説明

接触温熱感計測用センサ装置および接触温熱感計測装置

【課題】接触温熱感計測用センサ装置において、温度センサの温度が基準温度にまで回復する時間を短くして、測定効率を向上させることである。
【解決手段】測定対象側温度センサ12を支持したセンサ支持部材30において、測定側とは反対側面である内周面に制御用温度センサ14を設ける。制御用温度センサ14に金属製の板状部材28を介してペルチェ素子16を接触させる。ペルチェ素子16に対して測定側とは反対側に、放熱フィン一体型筒状部材20と、冷却ファン42を駆動するファンモータ22を設け、ペルチェ素子16に放熱フィン一体型筒状部材20を接触させる。センサ支持部材30と制御用温度センサ14とペルチェ素子16と放熱フィン一体型筒状部材20とファンモータ22とを一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象側温度センサと制御用温度センサと熱電素子と放熱部とを備える接触温熱感計測用センサ装置および接触温熱感計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服の快適性を表す指標として、非特許文献1に記載されているように人の皮膚の冷温感を評価することが考えられている。例えば、非特許文献1では、冷温感に関係する量として、布の熱吸収特性を測定し、熱吸収に伴う熱流量のピーク値をqmaxとして定義している。このような熱流量を、布地の種類に応じて測定することにより、布地の種類に対応する冷温感が評価される。
【0003】
また、最近は、衣服に関する冷温感だけでなく、自動車の内装材、例えば、座席のシート材、ドアの内張り、インスツルメントパネル等に関するタッチ感の1種である、温熱感を評価し、実際の製品の開発に役立てることも考えられている。なお、温熱感や冷温感は、いわゆる暖かさ感や冷たさ感と呼ばれるもので、通常人の皮膚温度相当温度を基準として測定対象の熱吸収特性、放熱特性等を指標として評価される。通常、自動車の内装材の場合、温度は、(特に、夏場等で)人の皮膚温度相当温度よりも高いことが多いため、冷温感だけでなく温熱感でも評価されることがある。
【0004】
これに対して、従来から、布等の測定対象に対して接触させた場合の温熱感、すなわち接触温熱感を計測するために、温度センサまたは温度センサを支持した部材を測定対象に接触させ、その検出温度の温度変化量に対する時間微分等を用いて、接触温熱感の指標である熱流速のピーク値を求めることが考えられている。
【0005】
【非特許文献1】川端季雄、「布の熱・水分移動特性測定装置の試作とその応用」、繊維機械学会誌論文集、1984年、第37号、p.23−34
【特許文献1】特開平5−18592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、自動車の内装材は人の皮膚温度よりも高くなることが多く、複数回接触温熱感を測定する場合には、接触温熱感の計測終了時に、温度センサの温度を基準温度である人の皮膚温度相当温度にまで低下させてから新たに接触温熱感の計測を行う必要がある。このため、温度センサを基準温度まで温度低下させる、すなわち基準温度に温度を回復させるまでに長い時間がかかり、複数回接触温熱感を計測する場合に不便となる可能性がある。接触温熱感を評価する場合、温度変化量に対する時間微分dT/dt、すなわち昇温速度を求めて、この昇温速度が大きいほど温熱感が高いと判定するので、初期状態の温度である基準温度に温度センサの温度を設定することは重要である。なお、本明細書全体及び特許請求の範囲において、「接触温熱感計測」とは、接触温熱感の指標である、測定対象からの熱移動に関する熱流速の最大値を、検出温度変化量の時間微分dT/dt等から求めることをいう。
【0007】
これに対して、従来から、温度センサを有する接触温熱感計測装置により接触温熱感の計測を終える毎に、接触温熱感計測装置をペルチェ素子を有する冷却装置に接触させ、温度センサの温度を基準温度にまで早く低下させることも考えられている。ただし、このようにして接触温熱感計測装置を使用する場合には、接触温熱感計測装置と別体の冷却装置の持ち運びや、接触温熱感計測装置を冷却装置に接触させる作業が面倒で手間を要する。
