推定用多項式生成装置、推定装置、推定用多項式生成方法および推定方法
【課題】分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出する。
【解決手段】推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータと出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを記憶する分析用データ記憶部1と、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を記憶する関数曲面記憶部2と、入力パラメータと出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を記憶する相似変換数式記憶部3と、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とを用いて、相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索部4と、関数曲面の数式と係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出部5とを備える。
【解決手段】推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータと出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを記憶する分析用データ記憶部1と、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を記憶する関数曲面記憶部2と、入力パラメータと出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を記憶する相似変換数式記憶部3と、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とを用いて、相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索部4と、関数曲面の数式と係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出部5とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態量などの出力パラメータ値を推定するための推定用多項式を算出する推定用多項式生成装置、推定用多項式を用いて状態量などを推定する推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、FPD(Flat Panel Display)製造装置、あるいは太陽電池製造装置における熱プロセスやプラズマプロセスでは、ウエハやガラスの表面温度(実体温度)などの重要な状態量を処理プロセスの実行中にオンラインで管理、制御したいという要求がある。しかしながら、ウエハやガラスの表面に温度センサを装着したまま処理を行なうことは困難である。
【0003】
そこで、処理プロセスの実行中に測定可能な箇所の温度と処理プロセスの実行中には測定不可能なウエハやガラスの表面温度(実体温度)との関係をオフラインで予め調査し、処理プロセスの実行時には測定可能な温度と予め把握した関係に基づき、ウエハやガラスの表面温度(実体温度)を推定することにより、重要な状態量をオンラインで管理、制御するようにしている。このような場合に、オフラインの調査で得られる測定可能な温度とウエハやガラスの表面温度(実体温度)の計測データ(分析用データ)に対して、多変量解析手法を適用することにより、測定可能な温度とウエハやガラスの表面温度の数値的関係を近似推定する多項式を求める手法(多項式による状態量推定)が広く実施されている(例えば特許文献1参照)。多変量解析手法を用いる場合、処理プロセスの実行中に測定可能な温度は、多項式の入力パラメータに位置付けられる。一方、推定対象であるウエハやガラスの表面温度(実体温度)は、多項式の出力パラメータに位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−141999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
状態量推定の対象は、多くの場合、入力パラメータと出力パラメータとが単純な線形関係にはない。したがって、状態量推定の精度を向上させたい場合には、多変量解析により求める推定用多項式を高次化しなければならない。このとき、実験的に入力条件を振らない限り、分析用データの入力パラメータ側のパラメータ空間には、データの疎密が存在することがある。推定用多項式を高次化する場合、データが密な領域の精度が向上しやすくなるが、データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する多項式になる確率が高い。特に半導体製造装置などの装置に推定機能を実装して装置メーカが装置ユーザに出荷し、装置ユーザが分析用データを収集する場合などでは、装置メーカ側が想定する入力パラメータ空間と、装置ユーザ側が意識する入力パラメータ空間とが、必ずしも一致するとは限らない。したがって、このような装置の流通形態においては、分析用データ収集の疎密の問題が発生しやすいにもかかわらず、見落とされやすい。
【0006】
説明を簡単にするため、入力パラメータを1個と仮定する。入力パラメータXと出力パラメータYの組み合わせ(X,Y)が、A(1.6,20.024)、B(2.0,21.000)、C(2.4,23.304)、D(2.8,27.272)、E(3.2,33.288)、F(3.5,39.375)となっているA〜Fの6組の値が分析用データとして得られているものとする。このときのA〜Fの6組の分析用データの分布を図12に示す。
【0007】
このときの分析用データの特徴であるが、仮にこの入出力パラメータ(X,Y)の物理的な関係を考えれば、常識的に単調増加の関係になることは予想ができるものとする。すなわち、入出力パラメータ(X,Y)が図13のような関係にあることが知識的に想像できるものと仮定する。このような関係がある場合においても、装置ユーザ側のデータ収集意識などの都合上、X=0付近のデータが得られていない状況、すなわちデータが疎な領域が存在するという状況は、半導体製造などの現場では頻繁に発生する。
ここで、A〜Fのデータの組を用いて、入出力パラメータ(X,Y)の関係を高精度に再現する3次多項式を多変量解析などにより求めると、例えば以下のような数式が得られることになる。
Y=X3−2.0X2+21.0 ・・・(1)
【0008】
式(1)の3次多項式により図14に示す3次曲線220が得られる。一方、221は前述のような常識的な仮定から得られる入出力パラメータ(X,Y)の関係を示す曲線である。図14に示すように、式(1)の3次多項式はA〜Fのデータと高精度に適合している。ただし、この3次多項式によると、X=0付近の点としてS(0.0,21.000)が得られている。すなわち、入力パラメータXのパラメータ空間には、1.6≦X≦3.5のデータが密な領域とこれ以外のデータが疎な領域とが存在するが、式(1)の3次多項式はデータが疎な領域において非現実的な推定値を算出する多項式になっているということである。
【0009】
このように推定用多項式が非現実的な推定値を算出してしまうという状況を見落として、例えば半導体製造プロセスにおけるオンラインでの温度推定などを実施すると、高精度の推定が期待できる領域(データが密な領域)と、非現実的な推定を行なう領域(データが疎な領域)が存在することになる。そして、非現実的な温度推定を行なう領域では、製造プロセスに大きな悪影響を及ぼしてしまう可能性があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、分析用データを用いて推定用多項式を求め、推定用多項式を用いて状態量などの推定を行なう場合に、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出可能な推定用多項式生成装置、推定装置、推定用多項式生成方法および推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、前記分析用データが疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認手段と、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段と、前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行手段と、この多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の推定用多項式生成装置の1構成例において、前記相似変換パラメータ探索手段は、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とするものである。
