説明

接着構造、接着方法

【課題】低温で化学結合を生じさせる接着構造、および接着方法を提供する。
【解決手段】基板1と保護部材2とを貼り合わせる接着層3Aであって、保護部材2の表面に塗布され、第1の官能基を有する接着剤層3と、基板1の表面に設けられ、第2の官能基を有するプライマー層4と、を貼り合わせてなり、接着剤層3とプライマー層4との界面には、第1の官能基と第2の官能基とが縮合反応することにより生じる共有結合が形成されており、縮合反応を促進する縮合剤を包含することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着構造、接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微小機械部品と電子部品との融合により新しい機能を有する小型のデバイス(Micro Electro Mechanical System:MEMS)が知られている。MEMSデバイスは、主にシリコン(Si)のウェーハに微小な機械構造物を形成することで得られ、例えば自動車部品(エアーバッグセンサ等)、インクジェットヘッド、画像投影装置等の市場向けの製品が量産されている。
【0003】
近年の電子機器の小型化・高機能化に伴い、これらの電子機器に用いるMEMSデバイスの小型化・高精細化が進んでいる。このようなMEMSデバイスの製造においては、レーザ加工やエッチングなど、高精細な加工が可能な加工技術を用いることで、所望の形状を形成している。
【0004】
このような加工を行う際には、被加工面以外の箇所への無用な加工を抑制したり、加工時に発生する分解物の付着を防いだりする目的で、加工対象物において被加工面以外の面に保護フィルム(保護材)を貼り、加工精度を担保することが多い。レーザ加工においては、例えば特許文献1のような技術が提案されている。
【特許文献1】特開2005−279749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような保護フィルムを加工対象物(被保護体)に貼付する際には、両者を接着するための接着剤を用いることが多い。このような接着剤は、両者の間に挟持される接着層(接着構造)を構成する。
【0006】
一般に、2つの材料(被着材)を貼り合わせる際の接着のメカニズムとしては、以下の3つが考えられている。その3つとは即ち、(1)接着剤が互いの材料表面の孔や谷間に入り込み固まることによって、両者を固定する機械的結合(アンカー効果)によるもの、(2)接着剤と貼り合わせる材料との間に生じる分子間力を利用した物理的相互作用によるもの、(3)接着剤と貼り合わせる材料との間に生じる共有結合や水素結合を利用した化学的相互作用によるもの、である。
【0007】
上記のうち、共有結合等を利用した化学的相互作用による接着では、強固で隙間無い接着が可能であり、上述のようなウェットエッチングに用いる保護材の接着に適している。
【0008】
しかし、多くの化学反応では、反応を促進し完結させるために加熱を要し、上述の化学的相互作用を利用した接着剤でも、接着のために加熱が必要なものがある。一方で、例えば、予め素子構造や配線等を形成した基板に対してウェットエッチングを行い加工するような場合には、高温をかけると素子等が破損してしまうことがある。
【0009】
したがって、接着強度や剥がれやすさなど、接着後の物性が良好であっても、接着剤と被着材との間に化学結合を生じさせるために加熱が必要となると、被着材の耐熱性との関係によっては使用できなくなってしまう。そのため、低い加熱温度で接着が可能な接着剤が望まれていた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、低温で化学結合を生じ高い接着力を発現する接着構造、および接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の接着構造は、第1被着材と第2被着材とを貼り合わせた接着構造であって、前記第1被着材の表面に設けられ、第1の官能基を有する接着剤層と、前記第2被着材の表面に設けられ、第2の官能基を有するプライマー層と、を貼り合わせてなり、前記接着剤層と前記プライマー層との界面には、前記第1の官能基と前記第2の官能基とが縮合反応することにより生じる共有結合が形成されており、前記縮合反応を促進する縮合剤を包含することを特徴とする。
この構成によれば、縮合剤を用いない場合と比べ、低い反応温度で第1の官能基と第2の官能基との縮合反応が生じるため、被着材の熱劣化を抑制することができる接着構造とすることができる。
【0012】
本発明においては、前記接着剤層は、有機溶剤に溶解可能な無架橋のポリオレフィンを形成材料とすることが望ましい。
