説明

接触ろ材成形体の製造方法および接触ろ材成形体

【課題】軽量で且つ通水性と水質改善効果の良好な接触ろ材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を、ノズルよりストランド状に押出し、一定の水平方向開口形状を有する枠体中に流下・堆積させるに際して、枠体をノズルに対して水平二次元方向に繰り返し相対移動させ、且つノズルより枠体への流下中にストランドを冷却し、半固体状のストランドを枠体中に流下・堆積させることにより空隙率を50〜90%に制御することを特徴とする接触ろ材成形体の製造方法。好ましくは上記方法により、溶融した熱可塑性樹脂ストランドの固化堆積物からなり、概ねX軸方向に延長するストランドからなる一水平ストランド堆積層と、概ねX軸方向と直交するY軸方向に延長するストランドからなる次の一水平ストランド堆積層とを、交互に上下方向に繰り返し積層してなる融着ストランド積層体からなることを特徴とする接触ろ材成形体が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁水の浄化に用いるに適した接触ろ材成形体の効率的な製造方法およびかくして形成された通水性と水質改善効果の優れた接触ろ材成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、生活排水あるいは工場排水等を含む汚濁水の浄化のために、物理的な接触沈澱および/または付着微生物による生物化学的な接触反応(酸化および/または還元)を促進するために、多孔質の接触ろ材が使用されている。例えば、合成樹脂製の立体網状成形体の使用が知られており(非特許文献1)、そのうち、例えば不織マット状の成形物は、熱可塑性樹脂製繊条を紡出ノズルより下方に向って紡出し、その下方に配置したコンベアを間断なく上下動させて、複数の繊条をループ状に堆積させて冷却固化することにより得られるものとされている(特許文献1および2)。このようにして形成された不織マット状の接触ろ材は一般に90%を超える空隙率を有し、通水性は良好であるが、水質改善性が乏しい。圧縮すれば空隙率を低下できるが、一旦固化したろ材を強制的に圧縮するに際しては、圧縮率の偏り、従って空隙率の偏りを生じ、被処理水(汚濁水)の偏流が起りがちである。また大型の排水処理施設に対応可能な接触ろ材を形成し難いという問題点もある。他方、空隙率を低減することにより、水質改善効果、特にCOD低減効果を増大するものとして、平均直径1〜3cmの砕石の複数をセメントにより接合して平均直径約5〜20cmの集合体とした接触ろ材が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この接触ろ材は、通水性と水質改善効果のバランスは良いが、比重が2.6以上と重く、輸送コストの上昇、耐加重性のある水処理槽が必要となり、水処理装置の施工ならびに保守にかかるコストが上昇する等の難点がある上、水質改善効果の一層の改善も望まれる。
【特許文献1】特公昭63−32907号公報
【特許文献2】特公昭63−32908号公報
【特許文献3】特公平8−17901号公報
【非特許文献1】佐藤健:立体網状接触材の性質とその応用、「用水と廃水」Vol.23,No.4.51〜61頁(1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した事情に鑑み、本発明の主要な目的は、軽量で且つ通水性と水質改善効果の良好な接触ろ材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上述の目的で研究する過程で、汚濁物質の主たる部分を占めるBOD(生物学的酸素要求量)、SS(浮遊物質)および汚泥発生率の低減を含む水質改善効果の観点では、特許文献1,2の接触ろ材のような90%を超える空隙率は望ましくないとの知見を得た。(後記実施例3〜5と比較例3−2〜5−2の比較)。この点は、特許文献3に示された知見と類似するものである。しかし、特許文献3の採用する砕石結合体は、重いという難点がある。