また、本発明の推定用多項式生成装置の1構成例において、前記分析用データ数確認手段は、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段または多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算手段と、推定用多項式生成装置の関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算手段が相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出手段と、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出手段が算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の推定用多項式生成方法は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の推定用多項式生成方法は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段から前記分析用データを取得して、この分析用データに疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認ステップと、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップと、前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行ステップと、この多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め規定しておくことにより、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから得られる推定用多項式は関数曲面によって限定されるので、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することができる。
【0018】
また、本発明では、分析用データが疎な領域があるかどうかを判定し、分析用データが疎な領域有りと判定した場合は、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから推定用多項式を算出し、分析用データが疎な領域無しと判定した場合は、通常の多変量解析により推定用多項式を算出するようにしたので、分析用データの疎密に応じて適切な推定用多項式を算出することができ、また分析用データが密な場合に算出した推定用多項式を用いて関数曲面の数式を適切に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】予め与えられる関数曲面の例を示す図である。
【図2】相似変換によって得られる3次多項式から得られる、分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】入力パラメータが2個の場合の分析用データの分布の1例を示す図である。
【図12】分析用データの分布の1例を示す図である。
【図13】常識的な仮定から得られる、図12の分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【図14】多変量解析によって求めた3次多項式から得られる、図12の分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理1]
分析用データが疎な領域において推定用多項式が非現実的な推定値を算出する原因は、分析用データが密な領域の推定精度を向上させようとして推定用多項式の次数を高くすることにより、推定用多項式により与えられる関数曲面(入力パラメータが1個の場合は関数曲線)が、想定外の形状にまで変形し得るという無制約な状況にある。逆に言えば、分析用データが疎な領域の推定を現実的なものに押さえようとするのであれば、分析用データが密な領域の推定精度を低下させることを代償として、関数曲面の形状に実質的な制約を与えればよい。例えば図12に示したデータの分布において、例えば装置メーカ側が予め以下の関数曲面の相似形状のみに限定する。
y=4.00x3−7.92x2+10.8x+0.22
(ただし、−1.0≦x≦2.5) ・・・(2)
【0021】
式(2)により与えられる関数曲面(関数曲線)を、図1に示す。なお、通常の装置の特性上、全ての入出力条件についてこのような事前制約を与えられるとは限らないが、与えられるものも少なくはない。例えば、プラズマ処理プロセスや熱処理プロセスでは、物理法則が完全に解明できていなくても、特定の物理法則に支配されて処理が行なわれることに違いはないわけであり、入出力の増減関係が逆転する等の極めて特殊な入出力関係に推移してしまうことはない。ほとんどのケースで、ユーザが装置を設置した環境に依存する影響や、装置の小規模な改造に伴う特性変化が、推定用多項式のユーザ側での算出作業を要求する要因である。
【0022】
そして、関数曲面を以下の式のように相似変換(1次式によるスケーリングと平行移動の変換)して分析用データとマッチングする係数を探索し、推定用多項式を求めるようにすれば、装置メーカ側の想定から大きく外れることが抑制されることに発明者は着眼した。
x=aX+b ・・・(3)
y=cY+d ・・・(4)
【0023】
探索対象パラメータ値は係数a,b,c,dであり、探索方法はシンプレックス法など一般に実施されているものでかまわない。これにより、本発明では、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することが可能になる。
【0024】
例えば図12に示したデータの分布において、係数a,b,c,dの探索を行なうと、以下の相似変換式が得られる。
x=0.80X−0.80 ・・・(5)
y=0.97Y−15.56 ・・・(6)
式(2)と式(5)、式(6)から入出力パラメータ(X,Y)の関係を再現する数式を求めると、以下の3次の推定用多項式が得られる。
Y=2.11X3−11.55X2+25.65X+0.02 ・・・(7)
【0025】
式(7)の3次多項式により図2に示す3次曲線222が得られる。220は式(1)の3次多項式により得られる3次曲線、221は常識的な仮定から得られる入出力パラメータ(X,Y)の関係を示す曲線である。3次曲線222によると、分析用データが疎な領域における推定値が、3次曲線220上の非現実的な値から常識的な値へと改善されていることが分かる。
なお、入力パラメータ数が2個以上である場合も、同様に各入力パラメータに対し相似変換(スケーリングと平行移動の1次変換)を行なえばよい。
【0026】
[発明の原理2]
実際に装置メーカから装置ユーザに装置が出荷された場合、装置ユーザが不十分なデータにより推定用多項式を求めるとは、必ずしも限らない。すなわち、分析用データの入力パラメータ空間において、データが疎な領域が存在しない場合は、装置メーカが予め与えた関数曲面に制約されずに推定用多項式を求めるのが好ましい。
【0027】
そこで、分析用データの入力パラメータ空間を適度な数のサブ領域に分割して、全てのサブ領域あるいは予め規定された割合以上のサブ領域に予め規定された個数以上のデータが存在することを確認した場合は、通常の多変量解析(重回帰分析やSVR(Support Vector Regression )法など)により推定用多項式を求め、いずれかのサブ領域に規定個数以上のデータが存在しないことを確認した場合は、前述の相似変換による探索を行なうようにする。このとき、全てのサブ領域あるいは予め規定された割合以上のサブ領域に予め規定された個数以上のデータが存在することを確認できた場合において求めた最新の推定用多項式を、関数曲面の数式として更新する。
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図3は本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。図3の推定用多項式生成装置は、分析用データ記憶部1と、関数曲面記憶部2と、相似変換数式記憶部3と、相似変換パラメータ探索部4と、推定用多項式算出部5とを備える。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。
【0029】
本実施の形態の推定用多項式生成装置の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。分析用データ記憶部1は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶している。入力パラメータの例としては、例えば半導体製造装置の熱プロセスやプラズマプロセスなどのプロセスの実行中に測定可能な温度がある。出力パラメータの例としては、プロセスの実行中に測定不可能なウエハやガラスの表面温度(実体温度)がある。分析用データは、処理プロセスよりも前に行われるオフラインの調査で予め求めることができる。
【0030】
関数曲面記憶部2は、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶している。
相似変換数式記憶部3は、入力パラメータと出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶している。この相似変換数式は、入力パラメータと出力パラメータに対してスケーリングと平行移動を施す1次式である。
【0031】
相似変換パラメータ探索部4は、分析用データ記憶部1から分析用データを取得し(図4ステップS100)、この分析用データと関数曲面記憶部2に記憶された関数曲面の数式と相似変換数式記憶部3に記憶された相似変換数式とを用いて、シンプレックス法などの探索法により、相似変換数式の係数を探索する(ステップS101)。具体的には、相似変換パラメータ探索部4は、関数曲面の数式のx,yに相似変換数式を代入した式に対して、分析用データを代入して相似変換数式の係数を探索する。
【0032】