【0008】
また、非特許文献1には、布に関する冷温感を評価するために、プリント加熱体と、熱板と、温度センサとを一体に設け、温度を制御した熱源を用意し、この熱源に試料である布を接触させることにより、布の保温性等を測定することが記載されている。ただし、非特許文献1には、接触温熱感計測装置、または接触温熱感計測用センサ装置により接触温熱感を複数回計測する場合において、温度センサの温度が基準温度まで回復する時間を短くして、測定効率を向上させることは記載されていない。
【0009】
また、特許文献1には、モジュール本体と、モジュール本体内部に配置した加熱ヒータと、モジュール本体に付設された温度センサとにより構成する環境計測部が記載されている。ただし、この環境計測部は、接触温熱感計測装置や接触温熱感計測用センサ装置ではなく、しかも、単に、加熱ヒータにより、センサ温度を変化する設定温度に等しくしているだけである。センサ温度が高くなり過ぎた場合には、センサ温度が設定温度に低下するまで放置するしかなく、長時間を要する。
【0010】
本発明は、接触温熱感計測用センサ装置と接触温熱感計測装置において、温度センサの温度が基準温度にまで回復する時間を短くして、測定効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る接触温熱感計測用センサ装置は、測定対象側温度センサと、測定対象側温度センサを支持したセンサ支持部材において、測定側とは反対側面に設けられた制御用温度センサと、制御用温度センサに直接または別の部材を介して接触させた熱電素子と、熱電素子に直接または別の部材を介して接触させた放熱部とを、一体化して組み合わせている接触温熱感計測用センサ装置である。
【0012】
また、好ましくは、熱電素子をペルチェ素子とする。
【0013】
また、より好ましくは、放熱部を、放熱フィンを有する部材と、ファンモータにより駆動される冷却ファンとのうちの少なくとも一方を備えるものとする。
【0014】
また、より好ましくは、熱電素子に放熱フィンを有する部材を直接または別の部材を介して接触させ、放熱フィンに対して測定側とは反対側に、ファンモータにより駆動される冷却ファンを配置し、内部に冷却風を流すための空気流路を形成する。
【0015】
また、より好ましくは、ファンモータを内側に固定した外側筒状部材と、外側筒状部材の先端寄りの内側に、外側筒状部材に対し軸方向の変位可能に設けられた内側軸部材と、を備え、放熱フィンは、内側軸部材の先端寄り外周側に放射状に設けられたものとし、空気流路は、外側筒状部材の内側に形成されたものとし、熱電素子と制御用温度センサと測定対象側温度センサとを、放熱フィンよりも測定側に配置する。
【0016】
また、より好ましくは、外側筒状部材の先端部外周側に嵌合され、センサ支持部材の周囲を覆う筒状のカバー部材と、外側筒状部材とカバー部材との間に設けられた外径側弾力付与手段とを、備え、カバー部材に測定対象を押し付けた場合に、カバー部材が外径側弾力付与手段の弾力に抗して、外側筒状部材の基端側に変位するようにする。
【0017】
また、ファンモータを内側に固定した外側筒状部材と、外側筒状部材の先端寄りの内側に、外側筒状部材に対し軸方向の変位可能に設けられた内側軸部材と、を備え、放熱フィンは、内側軸部材の先端寄り外周側に放射状に設けられたものとし、空気流路は、外側筒状部材の内側に形成されたものとし、熱電素子と制御用温度センサと測定対象側温度センサとを、放熱フィンよりも測定対象側に配置する構成において、好ましくは、内側軸部材の外周側に螺合した調節用ナットと、外側筒状部材と調節用ナットとの間に設けられた内径側弾力付与手段とを、備え、内側軸部材に対する調節用ナットの位置を調節することにより、測定対象との接触部に作用する接触圧を調節可能とする。
【0018】
また、本発明に係る接触温熱感計測用センサ装置において、好ましくは、測定対象側温度センサは、白金抵抗体をシリコーン成形膜により被覆することにより構成する。
【0019】
