接触センサおよびシース進出センサ
電極カテーテル(14)の1つまたは複数の電極(20、22a)の局所インピーダンスを確定することができるシステムおよび方法を提供する。こうした局所インピーダンスを利用して、電極カテーテル(14)の案内イントロデューサのシース(18)に対する相対位置を特定することができる。別の構成では、カテーテル電極の局所インピーダンスを利用してカテーテル電極を較正し、接触検知の精度を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルと、組織マッピング、案内および/または組織アブレーションのために電極カテーテルを使用する方法と、に関する。特に、本発明の電極カテーテルは、挿入シースに対する電極位置を評価し、かつ/または電極・組織接触を評価することができる。
【背景技術】
【0002】
長年、カテーテルは医療処置に使用されてきた。医療処置に対してカテーテルを用いることにより、それが本来はより侵襲性の高い処置なしにはアクセスできない身体内の所定の位置に配置されている間に、検査、診断および治療を行うことができる。これら処置の間、カテーテルは通常、身体の表面近くの血管内に挿入され、検査、診断および治療のために身体内の所定の位置まで案内される。たとえば、カテーテルを使用して、たとえば組織アブレーションのために、人体内の選択された位置に電気刺激を伝達することができる。さらに、検出電極を備えたカテーテルを使用することにより、たとえば電気マッピングのために、人体におけるさまざまな形態の電気的活動を監視することができる。
【0003】
カテーテルは、人間の心臓に関与する医療処置への使用が増加している。通常、カテーテルは、患者の脚、首または腕の動脈または静脈に挿入され、時にガイドワイヤまたはイントロデューサを用いて、カテーテルの遠位先端が心臓の医療処置に対する所望の位置に達するまで、血管に挿通される。正常な心臓では、心臓の筋肉(心筋)の収縮および弛緩は、電気化学信号が逐次心筋内を通過する際に整然と発生する。
【0004】
心臓で異常な律動が発生する場合があり、これは一般に不整脈と呼ばれる。こうした不整脈の原因は、一般に、正常な伝導経路をバイパスする1つまたは複数の異常な伝導経路の存在であると考えられている。これら経路は、通常、心房と心室とを連結する線維組織に位置している。
【0005】
あるタイプの心臓不整脈の治療に対し益々一般的になっている医療処置は、カテーテルアブレーションである。従来のカテーテルアブレーション処置の間、エネルギー源は、心臓組織(たとえば、異常な伝導経路に関連する)に接触するように配置されて、組織を加熱し、電気的に不活性であるかまたは非収縮性である永久的な傷痕または損傷を形成する。損傷は、部分的にまたは完全に迷走電気信号を遮断して不整脈を減少させるかまたは除去する。
【0006】
心臓内の所定位置のアブレーションには、心臓内でアブレーションカテーテルを正確に配置することが必要である。アブレーションカテーテルの正確な位置決めは、心臓の生理機能のため、特に心臓はアブレーション処置の間鼓動し続けるため、特に困難である。一般に、カテーテルの配置の選択は、電気生理学的案内とマッピング処置中に生成され得るコンピュータ生成マップ/モデルとの組合せによって確定される。したがって、心臓のいかなるマップまたはモデルも実用できる程度に正確であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、既存のアブレーション電極によっては、それらを用いて所定位置に損傷を形成しようと試みる場合、いくつかの難題が生じる可能性がある。既存のアブレーション電極で発生するこうした難題の1つは、適当な組織接触および/または電気的結合をいかに確実にするかである。電極・組織接触は、蛍光透視法等の従来の技法を用いる場合、容易に確定されない。それどころか、医師は、電極カテーテルを使用して自身の経験に基づいて電極・組織接触を確定する。こうした経験は、時間をかけることによってのみ得られるものであり、医師が定期的に電極カテーテルを使用しなければすぐに失われる可能性がある。さらに、電極と標的組織との接触を直接測定しようとする試みは、周囲の媒体の局所変化の影響を受け易い。こうした変化によりこうした測定が歪められる可能性があり、それによって誤った電極・組織接触が示されることになる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、カテーテル電極を包囲する環境により、印加される電気信号に応答する電極の電気的特性が変化することが認識されている。たとえば、限られた/小さい容積の構造(たとえばシースまたは血管)内にある電極と、より容積の大きい構造にある同じ電極と、の間で、インピーダンスが異なる可能性があり、あるいはさもなければ、インピーダンスまたはインピーダンス成分に関連する値が異なる可能性がある。すなわち、容積の小さい構造の周囲流体は、それより大きい容積の周囲流体の電気的特性とは異なる電気的特性(たとえば流量等に基づく)を有する可能性がある。これら電気的特性が異なることにより、電極流体界面の局所的な電気的応答が変化する。したがって、こうした局所応答の変化を利用して、たとえばマッピング中の検知の精度を向上させ、かつ/または組織接触検知の精度を向上させるために利用することができる有用な情報を提供することができる、ということが理解されている。
【0009】
一構成では、カテーテルの局所応答を利用して、案内イントロデューサのシースに対する電極カテーテルの相対位置を特定することができる。別の構成では、カテーテル電極の局所応答を利用して、接触検知の精度を向上させるようにカテーテル電極を較正することができる。
【0010】
一態様によれば、カテーテルの電極が狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過する時を検知するシステムおよび方法が提供される。たとえば、カテーテルがイントロデューサのシースに入るかつ/またはイントロデューサから出る時、あるいはカテーテルが血管に入るかまたは血管から出る時である。最初に、イントロデューサを心臓等の対象となる体内組織位置まで案内してもよい。イントロデューサは、対象となる組織領域に内部チャネルまたはルーメンを提供することができる。したがって、カテーテルを、組織領域にアクセスするために内部チャネル内に配置することができる。カテーテルをイントロデューサに対して移動させるとともに、電気信号をカテーテルに関連する1つまたは複数の電極に提供することができる。したがって、これら1つまたは複数の電極の応答を監視することにより、応答の変化を特定することができ、それは、電極が狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を少なくとも部分的に通過することを示す。したがって、応答の変化を特定する際、この応答の変化を示す出力を生成することができる。
【0011】
応答の変化を特定することは、電気信号に応答する電極のインピーダンスを測定することを含んでもよい。こうした構成では、インピーダンスを、その変化を特定するように連続した時間で測定することができる。たとえば、電極が第1位置にある時に、その初期インピーダンスを測定することができ、それは、イントロデューサの内部チャネル内にあるか、あるいは流体プールまたは血管プール内で体内組織領域の壁から離れて配置されていることが既知であり得る。したがって、電極の位置が変化すると、後続するインピーダンス測定値を得ることができる。これらインピーダンス測定値を比較して、初期インピーダンスと後続するインピーダンスとの間の変化を特定することができる。同様に、初期インピーダンスと後続するインピーダンスとの間の変化が、格納された情報に基づいていてもよい所定閾値を上回る場合、使用者に対し、その変化を示す出力を提供することができる。さらに、インピーダンスの変化を利用して、周囲媒体(たとえば血液)の局所変化を特定することができ、それにより後続する組織接触に対して電極を較正することができる。
【0012】
本態様のさらなる構成では、カテーテルは少なくとも第1電極および第2電極を有してもよい。たとえば、カテーテルは、先端電極と1つまたは複数のリング電極とを有してもよい。こうした構成では、先端電極および1つまたは複数のリング電極のインピーダンスを監視することができる。たとえばカテーテルを移動させることによって、電極のうちの一方の周囲環境が変化した場合、電極のうちの一方の応答の変化が、他方の電極が対応して変化することなく発生し得る。したがって、相対的な応答におけるこうした変化を利用して、電極のうちの一方が、イントロデューサに入るかまたはそこから出るか、あるいは静脈または動脈等の体内構造に入るかまたはそこから出るのを特定することができる。
【0013】
別の態様によれば、電極カテーテルを較正するとともに、電極と組織との間の接触を評価するために使用されるシステムおよび方法が提供される。本システム/方法は、カテーテルを体内組織位置まで案内することを含み、カテーテルは少なくとも第1電極および第2電極を有する。第1電極および第2電極には、それぞれ第1電気信号および第2電気信号が提供され得る。したがって、第1電極および第2電極の相対的な応答を特定することができる。さらに、相対的な応答の変化に基づいて、出力を生成することができる。たとえば、両電極が最初に血液プール(すなわち心腔)内にあり、電極の一方が腔の壁に接触する場合、接触している電極のインピーダンスが、接触していない電極に対して変化する可能性がある。対照的に、両電極がより小さい周囲領域(たとえば静脈または動脈)内に入る場合、各電極はインピーダンスが変化する可能性があり、相対的なインピーダンスは実質的に変化しないままである可能性がある。
【0014】
本システムおよび方法は、周波数および位相が等しい第1信号および第2信号を提供することを含んでもよく、第1信号および第2信号のうちの一方の振幅は調整可能である。信号のうちの一方の振幅をこのように個々に調整することにより、第1電極および第2電極のインピーダンスを整合させることができる。これに関して、心周期中に血液の抵抗率が変化する可能性があることに留意されたい。すなわち、血液の流れにより、抵抗率が変化する可能性があり、したがって、測定インピーダンスが数パーセント以上変化する可能性がある。したがって、局所媒体の電気的特性の動的変化を考慮するために、電極のインピーダンスを整合させることが望ましい場合がある。言い換えれば、電極のインピーダンスを整合させることにより、電極カテーテルを局所状態に対して較正することができる。こうした較正には、最初に、第1電極および第2電極を血液プール内の(たとえば心腔内の壁から離れた)位置に配置することが含まれてもよい。そして、第1センサおよび第2センサのインピーダンスを整合させることができる。したがって、第1電極と第2電極との間でコモンモードノイズおよびインピーダンスを取り消すことができ、それにより局所変化を考慮することができる。カテーテルを、電極のうちの一方が表面に接触するまで移動させることができる。そして、実質的に局所変化の影響を受けない、接触のインピーダンス測定値を得ることができる。
【0015】
本発明の上述した、および他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことにより、かつ添付図面を検討することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】マッピング処置および/または組織アブレーション処置のために患者体内組織にアクセスするように実施することができる、例示的なカテーテルシステムの概略図である。
【図1a】図1の患者の心臓の詳細な図であり、患者の心臓内に移動された後の電極カテーテルを示す。
【図2】図1のシステムで利用することができる例示的なカテーテルである。
【図3A】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図3B】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図3C】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図4】図1の例示的なカテーテルシステムをより詳細に示す機能ブロック図である。
【図5】インピーダンス確定回路の機能図である。
【図6】カテーテル電極の局所インピーダンスを評価するために使用することができるプロトコルの一実施形態を示す。
【図7】接触検知および組織検知のためのインピーダンス測定を示す例示的なブロック図である。
【図7a】図7のブロック図の等価回路である。
【図8a】較正のために血液プール内に組織と接触せずに配置された電極カテーテルを示す。
【図8b】較正の後に患者組織と接触している電極カテーテルを示す。
【図9】第1電極および第2電極のシングルエンド測定用の測定回路を示す。
【図10】局所変化に対し電極カテーテルを較正するために使用することができるプロトコルの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、患者体内組織を評価しマッピングするように実施することができる、例示的な電極カテーテルシステム10の概略図である。さらに、本システムは、患者12に対する組織アブレーション処置の実行を支援するために電極・組織接触を評価するように動作する。カテーテルシステム10は、シース8を有する案内イントロデューサを有してもよく、それを患者12内に挿入することができる。シース8は、カテーテル14を導入するためのルーメンを提供することができ、カテーテル14は、たとえば患者の心臓16の内側にアブレーションによる損傷を形成するために、シース8の遠位挿入端を越えて配置されることが可能である。例示的なアブレーション処置中、使用者(たとえば患者の医師または技師)は、案内イントロデューサのシースを、たとえば脚(図1に示すように)または患者の首を介して患者の血管18のうちの1つに挿入することができる。使用者は、リアルタイム蛍光透視撮像装置(図示せず)によって案内されて、シース8を患者の心臓16内に(図1aにより詳細に示すように)移動させる。案内イントロデューサのシース8が患者の心臓16に達すると、電極カテーテル14をシース8のルーメン内に伸長させることができ、それにより、電極カテーテル14を、たとえば組織マッピングおよび/または組織アブレーションを行うために心臓内の所望の位置まで案内することができる。組織マッピング処置では、出力ディスプレイ11において心臓のモデルを生成することができ、それを、たとえばアブレーション処置を行うために後続するカテーテル案内に利用することができる。マッピング処置および/または後続する処置の間に、1つまたは複数の追加のカテーテル14aを利用することも可能である。
【0018】
