説明

接続管理システム、及びシンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法

【課題】各サーバの負荷や、ネットワークトラフィックを抑える。
【解決手段】接続管理サーバ2を複数設置し、これら接続管理サーバ2のいずれにおいてもシンクライアント端末3からの接続要求の受付を実行させ、さらに、接続管理サーバ2が、クライアント11ごとの状態を保持するためこれらクライアント11の状態管理を行うとともに、シンクライアント端末3からの接続要求に応じて、当該シンクライアント端末3が接続可能なクライアント11の検索を行い、当該検索結果をシンクライアント端末3に返信し、シンクライアント端末3からシンクライアントサーバ1への接続要求ごとに、クライアントの検索を実行する接続管理サーバ2の範囲を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続管理システム、及びシンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクライアント・サーバ形態のシステムでは、磁気ディスク装置などを備えるPCがクライアント端末として利用されているが、近年では、業務の複雑化のために1人のユーザが複数台のPCを使用したり、複数の業務で1台のPCを共有したりしており、その結果、クライアント端末用のソフトウェアが複雑化していることともあいまって、クライアント端末の管理コストが上昇している。さらに、クライアント端末に磁気ディスク装置などの記憶装置が存在することは、情報漏洩の可能性を増すことになる。
【0003】
そこで、近年、ディスクレス(磁気ディスク装置などの記憶装置を備えない)あるいはディスクへの書込みが禁止された端末(以下、シンクライアント端末という)と、データを保持するとともにオペレーティングシステム(OS)や業務アプリケーションが実行されるサーバ(以下、シンクライアントサーバという)とを組み合わせて業務システムを構築することが行われている。
【0004】
シンクライアントサーバは、従来のクライアント・サーバ形態のシステムにおいてはクライアント端末が実行していた業務アプリケーションを実行するものであるから、シンクライアント端末ごとの実行部(実行イメージ)として仮想的に構成されたクライアントを備えており、クライアントには、シンクライアント端末からの接続ごとに割り当てられるOSと業務アプリケーションとデータとがインストールされる。一般にシンクライアントサーバは複数のシンクライアント端末を管轄するものであるから、複数のクライアントが同一のシンクライアントサーバ上で稼動するようになっている。
【0005】
このようなシンクライアントシステムでは、ユーザはシンクライアント端末からネットワークを経由して、データセンターなどで稼動しているクライアントに接続して、そのクライアント上でアプリケーションなどを実行させる。そして、アプリケーションの実行に必要な入力をシンクライアント端末を介して行い、アプリケーションの実行結果をシンクライアント端末の画面上で確認することになる。
【0006】
ところで、シンクライアントシステムでは、複数のクライアントを複数のユーザで共用することもあり、システムの利便性を高めるためには、ユーザが利用を開始するときに他のユーザが利用していないクライアントを検索してユーザに割り当て、割り当てられたクライアントにシンクライアント端末から接続させる仕組みが必要である。また、ユーザの利便性のため、接続に必要な操作を最小限にとどめることも重要である。この点、例えば、接続管理サーバ(ないしは該接続管理サーバを有する接続管理システム)を設け、当該接続管理サーバで、すべてのクライアントの状態管理やシンクライアント端末からの要求に応じて利用可能なクライアントの検索と検索結果の返信を行うシンクライアントの接続管理方法などの技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−140306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のごとき従来技術においては、システムが大規模化し、接続管理サーバで管理するクライアントの数やシンクライアント端末の接続数が多くなると、接続管理サーバへの負荷が高くなり、シンクライアント端末からの要求応答に時間がかかるようになるなど、サービスが低下することが起こりうる。
【0009】
