推進トンネルの撤去埋め戻し装置
【課題】到達立坑を形成せずに、発進立坑だけを形成して推進管の撤去埋め戻しを行う。
【解決手段】推進トンネルの撤去埋め戻し装置1は略筒状のケーシング2を備えており、該ケーシング2の開口縁部分にはカッター部材3が突設されていて、該ケーシング2が軸心Cの周りに回転されることに基づき(矢印D参照)、前記推進管Aの外周側の地盤Gを掘削するようになっている。埋め戻しを行う場合には、ケーシング2の開口2aを蓋状の閉塞ユニット(不図示)にて閉塞するが、該閉塞ユニットは(ケーシング2に装着される前は)小片に分割されているので、該小片をケーシング2の内部に運び込み、該ケーシング内部にいる作業者が閉塞ユニットを組立てて開口2aを閉塞することが可能となる。したがって、該閉塞作業のために到達立坑を構築する必要は無く、発進立坑だけで推進管の撤去埋め戻しを行うことができる。
【解決手段】推進トンネルの撤去埋め戻し装置1は略筒状のケーシング2を備えており、該ケーシング2の開口縁部分にはカッター部材3が突設されていて、該ケーシング2が軸心Cの周りに回転されることに基づき(矢印D参照)、前記推進管Aの外周側の地盤Gを掘削するようになっている。埋め戻しを行う場合には、ケーシング2の開口2aを蓋状の閉塞ユニット(不図示)にて閉塞するが、該閉塞ユニットは(ケーシング2に装着される前は)小片に分割されているので、該小片をケーシング2の内部に運び込み、該ケーシング内部にいる作業者が閉塞ユニットを組立てて開口2aを閉塞することが可能となる。したがって、該閉塞作業のために到達立坑を構築する必要は無く、発進立坑だけで推進管の撤去埋め戻しを行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された状態で地中に埋設された複数の推進管を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部では地下利用が進んでおり、水道や電気やガスなどのライフラインのためのトンネルが次々と構築されている。このようなトンネルを構築する方法としては、開削による方法と非開削による方法とがあるが、都市部で地表を開削することには様々な障害(例えば、交通量の多い道路の交通規制をしなければならなかったり、他の地下埋設物が邪魔となって掘削できなかったりという障害)を伴うので、一般には、非開削の推進工法が採用され、複数の推進管からなる推進トンネルが構築されている。そして、新たな推進トンネルが構築される一方では、老朽化した既設トンネルを撤去して新しいトンネルを更新したり、不要になった既設トンネルを撤去して埋め戻したりすることも行われており、そのための装置(推進トンネルの撤去埋め戻し装置)については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
ここで、従来の推進トンネルの撤去・埋め戻し方法について簡単に説明する。
・ 推進トンネルを撤去するに際しては、まず、図9に示すように、撤去を行いたい推進管列A,…の両端に発進立坑80と到達立坑81を形成する。
・ そして、図10に例示するように、必要な装置(例えば、掘削チューブ101等を一時的に載置するための管受架台104や、掘削チューブ101等を駆動するための圧入装置102など)を発進立坑80に吊り降ろし、該管受架台104には掘削チューブ101を吊り降ろす。
・ 該掘削チューブ101を圧入装置102にセットし、該装置102を駆動して推進管外周の地盤の掘削を開始する。
・ 所定ストロークの掘削が完了すると、該掘削チューブ101と圧入装置102との間にさや管Bを介装し、地盤の掘削を再開する。
・ このようにしてさや管Bを順次継ぎ足しながら、掘削を進めていく。
・ 地盤掘削が終了した区間の推進管Aは、順次切り離して地上に搬出する。
・ 到達立坑81までの掘削が終了し、推進管Aの撤去が完了すると、到達立坑81にて、前記掘削チューブ101をさや管Bから取り外し、その代わりに閉塞ユニット103を装着する(図11参照)。
・ 圧入装置102を逆方向に駆動してさや管Bを発進立坑80の側に移動させると共に、埋め戻し材(図12の符号E参照)を充填する。
【特許文献1】特開2005−188281号公報
【特許文献2】特開2004−156304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来例のような場合には、掘削チューブ101をさや管Bから取り外したり、該さや管Bに閉塞ユニット103を接続したりする作業には十分なスペースが必要であって、そのための立坑(上述の到達立坑81)を形成しなければならなかった。
【0005】
本発明は、到達立坑を形成しなくても推進トンネルの撤去及び埋め戻しを行うことができる、推進トンネルの撤去埋め戻し装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管(A)を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置(1)において、
前記推進管(A)の外周に配置できるように略筒状に形成されると共に、略筒状のさや管(B)を接続可能なさや管接続部(21a)を一端開口縁部分に有するケーシング(2)と、
該ケーシング(2)の他端開口縁部分に突設されると共に、該ケーシング(2)が軸心(C)の周りに回転されることに基づき前記推進管(A)の外周側の地盤(G)を掘削するカッター部材(3)と、
該ケーシング(2)の他端開口(2a)を閉塞する閉塞ユニット(図4(a) (b) 及び図5の符号6参照)と、
を備え、
該閉塞ユニット(6)は、前記他端開口(2a)を通過させることができるような形状及び寸法であって、前記ケーシング(2)の内側から操作できる位置に配置された固定具(図5の符号5参照)によって着脱可能な状態で前記ケーシング(2)の他端開口縁部分に固定され得る複数の閉塞部材(図6の符号60参照)からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記閉塞ユニット(6)は、前記他端開口(2a)を閉塞する略円板状の部分を有し、
前記閉塞部材(60)は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記カッター部材(3)が植設されると共に、固定具(図2の符号5参照)によって着脱可能な状態で前記ケーシング(2)の他端開口縁部分に固定されたカッター支持用ブラケット(4)、
を備え、
該カッター支持用ブラケット(4)は、前記他端開口(2a)からケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法であることを特徴とする。
