説明

推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁、掘進機

【課題】
推進工法で用いる送泥管および排泥管の管路のバイパス弁やそれを備えた掘進機を提供することを目的とする。
【解決手段】
推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁であって、バイパス弁は、それぞれが送泥管と連結する少なくとも2つの送泥管用の管路と、それぞれが排泥管と連結する少なくとも2つの排泥管用の管路とを備える筐体と、回転弁と、駆動部とを備え、筐体内部には、回転弁が中心を軸として回転可能なバイパス空間が形成されており、駆動部が、回転弁をバイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、バイパス弁が開いている状態の場合には、2つの送泥管用の管路、2つの排泥管用の管路が、それぞれバイパス空間を介して連通しており、バイパス弁が閉じている状態の場合には、送泥管用の管路と排泥管用の管路とが、バイパス空間を介して連通している、推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイパス弁および掘進機に関する。特に、地中に推進管を埋設するための推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁と、そのバイパス弁を備える掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に推進管を埋設するための工法の一つとして推進工法が知られている。推進工法は、発進立坑から掘進機を導入し、掘進機を使用して水平方向や上下方向など、任意の方向にに掘削することで推進管を地中に埋設していく工法である。
【0003】
掘進機は、地盤を掘削するためのビットを複数備えるカッターヘッドを先頭体に備えており、そのカッターヘッドを、掘進機内のモータおよび減速機で駆動させることによって、地盤を掘削する構造となっている。従来の掘進機の一例を特許文献1乃至特許文献5に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46804号公報
【特許文献2】特開2000−291385号公報
【特許文献3】特開2000−45686号公報
【特許文献4】特開2005−213749号公報
【特許文献5】特開2000−274181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
掘進機が掘削した掘削土は、泥水に混入して搬送し、泥水処理機で土砂と泥水に分離後、泥水は再び切羽へと送られる。その際に、掘進機内部および発進立坑内の送泥管と排泥管の中途にそれぞれバイパス弁を取り付けている。このバイパス弁は、送泥管と排泥管との管路を一時的に継ぐ役割を担っている。たとえば掘進機による掘削が進み、推進管を繋ぐ作業を行う場合に、泥水が発進立坑側に流れてこないように、掘削面(地山)との縁を切るために送泥管と排泥管とをバイパスする。また、掘削時に、掘削土の取り込みが多い場合、バイパス弁を開閉することで、それを調整している。このバイパス弁には、一般的にはボールバルブが用いられている。
【0006】
ボールバルブによるバイパス弁を形成するためには、送泥管と排泥管とを繋ぐ管(バイパス管)を設け、送泥管、排泥管、バイパス管のそれぞれにボールバルブを設置する必要がある(図10参照)。従って、一つのバイパス弁のために、3つのボールバルブと、バイパス管とを新たに設けなければならない。そのため、部品が多くなるとともに、掘進機自体を長くする必要があることから、掘進機の小型化の制約となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は上記課題に鑑み、省スペース化が図れるバイパス弁およびそれを搭載した掘進機を発明した。
【0008】
第1の発明は、推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁であって、前記バイパス弁は、それぞれが送泥管と連結する少なくとも2つの送泥管用の管路と、それぞれが排泥管と連結する少なくとも2つの排泥管用の管路とを備える筐体と、回転弁と、駆動部とを備え、前記筐体内部には、前記回転弁が中心を軸として回転可能なバイパス空間が形成されており、前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記2つの送泥管用の管路、前記2つの排泥管用の管路が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管用の管路と前記排泥管用の管路とが、前記バイパス空間を介して連通している、推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁である。
