説明

接着剤塗布装置

【課題】同一駆動源で動作される複数の塗布部による塗布動作を効率良く行なうことができる接着剤塗布装置を提供する。
【解決手段】上下動可能に支持された複数の塗布部10A〜10Cを、それぞれ塗布位置(基板Sの上面)に下降させた後上昇させる塗布動作を、駆動源が同一の昇降手段22A〜22C、により行なう接着剤塗布装置であって、前記複数の塗布部を、それぞれ選択的に前記塗布位置より高い位置に、前記昇降手段とは独立に移動させ保持する保持手段32、34を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤塗布装置、特に塗布ヘッドに搭載されている同一の駆動源により動作される複数の塗布部の中から任意の塗布部を選択して基板上に接着剤を塗布する際に適用して好適な接着剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板に電子部品を搭載(実装)する際には、電子部品を基板上に接着剤で仮止めすることが行なわれており、そのために実装基板を生産する部品実装ラインには接着剤塗布装置が用意されている。
【0003】
このような接着剤塗布装置としては、例えば特許文献1には、接着剤が充填されたシリンジとその下端のノズル等からなる塗布部を、偏心カムの回転に従動するカムフォロワに連結されたリンク機構により上下動可能とし、該塗布部の下動時に、ノズルから吐出させた接着剤を基板上に塗布するものが開示されている。
【0004】
又、このような偏心カムに連動するリンク機構により塗布部を上下動させ、基板上に接着剤を塗布する接着剤塗布装置としては、位相差を変えて配置された複数の偏心カムを同一のモータ(駆動源)により回転させ、各偏心カムに対応して配設されている複数の塗布部を順次上下動させるようにしたものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−197588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されているような偏心カムを介して上下動させる塗布部を、同一のモータで回転される偏心カムの位相を変えて複数配置してなる接着剤塗布装置では、位相差で決まる順番で対応する塗布部を上下動させることになるため、任意の塗布部を選択して接着剤の塗布を行なうことができない上に、これがタイムロスの原因となるため、塗布動作の効率化を図ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、同一駆動源により上下動される複数の塗布部の中から任意の塗布部を選択使用でき、塗布動作を効率良く行なうことができる接着剤塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下動可能に支持された複数の塗布部を塗布位置に下降させた後上昇させる塗布動作を、駆動源が同一の昇降手段により行なう接着剤塗布装置であって、前記複数の塗布部を、それぞれ選択的に前記塗布位置より高い位置に、前記昇降手段とは独立に移動させ保持する保持手段を配設したことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
又、本発明においては、前記各塗布部に、横方向案内部を有する係合ガイドがそれぞれ形成されていると共に、前記各塗布部を、各係合ガイドの横方向案内部に係合された第1端部、これに対向する位置の第2端部、及び、これら両端部の中間より下方に位置する第3端部を有する回動部材を、該両端部の中間に位置する回動軸を支点に回動させて上下動させる場合、前記昇降手段が、下降時に前記第2端部を押し下げると共に、上昇時に所定高さで該押し下げを解除する、前記駆動源により下降・上昇される当接部を備えるようにしてもよい。
【0010】
その際、前記保持手段が、上昇時に前記第3端部に当接し、前記回動部材を前記第1端部を上昇させる方向に回動させる案内部材と、該案内部材を昇降動させ、所定高さに維持する第2昇降手段とを有しているようにしてもよく、又、前記当接部が、下端に前記第2端部に当接する当接面を有すると共に、上端に前記駆動源により回転されるボールねじが連結されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動源が同一の昇降手段より、複数の塗布部をそれぞれ上下動させて各塗布部による塗布動作を可能とすると共に、該昇降手段とは別に設けた保持手段により、これら塗布部を選択的に塗布位置より高い位置に上昇させ保持できるようにしたので、1又は2以上の任意の塗布部を選択使用して接着剤を塗布することができる。
【0012】
従って、常に一定の順番で塗布部を上下動させることしかできなかった従来の接着剤塗布装置に比べ、任意の塗布部を使うことができるため塗布動作を効率良く行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に係る一実施形態の接着剤塗布装置が備えている塗布ヘッドの要部を模式的に示す。
