説明

接続端子

【課題】
基板載置面積が小さくて基板が有効に利用できる接続端子、端子間接続構造、及び基板間接続構造を提供する。
【解決手段】
本発明のオス型端子1は、金属板を折り曲げて、矩形状の底面21、この底面21の左右幅方向に連なる側面22、23、この側面22、23の少なくともいずれか一方に連なる天面24、を備える箱体部20と、この箱体部20の前記天面24下から水平方向に前記箱体部20外に延出する板状の接触部13を有する端子部10と、を備え、この端子部10は、前記底面21の前記幅方向に直交する長手方向の端面から前記天面24方向に延びる立ち上り部11と、この立ち上り部11から前記天面24近くで水平方向に向きを変え、前記箱体部20外方向に延出する連結部12と、この連結部12の端面に連なる前記接触部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続端子に関し、詳しくは、主に基板間の接続に用いられる接続端子、端子間接続構造、及び基板間接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基板間接続用の端子として、従来からある中継用の端子をそのまま、或いは多少の改良を加えて転用した例がある。中には、挿抜作業性を改善したものもある(特許文献1)。
この種の端子は、オス型、メス型で対をなし、一方向に延びる一枚の基板の前後両端に必要個数が装着され、着脱可能に複数本の基板を接続する。
このような接続構造のオス型端子は、平板状の接触部を基板端から外に張出させた姿勢で端子本体に連なる。この端子本体から張出した接触部は、接続信頼性を高めるために接触面積が大きくとられるのが一般的であり、さらに端子材料は、強度確保のために板厚みの厚いものが使用される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−251135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの事情によって、オス型端子は張出し部分の接触部の重さが増す傾向にあって、重心位置は接触部内に位置するか、あるいは端子本体内にあっても極めて接触部側に寄ったところに位置している。したがってこのままでは、オス型端子はこのような不安定な重量分布をしているために、基板載置の際、載置姿勢が保てずに接触部側への倒れ込みが生じ載置姿勢を崩すおそれがある。この問題を解決するために、基板に載置される端子本体の載置面積を増して端子全体の重心位置を端子本体中心方向に近づける対策がとられる場合がある。
しかし、載置姿勢安定化のために端子本体の載置面積を増すことは、電子部品の高集積化を図り電子機器の小型軽量化の流れに逆らうものである。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基板載置面積(基板実装面積)が小さくて基板を有効に使用できる接続端子、端子間接続構造、及び基板間接続構造を提供することを目的とする。
また別の目的は、加工が容易な接続端子、端子間接続構造、及び基板間接続構造を提供することである。
さらに別の目的は、挿抜作業性のよい接続端子、端子接続間構造、及び基板間接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のオス型端子は、(1)金属板状体からなる、天面、底面、及び左右側面の四面のうち少なくとも三面が囲われた箱体部と、この箱体部の前記天面下側または側面内側から前記左右幅方向に直交する長手方向である前記箱体部外に延出する接触部を有する端子部と、を備え、この端子部は、前記底面または側面につながる長手方向の端面から垂直方向に延びる立ち上り部と、この立ち上り部につながる端面から前記箱体部外方向に延びる連結部と、この連結部の端面につながる前記接触部と、を備えるところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、オス型端子は、基板面に載置される金属板で四面、または少なくとも三面が囲われた箱体部と、メス型端子に接続する接触部を含む端子部とを備えている。
