説明

接続構造体の製造方法及び接続構造体並びに接続方法

【課題】ショートの発生を抑制し、良好な導通状態を実現する接続方法及び接続構造体並びに接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板1の接続面11には、導電性粒子の移動方向を制御するガイド面部131,132を備えた誘導板13が形成されている。誘導板13は、隣接する配線電極12間領域を介して対峙する領域の一方に立設される。ガイド面部131,132は、誘導板13の立設方向と直交する側面方向が配線電極12を向く。熱加圧によって異方性導電フィルムを介してガラス基板1とICチップとを圧着接続し、配線電極12とバンプとを異方性導電接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と基板とが異方性導電接続されてなる接続構造体の製造方法、及び該製造方法によって製造されてなる接続構造体、並びに接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に電子部品を接続する際には、絶縁性接着剤(樹脂)組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤が用いられている。電子部品と基板との間に異方性導電接着剤を配置して熱加圧すると、異方性導電接着剤中の導電性粒子は、電子部品の端子電極と基板の配線電極との間に挟持されて押し潰される。その結果、電子部品の端子電極と基板の配線電極とは、導電性粒子を介して電気的に接続される。端子電極と配線電極との間にない導電性粒子は、絶縁性接着剤組成物中に分散されており、電気的に絶縁した状態を維持している。すなわち、端子電極と配線電極との間のみで電気的導通が図られることになる。
【0003】
電子部品と基板とが接続されてなる接続構造体において、絶縁抵抗値及び導通抵抗値を安定化させるために、異方性導電接着剤として、例えばガラス転移温度の異なる2層構造の異方性導電フィルム(接着フィルム)を用いる方法がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載されている2層構造の異方性導電フィルムは、絶縁性接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる導電性粒子含有層(第一の接着剤層)と、導電性粒子を含有せずに絶縁性接着剤組成物のみからなる絶縁性接着剤層(第二の接着剤層)とが積層されてなり、第一の接着剤層のガラス転移温度が第二の接着剤層のガラス転移温度よりも高いことが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の2層構造の異方性導電フィルムを基板と電子部品との間に介在させて熱加圧すると、第二の接着剤層が溶融して基板の配線電極と電子部品の端子との間から排除される。一方、第二の接着剤層よりもガラス転移温度が高い第一の接着剤層は、依然として配線電極と端子電極との間に残る。すなわち、第一の接着剤層に分散された導電性粒子が配線電極と端子電極との間にしっかりと挟持されて固定されている。これにより、配線電極と端子電極との間の粒子捕捉率を高めることができる。また、隣接する配線電極間、隣接する端子電極間の何れにも導電性粒子が流れ込まないので、隣接する配線電極間、隣接する端子電極間の何れにおいても導電性粒子によるショート(短絡)を発生させることはない。そのため、接続構造体において、絶縁信頼性及び導通信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−29914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電気装置の小型化及び高性能化に伴い、電子部品の端子電極や基板の配線電極のファインピッチ化が促進されている。配線電極がファインピッチに形成されている基板の接続面と、端子電極がファインピッチに形成されている電子部品の接続面とをこのような2層構造の異方性導電フィルムを介して接続する場合、良好な導通抵抗値を得るためには、導電性粒子含有層中の導電性粒子を増加させる必要がある。
【0007】
しかしながら、このようなファインピッチ接続において、多数の導電性粒子を含有する異方性導電フィルムを用いると、得られる接続構造体の隣接する配線電極間及び隣接する端子電極間において、導電性粒子同士が凝集し、ショートを発生させるおそれがある。例えば、電子部品の端子電極と基板の配線電極との間に挟持されて潰され横方向に広がった導電性粒子によって、隣接する端子電極間の領域に存在する導電性粒子に横方向の応力が掛かり、これにより、導電性粒子が凝集してショートを発生させてしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、基板のファインピッチに形成された配線電極間及び端子電極間におけるショートの発生を抑制し、これにより、良好な絶縁信頼性を得るとともに、良好な導通信頼性を得ることが可能な接続構造体の製造方法、及びこの製造方法によって製造されてなる接続構造体、並びに接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の接続構造体の製造方法は、絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とが接続されてなる接続構造体の製造方法において、基板の接続面及び電子部品の接続面の少なくとも一方には、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、誘導板は、配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、ガイド面部は、誘導板の立設方向と直交する側面方向が配線電極又は端子電極を向き、熱加圧によって、異方性導電接着剤を介して基板の接続面と電子部品の接続面とを圧着接続し、配線電極と端子電極とを異方性導電接続させる。
