説明

接着剤、電極作製用結着剤、及び固体電解質用組成物

【課題】優れた接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質用組成物を提供すること。
【解決手段】繰り返し単位(A)及び(B)からなるランダム繰り返し構造を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造のアーム部を備えたスターポリマーを含有する接着剤、電極作製用結着剤及び固体電解質用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な接着剤が、様々な用途に合わせて開発されてきた。例えば、特許文献1には、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系骨格からなる有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分としてなる接着剤組成物であって、(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有する有機化合物である、電子材料用接着剤が開示されている。また、特許文献2には、硬化性樹脂組成物を含む導電性接着剤が開示されている。
【0003】
また、電池用の接着剤として、例えば特許文献3には、溶剤中に、非導電性粉末と、該非導電性粉末を上記溶剤中に分散させるとともに、上記溶剤に溶解する分散剤と、接着性を有するとともに上記溶剤中に溶解する接着性樹脂とを含むことを特徴とするリチウム二次電池用接着剤が開示されている。また、特許文献4には、官能基含有モノマーを構成モノマーとするリチウム二次電池用のアクリル系接着剤又は粘着剤であって、該接着剤又は粘着剤中の官能基含有モノマーの残存量が0.01重量%未満であることを特徴とするリチウム二次電池用接着剤又は粘着剤が開示されている。
【0004】
近年、電子機器の小型軽量化、多機能化、コードレス化の要求に伴い、高性能電池の開発が積極的に進められている。これらの電池は、使い切りタイプの一次電池と、充電により繰り返し使用が可能な二次電池に分けることができる。前者の例としては、マンガン電池、アルカリマンガン電池などが挙げられ、後者の例としては、カドミウムを用いて得られるアルカリ二次電池 (ニッケル−カドミウム電池 )、水素吸蔵合金を用いて得られるアルカリ二次電池 (Ni−MH電池 )、リチウム化合物を用いた非水電解液二次電池(リチウムイオン電池 )等を挙げることができる。
【0005】
これらのうち、リチウムイオン電池は、その主要な構成要素として正極、負極、これら正極と負極との間に挟まれたセパレータを有し、正極、負極及びセパレータには電解液が含浸されている。現在実用に供されているリチウムイオン電池においては、正極には、リチウムコバルト酸化物等の粉末からなる正極活物質を正極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、負極には、炭素系粉末からなる負極活物質を負極集電体に塗布して板状にしたものを用いることができる。また、電解液には、プロピレンカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。さらに、セパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜が用いられている。
【0006】
しかし、セパレータは熱により収縮するものが多いため、電池の過充電や内部短絡によって異常昇温した場合のような高温環境下では、セパレータの熱収縮が起き、場合によっては、セパレータが融解、破膜して、電極間のセパレータとしての機能を果たさなくなる結果、電解液及び正極の分解反応が進行し、電池から発火するか又は電池が破裂してしまう場合があった。
【0007】
そのような接着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが通常用いられている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
また、リチウムイオン電池の正極は、活物質であるコバルト酸リチウムに金属粉やカーボンからなる導電性材料および結着剤を添加しN−メチル−2−ピロリドンの存在下で混練・調製したペーストをドクターブレードにより塗布し、乾燥することにより、結着剤によってコバルト酸リチウムと導電性材料を交互に結着し、さらに金属集電体に結着せしめてなるものである。一方、負極は活物質である炭素材料に結着剤を添加し水等の存在下、混練・調製したペーストをドクターブレードにより塗布し、乾燥することにより、結着剤によってカーボン材料を金属集電体に結着せしめてなるものである。ここで上記リチウムイオン電池の電解液には、プロピレンカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。
【0009】
また、Ni−MH電池の正極は、活物質である水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケル、導電性材料であるカーボン、及びコバルト粉末等の添加剤を結着剤により交互に結着し、更に金属集電体に結着させてなるものである。一方、負極は、水素吸蔵合金に、ニッケル粉末やカーボン等からなる導電性材料及び結着剤を添加し水の存在下で混練・調整したペーストをパンチングメタルや金属多孔板、発泡金属板、網状金属繊維焼結板などの金属集電体に塗布し、乾燥することにより、結着剤によって水素吸蔵合金と導電性材料を交互に結着し、更に金属集電体に結着せしめてなるものである。ここで上記Ni−MH電池の電解液には、水酸化カリウムのような強アルカリ水溶液が用いられている。
【0010】
従って、これらの電池の結着剤には、(1)集電体と活物質および導電性材料同士及び各材料間の結着性の高いポリマーであること、(2)電池内で電圧を受ける過酷な環境下で安定な物質であることのみならず、(3)電解液に対する耐食性に優れること、が要求される。
【0011】
これらの二次電池用結着剤として、通常、使用されるものとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの含フッ素ポリマーやスチレン−エチレン−ブテン−スチレン(SEBS)などの非水溶性ポリマーが用いられ、必要に応じて更にポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーとの混合物が用いられている(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10参照。)。
【0012】
しかしながら、上記各公報に記載されるような結着剤だけでは、集電体への活物質への活物質の結着力は、未だ不十分であった。そのため、充放電サイクルの進行に伴う、電極の膨潤・収縮等によって、活物質が集電体から徐々に脱落し、電池性能が劣化していくという問題、すなわち、十分なサイクル特性が得られないという問題があった。
【0013】
また、従来、高分子固体電解質として、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(X成分)とスチレン(Y成分)とを、リビングアニオン重合法により共重合させて得られるX−Y−X型トリブロック共重合体をマトリックス基材とする高分子固体電解質が提案されている(非特許文献1)。この文献に記載されたマトリックス基材においては、前記X成分はリチウムイオンの拡散輸送空間としてのPEOドメインを形成する成分である。従って、イオン伝導性を高めるためには、マトリックス基材中のX成分の含有量を多くすることが好ましい。
【0014】
しかし、X成分であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートのホモポリマーは高分子量体となっても室温で液状物であるため、X−Y−X型共重合体を固体電解質のマトリックス基材とするためには、X成分の含有量には制限がある。また、このことはリチウムイオンの拡散輸送空間としてのPEOドメインの形状及びサイズに制限があることを意味する。実際、前記マトリックス基材の40℃でのイオン伝導性は10−6S/cmと満足のいくものではなかった。
【0015】
また、特許文献11には、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテルとピラジン等の含窒素複素環化合物との水素結合を利用した、柔軟性を有する高分子固体電解質も提案されている。
【0016】
しかし、この文献に記載された高分子固体電解質は、ポリマー末端に水素結合部位を有するポリマーとの水素結合を利用するものであり、ポリマー主鎖中のくり返し単位中の水素結合性官能基との水素結合を利用するものではない。また、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル単体に比べて、イオン伝導度が低くなるために実用化には至っていない。
【0017】
さらに、特許文献11には、ポリマー主鎖中の繰り返し単位中に、水素詰合性官能基を有するイオン導電性ポリマー又は水素結合性官能基を有するイオン導電性環状化合物に、水素結合部位を有する低分子化合物と水素結合を形成した化合物を含有させると、ポリマーの連鎖構造の制御とイオン伝導度が向上することが開示されている。そこでは、低分子化合物として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基を有する化合物が開示されている。
【0018】
しかしながら、この文献に記載された高分子固体電解質は、イオン導電性と形状安定性の両方ともが実用的に満足する特性を有するものではなかった。従って、優れた熱的特性及び物理的特性とイオン導電性を兼ね備えた高分子固体電解質の開発が求められていた。
【0019】
【特許文献1】特開2001−98248号公報
【特許文献2】特開2005−113059号公報
【特許文献3】特開2004−214042号公報
【特許文献4】特開2002−260667号公報
【特許文献5】特開平10−172606号公報
【特許文献6】特開2004−107641号公報
【特許文献7】特開平3−283362号公報
【特許文献8】特開平4−206345号公報
【特許文献9】特開平4−272656号公報
【特許文献10】特開平9−63589号公報
【特許文献11】WO02/40594号公報
【非特許文献1】Macromol.Chem190,1069(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、接着強度、膜強度、導電性、耐溶剤性(耐電解液性)及び耐熱収縮性に特に優れた接着剤を提供することにある。また、結着強度、膜強度、導電性、耐溶剤性(耐電解液性)及び耐熱収縮性に特に優れた電極作製用結着剤を提供することにある。さらに、膜強度、導電性、耐溶剤性及び耐熱収縮性に特に優れた固体電解質用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、接着剤、電極作製用結着剤及び固体電解質用組成物として優れた特性を有するポリマーを提案している(特願2005−204969号、特願2005−213933号、特願2005−014195号)。本発明者らは、かかるポリマーの持つ特性を保持すると共に、さらに優れた特性を有するポリマーの開発のために、鋭意研究した結果、かかるリニアポリマーをアーム部としたスターポリマーを用いることにより、接着剤、電極作製用結着剤及び固体電解質用組成物としてさらに優れた特性を発揮することが可能となることを見い出し、本件発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち本発明は、(1)繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする接着剤に関する。
【0023】
【化1】