また、本発明に係る接触温熱感計測装置は、本発明に係る接触温熱感計測用センサ装置を有し、制御用温度センサからの検出温度を表す信号を制御部に入力し、制御部は、制御用温度センサからの信号に対応して熱電素子に加える電圧を変化させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る接触温熱感計測用センサ装置および接触温熱感計測装置の場合、測定対象側温度センサを支持したセンサ支持部材の測定側とは反対側面に設けられた制御用温度センサと、制御用温度センサに直接または別の部材を介して接触させた熱電素子と、熱電素子に直接または別の部材を介して接触させた放熱部とを一体化して組み合わせている。このため、熱電素子に加える電圧を制御用温度センサからの検出信号に応じて制御することにより、計測終了時に測定対象側温度センサの温度が基準温度よりも上昇している場合でも、測定対象側温度センサを温度低下させるとともに、放熱部によっても測定対象側温度センサを温度低下させることができる。このため、温度センサの基準温度への温度回復の時間を短くでき、複数回接触温熱感を計測する場合でも、測定効率を向上させることができる。
なお、熱電素子に加える電圧を制御する制御部は、接触温熱感計測用センサ装置の内部に一体に設けることも、接触温熱感計測用センサ装置と別体の部分に設けることもできる。
【0021】
また、放熱部は、放熱フィンを有する部材と、ファンモータにより駆動される冷却ファンとのうちの少なくとも一方を備える、の構成を備える場合には、計測終了時に、測定対象側温度センサの温度が基準温度よりも上昇している場合において、測定対象側温度センサの温度をより早期に低下させることができる。なお、より好ましくは、放熱フィンと冷却ファンとの両方を備える構成とする。
【0022】
また、外側筒状部材の先端部外周側に嵌合され、センサ支持部材の周囲を覆う筒状のカバー部材と、外側筒状部材とカバー部材との間に設けられた外径側弾力付与手段とを、備え、カバー部材に測定対象を押し付けた場合に、カバー部材が外径側弾力付与手段の弾力に抗して、外側筒状部材の基端側に変位するようにする構成によれば、接触温熱感の非計測時に、測定対象側温度センサをカバー部材により外部から保護しやすくするとともに、計測時には、測定対象側温度センサを支持したセンサ支持部材を測定対象に接触させることにより接触温熱感の計測を行いやすくできる。
【0023】
また、内側軸部材の外周側に螺合した調節用ナットと、外側筒状部材と調節用ナットとの間に設けられた内径側弾力付与手段とを、備え、内側軸部材に対する調節用ナットの位置を調節することにより、測定対象との接触部に作用する接触圧を調節可能とする構成によれば、測定時に、測定者が外側筒状部材の外側を持ち、測定対象にセンサ支持部材を接触させた場合の接触圧の大きさを所定の大きさに維持しやすくできるとともに、その接触圧の調整を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、本実施の形態の接触温熱感計測装置を構成する接触温熱感計測用センサ装置である、携帯型センサ装置10の全体図を、図2は図1の右部拡大図を、図3は図2のA部拡大図を示している。
【0025】
図1に示すように、携帯型センサ装置10は、測定対象側温度センサ12と、制御用温度センサ14と、熱電素子であるペルチェ素子16と、放熱部である放熱フィン18を有する放熱フィン一体型筒状部材20と、同じく放熱部であるファンモータ22により駆動される冷却ファン42とを、一体化して組み合わせている。
【0026】
より具体的には、携帯型センサ装置10は、ファンモータ22と、外側筒状部材24と、内側軸部材26と、放熱フィン一体型筒状部材20と、ペルチェ素子16と、板状部材28と、制御用温度センサ14と、センサ支持部材30と、測定対象側温度センサ12とを備える。外側筒状部材24は、外径の異なる第1の円筒部材32と第2の円筒部材34と第3の円筒部材36とを、端部同士を嵌合させる、いわゆるテレスコープ状に組み合わせた状態で、第1から第3の円筒部材32,34,36同士を結合することにより構成している。外側筒状部材24の基端側(図1の左端側)に位置する第1の円筒部材32の基端部(図1の左端部)中心部に孔部を形成しており、孔部の内側にファンモータ22のケース38を嵌合固定している。