本発明者らは、ノズルより押出した加熱溶融状態の熱可塑性樹脂ストランドを特許文献1等のように特にループ状に堆積させることにより、空隙率を上昇させるのでなく、流下過程において冷却することにより相互融着性を制御した状態で堆積させることにより、空隙率を90%以下に低減して得られた接触ろ材成形体は、良好な水質改善効果を示すことを見出した。他方、空隙率が50%を下回ると、被処理水の通水性に問題が生じ(後記比較例3−1〜5−1)、不都合である。また、大型の排水処理施設(例えば、幅5m×高さ2m×長さ10m以上)への適用を考慮した場合、複数の積み重ね等により処理槽内に配置するに適した形状のろ材単位成形体として形成して置くことが好ましいとの知見も得た。
【0005】
本発明の接触ろ材成形体の製造方法は上述の知見に基づくものであり、より詳しくは、加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を、ノズルよりストランド状に押出し、一定の水平方向開口形状を有する枠体中に流下・堆積させるに際して、枠体を流下するストランドに対して水平二次元方向に繰り返し相対移動させ、且つ流下中のストランドを冷却し、半固体状のストランドを枠体中に流下・堆積させることにより空隙率を50〜90%に制御することを特徴とするものである。なお、本発明において、「ノズル」の語は、広く、溶融樹脂ストランドを押出し可能な開口を有する固定または可動の部材を意味し、突出する部位を必要とするものではない。特に、代表的には、後述する実施例に用いられるように押出機のダイスに設けた個々の開口を包含する意味で用いられている。
【0006】
また、本発明者らは、上述の方法により得られた接触ろ材成形体のストランドの堆積状態によって、被処理水がこのろ材成形体の内部を流通する際に、汚濁物質の処理に十分な接触時間を与えるように成形体内部を均一に流通させ、且つ水頭圧を低減し得ることも見出した。すなわち、本発明の接触ろ材成形体は、このような知見に基づくものであり、より詳しくは、溶融した熱可塑性樹脂ストランドの固化堆積物からなり、概ねX軸方向に延長するストランドからなる一水平ストランド堆積層と、概ねX軸方向と直交するY軸方向に延長するストランドからなる次の一水平ストランド堆積層とを、交互に上下方向に繰り返し積層してなる融着ストランド積層体からなることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(熱可塑性樹脂)
本発明の接触ろ材成形体の製造方法の主要原料として用いられる熱可塑性樹脂としては、比重が約0.9以上の好ましくは疎水性の熱可塑性樹脂が一般に用いられる。比重が小さ過ぎると、水処理中のろ材の浮上防止に特別の配慮が必要となり好ましくない。ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等の汎用樹脂が経済性の観点で好ましく、また製品ろ材が一般的に、河川水、生活排水、工場廃水等の汚濁水の一次処理に用いられることも考慮し、廃プラスチック材料も好適に用いられる。但し過剰な可塑剤は含まないことが好ましい。
【0008】
(熱可塑性樹脂ストランドの形成)
上述の熱可塑性樹脂を押出機等により溶融混練し、ノズルよりストランド状に押出して流下させる。ノズルからの押出温度は、使用する熱可塑性樹脂の融点および結晶化温度(ここでは、それぞれに示差走査熱量計(DSC)により昇温および降温する過程での吸熱および発熱ピーク温度をいうものとする)を考慮して、一般に、融点+30〜+150℃の範囲が好適に用いられる。
【0009】
一般に形成されるろ材成形体中におけるストランド径が、通水性および水質改善効果を支配する空隙率に重要な影響を及ぼすとの知見が得られており、本発明法においては、ノズルから押出後のストランドの流下中の径の減少は本質的に予定しておらず(5〜10%程度は起り得る)、ノズル径として0.5〜10mm、更に好ましくは1〜8mm、特に好ましくは1.5〜6mmの範囲が好ましく用いられる。なお、高粘度で押出すとダイスウェル現象によりノズルよりも太い径を有するストランドを得ることも可能である。
【0010】
