説明

接着構造体及びその製造方法

【課題】グラファイトシート表面にポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体プライマー層を設けることによりシリコーン組成物と強固に接着する接着構造体とその製造方法を提供する。
【解決手段】グラファイトシート表面にポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体プライマー層を設けることによりシリコーン組成物と強固に接着させる。例えば、グラファイトシートにポリエステルポリウレタン樹脂を溶剤で希釈して塗布し、乾燥した後、加熱硬化させ、このグラファイトシートにシリコーンゴムコンパウンドを圧延によって塗工し、加熱加硫する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明はグラファイトシートとシリコーン組成物の接着構造体及びその製造方法に関するものである。グラファイトシートとシリコーン組成物の接着体は電気部品などの熱伝導部品などとして用いられる。
【従来の技術】被接着物とシリコーン組成物の接着は通常カップリング剤などで表面処理しておこなう。しかし被接着物の中には被接着物表面上に水酸基が少ないためカップリング剤の効果を十分に発揮できない場合がある。グラファイトシートはその典型例である。しかし多少の効果はあるので、特開平3−51302号公報、特開平11−340673号公報に提案されているようにシランカップリング剤でグラファイトシートの表面処理をしてシリコーン組成物を接着させている例がある。グラファイトシートは高熱伝導性であるが同時に導電性である。よって電子部品に使用される場合は、電気絶縁性を要求される場合にはグラファイト表面に絶縁層を設ける必要がある。一般的にはポリエステルを貼る場合が多い。しかし、ポリエステルなどは熱伝導性が非常に悪いため熱性能が低下することがある。そこで熱伝導性シリコーン組成物を貼り付けて一体化し、発熱体との密着度を高め、さらに電気絶縁性を合わせもった電気部品の開発が要請されている。
【発明が解決しようとする課題】グラファイトシートにシリコーン組成物接着するにはグラファイトシート表面上に接着層が形成されるようなプライマーが必要である。しかしながら、シランカップリング剤,チタンカップリング剤,アルミニウムカップリング剤などの単分子層の被膜では強固な接着性を発揮するには不十分であという問題があった。本発明は前記従来の課題を解決するため、グラファイトシート表面にポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体のプライマー層を設けることによりシリコーン組成物と強固に接着することができる接着構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明のグラファイトシートとシリコーン組成物の接着構造体は、グラファイトシート表面にポリウレタンまたはポリウレタン誘導体プライマー層を形成し、その表面にシリコーン組成物を貼り合わせることを特徴とする。これによりグラファイトシートとシリコーン組成物とは強固に接着させることができる。前記接着構造体においては、シリコーン組成物が電気絶縁性の熱伝導性フィラーを20.0〜97.0重量%の範囲含んでいることが好ましい。これによりグラファイトシートに熱伝導性シリコーン組成物を貼り合せて一体化できる。熱伝導性フィラーとしては、電気絶縁性のフェライトが好ましい。電気絶縁性の熱伝導性フィラーとしては、金属酸化物,窒化物,炭化物が添加されていてもよい。また前記接着構造体においては、シリコーン組成物がシリコーンゴム組成物またはシリコーンゲル組成物であることが好ましい。また、プライマー層の厚みは0.1〜75μmの範囲であることが好ましい。次に本発明の接着構造体の製造方法は、グラファイトシート表面にポリウレタンまたはポリウレタン誘導体を溶液状態で塗布し、乾燥してプライマー層を形成し、その後シリコーン組成物と接着させることを特徴とする。前記方法においては、シリコーン組成物を圧延または印刷でグラファイトシート表面に載せ熱を加えることによって接着することが好ましい。加熱は、温度25〜150℃の範囲、加熱時間3〜3000分間の範囲行うのが好ましい。
【発明の実施の形態】本発明に使用するグラファイトシートは天然グラファイトを圧延ロールで製造したシートや高分子フィルムを高温で処理することで製造したシートがありどちらを使用してもよい。グラファイト表面上に生成させる被膜はポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体がよい。ポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体被膜の構成物質としてはウレタン系接着剤の構成と同様でイソシアネート化合物,活性水素化合物を骨格としてその他充填剤,可塑剤,安定剤を添加したものである。本発明はウレタンあるいはウレタン誘導体接着剤をプライマーとして使用する。ウレタンあるいはウレタン誘導体接着剤には硬化の形態によって2液型,湿気硬化型,蒸発固化型がありどれを使用してもよいが蒸発固化型が好ましい。ウレタンあるいはウレタン誘導体接着剤は溶剤型,エマルジョン型などがあるが無溶剤型を溶剤で希釈することによって使用してもよい。ウレタンあるいはウレタン誘導体接着剤の塗布は刷毛,スプレー,浸せきなどによっておこなう。乾燥は風乾または温風乾燥によっておこなう。皮膜生成は加熱によっておこなう。塗布,乾燥,皮膜生成方法は使用するウレタンあるいはウレタン誘導体接着剤に応じて任意選択する。シリコーン組成物はシリコーンゲルあるいはシリコーンゴムをベースとして電気絶縁性の熱伝導性フィラー,電気絶縁性のフェライト,補強剤,可塑剤,加硫剤,架橋剤,難燃剤を添加したものである。熱伝導性フィラーとしては金属酸化物,窒化物,炭化物があり、金属酸化物としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化珪素などがあり、炭化物としては炭化珪素、炭化チタン、炭化硼素などがありこれらの一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。フェライトは一般式M2+O・Fe23(M=Fe,Mn,Co,Ni,Zn)で表せるソフトフェライトと一般式MO・6Fe23(MはBa2+,Sr2+)で表せるハードソフトフェライトがある。補強剤には補強シリカ、石英、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレンなどがあり、必要に応じて添加してよい。架橋剤には両末端、片末端がビニル基ポリジメチルシロキサンやポリメチルハイドロシロキサン、ポリメチルハイドロジメチルシロキサンコポリマーなどがありここに挙げた限りではなくまた必要に応じて使用してもよい。可塑剤にはジメチルポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,アルキル変性シリコーンなどがありここに挙げた限りではなくまた必要に応じて使用してもよい。加硫剤はベンゾイルパーオキサイド,2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド,ジキュミパーオキサイド,ジターシャリーブチルパーオキサイド,2,5−ジメチル−2.5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−ヘキサンなどがあり一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。本発明は難燃性付与のため塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金オレフィン錯体、メチルポリビニルシロキサン白金錯体などの白金化合物の一種、二種以上の混合物が好適に用いられる。また、難燃助剤として酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどがあり一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。シリコーン組成物は圧延あるいは印刷でグラファイトシート表面に載せるのがよい。圧延はグラファイトシート上に上記のシリコーン組成物を載せ、二つのロールの間を通過させることによっておこなわれる。この方法はシリコーン組成物のベースとしてシリコーンゲルが用いられるときに有効な方法である。一方、印刷はどのようなシリコーン組成物でもグラファイトシート表面に載せることができグラファイトシート上の任意の場所にのみシリコーン組成物を載せるようなことも可能である。圧延の場合はそのままオーブン加硫,プレス加硫によってシリコーン組成物を加硫させる。印刷の場合は溶剤などを揮発させてオーブン加硫によってシリコーン組成物を加硫させる。本発明はグラファイトシート表面にポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体被膜層を設けることによりシリコーン組成物と強固に接着した接着組成物を得ることができる。
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。まずシリコーン組成物は以下のように用意した。シリコーンゲル(JCR6106、東レ・ダウコーコング(株)製)100重量部に酸化アルミニウム300重量部添加し混練りしてコンパウンドを用意した。グラファイトシートはUCAR CARSBON社製1200 CLASSGRAFOILを使用した。
【実施例1】グラファイトシートにポリエステルポリウレタン樹脂(タイホース CS397 大日本インキ化学工業株式会社製)をメチルエチルケトンで30重量%の希釈溶液を作成し、これを刷毛によって塗布した。その後、1日風乾後、100℃、1時間加熱硬化させた。乾燥後のプライマー層の厚みは20μmであった。このグラファイトシートを使用して上記コンパウンドを圧延によって塗工しオーブンで100℃で30分加硫させた。
【実施例2】グラファイトシートにポリウレタン樹脂(ユーロック 405、1液硬化型、広野化学工業株式会社製)をメチルエチルケトンで濃度30重量%の希釈溶液を作成し刷毛によって塗布した。その後、1日風乾後、100℃、1時間加熱硬化させた。乾燥後のプライマー層の厚みは20μmであった。このグラファイトシートを使用して上記コンパウンドを圧延によって塗工しオーブンで100℃、30分加硫させた。
【比較例1】グラファイトシートに上記コンパウンドを圧延によって塗工しオーブンで100℃ 30分加硫させた。
【比較例2】グラファイトシートにシランカップリング剤(SH6040)を刷毛によって塗布した。すぐに上記コンパウンドを圧延によって塗工しオーブンで100℃ 30分加硫させた。
【比較例3】グラファイトシートにシランカップリング剤(プライマーD)を刷毛によって塗布した。1日風乾後上記コンパウンドを圧延によって塗工しオーブンで100℃ 30分加硫させた。実施例1,2と比較例1,2,3の接着状態は以下のとおりである。接着状態の確認はグラファイトシート上にあるシリコーン組成物を手でグラファイトシートに対して、引っ張り角度90°で引っ張ることでおこなった。結果を下記の表1に示す。
【表1】