【0027】
ケース38から外側筒状部材24と反対側に回転軸40の端部を突出させるとともに、突出させた回転軸40の端部に冷却ファン42を結合している。冷却ファン42は、ファンモータ22により駆動する。また、回転軸40の回転数を可変制御可能としている。また、ケース38の外周面の円周方向一部または複数個所に軸方向全長に亘る複数の溝部44を有し、この溝部44により、ケース38の外周面と第1の円筒部材32の内周面との間に、軸方向に通じる第1の空気流路46を形成している。また、ケース38の端部にファンカバー56を嵌合固定し、ファンカバー56により冷却ファン42の周囲を覆っている。ファンカバー56は有底筒状で、底板部の複数個所に軸方向に貫通する通孔50を形成している。
【0028】
外側筒状部材24の中間に位置する第2の円筒部材34と、先端側(図1,2の右側)に位置する第3の円筒部材36との内側に、内側軸部材26を摺動可能、すなわち軸方向の変位可能に嵌合するように設けている。内側軸部材26は互いに一体の大径部52と小径部54とを備え、大径部52外周面の円周方向一部または複数個所に、軸方向全長に亘る溝部57を有する。そして、この溝部57により、大径部52外周面と第2の円筒部材34の内周面との間に、軸方向に通じる第2の空気流路58を形成している。
【0029】
内側軸部材26の先端寄り(図1,2の右端寄り)外周側である、小径部54の周囲に、放熱フィン一体型筒状部材20を嵌合固定している。放熱フィン一体型筒状部材20は、図2に詳しく示すように、嵌合筒部60と、嵌合筒部60の先端部(図2の右端部)に設けた底板部62と、放熱フィン18とを一体化させている。放熱フィン18は、嵌合筒部60の外周面において、軸方向一端(図2の右端)から軸方向中央寄りに亘り放射状に設けている。また、放熱フィン18の軸方向他端側(図2の左端側)の先端の外接円の直径を軸方向一端側の先端の外接円の直径よりも大きくして、軸方向他端側の先端を第3の円筒部材36の内周面に摺動接触させている。
【0030】
なお、放熱フィン18を、嵌合筒部60の軸方向一端側(図2の右端側)のみに設けて、放熱フィン18の先端が第3の円筒部材36の内周面に接触しないようにすることもできる。この場合、第3の円筒部材36の内周面に接触する部分は、放熱フィン一体型筒状部材20外周面の、円周方向一部または複数個所に軸方向の溝部を形成した円筒面とする。また、放熱フィン一体型筒状部材20の材質は、放熱性の高いアルミ合金等の金属とする。
【0031】
放熱フィン一体型筒状部材20の基端側(図1,2の左端側)外周面にねじ部64を形成するとともに、ねじ部64に調節用ナット66と、抜け止め用ナット68とを螺合している。第3の円筒部材36の基端部(図2の左端部)内周面に形成したつば部70と、調節用ナット66との間において、内側軸部材26の周囲に、内径側弾力付与手段であるコイルばね72を配置し、コイルばね72により内側軸部材26に、外側筒状部材24に対し先端側(図2の右側)に変位する方向の弾力を付与している。調節用ナット66と抜け止め用ナット68とは接触させている。第3の円筒部材36に形成した窓部74を通じて、外側から調節用ナット66と抜け止め用ナット68とを回転させることができるようにしている。また、内側軸部材26の先端(図2の右端)は、放熱フィン一体型筒状部材20の底板部62の内側面(図2の左側面)に突き当てるか、小さな隙間を介して対向させている。
【0032】
底板部62の外側面(図2の右側面)にペルチェ素子16を接触させるとともに、ペルチェ素子16を挟んで底板部62と反対側に板状部材28を配置している。そして、板状部材28の複数個所に形成した通孔76を通じて挿入した、図示を省略する複数のねじを、底板部62の外側面に形成した複数のねじ孔78に螺合している。そして、板状部材28と底板部62との間にペルチェ素子16を狭持している。板状部材28は、アルミ合金等の金属製で、中心部に突部80を有する円板状とし、通孔76は突部80から外れた外径側に形成している。また、図3に詳しく示すように、突部80にシリコーンゴム等のゴム、合成樹脂等により構成するセンサ支持部材30を嵌合している。センサ支持部材30は、有底筒状で、筒部82の内周面と突部80の外周面との間に制御用温度センサ14を設けている。