【0010】
また、上述した課題を解決するために、本発明の接続構造体は、絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とが接続されてなる接続構造体において、基板の接続面及び電子部品の接続面の少なくとも一方には、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、誘導板は、配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、ガイド面部は、誘導板の立設方向と直交する側面方向が配線電極又は端子電極を向き、熱加圧によって、異方性導電接着剤を介して基板の接続面と電子部品の接続面とが圧着接続され、配線電極と端子電極とが異方性導電接続されてなる。
【0011】
また、上述した課題を解決するために、本発明の接続方法は、絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とを接続する接続方法において、基板の接続面及び電子部品の接続面の少なくとも一方には、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、誘導板は、配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、ガイド面部は、誘導板の立設方向と直交する側面方向が配線電極又は端子電極を向き、熱加圧によって、異方性導電接着剤を介して基板の接続面と電子部品の接続面とを圧着接続し、配線電極と端子電極とを異方性導電接続させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱加圧時、流動する異方性導電接着剤中において、導電性粒子は、誘導板のガイド面に沿って配線電極の方向に移動する。これにより、基板の隣接する配線電極間及び電子部品の隣接する端子電極間に入り込む導電性粒子の数を低減させることができる。その結果、隣接する配線電極間及び隣接する端子電極間において導電性粒子が凝集することが防止され、ショートの発生が抑制されることから、接続構造体において良好な絶縁信頼性を得ることができる。そして、誘導板を通じて導電性粒子を配線電極上に効率良く集められることから、配線電極と端子電極との間における粒子捕捉率を向上させることができ、結果的に良好な導通信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ガラス基板の接続面を表す平面図である。
【図2】ICチップの接続面を表す平面図である。
【図3】2層構造の異方性導電フィルムの短手方向(幅方向)の模式断面図である。
【図4】誘導板の形状の例を示す図である。
【図5】誘導板の形状の例を示す図である。
【図6】異方性導電フィルムの配置後の構造体の模式断面図である。
【図7】異方性導電フィルムの仮貼り後の構造体の模式断面図である。
【図8】ICチップの配置後の構造体の模式断面図である。
【図9】接続処理後の構造体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態は、絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子を含有してなる異方性導電フィルムを介してガラス基板とICチップとを圧着接続し、ガラス基板の配線電極とICチップの端子電極であるバンプとが異方性導電接続されてなる接続構造体の製造方法、この接続構造体及び接続方法に適用するものである。
【0016】
ガラス基板の複数の配線電極が並列されている接続面とICチップの複数のバンプが並列されている接続面の少なくとも一方には、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設されている。熱加圧によって接着剤組成物が流動する際、導電性粒子は、誘導板のガイド面部に沿って効率的に配線電極方向に向けて移動する。これにより、ガラス基板の隣接する配線電極間及びICチップの隣接するバンプ間に入り込む導電性粒子の数を低減させることができる。その結果、隣接する配線電極間及び隣接する端子電極間において導電性粒子が凝集することが防止され、ショートの発生が抑制されることから、接続構造体において良好な絶縁信頼性を得ることができる。また、誘導板を通じて導電性粒子を配線電極上に効率良く集めることができることから、配線電極と端子電極との間における粒子捕捉率を向上させることができ、結果的に良好な導通信頼性を得ることができる。
【0017】
なお、以下では、ガラス基板の接続面及びICチップの接続面の両方に誘導板が形成されている場合について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の接続構造体の製造方法で用いるガラス基板1の接続面11を表す平面図である。ガラス基板1は、例えばアルカリガラス基板、ガラス製のLCD基板(LCDパネル)、ガラス製のPDP基板(PDPパネル)、ガラス製の有機EL基板(有機ELパネル)等のガラス基板である。
【0019】
ガラス基板1の接続面11には、複数の配線電極12がファインピッチに形成されている。そして、隣接する配線電極12間の領域14を介して対峙する領域の一方には、誘導板13が立設されている。図1に示すように、ガラス基板1の平面視において、接続面11上の誘導板13は、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部131,132を備え、このガイド面部131,132により、V字状を形成している。ガイド面部131,132は、誘導板13の立設方向と直交する側面方向が配線電極12を向いている。なお、誘導板13は、配線電極12間の領域14を介して対峙する領域の両方に立設されるようにしてもよい。
