接触燃焼式ガスセンサ
【課題】ガス感度が高く、長期にわたって安定な感度特性を維持する接触燃焼式ガスセンサを提供する。
【解決手段】基板1上に形成した凹部10を跨ぐように形成された支持用絶縁膜2と、支持用絶縁膜2上に形成され通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体3Aと、この検知抵抗体3Aの近傍で検知抵抗体3Aの長手方向に沿って保護膜4および支持用絶縁膜2を貫通する複数の開口部11と、開口部11を通して支持用絶縁膜2の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜2の凹部10と反対側の面で検知抵抗体3Aを覆い、支持用絶縁膜2の凹部10側の開口部11の開口領域よりも広く膨出した膨出部12Aが形成された触媒層12を備える。
【解決手段】基板1上に形成した凹部10を跨ぐように形成された支持用絶縁膜2と、支持用絶縁膜2上に形成され通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体3Aと、この検知抵抗体3Aの近傍で検知抵抗体3Aの長手方向に沿って保護膜4および支持用絶縁膜2を貫通する複数の開口部11と、開口部11を通して支持用絶縁膜2の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜2の凹部10と反対側の面で検知抵抗体3Aを覆い、支持用絶縁膜2の凹部10側の開口部11の開口領域よりも広く膨出した膨出部12Aが形成された触媒層12を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触燃焼式ガスセンサに関し、更に詳しくは、可燃性ガスを検知するのに適した接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼式ガスセンサとしては、ガス検知素子と参照素子とで構成されたものがある。そのガス検知原理は、検知抵抗体(発熱体)により加熱されたガス検知素子上の貴金属触媒等に被検知ガスが接触すると、この被検知ガスが燃焼して検知抵抗体を温度上昇させて抵抗上昇を起こすことを領している。この検知抵抗体の抵抗上昇をブリッジ回路で電圧差として捉えることにより、被検知ガス濃度を検知することができる。
【0003】
通常、ガス検知素子と参照素子は、例えば白金等の貴金属細線をコイル状に巻いた検知抵抗体を一対備える。ガス検知素子の検知抵抗体には貴金属触媒を担持したセラミック粉体のペーストを、参照素子の検知抵抗体には貴金属触媒を担持しないセラミック粉体のペーストを塗布して、それぞれペーストを加熱焼結して作製されている。このようにして得られた一対のセンサ素子を、ブリッジ回路に構成してガス濃度に応じた電圧信号を捉えるのが一般である。
【0004】
近年、このような接触燃焼式ガスセンサでは、検知抵抗体に断続的に通電しても必要な加熱温度が得られるように、検知抵抗体を通電するとき熱時定数をできるだけ小さくして省電力化したり、小型化の要望を満足するように、検知抵抗体支持部を基板に形成した凹部空間から浮かせた構造のマイクロセンサが開発されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
図15および図16に示すように、このような接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子100は、基板101の表面側に白金(Pt)でなる検知抵抗体103をパルス波形状に形成し、検知抵抗体103の両端部を延在してそれぞれパッド部103A、103Bとしている。そして、検知抵抗体103が形成された島状の検知抵抗体支持部111が基板101から浮き上がるように、検知抵抗体103の下方の基板101に空洞110を形成している。この検知抵抗体支持部111の四隅には、空洞110を跨いで基板101と一体的に設けられたアーム部106、107、108、109が延在されている。このように検知部111が空洞110を介して基板101から浮いた構造としたことにより、検知抵抗体103が形成された面の熱容量を小さくしている。
【0006】
図16に示すように、検知抵抗体支持部111は、絶縁膜102の上に検知抵抗体103が形成され、検知抵抗体103の上に保護膜104が形成され、検知抵抗体支持部111の表面から裏面に亘って触媒層105が被覆されている。なお、ガス検知素子は、貴金属触媒が担持されたセラミック焼結体でなる触媒層105で覆われ、他方の参照素子は貴金属触媒を担持しないセラミック焼結体で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−298617号公報
【特許文献2】特開2007−278996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
検知抵抗体の上部を覆う触媒層は、検知対象ガスが触媒層に接触して触媒燃焼した場合、燃焼熱はほとんどが放熱によりロスが大きく、効率よく検知抵抗体へ熱伝達されず、ガス感度が小さいものであった。触媒量を増加して検知対象ガスが触媒層に接触したときの燃焼熱を増加させるために抵抗体支持部111の裏面(空洞側の面)に触媒層105を形成する接触燃焼式ガスセンサが上述の特許文献1および2に開示されている。このような形態のガスセンサでは、セラミック粉体のペーストが、平面構造の検知抵抗体103が形成された抵抗体支持部111の上に厚膜印刷や、定量吐出装置(ディスペンサ)などを用いて塗布されるが、抵抗体支持部111の裏面側に触媒を担持したセラミック焼結体を形成する工法が繊細かつ複雑で、また、抵抗体支持部111の裏面側にセラミック焼結体が正しく形成されているかを確認することが困難であった。