【0033】
また、センサ支持部材30の底板部84の厚さ方向中央部に測定対象側温度センサ12を設けている。測定対象側温度センサ12は、底板部84の先端面85から所定の厚さ(例えば0.5mm程度)奥側に入り込んだ部分に埋め込んでいる。このために、図示の例の場合には、センサ支持部材30を薄板部材86と本体部材88とを結合することにより構成しており、本体部材88の底板部の先端面中央部に形成した孔部に測定対象側温度センサ12を埋め込むとともに、所定の厚さの薄板部材86を結合している。薄板部材86と本体部材88とは同じ材料により造っている。なお、センサ支持部材30を単一の部材により構成するとともに、製造時に底板部84の厚さ方向中央部に測定対象側温度センサ12を埋め込むこともできる。測定対象側温度センサ12は、極小の白金抵抗体を薄膜のシリコーン成形膜により被覆することにより構成している。
【0034】
本実施の形態の場合、センサ支持部材30の底板部84の先端面85が測定対象に接触させる接触部となる。すなわち、制御用温度センサ14は、センサ支持部材30において測定側とは反対側面である内周面に設けられる。また、図示の例では、測定対象に対する接触部を、平面状としているが、図4に別例を示すようにセンサ支持部材30の底板部84の先端面85aを、部分球面状とすることもできる。このように部分球面状とした場合には、測定対象がステアリングホイールの表面等の曲面状である場合でも、測定対象側温度センサ12の近くのセンサ支持部材30の先端を、測定対象により精度よく接触させることができる。なお、図4に示す別例の場合には、センサ支持部材30を単一の材料により構成している。これに対して、図3に示すように、センサ支持部材30の先端面85を平面状とする場合には、測定対象の温度のばらつきを緩和して安定して測定できる。
【0035】
また、図1,2に示すように、内側軸部材26に対する調節用ナット66の位置を調節することにより、コイルばね72による、測定対象との接触部に作用する接触圧を調節可能としている。
【0036】
また、図2に詳しく示すように、第3の円筒部材36の先端部(図2の右端部)周囲にカバー部材94を嵌合している。カバー部材94は、略円筒状の本体部96に結合した抑え部材98の端部を、第3の円筒部材36の外周面に設けたつば部100に突き当てている。本体部96を構成する筒部の内周面の先端寄り(図2の右端寄り)に大径段部102を設けており、大径段部102の内側において、段差面104とつば部100との間に、外径側弾力付与手段であるコイルばね106を設けている。このコイルばね106により、カバー部材94は、第3の円筒部材36の先端(図2の右端)から飛び出す方向の弾力が付与される。そして、カバー部材94に測定対象を押し付けた場合に、カバー部材94がコイルばね106の弾力に抗して、外側筒状部材24の基端側(図2の右端側)に変位するようにしている。また、カバー部材94の底板部にセンサ支持部材30の外径よりも直径が大きい通孔108を形成している。
【0037】
さらに、制御部である図示しないマイクロコンピュータを、携帯型センサ装置10と別体に設けるとともに、マイクロコンピュータに接続したケーブル110(図1)を携帯型センサ装置10に接続している。ケーブル110の図示しない導線は、第2の円筒部材34に形成した通孔112(図1)の内側を通じて、内側軸部材26の内部、放熱フィン一体型筒状部材20の内部を介して、ペルチェ素子16と制御用温度センサ14と測定対象側温度センサ12とに接続している。そして、マイクロコンピュータに、ケーブル110を通じて、制御用温度センサ14からの検出温度を表す信号と、測定対象側温度センサ12からの検出温度を表す信号とを入力可能としている。また、マイクロコンピュータは、制御用温度センサ14からの信号に対応してペルチェ素子16に加える電圧を変化させるようにしている。本実施の形態の接触温熱感計測装置は、マイクロコンピュータと携帯型センサ装置10とを備える。
【0038】