【0024】
(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0025】
【化2】

【0026】
(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【0027】
また、本発明は、(2)繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする上記(1)に記載の接着剤に関する。
【0028】
【化3】

【0029】
(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0030】
【化4】

【0031】
(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0032】
【化5】

【0033】
(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【0034】
また、本発明は、(3)アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の接着剤に関する。
【0035】
【化6】

【0036】
(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【0037】
また、本発明は、(4)繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする上記(3)に記載の接着剤や、(5)繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする上記(4)に記載の接着剤に関する。
【0038】
また、(6)本発明は、アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の接着剤に関する。
【0039】
【化7】


【0040】
(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0041】
また、本発明は、(7)アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の接着剤に関する。
【0042】
【化8】

【0043】
(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0044】
また、本発明は、(8)アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の接着剤に関する。
【0045】
【化9】

【0046】
(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【0047】
また、本発明は、(9)コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の接着剤や、(10)コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする上記(9)に記載の接着剤や、(11)コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする上記(9)に記載の接着剤に関する。
【0048】
【化10】

【化11】

【0049】
(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【0050】
また、本発明は、(12)スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の接着剤や、(13)スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の接着剤に関する。
【化12】

【0051】
(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【0052】
【化13】

【0053】
(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【0054】
また、本発明は、(14)スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載の接着剤や、(15)繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の接着剤に関する。
【0055】
【化14】

【0056】
また、本発明は、(16)アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする上記(3)〜(15)のいずれかに記載の接着剤や、(17)さらに、金属塩を含有することを特徴とする上記(1)〜(16)に記載の接着剤に関する。
【0057】
また、本発明は、(18)繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする電極作製用結着剤に関する。
【0058】
【化15】

【0059】
(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0060】
【化16】

【0061】
(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【0062】
また、本発明は、(19)繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする上記(18)に記載の電極作製用結着剤に関する。
【0063】
【化17】

【0064】
(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0065】
【化18】

【0066】
(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0067】
【化19】

【0068】
(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【0069】
また、本発明は、(20)アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする上記(18)又は(19)に記載の電極作製用結着剤に関する。
【0070】
【化20】

【0071】
(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【0072】
また、本発明は、(21)繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする上記(20)に記載の電極作製用結着剤や、(22)繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする上記(21)に記載の電極作製用結着剤や、(23)アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0073】
【化21】

【0074】
(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0075】
また、本発明は、(24)アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0076】
【化22】

【0077】
(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0078】
また、本発明は、(25)アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0079】
【化23】

【0080】
(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【0081】
また、本発明は、(26)コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする上記(18)〜(25)のいずれかに記載の電極作製用結着剤や、(27)コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする上記(26)に記載の電極作製用結着剤に関する。
【0082】
【化24】

【0083】
また、本発明は、(28)コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする上記(26)に記載の電極作製用結着剤に関する。
【0084】
【化25】

【0085】
(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【0086】
また、本発明は(29)スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(18)〜(28)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0087】
【化26】

【0088】
(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【0089】
また、本発明は、(30)スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(18)〜(28)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0090】
【化27】

【0091】
(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【0092】
また、本発明は、(31)スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする上記(18)〜(30)のいずれかに記載の電極作製用結着剤や、(32)繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする上記(18)〜(31)のいずれかに記載の電極作製用結着剤に関する。
【0093】
【化28】

【0094】
また、本発明は、(33)アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする上記(20)〜(32)のいずれかに記載の電極作製用結着剤や、(34)さらに、金属塩を含有することを特徴とする上記(18)〜(33)に記載の電極作製用結着剤に関する。
【0095】
また、本発明は、(35)繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする固体電解質用組成物に関する。
【0096】
【化29】

【0097】
(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0098】
【化30】

【0099】
(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【0100】
また、本発明は、(36)繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする上記(35)に記載の固体電解質用組成物に関する。
【0101】
【化31】

【0102】
(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【0103】
【化32】

【0104】
(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0105】
【化33】

【0106】
(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【0107】
また、本発明は、(37)アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする上記(35)又は(36)に記載の固体電解質用組成物に関する。
【0108】
【化34】

【0109】
(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【0110】
また、本発明は、(38)繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする上記(37)に記載の固体電解質用組成物や、(39)繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする上記(38)に記載の固体電解質用組成物や、(40)アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(37)〜(39)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0111】
【化35】

【0112】
(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0113】
また、本発明は、(41)アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(37)〜(39)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0114】
【化36】

【0115】
(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【0116】
また、本発明は、(42)アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする上記(37)〜(39)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0117】
【化37】

【0118】
(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【0119】
また、本発明は、(43)コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする上記(35)〜(42)のいずれかに記載の固体電解質用組成物や、(44)コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする上記(43)に記載の固体電解質用組成物に関する。
【0120】
【化38】

【0121】
また、本発明は、(45)コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする上記(43)に記載の固体電解質用組成物に関する。
【0122】
【化39】

【0123】
(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【0124】
また、本発明は、(46)スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(35)〜(45)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0125】
【化40】

【0126】
(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【0127】
また、本発明は、(47)スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする上記(35)〜(45)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0128】
【化41】

【0129】
(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【0130】
また、本発明は、(48)スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする上記(35)〜(47)のいずれかに記載の固体電解質用組成物や、(49)繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする上記(35)〜(48)のいずれかに記載の固体電解質用組成物に関する。
【0131】
【化42】

【0132】
また、本発明は、(50)アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする上記(37)〜(49)のいずれかに記載の固体電解質用組成物や、(51)さらに、金属塩を含有することを特徴とする上記(35)〜(50)に記載の固体電解質用組成物に関する。
【発明の効果】
【0133】
本発明によれば、極めて優れた特性を有する接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0134】
本発明の接着剤、電極作製用結着剤、及び固体電解質用組成物としては、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むアーム部とを備えたスターポリマーを含有する接着剤であれば特に制限されるものではなく、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)は、それぞれ、一種単独の繰り返し単位であってもよいし、複数種の繰り返し単位であってもよい。ランダム繰り返し構造(C)の数平均分子量としては、2000〜50000程度である。
【0135】
【化43】