したがって、接触燃焼式ガスセンサのガス感度の向上を確実に図ることが困難であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ガス感度が高く、長期にわたって安定な感度特性を維持する接触燃焼式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、接触燃焼式ガスセンサであって、基板と、この基板上に形成した凹部空間を跨ぐように形成された支持用絶縁膜と、この支持用絶縁膜における凹部空間と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体と、この検知抵抗体の近傍の少なくとも支持用絶縁膜を貫通する開口部と、この開口部を通して支持用絶縁膜の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側の面で検知抵抗体を覆い、支持用絶縁膜の凹部空間側の面で開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成された触媒層と、を備えることを要旨とする。なお、本発明では、このような構成のもの(ガス検知素子)と同様の構成で触媒層のみが触媒を担持しない材料層で構成されたもの(参照素子)を備えることが好ましい。
【0011】
本発明では、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側で検知対象ガスが触媒層に接触して生じた燃焼熱に加えて、支持用絶縁膜の裏面側の凹部空間を通過した検知対象ガスが開口部を介して触媒層に接触した燃焼熱も検知抵抗体に伝導するため、電気抵抗値の変化を大きくすることができ、接触燃焼式ガスセンサ全体として感度を向上させることができる。また、触媒層は、支持用絶縁膜の凹部空間側の開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成されているため所謂アンカー効果を有し、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側へ触媒層が剥がれることを抑制する作用がある。
【0012】
ここで、開口部は、検知抵抗体の長手方向に沿って配置された複数の矩形の穴や、検知抵抗体の長手方向に沿って形成されたスリットであってもよい。開口部が多数の矩形の穴の場合、穴が間欠的に開けられているため、支持用絶縁膜の剛性の低下を抑制することができる。開口部がスリットである場合は、検知対象ガスが開口部を介して触媒層に接触する面積もしくは、開口部から膨出する触媒量が増大し、凹部空間を通過した検知対象ガスが触媒層と接触する面積が大きくなり、センサ感度をさらに向上できる。
【0013】
また、触媒層は、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側の面からセラミック粉体のペーストが塗布されて、このペーストが焼結されてなるようにすると、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側から塗布された触媒層が開口部を通して支持用絶縁膜の凹部空間側に膨出するように形成することが容易且つ確実となる。
【0014】
さらに、支持用絶縁膜は、凹部空間を跨ぐ複数の支持アーム部を備え、検知抵抗体の両端部が異なる支持アーム部から導出されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス感度が高く、長期にわたって安定な感度特性を維持できる接触燃焼式ガスセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の触媒層を形成する前の状態を示す平面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図7】図6VII-VII断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図9】図8のIX-IX断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図11】図9のXI-XI断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの平面図である。
【図13】第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを用いたブリッジ回路である。
【図14】比較例、第1実施例および第2実施例におけるメタン濃度と1V当たりの出力電圧の実験結果を示す図である。
【図15】従来の接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図16】従来の接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各層の厚みや厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1〜図5、図12および図13は、本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサについて示している。図1および図2は触媒層12を形成する前の状態を示し、図3および図4は触媒層12を形成した後の状態を示している。本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサは、図12に示すように、同一の基板にガス検知素子20と参照素子21とを備えて構成されている。なお、ガス検知素子20と参照素子21とは、ガス検知素子20が触媒を担持したセラミック焼結体でなる触媒層12を有し、参照素子21が触媒を担持しないセラミック焼結体層12Aでなる点が異なるだけである。したがって、ガス検知素子20の構成を詳細に説明し、参照素子21の構成の説明は省略する。
【0019】
図3および図4に示すように、ガス検知素子20は、基板1と、この基板1上に形成した凹部(凹部空間)10を跨ぐように形成された絶縁膜(以下、支持用絶縁膜という。)2と、支持用絶縁膜2における凹部10と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体3Aと、この検知抵抗体3Aの近傍の少なくとも支持用絶縁膜2を貫通する開口部11と、この開口部11を通して支持用絶縁膜2の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜2の凹部10と反対側の面で検知抵抗体3Aを覆い、支持用絶縁膜2の凹部10側の開口部11の開口領域よりも広く膨出した膨出部12Aが形成された触媒層12と、備えて構成されている。
