説明

接点部材及びその製造方法

【課題】電子部品の微細化によっても電子部品とマザー基板間の導通接続を良好に図ることが可能な接点部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】接点6、7の弾性腕6b、7bは例えば内部応力により変形させられ、接点部材3の微細化においても、適切に前記弾性腕を弾性接点として用いることが出来る。このため電子部品2とマザー基板1どうしの熱膨張係数の差に起因する歪みを前記接点6,7により適切に吸収できる。またシート部材4、5には貫通孔10,11が形成され、弾性腕が前記貫通孔を通り、シート部材から突出した状態になっているから、前記接点6、7の弾性腕のみが適切にマザー基板1及び電子部品2の所定位置上に当接する。従って本実施形態では接点の信頼性の高い接点部材構造を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIC等の電子部品とマザー基板間等に設けられる接点部材に係り、特に、簡単な構造にて電子部品とマザー基板間の導通接続を適切に図ることが可能な接点部材及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
マザー基板とIC等の電子部品との間に配置され、前記マザー基板と電子部品間を導通接続させるための中継基板として、インターポーザが知られている。
【0003】
前記インターポーザは、基台の上下に接点部を形成し、前記基台に貫通孔を設け、前記貫通孔を介して上下に形成された接点部を導通接続させた構造などで形成される。
【0004】
しかし上記したインターポーザ構造には、次のような問題点があった。すなわち前記基台の上下面に接点部を加工精度良く形成することが必要であるが、特に電子部品の微細化によって前記接点部自体の形態も非常に小さく形成しなければならない。特に前記接点部には、電子部品とマザー基板との熱膨張係数差に起因する歪みを適切に吸収させる等のために、弾性接点であることが求められるが、微細加工で弾性接点を形成することは非常に難しい。しかも前記基台の上下面に前記接点部を形成することが必要であり、かかる場合、基台と接点部とを別々に形成し、その後、前記基台の所定箇所に前記接点部を接合等する。しかし前記接合のときに、前記接点部を所定位置上に正確に接合させることは、インターポーザが微細化するほど非常に難しい。しかも前記基台に貫通孔を設け、さらに前記貫通孔内に導電材料層を埋め込む等の必要があることから、製造工程が非常に煩雑化する。
【0005】
また、上記のインターポーザ構造では、基台の上下面に形成された接点部は剥き出しの状態であるため、例えば前記インターポーザが熱的な影響で撓む等して前記接点部が、電子部品あるいはマザー基板の所定位置とは異なる位置に当接する可能性もある。かかる場合、短絡等の問題を引き起こす。
【0006】
下記特許文献1(特許第3099066号の特許公報)には、薄膜構造体の製造方法に関する発明が開示されている。いくつか提示されている製造方法のうち、例えば内部応力を利用して薄膜を湾曲させる薄膜構造体が開示されている(請求項5や図18ないし図23における説明箇所等)。
【特許文献1】特許第3099066号の特許公報
【特許文献2】特許第3366405号の特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1には、前記薄膜構造体をIC等の電子部品とマザー基板間のインターポーザとして用いることは何ら記載も示唆もされていない。また特許文献1では、前記マザー基板に接合される薄膜構造体が剥き出しの状態であるから、前記薄膜構造体が電子部品からの強い押圧力を受けて撓んだときに、前記薄膜構造体が予期しない位置で前記ICと導通される可能性があり電気的接触性が不安定化しやすい。
【0008】
また特許文献2には、金属で形成される超微細構造体の製造方法に関する記載があるが、前記超微細構造体をインターポーザとして用いるとの記載はない。
【0009】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、電子部品の微細化によっても電子部品とマザー基板間の導通接続を良好に図ることが可能な接点部材及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における接点部材は、
接点と、前記接点が取り付けられた基台とを有し、前記接点は基部と前記基部から延出形成された弾性腕とを有し、2つ以上の前記接点が組となり、前記組を構成する接点どうしは基部を介して導通接続されており、
前記組を構成する接点のうち、少なくとも一つの接点の弾性腕は上方向に変形し、残りの接点の弾性腕は下方向に変形し、
前記基台には貫通孔が設けられ、前記弾性腕の少なくとも一部は、前記貫通孔を通り前記基台から突出していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、接点部材を例えば電子部品とマザー基板間のインターポーザとして用いることができる。本発明では、前記接点部材から上下に夫々、弾性腕が設けられ、前記弾性腕が、前記電子部品と前記マザー基板との夫々に接するので、前記電子部品とマザー基板どうしの熱膨張係数の差に起因する歪みを前記接点により適切に吸収できる。また本発明では、前記基台には貫通孔が形成され、弾性腕が前記貫通孔を通り、前記基台から突出した状態になっているから、前記接点と例えばマザー基板との間には前記基台が介在し、前記接点の弾性腕が適切にマザー基板の所定位置上に当接するとともに、前記接点の基部は前記マザー基板に当接しない。従って本発明では信頼性の高い接点部材構造を提供することが出来る。
【0012】
また、組を構成する接点どうしは基部を介して導通接続されており、簡単な構造にて組を構成する接点どうしを確実に導通させることが出来る。
【0013】
また本発明では、前記弾性腕の前記基台からの突出量σは、前記弾性腕を押圧して前記突出量σを0にするのに必要な力が降伏点よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。これにより、前記弾性腕が弾性接点として適切に作用する。
【0014】
また本発明では、
上部基台と下部基台とが高さ方向にて対向し、
組を構成する少なくとも一つの接点の基部は前記上部基台の前記下部基台との対向面に、残りの接点の基部は前記下部基台の前記上部基台との対向面にそれぞれ接合され、
上方向に変形した弾性腕は前記上部基台に形成された貫通孔を通り、前記上部基台から上方に突出し、下方向に変形した弾性腕は前記下部基台に形成された貫通孔を通り、前記下部基台から下方に突出していることが好ましい。
【0015】
このように接点の上下に基台が設けられ、前記接点の弾性腕が両基台から突出した構成とすることで、前記接点部材を例えば電子部品とマザー基板間のインターポーザとして用いたときに、前記弾性腕を電子部品及びマザー基板の所定位置上に適切に当接できるとともに、前記接点の基部が前記電子部品及びマザー基板に当接するのを防止でき、前記電子部品とマザー基板間等の導通接続を簡単な構造で適切に図ることが可能である。
【0016】
また本発明では、前記接点は薄膜形成されたものであることが好ましい。これにより接点部材の微細化を促進させることが出来る。
【0017】
また本発明では、少なくとも一部の前記接点の前記弾性腕は螺旋状に立体成形されていてもよい。このような形状であると、電子部品とマザー基板間等の導通接続を確実に図ることが出来る。
【0018】
また本発明は、接点部材の製造方法において、以下の工程を有することを特徴とするものである。
【0019】
(a) 下部基台上と、上部基台上のそれぞれに組を構成する接点を少なくとも一つづつ形成する工程と、
(b) 前記(a)工程よりも前、あるいは前記(a)工程よりも後に、前記下部基台と、上部基台にそれぞれ貫通孔を形成する工程と、
(c) 前記各接点の弾性腕を全て同じ高さ方向へ変形させる工程と、
(d)前記接点が形成されている基台の面を内側に向けて、前記下部基台と上部基台とを高さ方向にて対向させ、このとき、上方向に変形している弾性腕を前記上部基台に形成された貫通孔に通して、前記上部基台から上方に突出する状態にし、下方向に変形している弾性腕を前記下部基台に形成された貫通孔に通して前記下部基台から下方に突出する状態にするとともに、組を構成する接点の基部どうしを導電接続させる工程。
【0020】
上記した接点部材の製造方法では、下部基台上及び上部基台上に、組を構成する接点を形成し、両基台に貫通孔を形成し、前記接点が形成された面を内側に向けて下部基台と上部基台とを高さ方向にて相対向させるという簡単な工程で接点部材を形成することが出来る。また、下部基台と上部基台とを高さ方向にて相対向させたときに、組を構成する接点の基部どうしを高さ方向にて簡単に相対向させることができ、前記基部を介して組を構成する接点どうしを簡単に導通接続させることが出来る。従来では、基台の上下に形成される接点部を導通させるために前記基台に貫通孔を設け、その貫通孔内を導電材料で埋める等の作業が必要であったが、本発明ではそのような煩雑な作業をする必要性はなく、組を構成する接点を簡単な手法で導通接続させることが出来る。