基板載置部の構造は、このように四面、または少なくとも三面が金属板で囲まれた箱体構造なので、板状体構造のものに比べて重さは大きくなる。これにより、載置面積を小さくしても、倒れ込みが生じないだけの重さを箱体部で確保することが容易になる。したがって、箱体部の載置面積は、板状体構造のものに比べて削減可能である。
また、オス型端子の接触部が箱体部から外側に延出しているので、メス型端子との挿抜作業性が良好である。
【0008】
たとえば、オス型端子を2個並列に実装する場合、基板幅は限られているので、倒れ込みが生じないように、基板載置部は長手方向に大きくなるのが一般的である。しかし、このように基板載置部を箱体構成とすることで、長手方向の小型化が可能になる。
また、このような箱体部、及び端子部は、一枚の金属板から一体的に成形されるものなので加工性が良好である。前記箱体部が、矩形状の底面、この底面の左右幅方向に連なる側面、この側面のうち少なくともいずれか一方に連なる天面を備え、前記端子部が、前記立ち上り部と、この立ち上り部から反対面近くで水平方向に向きを変え、前記箱体部外方向に延出する連結部と、この連結部の端面に連なる前記接触部と、を備えるものであってよい。
さらに、接触部は、底面(天面)と並行して延びる場合であってよく、側面と並行に延びる場合であってもよい。
【0009】
さらに好ましくは、オス型端子は、(2)前記箱体部の長手方向の長さL1、前記端子部の前記箱体部から外に延びている長さL2、である場合、0.8>L1/(L1+L2)>0.4の関係式が成り立つところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0010】
この発明によれば、オス型端子の全長に占める箱体部の長さは、40〜80パーセントの範囲内である。板状体構造の場合、一般的にこの数値は、80パーセント程度である。この両者の数値の差が意味するところは、所定の接触部面積(大きさ)を確保するためには、箱体部構造は板状体構造に比べて構造上0.375倍の載置(実装)長さがあれば足りるということである。したがって、一層基板載置面積(基板実装面積)が小さくて基板が有効に使用できる接続端子が得られる。
この0.375倍は、次に示される式1、式2より得られる。
式1、箱体部構造の場合;L1´/(L1´+L2)=0.6
式2、板状体構造の場合;L1/(L1+L2)=0.8
(L1、L1´;基板載置部の長さ、L2;接触部の長さ、及び端子全長に閉める箱体部の割合を0.6として計算した)
【0011】
さらに好ましくは、オス型端子は、(3)前記接触部は、金属板を折り重ねて板厚みを構成する重ね合わせ部を備えるところに特徴を有するものである。
【0012】
この発明によれば、接触部は、薄い金属板を重ね合わせた構造なので、加工が容易である。また板厚みが薄いのでコスト低廉である。
また、強度が必要なところのみ重ね合わせをし、不要なところは、重ね合わせをしないことにより、接触部の軽量化が可能である。これにより、一層箱体部の小型化が可能である。したがって、一層基板載置面積(基板実装面積)が小さくて基板が有効に使用できる接続端子が得られる。
【0013】
さらに好ましくは、オス型端子は、(4)前記接触部の中央部は、前記重ね合わせ部がなく、対応するメス型端子の係止片が係る窪み部が構成されているところに特徴を有する(1)から(3)の内一項記載のものである。
【0014】
この発明によれば、接触部の中央部は、重ね合わせがなく窪み部が形成されている。これにより、嵌合するメス型端子の係止片がこの窪み部と係合して、嵌合姿勢が固定されることになる。したがって、容易な加工で接触部に係合窪み部の形成が可能である。
【0015】
さらに好ましくは、オス型端子は、(5)前記立ち上り部が、前記箱体部内にあるところに特徴を有する(1)から(4)の内一項記載のものである。
【0016】
この発明によれば、立ち上り部は箱体部内にある。これによって、箱体部の重さが増すので、一層箱体部の小型化が可能である。また、立ち上り部が箱体部内にあるので、立ち上り部は、箱体部が盾となって不用意な変形から防がれる。したがって、要部を守る構造のオス型端子が容易な加工で得られる。
【0017】
さらに好ましくは、オス型端子は、(6)前記箱体部の天面が平坦面を備えるところに特徴を有する(1)から(5)の内一項記載のものである。
