説明

掬い具

【課題】例えば、ブロック積み作業において、ブロックの孔にモルタルを流し込む場合、手首の負担を軽減し、作業効率を高めることができる掬い具を提供することを目的とする。
【解決手段】側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備する掬い部10と、側壁部の外側面において凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられ、当該外側面に対して鈎状に屈曲した構造を具備する把手部11とを有し、前記側壁部の外側面における把手部11の取付位置に対して最短に位置する前記凹部の周縁部とこれに対向する前記凹部の周縁部とを結ぶ線分方向における前記凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における前記凹部の両端部間の最大距離よりも短いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートブロックの組積作業においてコンクリートブロックの孔にモルタルを充填する場合や、鉢の植替えにおいて園芸用土を鉢に充填する場合等に使用するスコップ等の掬い具に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、ブロック塀を設置する場合における作業状態を示す図である。
例えば、庭園の境界にブロック塀を設置する場合、図5に示すように、ブロック400を一段づつ積んでいき、上下左右のブロック400同士をくっ付けるために、ブロック400同士の接合面には目地モルタル等の目地材料を載せていく。また、ブロック塀の強度を高めるために、ブロック400の孔401に細い鉄筋を差し込み、細い鉄筋を差し込んだ孔401には、少し硬めに練った充愼モルタルであるモルタル300を流し込む。
【0003】
このようなブロック積み作業中において、ブロック400の上面に目地モルタルを積層する場合には左官用コテ等を使用し、ブロック400の孔401にモルタル300を流し込む場合にはスコップ等を使用する(例えば、特許文献1)。
【0004】
図5に示すように、スコップ500を使用してブロック400の孔401にモルタル300を流し込む場合、作業者がスコップ500の柄502を持ち、スコップ500の掬い板501にモルタル300を載せ、掬い板501の先端を所望の孔401に持っていく。続いて、作業者が手首を曲げることによって、柄502を掬い板501よりも高い位置にし、モルタル300を掬い板501から孔401に流し込む。このように、作業者の手首の曲げを利用してスコップ500でモルタル300を孔401に流し込む。
【0005】
例えば、作業者の目の高さよりも高いブロック塀を設置する場合において、作業者の目の高さより高い位置(上段)でスコップ500を使用しブロック400の孔401にモルタル300を流し込む場合、スコップ500が作業対象のブロック400よりも高くなるように作業者が腕を上げ、その状態で柄502を掬い板501よりも高い位置にする必要がある。この場合には、図5に示すように、スコップ500を持った手M1の手首を必要以上に曲げる必要がある。このため、そのような作業を繰り返すと、手首の負担が大きくなり、その結果、作業効率が低下するという問題があった。
【特許文献1】実開平08−000709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、例えば、ブロック積み作業において、ブロックの孔にモルタルを流し込む場合、手首の負担を軽減し、作業効率を高めることができる掬い具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、図1、2に示すように、側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備する掬い部と、前記側壁部の外側面において前記凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられ、当該外側面に対して鈎状に屈曲した構造を具備する把手部とを有し、前記側壁部の外側面における前記把手部の取付位置に対して最短に位置する前記凹部の周縁部とこれに対向する前記凹部の周縁部とを最短で結ぶ線分方向における前記凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における前記凹部の両端部間の最大距離よりも短いことを特徴とする掬い具である。
【0008】
また、本発明は、例えば、図1、2に示すように、側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備する掬い部と、前記側壁部の外側面において前記凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられている把手部とを有し、前記側壁部の外側面における前記把手部の取付位置に対して最短に位置する前記凹部の周縁部とこれに対向する前記凹部の周縁部とを最短で結ぶ線分方向における前記凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における前記凹部の両端部間の最大距離よりも短いことを特徴とする掬い具である。