【0021】
また本発明では、前記(a)工程時、少なくとも一部の前記接点を、接合層を介して形成し、このとき前記接点の上面側と下面側とで異なる内部応力を付与し、
前記(c)工程時、前記接点の弾性腕の下側の接合層を除去し、これにより前記弾性腕を内部応力により変形させることが好ましい。
【0022】
上記の(a)工程のように前記接点を形成するときには前記接点の上面側と下面側とで異なる内部応力を付与し、前記(c)工程のように、前記接点の弾性腕の下側の接合層を除去することで、前記接点に付与された内部応力を利用して前記弾性腕を所定方向へ変形させることが出来る。このように前記接点の弾性腕を機械加工によらず、内部応力によって変形させることで前記接点を小さく形成しても容易に且つ確実に前記接点の弾性腕を変形させることができ、前記弾性腕を弾性接点として機能させることが出来る。
【0023】
本発明では、前記(a)工程のとき、前記接点をスパッタ蒸着法を用いて形成し、このとき真空ガス圧を変化させることで前記接点の内部応力を制御することが好ましい。これにより簡単な手法で、前記接点の内部応力を制御することが出来る。
【0024】
また本発明では、前記(a)工程時、全ての前記接点の下面側に引張り応力を、上面側に圧縮応力を付与し、前記(c)工程時に、すべての接点の弾性腕を上方向に変形させることが好ましい。前記(c)工程時に全ての接点の弾性腕を上方向へ変形させれば、下方向へ変形させる場合に比べて前記弾性腕の変形が阻害されにくい。
【0025】
また本発明では、前記(a)工程時、少なくとも一部の接点を、螺旋状の弾性腕を有する平面的な形状で形成し、
前記(c)工程時、前記螺旋状の弾性腕を立体変形させてもよい。
【0026】
これによって簡単な手法で、螺旋状に突出する弾性腕を有する接点を形成することが出来る。
【0027】
また本発明では、前記(a)工程時、下部基台と上部基台とが一体に形成された基台を用い、前記(d)工程時、前記基台を折り曲げて、前記下部基台と上部基台とを高さ方向にて相対向させることが好ましい。これにより、より簡単に前記接点部材を製造することが出来る。また(d)工程時、前記基台を下部基台と上部基台との境界から折り曲げればよいから、別々に上部基台と下部基台とを形成し、これら基台を貼り合わせる場合に比べて、前記基台間の位置決めを簡単且つ適切に行ないやすい。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、接点部材を例えば電子部品とマザー基板間のインターポーザとして用いることができる。本発明では、前記接点部材から上下に夫々、弾性腕が設けられ、前記弾性腕が、前記電子部品と前記マザー基板との夫々に接するので、前記電子部品とマザー基板どうしの熱膨張係数の差に起因する歪みを前記接点により適切に吸収できる。また本発明では、前記基台には貫通孔が形成され、弾性腕が前記貫通孔を通り、前記基台から突出した状態になっているから、前記接点と例えばマザー基板との間には前記基台が介在し、前記接点の弾性腕が適切にマザー基板の所定位置上に当接するとともに、前記接点の基部は前記マザー基板に当接しない。従って本発明では信頼性の高い接点部材構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、図2に示すI−I線から切断し矢印方向から見た接点部材と、マザー基板、電子部品の部分断面図(実施形態)、図2は図1に示す接点部材の部分斜視図、図3は、図4に示すII−II線及びIII−III線から切断し、矢印方向からのこれら切断面を組み合わせて表した接点部材と、マザー基板、電子部品の部分断面図(図1とは別の実施形態)、図4は、図3に示す接点部材の部分斜視図、図5は、図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、図6は、図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、図7は、図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、図8は、図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、である。
【0030】
なお以下では、接点の弾性腕に対して「変形」という文言を多用する。この明細書において「変形」とは、前記接点の基部と同じ平面形態ではなく、前記基部から見て上方向あるいは下方向に向けて撓んだ状態を指す。
【0031】
図1に示すように絶縁材料製のマザー基板1上には接点部材3を介して電子部品2が取り付けられている。前記電子部品2は、IC,コンデンサ,トランジスタ等である。
【0032】
図1に示すように前記電子部品2の下面には例えばAl等で形成された端子2aが形成されている。
【0033】
前記端子2aは、前記接点部材3を介してマザー基板1上に形成された配線パターン(図示しない)に導通接続されている。
【0034】
前記接点部材3は、図1及び図2に示すように、上部シート部材(上部基台)4,下部シート部材(下部基台)5及び第1の接点6,及び第2の接点7を有して構成される。前記上部シート部材4及び下部シート部材5は、例えばポリイミド樹脂等で形成された樹脂シートである。
【0035】
図1,図2に示すように前記上部シート部材4及び下部シート部材5は、前記電子部品2とマザー基板1との間にそれぞれ一枚づつ設けられ、前記上部シート部材4と下部シート部材5は、所定の間隔H1を有して、高さ方向(Z1−Z2方向)にて相対向している。なお、前記上部シート部材4と下部シート部材5の一端部どうしは繋がっていて、一枚のシート部材で構成されていてもよい。
【0036】
図2に示すように前記上部シート部材4と下部シート部材5との間には複数の接点6,7が設けられている。前記接点6,7はそれぞれ1つづつが組み合わされて組A,B,Cを成している。組A,B,Cは長さ方向(図示Y1−Y2方向)に向けて間隔を空けて配置されている。
【0037】
前記接点6,7は、基部6a、7aと、前記基部6a,7aから延出形成された弾性腕6b,7bとを有して構成される。図1に示すように、前記第1の接点6の基部6aは下部シート部材5の上面(対向面)5aに接合層(犠牲層)8を介して接合されている。一方、第2の接点7の基部7aは前記上部シート部材4の下面(対向面)4aに接合層8を介して接合されている。図1に示すように組A,B,Cを構成する第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7aは高さ方向(図示Z1−Z2方向)にて相対向し、図1に示す実施形態では組A,B,Cを構成する前記基部6a,7aどうしが導電層9を介して接合されている。よってそれぞれの組A,B,Cを構成する接点6,7どうしは前記基部6a,7a間に設けられた導電層9を介して導通接続された状態になっている。
【0038】
図1,図2に示すように、前記第1の接点6の弾性腕6bは、基部6aから見て図示左方向(図示X1方向)に向けて延出形成されるとともに、図示上方向(図示Z2方向)に向けて変形されている。一方、第2の接点7の弾性腕7bは、基部7aから見て図示右方向(図示Y1方向)に向けて延出形成されるとともに、図示下方向(図示Z1方向)に向けて変形されている。
【0039】
このように図1,図2に示す実施形態では、前記第1の接点6及び第2の接点7の弾性腕6b,7bの延出方向が異なっている。前記延出方向は同じ方向であってもよいが、かかる場合は後述する図3,図4で説明するように前記第1の接点6及び第2の接点7の形成位置に工夫が必要になる。
【0040】
図1,図2に示す実施形態では、各組A、B,Cを構成するそれぞれの第1の接点6及び第2の接点7どうしがほぼ等間隔で並んでいるが、前記電子部品2の端子2a及びマザー基板1上の配線パターンの位置に応じて前記第1の接点6及び第2の接点7の形成位置をそれぞれ変更できることは言うまでもない。
【0041】
図1,図2に示すように、上部シート部材4には組A,B,Cの並び方向に沿って一つの貫通孔10が設けられている。前記貫通孔10からは、組A,B,Cを構成するそれぞれの第1の接点6の弾性腕6bが前記貫通孔10を通り、前記弾性腕6bの先端6b1が、前記上部シート部材4の上面から上方へ向けて突出している。
【0042】