この構成によれば、例えば、ウェットエッチングを行う際には、第1被着材と第2被着材とを強固に貼り合わせることができ、エッチング加工後に両者を分離する際には、接着層を有機溶剤に溶解させることで、応力をかけずに剥離することができる。そのため、高い密着力と容易な剥離とを両立することが可能な接着構造とすることができる。
【0013】
本発明においては、前記縮合剤は、カルボジイミド類であることが望ましい。
カルボジイミド類は高い反応性を有するため、縮合剤を用いない場合と比べ低温での接着構造形成を実現できる。
【0014】
また、本発明の接着方法は、第1被着材と第2被着材とを貼り合わせる接着方法であって、前記第1被着材の表面に第1の官能基を有する接着剤層を形成する工程と、前記第2被着材の表面に第2の官能基を有するプライマー層を形成する工程と、前記接着剤層および前記プライマー層のうちいずれか一方に、縮合反応を促進する縮合剤の溶液を塗布する工程と、前記接着剤層と前記プライマー層とを対向させて前記第1被着材と前記第2被着材とを貼り合わせ加熱し、前記第1の官能基と前記第2の官能基とが縮合反応させて共有結合を形成する工程と、を有することを特徴とする。
この方法によれば、縮合剤を用いない場合と比べ低い加熱温度での接着構造形成が可能となるため、被着材の耐熱温度が低い場合であっても、良好な接着が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、一部で図を参照しながら、本発明の実施形態に係る保護材について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0016】
図1は、本実施形態の保護材で保護した基板における、貼り合わせ面の近傍を拡大した概略図である。ここでは、基板1と保護部材2とが接着層3Aを介して貼り合わされている様子を示している。
【0017】
被処理体である基板(第2被着材)1の表面には、プライマー層4が設けられている。また、保護部材(第1被着材)2の表面には、基板1と保護部材2とを貼り合わせる接着剤層3を有している。保護部材2の表面に設けられた接着剤層3と、基板1の表面に設けられたプライマー層4とは本発明の接着層(接着構造)3Aを構成し、各々有する官能基同士が共有結合をすることにより、強固に隙間無く結合している。
【0018】
基板1の形成材料は、必要に応じて適宜選択することができる。形成材料としては、例えば、ポリシリコンが挙げられる。
【0019】
基板1の表面にはプライマー層4が形成されている。プライマー層4の形成材料は、例えば分子末端にアミノ基を有するシラン化合物であるアミノシランや、分子末端にメルカプト基(−SH)を有するメルカプトシランや、分子末端にエポキシ基を有するエポキシシランなどが挙げられる。プライマー層4は、例えば、これら官能基を有するアルコキシシランを基板1の所望の箇所に塗布することで形成する。
【0020】
保護部材2は、ウェットエッチング工程において侵食されない材料であれば用いることができ、例えば、各種の高分子材料やガラスなどを形成材料とすることができる。保護部材2の形成材料に高分子材料を用いるならば、該高分子材料は有機溶剤に可溶でも不溶でも良い。
【0021】
高分子材料を形成材料とすると、保護部材2をフィルム状の形状とすることができるため、被保護面に密着させることができる。また、保護部材2の形成材料がガラスである場合には、仮に被処理体である基板1が薄い場合でも、基板1を担持する治具として機能する。
【0022】
保護部材2の表面には接着剤層3が形成されている。接着剤層3を構成する高分子は、ポリオレフィンを主体とし、不飽和カルボン酸やその誘導体を共重合した無架橋の構造を有している。無架橋の高分子である接着剤層3は、後述の有機溶剤に対して溶解可能となっている。
【0023】
接着剤層3を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸やクロトン酸のようなモノカルボン酸や、マレイン酸のようなジカルボン酸が挙げられる。また、これらの誘導体としては、アクリル酸メチルのようなエステル類や、無水マレイン酸のような酸無水物を挙げることができる。本実施形態の接着剤層3を構成する高分子において、これらの不飽和カルボン酸やその誘導体(以下、不飽和カルボン酸等)とポリオレフィンとの重合比率は、1:9である。
【0024】
これらの不飽和カルボン等は、ポリオレフィン鎖とランダム共重合をしていても良く、またグラフト重合やブロック共重合をすることで、不飽和カルボン酸等のユニットが分子鎖中で局在化していても良い。
【0025】
