説明

接続部材の嵌合状態検査方法及び嵌合状態検査装置

【課題】本発明は、接続部材や嵌合穴内の部材に直接接触することなく、嵌合状態の良否を検査することができる接続部材の嵌合状態検査方法及び嵌合状態検査装置を提供する。
【解決手段】嵌合状態検査装置1は、被検査部材2を収容する収容部3と、その収容部3に形成されたセンサ設置部3a内に設置され、コネクタ4aや端子4b等の接続部材4の嵌合時に生じる空気振動及び発生音の少なくとも一方を検出する検出センサ5と、その検出センサ5からの出力信号に基づいて、振動及び発生音の測定、解析及び嵌合状態の良否の判定を行う計測部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタや端子等の接続部材が被検査部材の嵌合穴に嵌合された時の状態の良否を検査するために用いられる接続部材の嵌合状態検査方法及び嵌合状態検査装置に関し、特に、接続部材や嵌合穴内の部材に直接接触することなく、嵌合状態の良否を検査することができる接続部材の嵌合状態検査方法及び嵌合状態検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用電気接続箱等には、コネクタや端子等の接続部材と電気的に接続するために、接続部材が嵌合、収納される嵌合穴が形成されている。
【0003】
従来、接続部材の嵌合穴への嵌合状態が良好か否かを検査するために、種々の検査具(装置)や検査方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、台盤上にコネクタ支持部と、そのコネクタ支持部に対して進退する検査器収容部とを設け、検査器収容部の前面において、コネクタ支持部で支持されるコネクタの各端子収容室に進入する検査用電気回路の検査ピンとコネクタの電線を左右方向に振り分ける整列ピンとを設けて成るコネクタ検査具が提案されている。
【0005】
このコネクタ検査具によれば、整列ピンがコネクタの後部における引き出し電線を左右に振り分けて整列させるので、コネクタの後部から端子収容室に対する検査ピンの進入による検査を行うことができる、としている(以下、この技術を従来例1という)。
【0006】
また、特許文献2には、コネクタ支持体と検査器本体とを接離可能に設け、検査器本体において検査用電気回路と接続される複数の検査ピンをバネにより前方へ付勢して設け、検査ピンは導電接触面と導通接触面の前方へ突出する不完全挿入検知部を有すると共に、不完全挿入検知部の先端には被検査コネクタにおける片持ちの可撓支持片における被駆動面と係合可能なテーパー状の駆動面が形成されたコネクタ検査具が提案されている。検査時において不完全挿入検知部が可撓支持片の可撓変位許容空間内に進入しつつ導通接触面が可撓支持片により支持される端子金具と接触する。
【0007】
このコネクタ検査具によれば、複数の検査ピンが被検査コネクタにおける対応する端子金具の挿入状態を個別にかつ誤検出がなく確実に検知することができる、としている(以下、この技術を従来例2という)。
【0008】
さらに、嵌合穴に嵌合されているコネクタや端子等の接続部材を装着している電線を外側方向に引っ張り、接続部材が嵌合穴から抜けるか否かにより嵌合状態を検査する検査方法が知られている(以下、この技術を従来例3という)。
【特許文献1】特開平7−120524号公報
【特許文献2】特開平8−334542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来例1及び従来例2では、嵌合状態の検査時に、検査ピンを嵌合穴内(キャビティ)に挿入するため、検出ピンにより接続部材や嵌合穴内の部材を損傷するおそれがあるという課題があった。
【0010】
また、コネクタや端子等の接続部材の形状や大きさが変更されると、それに合わせて検出ピンを新たに作り直す必要があるという課題があった。特に、検出ピンのサイズはコネクタや端子等の接続部材よりも小さく形成する必要があるため、接続部材を小型化すると、より小型化された検出ピンを製造しなければならず、製造が困難になるという課題があった。
【0011】
従来例3では、電線を引っ張ることにより、接続部材や嵌合穴内の部材を損傷するおそれがあるという課題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接続部材や嵌合穴内の部材に直接接触することなく、嵌合状態の良否を検査することができる接続部材の嵌合状態検査方法及び嵌合状態検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の接続部材の嵌合状態検査方法は、被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の嵌合状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査方法において、前記接続部材の嵌合時に生じる空気振動を検出値として検出する工程と、前記検出値に基づいて、前記接続部材の嵌合状態の良否を判定する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第2の接続部材の嵌合状態検査方法は、被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の嵌合状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査方法において、前記接続部材の嵌合時に生じる発生音を検出値として検出する工程と、前記検出値に基づいて、前記接続部材の嵌合状態の良否を判定する工程とを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第1の接続部材の嵌合状態検査装置は、被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査装置において、前記被検査部材を収容する収容部と、前記収容部に設置され、前記接続部材の嵌合時に生じる空気振動を検出値として検出する検出手段と、前記検出値に基づいて、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定手段とを有することを特徴とするものである。