ペルチェ素子16の詳しい図示は省略するが、加える電圧を制御することにより、軸方向片側(図1から図3の右側)、すなわち測定対象側温度センサ12の側の温度を低下または上昇させることができるようにしている。ペルチェ素子16の軸方向片側の温度が低下(または上昇)する場合には、軸方向他側(図1から図3の左側)の温度は上昇(または低下)する。
【0039】
また、外側筒状部材24の内部に形成した第1空気流路46と第2空気流路58とを含む部分により、外側筒状部材24とカバー部材94との内側に、測定対象側(図1から図3の右側)から取り入れた空気を冷却ファン42(図1)に向け流すための空気流路を構成している。図1に矢印イで示すように、測定側から内部に取り入れた空気は、カバー部材94の通孔108、第3の円筒部材36の内周面と板状部材28および放熱フィン一体型筒状部材20の外周面との間、第2の空気流路58、第3の空気流路46を通じて、冷却ファン42に送られ、図1に矢印ロで示すように、ファンカバー56の通孔50を通じて、測定側とは反対側(図1から図3の左側)に送られる。また、マイクロコンピュータは、冷却ファン42を駆動するファンモータ22の駆動状態も制御するように、ケーブル110の図示しない導線をファンモータ22に接続している。
【0040】
このような本実施の形態の温熱感計測用センサ装置と温熱感計測装置の場合、センサ支持部材30の内周面に設けられた制御用温度センサ14と、制御用温度センサ14に板状部材28を介して接触させたペルチェ素子16と、ペルチェ素子16に直接接触させた放熱フィン一体型筒状部材20とを一体化して組み合わせている。このため、ペルチェ素子16に加える電圧を制御用温度センサ14からの検出信号に応じて制御することにより、計測終了時に、測定対象側温度センサ12の温度が基準温度よりも上昇している場合でも、測定対象側温度センサ12を温度低下させるとともに、放熱フィン18によっても測定対象側温度センサ12を温度低下させることができる。このため、測定対象側温度センサ12の、人の皮膚温度相当温度である基準温度への温度回復の時間を短くでき、複数回温度を計測する場合でも、測定効率を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、放熱部は、放熱フィン18を有する放熱フィン一体型筒状部材20と、ファンモータ22により駆動される冷却ファン42とを備えるため、計測終了時に、測定対象側温度センサ12の温度が基準温度よりも上昇している場合において、測定対象側温度センサ12の温度をより早期に低下させることができる。すなわち、計測終了時に測定対象側温度センサ12の温度が基準温度よりも上昇している場合、測定対象側温度センサ12側のペルチェ素子16の片側(図1から図3の右側)の温度が低下するように電圧を制御するとともに、ファンモータ22を駆動する。これにより、外側筒状部材24の内側の空気流路を通じて、冷却風が流れ、ペルチェ素子16により温度上昇した放熱フィン一体型筒状部材20が空気との熱交換により温度低下する。この結果、ペルチェ素子16全体の温度が低下して、板状部材28、センサ支持部材30を介して測定対象側温度センサ12の温度を基準温度にまでより早期に低下させることができる。また、ペルチェ素子16を備えることにより、計測終了時に、測定対象側温度センサ12の温度が基準温度よりも低下している場合に、ペルチェ素子16に加える電圧を制御することでペルチェ素子16の片側である、測定対象側温度センサ12側の温度を上昇させることもできる。
【0042】
また、外側筒状部材24の先端部外周側に嵌合され、センサ支持部材30の周囲を覆う筒状のカバー部材94と、外側筒状部材24とカバー部材94との間に設けたコイルばね106とを、備え、カバー部材94に測定対象を押し付けた場合に、カバー部材94がコイルばね106の弾力に抗して、外側筒状部材24の基端側(図1,2の左端側)に変位するようにしているので、接触温熱感の非計測時に、測定対象側温度センサ12をカバー部材94により外部から保護しやすくするとともに、計測時には、測定対象側温度センサ12を支持したセンサ支持部材30を測定対象に接触させることにより接触温熱感の計測を行いやすくできる。
【0043】