【0020】
図2は、本実施の形態の接続構造体の製造方法で用いるICチップ2の接続面21を表す平面図である。ICチップ2の接続面21には、ガラス基板1の配線電極12の配線パターンに応じてバンプ22が形成されている。そして、隣接するバンプ22間の領域24を介して対峙する領域の一方には、誘導板23が立設されている。図2に示すように、ICチップ2の平面視において、接続面21上の誘導板23は、導電性粒子の移動をガイドするガイド面部231,232を備え、このガイド面部231,232により、V字状を構成している。ガイド面部231,232は、誘導板13の立設方向と直交する側面方向がバンプ22を向いている。誘導板23は、ガラス基板1とICチップ2とを接続した際に誘導板13の直上方向に位置するようにICチップ2の接続面21上に立設されている。なお、誘導板23は、隣接するバンプ22間の領域24を介して対峙する領域の両方に立設されるようにしてもよい。
【0021】
図3は、本実施の形態の接続構造体の製造方法で用いる異方性導電フィルム30の短手方向(幅方向)の模式断面図である。異方性導電フィルム30は、絶縁性の接着剤組成物31aに導電性粒子31bが分散された導電性粒子含有層31と、絶縁性の接着剤組成物32aのみからなる絶縁性接着剤層32とが積層された2層構造のフィルムである。なお、異方性導電フィルムとしては、これに限定されず、例えば導電性粒子含有層のみからなる1層構造であってもよく、導電性粒子含有層と絶縁性接着剤層とが交互に積層された3層以上の構造であってもよい。
【0022】
本実施の形態では、ガラス基板1の接続面11とICチップ2の接続面21とを、熱加圧により、異方性導電フィルム30を介して圧着接続する。これにより、配線電極12とバンプ22とが接続され、誘導板13と誘導板23とが重なり合う。誘導板13,23によって、隣接する配線電極12間及び隣接するバンプ22間に入り込む導電性粒子31bの数が減少し、配線電極12上に集められる導電性粒子31bの数が増加する。
【0023】
誘導板13,23を構成する材料は、特に限定されず、例えば有機樹脂、ガラス、絶縁性セラミック等を挙げることができる。有機樹脂は、例えばアクリルポリマー、アモルファスフルオロポリマー、エポキシ樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。
【0024】
なお、誘導板の形状は、上述のV字状に限定されない。誘導板は、誘導板の立設方向と直交する側面方向が配線電極12(バンプ22)を向くガイド面部を有する構成であれば何れの形状であってもよい。例えば図4に示すように、粒子を遮蔽する遮蔽部133と、ガイド面部134,135とを備えたコの字状の誘導板13’や、図5に示すように、ガイド面部136を備えたUの字状の誘導板13’’等を挙げることができる。
【0025】
誘導板13,23の形状を上述のV字状にすることにより、熱加圧によって異方性導電フィルムの接着剤組成物が流動する際、導電性粒子31bは、配線電極12側、バンプ22側によりスムーズに流れる。このため、誘導板13,23の形状は、上述のV字状であることが最も好ましい。
【0026】
誘導板13,23の立設方法としては、例えば次の方法を挙げることができる。なお、簡略化のため、誘導板13を立設する場合について説明するが、誘導板23についても、誘導板13の立設方法と同様の方法でICチップ2の接続面21に対して立設することができる。誘導板13の構成材料を加工してガイド面部131,132を備えたV字状の構造体を作製する。そして、作製したV字状の構造体をガラス基板1の接続面11における、並列する複数の配線電極12間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に配置し、その配置した位置で、V字状の構造体の底面を接続面11に接着剤等で接続固定させる。これにより、ガラス基板1の接続面11に誘導板13を立設する。
【0027】
誘導板13の立設方向と直交するガイド面部131の側面方向先端部131a、ガイド面部132の側面方向先端部132aそれぞれから配線電極12までの最短距離L(図1)、誘導板23の立設方向と直交するガイド面部231の側面方向先端部231a、ガイド面部232の側面方向先端部232aそれぞれからバンプ22までの最短距離L(図2)は、導電性粒子31bの平均粒径の1.0〜3.0倍であることが好ましい。
【0028】
なお、導電性粒子31b平均粒径は、コールターカウンター(シスメックス株式会社製、粒度分布測定器)によって測定し、この値を平均粒径とした。
【0029】
1.0倍未満であると、誘導板13のガイド面部131の側面方向先端部131aと配線電極12との間、ガイド面部132の側面方向先端部132aと配線電極12との間、誘導板23のガイド面部231の側面方向先端部231aとバンプ22との間、ガイド面部232の側面方向先端部232aとバンプ22との間の隙間に導電性粒子31bがせき止められて凝集してしまい、導電性粒子31bがスムーズに配線電極12側及びバンプ22側に流れなくなるおそれがある。一方、3.0倍よりも大きいと、隣接する配線電極12間及び隣接するバンプ22間に入り込む導電性粒子31bが多くなり、入り込んだ導電性粒子31b同士が凝集し合うため、ショートが発生するおそれがある。
【0030】