【0009】
本発明のように構成することで、本発明のバイパス弁1つで、従来のボールバルブ3つとバイパス管1つによるバイパス弁を代替することが可能となる。これによりバイパス弁の省スペース化を実現することができ、掘進機の小型化に繋がる。
【0010】
上述の発明において、前記駆動部は、前記筐体の上面における、前記バイパス空間に対応する位置に設けられた平ギアと、前記平ギアと噛合するラックギアを備えるラックシリンダとを有しており、前記平ギアの中心軸部は、前記筐体の上面を貫通して、前記回転弁と接合しており、掘進機の操作盤からの操作指示により、前記ラックギアが、前記ラックシリンダの内壁に沿って移動することで、前記ラックギアを回転させ、前記ラックギアの回転により、前記ラックギアと噛合する前記平ギアが回転することに伴い、前記平ギアの中心軸が回転することで、前記回転弁が前記バイパス空間で回転する、推進工法で用いる送泥管および排泥管の管路のバイパス弁のように構成することもできる。
【0011】
上述の発明のバイパス弁について、さらに省スペース化を図るために、以下のようなバイパス弁として構成することもできる。すなわち、推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁であって、前記バイパス弁は、前記バイパス弁の前後においてそれぞれ送泥管および排泥管と連結しており、筐体内部の円柱形状に形成されたバイパス空間に設置される回転弁と、駆動部とを備え、前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記バイパス弁の前後に連結される送泥管同士、排泥管同士が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管と前記排泥管とが、前記バイパス空間を介して連通している、推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁として構成しても良い。
【0012】
第1の発明におけるバイパス弁は、推進工法で用いる掘進機内の送泥管および排泥管のバイパス弁として用いることもできる。その場合の掘進機は、以下のように構成される。すなわち、本体と、先端に回転自在に支持されるカッターヘッドを備えた先頭体とを有する、推進工法により地中を掘削する掘進機であって、前記掘進機は、前記カッターヘッドによって掘削された掘削土を混入させるための泥水を送出するための送泥管と、前記掘削土が混入された泥水を排出するための排泥管と、前記掘進機内における送泥管と排泥管とをバイパスするためのバイパス弁と、を備えており、前記バイパス弁は、前記送泥管および前記排泥管の途中に設置され、それぞれが前記送泥管と連結する少なくとも2つの送泥管用の管路と、それぞれが前記排泥管と連結する少なくとも2つの排泥管用の管路とを備える筐体と、回転弁と、駆動部とを備え、前記筐体内部には、前記回転弁が中心を軸として回転可能なバイパス空間が形成されており、前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記2つの送泥管用の管路、前記排泥管用の管路が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管用の管路と前記排泥管用の管路とが、前記バイパス空間を介して連通している、掘進機のように構成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
上述した構造のバイパス弁とすることによって、省スペース化が図れるバイパス弁を構成することができる。このバイパス弁を掘進機内で用いることによって、掘進機の小型化を実現することができる。またこのバイパス弁は従来のボールバルブによるバイパス弁よりも耐久性が高い。そのため、バイパス弁の故障頻度を減らすことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】推進工法による掘進機を用いた地中の掘削の全体の外観図である。
【図2】掘進機の外観斜視図である。
【図3】掘進機とジョイント部材とを接続した状態の縦断面図である。
【図4】掘進機内における送泥管・排泥管を示す図である。
【図5】バイパス弁を模式的に示す図である。
【図6】バイパス弁が閉まった状態を模式的に示す図である。
【図7】バイパス弁が開いた状態を模式的に示す図である。