【0020】
基板1は、所定の結晶方位を有するシリコン単結晶からなり、その上面に平面形状が矩形の凹部10が設けられている。この凹部10は、基板1をエッチングすることにより形成されている。基板1の表面には、絶縁膜(支持用絶縁膜を含む)2が形成されている。この絶縁膜2は、基板1の上面に対し物理蒸着により形成された酸化アルミニウム膜である。
【0021】
絶縁膜2は、基板1の上面に対し物理蒸着(PVD)により形成された酸化アルミニウム膜でなる。酸化アルミニウムは、電気的絶縁性を有するとともに、高い熱伝導率を有している。なお、酸化アルミニウム膜以外にも、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁性を有し且つ熱伝導率の良い物質を用いてもよい。また、物理蒸着以外にも、例えば化学蒸着処理や他の方法を用いて絶縁膜2を形成してもよい。
【0022】
図1および図2に示すように、この絶縁膜2におけるガス検知素子形成領域には、白金(Pt)でなる検知抵抗体3Aがパルス波形状(ジグザグ状)に形成され、検知抵抗体3Aの両端部分3Bを延在してそれぞれの最端部をパッド部3C、3Dとしている。そして、支持用絶縁膜2の上に検知抵抗体3Aが形成された島状の検知抵抗体支持部5が基板1から浮き上がるように、検知抵抗体3Aの下方に上記凹部10をエッチングにより加工、形成している。この検知抵抗体支持部5の四隅には、この凹部(凹部空間)10を跨いで基板1と一体的に設けられたアーム部6、7、8、9を架け渡すように一体に形成している。このように検知抵抗体支持部5が凹部10を介して基板1から浮いた構造としたことにより、検知抵抗体3Aが形成された面の熱容量を小さくしている。
【0023】
図2に示すように、検知抵抗体支持部5は、支持用絶縁膜2の上に検知抵抗体3Aが形成され、検知抵抗体3Aの上に保護膜4が形成されている。そして、図1および図2に示すように、検知抵抗体3Aの近傍には、検知抵抗体3Aの長手方向に沿って、複数の矩形状の開口部11が間欠的に形成されている。この開口部11は、保護膜4および絶縁膜2を貫通している。図3および図4に示すように、検知抵抗体支持部5の表面全体に亘って触媒層12が形成されている。この触媒層12は、開口部11にも充填され、開口部11における凹部10側の開口から開口領域よりも外側へ膨出する膨出部12Aを有している。
【0024】
本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子20は、検知抵抗体支持部5とアーム部6、7、8、9を残して、基板1に凹部10が形成されているため、抵抗体支持部5の下面側にも検知対象ガスが回り込むことができる。図5に示すように、抵抗体支持部5の表面側の触媒層12に検知対象ガスが接触すると、その燃焼熱は、検知抵抗体3Aに伝達されるとともに、開口部11内の触媒層12と保護膜4を介して検知抵抗体3Aの側壁部へ伝達される。また、抵抗体支持部5の下面側に回りこんだ検知対象ガスは触媒槽12の膨出部12Aに接触して検知対象ガスが燃焼し燃焼量が増加する。さらに、膨出部12Aは検知抵抗体近傍に存在するため、膨出部12Aに接触したガスの燃焼熱は、図中膨出部12A内に矢印で示すように、開口部11内に充填された触媒層12と検知抵抗体3Aの側壁に存在する保護膜4とを介して伝達されやすくなる。このため、検知抵抗体3Aへ伝導される燃焼熱は、従来の構造に比較して大幅に増加するため(燃焼熱量と熱伝達効率が向上するため)、センサ感度を向上させることができる。
【0025】
また、本実施の形態では、触媒層12において凹部10側に形成された膨出部12Aが、触媒層12が剥離することを防止する所謂アンカー効果を奏するため、耐久性の高い接触燃焼式ガスセンサを得ることができる。
【0026】
(第1の実施の形態の変形例)
図6および図7は、上記第1の実施の形態の変形例に係るガス検知素子20Aを示している。この変形例は、図6の平面図から判るように、屈曲して互いに平行をなす検知抵抗体3A同士の間だけではなく、抵抗体支持部5の周縁部に沿う検知抵抗体3Aの外側にも開口部11Aを付加したものである。この変形例における他の構成は、上記第1の実施の形態の構成と同様である。
【0027】
この変形例では、上記第1の実施の形態における検知抵抗体3Aに沿って形成される開口部11に加えて、外側の開口部11Aも存在するため、検知抵抗体3Aの側壁に開口部11、11A内に充填された触媒層12を介して伝達される燃焼熱を増やすため、さらにセンサ感度を向上させる効果がある。
【0028】
(第2の実施の形態)
図8および図9は、本発明の第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子20Bを示している。このガス検知素子20Bは、上記した第1の実施の形態に係るガス検知素子20における開口部11をスリット11Bとしたものであり、他の構成は上記第1の実施の形態と同様である。
【0029】
スリット11Bは、屈曲して互いに平行をなす検知抵抗体3A同士の間に長手方向に沿って形成されている。このように開口部をスリット11Bとすることにより開口部から膨出する触媒層が増加する。これにより、抵抗体支持部5の下面に回り込んだ検知対象ガスと触媒層との接触面積が増加し、検知抵抗体3Aに伝達される燃焼熱が大幅に増加する。このスリット11B内の触媒層12は検知抵抗体3Aの側壁に沿って長手方向に形成されるため、抵抗体支持部5の上側および下側(凹部10側)からの燃焼熱が触媒層12を介して効率よく伝達される。したがって、本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサは、そのセンサ感度がさらに向上するという効果を奏する。
【0030】