そこで、本発明は、各サーバの負荷や、ネットワークトラフィックを抑えることを可能とした接続管理システム、及びシンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。上記課題に対する解決策としては、接続管理サーバを複数用意して負荷を分散する方法が考えられる。このような複数台のサーバによる負荷分散の実現方法は下記のようにいくつか考えられるが、それぞれ課題もある。以下に例を挙げる。
【0011】
一つ目の方法は、各接続管理サーバが完全に独立してクライアント管理とシンクライアント端末への要求応答を行う方法である。この場合は、ユーザがどのクライアントに接続したいかによってどの接続管理サーバに接続要求を出すかを指定する必要があるので、ユーザの手間がかかる。
【0012】
二つ目の方法は、必要な情報を一つのデータベースで管理し、クライアントの状態管理やシンクライアント端末からの要求応答といった処理を行うために、すべての接続管理サーバからそのデータベースを利用する方法である。この方法の課題は、データベースに関するあらゆる処理が、そのデータベースが動作しているサーバで行われるため、このサーバがシンクライアントシステムのボトルネックになる可能性があることである。
【0013】
三つ目の方法は、各接続管理サーバがデータベースを持ち、処理に必要なデータベースの情報を同期させて、各サーバが独立してクライアントの状態管理やシンクライアント端末からの要求応答を行う方法である。ここで、データベースの同期方法として、定期的に同期をとる方法と、データベースの中の情報に変更があるたびに同期する方法とがある。整合性を保って接続管理の処理をするためには、クライアントの状態監視を常時行うので、前者の方法では各サーバで最新の情報が利用できないために同じクライアントを複数のユーザに同時に割り当ててしまうなどの恐れがあり、後者の方法では、同期するための通信や処理が頻繁に行われ、各サーバやネットワークの負荷が大きくなるため、接続管理のシステムに向かない。
【0014】
四つ目の方法は、各接続管理サーバがデータベースを持ち、各サーバのデータベースに各サーバ自身が管理しているクライアントにかかわる情報だけを格納し、各サーバがシンクライアント端末から接続要求を処理するときに、サーバ間で連携し、情報をやり取りすることでクライアントの割り当て処理を行う方法である。この方法の課題は、シンクライアント端末から接続要求があるたびに、すべての接続管理サーバと情報のやり取りをすると、各サーバやネットワークの負荷が大きくなることである。
【0015】
本発明者は、上記のごとき負荷分散の実現方法およびそれぞれの課題に着目し、種々の検討を重ね、課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づくものであり、シンクライアント端末からシンクライアントサーバへの接続の管理を行う接続管理サーバを複数有する接続管理システムであって、接続管理サーバは、クライアントの状態を保持するためこれらクライアントの状態管理を行うとともに、シンクライアント端末からの接続要求に応じて、当該シンクライアント端末が利用可能なクライアントの検索を実行し、当該検索結果をシンクライアント端末に返信するものであり、シンクライアント端末からシンクライアントサーバへの接続要求ごとに、クライアントの検索を実行する接続管理サーバの範囲を制限する、というものである。
【0016】
この場合、接続管理サーバは、接続管理サーバごとに当該接続管理サーバが属するグループの識別情報が格納されているサーバ構成情報テーブルと、シンクライアント端末からの接続要求を受け付け、ユーザからのグループ指定に基づいてクライアントの検索を実行する接続管理サーバを選択し、検索要求を送信する要求窓口部と、検索要求を受信し、シンクライアント端末に割り当て可能な担当クライアントの中から接続可能なクライアントを選択して応答する接続先管理部と、を有することが好ましい。
【0017】
さらに、当該接続管理システムにおいて、クライアントがグループ化されていることも好ましい。
【0018】
本発明にかかるシンクライアントシステムは、複数のシンクライアント端末と、該シンクライアント端末から接続されてアプリケーションを実行するクライアントを有する複数のシンクライアントサーバと、上述のごとき接続管理システムとを有するものである。
【0019】
