説明

描画装置、描画方法

【課題】記録媒体に発生する筋むらを容易かつ確実に抑制することができる描画装置及び描画方法を提供する。
【解決手段】描画装置は、ワークPに対して液体Lを噴射する走査型液体噴射ヘッドと、ワークPを載置しつつ副走査方向に搬送するワーク搬送テーブル6と、ワーク搬送テーブル6のワーク載置面6aに配置された複数の温度差発生素子30と、ワークWに着弾した液体Lにより形成される画像に筋むらMが発生するときに、複数の温度差発生素子30のうち、筋むらMに対向する位置に配置された温度差発生素子30aにより、筋むらMの周囲に着弾した液体Laと他の領域に着弾した液体Lとの間に温度差を発生させる温度差発生部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射を受けることによって硬化する機能液を記録媒体に向けて吐出することによって記録媒体に機能液を塗布し、記録媒体に塗布された機能液を紫外線の照射により硬化させることができる液滴吐出装置がある。このような液滴吐出装置は、例えば、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドを主走査方向に移動させるヘッド移動手段と、記録媒体を副走査方向に移動させる記録媒体移動手段と、機能液に紫外線を照射する紫外線照射装置等を備えている。
このような液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドの主走査方向において、複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニットの両側と記録媒体の搬送方向でヘッドユニットの下流側とに紫外線照射装置を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液滴吐出装置では、複数の液滴吐出ヘッドを有している。そして、複数の液滴吐出ヘッドを精度よく取り付ける必要がある。複数の液滴吐出ヘッドの取付精度が悪いと、記録媒体等のワークに描画される画像等に筋状のむら(筋むら)が発生してしまう。
このような筋むらは、記録媒体を副走査方向に移動させる記録媒体移動手段の移動(改行)誤差によっても発生する。
【0005】
筋むらを抑制、解消するためには、液滴吐出ヘッドの走査回数を増やすことが一般的である。しかし、走査回数を増やすため、生産効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率を落とさずに、記録媒体に発生する筋むらを容易かつ確実に抑制することができる描画装置及び描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る描画装置は、ワークに対して液体を噴射する走査型液体噴射ヘッドと、前記ワークを載置しつつ副走査方向に搬送するワーク搬送テーブルと、前記ワーク搬送テーブルのワーク載置面に配置された複数の温度差発生素子と、前記ワークに着弾した液体により形成される画像に筋むらが発生するときに、前記複数の温度差発生素子のうち、前記筋むらに対向する位置に配置された温度差発生素子により、前記筋むらの周囲に着弾した液体と他の領域に着弾した液体との間に温度差を発生させる温度差発生部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記液体は、エネルギー硬化インクであることを特徴とする。
前記温度差発生部は、前記筋むらの周囲に着弾した液体と他の領域に着弾した液体との間に、0.1度以上の温度差を発生させることを特徴とする。
【0009】
前記走査型液体噴射ヘッドが複数の液体噴射ヘッドを有し、前記筋むらが、前記複数の液体噴射ヘッド同士の配置誤差に起因するヘッド間筋むらであることを特徴とする。
【0010】
前記筋むらが、前記ワーク搬送テーブルとの副走査方向への移動に起因する改行筋むらであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る描画方法は、ワークに対して液体を噴射する走査型液体噴射ヘッドと、前記ワークを載置しつつ副走査方向に搬送するワーク搬送テーブルと、前記ワーク搬送テーブルのワーク載置面に配置された複数の温度差発生素子と、前記温度差発生素子により前記ワークに着弾した液体に温度差発生素子を発生させる温度差発生部と、を備える描画装置の描画方法であって、前記ワークに着弾した液体により形成される画像に筋むらが発生するときに、前記複数の温度差発生素子のうち、前記筋むらが発生する位置に配置された温度差発生素子を駆動する温度差発生工程と、前記走査型液体噴射ヘッドと前記ワーク搬送テーブルを駆動して、前記ワークに対して画像を形成する描画工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】印刷物の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の描画装置の概略構成図である。
【図3】キャリッジの概略構成を示す側面図である。
【図4】キャリッジの概略構成を示す底面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図6】ワークステージを示す平面図及び一部断面図である。
【図7】本発明の画像記録方法を示す工程図である。
【図8】インク滴の濡れ広がりを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図8を参照しながら、本発明の実施形態に係る画像記録方法および描画装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0014】
図1は、印刷物100を示す斜視図である。
印刷物100は、支持体Pの表面に絵柄などが印刷されている。