【0009】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2に係る発明によれば、ケーシング内にいる作業者が閉塞ユニットのケーシングへの装着作業を行うことができるので、該作業のための立坑(到達立坑)を形成する必要は無く、その分、推進管撤去作業を簡素化できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、ケーシング内にいる作業者がカッターの取り外しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1乃至図8に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(地盤掘削時の構成)の一例を示す断面図であり、図1(b) は、カッター部材の配置位置等を示す側面図であり、図2は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図であり、図3は、カッター支持ブラケットの詳細構造を示す側面図である。また、図4(a)
は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(埋め戻し時の構成)の一例を示す断面図であり、図4(b) は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図であり、図5は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図であり、図6は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。さらに、図7は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図であり、図8(a)
は、地盤掘削及び推進管撤去を行っている状態の一例を示す断面図であり、図8(b) は、埋め戻しを行っている状態の一例を示す断面図である。
【0013】
本発明に係る推進トンネルの撤去埋め戻し装置は、直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管(図7及び図8(a) (b) の符号A,…参照)の外周側の地盤(図1(a) 及び図2の符号G参照)を掘削し、該推進管A,…を順次撤去し埋め戻しを行うためのものである。
【0014】
本発明に係る推進トンネルの撤去埋め戻し装置は、図1(a) 及び図4(a) に符号1で例示するものであって、略筒状(略管状)のケーシング2を備えており、該ケーシング2の内径φ1は、撤去すべき推進管Aの外径φ2よりも所定寸法だけ大きく形成されていて、該ケーシング2を推進管Aの外周に配置できるように(つまり、該推進管Aを囲繞する状態に配置できるように)なっている。また、このケーシング2の内径φ1は、作業者が入り込んで種々の作業ができる程度の寸法である。例えば、推進管Aの外径φ2が800〜900cmの場合には、ケーシング2の内径φ1は1200cm程度にすると良い。また、このケーシング2の一端開口縁部分にはさや管接続部21aが形成されていて、該ケーシング2とほぼ同じ径である略筒状のさや管Bを接続できるようになっている。図示のさや管接続部21aは、さや管Bを嵌合できるような円筒外周面であって、不図示のロックピン等によってさや管を接続できるように構成されている。
【0015】
一方、図2に詳示するように、前記ケーシング2の他端開口縁部分(つまり、前記一端開口縁部分と反対側の開口縁部分)にはカッター部材3が突設されていて、前記ケーシング2が軸心Cの周りに回転されることに基づき(矢印D参照。詳細は後述する。)、前記推進管Aの外周側の地盤Gを掘削するようになっている。なお、このカッター部材3は、前記ケーシング2の他端開口縁部分に固設するのではなく、着脱可能な状態に取り付けておくと良い。具体的には、前記カッター部材3を専用のブラケット(以下、“カッター支持用ブラケット”とする)4に植設しておき、該カッター支持用ブラケット4を固定具5(例えば、ボルト等)によって前記ケーシング2の他端開口縁部分に着脱可能な状態で取り付けることができるようにすると良い。その場合、前記固定具5は、前記ケーシング2の内側から操作できる位置に配置しておき、前記カッター支持用ブラケット4(正確には、該ブラケット4及びカッター部材3から構成されるユニット)は、ケーシング2の他端開口2aからケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法にしておくと良い。そのように構成した場合には、ケーシング内部にいる作業者が前記カッター部材3及びカッター支持用ブラケット4の脱着を行うことができる。
【0016】
図1及び図2に示す撤去埋め戻し装置1では、カッター支持用ブラケットとしては、図3に符号4で示す、4分の1の円弧状のものが4個配置されていて、ケーシング2に取り付けた状態ではこれら4個の円弧状ブラケット2は連続するように配置されて、他端開口縁部分に沿った環状部材を構成することとなる。そして、各円弧状ブラケット4には、内側(つまり、トンネル軸心Cの側)に延設されたフランジ部4aが形成されていて、上述のカッター部材3がこのフランジ部4aに植設されている。なお、各円弧状ブラケット4は、図2に詳示するように、L字状の断面形状をしていてケーシング2の外周面に沿うような湾曲面部(符号40参照)を有しており、該湾曲面部40とケーシング2とが固定具5によって連結されるようになっている。ところで、図1〜図3に示す装置では、
・ ブラケット4の数は4つであり、
・ ケーシング2に取り付けられた状態では互いに連結(当接)されて環状部材を形成し、
・ 各ブラケット4にはカッター部材3が2本ずつ植設されている
が、本発明の範囲がそれらだけに限定されるものでは無い。例えば、
・ ブラケットの数を4つ以外としても、
・ ブラケットがケーシングに取り付けられた状態で互いに当接されなくても、また、環状部材を形成しなくても、
・ 各ブラケットに植設されるカッター部材の本数を2本以外にしても、
どのようにしても良い。
【0017】
また一方、本発明に係る撤去埋め戻し装置1は、他端開口2aを閉塞する閉塞ユニット(図4(a) (b) 及び図5の符号6参照)を備えており、埋め戻しの際には前記ケーシング2に取り付けられて埋め戻し材(図8(b) の符号E参照)のさや管内への侵入を防止するように構成されている。この閉塞ユニット6は、複数の部材(図6の符号60参照。以下、“閉塞部材”とする)にて構成されており、次の(1)
〜(4) の要件を満たすようになっている。