表1において、界面破壊とは、グラファイトシートとシリコーン組成物との境界で接着の破壊が起こることをいう。表1からもわかるとおり比較例1,2,3では接着体の破壊はグラファイトシートとシリコーン組成物との界面で発生するのに対して、実施例1,2ではグラファイトシートとシリコーン組成物との界面で破壊は発生せずグラファイトシートが先に破壊した。
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によればグラファイトシート表面にポリウレタンあるいはポリウレタン誘導体プライマー層を設けることにより、シリコーン組成物と強固に接着する接着構造体とその製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】グラファイトシート表面にポリウレタンまたはポリウレタン誘導体プライマー層を形成し、その表面にシリコーン組成物を貼り合わせることを特徴とするグラファイトシートとシリコーン組成物の接着構造体。
【請求項2】シリコーン組成物が電気絶縁性の熱伝導性フィラーを含んでいる請求項1に記載の接着構造体。
【請求項3】熱伝導性フィラーが電気絶縁性のフェライトである請求項2に記載の接着構造体。
【請求項4】シリコーン組成物がシリコーンゴム組成物またはシリコーンゲル組成物である請求項1に記載の接着構造体。
【請求項5】プライマー層の厚みが0.1〜75μmの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の接着構造体。
【請求項6】グラファイトシート表面にポリウレタンまたはポリウレタン誘導体を溶液状態で塗布し、乾燥してプライマー層を形成し、その後シリコーン組成物と接着させることを特徴とする接着構造体の製造方法。
【請求項7】シリコーン組成物を圧延または印刷でグラファイトシート表面に載せ熱を加えることによって接着する請求項6に記載の接着構造体の製造方法。

【公開番号】特開2001−287298(P2001−287298A)
【公開日】平成13年10月16日(2001.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−103794(P2000−103794)
【出願日】平成12年4月5日(2000.4.5)
【出願人】(000237422)富士高分子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】