また図1,図2に示すように、下部シート部材5には組A,B,Cの並び方向(図示Y1−Y2方向)に沿って一つの貫通孔11が設けられている。前記貫通孔11からは、組A,B,Cを構成するそれぞれの第2の接点7の弾性腕7bのが、前記貫通孔11を通り、前記弾性腕7bの先端7b1が、前記下部シート部材5の下面から下方へ向けて突出している。
【0043】
上記したように、前記第1の接点6の基部6aと下部シート部材5との間、及び第2の接点7の基部7aと上部シート部材4との間には、接合層8が設けられている。前記接合層8は、導電性材料であっても絶縁性材料であってもよい。例えば前記接合層8はTiや導電フィラーが混合された樹脂層等で形成される。また前記第1の接点6及び第2の接点7は、導電性材料で形成され、具体的にはNiZr合金(Niを1at%添加)、MoCr等で形成される。
【0044】
図1に示すように、組A,B,Cを構成する第1の接点6の弾性腕6bの先端6b1はそれぞれ、前記電子部品2の下面から露出する端子2aに当接され、前記第1の接点6と前記端子2aとが導通接続される。一方、組A,B,Cを構成する第2の接点7の弾性腕7bの先端7b1はそれぞれ、前記マザー基板1上に設けられた所定の配線パターン上に当接され、前記第2の接点7と前記配線パターンとが導通接続される。上記したように組A,B,Cを構成する第1の接点6と第2の接点7は基部6a,7a間が導電層9を介して導通接続されているから、前記電子部品2の端子2aとマザー基板1の配線パターン間が第1の接点6,導電層9及び第2の接点7を介して導通接続された状態になっている。
【0045】
前記第1の接点6及び第2の接点7のそれぞれの弾性腕6b,7bは、例えば、内部応力によって変形されたものである。前記弾性腕6b,7bには、後述する製造方法で説明するように、製造過程において弾性腕6b,7bの下面側と上面側とで異なる内部応力が付与されている。図1に示すように接合層8は、基部6a,7aとシート部材4,5との間にしか設けられておらず、前記弾性腕6b,7bは前記接合層8によって拘束された状態(接合された状態)にない。その結果、付与された内部応力によって前記弾性腕6b,7bは変形している。
【0046】
第1の接点6の弾性腕6b及び第2の接点7の弾性腕7bはそれぞれ弾性接点として機能しており、前記弾性腕6b,7bは上下方向(図示Z1−Z2方向)に弾性力を発揮できるものとなっている。このようにマザー基板1と電子部品2間が、弾性接点を有する接点部材3を介して導通接続された構成であると、弾性力を有する前記接点6,7の弾性腕6b,7bによって前記電子部品2とマザー基板1との熱膨張係数差に起因する歪みを吸収でき、より確実に前記電子部品2と前記マザー基板1間を導通接続させることが出来る。
【0047】
また図1,図2に示す接点部材3では、上部シート部材4と下部シート部材5との間に組A,B,Cを構成する接点6,7を設けているから、前記接点6,7の基部6a,7a間を簡単且つ確実に導通接続させることが出来る。従来の接点部材では基台の上下に接点部を設けていたため前記接点部どうしを導通接続させるには導電回路を基台表面に這わせたり、あるいは基台に貫通孔を設け、前記貫通孔内を導電材料で埋めたりするといったかなり煩雑な作業が必要となったが、図1,図2に示す実施形態では、上部シート部材4と下部シート部材5との間に接点6,7を挟み込み、前記接点6,7の基部6a,7aどうしを対面接合させることで、従来に比べて非常に簡単で且つ確実に前記接点6,7どうしを導通接続させることが出来る。図1,図2では弾性接点を確保すべく前記上部シート部材4及び下部シート部材5のそれぞれに貫通孔10,11を設け、前記基部6aから延出形成され、上方向に変形された第1の接点6の弾性腕6bの一部を前記上部シート部材4の貫通孔10を通して前記上部シート部材4の上面から突出させ、一方、前記基部7aから延出形成され、下方向に変形された第2の接点7の弾性腕7bの一部を前記下部シート部材5の貫通孔11を通して前記下部シート部材5の下面から突出させている。よって、前記上部シート部材4の上面及び下部シート部材5の下面からは、弾性腕6b,7bが適切に突出した状態になっている。
【0048】
図1に示すように、前記下部シート部材5の下面からの前記弾性腕7bの突出量σは、前記弾性腕7bを、上方向(図示Z2方向)に押圧して、前記突出量σを0にするのに必要な力が降伏点よりも小さくなるように設定されている。この結果、例えば衝撃等によって前記弾性腕7bの先端7b1が、前記下部シート部材5の下面と同一面まで撓んでも、前記衝撃が除去されて、前記接点部材3とマザー基板1間に再び間隔が空くと、前記弾性腕7bは図1のようにマザー基板1上に当接した状態を保ちながら下方向へ弾性変形し(図1の状態に復元し)、前記弾性腕7bが弾性接点として適切に作用する。図1に示す上方向に変形した第1の接点6の弾性腕6bも同様である。
【0049】
図1,図2の実施形態では、第2の接点7及び第1の接点6とマザー基板1との間には下部シート部材5が介在し、前記下部シート部材5の下面から突出する弾性腕7bの先端7b1が適切にマザー基板1上の配線パターンに当接する。すなわち前記下部シート部材5の介在によって前記第2の接点7の先端7b1以外のほかの部位、例えば第1の接点6の基部6a等が、前記接点部材3がかなり強い押圧力を受けても、前記マザー基板1上に当接することはない。従来の接点部材では基台の上下に剥き出しに接点部が設けられていたため、例えば熱的な影響や強い押圧力等をうけた場合に、前記接点部が前記マザー基板1上の思わぬ箇所に当接して短絡等を引き起こす可能性があったが、図1,図2に示す実施形態では、絶縁性の下部シート部材5を設けることによって、下部シート部材5の下面から突出する前記第2の接点7の弾性腕7b以外の接点の箇所が前記マザー基板1上に当接しないから、前記接点部材3とマザー基板1間の導通接続を良好なものに出来る。同様に、図1に示すように絶縁性の上部シート部材4を設けることによって、上部シート部材4の上面から突出する前記第1の接点6の弾性腕6b以外の接点の箇所が前記電子部品2に当接しないから、前記接点部材3と電子部品2間の導通接続を良好なものに出来る。
【0050】
また図1に示すように、組A〜Cを構成する接点6,7どうしは基部6a,7aを介して導通接続されており、簡単な構造にて組を構成する接点6,7どうしを確実に導通させることが出来る。またこのように基部6a,7aどうしを対面接合させることで、前記接点6,7どうしを導電パターンを這わして導通接続させる場合に比べて電気伝導路が短くなるので、電気抵抗が上昇するのを適切に抑制できる。
【0051】
なお前記マザー基板1と弾性腕7bの先端7b1、及び電子部品2の端子2aと弾性腕6bの先端6b1とを例えば、導電性接着剤や半田付け、溶接等によって接合させることが確実な導通接続を得ることができて好ましいが、図1に示すように前記マザー基板1上から前記電子部品2の上面2bに向けて屈曲形状の固定部材15を設けて前記電子部品2をマザー基板1上に固定させるか、または上部シート部材4と電子部品2間や下部シート部材5とマザー基板1間に絶縁性の樹脂層13等を設けて前記電子部品2をマザー基板1上に固定させるなどすれば、特に、前記マザー基板1と弾性腕7bの先端7b1、及び電子部品2の端子2aと弾性腕6bの先端6b1とを導電性接着剤等で接合しなくてもよい。
【0052】
図3,図4に示す実施形態では、マザー基板1と電子部品2間に設けられる接点部材20は、下部シート部材21と、上部シート部材22と、前記下部シート部材21と上部シート部材22との間に介在する第1の接点23及び第2の接点24とを有して構成される。
【0053】
接点部材の構造において、図1,図2との違いは、接点23,24の配置や貫通孔25,26の形成位置等である。図3,図4では、前記第1の接点23及び第2の接点24はそれぞれ基部23a、24aと前記基部23a,24aから延出形成された弾性腕23b,24bとを有して構成される。前記第1の接点23の基部23aは、下部シート部材21の上面21a(対向面)に接合層8を介して接合され、前記第2の接点24の基部24aは上部シート部材22の下面22a(対向面)に接合層8を介して接合されている。
【0054】
図4に示す実施形態では、第1の接点23及び第2の接点24はそれぞれ6つづつ設けられ、一つづつ組み合わされて組D〜Iが構成されている。組D〜IはX1−X2方向に2つ並べられ、この組列がY1−Y2方向に3列設けられている。各組D〜Iを構成する第1の接点23の基部23aと第2の接点24の基部24a間には導電層9が設けられ(図3を参照)、組D〜Iを構成する第1の接点23と第2の接点24どうしが導通接続されている。
【0055】