【0018】
この発明によれば、箱体部の天面は、平坦面を備えている。これによって、天面は搬送時に真空吸着方式の利用が可能である。したがって、オス型端子は、真空吸着方式で、自動機による基板載置可能である。
【0019】
さらに好ましくは、端子間接続構造は、(7)前記オス型端子と、前記オス型端子に接続するメス型端子と、を備え、このメス型端子は、前記オス型端子の前記接触部を挟持する一対の挟持片を有し、この挟持片のうち少なくとも一方は、押圧部を備えた弾性片であって、この押圧部には、係止突起が備わり、前記オス型端子の前記接触部は、前記メス型端子のこの押圧部に弾接され、前記窪み部にこの係止突起が係止するところに特徴を有するものである。
【0020】
この発明によれば、端子間接続構造は、前記オス型端子と、これに接続するメス型端子とを備えている。嵌合時、メス型端子に備わる係合突起がオス型端子に備わる窪み部に係合することによって嵌合姿勢が固定される。したがって、一層基板載置面積(基板実装面積)が小さくて基板が有効に使用できる接続端子が得られる。
また、加工性や挿抜作業性が良好な端子間接続構造が得られる。
なお、メス型端子の押圧部には、係合凹部が備わり、オス型端子の接触部には、係合凸部が備わる態様であってもよい。この場合にも概ね上述した作用・効果が得られる。
【0021】
さらに好ましくは、基板間接続構造は、(8)前記オス型端子と、前記メス型端子と、を備え、前記オス型端子は、一方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、前記メス型端子は、他方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、前記一方、及び他方の基板同士の側端を対向させた姿勢で接続可能であるところに特徴を有するものである。
【0022】
この発明によれば、基板載置面積が小さく、加工が容易な基板間接続構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るオス型端子の外観斜視図である。
【図2】図2は同メス型端子の外観斜視図である。
【図3】図3は同オス型端子の概略図であって、(A)は平面図、(B)正面図、(C)背面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)断面図である。
【図4】図4は同メス型端子の概略図であって、(A)は平面図、(B)正面図、(C)背面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)断面図である。
【図5】図5は同基板間接続構造の斜視図であって、(A)は接続前の状態を示す図、(B)は接続している状態を示す図である。
【図6】図6は同基板間接続構造のロック状態を示す断面図であって、(A)は接続前の状態を示す図、(B)はロック完了状態を示す図、(C)はロック解除状態を示す図である。
【図7】図7は同基板間接続構造を示す上面図である。
【図8】図8は同基板間接続構造の基板間に位置ズレが生じた状態を示す外観斜視図であって、(A)は長手方向(前後方向)の位置ズレが生じた状態を示す図、(B)は上下方向の位置ズレが生じた状態を示す図、(C)は左右方向の位置ズレが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る端子構造、及び基板間接続構造について、図面に従って説明する。図1は本発明の実施形態に係るオス型端子の外観斜視図である。図2は本発明の実施形態に係るメス型端子の外観斜視図である。図3は本発明の実施形態に係るオス型端子の概略図であって、(A)は平面図、(B)正面図、(C)背面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)断面図である。図4は本発明の実施形態に係るメス型端子の概略図であって、(A)は平面図、(B)正面図、(C)背面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)断面図である。図4は本発明の実施形態に係るメス型端子の概略図であって、(A)は平面図、(B)正面図、(C)背面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)断面図である。