また、本実施の形態では、開口部がスリット11Bであるため、触媒層12を製造する過程で触媒を担持させたセラミック粉体のペーストを塗布したときに、スリット11Bの凹部10側の開口から膨出するペースト量が大きくなり、図9に示すように、表面張力により絶縁膜2の下側面全体を覆うように形成することができる。なお、このセラミック粉体のペーストを焼結した場合も同様の形状を維持する。したがって、製造された接触燃焼式ガスセンサでは、触媒層12の剥がれを防止する構造を有し、接触燃焼式ガスセンサの耐久性を高め、長期にわたって安定なガス感度特性を得られるという効果がある。
【0031】
(第2の実施の形態の変形例)
図10および図11は、上記第2の実施の形態の変形例に係るガス検知素子20Cを示している。この変形例は、上記第2の実施の形態に係るガス検知素子20Bにおいて抵抗体支持部5の周縁部に検知抵抗体3Aを囲むスリット11Cを加えたものであり、他の構成は上記第2の実施の形態と同様である。
【0032】
この変形例では、検知抵抗体3Aを囲むようにスリット11Cが形成されているため、このスリット11B内の触媒層12を介して検知抵抗体3Aの側壁へ伝達される燃焼熱はさらに大きくなる。このため、この変形例では、上記第2の実施の形態よりも燃焼熱を効率よく伝達することができ、センサ感度を向上させることができる。
【0033】
(実験例)
次に、第1実施例、第2実施例および比較例についての実験例について説明する。第1実施例、第2実施例および比較例の接触燃焼式ガスセンサは、凹部の構造、寸法、各材料膜の膜厚、抵抗長さ、構成材料などは、同一の規格で作製した。図12に示すように、上記した第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを第1実施例とし、図8および図9に示した第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを図12に示すように同一基板に参照素子を作り込んだものを第2実施例とし、図15および図16に示した従来のガス検知素子をそなえた接触燃焼式ガスセンサを比較例とした。そして、これら接触燃焼式ガスセンサを用いて、図13に示すように、パルス電圧電源30、電圧計31、固定抵抗器R1、R2、可変抵抗器Rvを用いて、ブリッジ回路を組んでメタン(CH4)を検知対象ガスとして用いてガス感度を測定し、図14に示すような結果が得られた。なお、符号3、3C、3Eは、パッド部3を示す。
【0034】
なお、接触燃焼式ガスセンサへの印加電圧は、各センサ素子温度を約400℃に統一するために、検知抵抗体の抵抗値に従って個別調整をした。一方、ブリッジ回路検出の場合、ガスの接触燃焼による温度変化で検知抵抗体の抵抗変化が生じ、ブリッジバランスが崩れることによって、電圧出力を得ることができるが、検知抵抗体の抵抗変化によるブリッジ電圧の変化は、ブリッジ回路に印加する電圧に依存してしまうため、図14では検出回路への印加電圧1V当たりのメタン感度特性として示している。
【0035】
図14に示すように、いずれの接触燃焼式ガスセンサも、ガス濃度に対して直線的な出力を示したが、第1実施例および第2実施例では、開口部11Aもしくはスリット11B内の触媒層12が燃焼熱の伝達に寄与するため、抵抗体支持部5の裏面側(凹部10側)での接触燃焼反応も触媒層12を介して検知抵抗体3Aの側壁へ速やかに伝達されるため、比較例に比べて第1実施例で約20%、第2実施例で約40%の感度向上効果が確認された。
【0036】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0037】
例えば、上記各実施の形態では、凹部10の平面形状を矩形としたが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、上記各実施の形態では、アーム部6、7、8、9を抵抗体支持部5の四隅から延在する形態としたが、アーム部の本数や形態はこれに限定されるものではない。
【0039】
さらに、上記各実施の形態では、検知抵抗体3Aを覆うように保護膜4を形成したが、この保護膜4を省略する構成としても勿論よい。
【0040】
また、上記各実施の形態では、検知抵抗体3Aが1本を屈曲形状に形成したものであるが、複数本の検知抵抗体3Aを備える構成としても構わない。
【0041】
さらに、上記各実施の形態では、凹部10が基板1の表面側に形成された態様について説明したが、検知抵抗体支持部の下側に検知対象ガスが回りこむ構造を有していれば、凹部が基板1の裏面側に形成された態様のガス検知素子に適用して勿論よい。
【符号の説明】
【0042】
1…基板
2…絶縁膜
3A…検知抵抗体
10…凹部
11…開口部
12…触媒層
12A…膨出部
20,20A,20B,20C…ガス検知素子
【技術分野】
【0001】
本発明は接触燃焼式ガスセンサに関し、更に詳しくは、可燃性ガスを検知するのに適した接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼式ガスセンサとしては、ガス検知素子と参照素子とで構成されたものがある。そのガス検知原理は、検知抵抗体(発熱体)により加熱されたガス検知素子上の貴金属触媒等に被検知ガスが接触すると、この被検知ガスが燃焼して検知抵抗体を温度上昇させて抵抗上昇を起こすことを領している。この検知抵抗体の抵抗上昇をブリッジ回路で電圧差として捉えることにより、被検知ガス濃度を検知することができる。
【0003】
通常、ガス検知素子と参照素子は、例えば白金等の貴金属細線をコイル状に巻いた検知抵抗体を一対備える。ガス検知素子の検知抵抗体には貴金属触媒を担持したセラミック粉体のペーストを、参照素子の検知抵抗体には貴金属触媒を担持しないセラミック粉体のペーストを塗布して、それぞれペーストを加熱焼結して作製されている。このようにして得られた一対のセンサ素子を、ブリッジ回路に構成してガス濃度に応じた電圧信号を捉えるのが一般である。
【0004】