接着剤層3を構成する高分子が、ブロック共重合にて形成されている場合には、ポリオレフィン鎖の末端から不飽和カルボン酸等の重合体が形成された、所謂AB型のブロック共重合にて形成されていることが望ましい。AB型のブロック共重合体を用いると、分子鎖の中で、プライマー層4との密着力の強い不飽和カルボン酸等の重合体部分と、耐酸性・耐アルカリ性の高いポリオレフィン部分とを固めることができるため、各々の特性を良好に発現させることができる。
【0026】
また、接着剤層3を構成する高分子が、グラフト重合にて形成されている場合には、ポリオレフィン鎖を主鎖として、不飽和カルボン酸等が重合したユニットを側鎖として導入すると良い。
【0027】
基板1と保護部材2とを貼り合わせると、接着剤層3に含まれる官能基とプライマー層4に含まれる各化合物の末端に有する官能基と、が反応し、共有結合が生成する。共有結合が生じると、接着剤層3とプライマー層4との界面が密着するため、基板1と保護部材2との界面にウェットエッチングのエッチャントが侵入しなくなり、エッチング時に無用な侵食を生じず、保護部材2による良好な保護が可能となる。
【0028】
更に、接着剤層3およびプライマー層4には、接着の際に官能基同士の反応を促進する縮合剤が含まれている。本発明において使用できる縮合剤として、ハロゲン化水素、活性エステル、ジフェニルリン酸アジド、カルボジイミド類、などの多くの縮合剤を示すことができる。
【0029】
活性エステルとしては、酸無水物、活性アミド(R−(C=O)−NR)、酸ハロゲン化物、カルボン酸アジド(R−(C=O)−N)をあげることが出来る。
【0030】
プライマー層4が有する官能基がアミノ基である場合、カルボジイミド類を縮合剤として用いると有効である。カルボジイミド類としては、例えばエステル化反応等の縮合反応で一般的に用いられるものであれば使用することができる。具体的には、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ−(p−トリル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびその塩酸塩またはヨウ化メチル付加物、N,N’−ジ−(tert−ブチル)カルボジイミド、1−tert−ブチル−3−エチルカルボジイミド、等を例示することができる。
【0031】
カルボジイミド類を用いると、以下に示す2式の反応経路を通ることでカルボキシル基とアミノ基との縮合反応が促進し、アミド結合が生じる。但し本発明は、この反応メカニズムには限定されない。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
接着の際には、官能基同士の反応を促進するために加熱を要するが、カルボジイミド類を用いると、140℃程度に加熱することで上記反応が促進され、良好な接着が可能となる。
【0035】
図2、3は、上述した本実施形態の接着構造を介して貼付した保護部材を用いたエッチング工程を説明する模式図である。図2は、基材に保護部材を接着する接着工程を示し、図3は、保護部材を接着した基材にウェットエッチングを行う工程を示す。ここでは、例として、予め凹部が設けられている基板に対してウェットエッチング処理を行い、凹部を損なわず貫通孔を形成する工程を示す。
【0036】
まず、図2(a)に示すように、塗布手段51を用いて、ポリエチレン製の保護部材(第1被着剤)2の表面に接着剤を塗布し、接着剤層3を形成する。
【0037】
一方で、図2(b)に示すように、塗布手段52を用いて、ポリシリコン製の基材(第2被着材)1aの表面にアミノシラン4aを塗布し、プライマー層4を形成する。プライマー層4を形成する側の表面には複数(図では3つ)の凹部Xが形成されている。また、基剤1aの他の面には、例えば窒化シリコン(SiN)を形成材料として、所定形状の遮蔽部Ma、開口部Mbを有するマスクMが形成されている。本実施形態では、プライマー層4を形成するためのアミノシランとして3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた。他にも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシランなどを用いることができる。
【0038】
次に、図2(c)に示すように、プライマー層4の表面に塗布手段53を用いて縮合剤の溶液7を塗布する。本実施形態では、縮合剤の溶液7aとして、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミドの1wt%無水エタノール溶液を、塗布手段53として不織布をそれぞれ用い、窒素雰囲気下のグローブボックス100中においてプライマー層4の表面に塗布した。塗布後、エタノールを蒸発させた。
【0039】