ここで、入力パラメータXと出力パラメータYの組み合わせ(X,Y)が、A(1.6,20.024)、B(2.0,21.000)、C(2.4,23.304)、D(2.8,27.272)、E(3.2,33.288)、F(3.5,39.375)となっているA〜Fの6組の値が分析用データとして分析用データ記憶部1に予め記憶されているものとする。また、関数曲面記憶部2に式(2)が関数曲面の数式として予め記憶され、相似変換数式記憶部3に式(3)、式(4)が相似変換数式として予め記憶されているものとする。このとき、関数曲面の数式に相似変換数式を代入した式は以下のようになる。
Y(X)={4.00(aX+b)3−7.92(aX+b)2+10.8(aX+b)
+0.22−d}/c (ただし、−1.0≦aX+b≦2.5)
・・・(8)
【0033】
そして、相似変換パラメータ探索部4は、分析用データの出力パラメータYと分析用データを式(8)に代入して算出した出力パラメータY(X)との誤差|Y−Y(X)|を分析用データA〜F毎に求めて各分析用データA〜Fについて求めた誤差を積算した積算値Σ|Y−Y(X)|が最小になるように、相似変換数式の係数a,b,c,dを探索する。なお、式(8)の制約により−1.0≦(aX+b)≦2.5から外れるものが存在するa,bになるケースは除外される。探索の結果として、相似変換数式の係数a=0.80,b=−0.80,c=0.97,d=−15.56が得られる。
【0034】
推定用多項式算出部5は、関数曲面の数式と相似変換数式とを合成した推定用多項式を算出する(図4ステップS102)。具体的には、推定用多項式算出部5は、関数曲面の数式に相似変換数式と相似変換数式の係数とを代入して以下の推定用多項式を算出する。
Y={4.00(0.80X−0.80)3−7.92(0.80X−0.80)2
+10.8(0.80X−0.80)+0.22−(−15.56)}/0.97
=2.11X3−11.55X2+25.65X+0.02 ・・・(9)
【0035】
こうして、推定用多項式生成装置の動作が終了する。以上のように、本実施の形態では、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め規定しておくことにより、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから得られる推定用多項式は関数曲面によって限定されるので、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5は本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。図5の推定装置は、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で算出された推定用多項式を用いて推定値を算出するオンラインの段階で使用されるものであり、推定用多項式記憶部10と、入力パラメータ値取得部11と、多項式推定演算部12と、推定値出力部13とを備える。なお、推定装置は、推定用多項式生成装置を内部に有するものであってもよい。
【0037】
図6は本実施の形態の推定装置の動作を示すフローチャートである。推定用多項式記憶部10は、第1の実施の形態で説明した推定用多項式算出部5で予め算出された推定用多項式を記憶している。
入力パラメータ値取得部11は、例えば半導体製造装置の熱プロセスやプラズマプロセスなどのプロセスの実行中に温度センサ(不図示)から入力される温度などの入力パラメータ値を取得する(図6ステップS200)。
【0038】
多項式推定演算部12は、推定用多項式記憶部10に記憶されている推定用多項式を用い、入力パラメータ値取得部11が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する(ステップS201)。多項式推定演算部12が推定した出力パラメータ値は、推定値出力部13を通じて外部に出力される。多項式推定演算部12は、このような推定処理を例えば一定時間毎に行う。こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で算出された推定用多項式を用いて状態量などの出力パラメータ値を推定することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7は本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。図7の推定装置は、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で確定した相似変換数式を用いて推定値を算出するオンラインの段階で使用されるものであり、入力パラメータ値取得部11と、相似変換数式記憶部14と、相似変換演算部15と、暫定推定値算出部16と、逆相似変換演算部17と、推定値出力部18とを備える。第2の実施の形態と同様に、推定装置は、推定用多項式生成装置を内部に有するものであってもよい。ただし、本実施の形態の場合、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出部5は不要である。
【0040】
図8は本実施の形態の推定装置の動作を示すフローチャートである。相似変換数式記憶部14は、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索部4によって係数が確定した相似変換数式を記憶している。第1の実施の形態の例によると、係数が確定した相似変換数式は式(5)、式(6)のようになる。
第2の実施の形態と同様に、入力パラメータ値取得部11は、入力パラメータ値Xを取得する(図8ステップS300)。
【0041】
相似変換演算部15は、相似変換数式記憶部14に記憶されている式(5)の相似変換数式を用いて、入力パラメータ値Xを相似変換したパラメータ値xを算出する(ステップS301)。
暫定推定値算出部16は、推定用多項式生成装置の関数曲面記憶部2に記憶されている関数曲面の数式(第1の実施の形態の例では式(2))を用い、相似変換演算部15が相似変換したパラメータ値xからパラメータ値yを算出し、このパラメータ値yを暫定的な推定値とする(ステップS302)。
【0042】
逆相似変換演算部17は、相似変換数式記憶部14に記憶されている式(6)の相似変換数式の逆演算により、暫定推定値算出部16が算出した暫定推定値yから出力パラメータYを算出する(ステップS303)。式(6)の相似変換数式の逆演算式は、以下のようになる。
Y=(y+15.56)/0.97 ・・・(10)
【0043】
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で確定した相似変換数式を用いて状態量などの出力パラメータ値を推定することができる。
【0044】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図9は本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。図9の推定用多項式生成装置は、分析用データ記憶部1と、関数曲面記憶部2と、相似変換数式記憶部3と、相似変換パラメータ探索部4aと、推定用多項式算出部5と、分析用データ数確認部6と、多変量解析実行部7と、関数曲面更新部8とを備える。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。
【0045】
図10は本実施の形態の推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。分析用データ記憶部1、関数曲面記憶部2および相似変換数式記憶部3については、第1の実施の形態で説明したとおりである。
分析用データ数確認部6は、分析用データ記憶部1から分析用データを取得する(図10ステップS400)。分析用データ数確認部6においては、入力パラメータ空間を適度な数のサブ領域に分割することが予め規定されている。例えば、1個の入力パラメータについて入力値の取り得る範囲を2〜3個の区間に分割することで、入力パラメータ空間をサブ領域に分割する。図12の例であれば、0.0≦X<2.0と2.0≦X<4.0に分割する。
【0046】
仮に入力パラメータが図11のようにXとYの2個の場合であれば、{0.0≦X<2.0,0.0≦Y<2.5}と{0.0≦X<2.0,2.5≦Y<5.0}と{2.0≦X<4.0,0.0≦Y<2.5}と{2.0≦X<4.0,2.5≦Y<5.0}の4個のサブ領域に分割(各入力パラメータをそれぞれ2個の区間に分割)する。入力パラメータ数が3個以上であっても、同様の方法で分割すればよい。
【0047】
そして、分析用データ数確認部6は、分析用データが疎な領域があるかどうかをサブ領域毎および入力パラメータの種類毎に判定する(図10ステップS401)。具体的には、分析用データ数確認部6は、予め規定された割合以上のサブ領域にn個以上(例えばn=2)の分析用データがあるかどうかを入力パラメータの種類毎に判定する。予め規定された割合以上とは、その入力パラメータの全てのサブ領域の数に対して分析用データがn個以上のサブ領域の数の割合が規定値以上であることを意味する。図11の例において、入力パラメータXのサブ領域は2個なので、分析用データがn個以上のサブ領域が1個あれば、割合は0.5である。入力パラメータがXとYの2個の場合であれば、X,Yの各々について、このような判定を行う。
【0048】
分析用データ数確認部6は、全ての入力パラメータについて予め規定された割合以上のサブ領域にn個以上の分析用データがある場合、分析用データが疎な領域無しと判定し、少なくとも1種類の入力パラメータについて分析用データがn個以上のサブ領域の割合が規定値を下回る場合、分析用データが疎な領域有りと判定する。図12の例であれば、0.0≦X<2.0のサブ領域においてデータ数が少ないので、分析用データが疎な領域有りと判定される。
【0049】
