説明

接触子、その製造方法および接触子対

【課題】 接触部分の磨耗が少なく、バネ部の塑性変形が小さい高精度の微細接触子を提供する。
【解決手段】 本発明の接触子は、被接触物を把持するための1対の先端部と、支持および電気的接続を行なうための支持部と、1対の先端部のそれぞれを支持部に連結するための一対のバネ部とを備える平板状の微細導通接触子であって、被接触物に先端部を押し当てたときに、1対の先端部の間に被接触物を挟み、バネ部の弾性変形により被接触物を把持し、摺動接触するように構成されており、バネ部における厚さT/幅Wで表されるアスペクト比が0.1〜50であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に接続するために使用する接触子およびその製造方法に関し、特に同一形状で同一寸法の接触子同士の摺動接触が可能な接触子対に関する。
【背景技術】
【0002】
電線またはプリント配線基板などと電気的に接続するために使用する接触子は、被接触部に接触する先端部と、接触力を得るためのバネ部などを備え、これらの各部は、1つの材料で構成されているものと、バネ部と他の部分が2種類の部材により構成されているものなど、各種の態様が知られている。
【0003】
図6に音叉形接触子を例示する。図6に示すように、雌型の音叉形接触子61に対し、矢印の方向に、雄型の半角形の平板62もしくは丸形の平板またはプリント配線基板などを圧入すると、音叉形接触子61により平板62が圧接されて、導通する。音叉形接触子は、バネ性のある板状体を打ち抜き加工のみで製造でき、曲げ加工などが不要であるため、比較的量産性が高い(非特許文献1参照)。
【0004】
多くの接触子は、雄型と雌型の1組のペアからなるが、雄型・雌型の区別のない同一形状で同一サイズの接触子があり、その例を図7(a)に示す。図7(a)に示すように、一方の接触子71aを、同一形状で同一サイズの他方の接触子71bに対して、反転した姿勢で矢印の示す方向に互いに差し込み式に圧入すると、接触子71a,71bは互いに圧接され、導通する。図7(b)は接続したときの状態を示す(非特許文献1参照)。互いにバネ性を有する接触子を接続するときは、多点接触となり、導通性が高いという利点があり、図7(b)の例では、矢印の示す位置で4点接触している。また、1対の接触子が同一形状・同一寸法である場合、金型の統一などによる製造工程の簡略化および部品の種類の削減が可能となる。
【0005】
雄型・雌型の区別のない同一形状で同一サイズの接触子の他の例を図8に示す。図8(a)に示すように、この接触子80aは、相手方接触子に接触する接触部82aを備え、その反対側に電線を接続する接続部84aを備える。接触部82aは、接触部82aと接続部84aとを連結する連結部83aに対して45°傾斜して配置する。また、接続部84aには、第2のスリット85aが形成されており、ケーブルなどの電線(図示していない。)を圧入する(特許文献1参照)。
【0006】
接触部82aの第1のスリット86aに、相手方接触子80bの同様のスリット86bを差し込み、圧接する。圧接後の状態を図8(b)に示す。図8(b)に示すように、一対の接触子80a,80bの接触部82a,82bは、90°の角度を成している。また、1対の接触子80a,80bの接続部84a,84bに形成された第2のスリット85a,85bにそれぞれ2本の電線を圧入すると、2本の電線は互いに同軸上に配置する。さらに、接触子80a,80bは、板金材料から打ち抜きおよび曲げ加工により、一体形成できるので、容易に製造することができる。
【特許文献1】特開2000−21485号公報
【非特許文献1】「コネクタ最新技術'99」,株式会社日本アドバンストテクノロジー,p.4−7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の接触子は、音叉形接触子の場合でも、雄型・雌型の区別のない同一形状で同一サイズの接触子の場合であっても、打ち抜き加工により製造されるため、接触子のバネ部の弾性定数が大きく、バネとして比較的硬いという特性がある。また、打ち抜き加工によるため、厚さ100μm以下の板状体からなり、アスペクト比の小さい接触子しか得られない。したがって、接触子を圧入して接続すると、接触子における接触する部分が変形しやすく、バネ部も塑性変形を起こしやすい。また、接続と切断を繰り返すと、被接触物に接触する部分が磨耗するため、接続強度が低下しやすい。
【0008】
さらに、接触子におけるバネ部の弾性定数が大きく、バネ部の広がり尤度が狭いため、接触子を圧接する位置がずれると、嵌合に必要な負荷が変化し、嵌合状態が変わり、接触子が接続できない場合も生じる。したがって、接触子の実装に高い精度が求められるが、打ち抜き加工により製造されるため、接触子の精度が低いという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、接触部分の磨耗が少なく、バネ部の塑性変形が小さい高精度の微細接触子およびその製造方法を提供することにある。さらに、それらの接触子が摺動接触する接触子対を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接触子は、被接触物を把持するための1対の先端部と、