図2は、案内イントロデューサのシース8の遠位端部分から選択的に伸長させることができる電極カテーテル14を備えた、電極カテーテルシステム36の一実施形態を示す。本明細書で使用しかつ当該技術分野において一般に使用されるように、「遠位」という用語は、概して、アブレーションカテーテル14の挿入端に向かって(すなわち、カテーテルの使用時に心臓または他の標的組織に向かって)位置している、先端電極20等のカテーテルシステムの構成要素を指すように用いている。対照的に、「近位」という用語は、概して、カテーテルの非挿入端に向かって(すなわち、カテーテルの使用時に心臓または他の対象組織から離れる方向にすなわちその反対側に)位置するかまたは概して向けられている、カテーテルの構成要素または一部を指すように用いている。
【0019】
シース8は、少なくとも1つのルーメンまたは長手方向チャネルを画定する管状構造である。シース8は、カテーテル14とともに使用されて、カテーテル14を標的体内組織領域まで導入し案内する。しかしながら、行われている特定の処置に応じて、カテーテル14を単独で使用してもよく、または他の案内し導入するタイプの装置とともに使用してもよい。図2に示すように、カテーテルは、コネクタから出て、シース8を通り、シース8の遠位端においてルーメンから出るように延在する管状本体またはシャフト6を有している。一実施態様では、シース8およびシャフト6は、可撓性弾性材料から作製される。カテーテルのシースおよび構成要素は、ポリマー等、人間に使用するのに好適な材料から製作されることが好ましい。好適なポリマーには、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンおよびフッ化エチレンプロピレンポリマー等、当該技術分野において既知であるものがある。図2の特定のアブレーションシステム構成では、シース8は、シースが適当な位置に事前配置されると、内部ルーメン内のアブレーションカテーテルを受け入れ心臓内の適当な位置まで案内するように構成されている。
【0020】
例示的な実施形態の電極カテーテル14は、先端電極20と複数のリング電極22a〜22n(まとめて電極22と呼ぶ)とを有している。複数のリング電極を利用しているように示すが、他の電極を同様に利用してもよい、ということが留意されよう。たとえば、スポット電極またはセグメントリング電極を利用してもよい。これら電極20、22を、心筋24(心臓の壁の筋肉組織)を電気的にマッピングするように実施してもよい。これに関して、電極からの情報を利用して、行われている特定の処置に応じて、心腔形状の現実的なモデルかまたは他の体内組織のモデルを作成することができる。上述したように、こうしたモデルを、たとえばマッピング後に行われるアブレーション処置中に、カテーテル14の案内に使用するために、ユーザ出力11(図1参照)に表示することができる。
【0021】
モデルを作成するために、St.Jude MedicalのNavX(商標)ナビゲーションおよび視覚化システム等の3D位置特定システムを使用することができる。こうしたシステムでは、身体の1つまたは複数の位置に、2つ以上の患者体外電極パッチ46(1つのみ示す)があてがわれる。パッチ間に電気信号が送信され、心臓内の1つまたは複数のカテーテルの1つまたは複数の電極が信号を検知する。システム10は、カテーテルから電気データを収集し、この情報を使用して、それらの移動を追跡またはナビゲートし、腔の3次元(3D)モデルを構成する。さらに、医師は、データ収集中にカテーテル14を心腔にわたって掃引することにより、構造の外形をたどり、3Dモデルを生成するコンピュータシステムに信号を中継することができる。そして、結果としてのモデルを利用して、たとえば、カテーテル14を、治療が必要な心臓内の1つまたは複数の位置まで案内することができる。
【0022】
こうしたシステムにより、内部処置の調査および/または実行時に詳細な内部モデルを作成することができる。すなわち、本システムは、実質的にリアルタイムのモデルを生成するように動作する。こうしたシステムは、内部処置が行われる時より前に作成されるモデルに頼る撮像技術のあり得る問題を回避する。理解され得るように、こうした事前に作成されるモデルは、姿勢および/または流体荷重の変化等、モデル化された組織に対する後の変化を反映しない。
【0023】
心臓等の体内組織構造の詳細なモデルを提供するが、1つまたは複数の体外パッチから対象となる組織内に配置される電極に電気信号を送信するシステムをモデル化することには欠点があり得る。たとえば、送信された電気信号を受信するために利用されるカテーテル電極(たとえば先端電極20)が、サンプリングプロセス中にシース8内に残っている場合、収集されたデータが歪められる可能性がある。さらに、こうした歪められたデータは、結果としてのモデルの表示に、もっともらしいが間違ったモデルおよび/または電極およびカテーテルの間違った位置をもたらす可能性がある。したがって、シースに対するカテーテルの電極の位置の指標が有用である。たとえば、電極がシースに対して限界進出位置にあるという指示が有用であり得る。
【0024】
カテーテルをいかに案内するかを確定するために、カテーテルがシースをどのくらい越えて伸長しているかを知ることもまた有用であり得る。理解されるように、カテーテルを、カテーテルの端部を撓曲/偏向させるガイドワイヤによって案内することができる。カテーテルシャフトの撓み性(compliance)と、シースを越えて伸長する部分の長さとに基づいて、カテーテルが撓曲または偏向する際の支点を確定することができる。したがって、カテーテルの長さを知ることは、対象となる組織領域にいかに最適に近づくかを確定するのに役立つことができる。さらに、電極(たとえば先端電極20および/または1つまたは複数のリング電極22)がシースからちょうど進出する時を知ることにより、シース進出位置をナビゲーションモデル内に記録することができる。
【0025】
理解され得るように、シース8および/またはカテーテル14のシャフト6の近位部分に、これら部材の遠位先端の相対位置を示すことができるマーキングを設けることができる。しかしながら、シース8および/またはカテーテルシャフト6が、これら部材を対象となる組織領域に送り込むことによって撓曲しかつ/または圧縮することにより、こうしたマーキングがこれら部材の遠位端の相対位置の正確な指示を提供しない可能性がある。したがって、シース8の遠位端に対するカテーテル14の遠位端の独立した指標が望ましい。
【0026】
こうした指示を、シース8およびカテーテル14の遠位端に相互接続される専用センサによって提供することができる。しかしながら、案内されるイントロデューサおよびカテーテルの空間が限られているため、こうした専用センサは最適な解決法を提供することができない。本明細書に、カテーテル14の1つまたは複数の既存の電極を利用して、カテーテル14の遠位端のシース8に対する相対位置の指示を提供することができるシステムおよび方法を提供する。こうした指示を、シース内を通り少なくとも1つの電極を含むいかなるカテーテルに対しても提供することができる。
【0027】
一般に、カテーテル電極を包囲する環境により、印加される電気信号に応答する電極のインピーダンスが変化することが理解されている。たとえば、電極が限られた/小さい容積の構造(たとえばシースまたは血管)内にある場合の方が、より容積の大きい構造にある時に比べて、インピーダンスが高くなる可能性がある。すなわち、容積の小さい構造では、心腔等のより大きい構造より、周囲の流体(たとえば血液)が少ない。言い換えれば、周囲の血液の局所抵抗量および/または静電容量は、容積によって変化し、それにより電極流体界面の局所インピーダンスが変化する。
【0028】
したがって、カテーテル電極の局所インピーダンスが、シース8に対するその相対位置に基づいて大幅に変化することが理解されている。たとえば、図3A、図3Bおよび図3Cは、カテーテル14の遠位端のシース8に対する3つの相対位置を示している。図3Aに示すように、カテーテル14は完全にシース8内に入っている。図3Bでは、カテーテル14の先端表面がシース8の遠位端を越えて伸長している。図示するように、カテーテル14のこの先端表面は、カテーテル14に接続されている先端電極20によって形成されている。図3Cでは、カテーテル14は、シース8からさらに伸長しており、先端電極20は完全にシースを越えて配置されている。注目すべきことに、図3Cはまた、カテーテル14の長さの一部に沿って配置された複数のリング電極22も示している。
【0029】
上述したように、先端電極20(または他の任意の電極)の局所インピーダンスは、その周囲の状況に基づいて著しく変化する。たとえば、先端電極20は、図3Aに示すようにシース内に完全に入っている場合、たとえば、局所インピーダンスが300オームである可能性がある。図3Bに示すように部分的に露出している場合、先端電極20は局所インピーダンスが100オームである可能性がある。最後に、図3Cに示すようにシース8から完全に露出している場合、先端電極20は、局所インピーダンスが70オームである可能性がある。これに関して、先端電極20がシース8内に入っている状態と先端電極20が完全にシース8から進出している状態とでは、インピーダンス差が4:1を超える。したがって、先端電極20のインピーダンスを監視することにより、シース8の遠位端に対するカテーテル14の遠位端の位置の指示を提供することができる。さらに、こうした指示を、カテーテル14の既存の構成部品(たとえば電極)を利用して提供することができる。
【0030】
図4は、シース8の遠位端に対する電極カテーテル14の位置を評価することが実施できるように、カテーテルシステム10を詳細に示す、高レベル機能ブロック図である。従来の組織アブレーションシステムに特有な構成要素のいくつかを、簡潔にする目的で、図1および図4では簡略化した形態で示しており、および/またはまったく示していない、ということに留意されたい。しかしながら、こうした構成要素を、カテーテルシステム10の一部としてまたはそれとともに使用されるように設けることも可能である。たとえば、電極カテーテル14は、いくつかの例を挙げると、ハンドル部、蛍光透視撮像装置および/または他のさまざまな制御部を有することができる。こうした構成要素は、医療機器の技術分野ではよく理解されており、したがって、本明細書では、本発明が完全に理解されるためにはそれ以上の説明は不要である。
【0031】
例示的なカテーテルシステム10は、たとえばAC電流発生器および/または高周波(RF)発生器等の発生器40を有することができ、それは、本実施形態では、電極位置測定、電極接触測定および/またはアブレーションの目的で、(ワイヤ44によって示すように)カテーテル14の電極に電気信号を提供する。先端電極20には、測定回路42が電気的に接続されている。電極カテーテル14を、たとえば患者の腕または胸に取り付けられた(図1に示すように)接地パッチ46を介して電気的に接地することも可能である。
【0032】
発生器40を、カテーテル14の先端電極20に電気エネルギーを放出するように動作させることができる。一般に、この測定には1KHzから500KHzまでの周波数が好適である。測定回路は、アブレーション発生器システムの一部であってもよく、一方で、インピーダンス測定値を、たとえば10マイクロアンペア等の低レベル信号で生成してもよい。印加される信号に応答する電極の結果としてのインピーダンスを、測定回路24を使用して連続して測定しまたは監視することができる。一実施形態では、測定回路42は、従来から入手可能な抵抗・キャパシタンス・インダクタンス(RCL)であってもよい。さらに他の測定回路42を実装してもよく、本発明は、いかなる特定のタイプまたは構成の測定回路と使用するようにも限定されない。いずれの場合も、インピーダンス測定値を使用して、シース8に関連する先端電極20(または他の電極)の位置の指示を確定することができる。そして、この位置を、リアルタイムに使用者に伝達して、たとえばマッピング処置が続けられるように電極が露出しているか否かを示すことができる。
【0033】
例示的な実施形態では、測定されたインピーダンスを分析するように、測定回路42を、プロセッサ50およびメモリ52に動作的に関連付けることができる。例として、プロセッサ50は、シース8内にあることが既知であるカテーテル位置における初期インピーダンスを確定することができる。そして、プロセッサは、後続するインピーダンス測定値をサンプリングすることにより、測定されたインピーダンスの変化を確定することができる。例示的な実施形態では、たとえばサイズの異なるカテーテルの位置の変化に基づくインピーダンス変化を、たとえば広範囲のカテーテルおよびシースのいずれかに対する試験中に、事前確定することができる。インピーダンス変化を、メモリ52に、たとえばテーブルまたは他の好適なデータ構造として格納することができる。そして、プロセッサ50は、メモリ52のテーブルまたは式にアクセスして、電極が少なくとも部分的にまたは完全にシースの外部に露出していることを示すインピーダンスの(たとえば初期インピーダンスからの)変化を確定することができる。相対位置の指示を、使用者に対し、たとえば表示装置54において出力することができる。理解されるように、プロセスを逆に行うことにより、カテーテルがシース内に引き込まれた時を確定することも可能である。
【0034】
さらなる例示的な実施形態では、発生器40を、先端電極20とリング電極22の少なくとも1つとに電気エネルギー、たとえば電気信号を放出するように動作させることができる。たとえば、発生器40は、先端電極20および第1リング電極22aに別個の駆動信号を放出することができる。たとえば図3Cを参照されたい。印加された信号に応答する各電極20、22aの結果としてのインピーダンスを、測定回路42を用いて測定することができる。こうした実施形態では、たとえば完全にシース8内に配置されている場合の2つの電極20、22aの初期インピーダンス値を特定することができる。したがって、プロセッサは、第1電極20と第2電極22aとのインピーダンスの相対値を生成することができる。電極のうちの一方のインピーダンスが、たとえばカテーテルの移動に伴って続いて変化する場合に、他方の電極のインピーダンスは実質的に同じであり続けることがある。この場合、インピーダンスの相対値が変化し得る。したがって、相対出力が十分な程度変化すると、プロセッサはディスプレイに対して出力を生成することができる。
【0035】