なお、全てのサブ領域にn個以上の分析用データがある場合、分析用データが疎な領域無しと判定し、少なくとも1個のサブ領域において分析用データの数がn個未満の場合、分析用データが疎な領域有りと判定するようにしてもよい。
【0050】
相似変換パラメータ探索部4aは、分析用データが疎な領域有りと判定された場合、相似変換数式の係数を探索する(図10ステップS402)。この相似変換パラメータ探索部4aの動作は、第1の実施の形態の相似変換パラメータ探索部4と同じである。
そして、推定用多項式算出部5は、第1の実施の形態と同様に推定用多項式を算出する(ステップS403)。
【0051】
一方、多変量解析実行部7は、分析用データが疎な領域無しと判定された場合、分析用データ記憶部1に記憶されている分析用データに対して重回帰分析やSVRなどの多変量解析を行い、入力パラメータから出力パラメータを推定する推定用多項式を算出する(ステップS404)。
関数曲面更新部8は、多変量解析実行部7が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として関数曲面記憶部2に記憶されている関数曲面の数式を更新する(ステップS405)。式(7)のような推定用多項式が得られたとすれば、関数曲面の数式は次式のようになる。
y=2.11x3−11.55x2+25.65x+0.02 ・・・(11)
【0052】
以上のように、本実施の形態では、分析用データが疎な領域があるかどうかを判定し、分析用データが疎な領域有りと判定した場合は、第1の実施の形態の手法で推定用多項式を算出し、分析用データが疎な領域無しと判定した場合は、通常の多変量解析により推定用多項式を算出するようにしたので、分析用データの疎密に応じて適切な推定用多項式を算出することができ、また分析用データが密な場合に算出した推定用多項式を用いて関数曲面の数式を適切に更新することができる。
なお、本実施の形態と第2、第3の実施の形態とを組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0053】
第1〜第4の実施の形態で説明した推定用多項式生成装置と推定装置の各々は、それぞれCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。推定用多項式生成装置と推定装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、推定用多項式を用いて状態量などを推定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…分析用データ記憶部、2…関数曲面記憶部、3…相似変換数式記憶部、4,4a…相似変換パラメータ探索部、5…推定用多項式算出部、6…分析用データ数確認部、7…多変量解析実行部、8…関数曲面更新部、10…推定用多項式記憶部、11…入力パラメータ値取得部、12…多項式推定演算部、13,18…推定値出力部、14…相似変換数式記憶部、15…相似変換演算部、16…暫定推定値算出部、17…逆相似変換演算部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態量などの出力パラメータ値を推定するための推定用多項式を算出する推定用多項式生成装置、推定用多項式を用いて状態量などを推定する推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、FPD(Flat Panel Display)製造装置、あるいは太陽電池製造装置における熱プロセスやプラズマプロセスでは、ウエハやガラスの表面温度(実体温度)などの重要な状態量を処理プロセスの実行中にオンラインで管理、制御したいという要求がある。しかしながら、ウエハやガラスの表面に温度センサを装着したまま処理を行なうことは困難である。
【0003】
そこで、処理プロセスの実行中に測定可能な箇所の温度と処理プロセスの実行中には測定不可能なウエハやガラスの表面温度(実体温度)との関係をオフラインで予め調査し、処理プロセスの実行時には測定可能な温度と予め把握した関係に基づき、ウエハやガラスの表面温度(実体温度)を推定することにより、重要な状態量をオンラインで管理、制御するようにしている。このような場合に、オフラインの調査で得られる測定可能な温度とウエハやガラスの表面温度(実体温度)の計測データ(分析用データ)に対して、多変量解析手法を適用することにより、測定可能な温度とウエハやガラスの表面温度の数値的関係を近似推定する多項式を求める手法(多項式による状態量推定)が広く実施されている(例えば特許文献1参照)。多変量解析手法を用いる場合、処理プロセスの実行中に測定可能な温度は、多項式の入力パラメータに位置付けられる。一方、推定対象であるウエハやガラスの表面温度(実体温度)は、多項式の出力パラメータに位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−141999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
状態量推定の対象は、多くの場合、入力パラメータと出力パラメータとが単純な線形関係にはない。したがって、状態量推定の精度を向上させたい場合には、多変量解析により求める推定用多項式を高次化しなければならない。このとき、実験的に入力条件を振らない限り、分析用データの入力パラメータ側のパラメータ空間には、データの疎密が存在することがある。推定用多項式を高次化する場合、データが密な領域の精度が向上しやすくなるが、データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する多項式になる確率が高い。特に半導体製造装置などの装置に推定機能を実装して装置メーカが装置ユーザに出荷し、装置ユーザが分析用データを収集する場合などでは、装置メーカ側が想定する入力パラメータ空間と、装置ユーザ側が意識する入力パラメータ空間とが、必ずしも一致するとは限らない。したがって、このような装置の流通形態においては、分析用データ収集の疎密の問題が発生しやすいにもかかわらず、見落とされやすい。
【0006】
説明を簡単にするため、入力パラメータを1個と仮定する。入力パラメータXと出力パラメータYの組み合わせ(X,Y)が、A(1.6,20.024)、B(2.0,21.000)、C(2.4,23.304)、D(2.8,27.272)、E(3.2,33.288)、F(3.5,39.375)となっているA〜Fの6組の値が分析用データとして得られているものとする。このときのA〜Fの6組の分析用データの分布を図12に示す。
【0007】
このときの分析用データの特徴であるが、仮にこの入出力パラメータ(X,Y)の物理的な関係を考えれば、常識的に単調増加の関係になることは予想ができるものとする。すなわち、入出力パラメータ(X,Y)が図13のような関係にあることが知識的に想像できるものと仮定する。このような関係がある場合においても、装置ユーザ側のデータ収集意識などの都合上、X=0付近のデータが得られていない状況、すなわちデータが疎な領域が存在するという状況は、半導体製造などの現場では頻繁に発生する。
ここで、A〜Fのデータの組を用いて、入出力パラメータ(X,Y)の関係を高精度に再現する3次多項式を多変量解析などにより求めると、例えば以下のような数式が得られることになる。
Y=X3−2.0X2+21.0 ・・・(1)
【0008】
式(1)の3次多項式により図14に示す3次曲線220が得られる。一方、221は前述のような常識的な仮定から得られる入出力パラメータ(X,Y)の関係を示す曲線である。図14に示すように、式(1)の3次多項式はA〜Fのデータと高精度に適合している。ただし、この3次多項式によると、X=0付近の点としてS(0.0,21.000)が得られている。すなわち、入力パラメータXのパラメータ空間には、1.6≦X≦3.5のデータが密な領域とこれ以外のデータが疎な領域とが存在するが、式(1)の3次多項式はデータが疎な領域において非現実的な推定値を算出する多項式になっているということである。
【0009】
このように推定用多項式が非現実的な推定値を算出してしまうという状況を見落として、例えば半導体製造プロセスにおけるオンラインでの温度推定などを実施すると、高精度の推定が期待できる領域(データが密な領域)と、非現実的な推定を行なう領域(データが疎な領域)が存在することになる。そして、非現実的な温度推定を行なう領域では、製造プロセスに大きな悪影響を及ぼしてしまう可能性があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、分析用データを用いて推定用多項式を求め、推定用多項式を用いて状態量などの推定を行なう場合に、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出可能な推定用多項式生成装置、推定装置、推定用多項式生成方法および推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の推定用多項式生成装置は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、前記分析用データが疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認手段と、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段と、前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行手段と、この多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の推定用多項式生成装置の1構成例において、前記相似変換パラメータ探索手段は、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とするものである。