図3,図4に示すように、前記第1の接点23及び第2の接点24は全て、基部23a、24aから同じX1方向へ弾性腕23b,24bが延出形成されている。しかも下部シート部材21の上面21aに接合された第1の接点23の弾性腕23bは上方向へ向けて変形し、上部シート部材22の下面22aに接合された第2の接点24の弾性腕24bは下方向へ向けて変形しているから、各組D〜Iを構成する前記第1の接点23及び第2の接点24の基部23a,24aからの前記弾性腕23b,24bの延出位置をY1−Y2方向に向けてそれぞれずらし、図3,図4に示すように例えば第1の接点23の弾性腕23bをY1側から、第2の接点24の弾性腕24bをY2側から延出形成し、前記弾性腕23b,24bどうしが当接しないように(ぶつからないように)配置されている。
【0056】
前記上部シート部材22には、第1の接点23と同じ数だけの貫通孔25が設けられ、一方、下部シート部材21には、第2の接点24と同じ数だけの貫通孔26が設けられ、上方向に向けて変形された弾性腕23bが前記上部シート部材22の貫通孔25をとおり、前記弾性腕23bの先端23b1が前記上部シート部材22の上面から上方へ突出し、下方向に向けて変形された弾性腕24bが前記下部シート部材21の貫通孔26をとおり、前記弾性腕24bの先端24b1が前記下部シート部材21の下面から下方へ突出している。
【0057】
前記弾性腕23b,24bは、例えば内部応力によって変形されたものである。前記弾性腕23b,24bには、後述する製造方法で説明するように、製造過程において弾性腕23b,24bの下面側と上面側とで異なる内部応力が付与されている。図3に示すように接合層8は、基部23a,24aとシート部材21,22との間にしか設けられておらず、前記弾性腕23b,24bが前記接合層8によって拘束された状態にはない。その結果、付与された内部応力によって前記弾性腕23b,24bは変形している。
【0058】
図3に示すように、前記下部シート部材21の上面21a、あるいは上部シート部材22の下面22aに、コンデンサ等の超小型電子部品27を載置することも出来る。前記超小型電子部品27は、前記基部23a,24aの接合領域や貫通孔25,26の形成領域を除く前記下部シート部材21の上面(対向面)21a、あるいは上部シート部材22の下面(対向面)22aに設置できる。なお前記超小型電子部品27は、図1,図2に示す実施形態でも当然、設置可能である。
【0059】
また図3では特に図示しなかったが、電子部品2のマザー基板1への固定には、図1に示す固定部材15や樹脂層13等で行なうことが出来る。
【0060】
なお図1ないし図4に示す実施形態では、第1の接点と第2の接点との基部間に導電層9を介在させていたが、前記基部どうしを対面接触させることのみによって特に前記導電層9を設けなくても前記第1の接点と第2の接点とを導通させることが出来る。ただし前記第1の接点と第2の接点との基部間に導電性接着剤等の導電層9を介在させたほうが、より確実な導通接続を図ることができて好ましい。あるいは前記接点の表面にはAu等の金属被膜をメッキ等で形成する場合があるが、基部の表面に形成された金属被膜どうしを当接させ、超音波溶接等で前記金属被膜どうしを接合させても、良好な第1の接点と第2の接点との導通接続を図ることが出来る。
【0061】
なお、図1等に示す形態では、下部シート部材5上に接合された第1の接点6の弾性腕6bは、上方向に変形し、上部シート部材4に形成された貫通孔10を通り、一方、上部シート部材4下に接合された第2の接点7の弾性腕7bは、下方向に変形し、下部シート部材5に形成された貫通孔11を通っているが、前記第1の接点6の弾性腕6bは下方向に変形し、前記下部シート部材5に形成された貫通孔11を通り、一方、前記第2の接点7の弾性腕7bは、上方向に変形し、上部シート部材4に形成された貫通孔10を通る形態であってもよい。ただし前者のほうが、簡単且つ適切に接点部材を製造できる観点から好ましい。後者の場合は、後述する製造方法を用いると、一旦全ての弾性腕を下方向に変形させる必要があるため、前記変形が阻害されやすい。よって前者のほうが製造工程上、好ましいが、後者であっても前者と同様の物としての効果を得ることが出来る。
【0062】
図5に示す実施形態では、マザー基板1と電子部品2との間に介在する接点部材30は、シート部材31と第1の接点32及び第2の接点33とを有して構成される。
【0063】
前記第1の接点32及び第2の接点33はそれぞれ基部32a、33aと前記基部32a,33aから延出形成された弾性腕32b,33bとを有して構成される。
【0064】
図5に示すように、シート部材31上に各一つづつの第1の接点32と第2の接点33とが組となって積層されている。前記第1の接点32の基部32aが前記シート部材31上に接合層8を介して接合され、前記基部32a上に接合層8を介して第2の接点33の基部33aが接合されている。
【0065】
前記第1の接点32の弾性腕32bは下方向に向けて変形されている。一方、第2の接点33の弾性腕33bは上方向に向けて変形されている。前記シート部材31には貫通孔34が設けられ、下方向に変形された前記弾性腕32bが前記貫通孔34をとおり、前記シート部材31の下面から前記弾性腕32bの先端32b1が下方向へ突出している。
【0066】
図5に示すように前記第1の接点32の弾性腕32bの先端32b1は前記マザー基板1上の配線パターンに導通接続され、一方、第2の接点33の弾性腕33bの先端33b1は前記電子部品2の端子2a下に導通接続されている。
【0067】
なお図5の実施形態では、第1の接点32と第2の接点33との間に介在する前記接合層8は導電性であることが好ましい。これにより、各接点32,33を導通させることが出来る。なお図5の形態において、前記接合層8に絶縁性の材料をもちいた場合には、前記第1の接点32と第2の接点33間を導通させるための導電層(導電部材)が別に必要になる。
【0068】
ここで寸法について説明する。前記接点6,7,23,24,32,33の膜厚は、6μm〜100μmの範囲内で形成される。また前記接点6,7,23,24,32,33のシート部材からの突出量σ(図1を参照)は、10〜100μm程度であり、各接点6,7間のピッチT1(図3を参照)は、20〜1000μm程度である。
【0069】
図1ないし図5に示す前記接点6,7,23,24,32,33は、それぞれスパッタ蒸着法や、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、化学蒸着法、電解メッキ法等で薄膜形成されたものであることが好ましい。前記接点6,7,23,24,32,33を薄膜により形成することで前記接点6,7,23,24,32,33の小型化及び薄型化を実現できるから前記マザー基板1と電子部品2間の接続構造を適切に微細化することが出来る。
【0070】
なお前記接点6,7,23,24,32,33はスパッタ蒸着法で形成されることが好ましい。後述する製造方法で説明するように前記接点6,7,23,24,32,33は、その下面側と上面側とで異なる内部応力が付与されるように成膜条件を制御する必要性がある。このとき前記スパッタ蒸着法では、真空ガス圧を変化させることで、前記接点6,7,23,24,32,33の下面側と上面側とで異なる内部応力を簡単に付与できるので好ましい。
【0071】
また各実施形態では、組を構成する第1の接点と第2の接点とがそれぞれ一つづつであったが、少なくとも一方の接点が2つ以上であってもよい。
【0072】
図6では、図1ないし図5と接点の形態が異なっている。図6では、下部シート部材5の上面5aに第1の接点35が設けられ、前記第1の接点35は基部35aと前記基部35aと一体形成された弾性腕35bとを有して構成される。前記弾性腕35bは巻き始端35b1から巻き終端(先端)35b2にかけて螺旋状に下方に向けて突出形成されている。同じように前記上部シート部材4の下面4aに第2の接点36が設けられ、前記第2の接点36は基部36aと前記基部36aと一体形成された弾性腕36bとを有して構成される。前記弾性腕36bは巻き始端36b1から巻き終端(先端)36b2にかけて螺旋状に上方に向けて突出形成されている。
【0073】
図6に示すように、前記第1の接点35及び第2の接点36の弾性腕35b,36bは、前記下部シート部材5及び上部シート部材4に設けられた貫通孔10,11から突出し、前記弾性腕35b,36bの先端35b2,36b2は、マザー基板1の配線パターン上及び電子部品2の端子2a下に導通接続されている。
【0074】
図6に示す実施形態では、前記接点35,36の弾性腕35b,36bが螺旋状に突出形成されており、弾性接点として機能する弾性腕35b,36bが上下方向に撓むことで、マザー基板1と電子部品2間の導通接続を確実なものに出来る。
【0075】
図6に示す接点35,36の弾性腕35b,36bは、図1ないし図5に示した接点と異なって内部応力を利用して変形させたものではなく、治具を用いて立体成形されたものである。
【0076】