図5は、カテーテルの1つまたは複数の電極の局所インピーダンスを監視するシステムの別の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、インピーダンスは直接測定されず、電極に提供される電気信号から復調される。図示するように、一方法は、分析するべき電極に、たとえば40kHzで10マイクロアンペアの低レベルAC電流を通す。これに関して、発生器40は、先端電極20に所望の電気信号I1を提供することができる。本明細書で説明するように、発生器40はまた、追加の電極に追加の電気信号を提供することも可能である。先端電極に印加される電気信号I1の戻り経路は、身体表面電極であることが好都合であり、それにより、実施するために他の心臓内電極が不要である。分析されている電極のインピーダンスの指示を確定するのに使用するために、差動増幅器48が設けられている。したがって、増幅器入力もまた、電気信号I1を先端電極20に搬送するワイヤ44aのタップを介して被分析電極に接続されている。増幅器は、身体表面電極46または別の身体表面電極を基準とする。先端電極20または場合によっては他の電極で測定される結果としての振幅を、増幅器48に続く回路(たとえばプロセッサ50)からの駆動電流周波数の同期復調によって回復することができる。復調信号の結果は、主に、電極の非常に局所的な周囲インピーダンスを反映する。身体表面に戻る電流の遠方界インピーダンスは、広く分散するため非常に小さくなる。正味の結果は、復調信号/測定値が、電極・流体界面のインピーダンスおよび電極20を直接包囲するバルクインピーダンスに大きく重み付けされる、ということである。したがって、測定値を監視することにより、先端電極20がシースに進入しているかまたはシースから進出していることを示す変化を特定することができる。
【0036】
図6は、少なくとも1つの電極を含むカテーテルが案内イントロデューサのシースから進出する時を確定するシース進出検知プロトコル100の一実施形態を示す。最初に、案内イントロデューサのシースを、対象となる体内組織位置まで案内する(102)。たとえば、シースを、患者の心腔に案内してもよい。シースが適当に配置されると、シースの内部ルーメン内に配置されたカテーテルの電極に、電気信号を印加することができる(104)。さらに、電気信号に応答する電極の初期インピーダンスを測定することができる(106)。こうした測定は、図4に関連して説明したような直接測定であってもよく、または図5に関連して説明したような間接測定であってもよい。電極のインピーダンスが監視されている間に、カテーテルをシースに対して変位させることができる(108)。インピーダンスの所定変化が検出されると、電極のシースに対する相対位置の変化を示す出力(112)を提供することができる。たとえば、電極がイントロデューサから部分的に出たか、または完全に出たことを示す出力を、ディスプレイに提供することができる。
【0037】
局所インピーダンスを利用して周囲構造の変化を特定することに加えて、こうした局所インピーダンスを利用して、接触評価に対してカテーテルを較正することも可能である。理解されるように、一般に、電極の接触インピーダンスを利用して、心臓内接触が達成されているか否か、またはたとえば(たとえば心腔内の)血液において自由に動くカテーテル支持電極に関連して、接触がどれくらい激しいかを確定することができる。電極・組織界面におけるインピーダンス測定値に基づいて電極カテーテル14と標的組織24との間の接触または結合状態を評価することを、図7および図7aを参照してよりよく理解することができる。図7は、標的組織(たとえば特定の心筋組織24)に接触している(または結合している)電極カテーテル14のモデルである。電極カテーテル14は、発生器40(たとえばRF発生器)に電気的に接続されている。例示的な実施形態では、回路を、標的心筋組織24を通して完成することができ、それは、電流が、血液、心筋および他の器官を通って、患者の身体上の接地パッチ46等の参照電極まで流れることを示す。図1を参照されたい。
【0038】
上述したように、発生器40を、電極カテーテル14によって放出される電気エネルギーを生成するように動作させることができる。放出を、図7では矢印60によって示す。接触または結合評価中に不整脈を引き起こす危険を回避するために、少量の電流および電力を使用することが望ましい。目下好ましい範囲は、周波数は1KHzと500KHzとの間であり、電流は10マイクロアンペア未満である。
【0039】
周波数選択は、主に生物学的態様と工学的態様とに基づき、当業者の認識範囲内にある。生物学的態様の場合、周波数が低いほど、電極・電解質界面のために測定誤差がもたらされる可能性がある。周波数がMHz範囲以上まで高くなると、寄生キャパシタンスが著しくなる可能性がある。しかしながら、本発明は、いかなる特定の周波数または周波数範囲での使用にも限定されないことに留意されたい。周波数は、数例を挙げると、たとえば用途、標的組織のタイプ、および使用されている電気エネルギーのタイプ等の動作的考慮事項によって少なくともある程度まで決まる可能性がある。
【0040】
特定の用途に対し所望の周波数が選択されたものとすると、図7に示すモデルを、図7aに示すように簡略化した電気回路62としてさらに表すことができる。回路62において、発生器40は、AC源64として表現される。電極・組織接触を評価するために使用される可能性のある低い周波数動作では、血液・組織界面におけるキャパシタンスおよび抵抗がインピーダンス測定値の優位を占める。したがって、他の容量効果、誘導効果および抵抗効果を無視することができ、血液・組織界面における容量・抵抗効果を、回路62において抵抗器・コンデンサ(R−C)回路66によって表すことができる。
【0041】
R−C回路66は、インピーダンスに対する標的組織24の抵抗効果および容量効果を表す抵抗器70およびコンデンサ72と並列に、インピーダンスに対する血液の抵抗効果を表す抵抗器68を有していてもよい。電極カテーテル14が、間質液空間23および細胞膜25を含み得る標的組織24と、全く、またはほとんど接触していない場合、血液の抵抗効果がR−C回路66に影響を与え、したがってインピーダンス測定値にも影響を与える。しかしながら、電極カテーテル14が移動して標的組織24と接触すると、標的組織24の抵抗効果および容量効果は、R−C回路66に影響を与え、したがってインピーダンス測定値にも影響を与える。
【0042】
インピーダンス測定値に対する抵抗およびキャパシタンスの影響を、インピーダンスの定義に関連してより理解することができる。インピーダンス(Z)を以下のように表すことができる。
Z=R+jX
ここで、Rは、血液および/または組織からの抵抗であり、jは、項が+90°の位相角を有することを示す虚数であり、Xは、キャパシタンスとインダクタンスとの両方からのリアクタンスである。
【0043】
上記式から、リアクタンス成分の大きさが回路62の抵抗効果および容量効果の両方に応答することが観察される。この変化は、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを用いて、電極・組織接触または結合を評価することができる。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作しており、主に血液と接触している時、インピーダンスは純粋に抵抗性であり、リアクタンス(X)は0オームに近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、リアクタンス成分は負になる。接触または結合のレベルが増大すると、リアクタンス成分はより負になる。
【0044】
測定回路を、上記式のいずれかまたは両方の成分(Rおよび/またはX)、あるいは等価的にそれらの複素演算等価量、すなわち大きさおよび位相角を測定するように設計することができる。血液プールにおいて、測定値が、略完全に抵抗を含むが、特に高い企図された周波数である場合、電極が組織境界に接触した時、小さいが識別可能な容量成分がある。本明細書で教示する技法を、抵抗、リアクタンス、インピーダンスの大きさまたは位相角を使用して適用することができる。
【0045】
抵抗成分のみを考慮し、本質的に球状電極(たとえば先端電極20の遠位端)に対する電極インピーダンス効果を無視すると、接触インピーダンスは抵抗性であり、以下のように概算することができる。
ρ/(4πr)
ここで、rは電極の半径であり、ρはこの場合は血液の媒体抵抗率である。
【0046】
電極の20%が、抵抗率が血液の3倍である組織と接触している場合、電極20のインピーダンスは約15%上昇する。これを、2つの表面の見かけ抵抗を並列抵抗として扱うことによって計算することができる。こうしたインピーダンスの変化を検出することができ、こうした接触を示す出力を生成することができる。しかしながら、組織の抵抗率が血液のわずか2倍である場合、電極が組織と20%接触することにより、電極20のインピーダンスは約11%しか上昇しない。このように接触による上昇が小さい場合、インピーダンスの上昇は、予測されるインピーダンス値の変化範囲内に収まる可能性がある。
【0047】
理解されるように、周囲の血液の局所インピーダンスは、1つまたは複数の生理学的要因に基づいて変化する。こうした要因の1つは、心拍信号であり、基本インピーダンスの5%〜10%の変化をもたらす可能性がある。すなわち、心周期を通してインピーダンスが変化する可能性がある。抵抗率はまた、血液への酸素供給および/または血液の流量によっても幾分か変化する。したがって、上記式における血液の抵抗率は、接触によらない可能性がある。さらに、こうした生理学的要因または「局所変化」を考慮しないことにより、電極・組織接触の誤検出(false positive)指示および/または見逃し(false negative)指示がもたらされる可能性がある。
【0048】
図5に関連して上記に概説したシステムを利用して、本質的に局所抵抗率を独立してサンプリングし、その変化を動的に取り消すプロセスが提供される。本方法はさらに、コモンモードノイズおよびインピーダンスを取り消し、それにより、誤検出/見逃し接触指示がより少ない接触センサを提供する。これに関して、本システムを、局所インピーダンスの変化を考慮するように較正することができる。この方法を、図5、図8aおよび図8bに関連して概説する。図5に示すように、先端電極20およびリング電極22に電気信号を提供する2つの電流源I1およびI2が設けられている。これら電流源I1およびI2は、周波数および位相が同じであり、電流源I1およびI2のうちの少なくとも一方は振幅がプログラム可能または微調整可能である。一方の電流源(I1)は、接触状態が望まれる心電電極、たとえば先端電極20に接続されており、第2電極(I2)は、理想的には先端電極20の2mm〜20mm内にある参照電極、たとえばリング電極22aに接続されている。2つの電流源に対する電流を、図示するように身体表面の共通パッチに戻すことができ、または血液プール電極に戻すことができる。この戻り電極で検知が行われないため、その近接性の局所抵抗率変化は影響を与えない。さらに、この方法では差動増幅器48を高利得に設定することができ、コモンモード除去を最大化しノイズを最小化することができる。
【0049】
調査の開始時、体外でまたは体内で、カテーテル14を壁または境界から離して較正を行う。図8aを参照されたい。較正は、一般にインピーダンス回路からゼロボルトが復調されるまで、電流源I1およびI2の一方を微調整するかまたはプログラムすることからなる。したがって、先端電極20の表面積がリング電極22aより大きい場合、I1の方がより電流を伝達するように微調整することにより、生成される電位がリング電極22aを駆動するI2からの電位と等しくなるようにすることができる。この較正により、この時、両電極に共通の局所抵抗率変化が取り消される。この時、電極20または22aに接触等の変化があり、他方にはない場合にのみ、インピーダンス回路から電位が表れる。したがって、こうした電位が特定されると、この接触を、たとえば視覚化および/またはナビゲーションシステムに記録することができる。注目すべきことに、たとえば3つまたは4つのセグメントに電気的に分割されるセグメントリング電極を用いてシステムを実装することが有益である場合もある。先端電極と各セグメントとの間で別個の差分測定を行う場合、カテーテルが組織に沿って位置する場合、セグメントリング電極のセグメントのうちの少なくとも1つが組織と接触していない可能性がある。すなわち、1つまたは複数のセグメントが流体/血液プールに面している可能性がある。先端電極が組織に接触している場合、先端電極と血液に面しているセグメントとの間に高い差分が表れる。これにより、ロバスト性のある接触の指示を提供することができる。スポット電極を用いて同様のシステムを実現することができる。
【0050】
こうした「局所正規化」を、カテーテルが接触面(たとえば流体/血液プール内)にある時に行うことができ、それは、上述したような実質的にリアルタイムモデルを用いて確定され得る。一般に、電極出力の差は小さくなるが、この位置ではゼロでない可能性がある。しかしながら、操作者(またはロボットシステム)が表面に接触するよう移動を行う前に、カテーテルがアブレーションまたは他の目的で表面に近づく際に、この「オフセット」を測定し実質的に減じることができる。このようにオフセット値を除去することにより、心臓内表面接触センサとして先端電極(または他の電極)を利用する場合に発生する誤検出または見逃しの可能性が低減する。
【0051】
別の例示的な実施形態では、局所変化を考慮するさらなるシステムおよび方法が提供される。図9に示すように、カテーテルの別個の電極に対してシングルエンド測定を行う。たとえば、先端電極20に対して第1測定値Tを生成し、リング電極に対して第2測定値Rを生成する。測定値を、図示するように異なる増幅器回路を利用して個々に生成することができる。こうした構成では、後続する処理をデジタルで(たとえばソフトウェアで)実行してもよい。いずれの場合も、測定値TおよびRを利用して、後続する接触検知のためにシステムを較正することができる。これに関して、血液プールにおける電極に対し差を確定することができる。たとえば、以下の通りである。
Db=Tb−Rb≒0
これに関して、測定値の一方を他方に対して重み付け(たとえばスケーリング)して差が実質的に0になるようにすることができる。同時に、コモンモードまたは名目平均を以下のように計算することができる。
Ab=(Tb+Rb)/2
【0052】
さらに、血液プールの平均Abを利用して後続する測定値を正規化することができる。たとえば、以下の通りである。
(Ab/A)x・D
値xは、1.0であっても、感度を最適化する他の任意の値であってもよい。Dは差分値である。この場合、Aの平均値が較正値(すなわちAb)に対して実質的に増大する(たとえば電極のうちの一方の組織接触により)場合、結果がディレーティング(derate)され得る。本システムはさらに、誤検出に対する感度を最小限にする。このシステムにより、平均値が高いほど、差に加えられる重みが小さくなる。こうしたディレーティングは上記式で指数x=1のとき線形であり得るが、非線形方程式を同様に利用することも可能である。
【0053】