近年、このような接触燃焼式ガスセンサでは、検知抵抗体に断続的に通電しても必要な加熱温度が得られるように、検知抵抗体を通電するとき熱時定数をできるだけ小さくして省電力化したり、小型化の要望を満足するように、検知抵抗体支持部を基板に形成した凹部空間から浮かせた構造のマイクロセンサが開発されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
図15および図16に示すように、このような接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子100は、基板101の表面側に白金(Pt)でなる検知抵抗体103をパルス波形状に形成し、検知抵抗体103の両端部を延在してそれぞれパッド部103A、103Bとしている。そして、検知抵抗体103が形成された島状の検知抵抗体支持部111が基板101から浮き上がるように、検知抵抗体103の下方の基板101に空洞110を形成している。この検知抵抗体支持部111の四隅には、空洞110を跨いで基板101と一体的に設けられたアーム部106、107、108、109が延在されている。このように検知部111が空洞110を介して基板101から浮いた構造としたことにより、検知抵抗体103が形成された面の熱容量を小さくしている。
【0006】
図16に示すように、検知抵抗体支持部111は、絶縁膜102の上に検知抵抗体103が形成され、検知抵抗体103の上に保護膜104が形成され、検知抵抗体支持部111の表面から裏面に亘って触媒層105が被覆されている。なお、ガス検知素子は、貴金属触媒が担持されたセラミック焼結体でなる触媒層105で覆われ、他方の参照素子は貴金属触媒を担持しないセラミック焼結体で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−298617号公報
【特許文献2】特開2007−278996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
検知抵抗体の上部を覆う触媒層は、検知対象ガスが触媒層に接触して触媒燃焼した場合、燃焼熱はほとんどが放熱によりロスが大きく、効率よく検知抵抗体へ熱伝達されず、ガス感度が小さいものであった。触媒量を増加して検知対象ガスが触媒層に接触したときの燃焼熱を増加させるために抵抗体支持部111の裏面(空洞側の面)に触媒層105を形成する接触燃焼式ガスセンサが上述の特許文献1および2に開示されている。このような形態のガスセンサでは、セラミック粉体のペーストが、平面構造の検知抵抗体103が形成された抵抗体支持部111の上に厚膜印刷や、定量吐出装置(ディスペンサ)などを用いて塗布されるが、抵抗体支持部111の裏面側に触媒を担持したセラミック焼結体を形成する工法が繊細かつ複雑で、また、抵抗体支持部111の裏面側にセラミック焼結体が正しく形成されているかを確認することが困難であった。したがって、接触燃焼式ガスセンサのガス感度の向上を確実に図ることが困難であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ガス感度が高く、長期にわたって安定な感度特性を維持する接触燃焼式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、接触燃焼式ガスセンサであって、基板と、この基板上に形成した凹部空間を跨ぐように形成された支持用絶縁膜と、この支持用絶縁膜における凹部空間と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体と、この検知抵抗体の近傍の少なくとも支持用絶縁膜を貫通する開口部と、この開口部を通して支持用絶縁膜の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側の面で検知抵抗体を覆い、支持用絶縁膜の凹部空間側の面で開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成された触媒層と、を備えることを要旨とする。なお、本発明では、このような構成のもの(ガス検知素子)と同様の構成で触媒層のみが触媒を担持しない材料層で構成されたもの(参照素子)を備えることが好ましい。
【0011】
本発明では、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側で検知対象ガスが触媒層に接触して生じた燃焼熱に加えて、支持用絶縁膜の裏面側の凹部空間を通過した検知対象ガスが開口部を介して触媒層に接触した燃焼熱も検知抵抗体に伝導するため、電気抵抗値の変化を大きくすることができ、接触燃焼式ガスセンサ全体として感度を向上させることができる。また、触媒層は、支持用絶縁膜の凹部空間側の開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成されているため所謂アンカー効果を有し、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側へ触媒層が剥がれることを抑制する作用がある。
【0012】
ここで、開口部は、検知抵抗体の長手方向に沿って配置された複数の矩形の穴や、検知抵抗体の長手方向に沿って形成されたスリットであってもよい。開口部が多数の矩形の穴の場合、穴が間欠的に開けられているため、支持用絶縁膜の剛性の低下を抑制することができる。開口部がスリットである場合は、検知対象ガスが開口部を介して触媒層に接触する面積もしくは、開口部から膨出する触媒量が増大し、凹部空間を通過した検知対象ガスが触媒層と接触する面積が大きくなり、センサ感度をさらに向上できる。
【0013】
また、触媒層は、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側の面からセラミック粉体のペーストが塗布されて、このペーストが焼結されてなるようにすると、支持用絶縁膜の凹部空間と反対側から塗布された触媒層が開口部を通して支持用絶縁膜の凹部空間側に膨出するように形成することが容易且つ確実となる。
【0014】