詳しくは、支持体Pの表面全面に絵柄などを表示する画像層102が形成され、更に画像層102を覆って裏地層103が形成されている。そして、印刷物100は、支持体Pを介して画像層102に描かれた画像を観察する構成となっている。
【0015】
支持体(ワーク)Pは、例えば光透過性を有する樹脂材料を形成材料とし、可撓性を有するフィルムを用いることができる。形成材料としては、例えばPC(ポリカーボネート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)など、通常知られた材料を例示することができる。
【0016】
画像層102は、印刷物100の絵柄などを表現している層であり、支持体Pの表面全面に形成されている。画像層102の形成材料は、上述の透明な光硬化性インク(ベースインク)に、例えばC(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)K(黒)の顔料を混合した組成物を用いることができる。
【0017】
このようなインクが有色透明である場合、または有色不透明であっても画像層102が薄く、画像層を介して裏が透けて見えるような場合、画像層102に描かれた画像の視認性を高めるため、不透明な裏地層103を設けることが好ましい。
裏地層103が白色に着色している場合、画像層102の発色を助け、良好な画質の画像を表現することができる。裏地層103は、例えば白色の光硬化性インクを塗布して設けられている。白色インクは、例えば上述のベースインクに、白色顔料を混合したものを用いることができる。
【0018】
図2は、本発明の描画装置の概略構成図である。描画装置1は、支持体P上に光硬化型インクを吐出し、吐出した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させ、支持体P上に文字・数字や各種の絵柄などを描画するものである。
【0019】
この描画装置1は、支持体Pを載置する基台2と、基台2上の支持体Pを図2中のX方向(第1方向)に搬送する搬送装置3と、光硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド(図示せず)と、該液滴吐出ヘッドを複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4を、X方向と直交するY方向(第2方向)に移動させる送り装置5と、を具備して構成されている。なお、本実施形態では、搬送装置3及び送り装置5により、支持体Pとキャリッジ4とを、第1方向(X方向)及び該第1方向に直交する第2方向(Y方向)にそれぞれ相対移動させる移動装置が構成されている。
【0020】
搬送装置3は、基台2上に設けられたワークステージ6及びステージ移動装置7を備えて構成されたものである。
ワークステージ(ワーク搬送テーブル)6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、製造工程において描画装置1の上流側に配置された搬送装置(図示せず)から搬送される支持体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。
ワークステージ6の詳細構成については、後述する。
【0021】
ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御装置8から入力される、ワークステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0022】
図3,4は、キャリッジ4の説明図であり、図3は側断面図、図4は底面図である。図に示すように、キャリッジ4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、底面4a側に複数(本実施形態では4つ)の液滴吐出ヘッド9を、Y方向(第2方向)に沿って配列させた状態で保持したものである。
【0023】
これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、後述するように多数(複数)のノズルを備えたもので、制御装置8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、光硬化型インクの液滴を吐出するものである。
また、これら液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した光硬化型インク、および白色(W)の光硬化型インクをそれぞれ吐出するものであり、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図2に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0024】
Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の光硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0025】
同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の光硬化型インクを充填した第2タンク11C、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の光硬化型インクを充填した第3タンク11M、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の光硬化型インクを充填した第4タンク11K、W(白)に対応する液滴吐出ヘッド9WにはW(白)用の光硬化型インクを充填した第5タンク11W、がそれぞれ接続されている。このような構成によって各液滴吐出ヘッド9には、対応する光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0026】