図10は、局所変化に対し電極カテーテルを較正する較正プロトコル(200)の一実施形態を示す。最初に、少なくとも第1電極および第2電極を有するカテーテルを、流体プールに案内し(202)、そこでは流体プールの境界とは接触しない。図8aを参照されたい。こうした案内を、さまざまな撮像装置によって支援することができる。電極に個々の電気信号を印加することができ(204)、第1電極および第2電極の初期インピーダンスを得ることができる(206)。これは、各電極のインピーダンスを直接測定すること、各電極のインピーダンスを間接的に測定すること、および/または電極の相対/差分インピーダンスを特定することを含んでもよい。電気信号のうちの1つを、2つの電極のインピーダンスを実質的に整合させるかまたは等しくするように調整してもよい(208)。インピーダンスが整合すると、カテーテルは較正され、それを、患者組織と接触するように移動させることができる(210)。図8bを参照されたい。
【0054】
局所インピーダンスを検出するための3つのプロセスの実施形態と測定された局所インピーダンスの2つの用途とを、ある程度の特定性で上述したが、当業者は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。例えば、カテーテル電極の局所インピーダンスを検出/測定するようにその他の回路が設計されて もよいということが理解されるであろう。しかしながら、この発明の重要な特徴は、この局所インピーダンスが、電極の周囲に基づいて変化することを認識することである。この点において、そのような変化は他の用途においても使用できるようにすることが可能である。例えば、インピーダンスの変化の指示を利用して、大きい容積の構造(例えば、心腔)から小さい容積の構造(例えば、静脈または動脈)へ、もしくはその逆に、カテーテルを案内してもよい。さらに、方向についてのすべての言及(たとえば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に読者が本発明を理解するのを助ける識別目的のためにのみ使用するものであり、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではないことに気付かれるであろう。接合についての言及(たとえば、取り付けられた、結合された、接続された等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続の間に中間部材および要素間の相対移動を含んでもよい。このように、接合についての言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続されかつ互いに固定関係にあることを意味するものではない。上記説明に含まれるかまたは添付図面に示したすべての事項は、限定するものではなく単に例示するものであると解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神から逸脱することなく、詳細または構造に対する変更を行ってもよい。
【図1−1a】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルと、組織マッピング、案内および/または組織アブレーションのために電極カテーテルを使用する方法と、に関する。特に、本発明の電極カテーテルは、挿入シースに対する電極位置を評価し、かつ/または電極・組織接触を評価することができる。
【背景技術】
【0002】
長年、カテーテルは医療処置に使用されてきた。医療処置に対してカテーテルを用いることにより、それが本来はより侵襲性の高い処置なしにはアクセスできない身体内の所定の位置に配置されている間に、検査、診断および治療を行うことができる。これら処置の間、カテーテルは通常、身体の表面近くの血管内に挿入され、検査、診断および治療のために身体内の所定の位置まで案内される。たとえば、カテーテルを使用して、たとえば組織アブレーションのために、人体内の選択された位置に電気刺激を伝達することができる。さらに、検出電極を備えたカテーテルを使用することにより、たとえば電気マッピングのために、人体におけるさまざまな形態の電気的活動を監視することができる。
【0003】
カテーテルは、人間の心臓に関与する医療処置への使用が増加している。通常、カテーテルは、患者の脚、首または腕の動脈または静脈に挿入され、時にガイドワイヤまたはイントロデューサを用いて、カテーテルの遠位先端が心臓の医療処置に対する所望の位置に達するまで、血管に挿通される。正常な心臓では、心臓の筋肉(心筋)の収縮および弛緩は、電気化学信号が逐次心筋内を通過する際に整然と発生する。
【0004】
心臓で異常な律動が発生する場合があり、これは一般に不整脈と呼ばれる。こうした不整脈の原因は、一般に、正常な伝導経路をバイパスする1つまたは複数の異常な伝導経路の存在であると考えられている。これら経路は、通常、心房と心室とを連結する線維組織に位置している。
【0005】
あるタイプの心臓不整脈の治療に対し益々一般的になっている医療処置は、カテーテルアブレーションである。従来のカテーテルアブレーション処置の間、エネルギー源は、心臓組織(たとえば、異常な伝導経路に関連する)に接触するように配置されて、組織を加熱し、電気的に不活性であるかまたは非収縮性である永久的な傷痕または損傷を形成する。損傷は、部分的にまたは完全に迷走電気信号を遮断して不整脈を減少させるかまたは除去する。
【0006】
心臓内の所定位置のアブレーションには、心臓内でアブレーションカテーテルを正確に配置することが必要である。アブレーションカテーテルの正確な位置決めは、心臓の生理機能のため、特に心臓はアブレーション処置の間鼓動し続けるため、特に困難である。一般に、カテーテルの配置の選択は、電気生理学的案内とマッピング処置中に生成され得るコンピュータ生成マップ/モデルとの組合せによって確定される。したがって、心臓のいかなるマップまたはモデルも実用できる程度に正確であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、既存のアブレーション電極によっては、それらを用いて所定位置に損傷を形成しようと試みる場合、いくつかの難題が生じる可能性がある。既存のアブレーション電極で発生するこうした難題の1つは、適当な組織接触および/または電気的結合をいかに確実にするかである。電極・組織接触は、蛍光透視法等の従来の技法を用いる場合、容易に確定されない。それどころか、医師は、電極カテーテルを使用して自身の経験に基づいて電極・組織接触を確定する。こうした経験は、時間をかけることによってのみ得られるものであり、医師が定期的に電極カテーテルを使用しなければすぐに失われる可能性がある。さらに、電極と標的組織との接触を直接測定しようとする試みは、周囲の媒体の局所変化の影響を受け易い。こうした変化によりこうした測定が歪められる可能性があり、それによって誤った電極・組織接触が示されることになる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、カテーテル電極を包囲する環境により、印加される電気信号に応答する電極の電気的特性が変化することが認識されている。たとえば、限られた/小さい容積の構造(たとえばシースまたは血管)内にある電極と、より容積の大きい構造にある同じ電極と、の間で、インピーダンスが異なる可能性があり、あるいはさもなければ、インピーダンスまたはインピーダンス成分に関連する値が異なる可能性がある。すなわち、容積の小さい構造の周囲流体は、それより大きい容積の周囲流体の電気的特性とは異なる電気的特性(たとえば流量等に基づく)を有する可能性がある。これら電気的特性が異なることにより、電極流体界面の局所的な電気的応答が変化する。したがって、こうした局所応答の変化を利用して、たとえばマッピング中の検知の精度を向上させ、かつ/または組織接触検知の精度を向上させるために利用することができる有用な情報を提供することができる、ということが理解されている。
【0009】
一構成では、カテーテルの局所応答を利用して、案内イントロデューサのシースに対する電極カテーテルの相対位置を特定することができる。別の構成では、カテーテル電極の局所応答を利用して、接触検知の精度を向上させるようにカテーテル電極を較正することができる。
【0010】
一態様によれば、カテーテルの電極が狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過する時を検知するシステムおよび方法が提供される。たとえば、カテーテルがイントロデューサのシースに入るかつ/またはイントロデューサから出る時、あるいはカテーテルが血管に入るかまたは血管から出る時である。最初に、イントロデューサを心臓等の対象となる体内組織位置まで案内してもよい。イントロデューサは、対象となる組織領域に内部チャネルまたはルーメンを提供することができる。したがって、カテーテルを、組織領域にアクセスするために内部チャネル内に配置することができる。カテーテルをイントロデューサに対して移動させるとともに、電気信号をカテーテルに関連する1つまたは複数の電極に提供することができる。したがって、これら1つまたは複数の電極の応答を監視することにより、応答の変化を特定することができ、それは、電極が狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を少なくとも部分的に通過することを示す。したがって、応答の変化を特定する際、この応答の変化を示す出力を生成することができる。
【0011】
応答の変化を特定することは、電気信号に応答する電極のインピーダンスを測定することを含んでもよい。こうした構成では、インピーダンスを、その変化を特定するように連続した時間で測定することができる。たとえば、電極が第1位置にある時に、その初期インピーダンスを測定することができ、それは、イントロデューサの内部チャネル内にあるか、あるいは流体プールまたは血管プール内で体内組織領域の壁から離れて配置されていることが既知であり得る。したがって、電極の位置が変化すると、後続するインピーダンス測定値を得ることができる。これらインピーダンス測定値を比較して、初期インピーダンスと後続するインピーダンスとの間の変化を特定することができる。同様に、初期インピーダンスと後続するインピーダンスとの間の変化が、格納された情報に基づいていてもよい所定閾値を上回る場合、使用者に対し、その変化を示す出力を提供することができる。さらに、インピーダンスの変化を利用して、周囲媒体(たとえば血液)の局所変化を特定することができ、それにより後続する組織接触に対して電極を較正することができる。
【0012】
本態様のさらなる構成では、カテーテルは少なくとも第1電極および第2電極を有してもよい。たとえば、カテーテルは、先端電極と1つまたは複数のリング電極とを有してもよい。こうした構成では、先端電極および1つまたは複数のリング電極のインピーダンスを監視することができる。たとえばカテーテルを移動させることによって、電極のうちの一方の周囲環境が変化した場合、電極のうちの一方の応答の変化が、他方の電極が対応して変化することなく発生し得る。したがって、相対的な応答におけるこうした変化を利用して、電極のうちの一方が、イントロデューサに入るかまたはそこから出るか、あるいは静脈または動脈等の体内構造に入るかまたはそこから出るのを特定することができる。
【0013】
別の態様によれば、電極カテーテルを較正するとともに、電極と組織との間の接触を評価するために使用されるシステムおよび方法が提供される。本システム/方法は、カテーテルを体内組織位置まで案内することを含み、カテーテルは少なくとも第1電極および第2電極を有する。第1電極および第2電極には、それぞれ第1電気信号および第2電気信号が提供され得る。したがって、第1電極および第2電極の相対的な応答を特定することができる。さらに、相対的な応答の変化に基づいて、出力を生成することができる。たとえば、両電極が最初に血液プール(すなわち心腔)内にあり、電極の一方が腔の壁に接触する場合、接触している電極のインピーダンスが、接触していない電極に対して変化する可能性がある。対照的に、両電極がより小さい周囲領域(たとえば静脈または動脈)内に入る場合、各電極はインピーダンスが変化する可能性があり、相対的なインピーダンスは実質的に変化しないままである可能性がある。
【0014】
本システムおよび方法は、周波数および位相が等しい第1信号および第2信号を提供することを含んでもよく、第1信号および第2信号のうちの一方の振幅は調整可能である。信号のうちの一方の振幅をこのように個々に調整することにより、第1電極および第2電極のインピーダンスを整合させることができる。これに関して、心周期中に血液の抵抗率が変化する可能性があることに留意されたい。すなわち、血液の流れにより、抵抗率が変化する可能性があり、したがって、測定インピーダンスが数パーセント以上変化する可能性がある。したがって、局所媒体の電気的特性の動的変化を考慮するために、電極のインピーダンスを整合させることが望ましい場合がある。言い換えれば、電極のインピーダンスを整合させることにより、電極カテーテルを局所状態に対して較正することができる。こうした較正には、最初に、第1電極および第2電極を血液プール内の(たとえば心腔内の壁から離れた)位置に配置することが含まれてもよい。そして、第1センサおよび第2センサのインピーダンスを整合させることができる。したがって、第1電極と第2電極との間でコモンモードノイズおよびインピーダンスを取り消すことができ、それにより局所変化を考慮することができる。カテーテルを、電極のうちの一方が表面に接触するまで移動させることができる。そして、実質的に局所変化の影響を受けない、接触のインピーダンス測定値を得ることができる。
【0015】
本発明の上述した、および他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことにより、かつ添付図面を検討することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】マッピング処置および/または組織アブレーション処置のために患者体内組織にアクセスするように実施することができる、例示的なカテーテルシステムの概略図である。
【図1a】図1の患者の心臓の詳細な図であり、患者の心臓内に移動された後の電極カテーテルを示す。
【図2】図1のシステムで利用することができる例示的なカテーテルである。
【図3A】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図3B】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図3C】電極カテーテルおよびシースの相対位置の例示的な斜視図である。
【図4】図1の例示的なカテーテルシステムをより詳細に示す機能ブロック図である。
【図5】インピーダンス確定回路の機能図である。
【図6】カテーテル電極の局所インピーダンスを評価するために使用することができるプロトコルの一実施形態を示す。