また、本発明は、複数のシンクライアント端末と、該シンクライアント端末から接続されてアプリケーションを実行するクライアントを有するシンクライアントサーバと、シンクライアント端末からシンクライアントサーバへの接続の管理を行う接続管理サーバと、を有するシンクライアントシステムにおける該接続管理サーバの連携方法において、接続管理サーバを複数設置し、これら接続管理サーバのいずれにおいてもシンクライアント端末からの接続要求の受付を実行させ、さらに、接続管理サーバが、クライアントごとの状態を保持するためこれらクライアントの状態管理を行うとともに、シンクライアント端末からの接続要求に応じて、当該シンクライアント端末が接続可能なクライアントの検索を行い、当該検索結果をシンクライアント端末に返信し、シンクライアント端末からシンクライアントサーバへの接続要求ごとに、クライアントの検索を実行する接続管理サーバの範囲を制限する。
【0020】
本発明にかかる接続管理サーバの連携方法においては、利用可能なクライアントを検索する接続管理サーバの範囲を適切に制限することで、各接続管理サーバの負荷(CPU負荷など)や、ネットワークトラフィックを抑えることが可能となる。
【0021】
接続管理サーバは、シンクライアント端末からの接続要求の受付と、接続可能なクライアントの選択結果の応答とを引き受け、当該シンクライアント端末からの接続要求の転送先の範囲を決定するとき、各接続管理サーバの情報が格納されている構成情報テーブルを参照することが好ましい。
【0022】
さらに、接続管理サーバは、接続可能なクライアントグループの検索と、シンクライアント端末が接続可能なクライアントの選択と、クライアントの状態管理とを行う接続先管理部を有し、当該接続管理サーバ内及び他の接続管理サーバ内の接続先管理部への検索要求の転送とその転送先の範囲の決定、及びその転送した検索要求に対する応答の集計を行うことが好ましい。
【0023】
本発明において、接続管理サーバにおける要求窓口部は、従来、接続先管理部が行っていたシンクライアント端末からの接続要求の受付と要求応答(シンクライアント端末が接続可能なクライアントの選択およびその結果の回答を含む)を引き受ける。このような要求窓口部を導入することにより、接続管理サーバの内部機能を、外部との通信を行う階層(要求窓口部)と、利用可能なクライアントグループの検索を行う階層(接続先管理部)とに分離でき、従来の接続先管理部を一切変更せずに、接続管理サーバの連携により適した構成を構築することができる。
【0024】
サーバ構成情報テーブルは、上述した要求の転送先の範囲を決定するときに参照されるテーブルである。転送先が多いほど、広い範囲から使用可能なクライアントを検索できるが、ネットワークやサーバに大きな負荷がかかるようになる。そこで、クライアントを複数のユーザで共用する形態のシンクライアントシステムにおける特徴を活かして転送先を限定し、負荷を軽減する。
【0025】
ところで、ある特定のグループ(部署)に所属するユーザは、日々、いくつかの特定のシンクライアント端末(自分専用の据え置き端末やモバイル端末、部内共用の端末)だけを使用して、接続管理サーバからある特定のグループに所属する(管理者がその部署に割り当てている)いくつかのクライアントの中から一つのクライアントを割り当てられて利用するという事例が多い。このような場合には、シンクライアント端末ごとに頻繁に接続されるクライアントは特定されているため、シンクライアント端末がはじめに接続する接続管理サーバとして、あらかじめそれぞれのシンクライアント端末ごとに頻繁に接続されるクライアントを管理している接続管理サーバを登録しておき、利用可能なクライアントを他の接続管理サーバで検索することなく自サーバ(当該接続管理サーバ)の中だけで検索することができる。従って、このようなシンクライアントシステムにおいては、他のサーバやネットワークに負荷をかけないようにすることができる。
【0026】
また、あるクライアントグループがシンクライアントシステムの中の一部の接続管理サーバで管理されている場合には、その一部の接続管理サーバだけでクライアントを検索するようにしておくことができる。従って、その他のサーバには負荷をかけないようにすることができる。
【0027】
一方で、ユーザが出張などでいつもとは異なる場所に設置されている共用のシンクライアント端末から、そのユーザが日常的に利用しているクライアントグループ(出張先の端末から見ると頻繁に接続しているものとは別のクライアントグループ)に接続する場合もある。この場合は、その共用のシンクライアント端末に登録されている特定の接続管理サーバを検索しただけでは、利用可能なクライアントが見つからない。従って、このような場合のために、ユーザがより広い範囲の接続管理サーバ、あるいは全接続管理サーバからの検索を要求できるようにしておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、検索するサーバの範囲を適切に制限することで、各サーバの負荷や、ネットワークトラフィックを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示すシンクライアントシステムの構成図である。