また、内側軸部材26の外周側に螺合した調節用ナット66と、外側筒状部材24と調節用ナット66との間に設けたコイルばね72とを、備え、内側軸部材26に対する調節用ナット66の位置を調節することにより、測定対象との接触部に作用する接触圧を調節可能としているので、測定時に、測定者が外側筒状部材24の外側を持ち、測定対象にセンサ支持部材30を接触させた場合の接触圧の大きさを所定の大きさに維持しやすくできるとともに、その接触圧の調整を容易に行える。例えば、表面粗さが異なる種々の測定対象に関して接触温熱感を計測する場合でも、接触圧を一定にして、表面粗さの違いにより接触温熱感に違いが表れるのを防止できる。また、測定者の押し付け力の違いにより、接触温熱感に違いが表れるのも防止できる。
【0044】
なお、制御用温度センサ14は、板状部材28を介さず、ペルチェ素子16に直接接触させることもできる。ただし、ペルチェ素子16の温度は、時間に対するばらつきが生じる可能性があるため、制御用温度センサ14を所定の熱容量を有する板状部材28を介してペルチェ素子16に接触させるのが、制御用温度センサ14の検出温度を用いてペルチェ素子16をより良好に制御する面から好ましい。また、ペルチェ素子16にアルミ合金等の金属等の、熱伝導性の良好な材質から成る別の部材を介して放熱フィン一体型筒状部材20を接触させることもできる。
【0045】
図5は、本発明の温熱感計測装置を使用して、65℃の高温環境下における測定対象である、高温物体のウレタンに関して接触温熱感の指標である熱流速を計測した実験結果を示すグラフである。実験の初期状態では、測定対象側温度センサ12(図1から図3)の検出部の温度を人の皮膚温度相当の29℃に設定した。なお、実際の実験は、図3のt1時点から開始した。図3は、時間と、測定対象側温度センサ12の検出温度T(℃)と、この検出温度Tの変化量に対する時間微分dT/dtから求めた熱流速、すなわち測定対象からの単位面積当たりの熱移動速度であるq{J/(cm2・s)}と、熱流速qのその時点までの最大値であるqmax{J/(cm2・s)}との関係を示している。図3において、実線aは測定対象側温度センサ12の検出温度Tを、実線bは熱流速であるq{J/(cm2・s)}を、実線cは熱流速の最大値qmaxを表している。
【0046】
図5から分かるように、時間t2から、センサ支持部材30の先端面85(図2,3)が測定対象に接触している。また、熱流速の最大値qmaxは、およそ1.1J/(cm2・s)であった。この熱流速の最大値qmaxが温熱感の比較に用いられる指標となる。また、本実験の場合、計測終了時から測定対象側温度センサ12の温度を基準温度である29℃に低下させるまでの時間を、2分以内と短時間で納めることができた。このため、次の計測までの時間を、2分以内の短時間とできることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態の接触温熱感計測装置を構成する接触温熱感計測用センサ装置である、携帯型センサ装置の断面図である。
【図2】図1の右部拡大断面図である。
【図3】図2のA拡大断面図である。
【図4】センサ支持部材の先端形状の別例を示す、図3に対応する図である。
【図5】本発明の接触温熱感計測装置を用いて、測定対象に関する接触温熱感の指標である熱流速の最大値を計測した実験結果の1例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
10 携帯型センサ装置、12 測定対象側温度センサ、14 制御用温度センサ、16 ペルチェ素子、18 放熱フィン、20 放熱フィン一体型筒状部材、22 ファンモータ、24 外側筒状部材、26 内側軸部材、28 板状部材、30 センサ支持部材、32 第1の円筒部材、34 第2の円筒部材、36 第3の円筒部材、38 ケース、40 回転軸、42 冷却ファン、44 溝部、46 第1の空気流路、50 通孔、52 大径部、54 小径部、56 ファンカバー、57 溝部、58 第2の空気流路、60 嵌合筒部、62 底板部、64 ねじ部、66 調節用ナット、68 抜け止め用ナット、70 つば部、72 コイルばね、74 窓部、76 通孔、78 ねじ孔、80 突部、82 筒部、84 底板部、85,85a 先端面、86 薄板部材、88 本体部材、94 カバー部材、96 本体部、98 抑え部材、100 つば部、102 大径段部、104 段差面、106 コイルばね、108 通孔、110 ケーブル、112 通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象側温度センサと、