支持および電気的接続を行なうための支持部と、
1対の先端部のそれぞれを支持部に連結するための一対のバネ部とを備える平板状の微細導通接触子であって、
被接触物に先端部を押し当てたときに、1対の先端部の間に被接触物を挟み、バネ部の弾性変形により被接触物を把持し、摺動接触するように構成されており、
バネ部における厚さT/幅Wで表されるアスペクト比が0.1〜50であることを特徴とする。
【0011】
支持部は、1対のバネ部の間に、先端部に向けて配向する柱状のストッパを有する態様が好ましく、ストッパは、先端が平面状であるものが好適である。
【0012】
本発明の方法は、かかる接触子の製造方法であって、第1の局面によれば、
リソグラフィにより樹脂型を形成する工程と、
導電性基板上で、樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
研磨または研削する工程と、
樹脂型を除去する工程と、
導電性基板を除去する工程と
を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の方法は、かかる接触子の製造方法であって、第2の局面によれば、
金型により樹脂型を形成する工程と、
導電性基板上で、樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
研磨または研削する工程と、
樹脂型を除去する工程と、
導電性基板を除去する工程と
を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の接触子対は、かかる接触子を、かかる接触子と同一形状で同一寸法の相手方接触子に押し当てたときに、接触子の1対の先端部の間に相手方接触子の支持部を挟むことにより、相手方接触子の1対の先端部の間に接触子の支持部が挟まれ、接触子のバネ部の弾性変形により相手方接触子を把持し、摺動接触するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接触子は、被接続物に接触する部分の磨耗が少なく、バネ部も塑性変形を起こしにくい。また、本発明によれば、端子設計が容易で高精度の微細接触子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(接触子)
本発明の接触子の典型的な例を図1および図2に示す。図1は正面図であり、図2は斜視図である。この接触子は、被接触物を把持するための1対の先端部1,21と、支持および電気的接続を行なうための支持部3,23と、1対の先端部1,21のそれぞれを支持部3,23に連結するための一対のバネ部2,22とを備える平板状の微細接触子である。被接触物に先端部1,21を押し当てたときに、1対の先端部1,21の間に被接触物を挟み、バネ部2,22の弾性変形により被接触物を把持し、摺動接触するように構成されており、バネ部2,22における厚さT/幅Wで表されるアスペクト比が0.1〜50であることを特徴とし、電気的な接続を得るために使用する接触子である。
【0017】
打ち抜き法により製造される従来の接触子は、バネ部のアスペクト比が0.1以下であるのに対し、本発明の接触子は、バネ部のアスペクト比が0.1〜50である。このため、従来品より幅Wを狭くし、厚さTを厚くすることにより、弾性定数が小さい柔らかいバネを得ることができる。したがって、被接触物の接触力を維持しつつ、弾性限界変位量を大きくできるため、強圧を以って圧接する従来の接触子と比較して、被接触物との接触点における変形および磨耗を少なくし、バネ部の弾性変形領域を広げて、塑性変形を回避することが可能である。
【0018】
このようなアスペクト比が0.1〜50である接触子、より好ましくは0.1〜5である接触子は、被接触物との電気的導通の信頼性が高く、弾性変形領域が広い。また、このような接触子を用いれば、被接触物との電気的導通の信頼性を高める点で、被接触物との接触力を1mN〜50mNとすることができ、かつ、実装精度を軽減するためにバネの広がり尤度を大きくする点で、弾性限界変位量を10μm〜100μmにすることができる。
【0019】
図1および図2に示すように、支持部3,23が、1対のバネ部2,22の間に、先端部1,21に向けて配向する柱状のストッパ4,24を有する態様が好ましい。ストッパを形成することにより、接続後の全長を任意に調整することができる。また、接続時の全長を一定に保ったまま、バネ部を延長し、バネ部の広がり尤度を広げることができる。ストッパは、電気接続の接点としても機能するため、電気接点としての有効性を高める点で、先端は平坦な方が好ましい。
【0020】
本発明の接触子は、微細構造体であり、図2に示すように、全長L1を200μm〜2500μm、前幅W1を100μm〜600μm、厚さTを40μm〜500μmとすることができる。したがって、狭ピッチ化および高密度実装に対応することができる。接触子の先端部は、図1(a)およびその拡大図である図1(b)に示すように、先端部1のさらにその先端の外側が丸みを有していると、被接触物との接触時に引掛かりを防止できる点で好ましい。そのような観点から、R1は10μm〜200μmが好ましく、30μm〜150μmがより好ましい。