図6に示すように、第1の接点35の基部35aと、第2の接点36の基部36a間には導電層9が介在しており、前記第1の接点35と第2の接点36が前記導電層9を介して導通接続されている。このように前記第1の接点35と第2の接点36とを対面接合させることで、容易に且つ確実に前記第1の接点35と第2の接点36とを導通接続させることが出来る。さらに図6に示すように、螺旋状に突出する弾性腕35b,36bはシート部材4,5に設けられた貫通孔10,11を通り上方あるいは下方に突出しており、前記接点35,36の基部35a,36aは、前記マザー基板1及び電子部品2に当接しない。よってマザー基板1と電子部品2間を安定した導通状態に出来る。
【0077】
図6では、前記下部シート部材5に接合された第1の接点35の弾性腕35bが、前記下部シート部材5に形成された貫通孔11を通って下方向に突出し、前記上部シート部材4に接合された第2の接点36の弾性腕36bが、前記上部シート部材4に形成された貫通孔10を通って上方向に突出している。一方、図7では、前記下部シート部材5に接合された第1の接点35の弾性腕35bが、前記上部シート部材4に形成された貫通孔10を通って上方向に突出し、前記上部シート部材4に接合された第2の接点36の弾性腕36bが、前記下部シート部材5に形成された貫通孔11を通って下方向に突出している。
【0078】
図6、図7の双方において、電子部品2とマザー基板1間が第1の接点35及び第2の接点36を介して導通接続されていることに変わりないが、図6のような形態にするほうが、図7よりも簡単に製造できる。
【0079】
図6に示す実施形態では、後述するように、貫通孔10,11を利用して、前記弾性腕35b,36bを立体成形することができるが、図7に示す実施形態では、下部シート部材5及び上部シート部材4の双方に、突出調整用孔48を設け、前記突出調整用孔48を利用して、前記弾性腕35b,36bを立体成形する必要がある。すなわち図7では、貫通孔10,11のほかに、突出調整用孔48を設ける必要があるので、図6に示す実施形態のほうが、図7に示す実施形態に比べて簡単な構造に出来る。
【0080】
図8では、下部シート部材5の上面5aに設けられた接点35は、図6、図7で説明した接点と同様に弾性腕35bが螺旋状に上方に向けて突出する構成であり、一方、上部シート部材4の下面4aに設けられた接点7は図1に示す接点と同様に、基部7aから一方向に延出形成された弾性腕7aが下方向へ変形された構成である。図9では、前記接点7と上部シート部材4との間には接合層8が設けられ、内部応力を利用して前記弾性腕7bが下方向へ向けて変形させられており、一方、前記接点35の弾性腕35bは上方に向け治具によって螺旋状に突出形成されている。
【0081】
当然、下部シート部材5上に、内部応力を利用して変形させられた前記接点7が設けられ、上部シート部材4下に、螺旋状に突出形成された前記接点35が設けられていてもよい。
【0082】
さらに、例えば図2で説明すると、組Aを構成する接点どうしを、内部応力を利用して変形させられた前記接点とし、他の組B,Cを構成する接点どうしを、螺旋状に突出形成された前記接点等としてもよい。
【0083】
以下、図1,図2に示す接点部材3の製造方法について説明する。
図9ないし図15を用いて本実施形態におけるマザー基板1と電子部品2間に設けられる接点部材3の製造方法について説明する。図9は、製造工程中における接点部材3の斜視図、図10ないし図15の各図は製造工程中における接点部材3の部分断面図である。図9は、図10ないし図15の工程を経ることで形成された接点部材3の斜視図である。図10ないし図15では、最終的に図9に示す接点部材をIV−IV線から切断し矢印方向から見た断面形状を形成するための工程図である。
【0084】
図10では作業台40の表面40aにシート部材41を貼り付ける。前記作業台40は、例えば銅板などで形成されている。前記作業台40には予め貫通孔42が形成されている。前記貫通孔42は、シート部材41に対し図2に示す貫通孔10,11を形成するためのものであり、前記作業台40には、シート部材41に設けたい貫通孔10,11の位置及び数にあわせた貫通孔42が形成されている。ここで前記シート部材41について説明すると、前記シート部材41は、図9に示すように一枚のシートであり、点線が折り曲げ線Jである。前記折り曲げ線Jを境に2つに画定された領域41a,41bは、それぞれ最終的に図1,図2に示す上部シート部材4と下部シート部材5になる部分である。本実施形態では図9に示すように一枚のシート部材41上に、図1,図2に示す第1の接点6と第2の接点7を形成する。
【0085】
なお図示しないが前記作業台40の表面40aには例えば熱可塑性樹脂等で形成された剥離層が形成されていてもよい。
【0086】
図10に示すように前記シート部材41の表面41cの全面に接合層(犠牲層)8を形成する。前記接合層8は、導電性材料であっても絶縁材料であっても良い。前記接合層8は例えばTiや導電フィラーが混合された樹脂層等で形成される。
【0087】
図10に示す工程では、前記接合層8上の全面に後に接点6,7となる導電材料層43を例えばスパッタ蒸着法にて形成する。前記導電材料層43を具体的にはNiZr合金(Niを1at%添加)、MoCr等で形成する。
【0088】
前記導電材料層43をスパッタ蒸着法で形成するとき、真空ガス圧(例えばArガスを使用する)を徐々に変化させながら前記導電材料層43をスパッタ成膜していき、前記導電材料層43の下面側に引張り応力を、上面側に圧縮応力を付与する。
【0089】
図11に示す工程では、前記導電材料層43の上にレジストなどのマスク層44を形成する。前記マスク層44は最初、前記導電材料層43上の全面にスピンコートなどで塗布され、露光現像によって前記接点6,7と同形状にパターニングされる。パターニングされた前記マスク層44には、図11に示すように、2箇所に貫通孔44aが形成されている。前記貫通孔44aも露光現像によって形成されたものである。なお貫通孔44aの数は2つ以外であってもかまわない。
【0090】
図11に示す工程では前記マスク層44に覆われていない前記導電材料層43をエッチング法にて除去する。前記エッチングにはイオンミリング、反応性イオンエッチング、プラズマエッチング等を使用できる。このエッチング工程により前記導電材料層43は接点6,7と同形状にて残される。またこのエッチング工程により、前記導電材料層43には、前記マスク層44に形成された貫通孔44aからのエッチングによって貫通孔43aが形成される。
【0091】
図12に示す工程では、前記レジストなどで形成されたマスク層44を溶解液に浸すなどして除去する。
【0092】
図12に示す工程では、前記作業台40に形成された貫通孔42からエッチング法等により前記シート部材41に貫通孔45を形成する。前記エッチングでは選択的エッチングが用いられ前記シート部材41のみが選択的にエッチングされ前記貫通孔45が形成される。
【0093】
また前記貫通孔45の形成は上記のようにエッチングでなくても例えばレーザ加工等であってもよい。特に作業台40に貫通孔42が形成されていない場合や作業台40を用いない場合、前記貫通孔45の形成をレーザ加工で行なうことが好ましい。また前記貫通孔45の形成は図12の工程のときでなくてもかまわない。前記貫通孔45が図1,図2に示す貫通孔10,11となる。
【0094】
図13に示す工程では、第1の接点6及び第2の接点7の基部6a,7aとなる前記導電材料層43の後端部43b上にマスク層46を形成する。前記マスク層46はレジストなどで形成される。そして前記マスク層46に覆われていない接合層8を例えばウエットエッチング法を用いて除去する。前記接合層8は図13工程の前記ウエットエッチング工程前では、前記シート部材41上の全面に形成された状態にある。前記ウエットエッチング法にて前記マスク層46に覆われていない前記導電材料層43の周囲に広がる接合層8が除去される。それと同時に前記導電材料層43に形成された貫通孔43aから前記導電材料層43の先端部(弾性腕)43c下にある接合層8もウエットエッチング法にて除去される。
【0095】
前記ウエットエッチング法では、エッチング液が、前記貫通孔43aから前記先端部(弾性腕)43cの下にある接合層8まで到達し、また前記先端部(弾性腕)43cの周囲からの前記エッチング液の回り込みにより、前記先端部(弾性腕)43c下の接合層8が適切に溶解される。
【0096】
図14に示すように前記導電材料層(接点)43の後端部(基部)43bの下側にのみ前記接合層8が残された状態になり、前記先端部(弾性腕)43cの下側にあった接合層8が除去されると、前記先端部(弾性腕)43cが、後端部(基部)43bと同じ平面的な形態から、内部応力に従って弾性変形を起こす(図14の状態)。
【0097】
図10工程で説明したように、前記導電材料層43には下面側に引張り応力が、上面側に圧縮応力が付与されているため、上下に何の抑えも無くなった先端部(弾性腕)43cが、上方向へ湾曲状に弾性変形する。