測定対象側温度センサを支持したセンサ支持部材において、測定側とは反対側面に設けられた制御用温度センサと、
制御用温度センサに直接または別の部材を介して接触させた熱電素子と、
熱電素子に直接または別の部材を介して接触させた放熱部とを、
一体化して組み合わせている接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
熱電素子はペルチェ素子であることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
放熱部は、放熱フィンを有する部材と、ファンモータにより駆動される冷却ファンとのうちの少なくとも一方を備えることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
熱電素子に放熱フィンを有する部材を直接または別の部材を介して接触させ、
放熱フィンに対して測定側とは反対側に、ファンモータにより駆動される冷却ファンを配置し、
内部に冷却風を流すための空気流路を形成したことを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
ファンモータを内側に固定した外側筒状部材と、
外側筒状部材の先端寄りの内側に、外側筒状部材に対し軸方向の変位可能に設けられた内側軸部材と、を備え、
放熱フィンは、内側軸部材の先端寄り外周側に放射状に設けられており、
空気流路は、外側筒状部材の内側に形成されており、
熱電素子と制御用温度センサと測定対象側温度センサとを、放熱フィンよりも測定側に配置していることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
外側筒状部材の先端部外周側に嵌合され、センサ支持部材の周囲を覆う筒状のカバー部材と、
外側筒状部材とカバー部材との間に設けられた外径側弾力付与手段とを、備え、
カバー部材に測定対象を押し付けた場合に、カバー部材が外径側弾力付与手段の弾力に抗して、外側筒状部材の基端側に変位するようにしていることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
内側軸部材の外周側に螺合した調節用ナットと、
外側筒状部材と調節用ナットとの間に設けられた内径側弾力付与手段とを、備え、
内側軸部材に対する調節用ナットの位置を調節することにより、測定対象との接触部に作用する接触圧を調節可能としていることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1に記載の接触温熱感計測用センサ装置において、
測定対象側温度センサは、白金抵抗体をシリコーン成形膜により被覆することにより構成していることを特徴とする接触温熱感計測用センサ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1に記載の接触温熱感計測用センサ装置を有し、
制御用温度センサからの検出温度を表す信号を制御部に入力し、
制御部は、制御用温度センサからの信号に対応して熱電素子に加える電圧を変化させることを特徴とする接触温熱感計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−89343(P2008−89343A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268220(P2006−268220)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(395009145)カトーテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】