【0016】
前記検出手段は、前記被検査部材に接触した状態で設置されるのが好ましい。
【0017】
本発明の第2の接続部材の嵌合状態検査装置は、被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査装置において、前記被検査部材を収容する収容部と、前記収容部に設置され、前記接続部材の嵌合時に生じる発生音を検出値として検出する検出手段と、前記検出値に基づいて、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接続部材や嵌合穴内の部材に直接接触することなく、嵌合状態の良否を検査することができるので、接続部材や嵌合穴内の部材を損傷することがなくなる。
【0019】
また、接続部材の形状やサイズが変化した場合であっても、適用すべき判定基準を設定変更するだけでよいので、容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態例に係る接続部材の嵌合状態検査装置を示す斜視図、図2は、その構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態例に係る嵌合状態検査装置1は、被検査部材2(例えば、車両用電気接続箱)を収容する箱状の収容部3と、その収容部3に形成されたセンサ設置部3a内に設置され、コネクタ4aや端子4b等の接続部材4の嵌合時に生じる空気振動及び発生音の少なくとも一方を検出値として検出する検出センサ5と、その検出センサ5によって検出された検出値に基づいて、空気振動及び発生音の測定、解析及び嵌合状態の良否の判定を行う計測部6とを有する。
【0022】
検出センサ5としては、空気振動を検出する振動センサ(加速度センサ)、発生音を検出する騒音センサ(マイクロフォン)が用いられる。検出センサ5は、接続部材4の嵌合時に生じる空気振動を検出値として検出する場合、被検査部材2に接触した状態で固定して設置される。
【0023】
なお、検出センサ5は、接続部材4の嵌合時に生じる発生音を検出値として検出する場合には、必ずしも被検査部材2に接触していなくてもよい。
【0024】
計測部6は、図2に示すように、その検出センサ5によって検出された振動加速度及び発生音の音圧レベルの検出値を測定する測定部7と、測定部7によって測定された検出値に基づいて接続部材4の嵌合状態の良否の判定を行う判定部8と、判定部8により判定を行うための基準データを記憶する記憶部9とを有する。
【0025】
判定部8は、接続部材4の嵌合時に発生する空気振動及び発生音が大きい場合には、嵌合状態が良好である、すなわち確実に嵌合された状態であると判定し、空気振動及び発生音が小さい場合には、嵌合状態が不良である、すなわち半嵌合状態又は全く嵌合していない状態であると判定する。
【0026】
次に、本発明の実施形態例に係る嵌合状態検査装置1を用いた検査方法を説明する。
【0027】
まず、被検査部材2を収容部3内に収容してセットする。
【0028】
次いで、収容部3のセンサ設置部3a内に検出センサ5を設置する。
【0029】
次いで、図3(A)及び(B)に示すように、電線Wの先端に取り付けられたコネクタ4aや端子4b等の接続部材4を被検査部材2の嵌合穴2aに挿入する。
【0030】
接続部材4に形成された係止片4cは嵌合穴2aの内壁によって内側に押圧されるが、係止片4cの突起部4dが嵌合穴2a内に形成された係止溝2b内に入ると、係止片4cは弾性復帰して、接続部材4は嵌合穴2a内に係止される。その際、検出センサ5は、接続部材4が嵌合穴2a内に係止される際に生じる空気振動や「パチン」という発生音を検出する。
【0031】
検出センサ5から出力された出力信号は計測部6に入力され、計測部6は、その出力信号に基づいて、空気振動及び発生音の測定、解析及び嵌合状態の良否の判定を行う。なお、検出センサ5からの出力信号は、増幅器(図示せず)により増幅されて、計測部6に入力されるようにしてもよい。
【0032】
計測部6の判定部8は、例えば、次の方法により嵌合状態の良否を判定する。
【0033】
(1)空気振動の加速度の振動波形をそのままパターンにより判定する。
【0034】
(2)空気振動の加速度の振動波形をFFT(Fast Fourier Transform 高速フーリエ変換)してからピーク値により判定する。
【0035】
(3)空気振動の加速度の振動波形をFFTしてからパターンにより判定する。
【0036】
(4)空気振動の加速度を積分して速度に変換し、その振動波形をそのままパターンにより判定する。
【0037】
(5)空気振動の加速度を積分して速度に変換し、その振動波形をFFTしてからピーク値により判定する。
【0038】
(6)空気振動の加速度を積分して速度に変換し、その振動波形をFFTしてからパターンにより判定する。
【0039】
(7)音圧レベルのピーク値により判定する。
【0040】
(8)音圧レベルをパターンにより判定する。
【0041】
なお、一般に、周波数が上がるにつれて、加速度を感度よく測定できるので、周波数が低い場合には速度で判定し、周波数が高い場合には加速度で判定するのが好ましい。
【0042】