特に、1.0倍とすることにより、これらの隙間において導電性粒子31bがせき止められることがなく、僅かな数の導電性粒子31bがこれらの隙間を通過するだけである。これにより、導電性粒子31bの凝集によるショート発生を抑制して良好な絶縁信頼性を得ることができる。そして、多数の導電性粒子31bが配線電極上に集められ、これにより、配線電極12とバンプ22との間において高い粒子捕捉率を得ることができる。その結果、多数の導電性粒子31bが潰れ、良好な導通信頼性を得ることができる。
【0031】
なお、図4に示す誘導板13’の立設方向と直交するガイド面部134の側面方向先端部133a、ガイド面部135の側面方向先端部135aそれぞれから配線電極12までの最短距離L、図5に示す誘導板13’’の立設方向と直交するガイド面部136の側面方向先端部136a,136bそれぞれから配線電極12までの最短距離Lについても、これと同様に、導電性粒子31bの平均粒径の1.0〜3.0倍であることが好ましい。
【0032】
ガラス基板1における誘導板13の高さは、2層構造の異方性導電フィルム30における導電性粒子含有層31の厚さと略同一であることが好ましい。これにより、多くの導電性粒子31bが誘導板13の立設方向と直交するガイド面部131,132の側面方向に沿って移動し、導電性粒子31bを配線電極12上に効率的に集めることができる。なお、導電性粒子含有層のみからなる1層構造の異方性導電フィルムを用いる場合、誘導板13の高さは、1層構造の異方性導電フィルムの厚さと略同一又は1層構造の異方性導電フィルムの厚さよりもやや小さいことが好ましい。また、ICチップ21における誘導板23の高さは、バンプ22の高さと略同一又はバンプ22の高さよりもやや低いことが好ましい。誘導板13の高さが高すぎると、配線電極12とバンプ22との接続に不具合が生じるおそれがある。一方、誘導板13の高さが低すぎると、導電性粒子31bを効率的に配線電極12上に集めることができず、配線電極12とバンプ22との間における粒子捕捉率を高めることができない。
【0033】
誘導板13,23の高さを異方性導電フィルムやバンプ22の高さに対してこのように設定することで、導電性粒子31bを配線基板12上に十分に集めることができ、高い粒子捕捉率を得ることができる。これとともに、配線電極12とバンプ22とを良好な状態で接続することができる。そして、多数の導電性粒子31bがバンプ22と配線電極12との間にしっかりと狭持されて十分に潰れ、良好な導通信頼性を維持することができる。
【0034】
ここで、異方性導電フィルム30の材料について説明する。異方性導電フィルム30において、導電性粒子含有層31の絶縁性の接着剤組成物31aは、例えば膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダ成分からなる。
【0035】
膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましく、特にエポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を有していれば特に限定されず、例えば市販のエポキシ樹脂が挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶及び溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
【0038】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
【0039】
導電性粒子31bとしては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラスやセラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いはこれらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等を使用することができる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものを用いる場合、樹脂粒子としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。なお、導電性粒子31bは、粒子全体が導電性材料のみで形成されていてもよい。
【0040】
絶縁性接着剤層32を構成する絶縁性の接着剤組成物32aは、膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダ成分からなり、導電性粒子含有層31の絶縁性の接着剤組成物31aと同様の材料で構成することができる。
【0041】
なお、接着剤組成物32aの最低溶融粘度が接着剤組成物31aの最低溶融粘度よりも低くなるように接着剤組成物31a,32aを構成することが可能である。これにより、熱加圧時、導電性粒子31bが接着剤組成物31aからこれよりも溶融粘度の低い接着剤組成物32aに速やかに移動して接着剤組成物32a内に拡散される。このため、隣接する配線電極12間、隣接するバンプ22間においてより高い絶縁信頼性を得ることができる。
【0042】
接着剤組成物31a,32aは、このように膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する場合に限定されず、通常の異方性導電フィルムの接着剤組成物として用いられる何れの材料から構成されるようにしてもよい。
【0043】
異方性導電フィルム30は、最上層の表面及び最下層の表面の一方又は両方に剥離フィルムを設けるようにしてもよい。
【0044】
剥離フィルムは、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなり、異方性導電フィルム30の乾燥を防ぐとともに、異方性導電フィルム30の形状を維持する。