【図8】ラックシリンダが1本の場合を模式的に示す図である。
【図9】ラックシリンダが1本の場合に、バイパス弁の開閉状態と送泥水、排泥水の流れを模式的に示したものである。
【図10】ボールバルブによる従来のバイパス弁を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
掘進機1を用いた地中の掘削の概要を図1に示す。また図2には、本発明の掘進機1の外観の斜視図を示す。図3には、本発明の掘進機1の縦断面図を示す。
【0016】
掘進機1はその後端部においてジョイント部材6と接続する。また推進管7が複数埋設されている場合には進行方向側の推進管7に載置されているジョイント部材6の後端部と新たに埋設される推進管7に載置されているジョイント部材6の先端部とが互いに接続されることで連結している。
【0017】
ジョイント部材6は推進管7内に載置される集合管であって、ジョイント部材6の送泥管53、排泥管54は、掘進機1内の送泥管51や排泥管52、発進立坑9内の送泥管55や排泥管56、あるいは他のジョイント部材6の送泥管53や排泥管54などと接続している。
【0018】
掘進機1が掘削を行うことで、そこに推進管7が埋設されていく。推進管7には、たとえばコンクリート管、レジン管、ヒューム管、鋼製さや管、合成管などさまざまなものがあり、これらに限定されるものではなく、その目的に応じてさまざまな管を利用することができる。
【0019】
掘進機1は、本体2と先頭体3とを少なくとも有している。本体2は先頭体3を支持するための方向修正装置やモータなどを格納している前部と、バックアップ管である後部とが分離可能に連結して構成されていることが好ましいがそれに限定されない。本体2の前部と後部(バックアップ管)は、その内部に送泥管51、排泥管52などを備えている。また後部のバックアップ管は、その後端部に上述のジョイント部材6と接合するための後部フランジを有している。
【0020】
先頭体3の前端部には、地盤を掘削するための複数のビット32を有するカッターヘッド31を備えている。このカッターヘッド31は、モータと減速機により回転駆動し、カッターヘッド31における複数のビット32により地盤を掘削する。また、油圧ユニット12が油圧ホースを通じて推進ジャッキ8に動力を与えることで、推進ジャッキ8が掘進機1または推進管7を後方から押圧し、推進管7を逐次、継ぎ足しながら地中に推進管7を埋設していく。なお掘進機1や推進管7を地中に埋設する際の発進立坑9における発進坑15には泥水などが発進立坑10に流れ込まないように、止水処理が行われていることが好ましい。
【0021】
また、掘削する地盤の種類などに応じてカッターヘッド31の交換は可能であり、任意の構造のカッターヘッド31を用いることができる。
【0022】
カッターヘッド31で掘削した掘削土は、カッターヘッド31内に取り込まれ、掘進機1の先頭体3のクラッシャーコーンにより二次破砕される。二次破砕された掘削土は、上述のように、掘進機1内の送泥管51から送出される泥水に混入され、掘削土が混入した泥水を、掘進機1内の排泥管52が吸い上げることで、排泥管52内に取り込む。
【0023】
掘進機1内の排泥管52に取り込まれた掘削土が混入した泥水は、掘進機1内の排泥管52、排泥管52におけるバイパス弁4、ジョイント部材6内の排泥管54を通り、発進立坑9内の排泥管56に排出される。そして発進立坑9の送泥管55、排泥管56の管路に設けられたバイパス弁4を介して、排泥ポンプ14により泥水処理機11に排出され、そこで泥水と土砂とに分離される。土砂が分離された泥水は、送泥ポンプ13により発進立坑9内の送泥管55、送泥管55の管路に設けられたバイパス弁4を介して、ジョイント部材6内の送泥管53を通り、掘進機1の送泥管51まで送出される。図4に、掘進機1における送排泥管5(送泥管51と排泥管52の総称)を模式的に示す。
【0024】
このように、送泥管51、53、55と排泥管52、54、56とを用いて、掘削土を切羽から泥水処理機11まで排出しているが、推進管7を繋ぐ作業などの場合に、泥水が発進立坑9に流れ込まないように、送泥管51と排泥管52とをバイパスする必要がある。また、上述のように、掘削時に、掘削土の取り込みが多い場合、送泥管51と排泥管52とのバイパス弁4、送泥管55と排泥管56とのバイパス弁4などを開閉することで、それを調整している。
【0025】
従来、このバイパス弁には、図10に示すようなボールバルブ60と、送泥管51と排泥管52(送泥管55と排泥管56)とを連結するバイパス管61とを用いたバイパス弁が用いられていた。ボールバルブ60をバイパス弁とした場合、ボールバルブ60とバイパス管61との組み合わせでバイバス弁を形成することとなり、その分、掘進機1が長くならざるを得ない。