(冷却)
ノズルから押出された熱可塑性樹脂ストランドを冷却しつつ枠体中に流下・堆積させる、実験(例えば後記実施例1〜2および比較例1〜2)を通じて枠体中に流下させる(落し込む)ストランドの表面温度も、得られる成形体の空隙率およびストランド相互の融着程度に重要な影響を及ぼし、本発明の目的のためには、ストランドを形成する熱可塑性樹脂の結晶化温度−20℃〜室温の範囲が好ましく用いられる。
【0011】
このようなストランドの表面温度の制御のためには、表面温度を非接触温度計によって測定しつつ、冷媒供給量(必要に応じて更に冷媒供給温度)を制御することが好ましい。冷媒としては、ミスト状の水(水と空気の混合物)を用いることが好ましい。熱容量の小さい空気(気体)によっては、所望の冷却表面温度が得られず、枠体中に流下したストランド相互の過剰な融着が起り、また太いストランドの場合は、自重による変形が固化の完了前に発生し、成形体の空隙率が過剰に低下してしまう。また熱容量の大なる水のみを用いるとストランドの表面と内部の温度差が小さくなるため、ストランド相互の適度の融着を伴なう成形体中のストランドの整形が困難となるとともに、空隙率が過大となって水質改善効果の低下が起こりがちとなる。
【0012】
(ストランドと枠体の相対移動)
中間冷却された熱可塑性樹脂ストランドを枠体中に流下・堆積するに際しては、枠体を流下中のストランドに対し相対的に水平方向に繰り返し移動させる。相対移動であるから、枠体を固定し、流下中のストランドを移動することでもよいし、流下中のストランドと枠体をそれぞれ一ないし二次元に移動させることでもよい。流下中のストランドの水平方向移動は、固定したノズルを有する押出機をその架台ごと移動すること、あるいは押出機の移動に代えてまたはこれに加えて(押出機本体に対するダイスの回転を伴う)ノズルの首振り運動を行うことにより達成可能である。但し、ストランドの流下中の冷却を行う本発明法においては、流下中のストランドを水平方向に移動させるに際しては、冷却手段の連動も必要となるので、流下するストランドの水平位置を固定し、枠体を二次元方向に移動させることが、小規模なろ材成形体の製造には簡便である。他方、大型の排水処理施設への適用を考慮した場合、あるいは大規模なろ材成形体の製造を考慮した場合には、必要に応じて(少なくとも一方向に)大寸法化したろ材成形体の(半)連続的製造が望ましい。このためには、枠体の移動と、流下中のストランドの移動とを併用することが好ましく、例えば一方向(例えばX軸方向)のみに移動(往復動)するコンベア上に枠体を載せ、これと直交するY軸方向へのノズルの移動または/および首振りによる流下中のストランドの移動により、二次元相対移動を実現し、また必要に応じて複数のコンベアを並列または直列に配置して、1つの枠体へのストランドの堆積が終了した時点で、隣接するコンベア上の枠体へ切換えて、引き続き流下するストランドの堆積を継続することにより、半連続的製造を行うことができる。
【0013】
図1は、上述した本発明の接触ろ材成形体の製造方法を実施するための簡便な装置系の一例の模式図であり、押出機1の先端のノズル2から押出された加熱溶融状態の熱可塑性樹脂ストランド3は、非接触型温度計(サーモグラフィー)4で表面温度を検出され、その出力に応じて、水噴霧冷却器5から噴出制御されるミスト状の水5aの作用下に冷却される。冷却されたストランドは、移動装置6上に載置され水平方向に二次元移動する成型枠体7中に流下・堆積され、最終的に固化して、本発明の接触ろ材を形成する。
【0014】
二次元方向移動の態様には、最終的に、枠体中に流下・堆積したストランドの完全固化前の荷重印加による融着度の向上および空隙率の低減の為の、必要に応じて採用される任意工程としての、整形工程を考慮すれば、比較的任意性がある。しかし、この場合、二次元移動の任意度が高いと、荷重印加による成形に際して、中央でのストランドの過大な変形と、周辺部での過剰な空隙率の低下が起りがちである。従って、枠体のノズルに対する相対二次元方向にある程度の規則性を持たせ、成形体中での空隙率の一様な分布を通じて、ろ材を通る被処理水流の整流を図るのが好ましい。