【図2】グループ情報管理テーブルの一例を示す図である。
【図3】接続先設定情報テーブルの一例を示す図である。
【図4】クライアント状態管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】サーバ構成情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】シンクライアント端末からシンクライアントサーバに対して接続を行う場合の接続管理の手順の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1に、本発明の一実施形態におけるシンクライアントシステムの構成例を示す。図示されているシンクライアントシステムは、複数台のシンクライアントサーバ1と、複数台のシンクライアント端末3と、シンクライアント端末3からシンクライアントサーバ1上のクライアント11への接続を管理する複数台の接続管理サーバ2と、から構成されている。接続管理サーバ2は、シンクライアントサーバ1とシンクライアント端末3とを接続するネットワーク内に設けられている。
【0032】
各シンクライアントサーバ1は、仮想的に構成されたコンピュータマシンであるクライアント11を備えている。各クライアント11には、OS(クライアントOS)、業務アプリケーション及びデータがインストールされており、さらに、各クライアント11は状態取得部111を備えている。各クライアント11は、ユーザがシンクライアント端末3から接続管理サーバ2に接続するたびに割り振られてユーザに利用される。状態取得部111は、クライアント11の状態(電源オン、電源オフ、ログオフ、ログオン等)を接続管理サーバ2の接続先管理部21に送信する機能を有する。
【0033】
接続管理サーバ2は、接続先管理部21、要求窓口部22、グループ情報管理テーブル23、接続先設定情報テーブル24、及びクライアント状態管理テーブル25、サーバ構成情報テーブル26を備えている(図1参照)。
【0034】
要求窓口部22は、シンクライアント端末3からクライアント11への接続の要求を受け、自サーバ内及び他サーバの接続先管理部21への要求の転送とその転送先の範囲の決定、及びその転送した要求に対する応答の集計を行い、シンクライアント端末3へ受けた要求の応答を返す機能を有する。この要求窓口部22は、従来、接続先管理部21が行っていたシンクライアント端末3からの要求の受付と応答を引き受けるものである。このような要求窓口部22を導入することにより、外部との通信を行う階層(当該要求窓口部22)と、利用可能なクライアントグループの検索を行う階層(接続先管理部21)とに分離でき、従来の接続管理部を一切変更することなくサーバ連携構成(多数のクライアント11の状態管理と多数のシンクライアント端末3からの接続を複数の接続管理サーバ2で対応するために連携させた構成)を構築することができる。
【0035】
接続先管理部21は、要求窓口部22から転送された要求に対し、接続可能なクライアントグループの検索や、シンクライアント端末3が接続する接続先クライアントの決定、クライアント11の状態管理を行う機能を有する。
【0036】
グループ情報管理テーブル23、接続先設定情報テーブル24、クライアント状態管理テーブル25、及びサーバ構成情報テーブル26には、接続先管理部21が接続管理を行うために必要な情報がそれぞれ格納されている。
【0037】
グループ情報管理テーブル23には、図2に示すように、ユーザ名(ユーザID)、シンクライアント端末3、クライアント11の各情報と、それぞれのユーザ、シンクライアント端末3、クライアント11がどのグループに属しているかの情報が格納されている。接続先設定情報テーブル24には、図3に示すように、各クライアントグループに接続できる、ユーザ(ユーザID)グループ、シンクライアント端末グループに関する情報(紐付け情報)が格納されている。クライアント状態管理テーブル25には、図4に示すように、クライアント11の状態について、クライアント毎の情報が格納されている。サーバ構成情報テーブル26には、図5に示すように、シンクライアント端末3からの要求の転送先を決定するのに使用するための各サーバの情報が格納されている。グループ情報管理テーブル23、接続先設定情報テーブル24及び、サーバ構成情報テーブル26のデータは、このシンクライアントシステムの運用開始前(ユーザがクライアント11に接続を行う前)に設定しておく必要がある。