【0026】
たとえば図10の場合、送泥管51、排泥管52(または送泥管55、排泥管56)、送泥管51と排泥管52(または送泥管55と排泥管56)とを連結するバイパス管61に、それぞれボールバルブ60a、60b、60cを設置する必要がある。そして通常では、ボールバルブ60cを閉じておき、ボールバルブ60a、ボールバルブ60bを開けておくことで、送泥管51と排泥管52(または送泥管55と排泥管56)に泥水が流れる。また管路のバイパスをする場合には、ボールバルブ60a、60bを閉じた状態に変更し、ボールバルブ60cを開けた状態とすることで、管路をバイパスすることができる。
【0027】
以上のような操作によりボールバルブ60を用いてバイパス弁を構成することができるものの、小型化には限界がある。
【0028】
また送泥管51と排泥管52(送泥管55と排泥管56)には泥水が通るので、摩擦が激しく、ボールバルブ60の寿命が短くなってしまう。
【0029】
そこで本発明では、バイパス弁4として回転ドア式のバルブを用いる。本発明のバイパス弁4の一例を図5に示す。図5はバイパス弁4を上方からみた状態であるが、機能作用のわかりやすさのため、平ギア41とラックシリンダ42内のラックギア421とが噛合する状態が分かるように示している。従って、実際には、ラックシリンダ42は、平ギア41とラックギア421とが噛合する付近を除いて、ラックギア421を覆っていることが好ましい。なお、以下ではバイパス弁4が掘進機1の送泥管51と排泥管52の中途に備えられる場合を説明するが、発進立坑9の送泥管55と排泥管56の中途に備えられる場合であっても同様に構成される。
【0030】
また図6にはバイパス弁4が閉まった状態、図7にはバイパス弁4が開いた状態の模式図を示す。なお図6(a)および図7(a)では、弁の開閉状態をわかりやすく示すために、筐体40の内側の構造を主に示している。また図6(b)および図7(b)は筐体40のA−A線の断面図、図6(c)および図7(c)は筐体40の側面図である。
【0031】
図5に示すバイパス弁4の筐体40(ハウジング)は直方体であるが、その形状には限定されず、立方体、円柱などさまざまな形状で構成することができる。またバイパス弁4の筐体40の内部には、送泥管用の管路511、排泥管用の管路521がそれぞれ設けられている。この管路にはそれぞれ開口部512、522があり、送泥管51または排泥管52と連結される。すなわち送泥管用の管路511(511a、511b)の開口部512(512a、512b)には送泥管51が、排泥管用の管路521(521a、521b)の開口部522(522a、522b)には排泥管52がそれぞれ連結される。なお管路の連結の際には、溶接で連結されることが好ましいが、送泥管用の管路511の開口部512に送泥管51、排泥管用の管路521の開口部522に排泥管52が挿嵌されることで連結されてもよい。この場合、泥水の漏出防止のため、連結部ではシーリングが施されるとよい。
【0032】
また筐体40内部の中心部付近は中空状に形成されており、好ましくは円柱形状の空間(バイパス空間)が設けられている。この空間は、例えば中空が円柱形状の鉄鋼を底面を下側に載置して形成されればよいが、それに限定されるものではない。またバイパス空間は、送泥管用の管路511、排泥管用の管路521とそれぞれ連結している。バイパス弁4を開けた状態では、送泥管用の管路同士(送泥管用の管路511a、511b)、排泥管用の管路同士(排泥管用の管路521a、521b)がそれぞれ、バイパス空間を介して繋がる状態となり(図7)、バイパス弁4を閉めた状態では、送泥管用の管路511と排泥管用の管路521とがそれぞれバイパス空間を介して繋がる状態(送泥管用の管路511aと排泥管用の管路521a、送泥管用の管路511bと排泥管用の管路521bとが繋がる状態)となる(図6)。すなわちバイパス弁4を閉めた状態では、管路がバイパスされた状態となる。
【0033】
バイパス空間には、好ましくは鉄鋼製の工字状の回転弁43が設けられている。回転弁43の底板432および上板431はバイパス空間の底面と同じ直径(あるいはほぼ同じ直径)である。また底板432と上板431との間は、バイパス空間の底面の直径と同じ長さ(あるいはほぼ同じ長さ)の幅と、バイパス空間の高さと同じ高さ(あるいはほぼ同じ高さ)である垂直板433が形成されている。そして回転弁43の底板432と上板431のそれぞれの直径上に、垂直板433が設けられる。なお垂直板433の厚さは送泥管51、排泥管52を通る泥水圧に耐えられる程度の厚さであればよい。またその縁部は円弧上に成型されていることがよい。なお垂直板433は泥水圧力の分散のため、平面でなくてもよく、たとえば中心付近の厚さが厚く、縁部に近づくほど厚さが薄くなる形状であってもよい。