【0136】
【化44】

【0137】
繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよい。炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等を挙げることができる。R400a及びR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。
【0138】
500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表す。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等を挙げることができる。シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0139】
また、R100〜R500の炭化水素基は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
【0140】
は、1〜100のいずれかの整数を表し、2〜50のいずれかの整数であることが好ましい。sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。この繰り返し構造(E)
【0141】
【化45】

【0142】
は、アーム部を構成するポリマー鎖中、20〜90重量%含まれていることが好ましく、35〜70重量%含まれていることがより好ましい。繰り返し構造(E)を上記の範囲で含有することにより、接着(結着)強度、膜強度、導電性、耐溶剤性(耐電解液性)及び耐熱収縮性が極めて優れたものとなる。
【0143】
繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよい。炭素数1〜10の炭化水素基としては、繰り返し単位(A)におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0144】
210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。炭素数1〜10の炭化水素基としては、繰り返し単位(A)におけるものと同様のものを挙げることができ、炭化水素オキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等を挙げることができ、酸無水物基としては、無水マレイン酸基、無水フタル酸基等を挙げることができる。R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。
【0145】
また、R110〜R410は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
【0146】
具体的に、繰り返し単位(B)としては、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)を好適に例示することができ、特に、繰り返し単位(B−1)が好ましい。
【0147】
【化46】

【0148】
繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。s2 は、1〜100のいずれかの整数を表し、2〜50のいずれかの整数であることが好ましい。s2 が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
【0149】
【化47】

【0150】
繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。R410dは、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
【0151】
【化48】

【0152】
繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOHで表される基を表す。R510としては、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。
【0153】
また、本発明のスターポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖は、上記ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むことが好ましい。繰り返し構造(D)としては、一種単独の繰り返し構造であってもよいし、2種以上のブロック繰り返し構造又はランダム繰り返し構造であってもよい。
【0154】
【化49】

【0155】
繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。炭素数1〜10の炭化水素基としては、繰り返し単位(A)におけるものと同様のものを挙げることができる。R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、具体的には、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のアントラセニル基等のアリール基、2−ピリジル基、4−ピリジル基等のヘテロアリール基を挙げることができ、これらの中でも、アリール基が好ましく、特に、フェニル基、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基が好ましい。hは、20〜300のいずれかの整数を表し、30〜150のいずれかの整数が好ましい。
【0156】
また、R600〜R900は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。そのような置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
【0157】
具体的に、アーム部を構成するランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖としては、式(I)、式(II)及び式(III)で表されるポリマー鎖を好適に例示することができる。
【0158】
【化50】

【0159】
式(I)中、(C)は、上記ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、上記繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、かかる一つの炭素原子を介して重合開始剤の一部が結合した基である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0160】
【化51】

【0161】
式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、かかる一つの炭素原子を介して重合開始剤の一部が結合した基である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0162】
【化52】

【0163】
式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、かかる一つの炭素原子を介して重合開始剤の一部が結合した基である。kは、1以上のいずれかの整数を表し、例えば、1〜300のいずれかの整数を挙げることができる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。炭素数1〜10の炭化水素基としては、繰り返し単位(A)におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0164】
アーム部を構成するポリマー中に、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、及び繰り返し構造(D)を含む場合、アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることが好ましく、繰り返し単位(A)が55〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜40重量%含まれていることがより好ましい。
【0165】
本発明の接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質用組成物に含有されるスターポリマーのコア部としては、結合手を3以上有し、スターポリマーを形成することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、鎖状式又は環式脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物等が挙げられ、ベンゼン環骨格を有する構造のものが好ましい。具体的に、コア部としては、式(IV)
【0166】
【化53】

【0167】
で表される構造のコア部や、式(V)
【0168】
【化54】

で表される構造を含むコア部を挙げることができる。式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3の整数を表す。その他、多数のベンゼン環を骨格に有する構造として、例えば、J.Am.chem.Soc.,Vol.118,No.37,8647,1996に記載のものを例示することができる。
【0169】
具体的に、式(V)で表される構造を含むコア部としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0170】
【化55】

【0171】
より具体的に、本発明の接着剤におけるスターポリマーとしては、例えば、式(VI)で表されるスターポリマーや、式(VII)で表されるスターポリマーを好ましく例示することができ、その他、上記コア部の最外殻のベンゼン環にこれらと同様のアーム部を備えたスターポリマーを挙げることができる。
【0172】
【化56】

【0173】
式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。
【0174】
【化57】

【0175】
式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。
【0176】
本発明において含有されるスターポリマーの数平均分子量(Mn)としては、例えば、50000〜1000000程度である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、例えば、1.01〜1.50であることが好ましい。
【0177】
また、本発明のスターポリマーは、ミクロ相分離構造を有していることが好ましく、ネットワーク型ミクロ相分離構造を有していることが特に好ましい。この様な構造を有することで、イオン導電性、物理的特性、熱的特性、特に強度を改善することができる。本発明における「ミクロ相分離構造」には、シリンダー、ラメラ、球状といった構造が含まれ、ポリマーの一次構造、分子量、分子量分布等の条件により適宜安定な相分離構造をとり得る。
【0178】
以上のようなスターポリマーを含有した本発明の接着剤、電極作製用結着剤、及び固体電解質用組成物は、金属塩を含有することが好ましい。スターポリマーと共に金属塩を含有させることにより、導電率の向上を図ることができると共に、接着強度をさらに向上させることができる。接着強度が向上する理由としては、金属塩が、繰り返し単位(A)における繰り返し単位(E)の酸素原子等に配位して擬似架橋を形成する結果、重合体の架橋密度が増加することが考えられる。
【0179】
金属塩を含有させる方法としては、例えば、スターポリマーと金属塩とを溶媒中で混合し均一にする方法の他、スターポリマーを金属塩を含む溶液に接触させることなども含まれる。なお、溶媒は、スターポリマーが溶解するものであれば特に制限はないが、極性溶媒が好ましく、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、クロロホルム、N−メチルピロリドン、メタノール等を挙げることができる。
【0180】
金属塩としては、特に制限されないが、電解質塩であることが好ましい。電解質塩としては、アルカリ金属塩、(CHNBF等の4級アンモニウム塩、(CHPBF等の4級ホスホニウム塩、AgClO等の遷移金属塩、あるいは塩酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸が挙げられ、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は遷移金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。金属塩は、複数種を併用してもよい。
【0181】
アルカリ金属塩の具体例としては、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC(CH)(CFSO、LiCH(CFSO、LiCH(CFSO)、LiCSO、LiN(CSO、LiB(CFSO、LiPF、LiClO、LiI、LiBF、LiSCN、LiAsF、NaCFSO、NaPF、NaClO、NaI、NaBF、NaAsF、KCFSO、KPF、KI、LiCFCO、NaClO、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等が挙げられ、リチウム塩が特に好ましい。
【0182】
接着剤又は電極作成用結着剤の場合、金属塩は、スターポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖における繰り返し単位(A)における繰り返し単位(E)に対して、0.005〜80モル%の範囲で含有させることが好ましく、0.01〜30モル%の範囲で含有させることがより好ましい。この範囲で含有させることにより、金属塩を均一に分散させることができ、均一な接着効果を得ることができる。また、固体電解質用組成物の場合、金属塩は、スターポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖における繰り返し単位(A)における繰り返し単位(E)に対して、1〜10モル%の範囲で含有させることが好ましく、2〜6モル%の範囲で含有させることがより好ましい。この範囲で含有させることにより、金属塩を均一に分散させることができ、固体電解質として非常に高い特性を発揮することができる。
【0183】
本発明の接着剤におけるスターポリマーの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、アーム部となるアニオン重合活性末端を有するポリマーとコア部となる化合物を反応させることにより製造することができる。すなわち、アームポリマー合成反応終了後、反応液中へさらにコア部となる化合物を添加することにより行うことができる。また、合成したアームポリマーを、コア部となる化合物の溶液中に添加することもできる。
【0184】
この反応は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、有機溶媒中において−100℃〜50℃、好ましくは−70℃〜40℃の温度で重合反応を行うことができ、これにより構造が制御され、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることができる。また、かかるスターポリマーの生成反応は、アームポリマーを形成させるのに用いた溶媒中で連続して行うこともできる他、溶媒を添加して組成を変更して、又は溶媒を別の溶媒に置換して行うこともできる。かかる溶媒としては、アームポリマーの合成反応に用いられる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0185】
このようなスターポリマーの製造方法においては、コア部となる化合物として、2以上のエステル基を有する化合物を用いることが好ましく、これにより、1つのエステル基に対してアニオン重合活性末端が2度攻撃することから、1つのエステル基に対して2つのアームを形成することができ、狭分散のスターポリマーを簡易かつ確実に得ることができる。2以上のエステル基を有する化合物とアニオン重合活性末端を有するポリマーの添加割合としては、アニオン重合活性末端を有するポリマーの活性末端(D)が2以上のエステル基を有する化合物のエステル基の数(P)の2倍量となるように予め計算して添加してもよく、また、(D)が(P)の2倍量を超える過剰量となるように添加してもよい。
【0186】
2以上のエステル基を有する化合物としては、鎖状式又は環式脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物等特に制限されるものではなく、芳香族化合物、芳香族炭化水素基等のベンゼン環を骨格に有する化合物であることが好ましい。具体的に、例えば、式(VIII)で表される化合物や、式(IX)で表される化合物を挙げることができる。
【0187】
【化58】