なお、説明中の指示方向は、図中に示された方向定義による。
【0025】
〈オス型端子〉
オス型端子1は、図1、図3に示されるように、金属板状体を折り曲げ加工したものである。金属板は、銅合金、鉄系合金の母材に表面が耐食性処理されたものを使用してよい。耐食性処理は、金めっき、錫めっき、はんだめっき等であってよい。
オス型端子1は、対応するメス型端子3と対になって、一つの接続構造を構成する。これら接続端子1、3は、電線端末に装着されたり、基板に直接的に、または、絶縁物質を介して間接的に装着されたりして広く使用されている。
【0026】
オス型端子1は、四方が壁面で囲まれ前後方向に開口部25、26を有する筒状の箱体部20と、この箱体部20の一方の開口部25から延出する端子部10とを備えている。
箱体部20は、底面21、左右側面22、23、天面24、及び前後端に開口部25、26を備えている。箱体部20は、板状金属の成形体であり、底面21、この底面21の左右両端部から垂直に立ち上がる左右側面22、23、及びこの左右側面22、23の端面から内向きに立設する天面24からなる。天面24は、左右側面22、23から連なる面同士が中央でその端面を突き合わせて接続し平坦面を構成している。
勿論、箱体部の構造は、上述したものに限定されるものではない。たとえば、底面側で端面同士が突き合わされる場合であってよく、また、側面と、底面との角部で端面同士が突き合わされる場合であってよい。
【0027】
このように天面24が平坦面を有するので、生産ラインで真空吸着方式の搬送装置の使用が可能である。このように箱体部20は、左右側面22、23を備えた立体的構造からなるので、板状体のような平面的構造に比べて基板載置単位面積あたりの重さは増加する。
箱体部20は、底面21に連なる実装部27、28を備えている。実装部27、28の表面は、底面21の表面とほぼ同一面上にある。実装部27、28は、側面22、23をコの字状に切り起こした切り起こし片であり、箱体部20と一体的に成形されるものである。
【0028】
端子部10は、底面21の前方の端面に連なる。端子部10は、底面21の前端から垂直に立ち上がる立ち上り部11、この立ち上り部11の端面から水平方向に向きを変えて前方に延びる連結部12、及びこの連結部12の端面に連なる接触部13を備えている。
端子部10は、底面21の前端から連なるものであって、箱体部20と一体的に形成されるものである。接触部13は、底面21に対してほぼ平行姿勢のまま上方に変位している。
このように、接触部13の上下方向のレベルは、開口部25の範囲内で相手側、すなわちメス型端子の位置に合わせて比較的容易に調整可能である。
端子部10の弾性的変形長の実質的長さは、外見上現れる接触部13だけではない。接触部13以外に、箱体部20に隠れている立ち上り部11、及び連結部12もともに弾性的変形範囲である。すなわち、端子部10の弾性的変形長は、接触部13、立ち上り部11、及び連結部12を合計した長さである。
【0029】
このように、端子部10の弾性的変形長は長いので、先端の弾性的変形範囲も広がる。その結果、端子部10の許容ズレ量は大きくなる。端子部10の立ち上り部11は、底面21の前端から連なり、箱体部20の内部にある。詳しくは、底面21、左右側面22、23、及び天面24で囲われている。
これによって、立ち上り部11は、物理的に外部障害から守られた構造をしている。立ち上り部11は、前後方向に弾性的変形可能である。これによって、たとえば、接触部13の先端に前方から加わった外力に対して、立ち上り部11が衝撃を吸収することによって接触部13に加わる損傷を回避或いは軽減可能である。また、上下方向に加わる外力に対しては、接触部13自体、或いは接触部13と、立ち上り部11とが協働して、衝撃を吸収可能である。
【0030】
接触部13は、平板状である。接触部13は、図1に示されるように、必要な強度と厚みとを確保するために、薄い板材の重ね合わせによって構成されている。接触部13は、下面中央に窪み部14を備えている。窪み部14は、重ね合わされない部分を造ることによって構成されている。窪み部13は、相手側メス型端子3の係合片44と係合して、嵌合状態を固定するものである。