【0015】
他方、本発明法により得られるろ材成形体の全体形状は、基本的には使用される枠体の形状により支配されるが、水処理装置内に積み重ね配置されるろ材単位としての使用を考慮すると、概ね直方体(立方体を含む趣旨とする)形状であることが好ましい。従って使用される枠体の水平方向開口形状としては矩形(正方形を含む)が好ましい。
【0016】
このような枠体の水平二次元移動、換言すれば枠体中への冷却ストランドの流下(落し込み)の方向順序の好ましい態様の例としては、例えば水平方向開口形状が矩形である枠体の矩形両辺の延長方向をそれぞれX軸、Y軸とした場合、概ねX軸方向に延長するストランドからなる一水平ストランド堆積層と、概ねX軸方向と直交するY軸方向に延長するストランドからなる次の一水平ストランド堆積層とを、交互に上下方向に繰り返し積層する形態がある。
【0017】
換言すれば、枠体の相対移動方向としては、概ねX軸方向である一ストランド堆積層形成期間と、概ねY軸方向である次の一ストランド堆積層形成期間とを交互に繰り返すことにより、枠体中にストランドの積層堆積物を形成することになる。
【0018】
この際、より厳密には、一ストランド堆積層形成期間においてX軸方向での往復動の切替時期毎にY軸方向に短い距離の移動期間を入れ、次の一ストランド層堆積期間においては、Y軸方向での往復動の切替時期毎にX軸方向に短い距離移動期間を置くことになる。更に引き続く二ストランド堆積層形成期間においては、X軸方向およびY軸方向の最初の移動方向が、上述した先の二ストランド堆積層形成期間におけるX軸およびY軸方向の最初の移動方向(例えば+X方向と+Y方向)と逆側の方向(例えば−X方向と−Y方向)となるようにして、積層ストランド延長方向ができるだけ偏らないようにすることが好ましい。この例では、結局4ストランド堆積層形成期間毎に、X軸、Y軸の移動方向(往復動の切替時期の短距離移動方向も含めて)が同一となり、これが繰り返されることにより、高さ(Z軸)方向にストランド層が堆積形成されることになる。
【0019】
接触ろ材成形体の生産性を向上するためには、複数のノズルを有するダイスを用いて複数本のストランドを同時に押出して押出量を増加させる必要性がある。この際、複数のノズルが狭い間隔で直線的に配列していると、枠体の移動方向との関係もあるが、枠体中に流下するストランドが重なるおそれが大となる。特に結晶化が不十分でストランドの剛性が不十分の場合には、重なりの影響でストランドの不規則変形が顕著に発現して不都合となる。これに対し、ストランド樹脂が適度に結晶化してある程度の剛性がある場合には、流下するストランドが既に堆積しているストランドと重なりそうになっても、隣接位置へずれて堆積するために、重なりはおおむね避けられる。このようなストランドの重なりを良好に避けるためには、例えば、複数ノズルを図2に示すように千鳥格子状に、あるいは図3に示すように円形放射状に、配列してノズル管の間隔を大きくし且つ直線的な配列を避けることが好ましい。また図2の千鳥格子配列について、図4に示すように、ノズルの直線状配列方向が、枠体の相対移動軸X軸およびY軸のいずれともずれていること、換言すれば、X軸またはY軸との間に45°未満、好ましくは5〜30°程度の傾き角θを設定することが好ましい。
【0020】
(整形工程)
上述のようにして枠体中にストランドを流下・堆積させたストランド積層物を、固化後に枠体から取り出せば、本発明によるろ材成形体が得られる。しかし、全体として、より枠体形状と整合し、且つ空隙率が均一な成形体を得るには、枠体中のストランド積層物が完全に固化する前に、枠体開口に嵌挿する形状の上蓋体を介してストランド積層物に10〜80kg/m程度の荷重を印加してストランド間の密着を強化し、空隙率を均一に低減することが望ましい。
【0021】
(接触ろ材)
上述の工程を経た枠体中のストランド積層体を固化後に枠体から取出すことにより本発明によるろ材成形体が得られる。図1に示す例においては、枠体7は底板を有さず、上面が樹脂からの離型性の良い(例えばステンレス・スチール)からなる移動装置6の上面板上に載置されているため、枠体7からのろ材成形体の取出しは容易である。