【0098】
図15に示す工程では、前記マスク層46を除去する。前記マスク層46がレジストであれば前記マスク層46を溶解液に浸し除去する。
【0099】
前記マスク層46を除去しても前記導電材料層(接点)43の後端部(基部)43bは前記接合層8によって前記シート部材41上に強固に接合された状態を保つ。
【0100】
図15に示す工程では、前記導電材料層(接点)43の露出する全表面にAu等の貴金属やNiの金属被膜47を電解メッキ法等でメッキ形成する。前記金属被膜47は、形成されなくてもよいが形成されたほうが、前記導電材料層(接点)43の錆び等による導電性劣化を抑制でき、またマザー基板1及び電子部品2との導通接続を良好なものにできて好ましい。また、金属被膜47の形成により、図9に示す工程で、シート部材41を折り曲げ、接点6,7の基部6a,7aどうしを当接させた状態で超音波溶接等によって前記基部6a,7aどうしを接合することが可能になるため好ましい。
【0101】
その後、作業台40を除去する。除去する方法としてエッチング法などを用いてもよいが、図10工程で予め前記作業台40とシート部材41間に剥離層を設けておけば、前記剥離層から容易に前記作業台40を取り外すことができ、しかも剥離された作業台40を再び使用することができるので製造費の上昇を抑制することも出来る。
【0102】
図15工程を終えると、図9に示すように、複数の接点6,7と貫通孔10,11が形成されたシート部材41が完成する。
【0103】
図9に示すように、シート部材41の下部シート部材5となる領域41bには3つの第1の接点6が図示Y1−Y2方向に並んで形成されている。前記第1の接点6は、基部6aから見て図示左方向(図示X1方向)に弾性腕6bが延出した形態であり、且つ前記弾性腕6bは図示上方向に向けて変形されている。
【0104】
一方、シート部材41の上部シート部材4となる領域41aには、3つの第2の接点7が図示Y1−Y2方向に並んで形成されている。前記第2の接点7は、基部7aから見て図示右方向(図示X2方向)に弾性腕7bが延出した形態であり、且つ前記弾性腕7bは図示上方向に向けて変形されている。
【0105】
ここで図11での接点6,7の形成工程時において、図9に示す折り曲げ線Jに最も近いどうしの第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7aとが、前記折り曲げ線Jから前記シート部材41を折り曲げたときに、高さ方向にて相対向するように、前記第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7aの形成位置を制御することが必要である。同様に、図9に示す折り曲げ線Jから最も遠いどうしの第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7a、及び残りの第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7aとが、前記折り曲げ線Jから前記シート部材41を折り曲げたときに、高さ方向にて相対向するように、各基部の形成位置を調節することが必要である。
【0106】
また前記シート部材41を折り曲げ線Jから折り曲げたときに、前記シート部材41に形成された貫通孔10と第1の接点6の弾性腕6bとが対向するように、前記シート部材41に形成された貫通孔11と第2の接点7の弾性腕7bとが対向するように、前記貫通孔10,11の形成位置を調整することが必要である。
【0107】
本実施形態では、図9ないし図15に示すように、前記接点6,7を一枚のシート部材41上で行なうことが出来るから、前記接点6、7や貫通孔10,11を高精度に位置決めして各部を形成できる。また本実施形態では前記接点6,7を同時に形成するので、前記接点6,7の形成も簡単でしかも製造時間も短縮できる。さらに前記貫通孔10,11を、レーザ加工やエッチング等で形成することで前記貫通孔10,11の幅寸法が十数μm程度に小さくなっても前記貫通孔10,11を適切な形状にて所定の場所に形成することが出来る。
【0108】
そして図9の状態から前記接点6,7が形成されている面を内側にして前記折り曲げ線Jから前記シート部材41を折り曲げる。このとき相対向する第1の接点6の基部6aと第2の接点7の基部7a間に導電性接着剤等を介在させてもよいし、あるいは上記したような超音波溶接等で前記基部6a,7a間を接合させてもよい。
【0109】
前記折り曲げ線Jから前記シート部材41を折り曲げると、前記第1の接点6の弾性腕6bが前記貫通孔10を通り抜け、また前記第2の接点7の弾性腕7bが前記貫通孔11を通り抜ける。
【0110】
前記シート部材41を折り曲げた後、シート部材41間を樹脂などで貼り合わせ、その後、前記折り曲げ線Jから前記シート部材41を切断する。これにより図1,図2に示す接点部材3が完成する。なおシート部材41の切断は必須ではなく、切断しなくてもよい。
【0111】
図9ないし図15に示す工程では、接点6,7(導電材料層43)の弾性腕6b,7b(先端6b)を、全て上方向に向けて変形させている。かかる場合、上方向には変形を阻害するものが何もないから適切に各接点6,7(導電材料層43)の弾性腕6b,7b(先端6b)を上方向に向けて変形させることが出来る。
【0112】
また接点6,7(導電材料層43)の弾性腕6b,7b(先端部43c)を、全て下方向に向けて変形させてもよい。かかる場合、前記導電材料層43の成膜時に、下面側に圧縮応力が、上面側に引張り応力が付与されるように成膜することが必要である。また、接点6,7(導電材料層43)の弾性腕6b,7b(先端部43c)を、全て下方向に向けて変形させる場合は、前記第1の接点6の弾性腕6bが前記貫通孔11を通り、、前記第2の接点7の弾性腕7bが前記貫通孔10を通るように、前記接点6,7の弾性腕6b,7bの向き(あるいは前記貫通孔10、11の形成位置)を変更することが必要である。前記接点6,7(導電材料層43)の弾性腕6b,7b(先端部43c)を、全て下方向に向けて変形させる場合、前記貫通孔10,11をとおり抜けて前記シート部材41の下面から前記弾性腕6b,7b(先端部43c)が下方向へ突出するので、前記弾性腕6b,7bが下方向へ突出するのを阻害しないように工夫が必要である。図10ないし図15の工程では、作業台40に貫通孔42が設けられており、この貫通孔42内に前記弾性腕6b,7bが下方向に変形しても入り込めるので、前記接点6,7の弾性腕6b,7bを下方向へ変形させる場合には、貫通孔42が設けられた作業台40を用いることが好ましい。
【0113】
図16は、図3,図4に示す接点部材20の形成過程を説明するための斜視図である。図16に示すシート部材50上には、図10ないし図15に示す工程と同様の工程を用いて接点23,24が形成されている。図16に示すように前記シート部材50にはその中央に折り曲げ線Kがあり、前記折り曲げ線Kを境にして図示上側の領域50aが下部シート部材21となる部分であり、図示下側の領域50bが上部シート部材22となる部分である。図16に示すように前記領域50a上には、6つの第1の接点23が所定位置に形成されており、領域50bには、同じく6つの第2の接点24が所定位置に形成されている。
【0114】
組D〜Iを構成する基部23a,24aどうしが、前記シート部材50を折り曲げ線Kから折り曲げたときに、高さ方向に相対向するように、前記基部23a,24aの形成位置が調整されている。
【0115】
また各接点23,24の弾性腕23b,24bは全て各基部23a,24aの図示Y1側に寄って形成されており、図16に示すように、前記接点23,24は全て同じ形態にて形成されている。また各接点23,24の弾性腕23b,24bの図示Y2側には前記シート部材50に貫通孔25,26が形成されている。
【0116】
図16に示す折り曲げ線Kから前記接点23,24の形成面が内側になるように前記シート部材50を折り曲げ、前記シート部材50間を樹脂等で接合すると図3,図4に示す接点部材20が完成する。なお、前記折り曲げ線Kから前記シート部材50を切断するか否かは任意である。
【0117】
なお図9や図16のように一枚のシート部材41,50を折り曲げて上部シート部材と下部シート部材とを形成するのではなく、最初から上部シート部材と下部シート部材とを別々に形成しておき、前記接点及び貫通孔の形成後、前記上部シート部材と下部シート部材とを貼り合わせてもよい。
【0118】
ただし図9や図16のように、下部シート部材と上部シート部材とが一体に形成されたシート部材41,50を用い、前記シート部材41,50を折り曲げて、前記下部シート部材と上部シート部材とを高さ方向にて相対向させるほうが、より簡単に前記接点部材を製造することが出来る。また前記シート部材41,50を所定位置から折り曲げればよいから、別々に上部シート部材と下部シート部材とを形成し、これらシート部材を貼り合わせる場合に比べて、シート部材どうしの貼り合わせの際の位置決めを簡単且つ適切に行ないやすい。
