説明

接着剤組成物

【課題】製品安定性に優れた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂と、上記炭化水素樹脂を溶解するための溶剤とを含み、上記溶剤が、縮合多環式炭化水素を含む構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物に関するものであり、例えば、半導体ウエハ等の基板を加工する製造工程において用いられる接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルAV機器及びICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化及び薄型化することによって、パッケージ内にシリコンを高集積化する要求が高まっている。例えば、CSP(chip size package)又はMCP(multi-chip package)に代表されるような複数のチップをワンパッケージ化する集積回路において、薄型化が求められている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25〜150μmの範囲にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースになる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄になるため、その強度は弱くなり、ウエハにクラック又は反りが生じ易くなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハハンドリングシステムが開発されている。ウエハハンドリングシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハハンドリングシステムにおいて、ウエハとサポートプレートとは粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合わせられる。そして、サポートプレートが貼り付けられたウエハを薄板化した後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。このウエハとサポートプレートとの貼り合わせに接着剤を用いた場合、接着剤を溶解してウエハをサポートプレートから剥離する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接着剤組成物を構成する樹脂の種類によって、液状形態で保存した際に時間が経過するにつれ白濁化が生じるという問題がある。この問題は特に接着剤組成物を低温にて保管した場合に顕著に起こり得る。
【0007】
そこで、製品安定性により優れた接着剤組成物の開発が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品安定性に優れた接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂と、上記炭化水素樹脂を溶解するための溶剤とを含み、上記溶剤が、縮合多環式炭化水素を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製品安定性に優れた接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂と、上記炭化水素樹脂を溶解するための溶剤とを含み、上記溶剤が、縮合多環式炭化水素を含む構成である。
【0012】
本発明の接着剤組成物の用途は特に限定されないが、例えば、半導体ウエハ(以下、ウエハ)の製造工程に使用可能であり、中でも、薄化されたウエハの破損及び汚れを防ぐために、該ウエハを支持基板(以下、サポートプレート)に一時的に接着する用途において好適に用いることができる。
【0013】
〔炭化水素樹脂〕
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体成分を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(以下、「樹脂A」ともいう)、ならびにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂B」ともいう)が挙げられる。
【0014】
シクロオレフィンポリマーは、単量体成分であるシクロオレフィンモノマーを重合してなる樹脂である。シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。樹脂(A)としては、これらシクロオレフィンモノマーのうち1種のみを重合させてなるものであってもよいし、2種以上を重合させてなるものであってもよい。
【0015】
また、樹脂(A)に含まれる単量体成分はシクロオレフィンモノマーに限定されるものではなく、当該シクロオレフィンモノマーと重合可能な他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーが挙げられ、そのようなアルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、及び1−ヘキセン等のα−オレフィンが挙げられる。なお、アルケンモノマーは1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が50,000〜200,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ特定の溶剤への溶解性を得ることができる。
【0017】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分は、その5モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることが高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の点から好ましく、10モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることがより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、80モル%以下であることが溶解性及び溶液での経時安定性の点から好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましい。他のモノマーとして、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有する場合、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対して10〜90モル%であることが溶解性及び柔軟性の点から好ましく、20〜85モル%がさらに好ましく、30〜80モル%が特に好ましい。
【0018】
単量体成分の重合方法及び重合条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて行なえばよい。
【0019】
樹脂(A)として用いられ得る市販品としては、例えば、三井化学社製の「APEL(商品名)」、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(商品名)」、日本ゼオン社製の「ZEONOR(商品名)」及び「ZEONEX(商品名)」、ならびにJSR社製の「ARTON(商品名)」が挙げられる。
【0020】
樹脂(B)は、上述したようにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂及び水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル及び変性ロジン等が挙げられる。石油系樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂及びマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、水添テルペン樹脂及び水添テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0021】