また、本発明の推定用多項式生成装置の1構成例において、前記分析用データ数確認手段は、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段または多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の推定装置は、入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算手段と、推定用多項式生成装置の関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算手段が相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出手段と、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出手段が算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の推定用多項式生成方法は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の推定用多項式生成方法は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段から前記分析用データを取得して、この分析用データに疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認ステップと、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップと、前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行ステップと、この多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め規定しておくことにより、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから得られる推定用多項式は関数曲面によって限定されるので、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することができる。
【0018】
また、本発明では、分析用データが疎な領域があるかどうかを判定し、分析用データが疎な領域有りと判定した場合は、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから推定用多項式を算出し、分析用データが疎な領域無しと判定した場合は、通常の多変量解析により推定用多項式を算出するようにしたので、分析用データの疎密に応じて適切な推定用多項式を算出することができ、また分析用データが密な場合に算出した推定用多項式を用いて関数曲面の数式を適切に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】予め与えられる関数曲面の例を示す図である。
【図2】相似変換によって得られる3次多項式から得られる、分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】入力パラメータが2個の場合の分析用データの分布の1例を示す図である。
【図12】分析用データの分布の1例を示す図である。
【図13】常識的な仮定から得られる、図12の分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【図14】多変量解析によって求めた3次多項式から得られる、図12の分析用データの入出力パラメータの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理1]
分析用データが疎な領域において推定用多項式が非現実的な推定値を算出する原因は、分析用データが密な領域の推定精度を向上させようとして推定用多項式の次数を高くすることにより、推定用多項式により与えられる関数曲面(入力パラメータが1個の場合は関数曲線)が、想定外の形状にまで変形し得るという無制約な状況にある。逆に言えば、分析用データが疎な領域の推定を現実的なものに押さえようとするのであれば、分析用データが密な領域の推定精度を低下させることを代償として、関数曲面の形状に実質的な制約を与えればよい。例えば図12に示したデータの分布において、例えば装置メーカ側が予め以下の関数曲面の相似形状のみに限定する。
y=4.00x3−7.92x2+10.8x+0.22
(ただし、−1.0≦x≦2.5) ・・・(2)
【0021】
式(2)により与えられる関数曲面(関数曲線)を、図1に示す。なお、通常の装置の特性上、全ての入出力条件についてこのような事前制約を与えられるとは限らないが、与えられるものも少なくはない。例えば、プラズマ処理プロセスや熱処理プロセスでは、物理法則が完全に解明できていなくても、特定の物理法則に支配されて処理が行なわれることに違いはないわけであり、入出力の増減関係が逆転する等の極めて特殊な入出力関係に推移してしまうことはない。ほとんどのケースで、ユーザが装置を設置した環境に依存する影響や、装置の小規模な改造に伴う特性変化が、推定用多項式のユーザ側での算出作業を要求する要因である。
【0022】
そして、関数曲面を以下の式のように相似変換(1次式によるスケーリングと平行移動の変換)して分析用データとマッチングする係数を探索し、推定用多項式を求めるようにすれば、装置メーカ側の想定から大きく外れることが抑制されることに発明者は着眼した。
x=aX+b ・・・(3)
y=cY+d ・・・(4)
【0023】
探索対象パラメータ値は係数a,b,c,dであり、探索方法はシンプレックス法など一般に実施されているものでかまわない。これにより、本発明では、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することが可能になる。
【0024】
例えば図12に示したデータの分布において、係数a,b,c,dの探索を行なうと、以下の相似変換式が得られる。
x=0.80X−0.80 ・・・(5)
y=0.97Y−15.56 ・・・(6)
式(2)と式(5)、式(6)から入出力パラメータ(X,Y)の関係を再現する数式を求めると、以下の3次の推定用多項式が得られる。
Y=2.11X3−11.55X2+25.65X+0.02 ・・・(7)
【0025】
式(7)の3次多項式により図2に示す3次曲線222が得られる。220は式(1)の3次多項式により得られる3次曲線、221は常識的な仮定から得られる入出力パラメータ(X,Y)の関係を示す曲線である。3次曲線222によると、分析用データが疎な領域における推定値が、3次曲線220上の非現実的な値から常識的な値へと改善されていることが分かる。
なお、入力パラメータ数が2個以上である場合も、同様に各入力パラメータに対し相似変換(スケーリングと平行移動の1次変換)を行なえばよい。
【0026】
[発明の原理2]
実際に装置メーカから装置ユーザに装置が出荷された場合、装置ユーザが不十分なデータにより推定用多項式を求めるとは、必ずしも限らない。すなわち、分析用データの入力パラメータ空間において、データが疎な領域が存在しない場合は、装置メーカが予め与えた関数曲面に制約されずに推定用多項式を求めるのが好ましい。
【0027】
そこで、分析用データの入力パラメータ空間を適度な数のサブ領域に分割して、全てのサブ領域あるいは予め規定された割合以上のサブ領域に予め規定された個数以上のデータが存在することを確認した場合は、通常の多変量解析(重回帰分析やSVR(Support Vector Regression )法など)により推定用多項式を求め、いずれかのサブ領域に規定個数以上のデータが存在しないことを確認した場合は、前述の相似変換による探索を行なうようにする。このとき、全てのサブ領域あるいは予め規定された割合以上のサブ領域に予め規定された個数以上のデータが存在することを確認できた場合において求めた最新の推定用多項式を、関数曲面の数式として更新する。
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図3は本発明の第1の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。図3の推定用多項式生成装置は、分析用データ記憶部1と、関数曲面記憶部2と、相似変換数式記憶部3と、相似変換パラメータ探索部4と、推定用多項式算出部5とを備える。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。
【0029】
本実施の形態の推定用多項式生成装置の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。分析用データ記憶部1は、入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶している。入力パラメータの例としては、例えば半導体製造装置の熱プロセスやプラズマプロセスなどのプロセスの実行中に測定可能な温度がある。出力パラメータの例としては、プロセスの実行中に測定不可能なウエハやガラスの表面温度(実体温度)がある。分析用データは、処理プロセスよりも前に行われるオフラインの調査で予め求めることができる。
【0030】
関数曲面記憶部2は、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶している。