【0022】
このようにして形成される本発明のろ材成形体の好ましい全体形状は概ね直方体形状を有するものであるが、その一または二側面(例えば対向するY−Zの一または二面)を±20°以内の範囲で垂直から傾斜させ、隣接する二成形体間で上方が狭まる成形体と上方が広がる成形体を交互に配置して水処理装置中における成形体の相互配置を安定化することも好ましい。
【0023】
本発明の接触ろ材の他の好ましい形態的特徴を挙げると、構成ストランド径(等面積の円相当径)d(mm)が上述したように0.5〜10mm、更に好ましくは1〜8mm、特に好ましくは、1.5〜6mm;空隙率ε(%)が50〜90%、好ましくは70〜85%、更に好ましくは75〜80%;構成ストランド長さL(m)が2m以上、特に10m以上;比表面積S(m/m)が50〜5000m/m;成形体の全体容積V(m)が10−2〜10等である。また、本発明法により得られたろ材成形体は、そのままの形状で水処理装置中に組合せ配置してろ材集合体を形成することが好ましいが、必要に応じ裁断することにより寸法調整することは可能である。
【0024】
なお上記各寸法間には、成形体重量および構成樹脂密度より求めた空隙率ε(%)を介して、以下の関係が成立し、以下の実施例においても評価特性の計算に用いた。
【0025】
<空隙率>
空隙率ε(%)=(V−T/ρ)/V×100
ここでV:成形体の全体容積(m)、T:成形体重量(トン)
ρ:ストランド(構成樹脂)の密度(トン/m)。
【0026】
<比表面積>
成形体中のストランド単独の容積(V=T/ρ)を求め、これをストランド径(=dmm)から求めたその断面積(=((d/1000)×π×1/4)で割って、ストランド長さを求め、更に以下の式にしたがって、比表面積を求める:
ストランド長さ:L(m)=V/((d/1000)×π×1/4)
ストランドの全表面積:S(m)=π×(d/1000)×L
ストランドの比表面積:s(m/m)=S/V。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0028】
(実施例1)
下記性状を示す電線被覆用廃材ポリエチレンを熱可塑性樹脂として、図1に示す様な装置系を用いてろ材成形体を製造した。
【0029】
・MFR値(JIS−K7210に準拠):5.8g/分(測定温度:190℃、荷重:10kg・f)、
・融点:110℃、結晶化温度:97℃(昇温および降温速度:10℃/分)、
・密度:0.92g/cm
【0030】
単軸押出機1で上記ポリエチレンを溶融混練し、固定ダイス1a中に設けた図2に示す千鳥格子状配列で計21(隣接するノズル間の距離は縦、横とも約15mm)のノズル2(温度180℃、径3.3mmφ)から押出されたストランド3を流下させながら、非接触型表面温度計4(NEC三栄(株)製「TH6200」)により表面温度を計測しながら噴霧量の調整可能な水噴霧冷却器5より水を噴霧して冷却して、ストランド表面温度を43℃に制御しつつ、サーボモータを備えた水平二軸方向移動装置6上、且つ枠体の上端までの距離がノズル下120cmの位置になるように載置した寸法50×50/25cm(X/Y/Z)の成型枠体7を3m/分の一定速度でX軸およびY軸方向に繰り返し移動させつつ、ストランドを流下させ、25cmの高さまで堆積させた。この際の、枠体の水平二次元移動方向のより詳細は、上記本文にて説明したように、枠体中へのストランド優先配列方向がY→X→−Y→−Xと変化する4ストランド堆積層形成期間を1サイクルとする規則配列構造のストランド積層体の形成法において、Yおよび−Y優先配列時のY軸移動距離を452mm(その間のX軸移動距離を84mm)、Xおよび−Y優先配列時のX軸移動距離を423mm(その間のY軸移動距離56mm)として、規則配列ストランド堆積体を得た。その後、このストランド堆積体を、10kg(/50×50cm)の荷重がかかる上蓋を載せた状態で固化させることにより、寸法50×50×25cmの接触ろ材成形体を形成した。該成形体は、実質的に21本のストランドからなり、その1本のストランドの長さは、成形体の全重量、ストランド径、ストランドの本数(21本)および密度から、約65mと計算された。