【0021】
また、先端部1のさらにその先端の内側が丸みを有していると、被接触物に先端部1を押し当てたときに、1対の先端部1の間に被接触物を挟み、把持しやすくなる点で好ましい。そのような観点から、R2は30μm〜300μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。バネ部2と支持部3との連結部分は、拡大図である図1(c)に示すように、丸みを有していると、接続時、バネ部2の根元に集中する応力を軽減できる点で好ましい。そのような観点から、R3は10μm〜200μmが好ましく、30μm〜150μmがより好ましい。図1(a)の連結部5においても同様である。
【0022】
図1(a)に示すように、1対の先端部1の間隔Gは、被接触物の厚さより少し短い寸法が好ましい。具体的には、間隔Gは、数十μm〜数百μmとすることができる。支持部3には、基板実装ストッパ6a,6bを有するものが、接触子を基板に実装するときの作業性が良くなる点で好ましい。また、支持部3には、図1(a)に示すように、切り欠きなどの電気接続部7を有する態様が、ハンダボールなどで基板に接続する際の作業性および接続信頼性を高める点で好ましい。
【0023】
本発明の接触子の材質は、靭性などのバネ特性に優れ、電気導通性がよく、さらには、後述するLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)法による製造に適している点で、ニッケル、またはニッケルマンガンなどのニッケル合金が好ましい。耐熱性が要求されるときは、ニッケルマンガン合金が好適である。また、接触子のバネ強度および弾性限界を高める点で、ニッケルなどの結晶粒径は50nm以下が好ましい。
【0024】
接触子の表面には、電気的な接触性および耐腐食性を高める点で、金、ロジウムもしくはパラジウムなどの貴金属または貴金属の合金からなるコート層を設ける態様が好ましい。また、接触子の表面に、導電性ダイヤモンドライクカーボン、CrNまたはTiNのいずれかからなるコート層を形成すると、耐摩耗性が向上する点で好ましい。
【0025】
本発明の接触子対は、上述の接触子を、同一形状で同一寸法の相手方接触子に押し当てたときに、接触子の1対の先端部の間に相手方接触子の支持部を挟むことにより、相手方接触子の1対の先端部の間に接触子の支持部が挟まれ、接触子のバネ部の弾性変形により相手方接触子を把持し、摺動接触するように構成されることを特徴とする。図3に、本発明の典型的な接触子対の斜視図を示す。
【0026】
本発明の接触子は、雄型と雌型の区別がなく、同一形状で同一サイズの相手方接触子と接触子対を形成することができる。この1組の接触子対のうち、一方がバネ性を有していれば、接触子対として利用することができるが、双方ともバネ性を有する接触子を接続すると、多点接触となり、導通性が高くなる点で好ましい。また、同一形状・同一寸法であるため、金型の統一などによる製造工程の簡略化および部品の種類の削減が可能となる点で有利である。
【0027】
(接触子の製造方法)
本発明の接触子の製造方法は、リソグラフィにより樹脂型を形成する工程と、導電性基板上で樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、研磨または研削する工程と、樹脂型を除去する工程と、導電性基板を除去する工程とを含むことを特徴とする。かかる方法により、アスペクト比が0.1〜50の接触子を容易に製造することができる。また、打ち抜きなどの機械加工では、±10μm程度の精度しか得られないが、本発明の方法によれば、±1μmの高精度の接触子を再現性よく製造することができ、材料組成も均一である。したがって、バネ特性を均一に保つことができる。また、全長のバラツキを減らし、接続時に過剰の負荷が生じたり、接続が得られないなどの事態を回避することができる。さらに、微細構造体を一体形成することができるため、部品点数を減らし、部品コストおよび組立てコストを低減することができる。
【0028】
本発明の製造方法は、図4(a)に示すように、まず、導電性基板41上に樹脂層42を形成する。導電性基板として、たとえば、銅、ニッケル、ステンレス鋼などからなる金属製基板を使用することができる。また、チタン、クロムなどの金属材料をスパッタリングしたシリコン基板などを用いることもできる。樹脂層には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂材料、または紫外線(UV)もしくはX線に感受性を有する化学増幅型樹脂材料などを用いる。樹脂層の厚さは、形成しようとする接触子の厚さに合せて任意に設定することができ、たとえば、40μm〜500μmとすることができる。
【0029】
つぎに、樹脂材料42上にマスク43を配置し、マスク43を介してUVまたはX線44などを照射する。本発明の製造方法においては、高いアスペクト比を有する接触子が得られる点で、UV(波長200nm)より短波長であるX線(波長0.4nm)を使用するのが好ましい。また、X線の中でも指向性の高いシンクロトロン放射のX線(以下、「SR」という。)を使用する態様がより好ましい。SRを用いるLIGA法は、ディープなリソグラフィが可能であり、厚さ数100μmの接触子をミクロンオーダの高精度で大量に製造することができる。