連結部12は、垂直に立ち上がる立ち上り部11の延びる向きを水平方向に変えている。
【0031】
〈メス型端子〉
メス型端子3は、図2、図4に示されるように、金属の板状体を折り曲げ加工したものである。金属板は、銅合金または鉄系合金の母材に表面が耐食性処理されたものを使用してよい。耐食性処理は、金めっき、錫めっき、はんだめっき等であってよい。
メス型端子3は、四方を壁面で囲われ、前後端に開口部35、36を有する筒状の本体部30と、オス型端子1と係合する係合片44が形成されたロックレバー40とを備えている。
本体部30は、底面31、この底面31の左右側端から垂直に立ち上がる左右側面32、33、この左右側面32、33の端面から水平方向内向きに延びる天面34を備えている。天面34は、左右側面32、33から延びる先端の端面同士が付き合わされた構造である。天面34は、平坦である。
勿論、箱体部の構造は、上述したものに限定されるものではない。
【0032】
ロックレバー40は、側面視U字形のバネ部41、このバネ部41の先端に連なるレバー部43を備えている。バネ部41は、底面31の後端に連なる。バネ部41は、切り起こした突起状の係合片44を有する。係合片44は、オス型端子1の窪み部14と係合し、嵌合状態を固定する。
メス型端子3は、弾接部42と、天面34との間に嵌合空間38を形成する。ロックレ
バー40は、バネ部41の作用によって上方向に弾性変形可能である。嵌合空間38の隙間Sは、オス型端子1の接触部13の厚みTよりも小さい。嵌合空間38に接触部13が挿入されると隙間Sは、厚さTまで広げられる。このとき生じた弾性的変形によって押圧力が接触部13に作用し、電気的機械的接続がなされる。
嵌合空間38入口部の隙間Mは、オス型端子1の接触部13の厚みTよりも大きく、接触部13がある程度挿入された後、弾性的変形を開始する。したがって、嵌合の際の自由度が大きく、ズレ吸収として有効である。
【0033】
〈端子間接続構造、基板間接続構造〉
他の実施形態である端子間接続構造、基板間接続構造について、図面に従って説明する。図5は本発明の実施形態に係る基板間接続構造の斜視図であって、(A)は接続前の状態を示す図、(B)は接続している状態を示す図である。図6は本発明の実施形態に係る基板間接続構造のロック状態を示す断面図であって、(A)は接続前の状態を示す図、(B)はロック完了状態を示す図、(C)はロック解除状態を示す図である。
【0034】
基板間接続構造は、図5、図6に示されるように、上述したオス型端子1、メス型端子3、及びそれぞれが実装される第1基板5、及び第2基板6を備えている。第1基板5、及び第2基板6は、エポキシ樹脂製の絶縁母材に電気配線をプリントしたものである。放熱性を考慮してアルミ合金を母材に使用した基板を使用してもよい。基板面には、上述した接続端子用ターミナルのほかに、搭載される電子機器用ターミナルが露出形成されている。
第1基板5、及び第2基板6は、長尺もので、複数本が連結された態様で使用される場合がある。分割された第1基板5、及び第2基板6を電気的機械的に接続するために上述したオス型端子1、及びメス型端子3が使用される。
【0035】
オス型端子1、メス型端子3は、図5、図6に示されるように、第1基板5、或いは、第2基板6の端に実装される。本実施形態では、同型端子が2個並置されている。連結される基板には、対応する位置にオス型端子1、メス型端子3が対になるように実装されている。オス型端子1、及びメス型端子3が実装される基板面は、他の電子部品が実装される面と同じ面であってよいし、異なる面たとえば反対面であってもよい。
【0036】
〈オス型端子の基板実装〉
オス型端子の基板実装形態について、図面を参照しながら説明する。図7は本発明の実施形態に係る基板間接続構造を示す上面図である。
オス型端子の基板実装は、図7に示されるように、接触部13が第1基板5端から張出す態様でおこなわれる。信頼性の高い接続を確保するために要する接触部13の長さに対して、第1基板5に実装される箱体部20は、オス型端子1が実装位置に載置された時に、たとえば、周囲の駆動部から伝わる微動があっても、前のめりしないだけの重さが必要である。すなわち、接触部13と、箱体部20とを含むオス型端子1全体の重心位置が、箱体部20の中心位置近くに位置することが安定的に基板載置できる条件である。