(1) 各閉塞部材60は、図5に示すように、ボルト等の固定具5によって着脱可能な状態で前記ケーシング2の他端開口縁部分に固定できるようになっている。
(2) それらの閉塞部材60は、前記他端開口縁部分に取り付けられた状態では、各閉塞部材相互の間に隙間がほとんど生じないように配置されて前記他端開口2aの全体を閉塞し、埋め戻し材Eがケーシング内部及びさや管内部に侵入しないようにする。
(3) 一つ一つの閉塞部材60は、前記他端開口2aを通過させることができるような形状及び寸法である。
(4) 各固定具5は、前記ケーシング2の内側から操作できる位置に配置されている。
【0018】
上記(3) 及び(4)
のように構成されているので、ケーシング内部にいる作業者だけで前記閉塞部材60の装着作業を行うことができ、該作業のための立坑(到達立坑)を形成する必要は無く、その分、推進管撤去作業を簡素化できる。
【0019】
上記(2) を実現する一つの例としては、
・ 閉塞部材60が前記他端開口縁部分に取り付けられた状態では、全体として、前記他端開口2aを閉塞する略円板状の部分を形成し、
・ 該他端開口縁部分から取り外された状態の個々の閉塞部材60は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成されたもの
を挙げることができる。なお、図6では、閉塞ユニット6は4個の閉塞部材60に分割されているが、もちろんこれに限られるものではなく、4個以外の閉塞部材に分割するようにしても良い。
【0020】
上記(4) を実現する一つの例としては、
・ 各閉塞部材60には、図5に符号61で詳示するように、ケーシング2の内周面(或いは外周面)に沿うような湾曲面部を形成し、
・ 該ケーシング2と湾曲面部61とをボルト(固定具)5によって連結する
という構造を挙げることができる。なお、図示の装置では、カッター支持用ブラケット4及び閉塞部材6の固定は、同じ固定具5及び同じ固定孔(ボルトを挿通すべくケーシング2に穿設された孔)を使って行われるが、もちろんこれに限られるものではなく、別々の固定具や別々の固定孔を用いても良い。
【0021】
ところで、前記ケーシング2の他端開口2aから一端開口2bに掛けて、該ケーシング2の内周面にはスクリュウ部材7が螺旋状に固設されている。このスクリュウ部材7は、前記推進管Aに干渉しない程度の高さ(換言すれば、該推進管Aとケーシング2との隙間に配置されるような高さ)であって、該推進管Aの外周面に沿って配置され、前記地盤Gの掘削により生じた土砂を前記他端開口2aの側から前記一端開口2bの側へ搬送するように構成されている。このようなスクリュウ部材7を設けることにより、前記ケーシング2を回転させる駆動力を利用して土砂の排出も同時に行うことができ、土砂排出用の複雑な装置を別途設ける必要が無く、その分、コストの低減を図ることができる。このスクリュウ部材7は、図示のように、他端開口2aから一端開口2bへの途中で分断しても良い。このように分断されて一端開口2bの側に配置されるスクリュウ部材(符号71参照)を“一端側スクリュウ部材”とし、他端開口2aの側に配置されるスクリュウ部材(符号70A,70B,70C,70D参照)を“他端側スクリュウ部材”とすると、一端側スクリュウ部材と他端側スクリュウ部材とは、本数や形状(例えば、高さやピッチ)を異ならせても良い。図1(a) に示すスクリュウ部材は下表のように構成している。
【表1】
【0022】
他端開口2aの側では、ピッチの狭いスクリュウ部材を、互いに略平行な状態で複数本(図では4本)設けているので、土砂の搬送力を高めることができる。図1(a) 及び図2に示す構成のものでは、前記カッター部材3と共に地盤Gの掘削を行うカッター部材13が、前記他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dの端部(前記カッター部材3に近接する側の端部)に複数本植設されているので、地盤Gを掘削する能力も向上させることができる。また、他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dの高さは、推進管Aの外周面に略接触する程度の高さであるので、該推進管Aを支持するガイドとしての機能も有する。さらに、推進管Aの外周面に付着している土砂も該他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dによって除去することができる。また、一端側スクリュウ部材71と推進管Aとの間には隙間dが生じるように構成されているので(つまり、前記一端側スクリュウ部材71は、推進管Aの外周面との間に所定の隙間dが生じるような高さに形成されているので)、該推進管Aの取り外しを容易にすることができる。なお、図1(a)
に示す例では、一端側スクリュウ部材は1本で、他端側スクリュウ部材は4本であるが、もちろんこれに限られるものではなく、本数を適宜変更しても良い。
【0023】
ところで、上述のケーシング2は、図示のように、一端開口2bを含む側と他端開口2aを含む側とで分断できるようにしても良い。以下、一端開口2bを含む側のケーシングを“一端側ケーシング(符号21参照)”と称し、他端開口2aを含む側のケーシングを“他端側ケーシング(符号20参照)”と称することとする。この場合、内方に突出するフランジ部(図2の符号21a参照)を一端側ケーシング21の端部(他端側ケーシング20に近接する側の端部)に設け、同じく内方に突出するフランジ部(図2の符号20a参照)を他端側ケーシング20の端部(一端側ケーシング21に近接する側の端部)に設けておき、それらのフランジ部20a,21aをボルト22等で連結しておくと良い。また、前記他端側ケーシング20には上述の他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dを設けておき、前記一端側ケーシング21には上述の一端側スクリュウ部材71を設けておくと良い。
【0024】
一方、図1(a) に示すように、前記ケーシング2の一端開口2bの側であって、トンネル軸心Cの近傍には二重のスイベルジョイント(ロータリージョイント)82を、支持装置83によって着脱自在に支持しておくと良い。そして、このスイベルジョイント82の一側(液体入力側)には、水を供給するための給水管84と、滑材を供給するための滑材供給管85と、を接続しておき、該スイベルジョイント82からケーシング他端開口2aには、掘削部(地盤G)に水を注水するための注水管86を延設し、該スイベルジョイント82からケーシング2の内周面に掛けては、ケーシング2の外周面に滑材を注入する滑材注入管87を延設しておくと良い。なお、符号88は、滑材を注入するためにケーシング21に穿設された注入孔を示す。