【0034】
また回転弁43の底板432の中心には円形状の凸部が設けられている。またその凸部に嵌合する大きさの凹部がバイパス空間の底面の中心に設けられている。
【0035】
回転弁43は、バイパス空間の底面の凹部に、回転弁43の底板432の凸部が嵌合するようにバイパス空間の中心に設置され、バイパス空間の底面および上面の中心点同士の軸を中心として回転駆動する。この回転駆動によって、回転弁43がバイパス空間内を回転し、垂直板433によりバイパス空間を2つの空間に区切る役割を果たす。つまり、回転弁43がバイパス空間内で回転することによって、バイパス弁4の開閉を制御することができる。
【0036】
またバイパス空間のうち、バイパス弁4が開いた状態、閉じた状態の時に回転弁43が位置する場所に、溝部をそれぞれ設け、そこにOリング45とキー44とを埋設しても良い。この場合、溝部にOリング45、その次にキー44が位置する状態となる。そしてバイパス弁4が開いた状態、または閉じた状態の位置に回転弁43がある場合には、回転弁43の縁部に、キー44がOリング45の弾性力で押圧されることとなる。それによって、シール効果を高めることが可能となる。Oリング45は弾性力を与える素材であればよく、ゴム製であることが好ましいが、それ以外の樹脂製であってもよい。また、キーとは四角形の角棒であり、高合金鋼で硬度がHRC66以上のものであることが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0037】
また、筐体40のバイパス空間を形成する底面と上面のうち、回転弁43の縁部とキー44とが接する円周に沿って溝部を設け、その溝部に、さらに第2のOリング46が設けられていることが好ましい。この第2のOリング46によって、回転弁43の上板431と底板432の縁部とキー44との間をさらにシールすることができ、シール効果を高めることとなる。
【0038】
なお上述の回転弁43にはシール効果を高めるため、上板431および底板432を設ける構成としたが、上板431、底板432の双方またはいずれかを設けずに構成しても良い。その場合、回転弁43は垂直板433のみ、あるいは垂直板433と上板431または底板432から構成される。
【0039】
筐体40の外側上面における、筐体40の内部のバイパス空間に対応する位置には平ギア41が設けられている。平ギア41は、その中心において、中心軸部411と接合しており、平ギア41の回転に併せて、中心軸部411も回転するように構成されている。そして、平ギア41の中心軸部411が、筐体40の上面を貫通して筐体40の内部の回転弁43の垂直板433の中心軸(上面の中心)と接合していることで、回転弁43と連動している。これにより、平ギア41の回転によって、回転弁43もバイパス空間内を回転駆動するように構成されている。
【0040】
筐体40の外側の所定箇所には、一または複数のラックシリンダ42が設けられている。筐体40の外側の上面の左右端部付近に、それぞれ凹字状の固定部材47を溶接などにより、筐体40外側の上面に固定する。凹字状固定部材47の凹面には接着剤などを塗布しておき、そこに円筒形状のラックシリンダ42を載置する。さらに当該ラックシリンダ42の上方から、同一の凹字状固定部材47を逆方向から(凹字状固定部材47の凹面が筐体40外部の上面側となるように)、ラックシリンダ42を挟み込むように載置する。なお上方から固定した凹字状固定部材47の凹面にも接着剤などが塗布されていることは同じである。
【0041】
また、ラックシリンダ42を下方と上方とから挟み込む2つの凹字状の固定部材47は、それぞれボルトなどで固定される。以上のように構成することで、ラックシリンダ42を筐体40外部の上面に固定することができる。なお上下から2つの凹字状の固定部材47によりラックシリンダを挟み込み押圧することで、ラックシリンダを固定することから、ラックシリンダの外側面の半径と、凹字状固定部材47の凹面の半径とは同一(またはほぼ同一)であることが好ましい。
【0042】
ラックシリンダ42は円筒形状であり、その内部が中空状に形成されている。ラックシリンダ42の内部には、ラックシリンダ42の内壁に沿って移動するラックギア421を備えており、ラックギア421は平ギア41と噛合する。そのため、ラックシリンダ42は、その側面の一部が平ギア41と噛合する付近において、平ギア41の円弧に沿って、ラックシリンダ42の側面が開放されており、平ギア41とラックギア421とが直接、噛合可能となっている。図9ではラックシリンダ42が2本ある場合の状態を示しているが、ラックシリンダ42(およびラックギア421)は1本であってもよい。