【0119】
図17ないし図19は、図5に示す接点部材30の製造方法の一例を示す工程図であり、各工程図は製造工程中における接点部材30の部分断面図である。
【0120】
図17では作業台60の表面60aにシート部材31を貼り付ける。前記作業台60は、例えば銅板などで形成されている。前記作業台60には予め貫通孔61が形成されている。前記貫通孔61は、シート部材31に対し図5に示す貫通孔34を形成するためのものであり、前記作業台60には、シート部材31に設けたい貫通孔34の位置及び数にあわせた貫通孔61が形成されている。
【0121】
なお図示しないが前記作業台60の表面60aには例えば熱可塑性樹脂等で形成された剥離層が形成されていてもよい。
【0122】
図17に示すように前記シート部材31の表面31aの全面に接合層8を形成する。前記接合層8は、導電性材料であることが好ましい。前記接合層8は例えばTiや導電フィラーが混合された樹脂層等で形成される。
【0123】
図17に示す工程では、前記接合層8上の全面に第1の接点32を例えばスパッタ蒸着法にて形成する。前記第1の接点32を具体的にはNiZr合金(Niを1at%添加)、MoCr等で形成する。
【0124】
前記第1の接点32をスパッタ蒸着法で形成するとき、真空ガス圧(例えばArガスを使用する)を徐々に変化させながら前記第1の接点32をスパッタ成膜していき、前記第1の接点32の下面側に圧縮応力を、上面側に引張り応力を付与する。
【0125】
さらに前記第1の接点32上に接合層8を成膜し、さらに前記接合層8上に第2の接点33を成膜する。前記第2の接点33をスパッタ蒸着法で形成するとき、真空ガス圧(例えばArガスを使用する)を徐々に変化させながら前記第2の接点33をスパッタ成膜していき、前記第2の接点33の下面側に引張り応力を、上面側に圧縮応力を付与する。
【0126】
図18に示す工程では、前記第2の接点33の上にレジスト層62を形成する。前記レジスト層62は最初、前記第2の接点33上の全面にスピンコートなどで塗布され、露光現像によって前記第2の接点33と同形状にパターニングされる。パターニングされた前記レジスト層62には、図18に示すように、2箇所に貫通孔62aが形成されている。前記貫通孔62aも露光現像によって形成されたものである。
【0127】
図18に示す工程では前記レジスト層62に覆われていない前記接点32,33及び接合層8をエッチング法にて除去する。前記エッチングにはイオンミリング、反応性イオンエッチング、プラズマエッチング等を使用できる。このエッチング工程により前記接点32,33が基部32a,33aと弾性腕32b,33bとを有する形状にて残される。またこのエッチング工程により、前記接点32,33には、前記レジスト層62に形成された貫通孔62aからのエッチングによって貫通孔32c,33cが形成される。なお前記接合層8にも同様に貫通孔が形成される。
【0128】
次に前記レジスト層62を溶解液に浸すなどして除去する。
図19に示す工程では、前記作業台60に形成された貫通孔61からエッチング法等により前記シート部材31に貫通孔65を形成する。前記エッチングでは選択的エッチングが用いられ前記シート部材31のみが選択的にエッチングされ前記貫通孔65が形成される。
【0129】
図19に示す工程では、前記第2の接点33の基部33aとなる位置上及び前記基部32a,33aの側面周辺にレジスト層63を形成する。そして前記レジスト層63に覆われていない接合層8を例えばウエットエッチング法を用いて除去する。前記ウエットエッチング法にてエッチング液が前記接点32,33及び接合層8に形成された貫通孔32c,33cから入り込み、前記接点32,33の弾性腕32b,33b下にある接合層8が適切に除去される。
【0130】
前記接点32,33の弾性腕32b,33b下にあった接合層8が除去されると上下に何の抑えも無くなった弾性腕32b,33bが内部応力により変形する。上記したように、下側に設けられた第1の接点32の弾性腕32bには下面側に圧縮応力が、上面側に引張り応力が付与されているので前記弾性腕32bは下方向へ向けて変形し、一方、上側に設けられた第2の接点33の弾性腕33bには下面側に引張り応力が、上面側に圧縮応力が付与されているので弾性腕33bは上方向に向けて変形する。このとき、下方向へ向けて変形した第1の接点32の弾性腕32bは前記シート部材31及び作業台60に設けられた貫通孔61,65内へ入り込むので、前記弾性腕32bの弾性変形は阻害されない。
【0131】
そして前記レジスト層63を溶解液に浸すなどして除去する。なお前記レジスト層63を除去しても各接点32,33の基部32a,33aは前記接合層8によって前記シート部材31に接合された状態を保つ。
【0132】
その後、前記作業台60を除去する。除去する方法としてエッチング法などを用いてもよいが、図17工程で予め前記作業台60とシート部材31間に剥離層を設けておけば、前記剥離層から容易に前記作業台60を取り外すことができ、しかも剥離された作業台60を再び使用することができるので製造費の上昇を抑制することも出来る。
【0133】
なお図9ないし図19の各製造方法において、熱処理を施して、前記接点の弾性腕内の内部応力をより増大させてもよい。これによって前記接点をより適切に湾曲状に弾性変形しやくできる。
【0134】
従来、接点部材の構造では、基台の上下に形成される接点部を導通させるために前記基台に貫通孔を設け、その貫通孔内を導電材料で埋める等の作業が必要であったが本実施形態ではそのような煩雑な作業をする必要性はなく、組を構成する接点を簡単な手法で導通接続させることが出来る。また、従来では接点部と基台とを別々に形成し、個々の前記接点部を前記基台に接合させるという作業が必要であったため、前記接点部の基台への接合時に、高い位置決め精度が求められたが本実施形態では、組を構成する接点をシート部材の所定位置に直接、形成するので、従来に比べて前記接点を高精度に位置決めして形成できる。
【0135】
図20ないし図23は、図6に示す接点部材3の製造方法を示す一工程図である。図20は、製造工程中における接点部材3の斜視図、図21ないし図23の各図は製造工程中における接点部材3の部分断面図である。図20は、図21ないし図23の工程を経ることで形成された接点部材3の斜視図である。図21ないし図23では、最終的に図20に示す接点部材をV−V線から切断し矢印方向から見た断面形状を形成するための工程図である。
【0136】
図20に示すように一枚の絶縁性のシート部材70上に複数の接点35,36を形成する。さらに前記シート部材70に貫通孔10,11を形成する。
【0137】
まず図21に示すように作業台71上に例えば銅箔等の基材72を設け、前記基材72上に、レジスト層73を塗布する。露光現像によって、前記レジスト層73を接点35,36と同形状で残し、それ以外の箇所の前記レジスト層73に抜きパターン73aを形成する。
【0138】
次に、前記抜きパターン73aから露出する前記基材72をエッチング等によって除去する。
【0139】
前記接点35,36は、図22に示すように基部35a,36aと螺旋状に形成された弾性腕35b,36bとを有して構成されている。前記基部35a,36aと弾性腕35b,36bは平面的に形成されており、図22の状態で、前記シート部材70を前記接点35,36の基部35a,36a上に導電性接着剤等(図示しない)を介して貼り付ける。
【0140】
図22に示すように、前記シート部材70には、図20に示す貫通孔10,11が予め形成されている。前記貫通孔10,11は、各接点35,36の弾性腕35b,36b上に形成されている。前記貫通孔10,11は前記弾性腕35b,36bの平面での大きさよりも大きい寸法で形成されており、前記貫通孔10,11を通して前記接点35,36の弾性腕35b,36bが露出する状態となっている。
【0141】
次に前記作業台71を除去する。ところで、前記接点35,36には、良好なばね性と電気伝導性が求められることから、前記作業台71を除去した後、前記基材72の周囲に、NiやNi−P合金等のばね性に優れた補助弾性層や、Au等、電気伝導性に優れた電気伝導層などを無電解メッキ法等でメッキ形成することが好ましい。
【0142】
次に、図23に示すように、先が尖った突出調整部材75を前記貫通孔10、11に通して上方へ向けて移動させると、前記貫通孔10,11下にある螺旋形状の前記弾性腕35b,36bが、前記突出調整部材75による突き上げによって上方向へ撓み、図23のように、螺旋状の弾性腕35b,36bが上方に突出した状態になる。
【0143】
