説明

接着剤組成物

【課題】塗布し、硬化させた後の硬化物を被接着対象から容易に剥離することが可能な接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る接着剤組成物は、下記(1)又は(2)の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤と、を含有する。
(1)(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能の(メタ)アクリルモノマーであって、2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が13以上である。
(2)(メタ)アクリロイル基をn個(nは3以上の整数)有するn官能の(メタ)アクリルモノマーであって、任意の2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が23以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射等によって硬化可能な接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の液晶ディスプレイ(LCD)においては、外力からの保護を目的として、LCDモジュールの前面に透明の保護板が設けられている。また、近年ではタッチパネル付きの液晶ディスプレイが注目されており、この場合には保護板の背面にタッチパネルが設けられる。
【0003】
従来、例えばLCDモジュールに保護板を貼り合わせる場合には、保護板の貼り合わせ面の周縁部分にのみ粘着フィルムを貼り付け、次いで保護板をLCDモジュールに貼り合わせることが一般的であった。しかし、このような貼り合わせ方法では、粘着フィルムの存在しない中央部分には空気層が存在することになるため、保護板と空気との屈折率差により視認性が悪くなるという問題があった。そこで、このような問題を解消すべく、保護板の全面に粘着フィルムを貼り付けることが行われている。
【0004】
また、粘着フィルムを用いる方法よりもコストを下げるため、紫外線照射等によって硬化可能な液状の接着剤組成物を用いる方法も提案されている(特許文献1,2等を参照)。この方法によってLCDモジュールに保護板を貼り合わせる場合には、接着剤組成物を保護板の全面に塗布し、次いでこの保護板をLCDモジュールに貼り合わせ、紫外線照射等によって接着剤組成物を硬化させる。
【0005】
通常、このようにしてLCDモジュールに保護板を貼り合わせた後には、貼り合わせ状態について検査が行われる。そして、貼り合わせ面に異物や空気を噛み込んだり、貼り合わせ位置を誤って位置ズレを起こしたりし、貼り合わせ不良と判断された場合には、LCDモジュールから保護板が取り外され、再度、保護板が貼り合わせられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−281101号公報
【特許文献2】特開2009−001655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、保護板の貼り付けに接着剤組成物を用いた場合には、取り外した保護板に接着剤組成物の硬化物が残り、その硬化物の剥離が困難であるという問題があった。このため、保護板については再利用することができず、廃棄されていた。ここで、接着剤組成物の硬化物を保護板等の被接着対象から容易に剥離することができれば、保護板等の被接着対象についても再利用することができると考えられるが、そのような接着剤組成物はこれまで提案されていないのが現状であった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、塗布し、硬化させた後の硬化物を被接着対象から容易に剥離することが可能な接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、接着剤組成物に特定の(メタ)アクリルモノマーを含有させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る接着剤組成物は、下記(1)又は(2)の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤と、を含有するものである。
(1)(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能の(メタ)アクリルモノマーであって、2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が13以上である。
(2)(メタ)アクリロイル基をn個(nは3以上の整数)有するn官能の(メタ)アクリルモノマーであって、任意の2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が23以上である。
【0011】
なお、本明細書において「2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数」とは、2個の(メタ)アクリロイル基(CH=C(CH)−C(=O)−、又はCH=CH−C(=O)−)を原子数が最少となるように最短経路で繋いだときに辿る原子数を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布し、硬化させた後の硬化物を被接着対象から容易に剥離することが可能な接着剤組成物を提供することができる。
この接着剤組成物は、上記の液晶ディスプレイ分野におけるLCDモジュールに保護板を貼り合わせる場合のほか、半導体分野におけるウエハ等の基板を裏面研削する際に使用される接着テープ(特開2005−174963号公報等を参照)等の接着材料に代わる、剥離容易な接着剤組成物としても有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪接着剤組成物≫
本発明に係る接着剤組成物は、特定の(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤と、を含有するものである。以下、接着剤組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0014】
<特定の(メタ)アクリルモノマー>