【0037】
基板載置(実装)面積を小さくして如何に上記条件を満足させるかが本発明の課題とするところである。本発明は、基板載置(実装)部を箱体構造とすることで上記課題を解決する。基板載置(実装)部が板状体構造の場合、上記条件を満足させるには、基板載置(実装)部の全長Lを長くとる外方法はなく、結果、基板の有効利用領域が狭められることとなる。
本実施形態の場合、基板載置(実装)部は箱体構造で構成されている。これにより、基板投影面積が小さく単位面積あたりの重さの大きいものが得られる。
【0038】
本実施形態のオス型端子1の場合、図7に示されるように、接触部13の長さL2、箱
体部20の長さL1とした場合、0.8>L1/(L1+L2)>0.4の関係式が成り立つ。この計算式の数値は箱体部20の高さを増すことで小さくなるが、設計上の許容範囲を考慮して現状0.6程度である。
基板載置(実装)部が板状体構造の場合、この割合は一般的に0.8程度である。接触部の長さは必要量同じだけ確保するものとして両構造を比較すると、本実施形態の箱体構造は、板状体構造に比べて必要長さは、37パーセント程の小ささで足りるということである。このように、オス型端子1の箱体構造は、省スペースタイプで基板の有効利用に資するものである。
【0039】
〈基板間の接続過程〉
図6は本発明の実施形態に係る基板間接続構造のロック状態を示す断面図であって、(A)は接続前の状態を示す図、(B)はロック完了状態を示す図、(C)はロック解除状態を示す図である。
【0040】
本実施形態に係る第1基板5、及び第2基板5間の電気的機械的接続は、図6に示されるように、第1基板5、及び第2基板6に実装されたオス型端子1、及びメス型端子3間の接続によってなされる。
端部にオス型端子1が実装された第1基板5と、端部にメス型端子3が実装された第2基板6とを長手方向に正対させる。第1基板5、及び第2基板6の表面高さを同じにした状態で、オス型端子1の接触部13は、メス型端子3の嵌合空間38の開口部35と同じ高さに位置する。幅方向は、第1基板5、及び第2基板6間の幅を揃えた状態で、接触部13の幅と、開口部35の幅とが嵌合位置に揃う。
【0041】
この状態で、オス型端子1が実装された第1基板5と、メス型端子3が実装された第2基板6とは、接続される。オス型端子1の接触部13が、メス型端子3の嵌合空間38に正規位置まで挿入されると、ロックレバー40の係合片44が接触部13の窪み部14に係合して、嵌合状態は固定される。
嵌合状態の解除は、ロックレバー40のレバー部43を押し下げて係合片44を窪み部14から外した状態で、オス型端子1をメス型端子3から離間させる方向に力を加えておこなう。
【0042】
〈ズレ吸収機構〉
図8は本発明の実施形態に係る基板間接続構造の基板間に位置ズレが生じた状態を示す外観斜視図であって、(A)は長手方向(前後方向)の位置ズレが生じた状態を示す図、(B)は上下方向の位置ズレが生じた状態を示す図、(C)は左右方向の位置ズレが生じた状態を示す図である。
【0043】
基板間接続構造のズレ吸収について、図8に従って説明する。第1基板5と、第2基板6とが前後方向のX軸上で位置ズレが生じた場合、第1基板がX2方向にズレ、第2基板5がX1方向にズレが生じると、第1基板5の端と、第2基板6の端との間に隙間ができる。
このときのオス型端子1、及びメス型端子3間の接続状態は、図8の(A)に示されるように、オス型端子1の接触部13は、メス型端子3の開口部35を通って嵌合空間38に収容されている。接触部13の先端は、ズレが生じた結果、正規の位置から後方のX2方向にズレたところにある。
【0044】
しかしこのとき、接触部13は、ロックレバー40を押し下げながら進むので、ロックレバー40の弾接部42は、挿入された接触部13と弾接し、電気的接続状態が構成される。また、接触部13下面の窪み部14は、ズレ許容度が増すように後方のX2方向に長めに形成されている。これにより、正規の位置に対してメス型端子3と、オス型端子1と
が前後方向(X1,X2方向)に位置ズレが生じても、ロックレバー40の係合片44は、接触部13の窪み部14に係合して、嵌合状態は固定されようになっている。