【0043】
なおラックシリンダ42は円筒形状であることが好ましいが、その形状に限定されるものではなく、任意の形状(例えば直方体)を取ることができる。その場合、任意の方法によって、ラックシリンダ42は、筐体40の外部に固定される。
【0044】
ラックシリンダ42内のラックギア421は、操作盤10からの、バイパス弁4に対する操作指示を受け(なお操作指示を受けるための通信線などは図から省略している)、ラックギア421を油圧などにより、ラックシリンダ42の内壁に沿って左右に移動させる。ラックギア421が左右に移動することによって、平ギア41が回転する。そのため、平ギア41の中心軸部411が回転し、それと連動して回転弁43が中心を軸として回転する。それにより回転弁43の垂直板433も回転し、バイパス弁4の開閉状態が制御される。
【0045】
例えば、掘進機1の内部のバイパス弁4を閉じる状態に操作したい場合、操作盤10から掘進機1の内部のバイパス弁4を指定し、当該バイパス弁4を閉じる状態に制御する操作指示を送出する。なおこの操作指示を送出する場合に、泥水処理機11から泥水が送泥管55を介して送出されないように、送泥処理を一時的に中止する制御指示が泥水処理機11に自動的に送出されてもよいが、送泥処理をしたままバイパス弁6の開閉状態を制御してもよい。
【0046】
バイパス弁4を閉じる操作指示が通信線を介して、掘進機1の内部の制御装置(制御コンピュータ)に送られる。なお、どのバイパス弁4に対する操作指示であるかは、当該操作指示に、バイパス弁4を識別する識別情報を付加し、それに基づいて操作指示の対象を識別可能とする。
【0047】
そして、制御装置が、操作指示の識別情報に基づいて、掘進機1の内部のバイパス弁4に対する、バイパス弁4を閉じる制御であることを認識すると、制御装置は、通信線を介してバイパス弁4のラックシリンダ42を移動させる制御指示を送出し,それを受けてラックシリンダ42がラックギア421を所定量、すなわち、バイパス弁4の回転弁43を開いている状態から閉じている状態に移動させるだけの量(平ギア41および回転弁43を90度回転させる量(平ギア41の円周の4分の1の長さ))だけ移動させる。そのため、ラックシリンダ42の内部において、ラックギア421が移動可能な距離として、平ギアの円周の4分の1以上の長さの空間が確保されていることが好ましい。
【0048】
これによって、ラックギア421は、ラックシリンダ42内を予め定められた方向(バイパス弁4を閉じる方向に移動させるために必要な方向)に所定量だけ移動し、その結果、ラックギア421と噛合している平ギア41が90度回転する。平ギア41が90度回転することによって、その中心軸部411も90度回転するので、中心軸部411に連動して、回転弁43も90度回転する。これによって、バイパス弁4が開いた状態(図7)からバイパス弁4が閉じた状態(図6)に変わることとなる。
【0049】
なおラックシリンダ42を2本設ける場合には、同一のラックシリンダ42、ラックギア421を用いることが好ましく、その場合、平ギア41を回転させるために、ラックギア421をそれぞれ左右逆方向に同じだけ移動させることが好ましい。
【0050】
図5乃至図7ではラックシリンダ42が2本の場合のバイパス弁4を示したが、ラックシリンダ42は図8に示すように、1本であってもよい。またラックシリンダ42は、バイパス弁4の内部の送泥管用の管路511、排泥管用の管路521に対して、任意の角度で取り付けられていればよく、図5乃至図9のように、送泥管用の管路511、排泥管用の管路521に対して平行でなくてもよい。たとえば、送泥管用の管路511、排泥管用の管路521の管路に対して垂直方向に取り付けられていてもよいし、ほかの角度で取り付けられていてもよい。
【0051】
図9はラックシリンダ42が1本の場合に、バイパス弁4の開閉状態と送泥水、排泥水の流れを示したものである。図9(a)はバイパス弁4が閉じた状態であり、送泥管51を流れている送泥水がバイパス空間を介して、排泥管52に流れ込む状態を示している。図9(b)はバイパス弁4が開いた状態であり、送泥管51を流れている送泥水は、バイパス空間を介して、そのまま送泥管51に流れ、排泥管52を流れている排泥水は、バイパス空間を介して、そのまま排泥管52に流れる状態を示している。
【0052】
バイパス弁4が1本の場合、平ギア41は円形状ではなく、半円形状であってもよいが、それに限定されない。