【0038】
シンクライアント端末3は、接続部31、接続先制御部32、接続管理サーバ情報ファイル33を備える。接続管理サーバ情報ファイル33には、各シンクライアント端末3が接続するべき接続管理サーバ2の情報(IPアドレス)をあらかじめ指定しておく。ここで指定する接続管理サーバ2は、その端末から頻繁に利用されるクライアント11を管理している接続管理サーバである。接続先制御部32は、シンクライアント端末3上でユーザからのユーザID情報と検索範囲の入力を取得し、入力された情報とそのシンクライアント端末3のシンクライアント端末情報を接続管理サーバ情報ファイル33で指定された接続管理サーバ2の要求窓口部22に送信し、その後、接続可能なクライアント情報を要求窓口部22から取得して接続部31に送信する機能を有する。接続部31は受け取った情報を用いてクライアント11への接続を行う機能を有する。
【0039】
続いて、図6を用いて、シンクライアント端末3からシンクライアントサーバ1に対して接続を行う場合の接続管理の手順を説明する。
【0040】
ユーザがシンクライアント端末3を用いてクライアント11への接続を行おうとする場合、シンクライアント端末3の使用開始時において、そのユーザはシンクライアント端末3に自身のユーザIDを入力し、検索範囲を指定する。すると接続先制御部32は、ユーザから入力されたユーザ情報(ユーザID)と指定された検索範囲を取得し、次に、入力されたユーザ情報と利用者が使っているシンクライアント端末3の情報(シンクライアント端末情報)と検索範囲とを、接続管理サーバ情報ファイル33で指定された接続管理サーバ(以下、「デフォルト接続管理サーバ」という)2の要求窓口部22に送信し、利用可能なクライアントグループのリストを要求する(ステップZ1)。デフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22は、ユーザ情報とシンクライアント端末情報と検索範囲とを受け取り、指定された検索範囲とサーバ構成情報テーブル26をもとに接続要求の転送先となる接続管理サーバ2を決定する(ステップZ2)。このとき、転送先として決定された接続管理サーバ2には、デフォルト接続管理サーバが含まれていてもよい。
【0041】
ここで、転送先サーバの決定方法について図5を用いて述べる。例として、デフォルト接続管理サーバである接続管理サーバ#1はステップZ1で、シンクライアント端末3から検索範囲として、「“範囲識別子(グループID)の値が1以下”のサーバ」という情報を受け取ったとする。この場合、ステップZ2でデフォルト接続管理サーバ#1は自サーバの中にあるサーバ構成情報テーブル26を参照し、“範囲識別子の値が1以下“であるサーバを抽出する。これにより、接続管理サーバ#1と、接続管理サーバ#2が転送先のサーバに決定される。一方、接続管理サーバ#3は範囲識別子の値が2なので転送先にならない。なお、ステップZ2では、範囲識別子のつけ方や検索範囲を決定する条件によって転送先となる接続管理サーバ2を柔軟に変えることができる。ただし、複雑な検索範囲をユーザに指定させると使い勝手が悪くなるため、ユーザに検索範囲を指定させるときのユーザインターフェースとして、「人事部用のクライアントに接続する」や「接続可能なクライアントをすべて検索する」といったユーザに分かりやすい選択肢を提供し、ユーザが簡単に検索範囲の指定が行えるようにするのが望ましい。
【0042】
次に、要求窓口部22は、ステップZ2で決定した各転送先の接続管理サーバ(この実施形態の場合、デフォルト接続管理サーバを含む)の接続先管理部21に対して、ユーザ情報とシンクライアント端末情報を転送する(ステップZ3)。ユーザ情報とシンクライアント端末情報を受け取った各接続管理サーバ2の接続先管理部21は、受け取ったユーザ情報とシンクライアント端末情報とを用いて、これらの情報と紐付けられているクライアントグループを接続先設定情報テーブル24から抽出する(ステップZ4)。
【0043】