このようにして前記接点35,36をシート部材70上に形成した後、接点35と接点36の基部35a,36aどうしが対向するように、図20に示すシート部材70を折り曲げ線Lから折り曲げるとともに、前記基部35a,36a看を、導電層9にて接合することで、図6に示す接点部材3が完成する。
【0144】
なお図20に示す接点35,36が形成されたシート部材70が、図示X1−X2方向及びY1−Y2方向に向けて一体に多数形成されており、図20に示すM,N,O,Pの線上でシート部材70を切断することで、同時に多数の前記シート部材70を形成することも出来る。図9,図16においても同様である。
【0145】
また、前記接点35,36はメッキ層のみで形成されていてもよい。例えばNi層/Au層の積層構造が考えられる。
【0146】
なお図9ないし図16及び図20ないし図23で説明した製造方法を組み合わせることで、図8に示す接点部材3を容易に形成することが出来る。
【0147】
上記ではIC等の電子部品とマザー基板間に用いられる接点部材について説明したが、前記接点部材は、電子部品間等に用いられてもよい。本実施形態では、電子部品やマザー基板等を含む広い意味での電子部材間に用いられる接点部材であれば、本実施形態の構造を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図2に示すI−I線から切断し矢印方向から見た接点部材と、マザー基板、電子部品の部分断面図(実施形態)、
【図2】図1に示す接点部材の部分斜視図、
【図3】図4に示すII−II線及びIII−III線から切断し、その切断された断面を組み合わせて表した接点部材と、マザー基板、電子部品の部分断面図(図1とは別の実施形態)、
【図4】図3に示す接点部材の部分斜視図、
【図5】図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、
【図6】図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、
【図7】図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、
【図8】図1とは別の実施形態を示すマザー基板、電子部品、及び接点部材を示す部分断面図、
【図9】図1,図2に示す接点部材の形成の最終工程を説明するための斜視図、
【図10】製造工程中における接点部材の部分断面図であり、最終的に図9に示す接点部材をIV−IV線から切断し矢印方向から見た断面形状を形成するための一工程図、
【図11】図10の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図12】図11の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図13】図12の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図14】図13の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図15】図14の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図16】図3,図4に示す接点部材の形成の最終工程を説明するための斜視図、
【図17】図5に示す接点部材の製造方法を説明するための一工程図であり、製造工程中における接点部材の部分断面図、
【図18】図17の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図19】図18の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図20】図7に示す接点部材の形成の最終工程を説明するための斜視図、
【図21】図7に示す接点部材の製造方法を説明するための一工程図であり、製造工程中における接点部材の部分断面図、
【図22】図21の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【図23】図22の次に行なわれる一工程図(部分断面図)、
【符号の説明】
【0149】
1 マザー基板
2 電子部品
3、20、30 接点部材
4、22 上部シート部材
5、21 下部シート部材
6、23、32、35 第1の接点
7、24、33、36 第2の接点
8 接合層
9 導電層
10、11、25、26、34、42、32c、33c、43a、44a、45、61、62a 貫通孔
31、41、50、70 シート部材
42、60、71 作業台
43 導電材料層
44、46、62、63 マスク層
47 金属被膜
72 基材
A、B、C、D、E、F、G、H、I 組
J、K、L 折り曲げ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点と、前記接点が取り付けられた基台とを有し、前記接点は基部と前記基部から延出形成された弾性腕とを有し、2つ以上の前記接点が組となり、前記組を構成する接点どうしは基部を介して導通接続されており、
前記組を構成する接点のうち、少なくとも一つの接点の弾性腕は上方向に変形し、残りの接点の弾性腕は下方向に変形し、
前記基台には貫通孔が設けられ、前記弾性腕の少なくとも一部は、前記貫通孔を通り前記基台から突出していることを特徴とする接点部材。
【請求項2】
前記弾性腕の前記基台からの突出量σは、前記弾性腕を押圧して前記突出量σを0にするのに必要な力が降伏点よりも小さくなるように設定されている請求項1記載の接点部材。
【請求項3】
上部基台と下部基台とが高さ方向にて対向し、
組を構成する少なくとも一つの接点の基部は前記上部基台の前記下部基台との対向面に、残りの接点の基部は前記下部基台の前記上部基台との対向面にそれぞれ接合され、
上方向に変形した弾性腕は前記上部基台に形成された貫通孔を通り、前記上部基台から上方に突出し、下方向に変形した弾性腕は前記下部基台に形成された貫通孔を通り、前記下部基台から下方に突出している請求項1又は2に記載の接点部材。
【請求項4】
前記接点は薄膜形成されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の接点部材。
【請求項5】
少なくとも一部の前記接点の前記弾性腕は螺旋状に立体成形されている請求項1ないし4のいずれかに記載の接点部材。
【請求項6】
接点部材の製造方法において、以下の工程を有することを特徴とする接点部材の製造方法。
(a) 下部基台上と、上部基台上のそれぞれに組を構成する接点を少なくとも一つづつ形成する工程と、
(b) 前記(a)工程よりも前、あるいは前記(a)工程よりも後に、前記下部基台と、上部基台にそれぞれ貫通孔を形成する工程と、
(c) 前記各接点の弾性腕を全て同じ高さ方向へ変形させる工程と、
(d)前記接点が形成されている基台の面を内側に向けて、前記下部基台と上部基台とを高さ方向にて対向させ、このとき、上方向に変形している弾性腕を前記上部基台に形成された貫通孔に通して、前記上部基台から上方に突出する状態にし、下方向に変形している弾性腕を前記下部基台に形成された貫通孔に通して前記下部基台から下方に突出する状態にするとともに、組を構成する接点の基部どうしを導電接続させる工程。
【請求項7】
前記(a)工程時、少なくとも一部の前記接点を、接合層を介して形成し、このとき前記接点の上面側と下面側とで異なる内部応力を付与し、
前記(c)工程時、前記接点の弾性腕の下側の接合層を除去し、これにより前記弾性腕を内部応力により変形させる請求項6記載の接点部材の製造方法。
【請求項8】
前記(a)工程のとき、前記接点をスパッタ蒸着法を用いて形成し、このとき真空ガス圧を変化させることで前記接点部材の内部応力を制御する請求項7記載の接点部材の製造方法。
【請求項9】
前記(a)工程時、全ての前記接点の下面側に引張り応力を、上面側に圧縮応力を付与し、前記(c)工程時に、すべての接点の弾性腕を上方向に変形させる請求項7又は8に記載の接点部材の製造方法。
【請求項10】
前記(a)工程時、少なくとも一部の接点を、螺旋状の弾性腕を有する平面的な形状で形成し、
前記(c)工程時、前記螺旋状の弾性腕を立体変形させる請求項6記載の接点部材の製造方法。
【請求項11】
前記(a)工程時、下部基台と上部基台とが一体に形成された基台を用い、前記(d)工程時、前記基台を折り曲げて、前記下部基台と上部基台とを高さ方向にて相対向させる
請求項6ないし10のいずれかに記載の接点部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−229193(P2006−229193A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335681(P2005−335681)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)