さらに、支持用絶縁膜は、凹部空間を跨ぐ複数の支持アーム部を備え、検知抵抗体の両端部が異なる支持アーム部から導出されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス感度が高く、長期にわたって安定な感度特性を維持できる接触燃焼式ガスセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の触媒層を形成する前の状態を示す平面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図7】図6VII-VII断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図9】図8のIX-IX断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図11】図9のXI-XI断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの平面図である。
【図13】第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを用いたブリッジ回路である。
【図14】比較例、第1実施例および第2実施例におけるメタン濃度と1V当たりの出力電圧の実験結果を示す図である。
【図15】従来の接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の平面図である。
【図16】従来の接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサの詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各層の厚みや厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1〜図5、図12および図13は、本発明の第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサについて示している。図1および図2は触媒層12を形成する前の状態を示し、図3および図4は触媒層12を形成した後の状態を示している。本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサは、図12に示すように、同一の基板にガス検知素子20と参照素子21とを備えて構成されている。なお、ガス検知素子20と参照素子21とは、ガス検知素子20が触媒を担持したセラミック焼結体でなる触媒層12を有し、参照素子21が触媒を担持しないセラミック焼結体層12Aでなる点が異なるだけである。したがって、ガス検知素子20の構成を詳細に説明し、参照素子21の構成の説明は省略する。
【0019】
図3および図4に示すように、ガス検知素子20は、基板1と、この基板1上に形成した凹部(凹部空間)10を跨ぐように形成された絶縁膜(以下、支持用絶縁膜という。)2と、支持用絶縁膜2における凹部10と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体3Aと、この検知抵抗体3Aの近傍の少なくとも支持用絶縁膜2を貫通する開口部11と、この開口部11を通して支持用絶縁膜2の両面側に一体的に設けられ、支持用絶縁膜2の凹部10と反対側の面で検知抵抗体3Aを覆い、支持用絶縁膜2の凹部10側の開口部11の開口領域よりも広く膨出した膨出部12Aが形成された触媒層12と、備えて構成されている。
【0020】
基板1は、所定の結晶方位を有するシリコン単結晶からなり、その上面に平面形状が矩形の凹部10が設けられている。この凹部10は、基板1をエッチングすることにより形成されている。基板1の表面には、絶縁膜(支持用絶縁膜を含む)2が形成されている。この絶縁膜2は、基板1の上面に対し物理蒸着により形成された酸化アルミニウム膜である。
【0021】
絶縁膜2は、基板1の上面に対し物理蒸着(PVD)により形成された酸化アルミニウム膜でなる。酸化アルミニウムは、電気的絶縁性を有するとともに、高い熱伝導率を有している。なお、酸化アルミニウム膜以外にも、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁性を有し且つ熱伝導率の良い物質を用いてもよい。また、物理蒸着以外にも、例えば化学蒸着処理や他の方法を用いて絶縁膜2を形成してもよい。
【0022】
図1および図2に示すように、この絶縁膜2におけるガス検知素子形成領域には、白金(Pt)でなる検知抵抗体3Aがパルス波形状(ジグザグ状)に形成され、検知抵抗体3Aの両端部分3Bを延在してそれぞれの最端部をパッド部3C、3Dとしている。そして、支持用絶縁膜2の上に検知抵抗体3Aが形成された島状の検知抵抗体支持部5が基板1から浮き上がるように、検知抵抗体3Aの下方に上記凹部10をエッチングにより加工、形成している。この検知抵抗体支持部5の四隅には、この凹部(凹部空間)10を跨いで基板1と一体的に設けられたアーム部6、7、8、9を架け渡すように一体に形成している。このように検知抵抗体支持部5が凹部10を介して基板1から浮いた構造としたことにより、検知抵抗体3Aが形成された面の熱容量を小さくしている。
【0023】
図2に示すように、検知抵抗体支持部5は、支持用絶縁膜2の上に検知抵抗体3Aが形成され、検知抵抗体3Aの上に保護膜4が形成されている。そして、図1および図2に示すように、検知抵抗体3Aの近傍には、検知抵抗体3Aの長手方向に沿って、複数の矩形状の開口部11が間欠的に形成されている。この開口部11は、保護膜4および絶縁膜2を貫通している。図3および図4に示すように、検知抵抗体支持部5の表面全体に亘って触媒層12が形成されている。この触媒層12は、開口部11にも充填され、開口部11における凹部10側の開口から開口領域よりも外側へ膨出する膨出部12Aを有している。
【0024】