【0030】
マスク43は、接触子のパターンに応じて形成した、UVまたはX線44などの吸収層43aと、透光性基材43bとからなる。透光性基材43bには、窒化シリコン、シリコン、ダイヤモンド、チタンなどを用いる。また、吸収層43aには、金、タングステン、タンタルなどの重金属またはその化合物などを用いる。X線44の照射により、樹脂層42のうち、樹脂層42aは露光され変質するが、樹脂層42bは吸収層43aにより露光されない。このため、ポジ型樹脂の場合、現像により、変質(分子鎖が切断)した部分のみが除去され、図4(b)に示すような樹脂層42bからなる樹脂型が得られる。
【0031】
つぎに、電鋳を行ない、図4(c)に示すように、樹脂型に金属材料層45を堆積する。電鋳とは、金属イオン溶液を用いて導電性基板上に金属材料からなる層を形成することをいう。導電性基板41をめっき電極として電鋳を行なうことにより、樹脂層42bからなる樹脂型に金属材料層45を堆積することができる。樹脂型の空孔部が埋まる程度に金属材料層45を堆積する場合、堆積した金属材料層から、最終的に本発明の接触子を得ることができる。また、樹脂型の高さを超え、樹脂型上にも金属材料を堆積すると、樹脂型および基板41を除去することにより、空孔部を有する金属微細構造体が得られ、得られた構造体を金型として、後述する金型を利用する本発明の接触子の製造方法において有効に使用することができる。
【0032】
電鋳後、研磨または研削により所定の厚さに揃えると、図4(d)に示すような金属微細構造体が得られる。その後、図4(e)に示すように、ウェットエッチングまたはプラズマエッチングにより樹脂型を除去する。つづいて、酸もしくはアルカリによりウェットエッチングし、または機械加工により導電性基板41を除去すると、図4(f)に示すような本発明の接触子を得ることができる。得られた接触子には、必要に応じて、厚さ0.05μm〜1μmの金などからなるコート層を施すことができる。
【0033】
本発明の接触子の製造方法の他の態様は、金型により樹脂型を形成する工程と、導電性基板上で樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、研磨または研削する工程と、樹脂型を除去する工程と、導電性基板を除去する工程とを含むことを特徴とする。かかる方法によっても、リソグラフィにより樹脂型を形成する前述の製造方法と同様に、アスペクト比が0.1〜50であり、高精度で、材料組成およびバネ特性が均一な接触子を容易に製造することができる。このため、過剰なストレスを抑えることができる。また、微細構造体を一体形成できるため、部品点数を減らし、部品コストおよび組立てコストを低減することができる。さらに、同一の金型を用いて、接触子の大量生産が可能である。
【0034】
かかる製造方法は、図5(a)に示すように、凸部を有する金型52を用いて、エンボス成形、反応性成形または射出成型などのモールドにより、図5(b)に示すような凹状の樹脂型53を形成する。樹脂としては、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオキシメチレンなどのポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる。金型52は、本発明の接触子と同様の金属微細構造体であるため、リソグラフィ法と電鋳を組み合せた上述の方法により製造することが好ましい。
【0035】
つぎに、樹脂型53の上下を反転した後、図5(c)に示すように、導電性基板51に貼り付ける。続いて、図5(d)に示すように、樹脂型53を研磨し、樹脂型53aを形成する。その後は前述と同様に、電鋳により樹脂型53aに金属材料層55を堆積し(図5(e))、研磨または研削により厚さを調整した後(図5(f))、樹脂型53aを除去し(図5(g))、導電性基板51を除去すると、図5(h)に示すような本発明の接触子が得られる。
【0036】
実施例1
まず、図4(a)に示すように、導電性基板41上に樹脂層42を形成した。導電性基板としては、チタンをスパッタリングしたシリコン基板を用いた。樹脂層を形成する材料は、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との共重合体を用い、樹脂層の厚さは120μmとした。
【0037】
つぎに、樹脂層42上にマスク43を配置し、マスク43を介してX線44を照射した。X線としては、SRを照射した。マスク43は、接触子のパターンからなる吸収層43aを有するものを使用した。透光性基材43bは窒化シリコンからなり、吸収層43aは窒化タングステンからなるものを用いた。
【0038】
X線44の照射後、メチルイソブチルケトンにより現像し、X線44により変質した部分を除去すると、図4(b)に示すような樹脂層42bからなる樹脂型が得られた。つぎに、電鋳を行ない、樹脂型の空孔部に金属材料層45を堆積した(図4(c))。金属材料としてはニッケルを用いた。
【0039】