本発明に係る接着剤組成物は、下記の第1の(メタ)アクリルモノマー又は後述する第2の(メタ)アクリルモノマーの少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーを含有する。
【0015】
まず、第1の(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能の(メタ)アクリルモノマーであって、2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が13以上である。
一般に、単官能の(メタ)アクリルモノマーを用いた場合には、硬化時に線状ポリマーが形成される。このため、例えばセロハンテープを用いて硬化物(硬化膜)を被接着対象から剥離しようとしても、糸曳きが生じ、剥離が困難である。また、通常の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーを用いた場合には、硬化時に密なネットワーク構造が形成される。このため、例えばセロハンテープを用いて硬化物を被接着対象から剥離しようとしても、剥離途中で切れてしまい、剥離が困難である。
これに対して第1の(メタ)アクリルモノマーは、2官能であり、かつ、2個の(メタ)アクリロイル基間の距離が長いため、硬化時に緩いネットワーク構造が形成される。これにより、接着剤組成物の硬化物を被接着対象から容易に剥離することが可能となる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド鎖を構成する各アルキレンオキサイド基は、アルキレン基をAとしたとき、−AO−、−OA−のいずれで表されるものであってもよい。その炭素数は、2〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。ポリアルキレンオキサイド鎖には、炭素数の異なるアルキレンオキサイド基が混在していても構わない。アルキレンオキサイド基の繰返し数は、2〜35であることが好ましく、3〜30であることがより好ましく、3〜20であることがさらに好ましい。
2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数の上限は、特に限定されないが110程度である。この最短原子数は、13〜101であることが好ましく、15〜90であることがより好ましく、20〜70であることがさらに好ましい。なお、最短原子数が60以上の場合は、2個の(メタ)アクリロイル基間に存在する全ての原子における酸素原子の炭素原子に対する割合が50%以下であることが好ましく、35〜45%であることがより好ましい。
【0017】
この第1の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば下記式(I)で表されるものを用いることができる。ただし、この場合においても、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数は13以上である。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R,Rはそれぞれ独立に単結合、又は水酸基、エーテル結合、若しくはウレタン結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。
は単結合又は2価の有機基を示す。この2価の有機基としては、鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基、又はこれらの組み合わせが挙げられ、水酸基、エーテル結合、又はウレタン結合を有していてもよい。
Xはそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレンオキサイド基を示す。このXの炭素数は、繰返し単位毎に異なっていても構わない。
m1,m2はそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、m1=m2=1の場合、Rは単結合となる。
【0020】
上記式(I)で表される(メタ)アクリルモノマーとしてより具体的には、例えば下記式(I−1)〜(I−3)で表されるものを用いることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式(I−1)〜(I−3)中、Rは上記式(I)と同義であり、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、アルキレンオキサイド基(−AO−、−OA−)の繰返し単位毎にAの炭素数が異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、m5は2〜15の整数を示す。
上記式(I−2)中、m6,m7はそれぞれ独立に2〜30の整数を示し、好ましくは2〜20の整数を示す。
上記式(I−3)中、R,Rはそれぞれ独立に水酸基又はウレタン結合を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R,Rの少なくともいずれか一方は水酸基又はウレタン結合を有するものであり、m8は2〜15の整数を示す。
【0023】
次に、第2の(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基をn個(nは3以上の整数)有するn官能の(メタ)アクリルモノマーであって、任意の2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が23以上である。
上述したように、通常の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーを用いた場合には、硬化時に密なネットワーク構造が形成される。このため、例えばセロハンテープを用いて硬化物(硬化膜)を被接着対象から剥離しようとしても、剥離途中で切れてしまい、剥離が困難である。
これに対して第2の(メタ)アクリルモノマーは、任意の2個の(メタ)アクリロイル基間の距離が長いため、硬化時に緩いネットワーク構造が形成される。これにより、接着剤組成物の硬化物を被接着対象から容易に剥離することが可能となる。
【0024】
(メタ)アクリロイル基の個数nは、3〜4が好ましく、3がより好ましい。