【0031】
(実施例2、比較例1および2)
水の噴霧量を調節することにより、枠体に流下するストランド表面温度を55℃(実施例2)、98℃(比較例1)、および22℃(比較例2)に変える以外は実施例1と同様にして、接触ろ材成形体を得た。
【0032】
上記実施例および比較例で得られた接触ろ材の空隙率測定値を含む概要をまとめて次表1に記す。
【表1】

【0033】
(実施例3)
実施例1において、ノズル2を、径が1mmφのもの44個に変更し、枠体中へのストランド優先配列方向がY→X→−Y→−Xと変化する4ストランド堆積層形成期間を1サイクルとする規則配列構造のストランド積層体の形成法において、Yおよび−Y優先配列時のY軸移動距離を449mm(その間のX軸移動距離を86mm)、Xおよび−X優先配列時のX軸移動距離を429mm(その間のY軸移動距離56mm)とする規則配列ストランド積層体形成態様に変更し、枠体7に流下するストランド表面温度を42℃とする以外は実施例1と同様にして、直方体形状のろ材成形体を得た。
【0034】
(比較例3−1および3−2)
枠体7に流下するストランド表面温度を83℃(比較例3−1)および21℃(比較例3−2)と変更する以外は、実施例3と同様にして直方体形状のろ材成形体を得た。
【0035】
(実施例4)
実施例1において、枠体7に流下するストランド表面温度を40℃と変更する以外は実施例1と同様にして、直方体形状のろ材成形体を得た。
【0036】
(比較例4−1および4−2)
枠体7に流下するストランド表面温度を80℃(比較例4−1)および20℃(比較例4−2)と変更する以外は、実施例4と同様にして直方体形状のろ材成形体を得た。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、ノズル2を径5.5mmφのもの8個に変更し、Yおよび−Y優先配列時のY軸移動距離を455mm(その間のX軸移動距離を87mm)、Xおよび−X優先配列時のX軸移動距離を435mm(その間のY軸移動距離57mm)とする規則配列ストランド積層体形成態様に変更する以外は実施例1と同様にして、直方体形状のろ材成形体を得た。
【0038】
(比較例5−1および5−2)
枠体7に流下するストランド表面温度を85℃(比較例5−1)および18℃(比較例5−2)と変更する以外は、実施例5と同様にして直方体形状のろ材成形体を得た。
【0039】
(比較例6)
特許文献3の開示に従う市販砕石球状結合体(アクアテック(株)製「ジャリッコ」;嵩密度約1000kg/m、平均寸法約100mm、空隙率約60%、比表面積:62m/m)を用意した。
【0040】
<<水処理性能試験>>
上記実施例および比較例で得られた接触ろ材成形体を、それぞれ長さ2000mm、幅105mm、高さ250mm(有効深さ185mm)、容積39Lの小型実験槽に充填し(比較例6以外のものについてはX−Y面が被処理水流入面となるように配置)、下水処理場の最初沈澱水であるBOD=160mg/L、SS=90mg/Lの原水を長さ方向に沿って75mL/分の速度で流入させ(滞留時間:8.6時間)、実験槽の底部に実験層の長さ方向に等間隔で長さ方向と直交するように配置した散気管20本(それぞれ孔径0.8mmφの孔を40個/本の割合で設けてある)から25L/分の割合で空気を流しながら(ならし期間14日)+126日の試験期間、水処理を行い、出口水を20Lの分離槽に受け、上澄水(処理水)を排出した。
【0041】
途中、1回/週の割合で実験槽の出口水質を測定し、その平均値としてBOD除去率、SS除去率を求めた。
【0042】
また2週間に1回の頻度で沈降分離槽に溜まった汚泥を均一に攪拌し、沈降分離槽の容量とSS濃度で汚泥量を計量し、以下の式で汚泥発生率を求めた。
【0043】
汚泥発生率(%)=(汚泥累積量+処理水SS累積量)/原水SS累積量×100
汚泥累積量(g):沈降分離槽に溜まった汚泥量の累積値