【0188】
【化59】

【0189】
式(VIII)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。(式(IX)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表し、p〜pは、それぞれ独立して、1〜5のいずれかの整数を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。
【0190】
アーム部となるアニオン重合活性末端を有するポリマーの合成方法としては、モノマー(混合)溶液中に、アニオン重合開始剤を滴下する方法や、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法のいずれの方法でも行うことができるが、分子量及び分子量分布を制御することができることから、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法が好ましい。このアームポリマーの合成反応は、通常、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、−100〜50℃、好ましくは−100〜40℃の範囲の温度下で行われる。
【0191】
具体的に、アーム部となるアニオン重合活性末端を有するポリマーの合成方法としては、例えば、1)繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むアニオン重合活性末端を有するポリマーを製造する方法や、2)上記(1)の方法により得られた、繰り返し構造(C)を含む重合活性末端を有するポリマーと、繰り返し構造(D)を形成可能な化合物を混合して、繰り返し構造(D)に重合活性末端を有するポリマーを製造する方法や、3)繰り返し構造(D)を形成可能なモノマーを用いて、繰り返し構造(D)を含む重合活性末端を有するポリマーを製造し、該ポリマーと、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物を混合して、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)に重合活性末端を有するポリマーを製造する方法を挙げることができる。
【0192】
アームポリマーを製造する際に用いるアニオン重合開始剤としては、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を例示することができ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等を例示することができ、有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等を例示することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、α-メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
【0193】
アームポリマーを製造する際に用いる有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類の他、アニソール、ヘキサメチルホスホルアミド等のアニオン重合において通常使用される有機溶媒を挙げることができ、これらは一種単独溶媒又は二種以上の混合溶媒として使用することができる。これらのうち、極性及び溶解性の観点から、テトラヒドロフランとトルエン、テトラヒドロフランとヘキサン、テトラヒドロフランとメチルシクロヘキサンの混合溶媒を好ましく例示することができる。
【0194】
また、アーム部となるアニオン重合活性末端を有するポリマーは、式(X)で表される化合物を重合開始化合物として製造することができる。
【0195】
【化60】