ポリアルキレンオキサイド鎖を構成する各アルキレンオキサイド基は、アルキレン基をAとしたとき、−AO−、−OA−のいずれで表されるものであってもよい。その炭素数は、2〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。ポリアルキレンオキサイド鎖には、炭素数の異なるアルキレンオキサイド基が混在していても構わない。任意の2個の(メタ)アクリロイル基間におけるアルキレンオキサイド基の繰返し数は、2〜20であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。
任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数の上限は、特に限定されないが60程度である。この最短原子数は、20〜55であることが好ましく、30〜50であることがより好ましい。
【0025】
この第2の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば下記式(II)で表される構造をn個有するものを用いることができる。ただし、この場合においても、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数は23以上である。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式(II)中、R,R,R,R,X,m1,m2は上記式(I)と同義である。
【0028】
上記式(II)で表される構造をn個有する(メタ)アクリルモノマーとしてより具体的には、例えば下記式(II−1)で表されるものを用いることができる。
【0029】
【化4】

【0030】
上記式(II−1)中、Rは上記式(I)と同義であり、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、アルキレンオキサイド基(−AO−、−OA−)の繰返し単位毎にAの炭素数が異なっていてもよい。
10,R11,R12はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。このR10,R11,R12は、いずれか1つが単結合であり、残り2つがメチレン基であることが好ましい。
m10,m11,m12はそれぞれ独立に2〜10の整数を示す。ただし、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数は23以上である。
【0031】
以上の第1,第2の(メタ)アクリルモノマーの中でも、塗布性の観点から、25℃で液状のものが好ましい。
また、第1,第2の(メタ)アクリルモノマーは、硬化物の弾性率が約5×10Pa以下となるように選択することが好ましい。このように硬化物の弾性率が低くなることで硬化物が柔軟になり、リワーク性が良好になる。
また、第1,第2の(メタ)アクリルモノマーは、硬化物が適度な硬度になるように選択することが好ましい。具体的には、2個の(メタ)アクリロイル基間(第2の(メタ)アクリルモノマーの場合は任意の2個の(メタ)アクリロイル基間)に存在する全ての原子における酸素原子の炭素原子に対する割合が60%以下、好ましくは30〜55%、より好ましくは30%以上55%未満である(メタ)アクリルモノマーを選択することが好ましい。また、特に、上記割合が同等の場合には、アクリルモノマーよりもメタクリルモノマーを選択することや、アルキレンオキサイド鎖のほかに置換基として水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを選択することが好ましい。
【0032】
なお、硬化物に透明性が要求される場合、第1,第2の(メタ)アクリルモノマーとしては、硬化物が無色透明になるものを選択することが好ましい。
また、硬化物に耐水性が要求される場合、第1,第2の(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数が3以上のアルキレンオキシド基を有するものを選択することが好ましい。第1の(メタ)アクリルモノマーについて、アルキレンオキサイド基の炭素数が2である場合は、繰り返し数が2〜4であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る接着剤組成物は、第1の(メタ)アクリルモノマー又は第2の(メタ)アクリルモノマーの少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーを、接着剤組成物全体に対して、35〜99質量%含有することが好ましく、44〜98%含有することがより好ましく、50〜98質量%含有することがさらに好ましく、65〜98質量%含有することが特に好ましい。
【0034】
<その他の重合性モノマー>
本発明に係る接着剤組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、上記第1,第2の(メタ)アクリルモノマー以外の他の重合性モノマーを含有していてもよい。特に、Tgが低い重合性モノマーを含有させることにより、硬化物の弾性率を低くすることができる。
ただし、上記第1,第2の(メタ)アクリルモノマーの含有量は、モノマー全体に対して30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
上記他の重合性モノマーを含有する場合は、モノマー全体に対して、0.5〜70質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、1〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
このような他の重合性モノマーは、単官能、多官能のいずれであってもよいが、単官能であることが好ましい。単官能の重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールモノメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルキル(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの重合性モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
光重合開始剤の含有量は、接着剤組成物中のモノマー100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましく、3〜8質量部であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、硬化不良を抑制することができる。