【0025】
次に、推進トンネルの撤去及び埋め戻しを行う方法の一例として、2つの立坑(発進立坑)を形成してそれぞれの立坑から推進管撤去及び埋め戻しを行う例について説明する。
【0026】
まず、撤去を行いたい推進管列A,…の両端に第1発進立坑(図8(a) の符号80A参照)と第2発進立坑(図8(a)
の符号80B参照)とを形成する。なお、推進管列A,…の敷設時に既に立坑が形成されていて、その立坑が埋め戻しされずに残っているような場合にはその立坑を利用しても良い。
【0027】
そして、第1発進立坑80Aには、図7に示すように、
・ 撤去埋め戻し装置1を駆動するための駆動装置(オールケーシング掘削機)9や、
・ 推進管Aやさや管Bを一時的に載置するための管受架台10
などを設置する。上述の給水管84や滑材供給管85は地上まで延設しておき(不図示)、給水装置(同じく不図示)や滑材供給装置(同じく不図示)に接続する。
【0028】
なお、上述の駆動装置9は、撤去埋め戻し装置1のケーシング2或いはさや管Bを把持し、それらをトンネル軸心Cの周りに揺動させ、さらに、それらをトンネル軸心Cの方向に圧入できる機能を有している必要がある。図7中の符号80aは発進坑口を示し、符号90は、駆動装置9のベースを示し、符号91は、上述のケーシング2或いはさや管Bの開口縁部を把持することのできるチャック部を示し、符号92は、該チャック部91をトンネル軸心Cの周りに揺動させるための揺動用ジャッキを示し、符号93は、前記ベース90に支持されていて前記揺動用ジャッキ92に油圧を供給する油圧供給装置を示し、符号94は、トンネル軸心Cに沿って移動可能に配置された圧入フレームを示し、符号95は、該圧入フレーム94と前記ベース90との間に配置されて該圧入フレーム94を前記トンネル軸心Cの方向に圧入する圧入用ジャッキを示す。
【0029】
駆動装置9や管受架台10等の設置が終了すると、次に、クレーンを使って前記管受架台10に上述の撤去埋め戻し装置1を吊り降ろし、前記圧入フレーム94に該撤去埋め戻し装置1を把持させる。この状態で圧入用ジャッキ95を収縮させると共に、揺動用ジャッキ92を作動させると、前記撤去埋め戻し装置1のカッター部材3,13が推進管外周の地盤に押し付けられながら、地盤の掘削が開始される。所定ストロークの掘削が終了すると、圧入フレーム94による把持を解除して、さや管Bを撤去埋め戻し装置1に連結し、圧入フレーム94や圧入用ジャッキ95や揺動用ジャッキ92を再び作動させて、地盤の掘削を開始する。このように、さや管Bを順次連結しながら掘削を続行する。なお、地盤掘削が終了した区間の推進管Aは、公知の方法で順次地上に搬出する。
【0030】
そして、所定の距離(つまり、それ以上の掘削ができない限界距離)までの掘削が終了し、地盤掘削区間J1の推進管の撤去が終了すると(図8(a) (b) 参照)、未撤去の推進管Aの開口を蓋部材(図8(b) の符号H参照)で閉塞し、ケーシング内にいる作業者(不図示)が上述したようにカッター支持用ブラケット4をケーシング2から取り外し、その代わりに閉塞ユニット6を取り付ける。そして、埋め戻し材の注入管Fを配管し、閉塞ユニット6の外側(つまり、前記蓋部材Hと閉塞ユニット6との間)に埋め戻し材Eを充填しながら撤去埋め戻し装置1を第1発進立坑80Aの側に移動させる。残りの区間J2については、上述と同様の方法で第2発進立坑80Bの側から推進管の撤去及び埋め戻しを行う。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(地盤掘削時の構成)の一例を示す断面図であり、図1(b) は、カッター部材の配置位置等を示す側面図である。
【図2】図2は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、カッター支持ブラケットの詳細構造を示す側面図である。
【図4】図4(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(埋め戻し時の構成)の一例を示す断面図であり、図4(b) は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。
【図5】図5は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図である。
【図6】図6は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。
【図7】図7は、図7は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図である。
【図8】図8(a) は、地盤掘削及び推進管撤去を行っている状態の一例を示す断面図であり、図8(b) は、埋め戻しを行っている状態の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、掘削及び撤去前の推進トンネルの状態の一例を示す断面図である。
【図10】図10は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図である。
【図11】図11は、閉塞ユニットを装着する様子の一例を示す断面図である。
【図12】図12は、埋め戻し時の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 推進トンネルの撤去埋め戻し装置
2 ケーシング
2a 他端開口
3 カッター部材
4 カッター支持用ブラケット
5 固定具
6 閉塞ユニット
21a さや管接続部
60 閉塞部材
A 推進管
B さや管
C 軸心
G 推進管の外周側の地盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された状態で地中に埋設された複数の推進管を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部では地下利用が進んでおり、水道や電気やガスなどのライフラインのためのトンネルが次々と構築されている。このようなトンネルを構築する方法としては、開削による方法と非開削による方法とがあるが、都市部で地表を開削することには様々な障害(例えば、交通量の多い道路の交通規制をしなければならなかったり、他の地下埋設物が邪魔となって掘削できなかったりという障害)を伴うので、一般には、非開削の推進工法が採用され、複数の推進管からなる推進トンネルが構築されている。そして、新たな推進トンネルが構築される一方では、老朽化した既設トンネルを撤去して新しいトンネルを更新したり、不要になった既設トンネルを撤去して埋め戻したりすることも行われており、そのための装置(推進トンネルの撤去埋め戻し装置)については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