上記(1)、(4)、(8)の判定方法では、時間と振幅との関係を示すグラフにおいて、例えば、図4(A)に示すグラフのパターンのように振幅が大きい場合は、接続部材4の嵌合状態が良好であると判定し、図4(B)に示すグラフのパターンのように振幅が小さい場合や図4(C)に示すグラフのパターンのようにほとんど振幅がない場合は、接続部材4の嵌合状態が不良であると判定する。
【0043】
上記(2)、(5)の判定方法では、周波数とdB値との関係を示す図5(A)のグラフにおいて、ピーク値が設定範囲内であれば、接続部材4の嵌合状態が良好であると判定し、ピーク値が設定範囲外であれば、接続部材4の嵌合状態が不良であると判定する。
【0044】
上記(3)、(6)の判定方法では、図5(A)に示すグラフのパターンのように、所定の周波数帯に高いピーク値がある場合は、接続部材4の嵌合状態が良好であると判定し、図5(B)に示すグラフのパターンのように、ピーク値が低い場合や、図5(C)に示すグラフのパターンのように、ピーク値の判断がつかない場合は、接続部材4の嵌合状態が不良であると判定する。
【0045】
上記(7)の判定方法では、音圧レベルのピーク値が設定範囲内の値の場合、接続部材4の嵌合状態が良好であると判定し、音圧レベルのピーク値が設定範囲外の値の場合、接続部材4の嵌合状態が不良であると判定する。
【0046】
本発明の実施形態例によれば、接続部材4や嵌合穴2a内の部材に直接接触することなく、嵌合状態の良否を検査することができるので、接続部材4や嵌合穴2a内の部材を損傷することがなくなる。
【0047】
また、接続部材4の形状やサイズが変化した場合であっても、判定部8によって適用される判定基準を設定変更するだけでよいので、容易に対応することができる。
【0048】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば、1つの判定方法だけでなく、複数の判定方法を組み合わせて判定することにより、接続部材4の嵌合状態の良否を確実に検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、車両用電気接続箱等に形成された嵌合穴に嵌合されたコネクタや端子等の接続部材の嵌合状態が良好か否かを検査するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態例に係る接続部材の嵌合状態検査装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態例に係る接続部材の嵌合状態検査装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)は接続部材が嵌合穴に嵌合される途中の状態を示す説明図、(B)は接続部材が嵌合穴に嵌合された後の状態を示す説明図である。
【図4】(A)〜(C)は、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定方法を説明するための時間と振幅との関係を示すグラフである。
【図5】(A)〜(C)は、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定方法を説明するため周波数とdB値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1:嵌合状態検査装置
2:被検査部材
3:収容部
4:接続部材
5:検出センサ
6:計測部
7:測定部
8:判定部
9:記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の嵌合状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査方法において、
前記接続部材の嵌合時に生じる空気振動を検出値として検出する工程と、
前記検出値に基づいて、前記接続部材の嵌合状態の良否を判定する工程と、
を有することを特徴とする接続部材の嵌合状態検査方法。
【請求項2】
被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の嵌合状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査方法において、
前記接続部材の嵌合時に生じる発生音を検出値として検出する工程と、
前記検出値に基づいて、前記接続部材の嵌合状態の良否を判定する工程と、
を有することを特徴とする接続部材の嵌合状態検査方法。
【請求項3】
被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査装置において、
前記被検査部材を収容する収容部と、
前記収容部に設置され、前記接続部材の嵌合時に生じる空気振動を検出値として検出する検出手段と、
前記検出値に基づいて、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする接続部材の嵌合状態検査装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記被検査部材に接触した状態で設置されることを特徴とする請求項3に記載の接続部材の嵌合状態検査装置。
【請求項5】
被検査部材の嵌合穴に接続部材が嵌合された時の状態の良否を検査する接続部材の嵌合状態検査装置において、
前記被検査部材を収容する収容部と、
前記収容部に設置され、前記接続部材の嵌合時に生じる発生音を検出値として検出する検出手段と、
前記検出値に基づいて、接続部材の嵌合状態の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする接続部材の嵌合状態検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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