【0045】
異方性導電フィルム30は、何れの方法で作製するようにしてもよいが、例えば以下の方法によって作製することができる。膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する絶縁性の接着剤組成物32aを調整する。調整した接着剤組成物32aをバーコーター、塗布装置等を用いて第1の剥離フィルム上に塗布し、オーブン等によって乾燥させて絶縁性接着剤層32を得る。
【0046】
また、絶縁性の接着剤組成物31aに、導電性粒子31bを分散させて導電性接着剤組成物を調整する。調整した導電性接着剤組成物をバーコーター、塗布装置等を用いて第2の剥離フィルムに塗布し、オーブン等によって乾燥させて導電性粒子含有層31を得る。絶縁性接着剤層32の一方の表面と導電性粒子含有層31の一方の表面とをラミネーター等を用いて貼り合わせて、2層の異方性導電フィルム30を得る。
【0047】
次に、本実施の形態の接続構造体の製造方法、接続構造体及び接続方法について詳細に説明する。先ず、図6に示すように、基板支持台41上に載置されたガラス基板1の接続面11上に、導電性粒子含有層31を接続面11と対峙させるようにして異方性導電フィルム30を配置する。そして、図7に示すように、仮貼り装置である加圧ボンダー42の支持部43に接続されたヘッド部44を加熱し、加熱したヘッド部44の加圧面44aを絶縁性接着剤層32上面に軽く押し当てて低圧で加圧する。このヘッド部44による熱加圧によって、絶縁性の接着剤組成物31a,32aが流動するが硬化しない程度の低温で熱加圧する。これにより、ガラス基板1上に異方性導電フィルム30を仮貼りする(仮貼工程)。このように、仮貼工程では、導電性粒子含有層31の絶縁性の接着剤組成物31aが流動するが硬化しない程度の低温及び低圧で熱加圧を行い、導電性粒子含有層31とガラス基板1側とを対峙させて異方性導電フィルム30を仮貼りする。
【0048】
仮貼工程での加圧圧力は、例えば0.5MPa〜2MPaのうちの所定の値とすることができる。また、加熱温度は、例えば温度60〜100℃のうちの所定の値とすることができる。また、仮貼工程での熱加圧時間は、例えば1〜3秒(sec)のうちの所定の時間とすることができる。
【0049】
なお、仮貼工程で異方性導電フィルム30を仮貼りした後、異方性導電フィルム30の位置合わせ状態を確認し、位置ずれ等の不具合が生じている場合には、この仮貼工程の後に、異方性導電フィルム30を剥離して再度異方性導電フィルム30を正しい位置で仮貼りするリペア処理を行うようにしてもよい(リペア工程)。
【0050】
次いで、図8に示すように、バンプ22と配線電極12とを対峙させるようにしてICチップ2を異方性導電フィルム30上に配置する(配置工程)。
【0051】
その後、ガラス基板1とICチップ2とを接続する。具体的に、図9に示すように、接続装置である加圧ボンダー51の支持部52に接続されたヘッド部53を加熱し、この加熱したヘッド部53の加圧面53aをICチップ2の上面に押し当ててガラス基板1とICチップ2とを圧着接続させる(接続工程)。
【0052】
接続工程でのヘッド部53による加圧圧力は、例えば5MPa〜100MPaのうちの所定の値とすることができる。また、ヘッド部53の加熱温度は、異方性導電フィルム30の絶縁性の接着剤組成物31a,32aが硬化する温度、例えば150〜220℃のうちの所定の値とすることができる。また、接続工程での熱加圧時間は、例えば5〜20秒のうちの所定の時間とすることができる。
【0053】
接続工程では、このような条件で熱加圧を行うことにより、異方性導電フィルム30の絶縁性の接着剤組成物31a,32aを溶融させて配線電極12とバンプ22との間に導電性粒子31bを挟持させ、接着剤組成物31a,32aを硬化させる。これにより、ガラス基板1とICチップ2とを電気的及び機械的に接続する。
【0054】
本実施の形態では、熱加圧時、導電性粒子31bは、流動性を有する接着剤組成物31a,32a中において誘導板13の立設方向と直交するガイド面部131,132の側面に沿って移動する。その結果、隣接する配線電極12間及び隣接するバンプ22間に多数の導電性粒子31bが入り込むことがないため、ショートの発生が抑制されて良好な絶縁信頼性を得ることができる。そして、導電性粒子31bは、溶融して流動する接着剤組成物31a,32a内を誘導板13のガイド面部131,132の側面方向に沿って移動することから、配線電極12上に十分に集められて高い粒子捕捉率を得ることができる。そして、多数の導電性粒子31bがバンプ22と配線電極12との間にしっかりと狭持されて十分に潰れることにより、良好な導通信頼性を維持することができる。
【0055】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明が前述の実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上述の実施の形態では、異方性導電接着部材として、フィルム成形されてなる異方性導電フィルムを用いたが、これに限定されず、例えば、絶縁性接着剤組成物に導電性粒子が分散された導電性接着剤ペースト、或いは、導電性接着剤ペーストと絶縁性接着剤ペーストとからなり、これらを重ねて塗布するようにして使用するペースト状の異方性導電接着部材を用いるようにしてもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、本発明をCOG(Chip On Glass)に適用する場合について説明したが、本発明は、FOG(Film On Glass)、FOB(Film On Board)等の他の実装方法にも適用できる。
【0058】