【0196】
式(X)中、W及びW’は、それぞれ独立して、重合を阻害せずに水酸基又はハロゲン原子に置換し得る官能基を表す。具体的には、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基等のシリルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基が挙げられ、反応の容易さから、特にシリルオキシ基が好ましい。
【0197】
すなわち、まず、アニオン重合開始剤によって、式(X)で表される化合物を重合開始種を有する化合物とし、次いで、該重合活性種を有する化合物に、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物、繰り返し構造(D)を形成可能なモノマー等の重合可能なモノマーを加えてアニオン重合を行い、さらに、コア部となる化合物を反応させて、式(X)で表される化合物が最外殻となるようなスターポリマー(以下、スターポリマー(X)という。)を製造した後、式(X)で表される化合物のW及びW’をハロゲン原子又はハロゲン原子を有する基に置換し(以下、W及びW’をハロゲン原子又はハロゲン原子を有する基に置換したものをスターポリマー(X’)という。)、さらに、繰り返し構造(D)を形成可能なモノマー、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物等の重合可能なモノマーを加えて、重合を行うことにより、本発明におけるスターポリマーを製造することができる。
【0198】
上記のスターポリマーの製造方法の中でも、アニオン重合開始剤によって、式(X)で表される化合物を重合開始種を有する化合物とし、次いで、該重合活性種を有する化合物に、繰り返し構造(D)を形成可能なモノマーを加えてアニオン重合を行い、さらに、コア部となる化合物を反応させて、式(X)で表される化合物が最外殻となるようなスターポリマー(X)を製造した後、式(X)で表される化合物のW及びW’をハロゲン原子又はハロゲン原子を有する基に置換して、スターポリマー(X’)とし、さらに、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物を加えて、リビングラジカル重合を行う方法が、重合が容易な点から好ましい。
【0199】
例えば、式(II)で表されるポリマー鎖からなるアーム部を有するスターポリマーは、スターポリマー(X)のW及びW’を水酸基に置換し、次いで、ブロモイソブチルブチレートを反応させた後、さらに、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物をリビングラジカル重合させることにより製造することができる。
【0200】
また、式(III)で表されるポリマー鎖からなるアーム部を有するスターポリマーは、スターポリマー(X)のW及びW’をハロゲン原子に置換した後、(メタ)アクリル酸系化合物をリビングラジカル重合し、さらに、繰り返し単位(A)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(B)を誘導可能な化合物の混合物をリビングラジカル重合させることにより製造することができる。(メタ)アクリル酸系化合物としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ピリジル等のアクリル酸エステル化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−ピリジル等のメタクリル酸エステル化合物;
【0201】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「ブレンマーPMEシリーズ;日本油脂(株)製」、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールシクロヘキセン−1−カルボキシレート、メトキシポリエチレングリコール−シンナメート等を挙げることができ、これらは2種以上混合して用いることができる。
【0202】
スターポリマー(X’)を用いてリビングラジカル重合させる方法としては、(A)スターポリマー(X’)を重合開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として重合反応を行うリビングラジカル重合法や、(B)安定ラジカル系開始剤を用いるリビングラジカル重合法等が挙げられ、より効率よく目的とするスターポリマーを得ることができる観点から、(A)のリビングラジカル重合法が好ましい。
【0203】
(A)のリビングラジカル重合法に用いる遷移金属錯体を構成する中心金属としては、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅等の周期律表第7〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)が好ましく挙げられる。なかでもルテニウムが好ましい。
【0204】
これらの金属に配位して錯体を形成する配位子としては、特に限定されないが、例えば、リン系配位子、ハロゲン原子、一酸化炭素、水素原子、炭化水素系配位子、含酸素系配位子、他のカルコゲナイド、含窒素系配位子等が挙げられる。遷移金属錯体は、これらの配位子の二種以上を有していてもよい。
【0205】
遷移金属錯体の好ましい具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化鉄(II)、カルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ニッケル(II);(1−エトキシカルボニル−1−メチルエチル)メチルテルル、(1−シアノ−1−メチルエチル)メチルテルル、α−メチルベンジルメチルテルル、ベンジルメチルテルル、メチルベンゾイルテルル等のテルル錯体等が挙げられる。これらの遷移金属錯体は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0206】
リビングラジカル重合においては、さらに、前記遷移金属錯体に作用することによりラジカル重合を促進させる活性化剤を併用することもできる。かかる活性化剤としては、ルイス酸及び/又はアミン類を使用することができる。
【0207】
ルイス酸の種類は特に制限されず、例えば、アルミニウム系ルイス酸、スカンジウム系ルイス酸、チタン系ルイス酸、ジルコニウム系ルイス酸、スズ系ルイス酸等を使用することができる。アミン類としては、2級アミン、3級アミン、含窒素芳香族複素環化合物等、含窒素化合物であれば、特に制限されないが、2級アミン、3級アミンが好ましい。これらのルイス酸及びアミン類は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。ルイス酸及び/又はアミン類の使用量は、遷移金属錯体1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モルである。
【0208】
(A)のリビングラジカル重合法によるスターポリマーの製造方法においては、前記スターポリマー(X’)が、重合開始剤として働く。すなわち、前記スターポリマー(X’)が有するW及びW’で表される官能基中の活性ハロゲン原子の結合箇所が、遷移金属錯体の作用でラジカル種となることにより、重合活性点となり、そこへ、リビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物が重合する。
【0209】
リビングラジカル重合法によりアーム部を形成する方法としては、
(1)一種のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を用いて、単独重合体からなるアーム部を形成する方法、
(2)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系に同時に添加して、ランダム共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(3)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系へ逐次的に添加して、ブロック共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(4)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物の組成比を経時的に変化させて、グラジエント共重合体からなるアーム部を形成する方法、
等が挙げられる。
【0210】
重合方法は特に制限されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、又は乳化重合法等が採用できるが、溶液重合が好ましい。
【0211】
溶液重合法を採用する場合は、前記スターポリマー(X’)、重合性不飽和結合を有する化合物、遷移金属錯体、所望によりルイス酸及び/又はアミン類を有機溶媒中で混合し、加温しながら撹拌することにより目的とするスターポリマーを得ることができる。
【0212】
(B)のリビングラジカル重合法に用いる安定ラジカル系開始剤としては、安定フリーラジカル化合物とラジカル重合開始剤との混合物、又は各種アルコキシアミン類が挙げられる。
【0213】
本発明の接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記スターポリマーや金属塩の他に、任意成分を含んでいてもよい。そのような任意成分としては、架橋剤、フィラー、増感剤、貯蔵安定剤等を挙げることができる。増感剤としては、尿素、ニトリル化合物(N,N−ジ置換−P−アミノベンゾニトリル等)、燐化合物(トリ−n−ブチルホスフィン等)等が挙げられ、貯蔵安定剤としては、第4級アンモニウムクロライド、ベンゾチアゾール、ハイドロキノン等を挙げることができる。
【0214】
架橋剤は、本発明におけるスターポリマーの繰り返し単位(B)1モルに対して、0.01〜2モル用いることが好ましく、0.1〜1モル用いることがより好ましい。用いる架橋剤としては、特に制限されないが、分子内に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート化合物や分子内に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物を挙げることができる。
【0215】
本発明の接着剤は、オレフィン樹脂等のプラスチック、金属、無機化合物、セラミックス、これらのコーティング基板に対して、高い接着力を有しており、また、高い導電性を有すると共に高い膜強度も有している。また、本発明の接着剤は、耐溶剤性に優れているので、溶剤中での使用も可能である。これらの性質から、本発明の接着剤は、固体電池であるか液体電池であるかを問わず、電池用として好ましく用いることができ、特に電極とセパレータ間の接着に有用である。例えば、リチウムイオン電池における電極とセパレータ間の接着に使用することができる。また、熱に対しても収縮しないので、電池使用時の温度上昇にも十分に耐えることができ、セパレータの変形を防止できるので、電極同士が接触してショートすることを防止することができる。
【0216】
本発明の電極作製用結着剤は、集電体の表面に電極活性物質を保持するために用いることができ、電極活性物質同士の結着、及び集電体との結着に優れている。また、高い導電性を有すると共に高い膜強度をしている。さらに、本発明の結着剤は、耐電解液性にも優れており、固体電池であるか液体電池であるかを問わず、好ましく用いることができる。また、熱に対しても収縮しないので、電池使用時の温度上昇にも十分に耐えることができる。
【0217】
本発明の電極作製用結着剤を用いた電極の製造方法としては、例えば、支持体(集電体)上に作成された電極活物質を含む層上に、本発明の電極作製用結着剤をキャスト又は塗布し、乾燥する方法を挙げることができる。塗布する方法は特に制限されず、ロールコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の方法を用いることができる。
【0218】
本発明の固体電解質用組成物は、固体電解質を製造することができ、固体電解質の形状としては、シート状、膜状、フィルム状等を挙げることができる。本発明の固体電解質用組成物は、高い導電性を有した強度の強いシート、膜、フィルムを形成することができる。固体電解質は、キャリアー上に、固体電解質用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱等にて硬化して製造することができる。用いるキャリアーとしては、固体電解質を担持できるものであれば、材質、大きさ、形状等は特に制約されない。なかでも、ポリテトラフルオロエチレン製等の耐薬品性、耐熱性及び剥離性に優れるものが望ましい。
【0219】
固体電解質用組成物をキャリアー上に塗布する方法としては、公知の塗布方法が採用でき、例えば、固体電解質用組成物をキャリアー上に注ぐ方法、ロールコーター法、スクリーンコーティング法、ドクターブレード法、バーコーティング法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の各種コーティング手段が挙げられる。
【0220】
固体電解質用組成物のキャスト又は塗布後、溶媒を常圧又は減圧留去、加熱乾燥等の方法で除去するが、少なくとも溶媒を含んだ状態で加熱処理する工程を含むことを好ましい。該工程以外の前処理又は後処理工程として、減圧留去、加熱乾燥等の工程がさらに含まれていてもよい。ここで、溶媒を含んだ状態とは、溶媒が完全に除去される前の状態であり、キャスト、又は塗布した溶液中にしめる固形分に対して、10〜50重量%、さらに15〜30重量%の範囲で溶媒が残存しているのが好ましい。加熱する温度は特に制限されないが、ガラス転移点温度付近又はそれ以上が好ましい。
【0221】
得られたシート状等の固体電解質は、正極、負極及び固体電解質用組成物層を有する固体電解質電池の固体電解質層として好適に用いることができる。すなわち正極と負極との間に、固体電解質シートを挟むことで、高分子固体電解質電池を得ることができる。また、本発明の固体電解質は、自立膜が形成できる程度の優れた機械強度を有し、広い温度範囲にわたり優れたイオン伝導度を有する。また、耐溶剤性にも優れており、電解液を含浸させて使用することもできる。
【0222】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0223】
<実施例に係るスターポリマー(実施例スターポリマー(1))の製造>
〔OTBDMS基(t−ブチルジメチルシリルオキシ基)を有するアームの合成〕
窒素置換した2000mL四つ口フラスコに、脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと略す。)113g、脱水トルエン1020g、DPE(ジフェニルエチレン)−(m−OTBDMS)13.75g(29.3mmol)を加えて、攪拌下、反応系を−40℃に保持した。反応系に、n−ブチルリチウム/ヘキサン1.6mol/L溶液11.35g(26.7mmol)を加え、30分間攪拌した。その後、反応系に、スチレン200g(1920.3mmol)を加えて重合を行った。滴下が終了して20分後にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す。)により重合完結を確認した。このポリマー溶液をゲルろ過クロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)により分析したところ、分子量Mn=9400、分散度Mw/Mn=1.049の単峰性ポリマーであった。
【0224】
〔スター化反応〕
この反応系内に脱水THF25mlに溶解させた1,1,2,2−テトラキス−(4−エトキシカルボニルフェニル)エタン1.56g(2.5mmol)を添加し、30分反応を継続した後、メタノールを用いて反応を停止させた。この重合溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー205g(収率97%)を得た。
【0225】
分取GPCを用いて、過剰量のアームポリマーを除去することにより、白色粉末状スターポリマーを得た。このポリマーをGPCにより分析したところ、分子量Mn=46800、分散度Mw/Mn=1.021の単峰性ポリマーであった。また、多角度光散乱検出器(以下、GPC−MALLSと略す。)で測定したところ、分子量Mw=81100、分散度Mw/Mn=1.013であった。
【0226】
〔官能基変換(OTBDMS基)のOH基への変換)〕
窒素置換した2000mLフラスコに、脱水THF1500ml、上記製造した8アームスターポリマー200g、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TABF)100ml(1.0M in THF)を加えて、室温下で一晩撹拌した。溶媒を半分まで濃縮し、この溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー195g(収率98%)を得た。
【0227】
〔官能基変換(OH基のOBiB基(ブロモイソブチルブチレート基)への変換)〕
窒素置換した2000mL四つ口フラスコに、脱水THF1200ml、上記OH基に変換した8アームスターポリマー(OH基)190g(2.3mmol)、トリエチルアミン5.70g(56.3mmol)を加えて、撹拌下、反応系を0℃に保持した。反応系にブロモイソブチリルブロミド11.2g(48.7mmol)を徐々に加え、滴下が終了後、室温に戻して一晩撹拌を行った。ろ過によりTEA臭酸塩を除去後、溶媒を半分まで濃縮し、この溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄した。得られたポリマーをTHF/メタノールで分別精製を行った後、大量のメタノールで再沈後、真空下、50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー140g(収率74%)を得た。
【0228】
このポリマー溶液をGPCにより分析したところ、分子量Mn=45700、分散度Mw/Mn=1.026の単峰性ポリマーであった。また、GPC−MALLSで測定したところ、分子量Mw=82500、分散度Mw/Mn=1.020であった。
【0229】
〔リビングラジカル重合〕
100mlフラスコに、上記ブロモイソブチルブチレート基へ変換した8アームスターポリマー2.05g(0.025mmol)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPME−1000)7.79g(7.00mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略す。)0.41g(3.15mmol)、トルエン40gを仕込み、脱気した。ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.04g(0.04mmol)を加えて、均一に溶解した後、ジ−n−ブチルアミン0.02g(0.16mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始して4時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。NMRより転化率を求めたところ、PME−1000は46%、HEMAは90%であった。反応液をカラムにかけ、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮し、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す。)を加え、10%NMP溶液に調整した。PME−1000:HEMA:St=60:6:34(wt%比)、PEO(ポリエチレンオキサイド)(繰り返し構造(E))含有量=54wt%であった。
【0230】
<実施例に係るスターポリマー(実施例スターポリマー(2))の製造>
〔リビングラジカル重合〕
200mlフラスコに、上記ブロモイソブチルブチレート基へ変換した8アームスターポリマー4.10g(0.05mmol)、PME−1000 14.76g(13.26mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート1.64g(12.60mmol)、トルエン80gを仕込み、脱気した。ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.08g(0,08mmol)を加えて、均一に溶解した後、ジ−n−ブチルアミン0.04g(0.32mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始して5時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。NMRより転化率を求めたところ、PME−1000は66%、HEMAは97%であった。反応液をカラムにかけ、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮し、NMPを加え、10%NMP溶液に調整した。PME−1000:HEMA:St=63:11:26(wt%比)、PEO(繰り返し構造(E)含有量=57wt%であった。
【0231】
<比較例に係るポリマー(比較例ポリマー(1))の製造>
アルゴン雰囲気下において、PME−1000 135.0g(121.3mmol)、HEMA 15.0g(115.3mmol)、トルエン450.0gをフラスコに取り、均一に混合後、脱気処理を行った。
【0232】
この混合溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.72g(0.75mmol)、ジ−n−ブチルアミン0.39g(3.0mmol)を加え、さらに2,2−ジクロロアセトフェノン0.28g(1.5mmol)を加え、攪拌下、80℃に加温して重合反応を開始させた。重合反応を開始して47時間経過後、反応系の温度を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行って金属錯体と未反応モノマーを除去した。減圧下に揮発分を除去して得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
【0233】
以上のようにして、PME−1000とHEMAとのランダム共重合体を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、Mw=215,000、Mw/Mn=2.15であった。
【0234】
アルゴン雰囲気下において、先に合成したP−(PME1000/HEMA) 50.0g(0.23mmol)、スチレン 75.0g(720mmol)、トルエン 300gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.12g(0.15mmol)、ジ−n−ブチルアミン 0.07g(0.5mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0235】
重合反応を開始して68時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。スチレンの重合率は21%であった。大量の冷ヘキサンで再沈し、得られたポリマーを30℃で20時間減圧乾燥した。
【0236】
以上のようにして、(PME−1000/HEMA)とStとのブロック共重合体を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、Mw=329,000、Mw/Mn=2.02であった。PME−1000:HEMA:St=68:8:24(wt%比)、PEO含有量=62wt%であった。
【0237】
<比較例2に係るポリマー(比較例ポリマー(2))の製造>
アルゴン雰囲気下において、PME−1000 90.0g(80.8mmol)、HEMA 10.0g(76.8mmol)、トルエン 300.0gをフラスコに取り、均一に混合後、脱気処理を行った。
【0238】
この混合溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.48g(0.5mmol)、ジ−n−ブチルアミン0.26g(2.0mmol)を加え、さらに2,2−ジクロロアセトフェノン0.19g(1.0mmol)を加え、攪拌下、80℃に加温して重合反応を開始させた。重合反応を開始して45時間経過後、反応系の温度を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行って金属錯体と未反応モノマーを除去した。減圧下に揮発分を除去して得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
【0239】
以上のようにして、PME−1000とHEMAとのランダム共重合体を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、Mw=155,000、Mw/Mn=1.54であった。
【0240】
アルゴン雰囲気下において、先に合成したP−(PME1000/HEMA) 28.0g(0.18mmol)、スチレン 84.0g(807mmol)、トルエン 110gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0 .06g(0.08mmol)、ジ−n−ブチルアミン 0.05g(0.37mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0241】
重合反応を開始して28時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。スチレンの重合率は19%であった。大量の冷ヘキサンで再沈し、得られたポリマーを30℃で20時間減圧乾燥した。
【0242】
以上のようにして、(PME−1000/HEMA)とStとのブロック共重合体を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、Mw=445,000、Mw/Mn=2.07であった。PME−1000:HEMA:St=57:7:34(wt%比)、PEO含有量=54wt%であった。
【0243】
<評価>
〔導電率の評価〕
1.サンプルの調製
(サンプル1−1)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、さらにLiPFを56mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0244】
(サンプル1−2(架橋剤含有))
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を40mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、LiPFを56mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0245】
(サンプル2−1(架橋剤含有))
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を70mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、LiPFを59mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0246】
(比較サンプル1−1)
比較例ポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させ、さらにLiPFを64mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0247】
(比較サンプル1−2)
比較例ポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を53mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、LiPFを64mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0248】
2.導電率の測定
アルゴン雰囲気下において、上記調製した各サンプルをポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、70℃×4時間)して均一な導電率測定評価膜を得た(膜厚100μm)。得られた評価膜を白金板に挟み、周波数5〜10MHzのインピーダンスアナライザー(Solartron−1260型)を用いて複素インピーダンス解析によりイオン導電性を測定した。
【0249】
3.結果
その結果を表1及び図1に示す。
【0250】
【表1】