本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子20は、検知抵抗体支持部5とアーム部6、7、8、9を残して、基板1に凹部10が形成されているため、抵抗体支持部5の下面側にも検知対象ガスが回り込むことができる。図5に示すように、抵抗体支持部5の表面側の触媒層12に検知対象ガスが接触すると、その燃焼熱は、検知抵抗体3Aに伝達されるとともに、開口部11内の触媒層12と保護膜4を介して検知抵抗体3Aの側壁部へ伝達される。また、抵抗体支持部5の下面側に回りこんだ検知対象ガスは触媒槽12の膨出部12Aに接触して検知対象ガスが燃焼し燃焼量が増加する。さらに、膨出部12Aは検知抵抗体近傍に存在するため、膨出部12Aに接触したガスの燃焼熱は、図中膨出部12A内に矢印で示すように、開口部11内に充填された触媒層12と検知抵抗体3Aの側壁に存在する保護膜4とを介して伝達されやすくなる。このため、検知抵抗体3Aへ伝導される燃焼熱は、従来の構造に比較して大幅に増加するため(燃焼熱量と熱伝達効率が向上するため)、センサ感度を向上させることができる。
【0025】
また、本実施の形態では、触媒層12において凹部10側に形成された膨出部12Aが、触媒層12が剥離することを防止する所謂アンカー効果を奏するため、耐久性の高い接触燃焼式ガスセンサを得ることができる。
【0026】
(第1の実施の形態の変形例)
図6および図7は、上記第1の実施の形態の変形例に係るガス検知素子20Aを示している。この変形例は、図6の平面図から判るように、屈曲して互いに平行をなす検知抵抗体3A同士の間だけではなく、抵抗体支持部5の周縁部に沿う検知抵抗体3Aの外側にも開口部11Aを付加したものである。この変形例における他の構成は、上記第1の実施の形態の構成と同様である。
【0027】
この変形例では、上記第1の実施の形態における検知抵抗体3Aに沿って形成される開口部11に加えて、外側の開口部11Aも存在するため、検知抵抗体3Aの側壁に開口部11、11A内に充填された触媒層12を介して伝達される燃焼熱を増やすため、さらにセンサ感度を向上させる効果がある。
【0028】
(第2の実施の形態)
図8および図9は、本発明の第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検知素子20Bを示している。このガス検知素子20Bは、上記した第1の実施の形態に係るガス検知素子20における開口部11をスリット11Bとしたものであり、他の構成は上記第1の実施の形態と同様である。
【0029】
スリット11Bは、屈曲して互いに平行をなす検知抵抗体3A同士の間に長手方向に沿って形成されている。このように開口部をスリット11Bとすることにより開口部から膨出する触媒層が増加する。これにより、抵抗体支持部5の下面に回り込んだ検知対象ガスと触媒層との接触面積が増加し、検知抵抗体3Aに伝達される燃焼熱が大幅に増加する。このスリット11B内の触媒層12は検知抵抗体3Aの側壁に沿って長手方向に形成されるため、抵抗体支持部5の上側および下側(凹部10側)からの燃焼熱が触媒層12を介して効率よく伝達される。したがって、本実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサは、そのセンサ感度がさらに向上するという効果を奏する。
【0030】
また、本実施の形態では、開口部がスリット11Bであるため、触媒層12を製造する過程で触媒を担持させたセラミック粉体のペーストを塗布したときに、スリット11Bの凹部10側の開口から膨出するペースト量が大きくなり、図9に示すように、表面張力により絶縁膜2の下側面全体を覆うように形成することができる。なお、このセラミック粉体のペーストを焼結した場合も同様の形状を維持する。したがって、製造された接触燃焼式ガスセンサでは、触媒層12の剥がれを防止する構造を有し、接触燃焼式ガスセンサの耐久性を高め、長期にわたって安定なガス感度特性を得られるという効果がある。
【0031】
(第2の実施の形態の変形例)
図10および図11は、上記第2の実施の形態の変形例に係るガス検知素子20Cを示している。この変形例は、上記第2の実施の形態に係るガス検知素子20Bにおいて抵抗体支持部5の周縁部に検知抵抗体3Aを囲むスリット11Cを加えたものであり、他の構成は上記第2の実施の形態と同様である。
【0032】
この変形例では、検知抵抗体3Aを囲むようにスリット11Cが形成されているため、このスリット11B内の触媒層12を介して検知抵抗体3Aの側壁へ伝達される燃焼熱はさらに大きくなる。このため、この変形例では、上記第2の実施の形態よりも燃焼熱を効率よく伝達することができ、センサ感度を向上させることができる。
【0033】
(実験例)
次に、第1実施例、第2実施例および比較例についての実験例について説明する。第1実施例、第2実施例および比較例の接触燃焼式ガスセンサは、凹部の構造、寸法、各材料膜の膜厚、抵抗長さ、構成材料などは、同一の規格で作製した。図12に示すように、上記した第1の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを第1実施例とし、図8および図9に示した第2の実施の形態に係る接触燃焼式ガスセンサを図12に示すように同一基板に参照素子を作り込んだものを第2実施例とし、図15および図16に示した従来のガス検知素子をそなえた接触燃焼式ガスセンサを比較例とした。そして、これら接触燃焼式ガスセンサを用いて、図13に示すように、パルス電圧電源30、電圧計31、固定抵抗器R1、R2、可変抵抗器Rvを用いて、ブリッジ回路を組んでメタン(CH4)を検知対象ガスとして用いてガス感度を測定し、図14に示すような結果が得られた。なお、符号3、3C、3Eは、パッド部3を示す。
【0034】
なお、接触燃焼式ガスセンサへの印加電圧は、各センサ素子温度を約400℃に統一するために、検知抵抗体の抵抗値に従って個別調整をした。一方、ブリッジ回路検出の場合、ガスの接触燃焼による温度変化で検知抵抗体の抵抗変化が生じ、ブリッジバランスが崩れることによって、電圧出力を得ることができるが、検知抵抗体の抵抗変化によるブリッジ電圧の変化は、ブリッジ回路に印加する電圧に依存してしまうため、図14では検出回路への印加電圧1V当たりのメタン感度特性として示している。
【0035】