紐付けの方法は任意であるが、例えば、クライアント・シンクライアント端末・ユーザをそれぞれグループとしてまとめ、各グループを紐付けることができる。これにより、「人事部」などある特定のグループに所属する複数人のユーザで、クライアントやシンクライアント端末を共有して使用するといった利用形態を実現しており、本発明もこのような紐付け方を想定している。
【0044】
抽出された、接続可能なクライアントグループのリストは、各接続管理サーバ2の接続先管理部21からデフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22に送信される(ステップZ5)。デフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22は、各接続管理サーバ(この実施形態の場合、デフォルト接続管理サーバを含む)から送信されたクライアントグループのリストを集計する(ステップZ6)。集計されたリストは、シンクライアント端末3の接続先制御部32に送信される(ステップZ7)。これを受けてシンクライアント端末3では、接続先制御部32がユーザに、接続可能なクライアントグループのリストの中から接続しようとするクライアントグループを選択させ、選択されたクライアントグループに関する情報をデフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22に送信する(ステップZ8)。
【0045】
デフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22は、選択されたクライアントグループに関する情報を受信し、その選択されたクライアントグループを含むリストを送信した接続管理サーバ2を特定し(ステップZ9)、選択されたクライアントグループに関する情報を、上記特定した接続管理サーバ2の接続先管理部21に転送する(ステップZ10)。情報を受け取った接続先管理部21は、クライアント状態管理テーブル25を検索することによって、そのクライアントグループに利用可能なクライアント11、すなわち、どのユーザもログオンしていないクライアントを選択する(ステップZ11)。そして接続先管理部21は、そのクライアント11の情報をデフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22に送信する(ステップZ12)。さらに、クライアントの情報を受け取ったデフォルト接続管理サーバ2の要求窓口部22は、そのクライアントの情報を接続先制御部32に送信する(ステップZ13)。
【0046】
このようにして接続すべきクライアント11に関する情報を受信した接続先制御部32は、そのシンクライアント端末3内の接続部31に対してそのクライアント11の情報を入力する(ステップZ14)。その結果、接続部31はクライアント11に接続し(ステップZ15)、そのクライアント11上の状態取得部111は、クライアント状態管理テーブル25のそのクライアント11の状態を接続先管理部21経由で更新する(ステップZ16)。
【0047】
以上のようにして接続管理サーバ2は、シンクライアント端末3に対して所望の範囲から接続可能なクライアントを検索し、当該クライアント11に接続させることができる。
【0048】
上述したように、本実施形態における接続管理サーバ2およびこれを有するシンクライアントシステムにおいては、従来は1台の接続管理サーバで行っていたシンクライアントシステムにおける接続管理を複数のサーバで行えるようになることから、より多くのユーザ、シンクライアント端末、シンクライアントサーバ、クライアントで構成される大規模なシンクライアントシステムを構築・運用できることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態における接続管理サーバ2およびこれを有するシンクライアントシステムによれば、例えばユーザが出張などで、普段使用しないシンクライアント端末3を利用してクライアント11に接続するときだけ、広い範囲で利用可能なクライアント11の検索を行うようにし、普段は必要最小限の接続管理サーバ2だけを検索するといった接続管理を行うことが可能となる。したがって、シンクライアント端末3からのクライアント11への接続要求ごとに利用可能なクライアント11を検索するサーバ(接続管理サーバ2)の範囲を適切に制限することで、各サーバの負荷(CPU負荷など)や、ネットワークトラフィックを抑えることができる。