【0053】
なおラックシリンダ42を1本とすることによって省スペース化、軽量化を図ることができるが、平ギア41を回転させる力が弱くなること、平ギア41を回転させる際のバランスが偏ることで中心軸部411に偏った負荷がかかり、故障の原因となりかねないことから、複数のラックシリンダ42を対向させて配置することが好ましい。
【0054】
また平ギア41の回転力を強くするため、ラックシリンダ42を、たとえば4本備えてもよい。この場合、前後左右にラックシリンダ42を備えることとなる。この場合、各ラックギア421は、平ギア41を中心として時計回りあるいは反時計回りの同一方向にそれぞれ回転させることで、平ギア41を回転させることができる。
【0055】
本発明のような、回転ドア式のバイパス弁4とすることによって、従来のボールバルブよりも構成部品も少なく、頑丈で破損しにくいバイパス弁4となる。また回転弁43は、ラックシリンダ42の内部のラックギア421と平ギア41とを使用し、大きなトルクにより回転させられるので、泥水中でも作動することが可能となる。
【0056】
なお泥水中で使用させる場合には、泥土や泥水から平ギア41、ラックギア421を保護するため、筐体40の上部を、平ギア41とラックギア421とを同一の金属製のケースで覆ってもよい。これによって、ケース内で平ギア41とラックギア421とが噛合するため、泥土や泥水、あるいは埃などによる動作不良が起こりにくくなる。また、筐体40の上部を覆うほか、平ギア41、ラックギア421を備えたラックシリンダ42などを筐体40の内部に備えてもよい。この場合、回転弁43の上方または下方に、平ギア41、ラックシリンダ42などを備えることが好ましい。
【0057】
なお、上記のように、弁の役割を果たす平ギア41、平ギア41の中心軸部411、ラックギア421(ラックシリンダ42)、回転弁43などの回転ドア機構は、その全ての構成が筐体40の内部にあってもよいし、一部の構成が筐体40の外部にあってもよい。
【0058】
また本発明のバイパス弁4を使用していると、泥水がバイパス空間内を流れることから、微細な土砂がキー44やOリング45に付着することとなる。しかしキー44やOリング45を定期的に研磨するなどにより、その土砂を排除することができる。本発明のバイパス弁4で、このような研磨作業が行われたとしても、従来のボールバルブ60のバルブ自体の破損よりも遙かに安価なコストで対応することもできる。なお本発明のバイパス弁4は、耐久性のため、各構成部品が鉄鋼製であることが好ましいが、それに限定されるものではなく、その目的に応じて、適切な素材が使用されていればよい。
【0059】
また上述の説明では筐体40が直方体形状であり、その内部に、回転弁43を設置するためのバイパス空間と、送泥管用の管路511a、511bと、排泥管用の管路521a、521bとを備える場合を示したが、送泥管用の管路511a、511b、排泥管用の管路521a、521bを設けない構成とすることもできる。この場合、送泥管用の管路511の代わりに掘進機の内部の送泥管51とバイパス空間、排泥管用の管路521の代わりに排泥管52とバイパス空間とを直接、連通しても良い。これによって筐体40の形状を例えば円柱形状とすることができ、省スペース化をより図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の構造のバイパス弁とすることによって、省スペース化が図れるバイパス弁を構成することができる。このバイパス弁を掘進機内で用いることによって、掘進機の小型化を実現することができる。またこのバイパス弁は従来のボールバルブによるバイパス弁よりも耐久性が高い。そのため、バイパス弁の故障頻度を減らすことも可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1:掘進機
2:本体
3:先頭体
31:カッターヘッド
32:ビット
4:バイパス弁
40:筐体
41:平ギア
411:平ギアの中心軸部
42:ラックシリンダ
421:ラックギア
43:回転弁
431:回転弁の上板
432:回転弁の底板
433:回転弁の垂直板
44:キー
45:Oリング
46:第2のOリング
47:固定部材
5:掘進機内の送排泥管
51:掘進機内の送泥管
511:送泥管用の管路
512:送泥管用の管路の開口部
52:掘進機内の排泥管
521:排泥管用の管路
522:排泥管用の管路の開口部
53:ジョイント部材内の送泥管
54:ジョイント部材内の排泥管
55:発進立坑の送泥管
56:発進立坑の排泥管
6:ジョイント部材
7:推進管
8:推進ジャッキ
9:発進立坑
10:操作盤