これら液滴吐出ヘッド9Y、9C、9M、9K、9W、チューブ(配管)10、タンク11Y、11C、11M、11K、11Wには、各色(Y、C、M、K、W)の系それぞれに、ヒーター等の加熱手段(図示せず)が設けられている。すなわち、それぞれの色の系では、液滴吐出ヘッド9、チューブ10、タンク11のうちの少なくとも一つに、光硬化型インクの粘度を低下させてその流動性を高める加熱手段が設けられており、これによって光硬化型インクは、液滴吐出ヘッド9からの吐出性が良好になるように調整されている。
【0027】
光硬化性インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような光硬化性インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0028】
図5は、液滴吐出ヘッド9の概略構成図である。図5(a)は液滴吐出ヘッド9をワークステージ6側から見た平面図、図5(b)は液滴吐出ヘッド9の部分斜視図、図5(c)は液滴吐出ヘッド9の1ノズル分の部分断面図である。
【0029】
図5(a)に示すように、液滴吐出ヘッド9は、複数(例えば180個)のノズルNをY方向(第2方向)と交差する方向、本実施形態ではX方向(第1方向)に配列しており、これら複数のノズルNによってノズル列NAを形成している。なお、図では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、例えばX方向に配列したノズル列NAをY方向に複数列設けてもよい。
【0030】
また、図5(b)に示すように、チューブ10と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられたリザーバー(液溜まり)22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティー(液室)24とを備えて構成されている。ノズルプレート21の表面(底面)は、複数のノズルNを形成したノズル面21aとなっている。振動板20上には、各ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例えばピエゾ素子からなっている。
【0031】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される光硬化型インクが充填されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに対して1対1に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバー22から光硬化型インクが導入されるようになっている。
【0032】
また、図5(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したもので、一対の電極26に駆動信号が印加されることにより、圧電材料25が収縮するように構成されたものである。したがって、このような圧電素子PZが配置されている振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようになっている。
【0033】
よって、キャビティー24内に増大した容積分に相当する光硬化型インクが、リザーバー22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへの駆動信号の印加が停止すると、圧電素子PZと振動板20とは共に元の形状に戻り、キャビティー24も元の容積に戻る。これにより、キャビティー24内の光硬化型インクの圧力が上昇し、ノズルNから支持体Pに向けて光硬化型インクの液滴Lが吐出されるようになっている。
【0034】
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド9は、そのノズルプレート21の底面、すなわちノズルNの形成面(ノズル面)NSが、図3に示すようにキャリッジ4の底面4aより下側となるように、該底面4aから突出して配置されている。
【0035】
また、キャリッジ4には、図3、図4に示すように、配列する複数(図では5つ)の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に光照射手段12が隣り合って配置されている。すなわち、光照射手段12は、Y方向に配列された液滴吐出ヘッド9の配列方向に沿って、その両側にそれぞれ配置されている。
【0036】
これら光照射手段12は、光硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。
光照射手段12としては、光硬化型インクの重合を促進する波長の光を射出可能であればLEDに限定されることはない。例えば、レーザーダイオード(LD)や、水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を光照射手段12として用いることができる。例えば、光硬化型インクとして紫外線硬化型のインクを用いる場合には、紫外線を射出する各種光源を用いることができる。
【0037】
LEDからなる光照射手段12は、照射する光が、液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの、最適硬化波長を含む波長帯域を有する光となっている。つまり、前述したように各光硬化性インクは、その成分(配合)等によって最適硬化波長が異なることが想定されるが、上述のような光を照射することにより、各光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0038】
光照射手段12は、液滴吐出ヘッド9のノズル列NAの長さに対応して、これとほぼ同じ長さとなるようにLED等の光源を配列して形成されている。