また、上述の実施の形態では、基板としてガラス基板を用いる場合について説明したが、リジット基板、フレキシブル基板等の他の基板であってもよい。また、上述の実施の形態では、電子部品としてICチップを用いる場合について説明したが、フレキシブルプリント基板等の配線材やコンデンサ等であってもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。
【0060】
<実施例1>
以下の導電性粒子含有層と絶縁性接着剤層とが積層された2層構造の異方性導電フィルムを作製した。
【0061】
(導電性粒子含有層)
ビスA型フェノキシ樹脂(商品名YP50、新日鐵化学社製)30質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名EP828、三菱化学社製)30質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(商品名PHX3941HP、旭化成株式会社製)40質量部、エポキシ系シランカップリング剤(商品名A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製)1質量部、粒子径3.25μmの導電性粒子(商品名ミクロパールAU、積水化学工業社製)35質量部にトルエンを加え固形分50%の組成物を調整した。調整した組成物を剥離基材上に塗布し、オーブンで加熱することにより乾燥させ、厚み8μmの導電性粒子含有層を作製した。
【0062】
(絶縁性接着剤層)
ビスA型フェノキシ樹脂(商品名YP50、新日鐵化学社製)25質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名EP828、三菱化学社製)35質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(商品名PHX3941HP、旭化成株式会社製)40質量部、エポキシ系シランカップリング剤(商品名A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製)1質量部にトルエンを加え固形分50%の組成物を調整した。調整した組成物を剥離基材上に塗布し、オーブンで加熱することにより乾燥させ、厚み12μmの絶縁性接着剤層を調整した。
【0063】
このように調整した導電性粒子含有層と絶縁性接着剤層とをラミネートすることにより、2層構造の異方性導電フィルムを作製した。
【0064】
接続面に複数の配線電極がファインピッチに形成されているガラス基板を用意した。このガラス基板の接続面上に形成された配線電極間の領域を介して対峙する領域の一方に高さ15μm、2つのガイド面部によりV字形状を形成するDHM(ディーエイチ・マテリアル)株式会社製、エクスドーマ(スチレン型ビニルエステル樹脂)の誘導板を立設させた。誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離(図1の距離Lに相当)は、導電性粒子の平均粒径と同じ長さ(粒子径の1.0倍)とした。
【0065】
このガラス基板を基板支持台上に載置した。基板支持台に載置されたガラス基板の接続面上に、導電性粒子含有層を接続面と対峙させるようにして異方性導電フィルムを配置した。そして、仮貼り装置である加圧ボンダー(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)の支持部に接続されたヘッド部を80℃に加熱し、この加熱したヘッド部の加圧面を絶縁性接着剤層の上面に押し当てて1MPaで2秒間加圧した。この熱加圧により、ガラス基板上に異方性導電フィルムを仮貼りした。
【0066】
ガラス基板の配線電極のパターンに対応したパターンで高さ15μmのバンプが接続面に形成されているICチップを用意した。このICチップの接続面上に形成された配線電極間の領域を介して対峙する領域の一方に高さ15μm、V字形状であるDHM(ディーエイチ・マテリアル)株式会社製、エクスドーマ(スチレン型ビニルエステル樹脂)の誘導板を立設させた。
【0067】
ICチップに立設された誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離をガラス基板に立設された誘導板のガイド面部の側面方向先端部からバンプまでの最短距離と同一(図2の距離Lに相当)、すなわち、導電性粒子の粒子径と同じ長さ(粒子径の1.0倍)とした。このようなICチップをバンプと配線電極とを対峙させて異方性導電フィルム上に配置した。
【0068】
その後、接続装置である加圧ボンダーの支持部に接続された、200℃に加熱したヘッド部の加圧面をICチップの上面に60MPaで5秒間押し当ててガラス基板とICチップとを圧着接続させた。
【0069】
このような熱加圧によって異方性導電フィルムを硬化させ、ICチップとガラス基板とを接続した。その後、圧力を解放して接続構造体を得た。
【0070】
<実施例2>
ガラス基板に形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離、及び、ICチップに形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部からバンプまでの最短距離を導電性粒子の粒子径の1.5倍とした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0071】
<実施例3>
ガラス基板に形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離、及び、ICチップに形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部からバンプまでの最短距離を導電性粒子の粒子径の2.0倍とした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0072】