【0009】
なお、前記把手部は、前記線分方向及び前記直交方向に直交する方向に対して前記把手部の軸が30度以内となる角度に設けられていることを特徴とする。また、前記凹部の開口部を、略矩形状、略楕円形状、略ひし形状のいずれかの形状とし、前記凹部を、すり鉢状、バケット状のいずれかとすることができる。
【0010】
また、本発明は、例えば、図1、2に示すように、側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備し当該凹部の周縁部(開口部)が略矩形状である掬い部と、前記周縁部のうちの前記略矩形状の一の長辺に相当する縁部を形成する側壁部の外側面において前記凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられている把手部とを有する掬い具である。なお、把手部は、当該縁部の近くで(または当該縁部に接するように)当該一の長辺の中央付近に相当する部分に設けることが好ましい。また、把手部は、当該外側面に対して鈎状に屈曲した構造とすることができる。また、前記把手部は、開口面に対する垂直方向に対して前記把手部の軸が30度以内となる角度に設けることが好ましい。
【0011】
さらに、具体的に、本発明に係る掬い具は、モルタル等の液体状、半固体状、ペースト状等のものを前記凹部に収容するモルタル充填スコップ等の建築道具、大工道具、園芸道具等とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、ブロック積み作業において、ブロックの孔にモルタルを流し込む場合、手首の負担を軽減し、作業効率を高めることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、例えば、園芸作業において、鉢に園芸用土を入れる場合に、手首や肘、肩の負担を軽減し、作業効率を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態である掬い具について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1、2は、本発明の一実施の形態であるモルタル充填スコップ100を示す図である。図1(1)は、モルタル充填スコップ100を示す斜視図であり、図1(2)は、モルタル充填スコップ100を示す右側面図であり、図2(1)は、モルタル充填スコップ100を示す上面図であり、図2(2)は、モルタル充填スコップ100を示す正面図である。
【0015】
モルタル充填スコップ100は、モルタル掬い部10と把手部11とを有する。
モルタル掬い部10は、凹部と略矩形状の開口部10a(周縁部10b)とを有し、モルタル等の液体状、顆粒状、粒状、粉状、半固体状、ペースト状等のものを凹部に収容するバケット型の掬い部である。モルタル掬い部10の凹部は、側壁部と底部との内側面からなり、具体的には、帯状の円弧曲面10cと、弧と弦とで構成される内側面10d1、2とから構成され、円弧曲面10cの両側と内側面10d1、2の弧とが接し、円弧曲面10cの両端と内側面10d1、2の弦とが周縁部10bを構成する。なお、外側面10eにおける把手部11の取付位置に対して最短に位置する凹部の周縁部10b(連結部11a付近)とこれに対向する凹部の周縁部10bとを結ぶ線分方向における凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における凹部の両端部間の最大距離よりも短い。つまり、把手部11の延長方向における凹部の両端部間の最大距離が、当該延長方向に対する直交方向における凹部の両端部間の最大距離よりも短い。
【0016】
把手部11は、側壁部の外周面10eに開口部10aとは反対側に傾斜するように設けられ、外周面10eに対して鈎状(鉤状)に屈曲した構造を備えている把手部である。また、把手部11の連結部11aが弧状となっている。把手部11の先端部11bは、図1(2)、図2(2)に示す状態において、モルタル掬い部10の底部10fよりも下に長く延びている。また、把手部11は、開口部10aを構成する開口面に対して鋭角の傾斜角度αを形成する。なお、把手部11は、前記線分方向及び前記直交方向に直交する方向(開口面に対して垂直方向)に対して把手部11の軸が30度以内となる角度に設けることが好ましい。
【0017】
なお、傾斜角度αの値が90度を超えると、把手部11と外周面10eとの間に手が入り難くなり、一方、傾斜角度αが小さ過ぎると、使用効率が悪くなる。このため、傾斜角度αを60°〜85°位とすることが好ましい。また、側壁部の外周面10eにおいて、把手部11を周縁部10bと接するように設けるようにしてもよく、周縁部10bから離して設けるようにしてもよい。