【0251】
表1及び図1から明らかなように、比較サンプルも良好なイオン導電性を示し、接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質として有用な材料であるが、本発明のスターポリマーを含有する材料は、架橋・未架橋に関わらず、さらに良好なイオン導電性を示し、接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質として非常に有用な材料であることがわかった。
【0252】
〔膜強度の評価〕
1.測定用ポリマー膜の調製
(サンプル1−1)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9gに溶解させたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、65℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0253】
(サンプル1−2(架橋剤含有))
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9gに溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を40mg(架橋率100%換算)添加し溶解させたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、65℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0254】
(サンプル2−1)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、70℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0255】
(サンプル2−2(架橋剤含有))
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を70mg(架橋率100%換算)添加し溶解させたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、70℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0256】
(比較サンプル2−1)
比較例ポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、70℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0257】
(比較サンプル2−2(架橋剤含有))
比較例ポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を46mg(架橋率100%換算)添加し溶解させポリマー組成物を得た。得られたポリマー組成物を、アルゴン雰囲気下において、ポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、70℃×4時間)してポリマー膜を得た(膜厚100μm)。
【0258】
2.膜強度の測定
得られた各ポリマー膜を、幅1cm×長さ3cmの短冊状に切り出し評価用試験片とした。試験片の両端5mmをオートグラフ(島津製作所社製)の引張り治具にセットし、25℃における引張り速度20mm/minでの測定を行い、測定結果から応力(MPa)−伸度(%)曲線を求めた。
【0259】
3.結果
各試験片の最大応力と破断における伸度を表2に示す。また、応力−伸度曲線を図2に示す。
【0260】
【表2】