<実施例4>
ガラス基板に形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離、及び、ICチップに形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部からバンプまでの最短距離を導電性粒子の粒子径の3.0倍とした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0073】
<実施例5>
導電性粒子として平均粒径が2.25μmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0074】
<実施例6>
導電性粒子として平均粒径が3.75μmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0075】
<実施例7>
誘導板の高さを18μmとした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0076】
<実施例8>
誘導板の高さを8μmとした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0077】
<実施例9>
誘導板の高さを6μmとした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0078】
<比較例1>
ガラス基板に誘導板を形成しない以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0079】
<比較例2>
ガラス基板に形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極までの最短距離、及び、ICチップに形成された誘導板のガイド面部の側面方向先端部からバンプまでの最短距離を導電性粒子の粒子径の0.5倍とした以外は、実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0080】
[粒子捕捉率評価試験]
実施例1〜9、比較例1、2の各接続構造体について、接続前にガラス基板の配線電極上にある導電性粒子の数(接続前粒子数)を次の式(1)により算出した。
接続前粒子数=導電性粒子含有層における導電性粒子の粒子(面)密度(個/mm)×端子の面積(mm) ・・(1)
【0081】
また、接続後に配線電極上にある導電性粒子の数(接続後粒子数)を金属顕微鏡にてカウントすることにより測定した。そして、次の式(2)により、導電性粒子の粒子捕捉率を算出した。
粒子捕捉率=(接続後粒子数/接続前粒子数)×100 ・・(2)
【0082】
実施例1〜9、比較例1、2の各接続構造体について、粒子捕捉率が20%未満を×、粒子捕捉率が20%以上25%未満を△、25%以上35%未満を○、35%以上を◎として評価した。評価結果を[表1]に示す。
【0083】
[導通信頼性(85℃、85%RH、500Hr後)評価試験]
実施例1〜5、比較例1〜3の各接続構造体を85℃、湿度85%の環境下で500時間放置した。この放置後の各接続構造体について、バンプと配線電極との接続部を含む抵抗値が10Ω未満であるものを◎、10Ω以上50Ω未満であるものを○、50Ω以上10Ω未満であるものを△、100Ω以上であるものを×として評価した。評価結果を[表1]に示す。
【0084】
[絶縁信頼性評価試験]
実施例1〜5、比較例1〜3の各種接続構造体について30Vの電圧を印加し(2端子法)絶縁抵抗を測定し、製造直後の接続構造体の隣接した配線電極間(10μmスペースの部分)のショートの発生数をカウントした。1つの接続構造体につき、測定総数40サンプルとしたとき、次の評価基準により絶縁信頼性を評価した。すなわち、評価基準は、20個以上を×、5個以上20個未満を△、1個以上5個未満を○、1個未満を◎とした。評価結果を[表1]に示す。
【0085】
各評価試験の評価結果を[表1]に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例1では、粒子捕捉率、導通信頼性及び絶縁信頼性の全てにおいて、最も良好な結果を得ることができた。実施例1では、誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極(バンプ)までの最短距離を導電性粒子の粒子径の1.0倍とし、誘導板の高さを15μmとしたことにより、多数の導電性粒子が誘導板の側面に沿って配線電極側に流れたと考えられる。
【0088】
その結果、実施例1では、隣接する配線電極間及び隣接するバンプ間に入り込む導電性粒子の数が減少してショートの発生を抑制して良好な絶縁信頼性が得られた。これとともに、配線電極上に集められる導電性粒子の数が増加したことで配線電極とバンプとの間において高い粒子捕捉率を得ることができたと考えられる。そして、バンプと配線電極との間において、多数の導電性粒子が潰れたことから、良好な導通信頼性が得られたと考えられる。
【0089】
実施例1〜4の結果から、ガラス基板、ICチップにおいて、誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極(バンプ)までの最短距離を導電性粒子の平均粒径に近づける程、誘導板のガイド面部と配線電極(バンプ)との間に入らずに配線電極上に集められる導電性粒子の数が増えることから、粒子捕捉率、導通信頼性及び絶縁信頼性が良好となったと考えられる。
【0090】