ここで、従来の推進トンネルの撤去・埋め戻し方法について簡単に説明する。
・ 推進トンネルを撤去するに際しては、まず、図9に示すように、撤去を行いたい推進管列A,…の両端に発進立坑80と到達立坑81を形成する。
・ そして、図10に例示するように、必要な装置(例えば、掘削チューブ101等を一時的に載置するための管受架台104や、掘削チューブ101等を駆動するための圧入装置102など)を発進立坑80に吊り降ろし、該管受架台104には掘削チューブ101を吊り降ろす。
・ 該掘削チューブ101を圧入装置102にセットし、該装置102を駆動して推進管外周の地盤の掘削を開始する。
・ 所定ストロークの掘削が完了すると、該掘削チューブ101と圧入装置102との間にさや管Bを介装し、地盤の掘削を再開する。
・ このようにしてさや管Bを順次継ぎ足しながら、掘削を進めていく。
・ 地盤掘削が終了した区間の推進管Aは、順次切り離して地上に搬出する。
・ 到達立坑81までの掘削が終了し、推進管Aの撤去が完了すると、到達立坑81にて、前記掘削チューブ101をさや管Bから取り外し、その代わりに閉塞ユニット103を装着する(図11参照)。
・ 圧入装置102を逆方向に駆動してさや管Bを発進立坑80の側に移動させると共に、埋め戻し材(図12の符号E参照)を充填する。
【特許文献1】特開2005−188281号公報
【特許文献2】特開2004−156304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来例のような場合には、掘削チューブ101をさや管Bから取り外したり、該さや管Bに閉塞ユニット103を接続したりする作業には十分なスペースが必要であって、そのための立坑(上述の到達立坑81)を形成しなければならなかった。
【0005】
本発明は、到達立坑を形成しなくても推進トンネルの撤去及び埋め戻しを行うことができる、推進トンネルの撤去埋め戻し装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管(A)を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置(1)において、
前記推進管(A)の外周に配置できるように略筒状に形成されると共に、略筒状のさや管(B)を接続可能なさや管接続部(21a)を一端開口縁部分に有するケーシング(2)と、
該ケーシング(2)の他端開口縁部分に突設されると共に、該ケーシング(2)が軸心(C)の周りに回転されることに基づき前記推進管(A)の外周側の地盤(G)を掘削するカッター部材(3)と、
該ケーシング(2)の他端開口(2a)を閉塞する閉塞ユニット(図4(a) (b) 及び図5の符号6参照)と、
を備え、
該閉塞ユニット(6)は、前記他端開口(2a)を通過させることができるような形状及び寸法であって、前記ケーシング(2)の内側から操作できる位置に配置された固定具(図5の符号5参照)によって着脱可能な状態で前記ケーシング(2)の他端開口縁部分に固定され得る複数の閉塞部材(図6の符号60参照)からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記閉塞ユニット(6)は、前記他端開口(2a)を閉塞する略円板状の部分を有し、
前記閉塞部材(60)は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記カッター部材(3)が植設されると共に、固定具(図2の符号5参照)によって着脱可能な状態で前記ケーシング(2)の他端開口縁部分に固定されたカッター支持用ブラケット(4)、
を備え、
該カッター支持用ブラケット(4)は、前記他端開口(2a)からケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法であることを特徴とする。
【0009】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2に係る発明によれば、ケーシング内にいる作業者が閉塞ユニットのケーシングへの装着作業を行うことができるので、該作業のための立坑(到達立坑)を形成する必要は無く、その分、推進管撤去作業を簡素化できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、ケーシング内にいる作業者がカッターの取り外しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1乃至図8に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(地盤掘削時の構成)の一例を示す断面図であり、図1(b) は、カッター部材の配置位置等を示す側面図であり、図2は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図であり、図3は、カッター支持ブラケットの詳細構造を示す側面図である。また、図4(a)
は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(埋め戻し時の構成)の一例を示す断面図であり、図4(b) は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図であり、図5は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図であり、図6は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。さらに、図7は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図であり、図8(a)
は、地盤掘削及び推進管撤去を行っている状態の一例を示す断面図であり、図8(b) は、埋め戻しを行っている状態の一例を示す断面図である。
【0013】
本発明に係る推進トンネルの撤去埋め戻し装置は、直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管(図7及び図8(a) (b) の符号A,…参照)の外周側の地盤(図1(a) 及び図2の符号G参照)を掘削し、該推進管A,…を順次撤去し埋め戻しを行うためのものである。
【0014】