【図7】接触検知および組織検知のためのインピーダンス測定を示す例示的なブロック図である。
【図7a】図7のブロック図の等価回路である。
【図8a】較正のために血液プール内に組織と接触せずに配置された電極カテーテルを示す。
【図8b】較正の後に患者組織と接触している電極カテーテルを示す。
【図9】第1電極および第2電極のシングルエンド測定用の測定回路を示す。
【図10】局所変化に対し電極カテーテルを較正するために使用することができるプロトコルの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、患者体内組織を評価しマッピングするように実施することができる、例示的な電極カテーテルシステム10の概略図である。さらに、本システムは、患者12に対する組織アブレーション処置の実行を支援するために電極・組織接触を評価するように動作する。カテーテルシステム10は、シース8を有する案内イントロデューサを有してもよく、それを患者12内に挿入することができる。シース8は、カテーテル14を導入するためのルーメンを提供することができ、カテーテル14は、たとえば患者の心臓16の内側にアブレーションによる損傷を形成するために、シース8の遠位挿入端を越えて配置されることが可能である。例示的なアブレーション処置中、使用者(たとえば患者の医師または技師)は、案内イントロデューサのシースを、たとえば脚(図1に示すように)または患者の首を介して患者の血管18のうちの1つに挿入することができる。使用者は、リアルタイム蛍光透視撮像装置(図示せず)によって案内されて、シース8を患者の心臓16内に(図1aにより詳細に示すように)移動させる。案内イントロデューサのシース8が患者の心臓16に達すると、電極カテーテル14をシース8のルーメン内に伸長させることができ、それにより、電極カテーテル14を、たとえば組織マッピングおよび/または組織アブレーションを行うために心臓内の所望の位置まで案内することができる。組織マッピング処置では、出力ディスプレイ11において心臓のモデルを生成することができ、それを、たとえばアブレーション処置を行うために後続するカテーテル案内に利用することができる。マッピング処置および/または後続する処置の間に、1つまたは複数の追加のカテーテル14aを利用することも可能である。
【0018】
図2は、案内イントロデューサのシース8の遠位端部分から選択的に伸長させることができる電極カテーテル14を備えた、電極カテーテルシステム36の一実施形態を示す。本明細書で使用しかつ当該技術分野において一般に使用されるように、「遠位」という用語は、概して、アブレーションカテーテル14の挿入端に向かって(すなわち、カテーテルの使用時に心臓または他の標的組織に向かって)位置している、先端電極20等のカテーテルシステムの構成要素を指すように用いている。対照的に、「近位」という用語は、概して、カテーテルの非挿入端に向かって(すなわち、カテーテルの使用時に心臓または他の対象組織から離れる方向にすなわちその反対側に)位置するかまたは概して向けられている、カテーテルの構成要素または一部を指すように用いている。
【0019】
シース8は、少なくとも1つのルーメンまたは長手方向チャネルを画定する管状構造である。シース8は、カテーテル14とともに使用されて、カテーテル14を標的体内組織領域まで導入し案内する。しかしながら、行われている特定の処置に応じて、カテーテル14を単独で使用してもよく、または他の案内し導入するタイプの装置とともに使用してもよい。図2に示すように、カテーテルは、コネクタから出て、シース8を通り、シース8の遠位端においてルーメンから出るように延在する管状本体またはシャフト6を有している。一実施態様では、シース8およびシャフト6は、可撓性弾性材料から作製される。カテーテルのシースおよび構成要素は、ポリマー等、人間に使用するのに好適な材料から製作されることが好ましい。好適なポリマーには、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンおよびフッ化エチレンプロピレンポリマー等、当該技術分野において既知であるものがある。図2の特定のアブレーションシステム構成では、シース8は、シースが適当な位置に事前配置されると、内部ルーメン内のアブレーションカテーテルを受け入れ心臓内の適当な位置まで案内するように構成されている。
【0020】
例示的な実施形態の電極カテーテル14は、先端電極20と複数のリング電極22a〜22n(まとめて電極22と呼ぶ)とを有している。複数のリング電極を利用しているように示すが、他の電極を同様に利用してもよい、ということが留意されよう。たとえば、スポット電極またはセグメントリング電極を利用してもよい。これら電極20、22を、心筋24(心臓の壁の筋肉組織)を電気的にマッピングするように実施してもよい。これに関して、電極からの情報を利用して、行われている特定の処置に応じて、心腔形状の現実的なモデルかまたは他の体内組織のモデルを作成することができる。上述したように、こうしたモデルを、たとえばマッピング後に行われるアブレーション処置中に、カテーテル14の案内に使用するために、ユーザ出力11(図1参照)に表示することができる。
【0021】
モデルを作成するために、St.Jude MedicalのNavX(商標)ナビゲーションおよび視覚化システム等の3D位置特定システムを使用することができる。こうしたシステムでは、身体の1つまたは複数の位置に、2つ以上の患者体外電極パッチ46(1つのみ示す)があてがわれる。パッチ間に電気信号が送信され、心臓内の1つまたは複数のカテーテルの1つまたは複数の電極が信号を検知する。システム10は、カテーテルから電気データを収集し、この情報を使用して、それらの移動を追跡またはナビゲートし、腔の3次元(3D)モデルを構成する。さらに、医師は、データ収集中にカテーテル14を心腔にわたって掃引することにより、構造の外形をたどり、3Dモデルを生成するコンピュータシステムに信号を中継することができる。そして、結果としてのモデルを利用して、たとえば、カテーテル14を、治療が必要な心臓内の1つまたは複数の位置まで案内することができる。
【0022】
こうしたシステムにより、内部処置の調査および/または実行時に詳細な内部モデルを作成することができる。すなわち、本システムは、実質的にリアルタイムのモデルを生成するように動作する。こうしたシステムは、内部処置が行われる時より前に作成されるモデルに頼る撮像技術のあり得る問題を回避する。理解され得るように、こうした事前に作成されるモデルは、姿勢および/または流体荷重の変化等、モデル化された組織に対する後の変化を反映しない。
【0023】
心臓等の体内組織構造の詳細なモデルを提供するが、1つまたは複数の体外パッチから対象となる組織内に配置される電極に電気信号を送信するシステムをモデル化することには欠点があり得る。たとえば、送信された電気信号を受信するために利用されるカテーテル電極(たとえば先端電極20)が、サンプリングプロセス中にシース8内に残っている場合、収集されたデータが歪められる可能性がある。さらに、こうした歪められたデータは、結果としてのモデルの表示に、もっともらしいが間違ったモデルおよび/または電極およびカテーテルの間違った位置をもたらす可能性がある。したがって、シースに対するカテーテルの電極の位置の指標が有用である。たとえば、電極がシースに対して限界進出位置にあるという指示が有用であり得る。
【0024】
カテーテルをいかに案内するかを確定するために、カテーテルがシースをどのくらい越えて伸長しているかを知ることもまた有用であり得る。理解されるように、カテーテルを、カテーテルの端部を撓曲/偏向させるガイドワイヤによって案内することができる。カテーテルシャフトの撓み性(compliance)と、シースを越えて伸長する部分の長さとに基づいて、カテーテルが撓曲または偏向する際の支点を確定することができる。したがって、カテーテルの長さを知ることは、対象となる組織領域にいかに最適に近づくかを確定するのに役立つことができる。さらに、電極(たとえば先端電極20および/または1つまたは複数のリング電極22)がシースからちょうど進出する時を知ることにより、シース進出位置をナビゲーションモデル内に記録することができる。
【0025】
理解され得るように、シース8および/またはカテーテル14のシャフト6の近位部分に、これら部材の遠位先端の相対位置を示すことができるマーキングを設けることができる。しかしながら、シース8および/またはカテーテルシャフト6が、これら部材を対象となる組織領域に送り込むことによって撓曲しかつ/または圧縮することにより、こうしたマーキングがこれら部材の遠位端の相対位置の正確な指示を提供しない可能性がある。したがって、シース8の遠位端に対するカテーテル14の遠位端の独立した指標が望ましい。
【0026】
こうした指示を、シース8およびカテーテル14の遠位端に相互接続される専用センサによって提供することができる。しかしながら、案内されるイントロデューサおよびカテーテルの空間が限られているため、こうした専用センサは最適な解決法を提供することができない。本明細書に、カテーテル14の1つまたは複数の既存の電極を利用して、カテーテル14の遠位端のシース8に対する相対位置の指示を提供することができるシステムおよび方法を提供する。こうした指示を、シース内を通り少なくとも1つの電極を含むいかなるカテーテルに対しても提供することができる。
【0027】
一般に、カテーテル電極を包囲する環境により、印加される電気信号に応答する電極のインピーダンスが変化することが理解されている。たとえば、電極が限られた/小さい容積の構造(たとえばシースまたは血管)内にある場合の方が、より容積の大きい構造にある時に比べて、インピーダンスが高くなる可能性がある。すなわち、容積の小さい構造では、心腔等のより大きい構造より、周囲の流体(たとえば血液)が少ない。言い換えれば、周囲の血液の局所抵抗量および/または静電容量は、容積によって変化し、それにより電極流体界面の局所インピーダンスが変化する。
【0028】
したがって、カテーテル電極の局所インピーダンスが、シース8に対するその相対位置に基づいて大幅に変化することが理解されている。たとえば、図3A、図3Bおよび図3Cは、カテーテル14の遠位端のシース8に対する3つの相対位置を示している。図3Aに示すように、カテーテル14は完全にシース8内に入っている。図3Bでは、カテーテル14の先端表面がシース8の遠位端を越えて伸長している。図示するように、カテーテル14のこの先端表面は、カテーテル14に接続されている先端電極20によって形成されている。図3Cでは、カテーテル14は、シース8からさらに伸長しており、先端電極20は完全にシースを越えて配置されている。注目すべきことに、図3Cはまた、カテーテル14の長さの一部に沿って配置された複数のリング電極22も示している。
【0029】
上述したように、先端電極20(または他の任意の電極)の局所インピーダンスは、その周囲の状況に基づいて著しく変化する。たとえば、先端電極20は、図3Aに示すようにシース内に完全に入っている場合、たとえば、局所インピーダンスが300オームである可能性がある。図3Bに示すように部分的に露出している場合、先端電極20は局所インピーダンスが100オームである可能性がある。最後に、図3Cに示すようにシース8から完全に露出している場合、先端電極20は、局所インピーダンスが70オームである可能性がある。これに関して、先端電極20がシース8内に入っている状態と先端電極20が完全にシース8から進出している状態とでは、インピーダンス差が4:1を超える。したがって、先端電極20のインピーダンスを監視することにより、シース8の遠位端に対するカテーテル14の遠位端の位置の指示を提供することができる。さらに、こうした指示を、カテーテル14の既存の構成部品(たとえば電極)を利用して提供することができる。
【0030】
図4は、シース8の遠位端に対する電極カテーテル14の位置を評価することが実施できるように、カテーテルシステム10を詳細に示す、高レベル機能ブロック図である。従来の組織アブレーションシステムに特有な構成要素のいくつかを、簡潔にする目的で、図1および図4では簡略化した形態で示しており、および/またはまったく示していない、ということに留意されたい。しかしながら、こうした構成要素を、カテーテルシステム10の一部としてまたはそれとともに使用されるように設けることも可能である。たとえば、電極カテーテル14は、いくつかの例を挙げると、ハンドル部、蛍光透視撮像装置および/または他のさまざまな制御部を有することができる。こうした構成要素は、医療機器の技術分野ではよく理解されており、したがって、本明細書では、本発明が完全に理解されるためにはそれ以上の説明は不要である。
【0031】
例示的なカテーテルシステム10は、たとえばAC電流発生器および/または高周波(RF)発生器等の発生器40を有することができ、それは、本実施形態では、電極位置測定、電極接触測定および/またはアブレーションの目的で、(ワイヤ44によって示すように)カテーテル14の電極に電気信号を提供する。先端電極20には、測定回路42が電気的に接続されている。電極カテーテル14を、たとえば患者の腕または胸に取り付けられた(図1に示すように)接地パッチ46を介して電気的に接地することも可能である。
【0032】
発生器40を、カテーテル14の先端電極20に電気エネルギーを放出するように動作させることができる。一般に、この測定には1KHzから500KHzまでの周波数が好適である。測定回路は、アブレーション発生器システムの一部であってもよく、一方で、インピーダンス測定値を、たとえば10マイクロアンペア等の低レベル信号で生成してもよい。印加される信号に応答する電極の結果としてのインピーダンスを、測定回路24を使用して連続して測定しまたは監視することができる。一実施形態では、測定回路42は、従来から入手可能な抵抗・キャパシタンス・インダクタンス(RCL)であってもよい。さらに他の測定回路42を実装してもよく、本発明は、いかなる特定のタイプまたは構成の測定回路と使用するようにも限定されない。いずれの場合も、インピーダンス測定値を使用して、シース8に関連する先端電極20(または他の電極)の位置の指示を確定することができる。そして、この位置を、リアルタイムに使用者に伝達して、たとえばマッピング処置が続けられるように電極が露出しているか否かを示すことができる。
【0033】