光照射手段12は、その発光面が、液滴吐出ヘッド9のノズル面より高い位置となっている。したがって、液滴吐出ヘッド9では、光照射手段12から照射された光がノズルNに照射され、ノズルN内のインクが硬化させられてノズル詰まりを生じる、といった不都合が確実に防止されている。
【0039】
また、キャリッジ4には、光照射手段12の近傍に、冷却手段(図示せず)が設けられている。冷却手段は、冷却水を循環させる方式のものや、ペルティエ素子(ペルチェ素子)からなるものなど、公知のものが用いられる。このような冷却手段が光照射手段12の近傍に配置されることにより、LED等からなる光源が自身や周辺の熱によって劣化し、寿命が低下するといったことが抑制され、光照射手段12の長寿命化が図られる。
【0040】
図2に戻って、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向(第2方向)及びXY平面に直交するZ方向(第3方向)に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。
このような構成のもとに、送り装置5は、制御装置8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向(第2方向)に移動させるとともに、Z方向(第3方向)にも移動させるようになっている。
【0041】
制御装置8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。
これによって、制御装置8は、支持体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ワークステージ6の移動による支持体Pの位置決め動作及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行う。さらに、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、支持体P上の所定の位置に光硬化性インクの液滴を配するようになっている。また、この制御装置8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、光照射手段12に光照射動作を行わせるようにもなっている。
【0042】
次に、ワークステージ6の詳細構成について説明する。
図6は、ワークステージ6を示す平面図及び一部断面図である。
ワークステージ6の上面(ワーク載置面)6aの表層付近には、多数のマイクロヒーター30が埋め込まれている。
多数のマイクロヒーター30は、ワークステージ6の上面6aの表層において、X方向及びY方向に、それぞれ例えば1mmピッチで配置されている。
【0043】
マイクロヒーター(温度差発生部)30は、発熱抵抗体に個別電極と共通電極が接続され、さらにこれらを保護層で覆ったものである。マイクロヒーター30の先端(発熱部分)は、例えば直径0.2mm程度の円柱形に形成されている。
そして、制御装置8からの指令により、不図示の給電制御部より個別電極および共通電極を通して、発熱抵抗体層に電流が流れると、発熱抵抗体にジュール熱が発生する。また、各マイクロヒーター30の各個別電極への通電を制御することにより、個別に加熱のON/OFF及び温度調整が制御できるようになっている。温度調整の分解能としては、例えば0.1℃単位で温度調整が可能となっている。
各マイクロヒーター30は、ワークステージ6の上面6aを、例えば半径0.5mmの範囲で加熱可能である。したがって、ワークステージ6の上面6aは、複数のマイクロヒーター30により、全面に亘って温度調整が可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態の画像記録方法について説明する。
図7は、本発明の画像記録方法を示す工程図である。
図8は、液滴Lの濡れ広がりを示す図である。図8(a)本実施形態における液滴Lの濡れ広がりを示し、図8(b)は従来例における液滴Lの濡れ広がりを示す。
【0045】
まず、図7(a)に示すように、支持体Pの上に、画像層102を紫外線硬化性インクにより印刷する。支持体P上に塗布された紫外線硬化性インクには、液滴吐出ヘッド9に併設された光照射手段12から紫外線が照射される。
【0046】
次に、図7(b)に示すように、画像層102を覆う裏地層103を、白色の紫外線硬化性インクにより印刷する。支持体P上に塗布された紫外線硬化性インクには、液滴吐出ヘッド9に併設された光照射手段12から紫外線が照射される。
裏地層103を形成することにより、画像層102の発色が助けられ、良好な画質の画像を表現することができる。
【0047】
このようにして、印刷物100が形成される。
しかし、複数の液滴吐出ヘッド9同士の取り付け誤差や、ワークステージ6の移動(改行)誤差により、印刷物100に形成された画像などには筋状のむら(筋むらM)が発生する。
筋むらMは、図8(a)に示すように、液滴Lの着弾位置がずれることにより発生する。印刷物100に筋むらMが発生する位置は、機構上の組立誤差などに起因しているので、常にワークステージ6(印刷物100)の特定の箇所に発生する。
筋むらMは、X方向に特定の間隔で発生する。その間隔は、1つの液滴吐出ヘッド9あたりの印字幅を改行ピッチで割った値となる。例えば、1つの液滴吐出ヘッド9の印字幅が約24mmであり、この約24mmのなかで4回の改行が行われる場合には、X方向に6mm間隔で複数の筋むらMが発生することになる。
【0048】
そこで、筋むらMが発生する位置の周辺に配置されたマイクロヒーター30aにより、支持体Pに着弾する液滴Laを加熱する。つまり、ワークステージ6(印刷物100)の全面ではなく、筋むらMが発生する領域のみを加熱する。
上述したように、X方向に6mm間隔で複数の筋むらMが発生するので、マイクロヒーター30もX方向に6mm間隔で加熱するように制御する。マイクロヒーター30aの加熱は、ワークステージ6に印刷物100を載置するときから行う。つまり、画像層102の形成前からマイクロヒーター30aを加熱しておく。