【0038】
<セルロース系樹脂>
本発明に係る接着剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でセルロース系樹脂を含有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、セルロースや、セルロースの水酸基の一部又は全部がアシル化されたアシル化セルロース等が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、ブチリル基等が挙げられる。このセルロース系樹脂の中でも、セルロースアセテートブチレート(CAB)が特に好ましい。
【0039】
セルロース系樹脂の含有量は、接着剤組成物中のモノマー100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、接着剤組成物の粘度を100〜100000cP程度に高めることができるため、接着剤組成物を塗布した際の膜厚を厚くすることができる。
【0040】
<その他の成分>
本発明に係る接着剤組成物は、溶剤を含有しないことが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば微量の有機溶剤を含有していてもよい。その場合、有機溶剤の含有量は、接着剤組成物中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、本発明に係る接着剤組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0042】
本発明に係る接着剤組成物は、上述した<特定の(メタ)アクリルモノマー>及び<光重合開始剤>を主要な構成成分とし、さらに、必要に応じて<その他の重合性モノマー>、<セルロース系樹脂>、溶剤等のその他の成分を含む。このうち、溶剤以外の成分が接着剤組成物中に占める割合は、70〜100質量%以上であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
≪接着方法及び剥離方法≫
本発明に係る接着剤組成物を用いて被接着対象同士を接着するには、まず、少なくとも一方の被接着対象の貼り合わせ面に、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷機等の塗布装置を用いて、塗布膜の膜厚が5〜1000μm、好ましくは10〜500μmとなるように接着剤組成物を塗布する。被接着対象としては、ガラス板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
次いで、被接着対象同士を貼り合わせ、紫外線、可視光レーザー等の活性エネルギー線を照射し、塗布膜を硬化させる。照射量は接着剤組成物の組成によっても異なるが、例えば100〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0044】
ここで、貼り合わせ面に異物や空気を噛み込んだり、貼り合わせ位置を誤って位置ズレを起こしたりした場合には、まず、被接着対象同士を剥がす。
次いで、被接着対象の貼り合わせ面に残っている接着剤組成物の硬化物(硬化膜)を剥離する。例えば、硬化物の端にセロハンテープを貼り、これを剥がすことで、硬化物を容易に剥離することが可能である。また、室温(23℃)〜100℃の水に10秒間〜60分間浸漬することによっても、硬化物を剥離することが可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例で使用する重合性モノマーのうち、UA4400以外の構造式を下記に示す。UA4400は、炭素数5のアルキレンオキサイド鎖を有する、分子量約1300の2官能アクリルモノマーである。
なお、これらの重合性モノマーのうち、PE−90,200,250、PP−1000,500,800、50PEP−300、70PEP−350Bは日油社製であり、HO−MPPは共栄社化学社製であり、M−5700は東亜合成社製であり、残りは新中村化学工業社製である。
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
また、以下の実施例で使用する光重合開始剤及びセルロース系樹脂は下記のとおりである。
・光重合開始剤
IR−907:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルズ社製、「IRGACURE 907」)
IR−184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製、「IRGACURE 184」)
・セルロース系樹脂
CAB1:セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社製、「CAB−551−0.2」)
CAB2:セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社製、「CAB−381−0.5」)
CAB3:セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社製、「CAB−381−2」)
【0053】
<実施例1〜22、比較例1〜28>
下記表1〜6に記載された成分を混合して、接着剤組成物を調製した。各成分の[]内の数字は質量部を表す。重合性モノマーについては、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数(2官能の場合)、又は任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数(3官能以上の場合)についても表中に示した。
なお、実施例18の接着剤組成物のみセルロース系樹脂を含有しており、その粘度は1100cPであった。
【0054】
[リワーク性の評価]