処理水SS累積量(g):沈降分離槽の最終処理水で流出したSS量の累積値。
【0044】
別途、装置運転終期における実験槽の入口・出口水頭差を測定して、ろ材通水性を評価した。
【0045】
上記実施例、比較例の各ろ材成形体の概要および水処理性能評価結果をまとめて次表2に示す。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
上述し、また上記表1および表2の結果からも理解されるように、本発明によれば、軽量で且つ通水性と水質改善効果の良好な接触ろ材およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による接触ろ材成形体の製造方法を実施するのに適した装置系の模式配置図。
【図2】本発明による接触ろ材成形体の製造方法の実施例1に用いたノズルの千鳥格子状配列を示す平面図。
【図3】ノズル配列の別例として、円形放射状配列を示す平面図。
【図4】図2の千鳥格子上配列ノズルの配列方向と枠体の優先移動動方向X軸およびY軸との相対配置の一例を説明するための平面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を、ノズルよりストランド状に押出し、一定の水平方向開口形状を有する枠体中に流下・堆積させるに際して、枠体を流下するストランドに対して水平二次元方向に繰り返し相対移動させ、且つ流下中のストランドを冷却し、半固体状のストランドを枠体中に流下・堆積させることにより空隙率を50〜90%に制御することを特徴とする接触ろ材成形体の製造方法。
【請求項2】
枠体の水平開口形状が概ね矩形である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
流下するストランドに対する枠体の水平二次元相対移動方向が、互いに直交するX−Y二軸方向である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
枠体の相対移動方向が、概ねX軸方向である一ストランド堆積層形成期間と、概ねY軸方向である次の一ストランド堆積層形成期間とを交互に繰り返すことにより、枠体中にストランドの積層堆積物を形成する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
おおむね千鳥格子状または円形放射状に配列された複数のノズルが用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ノズルから流下するストランドに対してミスト状の水流を作用させることによりストランドを冷却する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
枠体中に流下・堆積させたストランド堆積物に対して押圧力を作用させることによりストランド間の密着を強化する工程を有する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
溶融した熱可塑性樹脂ストランドの固化堆積物からなり、概ねX軸方向に延長するストランドからなる一水平ストランド堆積層と、概ねX軸方向と直交するY軸方向に延長するストランドからなる次の一水平ストランド堆積層とを、交互に上下方向に繰り返し積層してなる融着ストランド積層体からなることを特徴とする接触ろ材成形体。
【請求項9】
全体形状が概ね直方体状である請求項7に記載の接触ろ材成形体。
【請求項10】
ストランド直径が0.5〜10mmであり、空隙率が50〜90%である請求項8または9に記載の接触ろ材成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226333(P2009−226333A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76304(P2008−76304)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000166708)株式会社クレハエンジニアリング (17)
【Fターム(参考)】