【0015】
この塗布ヘッド自体の図示は省略するが、該塗布ヘッドは図示しないXY駆動手段によりXY方向に移動可能になっている。
【0016】
便宜上後述するが、この塗布ヘッドには、接着剤が充填されているシリンジを含む塗布部10が複数搭載されており、各塗布部10は上下動可能に支持されていると共に、自重により下方に付勢されている。
【0017】
各塗布部10には、図1に1つを代表させて示すように圧力調整装置12が付設され、下方にある基板S上に該塗布部10を下降させた状態でシリンジ内を加圧することにより、その下端から接着剤を吐出させ、塗布できるようになっている。
【0018】
又、この塗布部10には、図中横方向に延びる溝部(案内部)を有するリニアガイド(係合ガイド)14が固定されている。
【0019】
又、上記塗布ヘッドには、回動軸16を支点に上下方向に回動(揺動)可能なアーム部を有する略T字形状の回動プレート(回動部材)18が、アーム部を横向きにして配設されている。この回動プレート18は、前記リニアガイド14の溝部を構成する上下案内面に係合(接触)する第1ベアリング(第1端部)18Aと、前記回動軸16を挟んで前記第1ベアリング18Aと対向する位置の第2ベアリング(第2端部)18Bと、これら両ベアリング18A、18Bの中間位置のアーム部に交差し、回動軸16の下方に延びるT字形状の脚部の下端に位置する第3ベアリング(第3端部)18Cとを有している。これら各ベアリングは接触(当接)時の摩擦を低減させる働きをしている。
【0020】
又、この塗布ヘッドには、下降時に上記第2ベアリング18Bを押し下げ、任意高さに停止させると共に、上昇時に所定高さで該押し下げを解除する昇降手段20が配設されている。
【0021】
この昇降手段20は、下端に第2ベアリング18Bへの当接面を有するハンマ(当接部)22と、該ハンマ22の上端に連結固定され、上方に延在されたボールねじ24とを備えており、該ボールねじ24が、前記塗布ヘッドに固定されたモータ(駆動源)26で回転されることにより、該ハンマ22が上下動可能になっている。
【0022】
本実施形態においては、前記モータ26を回転させ、ボールねじ24に取付けられているハンマ22を下降させて第2ベアリング18Bに当接させることにより、該第2ベアリング18Bを押し下げる力を発生させ、回動プレート18を時計回りに回動させる。この回動に伴い、図中左側の第1ベアリング18Aは、係合されているリニアガイド14に対して上方向に力を加えることになり、該リニアガイド14を介して第1ベアリング18Aに取付けられている塗布部10を、図2に示すように上昇させることができる。
【0023】
逆に、図2の上昇時にモータ26を逆回転させ、ハンマ22を上昇させると塗布部10は自重で落下し、第1ベアリング18Aには下方向に力が加わるため、第2ベアリング18Bは上方向に移動する。その結果、回動プレート18は反時計回りに回動することになり、第2ベアリング18Bに対するハンマ22による押し下げが、所定高さで解除されると、塗布部10は前記図1に示した塗布位置である基板Sの上面に下降する。
【0024】
又、本実施形態においては、前記塗布ヘッドには、上記昇降手段20とは独立に、前記回動プレート18を図1の状態から時計方向に回動させ、塗布部10を塗布位置より高い位置に上昇させ、その状態に保持することができる保持手段30が配設されている。
【0025】
この保持手段30は、塗布ヘッドの所定位置に固定されたエアシリンダ(第2昇降手段)32と、該エアシリンダ32により昇降動可能な、前記第3ベアリング18Cに近接配置された案内板(案内部材)34とで構成されている。従って、シリンダロッド32Aを縮めて、この案内板34を図1の状態から上昇させていくと、左下方に傾斜された案内面34Aが該第3ベアリングに当接し、これを左方向に案内しながら押圧することになる。
【0026】
その結果、回動プレート18は時計方向に回動されるため、図3に示すように塗布部10を上昇させると同時に、第2ベアリング18Bをハンマ22の到達最下点より下に下降させることができ、その際にエアシリンダ32を停止させ、案内板34をこの状態に維持することにより、ハンマ22の押し下げとは関係なく塗布部10を所定高さに保持することができる。
【0027】
従って、1つの塗布部10では、図1、図2に示したように、案内板34を下げた状態でハンマ22を上下動させることにより、塗布動作を繰り返すことができると共に、図3のように案内板34を上昇させた状態にすると、ハンマ22の上下動とは関係なく塗布動作を停止させることができる。
【0028】
前述した如く、本実施形態においては、以上詳述した基本的な動作機能を有する塗布部10が塗布ヘッドに複数搭載され、同一のモータ(駆動源)で上下動されるハンマ22により各塗布部10が上下動され、塗布動作が行なわれるようになっている。
【0029】