【0018】
モルタル充填スコップ100の材質としては、スチール、ステンレス、ポリカーボネイト、プラスチック、ガラス、陶器等を使用することができ、これらの材料によって形成することができる。また、モルタル掬い部10と把手部11とを同一材料とする他に、それぞれを異なる材料として構成することができ、一体または別体で構成することができる。なお、凹部に収容するモルタル等の量を計測する目盛を凹部の内側面に設けるようにしてもよい。例えば、内側面10d1、2のいずれかに目盛を設ける。また、凹部に収容したモルタル等を容易に目視することができるように、凹部の側壁部と底部との少なくとも一部(例えば、目盛部分)を透明とするようにしてもよい。
【0019】
次に、モルタル充填スコップ100の使用方法について説明する。
図3は、モルタル充填スコップ100とモルタル箱200とモルタル300とブロック400とを示す図である。
【0020】
モルタル箱200は、モルタル300を収容する容器である。モルタル300は、ブロック400の孔401に流し込むために使用するモルタルであって少し硬めに練った充愼モルタルである。
【0021】
モルタル充填スコップ100を使用してブロック400の孔401にモルタル300を流し込む場合、作業者がモルタル充填スコップ100の把手部11を手M1で持ち、図3(1)に示すモルタル箱200内のモルタル300をモルタル掬い部10に掬い取る。続いて、モルタル掬い部10のいずれかの端部(略矩形状の一の短辺に相当する縁部)を所望の孔401に持っていき、把手部11を持った手M1の手首を作業者が回転することによって、モルタル300をモルタル掬い部10から孔401に流し込む。この場合、作業者の手首の回転を利用するので、作業者が手首を必要以上に曲げる必要がない。
【0022】
また、作業者の目の高さよりも高いブロック塀を設置する場合において、作業者の目の高さより高い位置(上段)でモルタル充填スコップ100を使用しブロック400の孔401にモルタル300を流し込む場合、モルタル充填スコップ100が作業対象のブロック400よりも高くなるように作業者が腕を上げ、その状態で把手部11を持った手M1の手首を作業者が回転するだけでよい。つまり、図5に示すスコップ500を使用する場合と比較して、モルタル充填スコップ100を持った手M1の手首を必要以上に曲げる必要がないので、手首の負担を軽減し、作業効率を高めることができる。
【0023】
ところで、従来は、図5に示すスコップ500の掬い板501の先端が丸み形状のため、スコップ500でモルタル箱200の四隅に残ったモルタル300を掬い取ることが困難であった。しかし、本実施の形態によれば、モルタル箱200内のモルタル300を掬い取る場合に、図3(2)に示すように、モルタル箱200の壁面(内側面)を利用してモルタル300を掬い取ることができるので、モルタル300をモルタル掬い部10に掬い易い。さらに、モルタル掬い部10の開口部10aの四隅を直角(または略直角)にすれば、モルタル箱200にモルタル300が残り少なくなった場合であっても、図3(2)に示すように、モルタル掬い部10の周縁部10bをモルタル箱200の壁面と四隅に接することができるので、モルタル箱200内のモルタル300を隅々まで掬い取ることができる。つまり、モルタル充填スコップ100を使用することによって、モルタル箱200内にあるモルタル300を四隅等に残すことなく掬い取ることができる。
【0024】
また、モルタル300をモルタル掬い部10から孔401に流し込む場合に、開口部10aの四隅のうちの1から流し込むようにすれば、孔の径が小さくても流し込み易い。
【0025】
なお、モルタル掬い部10の開口部10aを、ひし形状、楕円状、円形状等の略矩形状以外の形状とするようにしてもよい。また、モルタル掬い部10の凹部を、すり鉢状等の他の凹部とするようにしてもよい。なお、モルタル掬い部10の凹部については、凹部内に収容されたモルタル等を流し易くするために、図2(2)に示すように、把手部11の取付部分に対して、弧状とすることが好ましい。
【0026】
さらに、把手部11について、連結部を細いスチール製とし、把手部11本体を木製とする等のようにしてもよい。また、モルタル充填スコップ100の材質として、他の材料を使用することができ、モルタル掬い部10と把手部11とを同一材料または異なる材料として構成することができる。
【0027】
[第2の実施の形態]
図4は、園芸スコップ100aを使用して、鉢収容箱600内の鉢700に園芸用土701を入れている状態を示す図である。
【0028】
園芸スコップ100aの構造は、モルタル充填スコップ100と同様である。
図4に示すように、鉢700の内寸法よりも植物F1の葉が大きい場合や、植物F1の葉が鉢700からはみ出しているような場合において、従来のスコップを使用して鉢700に園芸用土701を入れる場合、その都度手首を曲げる必要がある。また、この場合には、低い姿勢で手首を曲げるために、作業者の肘が目線の高さよりも上となる場合がある。このため、作業中において、作業者の手首や肘、肩が不自然な動きをすることが多くなる。その結果、鉢700に園芸用土701を入れる作業が手首や肘、肩の負担になるという問題があった。