電鋳後、研磨して表面の凹凸を除去するとともに、接触子の厚さを100μmに整え(図4(d))、酸素プラズマにより樹脂層42bからなる樹脂型を除去した(図4(e))。続いて、KOH水溶液によりウェットエッチングし、導電性基板41を除去して、図4(f)に示すような、接触子を得た。
【0040】
得られた接触子を図1および図2に示す。この接触子は、被接触物を把持するための1対の先端部1,21と、支持および電気的接続を行なうための支持部3,23と、1対の先端部1,21のそれぞれを支持部3,23に連結するための一対のバネ部2,22とを備える平板状の微細導通接触子であった。また、この接触子は、被接触物に先端部1,21を押し当てたときに、1対の先端部1,21の間に被接触物を挟み、バネ部2,22の弾性変形により被接触物を把持し、摺動接触するように構成され、バネ部2,22における厚さT/幅Wで表されるアスペクト比は10であった。
【0041】
また、全長L1が2400μm、前幅W1が500μm、厚さTが100μmであり、狭ピッチ化および高密度実装に対応できることがわかった。また、バネ部2は、長さLが1000μm、厚さTが100μm、幅Wが10μmであった。接触子の先端部1は、R1が40μm、R2が160μmであった。バネ部2と支持部3との連結部分のR3は40μmであった。支持部3には、1対のバネ部の間に、先端部に向けて配向する柱状のストッパ4があり、ストッパ4の長手方向の長さは250μmであり、ストッパの先端は平面状であった。また、1対の先端部1の間隔Gは90μmであった。
【0042】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、接触部分の磨耗が少なく、バネ部の塑性変形が小さい高精度の微細接触子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の接触子の正面図である。
【図2】本発明の接触子の斜視図である。
【図3】本発明の接触子対の斜視図である。
【図4】本発明の接触子の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の接触子の製造方法を示す工程図である。
【図6】従来の音叉形接触子の斜視図である。
【図7】従来の雄型・雌型の区別のない同一形状で同一サイズの接触子を示す図である。
【図8】従来の雄型・雌型の区別のない同一形状で同一サイズの接触子を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1,21 先端部、2,22 バネ部、3,23 支持部、4,24 ストッパ、41,51 導電性基板、53a 樹脂型、43 マスク、44 X線、45,55 金属材料層、52 金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接触物を把持するための1対の先端部と、
支持および電気的接続を行なうための支持部と、
1対の前記先端部のそれぞれを前記支持部に連結するための一対のバネ部とを備える平板状の微細接触子であって、
被接触物に前記先端部を押し当てたときに、1対の前記先端部の間に被接触物を挟み、前記バネ部の弾性変形により被接触物を把持し、摺動接触するように構成されており、
前記バネ部における厚さT/幅Wで表されるアスペクト比が0.1〜50であることを特徴とする導通接触子。
【請求項2】
前記支持部は、1対の前記バネ部の間に、前記先端部に向けて配向する柱状のストッパを有することを特徴とする請求項1に記載の接触子。
【請求項3】
前記ストッパは、先端が平面状であることを特徴とする請求項2に記載の接触子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接触子の製造方法であって、
リソグラフィにより樹脂型を形成する工程と、
導電性基板上で、前記樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
研磨または研削する工程と、
樹脂型を除去する工程と、
導電性基板を除去する工程と
を含むことを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の接触子の製造方法であって、
金型により樹脂型を形成する工程と、
導電性基板上で、前記樹脂型に金属材料からなる層を電鋳により形成する工程と、
研磨または研削する工程と、
樹脂型を除去する工程と、
導電性基板を除去する工程と
を含むことを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の接触子を、該接触子と同一形状で同一寸法の相手方接触子に押し当てたときに、前記接触子の1対の先端部の間に相手方接触子の支持部を挟むことにより、相手方接触子の1対の先端部の間に前記接触子の支持部が挟まれ、前記接触子のバネ部の弾性変形により相手方接触子を把持し、摺動接触するように構成されることを特徴とする接触子対。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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