実施例1、5、6の結果から、ガラス基板、ICチップにおいて、誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極(バンプ)までの最短距離を導電性粒子の平均粒径と同じ大きさ(導電性粒子の1.0倍)とした場合、導電性粒子の平均粒径を3.25μmとした実施例1において絶縁信頼性が最も良好となることがわかる。
【0091】
実施例1、7〜9の結果から、誘導板の高さを8〜15μmとした場合、粒子捕捉率が最も良好となることがわかる。実施例7では、誘導板の高さが高すぎたため、実施例9では、誘導板の高さが低すぎたため、導電性粒子を効率的に配線電極上に集めることができず、粒子捕捉率がやや低下したと考えられる。
【0092】
比較例1の結果から、ガラス基板、ICチップの何れにも誘導板を設けない場合、隣接する配線電極間及び隣接するバンプ間に多数の導電性粒子が入り込み、それによりショートが発生して絶縁信頼性が不良となった。それに伴い、配線電極上に集められる導電性粒子の数が少ないことから、粒子捕捉率が悪化し、結果的に、良好な導通信頼性が得られなかったと考えられる。
【0093】
比較例2の結果から、ガラス基板、ICチップにおいて、誘導板のガイド面部の側面方向先端部から配線電極(バンプ)までの最短距離を導電性粒子の平均粒径の0.5倍とした場合、誘導板と配線電極、誘導板とバンプとの間に導電性粒子が詰まることから、配線電極上の粒子捕捉率、導通信頼性が悪化したと考えられる。また、この導電性粒子の詰まりによって、隣接する配線電極間及び隣接するバンプ間においてショートが発生し、これにより絶縁信頼性がやや悪化したと考えられる。
【符号の説明】
【0094】
1 ガラス基板、2 ICチップ、11,21 接続面、12 配線電極、13,23 誘導板、22 バンプ、30 異方性導電フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とが接続されてなる接続構造体の製造方法において、
前記基板の接続面及び前記電子部品の接続面の少なくとも一方には、前記導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、
前記誘導板は、前記配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、前記端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、
前記ガイド面部は、前記誘導板の立設方向と直交する側面方向が前記配線電極又は前記端子電極を向き、
熱加圧によって、前記異方性導電接着剤を介して前記基板の接続面と前記電子部品の接続面とを圧着接続し、前記配線電極と前記端子電極とを異方性導電接続させる接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記誘導板は、前記基板の接続面及び前記電子部品の接続面に形成されている請求項1記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記基板のガイド面部の側面方向先端部から前記配線電極までの最短距離、前記電子部品のガイド面部の側面方向先端部から前記端子電極までの最短距離は、何れも前記導電性粒子の粒子径の1.0〜3.0倍である請求項1又は2記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記基板の平面視における該基板の接続面に形成された誘導板の形状、前記電子部品の平面視における該電子部品の接続面に形成された誘導板の形状は、何れも前記ガイド面部によりV字状を構成する請求項1乃至3の何れか1項記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とが接続されてなる接続構造体において、
前記基板の接続面及び前記電子部品の接続面の少なくとも一方には、前記導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、
前記誘導板は、前記配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、前記端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、
前記ガイド面部は、前記誘導板の立設方向と直交する側面方向が前記配線電極又は前記端子電極を向き、
熱加圧によって、前記異方性導電接着剤を介して前記基板の接続面と前記電子部品の接続面とが圧着接続され、前記配線電極と前記端子電極とが異方性導電接続されてなる接続構造体。
【請求項6】
絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤を介して基板の複数の配線電極が並列されている接続面と、電子部品の複数の端子電極が並列されている接続面とを接続する接続方法において、
前記基板の接続面及び前記電子部品の接続面の少なくとも一方には、前記導電性粒子の移動をガイドするガイド面部を備えた誘導板が立設され、
前記誘導板は、前記配線電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方、及び/又は、前記端子電極間の領域を介して対峙する領域の少なくとも一方に立設され、
前記ガイド面部は、前記誘導板の立設方向と直交する側面方向が前記配線電極又は前記端子電極を向き、
熱加圧によって、前記異方性導電接着剤を介して前記基板の接続面と前記電子部品の接続面とを圧着接続し、前記配線電極と前記端子電極とを異方性導電接続させる接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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