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、例えば、GPCによるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が300〜10,000であり、より好ましくは500〜5,000である。樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ高い耐熱性(熱分解性・昇華性への耐性)が得られる。
【0022】
なお、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合して使用してもよい。樹脂(A)の含有量が炭化水素樹脂全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。樹脂(A)の含有量が炭化水素樹脂全体の40重量部以上である場合には、柔軟性とともに高い耐熱性(熱分解性)が発揮できる。
【0023】
〔溶剤〕
溶剤は、炭化水素樹脂を溶解する機能を有し、縮合多環式炭化水素を含むように構成されている。
【0024】
縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、本発明では2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
【0025】
そのような炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタリン(テトラリン)及びデカヒドロナフタリン(デカリン)等が挙げられる。
【0026】
また、溶剤に含まれる成分は上記縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の成分を含有していてもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素溶剤全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素溶剤全体の40重量部以上である場合には、上記樹脂に対する高い溶解性が発揮できる。縮合単環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合単環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
【0027】
飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0028】
なお、本発明の接着剤組成物における溶剤の含有量としては、成膜する接着層の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えば、炭化水素樹脂の重量を100重量部としたとき、100重量部以上、2,000重量部以下であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整容易となる。
【0029】
〔熱重合禁止剤〕
本発明において、接着剤組成物は熱重合禁止剤を含有する構成であってもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤はラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。そのような熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に、250℃〜350℃)において重合反応が抑制される。
【0030】
例えば半導体製造工程において、サポートプレートが接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスがある。このとき、高温により接着剤組成物の重合が起こると高温プロセス後にウエハからサポートプレートを剥離する剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができない。しかし、熱重合禁止剤を含有している本発明の接着剤組成物では熱による酸化及びそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしてもサポートプレートを容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。
【0031】
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノールを有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、大気下での高温処理後にも良好な溶解性が確保できる。そのような熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能であり、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n−ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−[1−〔4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”−エチリデントリス(2−メチルフェノール)、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、n−オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、チバ・ジャパン社製)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
熱重合禁止剤の含有量は、炭化水素樹脂の種類、ならびに接着剤組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、炭化水素樹脂を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができる。
【0033】
また、本発明の接着剤組成物は、熱重合禁止剤を溶解し、上記炭化水素樹脂を溶解するための溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤を含有する構成であってもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、接着剤組成物に含まれる成分を溶解する有機溶剤を用いることができる。
【0034】
有機溶剤としては、例えば、接着剤組成物の各成分を溶解し、均一な溶液にすることができればよく、任意の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
有機溶剤の具体例としては、例えば、極性基として酸素原子、カルボニル基又はアセトキシ基等を有するテルペン溶剤が挙げられ、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファーが挙げられる。また、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0036】
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、熱重合禁止剤を1重量部としたとき、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、1〜30重量部がさらに好ましく、1〜15重量部が最も好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
【0037】
〔その他の成分〕
なお、接着剤組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0039】
〔接着剤組成物の作製〕
以下に示す表1,2の組成で接着剤組成物を作製した。
【0040】
炭化水素樹脂としては、下記の化学式(I)に示す三井化学社製の「APEL(商品名)8008T COC、Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、m:n=80:20(モル比)」(以下、COC1という)、「APEL(商品名)8009T COC、Mw=120,000、Mw/Mn=2.2、m:n=75:25(モル比)」(以下、COC2という)及び「APEL(商品名)6013T COC、Mw=80,000、Mw/Mn=2.0、m:n=52:48(モル比)」(以下、COC3という)を用いた。
【0041】
【化1】