次に、図2(d)に示すように、保護基板2に設けられた接着剤層3と、基板1aに設けられたプライマー層4と、を対向させ、基板1aと保護基板2とを貼り合わせる。プライマー層4上には、エタノールが蒸発したことにより縮合剤7が配置されている。
【0040】
基材1aに保護部材2を貼る際には、まず保護部材2を基材1aの表面に貼付して140℃まで加熱し縮合反応を促進させる。その後、保護部材2および接着層を冷却する。これらの操作により、保護部材2は基材1aに強固に密着し、隙間無く貼合される。
【0041】
次に、エッチング工程の説明を行う。図3(a)に示すように、基材1aと保護部材2との間には、接着層3Aが形成されている。凹部Xは、保護部材2で被覆されており、後のエッチング工程から保護される。ここで、接着層3Aには、未反応の縮合剤7が包含されているが、図を見やすくするために省略している。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、エッチャント12を入れた反応容器11に基板を浸漬し、ウェットエッチングを行う。
【0043】
エッチャント12は、用いる基材1aの形成材料に応じて、通常知られたエッチャントを適宜選択して用いることができる。例えば、酸性水溶液としては、HPO水溶液、HF水溶液等が挙げられ、アルカリ性水溶液としては、KOH水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH) 水溶液、等が挙げられる。
【0044】
保護部材2の表面に設けられた接着剤層3は、上述のようにポリオレフィンを形成材料として含むため、耐酸性、耐アルカリ性を有しており、これらのエッチャントに対して侵食されることがない。また、保護部材2も、ポリエチレンを形成材料とするために上述のエッチャントに侵食されない。加えて、保護部材2と基材1aとは、接着剤層3を介して隙間無く密着しているため、両者の接合界面にエッチャント12が侵入することが無い。
【0045】
従って、基材1aにおいて、マスクMの開口部Mbと重なる面以外の面は、遮蔽部Maおよび保護部材2で封止されるため、開口部Mbを介してのみエッチングが進行し、開口部Mbと重なる貫通孔5が設けられた基板1が形成される。凹部Xは保護部材2に覆われているために、エッチャント12に侵食されず保持される。
【0046】
次に、図3(c)に示すように、有機溶剤22を入れた反応容器21に基板1を浸漬し、保護部材2を除去する。
【0047】
前述の組成を有する接着剤層3は、有機溶剤に可溶であるため、有機溶剤を用いて溶解して除去することができる。有機溶剤22として、ハロゲン化炭化水素のような極性溶剤を用いることとしても、保護部材2を軟化・溶解することが可能ではあるが、この場合、基板1に配線等が形成されていると腐食などの悪影響が懸念される。そのため、比較的極性が低く腐食性の低い、炭化水素系の有機溶剤を用いることが好ましい。溶解を促進するために、必要に応じて有機溶剤22を加熱しても構わない。加熱する際には、反応容器21として密閉可能なものを用い、有機溶剤22の揮発を防ぐ構成とすることが望ましい。
【0048】
使用可能な有機溶剤としては、通常用いられる多くの飽和炭化水素(鎖式、環式)や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。本実施形態では、環式飽和炭化水素であるデカリン(デカヒドロナフタレン)を用いる。
【0049】
上記有機溶剤22に溶解することで、保護部材2は、基板1の表面から除去される。そのため、保護部材2を除去(剥離)する際に、基板1に剥離応力が加わることがなく、容易に保護部材2を剥離することができる。また、剥離に伴って基板1が破損することがない。
以上のようにして、エッチング工程が終了する。
【0050】
以上のような構成の接着層によれば、縮合剤を用いない場合と比べ、低い反応温度で縮合反応が生じるため、基板1の熱劣化を抑制することができる接着層3Aとすることができる。
【0051】
また、以上のような接着方法によれば、縮合剤を用いない場合と比べ低い加熱温度での接着層形成が可能となるため、基板1の耐熱温度が低い場合であっても、良好な接着が可能となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、発明の効果を確認するため、評価用の試験体を作成して評価を行った。
【0054】
本実施例では、保護部材として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(アラミド樹脂)のフィルム(東レ株式会社製)を形成材料として作成した2cm角、厚み100μmのフィルムを用い、シリコン基板への接着の様子を評価した。
【0055】