例示的な実施形態では、測定されたインピーダンスを分析するように、測定回路42を、プロセッサ50およびメモリ52に動作的に関連付けることができる。例として、プロセッサ50は、シース8内にあることが既知であるカテーテル位置における初期インピーダンスを確定することができる。そして、プロセッサは、後続するインピーダンス測定値をサンプリングすることにより、測定されたインピーダンスの変化を確定することができる。例示的な実施形態では、たとえばサイズの異なるカテーテルの位置の変化に基づくインピーダンス変化を、たとえば広範囲のカテーテルおよびシースのいずれかに対する試験中に、事前確定することができる。インピーダンス変化を、メモリ52に、たとえばテーブルまたは他の好適なデータ構造として格納することができる。そして、プロセッサ50は、メモリ52のテーブルまたは式にアクセスして、電極が少なくとも部分的にまたは完全にシースの外部に露出していることを示すインピーダンスの(たとえば初期インピーダンスからの)変化を確定することができる。相対位置の指示を、使用者に対し、たとえば表示装置54において出力することができる。理解されるように、プロセスを逆に行うことにより、カテーテルがシース内に引き込まれた時を確定することも可能である。
【0034】
さらなる例示的な実施形態では、発生器40を、先端電極20とリング電極22の少なくとも1つとに電気エネルギー、たとえば電気信号を放出するように動作させることができる。たとえば、発生器40は、先端電極20および第1リング電極22aに別個の駆動信号を放出することができる。たとえば図3Cを参照されたい。印加された信号に応答する各電極20、22aの結果としてのインピーダンスを、測定回路42を用いて測定することができる。こうした実施形態では、たとえば完全にシース8内に配置されている場合の2つの電極20、22aの初期インピーダンス値を特定することができる。したがって、プロセッサは、第1電極20と第2電極22aとのインピーダンスの相対値を生成することができる。電極のうちの一方のインピーダンスが、たとえばカテーテルの移動に伴って続いて変化する場合に、他方の電極のインピーダンスは実質的に同じであり続けることがある。この場合、インピーダンスの相対値が変化し得る。したがって、相対出力が十分な程度変化すると、プロセッサはディスプレイに対して出力を生成することができる。
【0035】
図5は、カテーテルの1つまたは複数の電極の局所インピーダンスを監視するシステムの別の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、インピーダンスは直接測定されず、電極に提供される電気信号から復調される。図示するように、一方法は、分析するべき電極に、たとえば40kHzで10マイクロアンペアの低レベルAC電流を通す。これに関して、発生器40は、先端電極20に所望の電気信号I1を提供することができる。本明細書で説明するように、発生器40はまた、追加の電極に追加の電気信号を提供することも可能である。先端電極に印加される電気信号I1の戻り経路は、身体表面電極であることが好都合であり、それにより、実施するために他の心臓内電極が不要である。分析されている電極のインピーダンスの指示を確定するのに使用するために、差動増幅器48が設けられている。したがって、増幅器入力もまた、電気信号I1を先端電極20に搬送するワイヤ44aのタップを介して被分析電極に接続されている。増幅器は、身体表面電極46または別の身体表面電極を基準とする。先端電極20または場合によっては他の電極で測定される結果としての振幅を、増幅器48に続く回路(たとえばプロセッサ50)からの駆動電流周波数の同期復調によって回復することができる。復調信号の結果は、主に、電極の非常に局所的な周囲インピーダンスを反映する。身体表面に戻る電流の遠方界インピーダンスは、広く分散するため非常に小さくなる。正味の結果は、復調信号/測定値が、電極・流体界面のインピーダンスおよび電極20を直接包囲するバルクインピーダンスに大きく重み付けされる、ということである。したがって、測定値を監視することにより、先端電極20がシースに進入しているかまたはシースから進出していることを示す変化を特定することができる。
【0036】
図6は、少なくとも1つの電極を含むカテーテルが案内イントロデューサのシースから進出する時を確定するシース進出検知プロトコル100の一実施形態を示す。最初に、案内イントロデューサのシースを、対象となる体内組織位置まで案内する(102)。たとえば、シースを、患者の心腔に案内してもよい。シースが適当に配置されると、シースの内部ルーメン内に配置されたカテーテルの電極に、電気信号を印加することができる(104)。さらに、電気信号に応答する電極の初期インピーダンスを測定することができる(106)。こうした測定は、図4に関連して説明したような直接測定であってもよく、または図5に関連して説明したような間接測定であってもよい。電極のインピーダンスが監視されている間に、カテーテルをシースに対して変位させることができる(108)。インピーダンスの所定変化が検出されると、電極のシースに対する相対位置の変化を示す出力(112)を提供することができる。たとえば、電極がイントロデューサから部分的に出たか、または完全に出たことを示す出力を、ディスプレイに提供することができる。
【0037】
局所インピーダンスを利用して周囲構造の変化を特定することに加えて、こうした局所インピーダンスを利用して、接触評価に対してカテーテルを較正することも可能である。理解されるように、一般に、電極の接触インピーダンスを利用して、心臓内接触が達成されているか否か、またはたとえば(たとえば心腔内の)血液において自由に動くカテーテル支持電極に関連して、接触がどれくらい激しいかを確定することができる。電極・組織界面におけるインピーダンス測定値に基づいて電極カテーテル14と標的組織24との間の接触または結合状態を評価することを、図7および図7aを参照してよりよく理解することができる。図7は、標的組織(たとえば特定の心筋組織24)に接触している(または結合している)電極カテーテル14のモデルである。電極カテーテル14は、発生器40(たとえばRF発生器)に電気的に接続されている。例示的な実施形態では、回路を、標的心筋組織24を通して完成することができ、それは、電流が、血液、心筋および他の器官を通って、患者の身体上の接地パッチ46等の参照電極まで流れることを示す。図1を参照されたい。
【0038】
上述したように、発生器40を、電極カテーテル14によって放出される電気エネルギーを生成するように動作させることができる。放出を、図7では矢印60によって示す。接触または結合評価中に不整脈を引き起こす危険を回避するために、少量の電流および電力を使用することが望ましい。目下好ましい範囲は、周波数は1KHzと500KHzとの間であり、電流は10マイクロアンペア未満である。
【0039】
周波数選択は、主に生物学的態様と工学的態様とに基づき、当業者の認識範囲内にある。生物学的態様の場合、周波数が低いほど、電極・電解質界面のために測定誤差がもたらされる可能性がある。周波数がMHz範囲以上まで高くなると、寄生キャパシタンスが著しくなる可能性がある。しかしながら、本発明は、いかなる特定の周波数または周波数範囲での使用にも限定されないことに留意されたい。周波数は、数例を挙げると、たとえば用途、標的組織のタイプ、および使用されている電気エネルギーのタイプ等の動作的考慮事項によって少なくともある程度まで決まる可能性がある。
【0040】
特定の用途に対し所望の周波数が選択されたものとすると、図7に示すモデルを、図7aに示すように簡略化した電気回路62としてさらに表すことができる。回路62において、発生器40は、AC源64として表現される。電極・組織接触を評価するために使用される可能性のある低い周波数動作では、血液・組織界面におけるキャパシタンスおよび抵抗がインピーダンス測定値の優位を占める。したがって、他の容量効果、誘導効果および抵抗効果を無視することができ、血液・組織界面における容量・抵抗効果を、回路62において抵抗器・コンデンサ(R−C)回路66によって表すことができる。
【0041】
R−C回路66は、インピーダンスに対する標的組織24の抵抗効果および容量効果を表す抵抗器70およびコンデンサ72と並列に、インピーダンスに対する血液の抵抗効果を表す抵抗器68を有していてもよい。電極カテーテル14が、間質液空間23および細胞膜25を含み得る標的組織24と、全く、またはほとんど接触していない場合、血液の抵抗効果がR−C回路66に影響を与え、したがってインピーダンス測定値にも影響を与える。しかしながら、電極カテーテル14が移動して標的組織24と接触すると、標的組織24の抵抗効果および容量効果は、R−C回路66に影響を与え、したがってインピーダンス測定値にも影響を与える。
【0042】
インピーダンス測定値に対する抵抗およびキャパシタンスの影響を、インピーダンスの定義に関連してより理解することができる。インピーダンス(Z)を以下のように表すことができる。
Z=R+jX
ここで、Rは、血液および/または組織からの抵抗であり、jは、項が+90°の位相角を有することを示す虚数であり、Xは、キャパシタンスとインダクタンスとの両方からのリアクタンスである。
【0043】
上記式から、リアクタンス成分の大きさが回路62の抵抗効果および容量効果の両方に応答することが観察される。この変化は、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを用いて、電極・組織接触または結合を評価することができる。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作しており、主に血液と接触している時、インピーダンスは純粋に抵抗性であり、リアクタンス(X)は0オームに近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、リアクタンス成分は負になる。接触または結合のレベルが増大すると、リアクタンス成分はより負になる。
【0044】
測定回路を、上記式のいずれかまたは両方の成分(Rおよび/またはX)、あるいは等価的にそれらの複素演算等価量、すなわち大きさおよび位相角を測定するように設計することができる。血液プールにおいて、測定値が、略完全に抵抗を含むが、特に高い企図された周波数である場合、電極が組織境界に接触した時、小さいが識別可能な容量成分がある。本明細書で教示する技法を、抵抗、リアクタンス、インピーダンスの大きさまたは位相角を使用して適用することができる。
【0045】
抵抗成分のみを考慮し、本質的に球状電極(たとえば先端電極20の遠位端)に対する電極インピーダンス効果を無視すると、接触インピーダンスは抵抗性であり、以下のように概算することができる。
ρ/(4πr)
ここで、rは電極の半径であり、ρはこの場合は血液の媒体抵抗率である。
【0046】
電極の20%が、抵抗率が血液の3倍である組織と接触している場合、電極20のインピーダンスは約15%上昇する。これを、2つの表面の見かけ抵抗を並列抵抗として扱うことによって計算することができる。こうしたインピーダンスの変化を検出することができ、こうした接触を示す出力を生成することができる。しかしながら、組織の抵抗率が血液のわずか2倍である場合、電極が組織と20%接触することにより、電極20のインピーダンスは約11%しか上昇しない。このように接触による上昇が小さい場合、インピーダンスの上昇は、予測されるインピーダンス値の変化範囲内に収まる可能性がある。
【0047】
理解されるように、周囲の血液の局所インピーダンスは、1つまたは複数の生理学的要因に基づいて変化する。こうした要因の1つは、心拍信号であり、基本インピーダンスの5%〜10%の変化をもたらす可能性がある。すなわち、心周期を通してインピーダンスが変化する可能性がある。抵抗率はまた、血液への酸素供給および/または血液の流量によっても幾分か変化する。したがって、上記式における血液の抵抗率は、接触によらない可能性がある。さらに、こうした生理学的要因または「局所変化」を考慮しないことにより、電極・組織接触の誤検出(false positive)指示および/または見逃し(false negative)指示がもたらされる可能性がある。
【0048】
図5に関連して上記に概説したシステムを利用して、本質的に局所抵抗率を独立してサンプリングし、その変化を動的に取り消すプロセスが提供される。本方法はさらに、コモンモードノイズおよびインピーダンスを取り消し、それにより、誤検出/見逃し接触指示がより少ない接触センサを提供する。これに関して、本システムを、局所インピーダンスの変化を考慮するように較正することができる。この方法を、図5、図8aおよび図8bに関連して概説する。図5に示すように、先端電極20およびリング電極22に電気信号を提供する2つの電流源I1およびI2が設けられている。これら電流源I1およびI2は、周波数および位相が同じであり、電流源I1およびI2のうちの少なくとも一方は振幅がプログラム可能または微調整可能である。一方の電流源(I1)は、接触状態が望まれる心電電極、たとえば先端電極20に接続されており、第2電極(I2)は、理想的には先端電極20の2mm〜20mm内にある参照電極、たとえばリング電極22aに接続されている。2つの電流源に対する電流を、図示するように身体表面の共通パッチに戻すことができ、または血液プール電極に戻すことができる。この戻り電極で検知が行われないため、その近接性の局所抵抗率変化は影響を与えない。さらに、この方法では差動増幅器48を高利得に設定することができ、コモンモード除去を最大化しノイズを最小化することができる。
【0049】
調査の開始時、体外でまたは体内で、カテーテル14を壁または境界から離して較正を行う。図8aを参照されたい。較正は、一般にインピーダンス回路からゼロボルトが復調されるまで、電流源I1およびI2の一方を微調整するかまたはプログラムすることからなる。したがって、先端電極20の表面積がリング電極22aより大きい場合、I1の方がより電流を伝達するように微調整することにより、生成される電位がリング電極22aを駆動するI2からの電位と等しくなるようにすることができる。この較正により、この時、両電極に共通の局所抵抗率変化が取り消される。この時、電極20または22aに接触等の変化があり、他方にはない場合にのみ、インピーダンス回路から電位が表れる。したがって、こうした電位が特定されると、この接触を、たとえば視覚化および/またはナビゲーションシステムに記録することができる。注目すべきことに、たとえば3つまたは4つのセグメントに電気的に分割されるセグメントリング電極を用いてシステムを実装することが有益である場合もある。先端電極と各セグメントとの間で別個の差分測定を行う場合、カテーテルが組織に沿って位置する場合、セグメントリング電極のセグメントのうちの少なくとも1つが組織と接触していない可能性がある。すなわち、1つまたは複数のセグメントが流体/血液プールに面している可能性がある。先端電極が組織に接触している場合、先端電極と血液に面しているセグメントとの間に高い差分が表れる。これにより、ロバスト性のある接触の指示を提供することができる。スポット電極を用いて同様のシステムを実現することができる。
【0050】