そして、マイクロヒーター30aにより加熱された支持体Pの上に液滴Lが着弾すると、筋むらMを形成する液滴Laの粘度が低下して、他の領域よりも液滴Lが濡れ広がりやすくなる。これにより、図8(a)に示すように、筋むらMの発生が抑制される。
マイクロヒーター30aの加熱温度は、周囲温度よりも、約0.1℃以上高温であればよい。他の領域よりも液滴Lが濡れ広がりやすくなっていればよいからである。
【0049】
マイクロヒーター30aによる加熱は、画像層102と裏地層103のいずれの場合も同様である。例えば、裏地層103を形成する際には、マイクロヒーター30aにより、支持体P及び画像層102が加熱される。そして、画像層102上に着弾した、裏地層103を形成する液滴Lのうち、筋むらMが発生する領域に着弾した液滴Lのみが加熱されて、濡れ広がる。
【0050】
このように、本発明の実施形態によれば、支持体P上に形成される画像等に発生する筋むらMを容易かつ確実に抑制することができる。特に、液滴吐出ヘッド9(キャリッジ4)の走査回数を増やすことなく、筋むらMを容易かつ確実に抑制することができるので、描画処理の効率低を招く虞がないという利点がある。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
上記実施形態では、マイクロヒーター30を、ワークステージ6の上面6aの表層において、X方向及びY方向にそれぞれ例えば1mmピッチで配置する場合について説明したが、これに限らない。例えば、X方向に延びる線状のヒータを配置してもよい。
また、上記実施形態では、マイクロヒーター30を、ワークステージ6の上面6aの表層に埋め込む場合について説明したが、これに限らない。例えば、ワークステージ6の上面6aに、発熱抵抗体や電極(個別電極、共通電極)のパターンを蒸着処理等により成膜する場合であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、紫外線(光)硬化型インクを用いる場合について説明したが、これに限らない。染料インク、顔料インク、熱硬化型インク等を用いる場合であってもよい。
熱硬化型インクを用いる場合には、加熱素子に代えて、ペルティエ素子を用いる。そして、熱硬化型インクを冷却することにより、熱硬化型インクの濡れ広がりを拡大させることができる。
また、インクが着弾するワーク(支持体)として、非吸収型媒体の場合について説明したが、吸収型媒体の場合であってもよい。インクが吸収型媒体に吸収されるまでの間に、インクが濡れ広がって着弾面積が拡大すればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…描画装置、 6…ワークステージ(ワーク搬送テーブル)、 6a…上面(ワーク載置面)、 8…制御装置(温度差発生部)、 9…液滴吐出ヘッド、 30,30a…マイクロヒーター(温度差発生素子)、 100…印刷物、 P…支持体(ワーク)、 M…筋むら、 L,La…液滴(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して液体を噴射する走査型液体噴射ヘッドと、
前記ワークを載置しつつ副走査方向に搬送するワーク搬送テーブルと、
前記ワーク搬送テーブルのワーク載置面に配置された複数の温度差発生素子と、
前記ワークに着弾した液体により形成される画像に筋むらが発生するときに、前記複数の温度差発生素子のうち、前記筋むらに対向する位置に配置された温度差発生素子により、前記筋むらの周囲に着弾した液体と他の領域に着弾した液体との間に温度差を発生させる温度差発生部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記液体は、エネルギー硬化インクであることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記温度差発生部は、前記筋むらの周囲に着弾した液体と他の領域に着弾した液体との間に、0.1度以上の温度差を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記走査型液体噴射ヘッドが複数の液体噴射ヘッドを有し、
前記筋むらが、前記複数の液体噴射ヘッド同士の配置誤差に起因するヘッド間筋むらであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記筋むらが、前記ワーク搬送テーブルとの副走査方向への移動に起因する改行筋むらであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項6】
ワークに対して液体を噴射する走査型液体噴射ヘッドと、
前記ワークを載置しつつ副走査方向に搬送するワーク搬送テーブルと、
前記ワーク搬送テーブルのワーク載置面に配置された複数の温度差発生素子と、
前記温度差発生素子により前記ワークに着弾した液体に温度差発生素子を発生させる温度差発生部と、
を備える描画装置の描画方法であって、
前記ワークに着弾した液体により形成される画像に筋むらが発生するときに、前記複数の温度差発生素子のうち、前記筋むらが発生する位置に配置された温度差発生素子を駆動する温度差発生工程と、
前記走査型液体噴射ヘッドと前記ワーク搬送テーブルを駆動して、前記ワークに対して画像を形成する描画工程と、
を有することを特徴とする描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206420(P2012−206420A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74384(P2011−74384)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】