このように、第1基板5と、第2基板6とが、前後方向(X1,X2方向)に位置ズレが生じても、オス型端子1と、メス型端子3とは、その嵌合許容度の高さゆえ互いに嵌合し、電気的機械的接続状態が構成されるようになっている。
【0045】
次に、第1基板5と、第2基板6とが上下方向のZ軸上で位置ズレが生じた場合、第1基板5がZ2方向にズレ、第2基板6がZ1方向にズレが生じると、挿入開始段階で、オス型端子1の接触部13は、メス型端子3の開口部35に対して、下方のZ2方向に位置する。
しかし本実施形態のメス型端子3は、その開口部35がオス型端子1の接触部13の外形寸法よりも大きく形成されていて、Z軸方向に関しては、開口部35のZ軸(上下)方向寸法は、接触部13の厚みよりも大きく、これによって、接触部13は、開口部35に挿通可能である。
嵌合空間38に挿入された接触部13は、位置ズレが生じている分、正規位置に比べてロックレバー40の下側に接触する。ロックレバー40の強度は、このような位置ズレが生じる範囲を想定して構成されているので、正規位置に対して下方(Z2方向)よりに当接した場合でも塑性変形を生じることはなく、適切な弾性変形で接触部を受け入れる。
【0046】
このように設計されたロックレバー40を押し下げながら接触部13は、嵌合空間38を奥へと進む。正規深さまで挿入された接触部13は、接触部13の弾接部42と、天面34とで弾接挟持されて電気的機械的に接続される。また、接触部13下面の窪み部14は、ズレ許容度を増すように大きめに形成されている。これにより、正規の位置からメス型端子3と、オス型端子1とが上下方向(Z1,Z2方向)に位置ズレが生じても、ロックレバー40の係合片44は、接触部13の窪み部14に係合して、嵌合状態は固定されるようになっている。
【0047】
次に、第1基板5と、第2基板6とが左右方向のY軸上で位置ズレが生じた場合、第1基板5がY2方向にズレ、第2基板6がY1方向にズレが生じると、挿入開始段階で、オス型端子1の接触部13は、メス型端子3の開口部35に対して、左方のY2方向に位置する。
しかし、本実施形態のメス型端子3は、その開口部35がオス型端子1の接触部13の外形寸法よりも大きく形成されていて、Y軸方向に関しては、開口部35のY軸方向(左右方向)寸法は、接触部13の幅寸法よりも大きい。これによって、接触部13は、開口部35に挿通可能である。
【0048】
嵌合空間38に挿入された接触部13は、位置ズレが生じている分、正規位置に比べて嵌合空間38を左寄りに進むが、ロックレバー40の下側には接触している。ロックレバー40の弾接力は、このような位置ズレが生じても低下することはなく、位置ズレが生じていない場合と同じ弾接力を接触部13に与えている。
正規深さまで挿入された接触部13は、接触部13の弾接部42と、天面34とで弾接挟持されて電気的機械的に接続される。また、接触部13下面の窪み部14は、ズレ許容度を増すように左右方向(Y1、Y2方向)に長めに形成されている。これにより、正規の位置からメス型端子3と、オス型端子1とが左右方向(Y1,Y2方向)に位置ズレが生じても、ロックレバー40の係合片44は、接触部13の窪み部14に係合して、嵌合状態は固定されている。
【0049】
このように、本実施形態のオス型端子1、メス型端子3は、端子構造によって位置ズレ許容度が高められているので、それぞれの基板(第1、第2)5、6が相対的にX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向にズレが生じていても、端子間は、端子本体及び基板にストレ
スを与えることなく、接続されうる。
【0050】
〈作用、効果〉
本発明の効果は、オス型端子の本体が箱体部で構成されているので、基板載置面積の単位あたりの重さが、板状体に比べて大きくなる。これにより、基板載置面積が小さくても倒れ込みが生じない。したがって、基板を有効に使用できる。
オス型端子の接触部は、箱体部から外側に延びているので、視認性がよくメス型端子との挿抜作業性が良好である。
オス型端子の接触部は、薄板材の重ね合わせによって、必要な強度と厚みを得ている。これによって、コストダウンと作業性(加工性)の向上が図られている。