11:泥水処理機
12:油圧ユニット
13:送泥ポンプ
14:排泥ポンプ
15:発進坑
60:ボールバルブ
61:バイパス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁であって、
前記バイパス弁は、
それぞれが送泥管と連結する少なくとも2つの送泥管用の管路と、それぞれが排泥管と連結する少なくとも2つの排泥管用の管路とを備える筐体と、回転弁と、駆動部とを備え、
前記筐体内部には、前記回転弁が中心を軸として回転可能なバイパス空間が形成されており、
前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、
前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記2つの送泥管用の管路、前記2つの排泥管用の管路が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、
前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管用の管路と前記排泥管用の管路とが、前記バイパス空間を介して連通している、
ことを特徴とする推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記筐体の外面における、前記バイパス空間に対応する位置に設けられた平ギアと、
前記平ギアと噛合するラックギアを備えるラックシリンダとを有しており、
前記平ギアの中心軸部は、前記筐体の外面を貫通して、前記回転弁と接合しており、
掘進機の操作盤からの操作指示により、前記ラックギアが、前記ラックシリンダの内壁に沿って移動することで、前記ラックギアを回転させ、
前記ラックギアの回転により、前記ラックギアと噛合する前記平ギアが回転することに伴い、前記平ギアの中心軸が回転することで、前記回転弁が前記バイパス空間で回転する、
ことを特徴とする請求項1に記載の推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁。
【請求項3】
推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁であって、
前記バイパス弁は、
前記バイパス弁の前後においてそれぞれ送泥管および排泥管と連結しており、
筐体内部の円柱形状に形成されたバイパス空間に設置される回転弁と、駆動部とを備え、
前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、
前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記バイパス弁の前後に連結される送泥管同士、排泥管同士が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、
前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管と前記排泥管とが、前記バイパス空間を介して連通している、
ことを特徴とする推進工法で用いる送泥管および排泥管のバイパス弁。
【請求項4】
本体と、先端に回転自在に支持されるカッターヘッドを備えた先頭体とを有する、推進工法により地中を掘削する掘進機であって、
前記掘進機は、
前記カッターヘッドによって掘削された掘削土を混入させるための泥水を送出するための送泥管と、
前記掘削土が混入された泥水を排出するための排泥管と、
前記掘進機内における送泥管と排泥管とをバイパスするためのバイパス弁と、を備えており、
前記バイパス弁は、前記送泥管および前記排泥管の途中に設置され、
それぞれが前記送泥管と連結する少なくとも2つの送泥管用の管路と、それぞれが前記排泥管と連結する少なくとも2つの排泥管用の管路とを備える筐体と、回転弁と、駆動部とを備え、
前記筐体内部には、前記回転弁が中心を軸として回転可能なバイパス空間が形成されており、
前記駆動部が、前記回転弁を前記バイパス空間内で回転させることで、バイパス弁の開閉状態を制御し、
前記バイパス弁が開いている状態の場合には、前記2つの送泥管用の管路、前記排泥管用の管路が、それぞれ前記バイパス空間を介して連通しており、
前記バイパス弁が閉じている状態の場合には、前記送泥管用の管路と前記排泥管用の管路とが、前記バイパス空間を介して連通している、
ことを特徴とする掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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