本発明に係る推進トンネルの撤去埋め戻し装置は、図1(a) 及び図4(a) に符号1で例示するものであって、略筒状(略管状)のケーシング2を備えており、該ケーシング2の内径φ1は、撤去すべき推進管Aの外径φ2よりも所定寸法だけ大きく形成されていて、該ケーシング2を推進管Aの外周に配置できるように(つまり、該推進管Aを囲繞する状態に配置できるように)なっている。また、このケーシング2の内径φ1は、作業者が入り込んで種々の作業ができる程度の寸法である。例えば、推進管Aの外径φ2が800〜900cmの場合には、ケーシング2の内径φ1は1200cm程度にすると良い。また、このケーシング2の一端開口縁部分にはさや管接続部21aが形成されていて、該ケーシング2とほぼ同じ径である略筒状のさや管Bを接続できるようになっている。図示のさや管接続部21aは、さや管Bを嵌合できるような円筒外周面であって、不図示のロックピン等によってさや管を接続できるように構成されている。
【0015】
一方、図2に詳示するように、前記ケーシング2の他端開口縁部分(つまり、前記一端開口縁部分と反対側の開口縁部分)にはカッター部材3が突設されていて、前記ケーシング2が軸心Cの周りに回転されることに基づき(矢印D参照。詳細は後述する。)、前記推進管Aの外周側の地盤Gを掘削するようになっている。なお、このカッター部材3は、前記ケーシング2の他端開口縁部分に固設するのではなく、着脱可能な状態に取り付けておくと良い。具体的には、前記カッター部材3を専用のブラケット(以下、“カッター支持用ブラケット”とする)4に植設しておき、該カッター支持用ブラケット4を固定具5(例えば、ボルト等)によって前記ケーシング2の他端開口縁部分に着脱可能な状態で取り付けることができるようにすると良い。その場合、前記固定具5は、前記ケーシング2の内側から操作できる位置に配置しておき、前記カッター支持用ブラケット4(正確には、該ブラケット4及びカッター部材3から構成されるユニット)は、ケーシング2の他端開口2aからケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法にしておくと良い。そのように構成した場合には、ケーシング内部にいる作業者が前記カッター部材3及びカッター支持用ブラケット4の脱着を行うことができる。
【0016】
図1及び図2に示す撤去埋め戻し装置1では、カッター支持用ブラケットとしては、図3に符号4で示す、4分の1の円弧状のものが4個配置されていて、ケーシング2に取り付けた状態ではこれら4個の円弧状ブラケット2は連続するように配置されて、他端開口縁部分に沿った環状部材を構成することとなる。そして、各円弧状ブラケット4には、内側(つまり、トンネル軸心Cの側)に延設されたフランジ部4aが形成されていて、上述のカッター部材3がこのフランジ部4aに植設されている。なお、各円弧状ブラケット4は、図2に詳示するように、L字状の断面形状をしていてケーシング2の外周面に沿うような湾曲面部(符号40参照)を有しており、該湾曲面部40とケーシング2とが固定具5によって連結されるようになっている。ところで、図1〜図3に示す装置では、
・ ブラケット4の数は4つであり、
・ ケーシング2に取り付けられた状態では互いに連結(当接)されて環状部材を形成し、
・ 各ブラケット4にはカッター部材3が2本ずつ植設されている
が、本発明の範囲がそれらだけに限定されるものでは無い。例えば、
・ ブラケットの数を4つ以外としても、
・ ブラケットがケーシングに取り付けられた状態で互いに当接されなくても、また、環状部材を形成しなくても、
・ 各ブラケットに植設されるカッター部材の本数を2本以外にしても、
どのようにしても良い。
【0017】
また一方、本発明に係る撤去埋め戻し装置1は、他端開口2aを閉塞する閉塞ユニット(図4(a) (b) 及び図5の符号6参照)を備えており、埋め戻しの際には前記ケーシング2に取り付けられて埋め戻し材(図8(b) の符号E参照)のさや管内への侵入を防止するように構成されている。この閉塞ユニット6は、複数の部材(図6の符号60参照。以下、“閉塞部材”とする)にて構成されており、次の(1)
〜(4) の要件を満たすようになっている。
(1) 各閉塞部材60は、図5に示すように、ボルト等の固定具5によって着脱可能な状態で前記ケーシング2の他端開口縁部分に固定できるようになっている。
(2) それらの閉塞部材60は、前記他端開口縁部分に取り付けられた状態では、各閉塞部材相互の間に隙間がほとんど生じないように配置されて前記他端開口2aの全体を閉塞し、埋め戻し材Eがケーシング内部及びさや管内部に侵入しないようにする。
(3) 一つ一つの閉塞部材60は、前記他端開口2aを通過させることができるような形状及び寸法である。
(4) 各固定具5は、前記ケーシング2の内側から操作できる位置に配置されている。
【0018】
上記(3) 及び(4)
のように構成されているので、ケーシング内部にいる作業者だけで前記閉塞部材60の装着作業を行うことができ、該作業のための立坑(到達立坑)を形成する必要は無く、その分、推進管撤去作業を簡素化できる。
【0019】
上記(2) を実現する一つの例としては、
・ 閉塞部材60が前記他端開口縁部分に取り付けられた状態では、全体として、前記他端開口2aを閉塞する略円板状の部分を形成し、
・ 該他端開口縁部分から取り外された状態の個々の閉塞部材60は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成されたもの
を挙げることができる。なお、図6では、閉塞ユニット6は4個の閉塞部材60に分割されているが、もちろんこれに限られるものではなく、4個以外の閉塞部材に分割するようにしても良い。
【0020】
上記(4) を実現する一つの例としては、
・ 各閉塞部材60には、図5に符号61で詳示するように、ケーシング2の内周面(或いは外周面)に沿うような湾曲面部を形成し、
・ 該ケーシング2と湾曲面部61とをボルト(固定具)5によって連結する
という構造を挙げることができる。なお、図示の装置では、カッター支持用ブラケット4及び閉塞部材6の固定は、同じ固定具5及び同じ固定孔(ボルトを挿通すべくケーシング2に穿設された孔)を使って行われるが、もちろんこれに限られるものではなく、別々の固定具や別々の固定孔を用いても良い。
【0021】