【0261】
表2及び図2から明らかなように、比較サンプルも良好な強度及び柔軟性を示し、接着剤、電極作製用結着剤、固体電解質として有用な材料であるが、本発明のスターポリマーを含有する材料は、比較サンプルに比べて、さらに強度もあり柔軟性にも富む良好な膜物性を示し、接着剤、結着剤、固体電解質として非常に有用な材料であることがわかった。
【0262】
〔接着(結着)強度の評価〕
1.サンプルの調製
(サンプル1−1)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させてポリマー組成物を得た。
【0263】
(サンプル1−2)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を20mg(架橋率50%換算)添加し十分に攪拌を行い、ポリマー組成物を得た。
(サンプル1−3)
架橋剤(TDI)の量を増やして、サンプル1−2調製と同様の操作を行い、架橋率100%換算のポリマー組成物を得た。
【0264】
(サンプル1−4)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を40mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、LiPFを56mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0265】
(サンプル2−1)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させてポリマー組成物を得た。
【0266】
(サンプル2−2)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を35mg(架橋率50%換算)添加し十分に攪拌を行い、ポリマー組成物を得た。
【0267】
(サンプル2−3)
架橋剤(TDI)の量を増やして、サンプル2−2の調製と同様の操作を行い、架橋率100%換算のポリマー組成物を得た。
【0268】
(サンプル2−4)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を70mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、さらにLiPFを59mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0269】
(比較サンプル)
比較例のポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」と略す)を用意した(比較サンプル3−1)。また、PVDF0.3gを、NMP溶液4.7gに溶解させ、さらにLiPFを21mg加えて均一に溶解させて、ポリマー組成物を得た(比較サンプル3−2)。
【0270】
2.接着(結着)強度の測定
2−1 試験体の作成
アルミニウム板(100mm×25mm×1.0mm)を用意し、その一端の部分(12.5mm×25mm)に上記ポリマー組成液を塗布した。それとは別に、ポリエチレン製多孔質フィルム(100mm×25mm×0.02mm)を用意し、その一端の部分(12.5mm×25mm)を、上記アルミニウム板の結着剤が塗布された部分に重ねて貼り合わせた。次に、それを加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、65℃×4時間)して結着試験体を作成した。
【0271】
2−2 強度の測定
得られた結着試験体の両端をオートグラフ(島津製作所製)にセットし、25℃において引張り試験を行った。引張り試験速度は、10mm/minとした。引張り試験はJISK6850:1999に準拠して実施した。引張り試験の結果から、破断応力(MPa)を算出した。
【0272】
3.結果
上記測定結果を表3に示す。
【0273】
【表3】

【0274】
表3の結果から、本発明のスターポリマーを含有する材料は、ポリフッ化ビニリデンを含有する比較サンプルに比べて、高い破断応力を示し、良好な接着(結着)強度を持つ材料であることがわかった。
【0275】
〔耐溶剤性試験〕
1.サンプルの調製
(サンプル1−1)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9gに溶解させてポリマー組成物を得た。
【0276】
(サンプル1−2)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を20mg(架橋率50%換算)添加し十分に攪拌を行い、ポリマー組成物を得た。
【0277】
(サンプル1−3)
架橋剤(TDI)の量を増やして、サンプル1−2調製と同様の操作を行い、架橋率100%換算のポリマー組成物を得た。
【0278】
(サンプル1−4)
実施例スターポリマー(1)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を40mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、LiPFを56mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0279】
(サンプル2−1)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させてポリマー組成物を得た。
【0280】
(サンプル2−2)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を35mg(架橋率50%換算)添加し十分に攪拌を行い、ポリマー組成物を得た。
【0281】
(サンプル2−3)
架橋剤(TDI)の量を増やして、サンプル2−2の調製と同様の操作を行い、架橋率100%換算のポリマー組成物を得た。
【0282】
(サンプル2−4)
実施例スターポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒(THF/アセトニトリル=4g/5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を70mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、さらにLiPFを59mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0283】
(比較サンプル2−1)
比較例ポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させポリマー組成物を得た。
【0284】
(比較サンプル2−2)
比較例ポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を23mg(架橋率50%換算)添加し溶解させポリマー組成物を得た。
【0285】
(比較サンプル2−3)
架橋剤(TDI)の量を増やして、比較サンプル2−2の調製と同様の操作を行い、架橋率100%換算のポリマー組成物を得た。
【0286】
(比較サンプル2−4)
比較例ポリマー(2)1gをTHFとアセトニトリルの混合溶媒9g(THF/アセトニトリル=4g/5g)中に溶解させ、架橋剤としてTDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート)を46mg(架橋率100%換算)添加し十分に攪拌した後、さらにLiPFを56mg([Li]/[EO]=0.03)加えて均一に溶解させポリマー組成物を得た。
【0287】
(比較サンプル3−1)
ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」と略す)を用意した。
【0288】
2.耐溶剤性の試験
グラファイト電極を用意し、その上に、ポリマー組成物を塗布した。それとは別に、ポリエチレン製多孔フィルム(20mm×20mm×0.02mm)を用意し、上記グラファイト電極のポリマー組成溶液が塗布された部分に重ね合わせて張り合わせた。次に、それを加熱真空乾燥(25℃×0.5時間、65℃×4時間)して試験体を作成した。
【0289】
リチウム(LiPF)塩濃度が1Mであるエチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート=3/7(容量比)混合溶媒を調製し、上記試験体を該混合溶媒中20ml中に浸漬させ、ポリマーの耐溶剤性を観察した。試験条件は、室温下静置×12h、60℃×2h、80℃×2h、100℃×2hである。
【0290】
3.結果
測定の結果、該混合溶媒中でポリエチレン製多孔フィルムを良好に接着している場合を◎、一部剥離している場合を○、50%程度はく離した場合を△、完全にポリエチレン製多孔質フィルムをはく離した場合を×で評価した。
【0291】
【表4】