図4には、第1〜第3の3つの塗布部10A〜10Cが搭載され、ハンマ本体に連結された第1〜第3の3つのハンマ(当接部)22A〜22Cにより同一高さに押し下げられるようになっている例を示す。これらハンマ22A〜22Cは、ハンマ本体40として連結されており、該ハンマ本体40は、ここでの図示は省略するが、前記図1等に示した1つのハンマ22と同様に、モータ26に回転されるボールねじ24により上下動されるようになっている。
【0030】
従って、ハンマ本体40を使って同時に塗布動作を行なうことができると共に、図4には第1、第2塗布部10A、10Bについて示したが、いずれかの案内板34を上昇させ、対応する塗布部を上昇・保持することにより、それ以外の塗布部により塗布を行なうことができる。
【0031】
図5には、図4に示した第1、第2塗布部10A、10Bを、それぞれ対応する案内板34を上昇させて保持し、第3塗布部10Cを選択した場合について、ハンマ本体40を上昇させて基板Sの塗布面に塗布している状態を示す。
【0032】
以上詳述した如く、本実施形態によれば、同一のモータ26により上下動され3つの塗布部10A〜10Cを同時に使用して塗布することができると共に、1つ又は2つを任意に選択して塗布することもできる。又、塗布部を選択使用することにより、塗布動作の負荷を低減できると共に、効率化を図ることができる。
【0033】
なお、実施形態では、塗布部10の上下動を、モータ26で回転されるボールねじ24を介して行なう例を示したが、ハンマ本体40を昇降動させることができるものであれば任意である。又、保持手段も、案内板34とエアシリンダ32を組合せたものに限定されない。
【0034】
又、実施形態では、塗布部10が自重により下方に付勢されている例を示したが、ばね等の付勢手段を別途に設けるようにしてもよい。又、回動プレート18も、第1ベアリング18Aを上昇・保持できる構造であれば、T字形状でなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る一実施形態の接着剤塗布装置に適用される1つの塗布部と、塗布時の動作機構の概要を示す模式図
【図2】上記塗布部の上昇時の状態を示す、図1に相当する模式図
【図3】上記塗布部の保持状態を示す、図1に相当する模式図
【図4】複数の塗布部の一部を選択した状態を示す説明図
【図5】図4に示した選択された塗布部により塗布している状態を示す説明図
【符号の説明】
【0036】
10…塗布部
12…圧力調整装置
14…リニアガイド
16…回動軸
18…回動プレート(回動部材)
18A…第1ベアリング(第1端部)
18B…第2ベアリング(第2端部)
18C…第3ベアリング(第3端部)
20…昇降手段
22…ハンマ
24…ボールねじ
26…モータ(駆動源)
30…保持手段
32…エアシリンダ
34…案内板(案内部材)
40…ハンマ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能に支持された複数の塗布部を塗布位置に下降させた後上昇させる塗布動作を、駆動源が同一の昇降手段により行なう接着剤塗布装置であって、
前記複数の塗布部を、それぞれ選択的に前記塗布位置より高い位置に、前記昇降手段とは独立に移動させ保持する保持手段を配設したことを特徴とする接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記各塗布部に、横方向案内部を有する係合ガイドがそれぞれ形成されていると共に、
前記各塗布部を、各係合ガイドの横方向案内部に係合された第1端部、これに対向する位置の第2端部、及び、これら両端部の中間より下方に位置する第3端部を有する回動部材を、該両端部の中間に位置する回動軸を支点に回動させて上下動させる場合、
前記昇降手段が、下降時に前記第2端部を押し下げると共に、上昇時に所定高さで該押し下げを解除する、前記駆動源により下降・上昇される当接部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記保持手段が、上昇時に前記第3端部に当接し、前記回動部材を前記第1端部を上昇させる方向に回動させる案内部材と、該案内部材を昇降動させ、所定高さに維持する第2昇降手段とを有していることを特徴とする請求項2に記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
前記当接部が、下端に前記第2端部に当接する当接面を有すると共に、上端に前記駆動源により回転されるボールねじが連結されていることを特徴とする請求項2に記載の接着剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−6263(P2009−6263A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170105(P2007−170105)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】