ところで、前記ケーシング2の他端開口2aから一端開口2bに掛けて、該ケーシング2の内周面にはスクリュウ部材7が螺旋状に固設されている。このスクリュウ部材7は、前記推進管Aに干渉しない程度の高さ(換言すれば、該推進管Aとケーシング2との隙間に配置されるような高さ)であって、該推進管Aの外周面に沿って配置され、前記地盤Gの掘削により生じた土砂を前記他端開口2aの側から前記一端開口2bの側へ搬送するように構成されている。このようなスクリュウ部材7を設けることにより、前記ケーシング2を回転させる駆動力を利用して土砂の排出も同時に行うことができ、土砂排出用の複雑な装置を別途設ける必要が無く、その分、コストの低減を図ることができる。このスクリュウ部材7は、図示のように、他端開口2aから一端開口2bへの途中で分断しても良い。このように分断されて一端開口2bの側に配置されるスクリュウ部材(符号71参照)を“一端側スクリュウ部材”とし、他端開口2aの側に配置されるスクリュウ部材(符号70A,70B,70C,70D参照)を“他端側スクリュウ部材”とすると、一端側スクリュウ部材と他端側スクリュウ部材とは、本数や形状(例えば、高さやピッチ)を異ならせても良い。図1(a) に示すスクリュウ部材は下表のように構成している。
【表1】
【0022】
他端開口2aの側では、ピッチの狭いスクリュウ部材を、互いに略平行な状態で複数本(図では4本)設けているので、土砂の搬送力を高めることができる。図1(a) 及び図2に示す構成のものでは、前記カッター部材3と共に地盤Gの掘削を行うカッター部材13が、前記他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dの端部(前記カッター部材3に近接する側の端部)に複数本植設されているので、地盤Gを掘削する能力も向上させることができる。また、他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dの高さは、推進管Aの外周面に略接触する程度の高さであるので、該推進管Aを支持するガイドとしての機能も有する。さらに、推進管Aの外周面に付着している土砂も該他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dによって除去することができる。また、一端側スクリュウ部材71と推進管Aとの間には隙間dが生じるように構成されているので(つまり、前記一端側スクリュウ部材71は、推進管Aの外周面との間に所定の隙間dが生じるような高さに形成されているので)、該推進管Aの取り外しを容易にすることができる。なお、図1(a)
に示す例では、一端側スクリュウ部材は1本で、他端側スクリュウ部材は4本であるが、もちろんこれに限られるものではなく、本数を適宜変更しても良い。
【0023】
ところで、上述のケーシング2は、図示のように、一端開口2bを含む側と他端開口2aを含む側とで分断できるようにしても良い。以下、一端開口2bを含む側のケーシングを“一端側ケーシング(符号21参照)”と称し、他端開口2aを含む側のケーシングを“他端側ケーシング(符号20参照)”と称することとする。この場合、内方に突出するフランジ部(図2の符号21a参照)を一端側ケーシング21の端部(他端側ケーシング20に近接する側の端部)に設け、同じく内方に突出するフランジ部(図2の符号20a参照)を他端側ケーシング20の端部(一端側ケーシング21に近接する側の端部)に設けておき、それらのフランジ部20a,21aをボルト22等で連結しておくと良い。また、前記他端側ケーシング20には上述の他端側スクリュウ部材70A,70B,70C,70Dを設けておき、前記一端側ケーシング21には上述の一端側スクリュウ部材71を設けておくと良い。
【0024】
一方、図1(a) に示すように、前記ケーシング2の一端開口2bの側であって、トンネル軸心Cの近傍には二重のスイベルジョイント(ロータリージョイント)82を、支持装置83によって着脱自在に支持しておくと良い。そして、このスイベルジョイント82の一側(液体入力側)には、水を供給するための給水管84と、滑材を供給するための滑材供給管85と、を接続しておき、該スイベルジョイント82からケーシング他端開口2aには、掘削部(地盤G)に水を注水するための注水管86を延設し、該スイベルジョイント82からケーシング2の内周面に掛けては、ケーシング2の外周面に滑材を注入する滑材注入管87を延設しておくと良い。なお、符号88は、滑材を注入するためにケーシング21に穿設された注入孔を示す。
【0025】
次に、推進トンネルの撤去及び埋め戻しを行う方法の一例として、2つの立坑(発進立坑)を形成してそれぞれの立坑から推進管撤去及び埋め戻しを行う例について説明する。
【0026】
まず、撤去を行いたい推進管列A,…の両端に第1発進立坑(図8(a) の符号80A参照)と第2発進立坑(図8(a)
の符号80B参照)とを形成する。なお、推進管列A,…の敷設時に既に立坑が形成されていて、その立坑が埋め戻しされずに残っているような場合にはその立坑を利用しても良い。
【0027】
そして、第1発進立坑80Aには、図7に示すように、
・ 撤去埋め戻し装置1を駆動するための駆動装置(オールケーシング掘削機)9や、
・ 推進管Aやさや管Bを一時的に載置するための管受架台10
などを設置する。上述の給水管84や滑材供給管85は地上まで延設しておき(不図示)、給水装置(同じく不図示)や滑材供給装置(同じく不図示)に接続する。
【0028】
なお、上述の駆動装置9は、撤去埋め戻し装置1のケーシング2或いはさや管Bを把持し、それらをトンネル軸心Cの周りに揺動させ、さらに、それらをトンネル軸心Cの方向に圧入できる機能を有している必要がある。図7中の符号80aは発進坑口を示し、符号90は、駆動装置9のベースを示し、符号91は、上述のケーシング2或いはさや管Bの開口縁部を把持することのできるチャック部を示し、符号92は、該チャック部91をトンネル軸心Cの周りに揺動させるための揺動用ジャッキを示し、符号93は、前記ベース90に支持されていて前記揺動用ジャッキ92に油圧を供給する油圧供給装置を示し、符号94は、トンネル軸心Cに沿って移動可能に配置された圧入フレームを示し、符号95は、該圧入フレーム94と前記ベース90との間に配置されて該圧入フレーム94を前記トンネル軸心Cの方向に圧入する圧入用ジャッキを示す。
【0029】
駆動装置9や管受架台10等の設置が終了すると、次に、クレーンを使って前記管受架台10に上述の撤去埋め戻し装置1を吊り降ろし、前記圧入フレーム94に該撤去埋め戻し装置1を把持させる。この状態で圧入用ジャッキ95を収縮させると共に、揺動用ジャッキ92を作動させると、前記撤去埋め戻し装置1のカッター部材3,13が推進管外周の地盤に押し付けられながら、地盤の掘削が開始される。所定ストロークの掘削が終了すると、圧入フレーム94による把持を解除して、さや管Bを撤去埋め戻し装置1に連結し、圧入フレーム94や圧入用ジャッキ95や揺動用ジャッキ92を再び作動させて、地盤の掘削を開始する。このように、さや管Bを順次連結しながら掘削を続行する。なお、地盤掘削が終了した区間の推進管Aは、公知の方法で順次地上に搬出する。