実施例1〜22、比較例1〜28の接着剤組成物を、スクリーン印刷機を用いてガラス基板上に塗布し、膜厚90μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜上にさらにガラス基板を積層し、その上から500〜2000mJ/cmの照射量で紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。いずれの組成物も、ガラス基板同士を接着させることができた。その後、一方のガラス基板を剥がした。そして、ガラス基板上に残った接着剤組成物の硬化膜にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、それを剥がしたときに、硬化膜の全体が剥離されたものをリワーク性が良好、糸曳きが生じたり、硬化膜が途中で切れたりしたものをリワーク性が不良、として評価した。また、セロハンテープによる剥離以前に、一方のガラス基板を剥がせなかったものもリワーク性が不良として評価した。結果を表1〜6に示す。
【0055】
[硬化収縮性の評価]
実施例1〜22、比較例1〜28の接着剤組成物を、スクリーン印刷機を用いてガラス基板上に塗布し、膜厚90μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜上にシリコーン系の離型PETフィルム(薄膜)を積層し、離型PETフィルム側から500〜2000mJ/cmの照射量で紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。そして、離型PETフィルムにうねりが生じたものを硬化収縮あり、うねりが生じなかったものを硬化収縮なし、として評価した。結果を表1〜6に示す。
【0056】
[硬さの評価]
触手により、硬化膜の硬さを下記の3段階で評価した(1が特に好ましい)。結果を表1〜6に示す。
0:硬い
1:柔らかい、しなやか
2:柔らか過ぎ
【0057】
[クロスハッチ試験]
上記[硬化収縮性の評価]と同様にして、ガラス基板とシリコーン系の離型PETフィルム(厚膜)とを貼り合わせ、離型PETフィルム側から紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。その後、離型PETフィルムを剥離した。なお、本評価では離型PETフィルムを使用しているため、上記[リワーク性の評価]でガラス基板を剥がせなかった接着剤組成物を用いた場合であっても、離型PETフィルムを剥離することができる。そして、カッターナイフを用いて、ガラス基板上に残った硬化膜に1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個形成し、その上にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、それを剥がした。そして、ガラス基板から剥がれた升目の数が多い方から0点〜10点で評価した。結果を表1〜6に示す。なお、クロスハッチ試験の点数の低い方が、リワーク性の観点から好ましい。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
表1〜6から分かるように、上述した第1,第2の(メタ)アクリルモノマーを重合性モノマーとして含有する実施例1〜22の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、いずれもリワーク性が良好であり、ガラス基板同士を接着させても一方のガラス基板を再び剥がすことができ、さらに他方のガラス基板に残った硬化膜自体もセロハンテープにより容易に剥離することができた。このリワーク性は、セルロース系樹脂をさらに含有させた場合(実施例18)や、単官能の(メタ)アクリルモノマーをさらに含有させた場合(実施例19,20)にも良好であった。
これに対して、(メタ)アクリロイル基間の距離が短い2官能や3官能の(メタ)アクリルモノマーや、単官能の(メタ)アクリルモノマーのみを重合性モノマーとして含有する比較例1〜28の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、いずれも剥離することが困難であった。
【0065】
<実施例23〜33>
下記表7に記載された成分を混合して、接着剤組成物を調製した。各成分の[]内の数字は質量部を表す。重合性モノマーについては、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数についても表中に示した。なお、上記[リワーク性の評価]と同様にしてリワーク性の評価を行ったが、実施例23〜33のいずれの接着剤組成物もリワーク性が良好であることが確認できた。
【0066】
[弾性率の評価]
実施例23〜33の接着剤組成物を、スクリーン印刷機を用いてガラス基板上に塗布し、膜厚800μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜上にさらにガラス基板を積層し、その上から、500〜2000mJ/cmの照射量で紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。その後、一方のガラス基板を剥がした。そして、TMA(熱機械分析装置、セイコーインスツル社製)を用いて、0.01Hzの周期で50mN(±10mN)の加重をかけた条件で、他方のガラス基板上に残った接着剤組成物の硬化膜の弾性率を測定した。結果を表7に示す。
【0067】
[耐水性の評価]
実施例23〜29の接着剤組成物を、スクリーン印刷機を用いてガラス基板上に塗布し、膜厚180μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜上にさらにガラス基板を積層し、その上から500〜2000mJ/cmの照射量で紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。その後、一方のガラス基板を剥がした。そして、他方のガラス基板上に残った接着剤組成物の硬化膜を、ガラス基板ごと、0.02質量%のKOHを含有する水溶液中に10分間浸漬し、膜厚の変化を測定した。そして、いずれか一方でも水溶液への浸漬前後で、膜厚の変化が5%未満であったものを○、いずれか一方でも5%以上変化したものを△、として評価した。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】

【0069】
表7から分かるように、実施例23〜33の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、いずれも弾性率が5×10Pa以下と低いものであり、硬化物が柔軟(しなやか)で良好であった。特に、2個の(メタ)アクリロイル基間の距離が長くなるに従って弾性率が低下した。また、単官能モノマーであるM−90Gを含有させた場合には、その割合が大きくなるに従って弾性率が低下した。