【0050】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、複数のシンクライアント端末3と、該シンクライアント端末3から接続されてアプリケーションを実行するクライアント11を有するシンクライアントサーバ1とで構成されるシンクライアントシステムにおいて、シンクライアント端末3からシンクライアントサーバ1に対して接続を行う場合の接続管理に適用して好適である。
【符号の説明】
【0052】
1…シンクライアントサーバ、2…接続管理サーバ、3…シンクライアント端末、11…クライアント、21…接続先管理部、22…要求窓口部、26…サーバ構成情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクライアント端末からシンクライアントサーバへの接続の管理を行う接続管理サーバを複数有する接続管理システムであって、
前記接続管理サーバは、前記クライアントの状態を保持するためこれらクライアントの状態管理を行うとともに、前記シンクライアント端末からの接続要求に応じて、当該シンクライアント端末が利用可能なクライアントの検索を実行し、当該検索結果を前記シンクライアント端末に返信するものであり、
前記シンクライアント端末から前記シンクライアントサーバへの接続要求ごとに、前記クライアントの検索を実行する接続管理サーバの範囲を制限する、接続管理システム。
【請求項2】
前記接続管理サーバは、
接続管理サーバごとに当該接続管理サーバが属するグループの識別情報が格納されているサーバ構成情報テーブルと、
前記シンクライアント端末からの接続要求を受け付け、ユーザからのグループ指定に基づいて前記クライアントの検索を実行する接続管理サーバを選択し、検索要求を送信する要求窓口部と、
前記検索要求を受信し、前記シンクライアント端末に割り当て可能な担当クライアントの中から接続可能なクライアントを選択して応答する接続先管理部と、
を有する、請求項1に記載の接続管理システム。
【請求項3】
前記クライアントがグループ化されている、請求項1または2に記載の接続管理システム。
【請求項4】
複数の前記シンクライアント端末と、該シンクライアント端末から接続されてアプリケーションを実行するクライアントを有する複数のシンクライアントサーバと、請求項1から3のいずれか一項に記載の接続管理システムとを有する、シンクライアントシステム。
【請求項5】
複数のシンクライアント端末と、該シンクライアント端末から接続されてアプリケーションを実行するクライアントを有するシンクライアントサーバと、前記シンクライアント端末から前記シンクライアントサーバへの接続の管理を行う接続管理サーバと、を有するシンクライアントシステムにおける該接続管理サーバの連携方法において、
前記接続管理サーバを複数設置し、これら接続管理サーバのいずれにおいても前記シンクライアント端末からの接続要求の受付を実行させ、
さらに、前記接続管理サーバが、前記クライアントごとの状態を保持するためこれらクライアントの状態管理を行うとともに、前記シンクライアント端末からの接続要求に応じて、当該シンクライアント端末が接続可能なクライアントの検索を行い、当該検索結果を前記シンクライアント端末に返信し、
前記シンクライアント端末から前記シンクライアントサーバへの接続要求ごとに、前記クライアントの検索を実行する接続管理サーバの範囲を制限する、
シンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法。
【請求項6】
前記接続管理サーバは、前記シンクライアント端末からの接続要求の受付と、接続可能なクライアントの選択結果の応答とを引き受け、当該シンクライアント端末からの接続要求の転送先の範囲を決定するとき、各接続管理サーバの情報が格納されている構成情報テーブルを参照する、請求項5に記載のシンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法。
【請求項7】
前記接続管理サーバは、
接続可能なクライアントグループの検索と、前記シンクライアント端末が接続可能なクライアントの選択と、前記クライアントの状態管理とを行う接続先管理部を有し、
当該接続管理サーバ内及び他の接続管理サーバ内の前記接続先管理部への前記検索要求の転送とその転送先の範囲の決定、及びその転送した検索要求に対する応答の集計を行う、請求項6に記載のシンクライアントシステムにおける接続管理サーバの連携方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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