まず、作成した保護部材に、無水マレイン酸グラフトポリエチレン(Polyethylene graft maleic anhydride、3% maleic anhydride、シグマ−アルドリッチジャパン社製)を塗布し、厚み3μmの接着層を形成した。このような保護材を貼りあわせる基板には、一面をアミノシラン(アミノプロピルトリメトキシシラン、シグマ−アルドリッチジャパン社製)で修飾してプライマー層を形成したシリコン基板を用いた。
【0056】
実施例では、シリコン基板のプライマー層形成面にカルボジイミドの無水エタノール溶液を塗布し、エタノールを蒸発させて乾燥させた後、保護部材の接着層を貼り合わせて加熱処理を行った。
【0057】
本実施例では、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以上、いずれもシグマ−アルドリッチジャパン社製)を用いた。いずれも、0.01wt%、0.1wt%、1wt%の無水エタノール溶液を用意し、各々同様の操作を行い、評価を行った。
【0058】
比較例として、カルボジイミドのエタノール溶液の塗布を行わない他は、実施例と同様の操作を行い、評価を行った。
【0059】
その結果、実施例はいずれも140℃にまで加熱を行うと接着が完了していたが、比較例のサンプルでは、200℃まで加熱をしないと接着が完了しなかった。
【0060】
また、実施例のサンプルを、ウェットエッチング工程に見立てたアルカリ処理を行い、アルカリ処理前後の接着層の様子をSEM観察した。次いで、同じ試験体を有機溶剤に浸漬し、各接着層の溶解具合を目視評価した。
【0061】
まず、アルカリ処理として、各試験体を37.5wt%KOH水溶液に浸漬し、80℃で1時間加熱した。その後、KOH水溶液から取り出した各試験体を、デカリン50mlに浸して140℃に加熱し、30分放置した。その結果、着層の表面荒れなど、KOH水溶液による侵食の後が見られなかった。
【0062】
またデカリン浸漬後は、接着層がデカリンに溶解し、シリコン基板表面から保護部材が剥離した。
【0063】
この結果より、本発明の構成を備える接着層は、低温で反応が完了することが確認できた。また、エッチング時には安定に存在すると共に、有機溶剤に接着層を溶解させることで容易に剥離可能であることが確認でき、課題解決に有効であることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の接着構造で保護部材を接着した基板の概略図である。
【図2】本発明の接着構造で保護部材を接着する工程を説明する模式図である。
【図3】本発明の接着構造で貼付した保護部材を用いたエッチング工程の模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1…基板(第2被着材)、1a…基板(第2被着材)、2…保護部材(第1被着材)、3…接着層(接着構造)、4…プライマー層、7…縮合剤、7a…縮合剤の溶液、12…エッチャント、22…有機溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被着材と第2被着材とを貼り合わせた接着構造であって、
前記第1被着材の表面に設けられ、第1の官能基を有する接着剤層と、
前記第2被着材の表面に設けられ、第2の官能基を有するプライマー層と、を貼り合わせてなり、
前記接着剤層と前記プライマー層との界面には、前記第1の官能基と前記第2の官能基とが縮合反応することにより生じる共有結合が形成されており、
前記縮合反応を促進する縮合剤を包含することを特徴とする接着構造。
【請求項2】
前記接着剤層は、有機溶剤に溶解可能な無架橋のポリオレフィンを形成材料としたことを特徴とする請求項1に記載の接着構造。
【請求項3】
前記縮合剤は、カルボジイミド類であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着構造。
【請求項4】
第1被着材と第2被着材とを貼り合わせる接着方法であって、
前記第1被着材の表面に第1の官能基を有する接着剤層を形成する工程と、
前記第2被着材の表面に第2の官能基を有するプライマー層を形成する工程と、
前記接着剤層および前記プライマー層のうちいずれか一方に、縮合反応を促進する縮合剤の溶液を塗布する工程と、
前記接着剤層と前記プライマー層とを対向させて前記第1被着材と前記第2被着材とを貼り合わせ加熱し、前記第1の官能基と前記第2の官能基とが縮合反応させて共有結合を形成する工程と、を有することを特徴とする接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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