【0030】
そして、所定の距離(つまり、それ以上の掘削ができない限界距離)までの掘削が終了し、地盤掘削区間J1の推進管の撤去が終了すると(図8(a) (b) 参照)、未撤去の推進管Aの開口を蓋部材(図8(b) の符号H参照)で閉塞し、ケーシング内にいる作業者(不図示)が上述したようにカッター支持用ブラケット4をケーシング2から取り外し、その代わりに閉塞ユニット6を取り付ける。そして、埋め戻し材の注入管Fを配管し、閉塞ユニット6の外側(つまり、前記蓋部材Hと閉塞ユニット6との間)に埋め戻し材Eを充填しながら撤去埋め戻し装置1を第1発進立坑80Aの側に移動させる。残りの区間J2については、上述と同様の方法で第2発進立坑80Bの側から推進管の撤去及び埋め戻しを行う。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(地盤掘削時の構成)の一例を示す断面図であり、図1(b) は、カッター部材の配置位置等を示す側面図である。
【図2】図2は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、カッター支持ブラケットの詳細構造を示す側面図である。
【図4】図4(a) は、本発明に係る撤去埋め戻し装置の構成(埋め戻し時の構成)の一例を示す断面図であり、図4(b) は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。
【図5】図5は、ケーシングの他端開口部分の構造を示す拡大断面図である。
【図6】図6は、閉塞ユニットの形状の一例を示す側面図である。
【図7】図7は、図7は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図である。
【図8】図8(a) は、地盤掘削及び推進管撤去を行っている状態の一例を示す断面図であり、図8(b) は、埋め戻しを行っている状態の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、掘削及び撤去前の推進トンネルの状態の一例を示す断面図である。
【図10】図10は、掘削及び撤去時の様子を示す断面図である。
【図11】図11は、閉塞ユニットを装着する様子の一例を示す断面図である。
【図12】図12は、埋め戻し時の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 推進トンネルの撤去埋め戻し装置
2 ケーシング
2a 他端開口
3 カッター部材
4 カッター支持用ブラケット
5 固定具
6 閉塞ユニット
21a さや管接続部
60 閉塞部材
A 推進管
B さや管
C 軸心
G 推進管の外周側の地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置において、
前記推進管の外周に配置できるように略筒状に形成されると共に、略筒状のさや管を接続可能なさや管接続部を一端開口縁部分に有するケーシングと、
該ケーシングの他端開口縁部分に突設されると共に、該ケーシングが軸心の周りに回転されることに基づき前記推進管の外周側の地盤を掘削するカッター部材と、
該ケーシングの他端開口を閉塞する閉塞ユニットと、
を備え、
該閉塞ユニットは、前記他端開口を通過させることができるような形状及び寸法であって、前記ケーシングの内側から操作できる位置に配置された固定具によって着脱可能な状態で前記ケーシングの他端開口縁部分に固定され得る複数の閉塞部材からなる、
ことを特徴とする、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【請求項2】
前記閉塞ユニットは、前記他端開口を閉塞する略円板状の部分を有し、
前記閉塞部材は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【請求項3】
前記カッター部材が植設されると共に、固定具によって着脱可能な状態で前記ケーシングの他端開口縁部分に固定されたカッター支持用ブラケット、
を備え、
該カッター支持用ブラケットは、前記他端開口からケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【請求項1】
直列に接続された状態で地中に埋設されて推進トンネルを構成する複数の推進管を撤去して埋め戻しを行う、推進トンネルの撤去埋め戻し装置において、
前記推進管の外周に配置できるように略筒状に形成されると共に、略筒状のさや管を接続可能なさや管接続部を一端開口縁部分に有するケーシングと、
該ケーシングの他端開口縁部分に突設されると共に、該ケーシングが軸心の周りに回転されることに基づき前記推進管の外周側の地盤を掘削するカッター部材と、
該ケーシングの他端開口を閉塞する閉塞ユニットと、
を備え、
該閉塞ユニットは、前記他端開口を通過させることができるような形状及び寸法であって、前記ケーシングの内側から操作できる位置に配置された固定具によって着脱可能な状態で前記ケーシングの他端開口縁部分に固定され得る複数の閉塞部材からなる、
ことを特徴とする、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【請求項2】
前記閉塞ユニットは、前記他端開口を閉塞する略円板状の部分を有し、
前記閉塞部材は、前記略円板状の部分の一部となる略扇形に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【請求項3】
前記カッター部材が植設されると共に、固定具によって着脱可能な状態で前記ケーシングの他端開口縁部分に固定されたカッター支持用ブラケット、
を備え、
該カッター支持用ブラケットは、前記他端開口からケーシング内部に取り込めるような形状及び寸法である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の、推進トンネルの撤去埋め戻し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−97296(P2009−97296A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272276(P2007−272276)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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