【0042】
熱重合禁止剤としては、Ciba社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。溶剤としてはナカライテスク社製のテトラヒドロナフタリン及びデカヒドロナフタリン、ヤスハラケミカル社製のp−メンタン、ならびにリモネンを用いた。また、添加溶剤としては、日本テルペン社製のジヒドロターピニルアセテートを用いた。
【0043】
〔実施例1〜6〕
実施例1〜6では、以下の表1に示す炭化水素樹脂を溶剤に溶解させた後、熱重合禁止剤を添加溶剤に溶解したものを混合させ接着剤組成物を調整し、接着剤組成物の製品安定性を評価した。なお、表中、括弧内に示す数値の単位は「重量部」である。
【0044】
【表1】

【0045】
(製品安定性の評価)
製品安定性の評価は、容器に各実施例において作製した接着剤組成物を貯留し、5℃で1ヶ月放置した後、炭化水素樹脂が析出することによって白濁化が生じるか否かを観察し、評価した。
【0046】
評価の判断基準は、紫外分光光度計UV3600(島津製作所)によって測定される全光線透過率によって算出した濁度による判断とし、濁度10未満であれば「○」、濁度10以上であれば「×」と評価した。その結果、実施例1〜6のすべてにおいて白濁化は確認されず、1ヶ月経過した後であっても製品安定性に優れていることがわかった。
【0047】
〔比較例1〜3〕
比較例1〜3では、以下の表2に示す組成で、実施例1〜6と同様の方法で接着剤組成物を作製し、作製した接着剤組成物の製品安定性を評価した。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、比較例1では溶剤としてp−メンタンを使用し、比較例2では溶剤としてリモネンを使用した。また、比較例3では溶剤として添加溶剤と同じジヒドロターピニルアセテートを使用した。このように、縮合多環式炭化水素を含まない溶剤を用いた結果、1ヶ月後にはいずれも白濁化が観察された。
【0050】
〔実施例7〜9〕
実施例7〜9では、実施例1〜6および比較例1〜3の接着剤組成物において使用した炭化水素樹脂とは異なる種類の炭化水素樹脂を使用した。具体的には、ノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)8007X10」)を単独で使用した。
【0051】
なお、上記シクロオレフィンコポリマーは、以下の化学式(II)に示すエチレン及び化学式(III)に示すノルボルネンの繰り返し単位を、x:y=35:65で含むCOC A(Mw=95,000、Mw/Mn=1.9)、x:y=24:76で含むCOC B(Mw=70,000、Mw/Mn=1.6)、x:y=20:80で含むCOC C(Mw=60,000、Mw/Mn=1.5)の3種類を用意した。
【0052】
【化2】

【0053】
【化3】

【0054】
また、添加溶剤としてはテトラヒドロナフタリン(ナカライテスク社製)を使用し、熱重合禁止剤及び添加溶剤には実施例1〜6と同じものを使用した。
【0055】
実施例7〜9ではこれらの材料を以下の表3に示す組み合わせで接着剤組成物を作製し、作製した接着剤組成物に対して実施例1〜6と同様に剥離性及び製品安定性について評価した。なお、括弧内の数値の単位は「重量部」である。
【0056】
【表3】

【0057】
製品安定性の評価は、実施例1〜6と同様に、容器に各実施例において作製した接着剤組成物を貯留し、5℃で1ヶ月放置した後、炭化水素樹脂が析出することによって白濁化が生じるか否かを観察して行なった。その結果、実施例7〜9において用いたCOC A、COC B、COC Cは元々白濁が少ないポリマーであるが、さらに透明性が増し、1ヶ月経過した後であっても製品安定性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る接着剤組成物は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程おいてに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素樹脂と、
上記炭化水素樹脂を溶解するための溶剤とを含み、
上記溶剤が、縮合多環式炭化水素を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記溶剤は、2つの単環が縮合されてなる炭化水素であり、
上記2つの単環が5員環及び6員環、又は2つの6員環であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記溶剤は、飽和脂肪族炭化水素をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記溶剤の含有量は、上記炭化水素樹脂の重量を100重量部としたとき、100重量部以上、2000重量部以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
上記炭化水素樹脂がシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
熱重合禁止剤と、
上記熱重合禁止剤を溶解し、上記溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤とをさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
上記熱重合禁止剤は、フェノール系の熱重合禁止剤であることを特徴とする請求項6に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−92283(P2012−92283A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4959(P2011−4959)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】