中継機制御部とを備えること
を特徴とする通信システム。
【請求項4】
通信異常警報機能を具備することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−30118(P2013−30118A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167422(P2011−167422)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(596166324)テクノ・モリオカ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】