相似変換数式記憶部3は、入力パラメータと出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶している。この相似変換数式は、入力パラメータと出力パラメータに対してスケーリングと平行移動を施す1次式である。
【0031】
相似変換パラメータ探索部4は、分析用データ記憶部1から分析用データを取得し(図4ステップS100)、この分析用データと関数曲面記憶部2に記憶された関数曲面の数式と相似変換数式記憶部3に記憶された相似変換数式とを用いて、シンプレックス法などの探索法により、相似変換数式の係数を探索する(ステップS101)。具体的には、相似変換パラメータ探索部4は、関数曲面の数式のx,yに相似変換数式を代入した式に対して、分析用データを代入して相似変換数式の係数を探索する。
【0032】
ここで、入力パラメータXと出力パラメータYの組み合わせ(X,Y)が、A(1.6,20.024)、B(2.0,21.000)、C(2.4,23.304)、D(2.8,27.272)、E(3.2,33.288)、F(3.5,39.375)となっているA〜Fの6組の値が分析用データとして分析用データ記憶部1に予め記憶されているものとする。また、関数曲面記憶部2に式(2)が関数曲面の数式として予め記憶され、相似変換数式記憶部3に式(3)、式(4)が相似変換数式として予め記憶されているものとする。このとき、関数曲面の数式に相似変換数式を代入した式は以下のようになる。
Y(X)={4.00(aX+b)3−7.92(aX+b)2+10.8(aX+b)
+0.22−d}/c (ただし、−1.0≦aX+b≦2.5)
・・・(8)
【0033】
そして、相似変換パラメータ探索部4は、分析用データの出力パラメータYと分析用データを式(8)に代入して算出した出力パラメータY(X)との誤差|Y−Y(X)|を分析用データA〜F毎に求めて各分析用データA〜Fについて求めた誤差を積算した積算値Σ|Y−Y(X)|が最小になるように、相似変換数式の係数a,b,c,dを探索する。なお、式(8)の制約により−1.0≦(aX+b)≦2.5から外れるものが存在するa,bになるケースは除外される。探索の結果として、相似変換数式の係数a=0.80,b=−0.80,c=0.97,d=−15.56が得られる。
【0034】
推定用多項式算出部5は、関数曲面の数式と相似変換数式とを合成した推定用多項式を算出する(図4ステップS102)。具体的には、推定用多項式算出部5は、関数曲面の数式に相似変換数式と相似変換数式の係数とを代入して以下の推定用多項式を算出する。
Y={4.00(0.80X−0.80)3−7.92(0.80X−0.80)2
+10.8(0.80X−0.80)+0.22−(−15.56)}/0.97
=2.11X3−11.55X2+25.65X+0.02 ・・・(9)
【0035】
こうして、推定用多項式生成装置の動作が終了する。以上のように、本実施の形態では、相似変換後の入力パラメータと出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め規定しておくことにより、分析用データと関数曲面の数式と相似変換数式とから得られる推定用多項式は関数曲面によって限定されるので、分析用データが疎な領域において非現実的な推定値を算出する確率を低減できるように推定用多項式を算出することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5は本発明の第2の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。図5の推定装置は、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で算出された推定用多項式を用いて推定値を算出するオンラインの段階で使用されるものであり、推定用多項式記憶部10と、入力パラメータ値取得部11と、多項式推定演算部12と、推定値出力部13とを備える。なお、推定装置は、推定用多項式生成装置を内部に有するものであってもよい。
【0037】
図6は本実施の形態の推定装置の動作を示すフローチャートである。推定用多項式記憶部10は、第1の実施の形態で説明した推定用多項式算出部5で予め算出された推定用多項式を記憶している。
入力パラメータ値取得部11は、例えば半導体製造装置の熱プロセスやプラズマプロセスなどのプロセスの実行中に温度センサ(不図示)から入力される温度などの入力パラメータ値を取得する(図6ステップS200)。
【0038】
多項式推定演算部12は、推定用多項式記憶部10に記憶されている推定用多項式を用い、入力パラメータ値取得部11が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する(ステップS201)。多項式推定演算部12が推定した出力パラメータ値は、推定値出力部13を通じて外部に出力される。多項式推定演算部12は、このような推定処理を例えば一定時間毎に行う。こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で算出された推定用多項式を用いて状態量などの出力パラメータ値を推定することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7は本発明の第3の実施の形態に係る推定装置の構成を示すブロック図である。図7の推定装置は、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で確定した相似変換数式を用いて推定値を算出するオンラインの段階で使用されるものであり、入力パラメータ値取得部11と、相似変換数式記憶部14と、相似変換演算部15と、暫定推定値算出部16と、逆相似変換演算部17と、推定値出力部18とを備える。第2の実施の形態と同様に、推定装置は、推定用多項式生成装置を内部に有するものであってもよい。ただし、本実施の形態の場合、推定用多項式生成装置の推定用多項式算出部5は不要である。
【0040】
図8は本実施の形態の推定装置の動作を示すフローチャートである。相似変換数式記憶部14は、推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索部4によって係数が確定した相似変換数式を記憶している。第1の実施の形態の例によると、係数が確定した相似変換数式は式(5)、式(6)のようになる。
第2の実施の形態と同様に、入力パラメータ値取得部11は、入力パラメータ値Xを取得する(図8ステップS300)。
【0041】
相似変換演算部15は、相似変換数式記憶部14に記憶されている式(5)の相似変換数式を用いて、入力パラメータ値Xを相似変換したパラメータ値xを算出する(ステップS301)。
暫定推定値算出部16は、推定用多項式生成装置の関数曲面記憶部2に記憶されている関数曲面の数式(第1の実施の形態の例では式(2))を用い、相似変換演算部15が相似変換したパラメータ値xからパラメータ値yを算出し、このパラメータ値yを暫定的な推定値とする(ステップS302)。
【0042】
逆相似変換演算部17は、相似変換数式記憶部14に記憶されている式(6)の相似変換数式の逆演算により、暫定推定値算出部16が算出した暫定推定値yから出力パラメータYを算出する(ステップS303)。式(6)の相似変換数式の逆演算式は、以下のようになる。
Y=(y+15.56)/0.97 ・・・(10)
【0043】
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態の推定用多項式生成装置で確定した相似変換数式を用いて状態量などの出力パラメータ値を推定することができる。
【0044】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図9は本発明の第4の実施の形態に係る推定用多項式生成装置の構成を示すブロック図である。図9の推定用多項式生成装置は、分析用データ記憶部1と、関数曲面記憶部2と、相似変換数式記憶部3と、相似変換パラメータ探索部4aと、推定用多項式算出部5と、分析用データ数確認部6と、多変量解析実行部7と、関数曲面更新部8とを備える。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。
【0045】
図10は本実施の形態の推定用多項式生成装置の動作を示すフローチャートである。分析用データ記憶部1、関数曲面記憶部2および相似変換数式記憶部3については、第1の実施の形態で説明したとおりである。
分析用データ数確認部6は、分析用データ記憶部1から分析用データを取得する(図10ステップS400)。分析用データ数確認部6においては、入力パラメータ空間を適度な数のサブ領域に分割することが予め規定されている。例えば、1個の入力パラメータについて入力値の取り得る範囲を2〜3個の区間に分割することで、入力パラメータ空間をサブ領域に分割する。図12の例であれば、0.0≦X<2.0と2.0≦X<4.0に分割する。
【0046】
仮に入力パラメータが図11のようにXとYの2個の場合であれば、{0.0≦X<2.0,0.0≦Y<2.5}と{0.0≦X<2.0,2.5≦Y<5.0}と{2.0≦X<4.0,0.0≦Y<2.5}と{2.0≦X<4.0,2.5≦Y<5.0}の4個のサブ領域に分割(各入力パラメータをそれぞれ2個の区間に分割)する。入力パラメータ数が3個以上であっても、同様の方法で分割すればよい。
【0047】