こうした「局所正規化」を、カテーテルが接触面(たとえば流体/血液プール内)にある時に行うことができ、それは、上述したような実質的にリアルタイムモデルを用いて確定され得る。一般に、電極出力の差は小さくなるが、この位置ではゼロでない可能性がある。しかしながら、操作者(またはロボットシステム)が表面に接触するよう移動を行う前に、カテーテルがアブレーションまたは他の目的で表面に近づく際に、この「オフセット」を測定し実質的に減じることができる。このようにオフセット値を除去することにより、心臓内表面接触センサとして先端電極(または他の電極)を利用する場合に発生する誤検出または見逃しの可能性が低減する。
【0051】
別の例示的な実施形態では、局所変化を考慮するさらなるシステムおよび方法が提供される。図9に示すように、カテーテルの別個の電極に対してシングルエンド測定を行う。たとえば、先端電極20に対して第1測定値Tを生成し、リング電極に対して第2測定値Rを生成する。測定値を、図示するように異なる増幅器回路を利用して個々に生成することができる。こうした構成では、後続する処理をデジタルで(たとえばソフトウェアで)実行してもよい。いずれの場合も、測定値TおよびRを利用して、後続する接触検知のためにシステムを較正することができる。これに関して、血液プールにおける電極に対し差を確定することができる。たとえば、以下の通りである。
Db=Tb−Rb≒0
これに関して、測定値の一方を他方に対して重み付け(たとえばスケーリング)して差が実質的に0になるようにすることができる。同時に、コモンモードまたは名目平均を以下のように計算することができる。
Ab=(Tb+Rb)/2
【0052】
さらに、血液プールの平均Abを利用して後続する測定値を正規化することができる。たとえば、以下の通りである。
(Ab/A)x・D
値xは、1.0であっても、感度を最適化する他の任意の値であってもよい。Dは差分値である。この場合、Aの平均値が較正値(すなわちAb)に対して実質的に増大する(たとえば電極のうちの一方の組織接触により)場合、結果がディレーティング(derate)され得る。本システムはさらに、誤検出に対する感度を最小限にする。このシステムにより、平均値が高いほど、差に加えられる重みが小さくなる。こうしたディレーティングは上記式で指数x=1のとき線形であり得るが、非線形方程式を同様に利用することも可能である。
【0053】
図10は、局所変化に対し電極カテーテルを較正する較正プロトコル(200)の一実施形態を示す。最初に、少なくとも第1電極および第2電極を有するカテーテルを、流体プールに案内し(202)、そこでは流体プールの境界とは接触しない。図8aを参照されたい。こうした案内を、さまざまな撮像装置によって支援することができる。電極に個々の電気信号を印加することができ(204)、第1電極および第2電極の初期インピーダンスを得ることができる(206)。これは、各電極のインピーダンスを直接測定すること、各電極のインピーダンスを間接的に測定すること、および/または電極の相対/差分インピーダンスを特定することを含んでもよい。電気信号のうちの1つを、2つの電極のインピーダンスを実質的に整合させるかまたは等しくするように調整してもよい(208)。インピーダンスが整合すると、カテーテルは較正され、それを、患者組織と接触するように移動させることができる(210)。図8bを参照されたい。
【0054】
局所インピーダンスを検出するための3つのプロセスの実施形態と測定された局所インピーダンスの2つの用途とを、ある程度の特定性で上述したが、当業者は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。例えば、カテーテル電極の局所インピーダンスを検出/測定するようにその他の回路が設計されて もよいということが理解されるであろう。しかしながら、この発明の重要な特徴は、この局所インピーダンスが、電極の周囲に基づいて変化することを認識することである。この点において、そのような変化は他の用途においても使用できるようにすることが可能である。例えば、インピーダンスの変化の指示を利用して、大きい容積の構造(例えば、心腔)から小さい容積の構造(例えば、静脈または動脈)へ、もしくはその逆に、カテーテルを案内してもよい。さらに、方向についてのすべての言及(たとえば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に読者が本発明を理解するのを助ける識別目的のためにのみ使用するものであり、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではないことに気付かれるであろう。接合についての言及(たとえば、取り付けられた、結合された、接続された等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続の間に中間部材および要素間の相対移動を含んでもよい。このように、接合についての言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続されかつ互いに固定関係にあることを意味するものではない。上記説明に含まれるかまたは添付図面に示したすべての事項は、限定するものではなく単に例示するものであると解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神から逸脱することなく、詳細または構造に対する変更を行ってもよい。
【図1−1a】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置を行う方法であって、
体内組織位置に対する位置までイントロデューサを案内するステップと、
前記イントロデューサに対してカテーテルを変位させるステップであって、前記カテーテルが少なくとも第1電極を有する、ステップと、
前記変位とともに前記電極に電気信号を提供するステップと、
カテーテルが狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過することを示す、前記電気信号に対する電極の応答を特定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記カテーテルが前記領域の間を通過することを示す出力を生成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カテーテルが狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過することが、前記カテーテルが血管内に入ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変位させるステップが、
前記電極を、前記イントロデューサ内の第1位置から前記イントロデューサの外側に少なくとも部分的に露出する第2位置まで移動させるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記応答を特定するステップが、
前記電気信号に応答して前記電極のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスの変化を特定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電極の初期インピーダンスを測定するステップであって、前記電極が第1位置にある、ステップと、
前記電極の後続するインピーダンスを測定するステップであって、前記電極が第2位置にある、ステップと、
前記初期インピーダンスと前記後続するインピーダンスとの間の変化を特定するステップと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インピーダンスを測定するステップが、
インピーダンスの成分を測定するステップ
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記変化が所定閾値を上回る場合に出力を生成するステップ
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が第1電極を含み、前記電気信号が第1電気信号を含み、
第2電極に第2電気信号を提供するステップをさらに含み、前記応答を特定するステップが、前記第1電極および前記第2電極の前記第1電気信号および前記第2電気信号に対する相対的な応答の変化を特定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極が第1電極を含み、前記電気信号が第1電気信号を含み、
複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップをさらに含み、前記応答を特定するステップが、前記第1電極の、前記第1電気信号に対する相対的な応答の変化、および前記複数の電極のうちの少なくとも1つの、その対応する電気信号に対する相対的な応答の変化を特定するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記相対的な応答を特定するステップが、前記電極のうちの一方のインピーダンスの、前記電極のうちの他方のインピーダンスに対する変化を特定するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記変位させるステップが、
前記電極を前記体内組織位置の壁の近くに配置するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記応答が、前記壁に近接する周囲媒体の局所変化を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変化に基づいて、接触検知のために適当な値を確定するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記応答を特定する際、位置特定システムに情報を記録するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
医療処置を行う方法であって、
患者体内位置までカテーテルを案内するステップであって、前記カテーテルが少なくとも第1電極および第2電極を有する、ステップと、
前記第1電極および前記第2電極に第1電気信号および第2電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記第1電極および前記第2電極の、前記第1電気信号および前記第2電気信号に対する相対的な応答を特定するステップと、
前記相対的な応答の変化に基づいて出力を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記電気信号の戻り経路が体外電極を経由する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記相対的な応答を特定するステップが、
前記第1電極に対する第1インピーダンスを特定し、前記第2電極に対する第2インピーダンスを特定するステップ
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記複数の電極のうちの1つと少なくとも2つの他の電極との間の相対的な応答を特定するステップであって、前記出力が前記相対的な応答のうちの少なくとも1つの変化に基づいて生成される、ステップと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1電気信号および前記第2電気信号を提供するステップが、
周波数および位相が等しい第1信号および第2信号を提供するステップであって、前記第1信号と前記第2信号のうちの一方の振幅が調整可能である、ステップ
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1応答および前記第2応答を実質的に整合させるように前記振幅を調整するステップ
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記調整するステップが、前記第1電極および前記第2電極が流体プールにある間に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電極の少なくとも1つを前記患者体内位置の壁に接触させるように前記カテーテルを移動させるステップと、
前記壁に接触する前記電極の接触応答の出力を生成するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記接触応答を生成するとともに、位置特定システムに情報を記録するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記接触応答に基づいて前記カテーテルと前記壁との間の接触を評価するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記相対的な応答を特定するステップが、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との差を生成するステップ
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記差を生成するステップが、
前記第1電極および前記第2電極の応答を個々に測定するステップと、
前記応答間の差を特定するステップと、
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記差を生成するステップが、
前記電極に印加される前記第1電気信号および前記第2電気信号の組合せを復調するステップであって、前記復調が、前記差を生成するために、前記第1電気信号および前記第2電気信号のうちの一方の周波数に少なくとも部分的に基づく、ステップ
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記差を調整するように前記電気信号のうちの一方を調整するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記出力が、組織との接触状態を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
医療処置を行う方法であって、
患者体内位置内にカテーテルを配置するステップであって、前記カテーテルが複数の電極を有する、ステップと、
前記複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記電極が前記患者体内位置の壁と接触していない間に前記複数の電極のインピーダンスを整合させるステップと、
前記電極のうちの少なくとも1つを前記患者体内位置の壁と接触させるステップと、
前記少なくとも1つの電極の接触インピーダンスを測定して前記カテーテルと前記壁との間の接触を評価するステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記インピーダンスを整合させるステップが、
前記複数の電気信号のうちの少なくとも1つの振幅を調整するステップ