また、表7から分かるように、実施例23〜29の接着剤組成物を硬化させた硬化物はいずれも耐水性が良好であったが、特に炭素数が3以上のアルキレンオキサイド基を有する実施例23〜24,28,29の接着剤組成物や、アルキレンオキサイド基の炭素数が2であり、かつ繰返し数が4である実施例25の接着剤組成物は耐水性に優れていた。
【0070】
<実施例34〜37>
下記表8に記載された成分を混合して、接着剤組成物を調製した。各成分の[]内の数字は質量部を表す。重合性モノマーについては、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数についても表中に示した。
【0071】
[水によるリワーク性の評価]
実施例34〜37の接着剤組成物を、スクリーン印刷機を用いてガラス基板上に塗布し、膜厚90μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜上にさらにガラス基板を積層し、その上から500〜2000mJ/cmの照射量で紫外線を照射し、塗布膜を硬化させた。その後、一方のガラス基板を剥がした。そして、他方のガラス基板上に残った接着剤組成物の硬化膜を、ガラス基板ごと、23℃、50℃、80℃の水中に浸漬し、硬化膜が剥離するまでの時間(秒)を測定した。結果を表8に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
表8から分かるように、実施例33〜36の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、いずれも水に浸漬することにより剥離することができ、特に水の温度が高いほど剥離するまでの時間が短かった。また、モノマー全体に占める第1の(メタ)アクリルモノマーの割合が高いほど、剥離するまでの時間が短かった。
【0074】
<実施例38〜40、比較例29>
下記表9に記載された成分を混合して、接着剤組成物を調製した。各成分の[]内の数字は質量部を表す。重合性モノマーについては、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数についても表中に示した。
そして、実施例38〜40、比較例29の接着剤組成物を用いて、上記と同様に、リワーク性の評価、硬化収縮性の評価、硬さの評価、及びクロスハッチ試験を行った。結果を表9に示す。
【0075】
【表9】

【0076】
表9から分かるように、上述した第1,第2の(メタ)アクリルモノマーを重合性モノマーとして含有する実施例38〜40の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、いずれもリワーク性が良好であり、ガラス基板同士を接着させても一方のガラス基板を再び剥がすことができ、さらに他方のガラス基板に残った硬化膜自体もセロハンテープにより容易に剥離することができた。このリワーク性は、セルロース系樹脂の含有量を増やし、重合性モノマーの半量を単官能の(メタ)アクリルモノマーとした場合(実施例39,40)にも良好であった。
これに対して、単官能の(メタ)アクリルモノマーのみを重合性モノマーとして含有する比較例29の接着剤組成物を硬化させた硬化物は、剥離することが困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)又は(2)の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤と、を含有する接着剤組成物。
(1)(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能の(メタ)アクリルモノマーであって、2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が13以上である。
(2)(メタ)アクリロイル基をn個(nは3以上の整数)有するn官能の(メタ)アクリルモノマーであって、任意の2個の(メタ)アクリロイル基間にポリアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ、任意の2個の(メタ)アクリロイル基を繋ぐ最短原子数が23以上である。
【請求項2】
前記(1)又は(2)の(メタ)アクリルモノマーの含有量が、モノマー全体に対して30質量%以上である請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(1)の(メタ)アクリルモノマーが下記式(I)で表される請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R,Rはそれぞれ独立に単結合、又は水酸基、エーテル結合、若しくはウレタン結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Rは単結合又は2価の有機基を示し、Xはそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレンオキサイド基を示す。m1,m2はそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。)
【請求項4】
前記(2)の(メタ)アクリルモノマーが下記式(II)で表される構造をn個有する請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R,Rはそれぞれ独立に単結合、又は水酸基、エーテル結合、若しくはウレタン結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Rは単結合又は2価の有機基を示し、Xはそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレンオキサイド基を示す。m1,m2はそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。)
【請求項5】
さらにセルロース系樹脂を含有する請求項1から4のいずれか1項記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−57141(P2012−57141A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34895(P2011−34895)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】