そして、分析用データ数確認部6は、分析用データが疎な領域があるかどうかをサブ領域毎および入力パラメータの種類毎に判定する(図10ステップS401)。具体的には、分析用データ数確認部6は、予め規定された割合以上のサブ領域にn個以上(例えばn=2)の分析用データがあるかどうかを入力パラメータの種類毎に判定する。予め規定された割合以上とは、その入力パラメータの全てのサブ領域の数に対して分析用データがn個以上のサブ領域の数の割合が規定値以上であることを意味する。図11の例において、入力パラメータXのサブ領域は2個なので、分析用データがn個以上のサブ領域が1個あれば、割合は0.5である。入力パラメータがXとYの2個の場合であれば、X,Yの各々について、このような判定を行う。
【0048】
分析用データ数確認部6は、全ての入力パラメータについて予め規定された割合以上のサブ領域にn個以上の分析用データがある場合、分析用データが疎な領域無しと判定し、少なくとも1種類の入力パラメータについて分析用データがn個以上のサブ領域の割合が規定値を下回る場合、分析用データが疎な領域有りと判定する。図12の例であれば、0.0≦X<2.0のサブ領域においてデータ数が少ないので、分析用データが疎な領域有りと判定される。
【0049】
なお、全てのサブ領域にn個以上の分析用データがある場合、分析用データが疎な領域無しと判定し、少なくとも1個のサブ領域において分析用データの数がn個未満の場合、分析用データが疎な領域有りと判定するようにしてもよい。
【0050】
相似変換パラメータ探索部4aは、分析用データが疎な領域有りと判定された場合、相似変換数式の係数を探索する(図10ステップS402)。この相似変換パラメータ探索部4aの動作は、第1の実施の形態の相似変換パラメータ探索部4と同じである。
そして、推定用多項式算出部5は、第1の実施の形態と同様に推定用多項式を算出する(ステップS403)。
【0051】
一方、多変量解析実行部7は、分析用データが疎な領域無しと判定された場合、分析用データ記憶部1に記憶されている分析用データに対して重回帰分析やSVRなどの多変量解析を行い、入力パラメータから出力パラメータを推定する推定用多項式を算出する(ステップS404)。
関数曲面更新部8は、多変量解析実行部7が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として関数曲面記憶部2に記憶されている関数曲面の数式を更新する(ステップS405)。式(7)のような推定用多項式が得られたとすれば、関数曲面の数式は次式のようになる。
y=2.11x3−11.55x2+25.65x+0.02 ・・・(11)
【0052】
以上のように、本実施の形態では、分析用データが疎な領域があるかどうかを判定し、分析用データが疎な領域有りと判定した場合は、第1の実施の形態の手法で推定用多項式を算出し、分析用データが疎な領域無しと判定した場合は、通常の多変量解析により推定用多項式を算出するようにしたので、分析用データの疎密に応じて適切な推定用多項式を算出することができ、また分析用データが密な場合に算出した推定用多項式を用いて関数曲面の数式を適切に更新することができる。
なお、本実施の形態と第2、第3の実施の形態とを組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0053】
第1〜第4の実施の形態で説明した推定用多項式生成装置と推定装置の各々は、それぞれCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。推定用多項式生成装置と推定装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、推定用多項式を用いて状態量などを推定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…分析用データ記憶部、2…関数曲面記憶部、3…相似変換数式記憶部、4,4a…相似変換パラメータ探索部、5…推定用多項式算出部、6…分析用データ数確認部、7…多変量解析実行部、8…関数曲面更新部、10…推定用多項式記憶部、11…入力パラメータ値取得部、12…多項式推定演算部、13,18…推定値出力部、14…相似変換数式記憶部、15…相似変換演算部、16…暫定推定値算出部、17…逆相似変換演算部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、
相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、
前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、
前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段とを備えることを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項2】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、
相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、
前記分析用データが疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認手段と、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段と、
前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行手段と、
この多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新手段とを備えることを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の推定用多項式生成装置において、
前記相似変換パラメータ探索手段は、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の推定用多項式生成装置において、
前記分析用データ数確認手段は、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項5】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項1または3に記載の推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項6】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段または多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項7】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算手段が相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出手段が算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項8】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、
前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップとを備えることを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項9】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段から前記分析用データを取得して、この分析用データに疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認ステップと、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップと、
前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行ステップと、
この多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新ステップとを備えることを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の推定用多項式生成方法において、
前記相似変換パラメータ探索ステップは、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の推定用多項式生成方法において、
前記分析用データ数確認ステップは、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項12】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項8または10に記載の推定用多項式算出ステップで算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【請求項13】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の推定用多項式算出ステップまたは多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【請求項14】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の相似変換パラメータ探索ステップによって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の関数曲面記憶手段に記憶された関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算ステップで相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の相似変換パラメータ探索ステップによって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出ステップで算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【請求項1】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、