図14に示すように、いずれの接触燃焼式ガスセンサも、ガス濃度に対して直線的な出力を示したが、第1実施例および第2実施例では、開口部11Aもしくはスリット11B内の触媒層12が燃焼熱の伝達に寄与するため、抵抗体支持部5の裏面側(凹部10側)での接触燃焼反応も触媒層12を介して検知抵抗体3Aの側壁へ速やかに伝達されるため、比較例に比べて第1実施例で約20%、第2実施例で約40%の感度向上効果が確認された。
【0036】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0037】
例えば、上記各実施の形態では、凹部10の平面形状を矩形としたが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、上記各実施の形態では、アーム部6、7、8、9を抵抗体支持部5の四隅から延在する形態としたが、アーム部の本数や形態はこれに限定されるものではない。
【0039】
さらに、上記各実施の形態では、検知抵抗体3Aを覆うように保護膜4を形成したが、この保護膜4を省略する構成としても勿論よい。
【0040】
また、上記各実施の形態では、検知抵抗体3Aが1本を屈曲形状に形成したものであるが、複数本の検知抵抗体3Aを備える構成としても構わない。
【0041】
さらに、上記各実施の形態では、凹部10が基板1の表面側に形成された態様について説明したが、検知抵抗体支持部の下側に検知対象ガスが回りこむ構造を有していれば、凹部が基板1の裏面側に形成された態様のガス検知素子に適用して勿論よい。
【符号の説明】
【0042】
1…基板
2…絶縁膜
3A…検知抵抗体
10…凹部
11…開口部
12…触媒層
12A…膨出部
20,20A,20B,20C…ガス検知素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成した凹部空間を跨ぐように形成された支持用絶縁膜と、
前記支持用絶縁膜における前記凹部空間と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体と、
前記検知抵抗体の近傍の少なくとも前記支持用絶縁膜を貫通する開口部と、
前記開口部を通して前記支持用絶縁膜の両面側に一体的に設けられ、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間と反対側の面で前記検知抵抗体を覆い、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間側の前記開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成された触媒層と、
を備えることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記開口部は、前記検知抵抗体の長手方向に沿って配置された複数の矩形の穴であることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項3】
前記開口部は、前記検知抵抗体の長手方向に沿って形成されたスリットであることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項4】
前記触媒層は、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間と反対側の面から触媒金属を担持したセラミック粉体のペーストが塗布、焼結されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項5】
支持用絶縁膜は、前記凹部空間を跨ぐ複数の支持アーム部を備え、前記検知抵抗体の両端部が異なる前記支持アーム部から導出されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成した凹部空間を跨ぐように形成された支持用絶縁膜と、
前記支持用絶縁膜における前記凹部空間と反対側の面に配設され且つ通電から生じる熱によって燃焼する検知対象ガスの燃焼熱に応じて電気抵抗値が変化する検知抵抗体と、
前記検知抵抗体の近傍の少なくとも前記支持用絶縁膜を貫通する開口部と、
前記開口部を通して前記支持用絶縁膜の両面側に一体的に設けられ、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間と反対側の面で前記検知抵抗体を覆い、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間側の前記開口部の開口領域よりも広く膨出した構造に形成された触媒層と、
を備えることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記開口部は、前記検知抵抗体の長手方向に沿って配置された複数の矩形の穴であることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項3】
前記開口部は、前記検知抵抗体の長手方向に沿って形成されたスリットであることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項4】
前記触媒層は、前記支持用絶縁膜の前記凹部空間と反対側の面から触媒金属を担持したセラミック粉体のペーストが塗布、焼結されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項5】
支持用絶縁膜は、前記凹部空間を跨ぐ複数の支持アーム部を備え、前記検知抵抗体の両端部が異なる前記支持アーム部から導出されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−196896(P2011−196896A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65566(P2010−65566)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
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