【0029】
園芸スコップ100aの構造は、主に手首の回転のみで園芸用土等を掬うことができる構造であるので、モルタルと同様に、園芸用土等を掬い易い。また、園芸スコップ100aを使用して鉢700に園芸用土701を入れる場合には、主に手首の回転によって園芸用土701を入れることができる。したがって、鉢700に園芸用土701を入れる作業において、手首や肘、肩の負担を軽減することができる。
【0030】
また、葉が多い植物の鉢の植替えをする場合であっても、鉢からはみ出している葉等の隙間を園芸スコップ100aがスルーし易いので、鉢の植替え作業を効率的に行うことができる。
【実施例1】
【0031】
次に、本発明の一実施例である実施例1について説明する。
モルタル充填スコップ100において、開口部10aを「20cm×6cm」とし、凹部の深さを「5cm」とし、把手部11を「13cm」とし、傾斜角度αを「80°」とした。これらの構成によって、上記各実施の形態で示した効果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
液体状、顆粒状、粒状、粉状、半固体状、ペースト状等のものを孔等に充填するスコップ等に、本発明を利用することができる。つまり、モルタル充填スコップ100や園芸スコップ100aで示すように、液体状、顆粒状、粒状、粉状、半固体状、ペースト状等のものを正面から掬い取り、掬い取ったものを横から流し込む建築道具、大工道具、園芸道具等に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】モルタル充填スコップ100を示す図。
【図2】モルタル充填スコップ100を示す図。
【図3】モルタル充填スコップ100とモルタル箱200とモルタル300とブロック400とを示す図。
【図4】園芸スコップ100aを使用して、鉢収容箱600内の鉢700に園芸用土701を入れている状態を示す図。
【図5】ブロック塀を設置する場合における作業状態を示す図。
【符号の説明】
【0034】
10……モルタル掬い部、
11……把手部、
100……モルタル充填スコップ、
200……モルタル箱、
300……モルタル、
400……ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備する掬い部と、
前記側壁部の外側面において前記凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられ、当該外側面に対して鈎状に屈曲した構造を具備する把手部と、
を有し、前記側壁部の外側面における前記把手部の取付位置に対して最短に位置する前記凹部の周縁部とこれに対向する前記凹部の周縁部とを結ぶ線分方向における前記凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における前記凹部の両端部間の最大距離よりも短いことを特徴とする掬い具。
【請求項2】
側壁部と底部との内側面からなる凹部を具備する掬い部と、
前記側壁部の外側面において前記凹部の開口方向とは反対側に傾斜するように設けられている把手部と、
を有し、前記側壁部の外側面における前記把手部の取付位置に対して最短に位置する前記凹部の周縁部とこれに対向する前記凹部の周縁部とを結ぶ線分方向における前記凹部の両端部間の最大距離が、当該線分方向に対する直交方向における前記凹部の両端部間の最大距離よりも短いことを特徴とする掬い具。
【請求項3】
前記把手部は、前記線分方向及び前記直交方向に直交する方向に対して前記把手部の軸が30度以内となる角度に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掬い具。
【請求項4】
前記凹部の開口部は、略矩形状、略楕円形状、略ひし形状のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の掬い具。
【請求項5】
前記凹部は、すり鉢状、バケット状のいずれかの凹部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の掬い具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−170146(P2007−170146A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373298(P2005−373298)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【特許番号】特許第3845655号(P3845655)
【特許公報発行日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(504431924)有限会社 松尾花壇 (3)
【Fターム(参考)】