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記接触に関連する接触情報を位置特定システムに記録するステップ
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
体内組織位置に配置されるように構成されたカテーテルであって、少なくとも第1電極および第2電極を有するカテーテルと、
前記第1電極に第1電気信号を提供し前記第2電極に第2電気信号を提供するように適合された電気出力システムと、
インピーダンス測定モジュールであって、前記第1電極および前記第2電極の相対的なインピーダンスを測定するように構成されたインピーダンス測定モジュールと、
前記相対的なインピーダンスを受け取り、前記第1電気信号と前記第2電気信号の少なくとも一方を所望の相対的なインピーダンスを得るように変更するように適合されたプロセッサと、
を備える医療システム。
【請求項35】
前記インピーダンス測定モジュールが前記第1電極および前記第2電極のインピーダンスを直接測定する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記インピーダンス測定モジュールが前記相対的なインピーダンスを間接的に測定する、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記インピーダンス測定モジュールが、
前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ接続された第1入力および第2入力を有する差動増幅器
を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記差動増幅器の出力を復調する復調器
をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記カテーテルが複数の電極を有し、前記出力システムが、対応する複数の電気信号を提供するように適合される、請求項34に記載のシステム。
【請求項40】
前記インピーダンス測定モジュールが、前記複数の電極間の複数の相対的なインピーダンスを測定するように構成される、請求項39に記載のシステム。
【請求項1】
医療処置を行う方法であって、
体内組織位置に対する位置までイントロデューサを案内するステップと、
前記イントロデューサに対してカテーテルを変位させるステップであって、前記カテーテルが少なくとも第1電極を有する、ステップと、
前記変位とともに前記電極に電気信号を提供するステップと、
カテーテルが狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過することを示す、前記電気信号に対する電極の応答を特定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記カテーテルが前記領域の間を通過することを示す出力を生成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カテーテルが狭窄した領域とそれほど狭窄していない領域との間を通過することが、前記カテーテルが血管内に入ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変位させるステップが、
前記電極を、前記イントロデューサ内の第1位置から前記イントロデューサの外側に少なくとも部分的に露出する第2位置まで移動させるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記応答を特定するステップが、
前記電気信号に応答して前記電極のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスの変化を特定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電極の初期インピーダンスを測定するステップであって、前記電極が第1位置にある、ステップと、
前記電極の後続するインピーダンスを測定するステップであって、前記電極が第2位置にある、ステップと、
前記初期インピーダンスと前記後続するインピーダンスとの間の変化を特定するステップと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インピーダンスを測定するステップが、
インピーダンスの成分を測定するステップ
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記変化が所定閾値を上回る場合に出力を生成するステップ
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が第1電極を含み、前記電気信号が第1電気信号を含み、
第2電極に第2電気信号を提供するステップをさらに含み、前記応答を特定するステップが、前記第1電極および前記第2電極の前記第1電気信号および前記第2電気信号に対する相対的な応答の変化を特定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極が第1電極を含み、前記電気信号が第1電気信号を含み、
複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップをさらに含み、前記応答を特定するステップが、前記第1電極の、前記第1電気信号に対する相対的な応答の変化、および前記複数の電極のうちの少なくとも1つの、その対応する電気信号に対する相対的な応答の変化を特定するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記相対的な応答を特定するステップが、前記電極のうちの一方のインピーダンスの、前記電極のうちの他方のインピーダンスに対する変化を特定するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記変位させるステップが、
前記電極を前記体内組織位置の壁の近くに配置するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記応答が、前記壁に近接する周囲媒体の局所変化を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変化に基づいて、接触検知のために適当な値を確定するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記応答を特定する際、位置特定システムに情報を記録するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
医療処置を行う方法であって、
患者体内位置までカテーテルを案内するステップであって、前記カテーテルが少なくとも第1電極および第2電極を有する、ステップと、
前記第1電極および前記第2電極に第1電気信号および第2電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記第1電極および前記第2電極の、前記第1電気信号および前記第2電気信号に対する相対的な応答を特定するステップと、
前記相対的な応答の変化に基づいて出力を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記電気信号の戻り経路が体外電極を経由する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記相対的な応答を特定するステップが、
前記第1電極に対する第1インピーダンスを特定し、前記第2電極に対する第2インピーダンスを特定するステップ
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記複数の電極のうちの1つと少なくとも2つの他の電極との間の相対的な応答を特定するステップであって、前記出力が前記相対的な応答のうちの少なくとも1つの変化に基づいて生成される、ステップと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1電気信号および前記第2電気信号を提供するステップが、
周波数および位相が等しい第1信号および第2信号を提供するステップであって、前記第1信号と前記第2信号のうちの一方の振幅が調整可能である、ステップ
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1応答および前記第2応答を実質的に整合させるように前記振幅を調整するステップ
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記調整するステップが、前記第1電極および前記第2電極が流体プールにある間に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電極の少なくとも1つを前記患者体内位置の壁に接触させるように前記カテーテルを移動させるステップと、
前記壁に接触する前記電極の接触応答の出力を生成するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記接触応答を生成するとともに、位置特定システムに情報を記録するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記接触応答に基づいて前記カテーテルと前記壁との間の接触を評価するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記相対的な応答を特定するステップが、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との差を生成するステップ
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記差を生成するステップが、
前記第1電極および前記第2電極の応答を個々に測定するステップと、
前記応答間の差を特定するステップと、
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記差を生成するステップが、
前記電極に印加される前記第1電気信号および前記第2電気信号の組合せを復調するステップであって、前記復調が、前記差を生成するために、前記第1電気信号および前記第2電気信号のうちの一方の周波数に少なくとも部分的に基づく、ステップ
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記差を調整するように前記電気信号のうちの一方を調整するステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記出力が、組織との接触状態を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
医療処置を行う方法であって、
患者体内位置内にカテーテルを配置するステップであって、前記カテーテルが複数の電極を有する、ステップと、
前記複数の電極に複数の電気信号をそれぞれ提供するステップと、
前記電極が前記患者体内位置の壁と接触していない間に前記複数の電極のインピーダンスを整合させるステップと、
前記電極のうちの少なくとも1つを前記患者体内位置の壁と接触させるステップと、
前記少なくとも1つの電極の接触インピーダンスを測定して前記カテーテルと前記壁との間の接触を評価するステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記インピーダンスを整合させるステップが、
前記複数の電気信号のうちの少なくとも1つの振幅を調整するステップ
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記接触に関連する接触情報を位置特定システムに記録するステップ
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
体内組織位置に配置されるように構成されたカテーテルであって、少なくとも第1電極および第2電極を有するカテーテルと、
前記第1電極に第1電気信号を提供し前記第2電極に第2電気信号を提供するように適合された電気出力システムと、
インピーダンス測定モジュールであって、前記第1電極および前記第2電極の相対的なインピーダンスを測定するように構成されたインピーダンス測定モジュールと、
前記相対的なインピーダンスを受け取り、前記第1電気信号と前記第2電気信号の少なくとも一方を所望の相対的なインピーダンスを得るように変更するように適合されたプロセッサと、
を備える医療システム。
【請求項35】
前記インピーダンス測定モジュールが前記第1電極および前記第2電極のインピーダンスを直接測定する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記インピーダンス測定モジュールが前記相対的なインピーダンスを間接的に測定する、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記インピーダンス測定モジュールが、
前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ接続された第1入力および第2入力を有する差動増幅器
を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記差動増幅器の出力を復調する復調器
をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記カテーテルが複数の電極を有し、前記出力システムが、対応する複数の電気信号を提供するように適合される、請求項34に記載のシステム。
【請求項40】
前記インピーダンス測定モジュールが、前記複数の電極間の複数の相対的なインピーダンスを測定するように構成される、請求項39に記載のシステム。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−514504(P2010−514504A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544136(P2009−544136)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084678
【国際公開番号】WO2008/082802
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084678
【国際公開番号】WO2008/082802
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
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