相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、
前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、
前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段とを備えることを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項2】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、
相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、
前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段と、
前記分析用データが疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認手段と、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを用いて、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索手段と、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出手段と、
前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行手段と、
この多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新手段とを備えることを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の推定用多項式生成装置において、
前記相似変換パラメータ探索手段は、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の推定用多項式生成装置において、
前記分析用データ数確認手段は、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とする推定用多項式生成装置。
【請求項5】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項1または3に記載の推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項6】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の推定用多項式算出手段または多変量解析実行手段が算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項7】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得手段が取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算手段が相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出手段と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推定用多項式生成装置の相似変換パラメータ探索手段によって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出手段が算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算手段とを備えることを特徴とする推定装置。
【請求項8】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、
前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップとを備えることを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項9】
入力パラメータのデータとこれに対応する出力パラメータのデータとの組からなる分析用データを予め記憶する分析用データ記憶手段から前記分析用データを取得して、この分析用データに疎な領域があるかどうかを判定する分析用データ数確認ステップと、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記分析用データ記憶手段と、相似変換後の前記入力パラメータと前記出力パラメータとの関係を限定する関数曲面の数式を予め記憶する関数曲面記憶手段と、前記入力パラメータと前記出力パラメータとを相似変換する相似変換数式を予め記憶する相似変換数式記憶手段とから、前記分析用データと前記関数曲面の数式と前記相似変換数式とを取得して、前記相似変換数式の係数を探索して確定する相似変換パラメータ探索ステップと、
前記分析用データが疎な領域有りと判定された場合に、前記関数曲面の数式と前記係数が確定した相似変換数式とを合成して、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する推定用多項式算出ステップと、
前記分析用データが疎な領域無しと判定された場合に、前記分析用データに対する多変量解析により、入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する推定用多項式を算出する多変量解析実行ステップと、
この多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を新たな関数曲面の数式として前記関数曲面記憶手段に記憶されている関数曲面の数式を更新する関数曲面更新ステップとを備えることを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の推定用多項式生成方法において、
前記相似変換パラメータ探索ステップは、前記関数曲面の数式に前記相似変換数式を代入した探索用数式を用いて、前記分析用データの出力パラメータと、前記分析用データを前記探索用数式に代入して算出した出力パラメータとの誤差を分析用データ毎に求めて各分析用データについて求めた誤差の積算値が最小になるように、前記相似変換数式の係数を探索することを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の推定用多項式生成方法において、
前記分析用データ数確認ステップは、入力パラメータ空間を複数のサブ領域に分割し、全てのサブ領域または予め規定された割合以上のサブ領域に規定個数以上の分析用データがある場合に、分析用データが疎な領域無しと判定することを特徴とする推定用多項式生成方法。
【請求項12】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項8または10に記載の推定用多項式算出ステップで算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【請求項13】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の推定用多項式算出ステップまたは多変量解析実行ステップで算出した推定用多項式を用い、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値から出力パラメータ値を推定する多項式推定演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【請求項14】
入力パラメータ値を取得する入力パラメータ値取得ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の相似変換パラメータ探索ステップによって係数が確定した相似変換数式を用いて、前記入力パラメータ値取得ステップで取得した入力パラメータ値を相似変換したパラメータ値を算出する相似変換演算ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の関数曲面記憶手段に記憶された関数曲面の数式を用い、前記相似変換演算ステップで相似変換した入力パラメータ値から相似変換した暫定出力パラメータ値を推定する暫定推定値算出ステップと、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の相似変換パラメータ探索ステップによって係数が確定した相似変換数式の逆演算により、前記暫定推定値算出ステップで算出した暫定出力パラメータ値から最終的な出力パラメータ値を算出する逆相似変換演算ステップとを備えることを特徴とする推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−163841(P2011−163841A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25149(P2010−25149)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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