【0292】
上記表の結果から、比較サンプルに比べ、実施例に係る全ての系が当該混合溶液中でもポリエチレン多孔フィルムを剥離させることなく保持し、良好な耐溶剤性を示すことがわかり、PVDFに匹敵する性能を示すことがわかった。さらには、本発明に含有させるスターポリマーはTDI架橋を行わなくても、ポリエチレン製多孔フィルムをはがすことなく良好に接着・保持することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】導電率測定の結果を示すグラフである。
【図2】ポリマー膜の応力−伸度曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする接着剤。
【化1】

(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化2】

(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【請求項2】
繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤。
【化3】

(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化4】

(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【化5】

(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【請求項3】
アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤。
【化6】

(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【請求項4】
繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする請求項3に記載の接着剤。
【請求項5】
繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の接着剤。
【化7】

(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項7】
アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の接着剤。
【化8】

(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項8】
アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の接着剤。
【化9】


(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【請求項9】
コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤。
【請求項10】
コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【化10】

【請求項11】
コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする請求項9に記載の接着剤。
【化11】

(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【請求項12】
スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤。
【化12】

(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【請求項13】
スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤。
【化13】

(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【請求項14】
スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の接着剤。
【請求項15】
繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の接着剤。
【化14】

【請求項16】
アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする請求項3〜15のいずれかに記載の接着剤。
【請求項17】
さらに、金属塩を含有することを特徴とする請求項1〜16に記載の接着剤。
【請求項18】
繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする電極作製用結着剤。
【化15】

(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化16】

(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【請求項19】
繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする請求項18に記載の電極作製用結着剤。
【化17】

(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化18】

(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【化19】

(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【請求項20】
アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする請求項18又は19に記載の電極作製用結着剤。
【化20】

(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【請求項21】
繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする請求項20に記載の電極作製用結着剤。
【請求項22】
繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする請求項21に記載の電極作製用結着剤。
【請求項23】
アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化21】

(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項24】
アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化22】


(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項25】
アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化23】


(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【請求項26】
コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする請求項18〜25のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【請求項27】
コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする請求項26に記載の電極作製用結着剤。
【化24】

【請求項28】
コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする請求項26に記載の電極作製用結着剤。
【化25】

(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【請求項29】
スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項18〜28のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化26】

(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【請求項30】
スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項18〜28のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化27】

(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【請求項31】
スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする請求項18〜30のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【請求項32】
繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする請求項18〜31のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【化28】

【請求項33】
アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする請求項20〜32のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
【請求項34】
さらに、金属塩を含有することを特徴とする請求項18〜33に記載の電極作製用結着剤。
【請求項35】
繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなるランダム繰り返し構造(C)を含むポリマー鎖をアーム部とするスターポリマーを含有することを特徴とする固体電解質用組成物。
【化29】

(繰り返し単位(A)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R400aとR400bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R500は、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは、1〜100のいずれかの整数を表し、sが2以上のとき、式:−CH(R400a)−CH(R400b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化30】

(繰り返し単位(B)中、R110、R310は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R110とR310は結合して環を形成してもよく、R210は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、又は水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表し、R410は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。)
【請求項36】
繰り返し単位(B)が、繰り返し単位(B−1)〜(B−3)のいずれかであることを特徴とする請求項35に記載の固体電解質用組成物。
【化31】

(繰り返し単位(B−1)中、R410a及びR410bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、s2は、1〜100のいずれかの整数を表し、s2が2以上のとき、式:−CH(R410a)−CH(R410b)−O−で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)
【化32】

(繰り返し単位(B−2)中、R410cは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表し、R410dは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【化33】

(繰り返し単位(B−3)中、R410eは、水素原子又は−R510−COOH(R510は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。)で表される基を表す。)
【請求項37】
アーム部が、ランダム繰り返し構造(C)と共に、繰り返し構造(D)を含むポリマー鎖からなることを特徴とする請求項35又は36に記載の固体電解質用組成物。
【化34】

(繰り返し単位(D)中、R600〜R800は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R900は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、hは、20〜300のいずれかの整数を表す。)
【請求項38】
繰り返し構造(D)のR900が、フェニル基であることを特徴とする請求項37に記載の固体電解質用組成物。
【請求項39】
繰り返し構造(D)のR900が、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基又はp−tert−ブトキシフェニル基であることを特徴とする請求項38に記載の固体電解質用組成物。
【請求項40】
アーム部が、式(I)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項37〜39のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化35】

(式(I)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項41】
アーム部が、式(II)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項37〜39のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化36】

(式(II)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表す。)
【請求項42】
アーム部が、式(III)で表されるポリマー鎖からなることを特徴とする請求項37〜39のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化37】

(式(III)中、(C)は、ランダム繰り返し構造(C)を表し、(D)は、繰り返し構造(D)を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Zは、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、kは、1以上のいずれかの整数を表す。)
【請求項43】
コア部が、ベンゼン環骨格を有することを特徴とする請求項35〜42のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【請求項44】
コア部が、式(IV)で表される構造であることを特徴とする請求項43に記載の固体電解質用組成物。
【化38】

【請求項45】
コア部が、式(V)で表される構造を含むことを特徴とする請求項43に記載の固体電解質用組成物。
【化39】

(式(V)中、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。)
【請求項46】
スターポリマーが、式(VI)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項35〜45のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化40】

(式(VI)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。)
【請求項47】
スターポリマーが、式(VII)で表されるスターポリマーであることを特徴とする請求項35〜45のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化41】

(式(VII)中、Gは、アーム部を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Fは、(CH又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表し、n〜nは、それぞれ1〜5のいずれかの整数を表す。)
【請求項48】
スターポリマーの数平均分子量(Mn)が50000〜1000000であることを特徴とする請求項35〜47のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【請求項49】
繰り返し単位(A)における繰り返し構造(E)が、アーム部を構成するポリマー鎖中、40〜80重量%含まれていることを特徴とする請求項35〜48のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【化42】

【請求項50】
アーム部を構成するポリマー鎖中、繰り返し単位(A)が40〜70重量%、繰り返し単位(B)が5〜15重量%、繰り返し構造(D)が20〜50重量%含まれていることを特徴とする請求項37〜49のいずれかに記載の固体電解質用組成物。
【請求項51】
さらに、金属塩を含有することを特徴とする請求項35〜50に記載の固体電解質用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−131784(P2007−131784A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328013(P2005−328013)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】