オス型、及びメス型端子は、天面が平坦な箱体部を備えているので、基板実装時等、真空吸着方式による搬送機構の利用が可能である。
【0051】
オス型、及びメス型端子は、U字形に曲げられたバネ部が、箱体部、或いは本体部の壁面で囲われている。これによって、不用意な衝撃からバネ部が保護される構造である。勿論、バネ部の構造は、U字形に限定されるものではなく、クランク形、Z字形、V字形であってよい。
端子間で相対的に位置ズレが生じても、端子構造によってズレ許容度が高められているので、端子間は、嵌合可能である。
一軸上の動きで挿入、脱抜可能である。これによって、挿入、脱抜作業性が向上する。
ロック、アンロックがロックレバーの押し下げ操作だけなので、ロック、アンロック作業が容易に行なえる。
オス型、メス型端子ともに、特にメス型端子は、バネ部と、実装部との間隔が離れているので、はんだ上がり、及びフラックス上がりがバネ部に生じにくい構造である。これによって、はんだや、フラックスからバネ部が保護される。
【0052】
〈他の実施形態〉
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 オス型端子
10 端子部
11 立ち上り部
12 連結部
13 接触部
14 窪み部
20 箱体部
21 底面
22、23 側面
24 天面
25、26 開口部
27、28 実装部
3 メス型端子
30 本体部
31 底面
32、33 側面
34 天面
35、36 開口部
37 実装部
38 嵌合空間
40 ロックレバー
41 バネ部
42 弾接部
43 レバー部
44 係合片
5 第1基板
6 第2基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板状体からなる
天面、底面、及び左右側面の四面のうち少なくとも三面が囲われた箱体部と、
この箱体部の前記天面下側または側面内側から前記左右幅方向に直交する長手方向である前記箱体部外に延出する接触部を有する端子部と、を備え、
この端子部は、前記底面または側面につながる長手方向の端面から反対面方向に延びる立ち上り部と、
この立ち上り部につながる端面から前記箱体部外方向に延びる連結部と、
この連結部の端面につながる前記接触部と、を備えるところに特徴を有するオス型端子。
【請求項2】
前記オス型端子であって、
前記箱体部の長手方向の長さL1、
前記端子部の前記箱体部から外に延びている長さL2、である場合、
0.8>L1/(L1+L2)>0.4
の関係式が成り立つところに特徴を有する請求項1記載のオス型端子。
【請求項3】
前記オス型端子であって、
前記接触部は、金属板を折り重ねて板厚みを構成する重ね合わせ部を備えるところに特徴を有する請求項1又は2記載のオス型端子。
【請求項4】
前記オス型端子であって、
前記接触部の中央部は、前記重ね合わせ部がなく、対応するメス型端子の係止片が係る窪み部が構成されているところに特徴を有する請求項1から3の内一項記載のオス型端子。
【請求項5】
前記オス型端子であって、
前記立ち上り部が、前記箱体部内にあるところに特徴を有する請求項1から4の内一項記載のオス型端子。
【請求項6】
前記オス型端子であって、
前記箱体部の天面が平坦面を備えるところに特徴を有する請求項1から5の内一項記載のオス型端子。
【請求項7】
前記オス型端子と、前記オス型端子に接続するメス型端子と、を備え、
このメス型端子は、前記オス型端子の前記接触部を挟持する一対の挟持片を有し、この挟持片のうち少なくとも一方は、押圧部を備えた弾性片であって、
この押圧部には、係止突起が備わり、
前記オス型端子の前記接触部は、前記メス型端子のこの押圧部に弾接され、前記窪み部にこの係止突起が係止するところに特徴を有する端子間接続構造。
【請求項8】
前記オス型端子と、前記メス型端子と、を備え、
前記オス型端子は、一方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、
前記メス型端子は、他方の基板の側端に少なくともひとつ実装され、
前記一方、及び他方の基板同士の側端を対向させた姿勢で接続可能であるところに特徴を有する基板間接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate