説明

描画装置

【課題】タブレットが不要な描画装置を提供すること。
【解決手段】スタイラスペン1と表示装置5と、を備え、スタイラスペン1は、筆記の際に撓む可撓性軸部11bを有し、可撓性軸部11bは充電用の複数の圧電素子11cを有し、圧電素子11cの全部又は一部はセンサA〜Dとなっており、ペン先12aに筆圧が加わった状態で筆記した際に同期信号とセンサA〜Dで検出されるスタイラスペン1の動作方向に対応したデータ信号とを表示装置5に送信し、表示装置5は、スタイラスペン1の動作に同期させて当該スタイラスペン1の動作に対応した軌跡を表示する。これによって、タブレットが不要な描画装置が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は描画装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、描画装置の1つとしてペン入力装置を使用した描画装置が知られている(例えば、特許文献1)。このペン描画装置は、画面上の位置を指示するためのスタイラスペンと、スタイラスペンの位置を検出するためのタブレットとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−72965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような描画装置は、スタイラスペンの他に、タブレットを必要とするため高価であり、タブレットがない場所では使用ができないため、使用場所が限定されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、タブレットが不要な描画装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、
ペン先部、軸部、電源、制御手段及び通信手段を有するスタイラスペンと、
通信手段、制御手段及び表示手段を有する表示装置と、を備え、
前記スタイラスペンのペン先部には、ペン先に加わる筆圧によって作動するスイッチが設けられ、
前記軸部は、筆記の際にグリップ部及びペン先に作用する力によって、当該筆記の方向とは逆の方向に弾性的に撓む可撓性軸部を有し、
前記可撓性軸部は、円周方向に所定間隔で配置され、当該可撓性軸部の撓みによって、 前記電源を充電するための起電力を生じる複数の圧電素子を有し、
前記複数の圧電素子の中の全部又は一部の圧電素子は、当該可撓性軸部の撓みに基づいて前記スタイラスペンの動作方向を検出するためのセンサとして機能し、
前記スタイラスペンの前記制御手段は、前記スイッチが作動状態にあるときに、同期信号と前記センサによって検出された前記スタイラスペンの動作方向に対応したデータ信号を生成するとともに、前記スタイラスペンの前記通信手段から前記同期信号及び前記データ信号を前記表示装置に送信し、
前記表示装置の前記通信手段は、前記同期信号及び前記データ信号を受信し、
前記表示装置の前記制御手段は、前記同期信号及び前記データ信号に基づき、前記表示手段に、前記スタイラスペンの動作に同期させて当該スタイラスペンの動作に対応した軌跡を表示するように構成されている、
ことを特徴とする描画装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の描画装置によれば、スタイラスペンを動作させると、同期信号とセンサで検出される可撓性軸部の撓み方向に対応したデータ信号とが表示装置に送信され、表示装置は、スタイラスペンの動作に同期させて当該スタイラスペンの動作に対応した軌跡を表示するので、タブレットがなくても、スタイラスペンでの入力が簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る描画装置におけるスタイラスペンの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る描画装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】図1のスタイラスペンの可撓性軸部の横断面図である。
【図4】図1のスタイラスペンのセンサの動作を示す斜視図である。
【図5】図1のスタイラスペンの内部構成を示すブロック図である。
【図6】図2の描画装置における表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図7】図1のスタイラスペンを上方向、下方向、右方向及び左方向にそれぞれ動作させた場合のセンサの変位を説明するための図である。
【図8】図1のスタイラスペンを上方向、下方向、右方向及び左方向にそれぞれ動作させた場合の各センサの起電力を説明するための表である。
【図9】図1のスタイラスペンを右上方向、右下方向、左下方向及び左上方向にそれぞれ動作させた場合のセンサの変位を説明するための図である。
【図10】図1のスタイラスペンを右上方向、右下方向、左下方向及び左上方向にそれぞれ動作させた場合の各センサの起電力を説明するための表である。
【図11】図1のスタイラスペンによって円を描く場合のセンサの変位を説明するための図である。
【図12】図1のスタイラスペンによって円を描く場合のセンサのX軸方向の座標変化を示すグラフである。
【図13】図1のスタイラスペンによって円を描く場合のセンサのY軸方向の座標変化を示すグラフである。
【図14】図1のスタイラスペンによって円を描いた場合の各位置での各センサの起電力を説明するための表である。
【図15】スタイラスペンと表示装置との間でなされる信号の授受を示す図である。
【図16】スタイラスペンから表示装置に送信される信号の形式を示す図である。
【図17】文字を入力する場合におけるスタイラスペンの動作と表示装置の表示との関係を説明するための図である。
【図18】文字を消去する場合におけるスタイラスペンの動作と表示装置の表示との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る描画装置を図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態に係る描画装置におけるスタイラスペンの斜視図、図2は、描画装置の使用状態を示す斜視図である。
描画装置は、スタイラスペン(ペン入力装置)1と表示装置5とを備える。このうちスタイラスペン1はペンシル型に形成されている。このスタイラスペン1は、紙面等の上に実際に線図や文字等を描くために使用されるものではなく、図2に示すように、スタイラスペン1を紙面等に対して摺動させた際に、その動きに対応した線図や文字等を外部の表示装置5の表示部51に表示させるために使用される。
このスタイラスペン1は、円柱形状の軸部11と、逆円錐状のペン先部12とを備えている。そして、ペン先部12のペン先12aを紙面等に押し当てると内部のスイッチ21(図5参照)が作動し、この押当て状態を維持したまま、グリップ部11aを紙面等の上で動作させると、可撓性軸部11bが撓み、この可撓性軸部11bにある4個のセンサA,B,C,Dが可撓性軸部11bの撓み方向を検出し、同期信号と撓み方向に対応したデータ信号が生成され、この同期信号とデータ信号とがアンテナ22(図5参照)から表示装置5に送信され、表示装置5の表示部51に、スタイラスペン1の動作に対応した軌跡が表示されるようになっている。
【0011】
次に、スタイラスペン1の詳細について説明する。
スタイラスペン1は、図1に示すように、軸部11とペン先部12とを備えている。
軸部11は、グリップ部11aと、グリップ部11aとペン先部12との間に位置する可撓性軸部11bとから構成されている。
図3は、可撓性軸部11bの横断面図を示している。この可撓性軸部11bは、ゴム材等の弾性素材11dによって構成されており、普段は直棒状態にあり、横方向でグリップ部11aとペン先部12との間に向きが反対の外力が作用した場合、弾性変形をして湾曲状態となり、外力が解放された場合には元の直棒状態となる。
この可撓性軸部11bには、軸部11の軸線方向に長尺な帯状の16個の圧電素子11cを含んで構成されている。この16個の圧電素子11cは、円周方向に等間隔(22.5度間隔)で配置されている。この場合、圧電素子11cは、厚さ方向が可撓性軸部11bの半径方向に合致するように設定されている。
各圧電素子11cは、例えばバイモルフ構造を有していて、グリップ部11aに対して可撓性軸部11bの下端部が半径方向に変位した際に起電力を生じる。すなわち、スタイラスペン1のペン先12aを紙面等に押し当てて、スタイラスペン1を一方向に動作させると、ペン先12aには紙面等からの抵抗力が作用する。その結果、可撓性軸部11bが撓み、グリップ部11aに対して圧電素子11cの変位が生じ、この変位によって起電力を生じる。そして、この生じた起電力は電源26の充電のために使用される。
また、16個の圧電素子11cのうちで4個の圧電素子11cは、当該4個の圧電素子11cの起電力を検出するためのセンサA,B,C,Dとしても構成されている。このセンサA,B,C,Dを構成する4個の圧電素子11cは、円周方向に等間隔(90度間隔)で配置されている。このセンサA,B,C,Dは、図4に示すように、可撓性軸部11bの撓みつまり自身の撓みによって生じる起電力を検出する。
【0012】
次に、図5を参照してスタイラスペン1の回路構成を説明する。
スタイラスペン1は、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)20と、CPU20に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)23と、CPU20が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)24と、信号やデータを送受信するためのアンテナ22及び送受信部25と、上述した16個の圧電素子11cと、4個の圧電素子11cからなるセンサA,B,C,Dと、各部に動作電圧を供給する電源26と、ペン先12aに加わる筆圧によって操作されるスイッチ21と、を備えている。
ここで、電源26には、圧電素子11cによって生じた起電力によって充電を行うための充電回路(充電手段)26aが設けられている。また、アンテナ22及び送受信部25は通信手段を構成し、CPU20とROM24に格納された制御プログラムや制御データとによって制御手段が構成されている。この場合の制御プログラムには変位検出プログラムが含まれる。
【0013】
次に、図6を参照して表示装置5の回路構成を説明する。
この表示部5は、装置の全体的な制御を行うCPU50と、CPU50に作業用のメモリ空間を提供するRAM52と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM53と、信号やデータを送受信するためのアンテナ54及び送受信部55と、各種の情報表示や画像表示を行う表示部51と、複数の操作ボタン(図示せず)からの操作入力を受けるスイッチ56と、を備えている。
ここで、アンテナ54及び送受信部55は通信手段を構成し、CPU50とROM53に格納された制御プログラムや制御データとによって制御手段が構成されている。この場合の制御プログラムには、漢字自体やひらがなの認識プログラムが含まれる。
【0014】
次に、センサA,B,C,Dの変位方向と変位の検出方法について説明する。
図7は、16個の圧電素子11cを上方から見た場合を示している。
同図においては、可撓性軸部11bが直棒状態にあるときのセンサA,Cを結ぶ上下方向をY軸、センサB,Dを結ぶ左右方向をX軸としている。
なお、以下の説明においては、可撓性軸部11bが直棒状態にあるときのセンサA,B,C,Dの位置を基準(原点)とし、スタイラスペン1を動作させたときのセンサA,B,C,DのX方向及びY方向の変位を、それぞれ、X=(A,B,C,D)、Y=(A,B,C,D)の座標で表記するものとする。また、センサA,B,C,Dの最大変位量をrとしている。
【0015】
まず、図7の矢印で示すように、スタイラスペン1を上方向、下方向、右方向及び左方向にそれぞれ動作させた場合について考える。
まず、スタイラスペン1を上方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標はX=(0,0,0,0)、Y=−r(1,0,1,0)となる。この場合、センサA,Cは、グリップ部11aに対してY(−)方向にrだけ変位する。なお、この場合、センサB,Dにも力が作用するが、センサB,Dの幅方向の力であるので、センサB,Dはほとんど変位しない。
また、スタイラスペン1を下方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標はX=(0,0,0,0)、Y=+r(1,0,1,0)となる。この場合、センサA,Cは、グリップ部11aに対してY(+)方向にrだけ変位する。なお、この場合、センサB,Dにも力が作用するが、センサB,Dの幅方向の力であるので、センサB,Dはほとんど変位しない。
また、スタイラスペン1を右方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=−r(0,1,0,1)、Y=(0,0,0,0)となる。この場合、センサB,Dは、グリップ部11aに対してX(−)方向にrだけ変位する。なお、この場合、センサA,Cにも力が作用するが、センサA,Cの幅方向の力であるので、センサA,Cはほとんど変位しない。
また、スタイラスペン1を左方向に移動させる場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=+r(0,1,0,1)、Y=(0,0,0,0)となる。この場合、センサB,Dは、グリップ部11aに対してX(+)方向にrだけ変位する。なお、この場合、センサA,Cにも力が作用するが、センサA,Cの幅方向の力であるので、センサA,Cはほとんど変位しない。
【0016】
図8は、スタイラスペン1の動作方向(上方向、下方向、右方向又は左方向)と、センサA,B,C,Dに生じる起電力との関係を示している。なお、同図には、半径方向外側に変位した際にセンサA,B,C,Dに生じる起電力を正極性の起電力、半径方向内側に変位した際にセンサA,B,C,Dに生じる起電力を負極性の起電力とし、正極性の起電力を「正」と、負極性の起電力を「負」として表記してある。
図8からも明らかなように、スタイラスペン1の動作方向(上方向、下方向、右方向又は左方向)によってセンサA,B,C,Dに生じる起電力の極性の組み合わせが異なるものとなる。
したがって、センサA,B,C,Dの起電力の組み合わせを検出することによって、スタイラスペン1が上方向、下方向、右方向及び左方向のうちのどの方向に動作しているかを検出することができることが分かる。
【0017】
次に、図9に示すように、スタイラスペン1を右上方向、右下方向、左下方向及び左上方向にそれぞれ動作させた場合を考える。
まず、スタイラスペン1を右上方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=−r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)、Y=−r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)となる。この場合、センサA,B,C,Dは、グリップ部11aに対して左下方向にrだけ変位する。
また、スタイラスペン1を右下方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=−r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)、Y=+r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)となる。この場合、センサA,B,C,Dは、グリップ部11aに対して左上方向にrだけ変位する。
また、スタイラスペン1を左上方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=+r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)、Y=−r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)となる。この場合、センサA,B,C,Dは、グリップ部11aに対して右下方向にrだけ変位する。
また、スタイラスペン1を左下方向に移動させた場合、センサA,B,C,Dの座標は、X=+r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)、Y=+r(1/√2,1/√2,1/√2,1/√2)となる。この場合、センサA,B,C,Dは、グリップ部11aに対して右上方向にrだけ変位する。
【0018】
図10は、スタイラスペン1の動作方向(右上方向、右下方向、左下方向又は左上方向)と、センサA,B,C,Dに生じる起電力との関係を示している。
センサA,CはY軸方向の変位成分だけによって起電力を生じる。具体的には、センサAはY軸(+)方向の変位成分によって正極性の起電力を生じ、Y軸(−)方向の変位成分によって負極性の起電力を生じる。一方、センサCはY軸(+)方向の変位成分によって負極性の起電力を生じ、Y軸(−)方向の変位成分によって正極性の起電力を生じる。
また、センサB,DはX軸方向の変位成分だけによって起電力を生じる。具体的には、センサBはX軸(+)方向の変位成分によって正極性の起電力を生じ、X軸(−)方向の変位成分によって負極性の起電力を生じる。一方、センサDはX軸(+)方向の変位成分によって負極性の起電力を生じ、X軸(−)方向の変位成分によって正極性の起電力を生じる。
なお、同図には、正極性の起電力を「正」と、負極性の起電力を「負」として表記してある。
図10からも明らかなように、スタイラスペン1の動作方向(右上方向、右下方向、左下方向又は左上方向)によってセンサA,B,C,Dに生じる起電力の極性の組み合わせは異なるものとなる。
したがって、センサA,B,C,Dの起電力の組み合わせを検出することによって、スタイラスペン1が右上方向、右下方向、左下方向及び左上方向のうちのどの方向に動作しているかを検出することができることが分かる。
【0019】
続いて、スタイラスペン1によって円を描く場合について説明する。
この場合、図11に示すようにt=0,t=1,t=2,t=3,t=4,t=5,t=6,t=7,t=8の位置を経て円を描くものとする。
この場合、t=0の位置では、スタイラスペン1には右方向の力が作用し、t=1の位置では、スタイラスペン1には右下方向の力が作用し、t=2の位置では、スタイラスペン1には下方向の力が作用し、t=3の位置では、スタイラスペン1には左下方向の力が作用し、t=4の位置では、スタイラスペン1には左方向の力が作用する。また、t=5の位置では、スタイラスペン1には左上方向の力が作用し、t=6の位置では、スタイラスペン1には上方向の力が作用し、t=7の位置では、スタイラスペン1には右上方向の力が作用し、t=8の位置では、スタイラスペン1には右方向の力が作用する。
この場合のセンサA,B,C,DのX座標及びY座標の変化は、それぞれ、図12及び図13に示す通りのものとなる。なお、図12及び図13においてハッチングが付された領域は、センサA,B,C,Dの起電力が生じる領域である。
【0020】
図14は、スタイラスペン1の位置(t=0,t=1,t=2,t=3,t=4,t=5,t=6,t=7,t=8)と、センサA,B,C,Dに生じる起電力との関係を示している。なお、同図には、半径方向外側に変位した際にセンサA,B,C,Dに生じる起電力を正極性の起電力、半径方向内側に変位した際にセンサA,B,C,Dに生じる起電力を負極性の起電力とし、正極性の起電力を「正」と、負極性の起電力を「負」として表記してある。
図14からも明らかなように、スタイラスペン1の動作方向によってセンサA,B,C,Dに生じる起電力の極性の組み合わせが異なるものとなる。
したがって、センサA,B,C,Dの起電力の組み合わせを検出することによって、スタイラスペン1の動作方向を検出することができることが分かる。
【0021】
次に、文字「ア」を書く場合を例にして、スタイラスペン1による入力方法をスタイラスペン1及び表示装置5の作用とともに説明する。
図15はスタイラスペン1と表示装置5との間でなされる信号の授受を示している。また、図16はスタイラスペン1から表示装置5に送信される信号の形式を示している。この場合の信号はフレーム形式の信号として表示装置5に送信される。
具体的には、ペン先部12のペン先12aを紙面等に押し当てると内部のスイッチ21が作動し、スタイラスペン1はスタート信号(STA)を表示装置5に送信する。すると、表示装置5は、描画モードとなり、表示部51上の開始位置に点灯したポインタを表示するとともに、スタート信号(STA)を認識した旨の認識信号をスタイラスペン1に送信する(図17(A))。
次に、ペン先12aの押し当て状態を維持しつつスタイラスペン1によって文字「ア」の1画目を書くと、スタイラスペン1は同期信号(SYN_1)及びデータ信号(DATA)を表示装置5に送信する。すると、表示装置5は、スタイラスペン1の動作に対応するように開始位置からポインタPを移動させて1画目の線を描画する。この間、紙面等の位置と表示部51の位置との相関が確立されている。そして、1画目を書き終えたらスタイラスペン1を紙面等から一旦離す。すると、スイッチ21が非作動状態となり、スタイラスペン1は1画目を書き終えた旨の信号(DE)を表示装置5に送信する。これにより表示装置5は1画目の線の終了を認識し、1画目の線の終了を認識した旨の認識信号をスタイラスペン1に送信する(図17(B))。
次に、再び、ペン先12aを紙面等に押し当てると、スタイラスペン1は同期信号(SYN_2)を表示装置5に送信する。この同期信号(SYN_2)を受信した表示装置5は、非描画モードとなり、点滅するポインタを表示部51上の所定位置Pに表示するとともに、同期信号(SYN_2)を認識した旨の認識信号をスタイラスペン1に送信する。その後、使用者はスタイラスペン1を動作させる。このとき、スタイラスペン1はデータ信号を表示装置5に送信する。すると、表示装置5は、スタイラスペン1の動作に対応して、点滅するポインタを表示部51上で移動させる。このときには、スタイラスペン1の動作に対応した線は描画されない。
このようにして、使用者は、スタイラスペン1を動作させて、表示部51上でポインタを文字「ア」の2画目の開始位置まで移動させる。
なお、上記所定位置Pは表示部51上のどの位置に設定してもよいが、1画目の終了位置とすることが好ましい。このようにすれば、スタイラスペン1を一筆書きの感覚で動作させれば、簡単にポインタを文字「ア」の2画目の開始位置まで移動させることができる。
そして、ポインタPが2画目の開始位置まで移動したら、スタイラスペン1を止める。すると、表示装置5は、非描画モードが終了したと判断し、ポインタPを点灯状態とし、描画モードに移行する。このポインタPが点灯状態となった位置が2画目の開始位置となる。そして、ペン先12aの押し当て状態を維持しつつスタイラスペン1によって2画目を書くと、スタイラスペン1はデータ信号を表示装置5に送信する。すると、表示装置5は、スタイラスペン1の動作に対応した文字「ア」の2画目の線を描画する(図17(C))。
このようにして、2画目の線を書いた後、スタイラスペン1のペン先12aを紙面等に押し当てた状態にしておくと、スタイラスペン1は1文字が完了した旨の信号(FE)を表示装置5に送信する。すると、表示装置5は入力文字を認識し、横書き設定されている場合には左隅に、縦書き設定されている場合には右隅に、キャラクタ設定された文字、サイズに変換されて表示される(図17(D))。
【0022】
続いて、字画の消去法について説明する。
この場合には、スタイラスペン1の字画を入力した後、連続して2回ペン先12aを紙面等に押し当てる。すると、スタイラスペン1は消去のスタート信号を表示装置5に送信する。そして、表示装置5は消去のスタート信号を認識した旨の認識信号をスタイラスペン1に送信するとともに、当該字画の線を表示部51上で消去する(図18(A))。その消去後、再び、ペン先12aを紙面等に押し当てれば、変更した字画を入力することができる(図18(B))。
【0023】
以上のように構成された描画装置によれば、スタイラスペン1を動作させると、同期信号とセンサでA,B,C,Dで検出される可撓性軸部11bの撓み方向に対応したデータ信号とが表示装置5に送信され、表示装置5は、スタイラスペン1の動作に同期させて当該スタイラスペン1の動作に対応した軌跡を表示するので、タブレットがなくても、スタイラスペン1での入力が簡単に実現できる。
また、円周方向に等間隔で配設された4個のセンサA,B,C,Dでスタイラスペン1の動作方向を検出しているので、簡単且つ確実にスタイラスペン1の動作方向を検出することができる。ちなみに、5個以上のセンサを円周方向に等間隔で配設してもスタイラスペン1の動作方向の検出は可能ではあるが、この場合には、4個の場合に比べて、その構成が複雑となる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
ペン先部、軸部、電源、制御手段及び通信手段を有するスタイラスペンと、
通信手段、制御手段及び表示手段を有する表示装置と、を備え、
前記スタイラスペンのペン先部には、ペン先に加わる筆圧によって作動するスイッチが設けられ、
前記軸部は、筆記の際にグリップ部及びペン先に作用する力によって、当該筆記の方向とは逆の方向に弾性的に撓む可撓性軸部を有し、
前記可撓性軸部は、円周方向に所定間隔で配置され、当該可撓性軸部の撓みによって、 前記電源を充電するための起電力を生じる複数の圧電素子を有し、
前記複数の圧電素子の中の全部又は一部の圧電素子は、当該可撓性軸部の撓み方向を検出するためのセンサとして機能し、
前記スタイラスペンの前記制御手段は、前記スイッチが作動状態にあるときに、同期信号と前記センサによって検出された前記可撓性軸部の撓み方向に対応したデータ信号を生成するとともに、前記スタイラスペンの前記通信手段から前記同期信号及び前記データ信号を前記表示装置に送信し、
前記表示装置の前記通信手段は、前記同期信号及び前記データ信号を受信し、
前記表示装置の前記制御手段は、前記同期信号及び前記データ信号に基づき、前記表示手段に、前記スタイラスペンの動作に同期させて当該スタイラスペンの動作に対応した軌跡を表示するように構成されている、
ことを特徴とする描画装置。
<請求項2>
前記センサを4個備え、この4個のセンサは円周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【符号の説明】
【0025】
1 スタイラスペン
5 表示装置
11 軸部
11a グリップ部
11b 可撓性軸部
11c 圧電素子
12 ペン先部
12a ペン先
21 スイッチ
51 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先部、軸部、電源、制御手段及び通信手段を有するスタイラスペンと、
通信手段、制御手段及び表示手段を有する表示装置と、を備え、
前記スタイラスペンのペン先部には、ペン先に加わる筆圧によって作動するスイッチが設けられ、
前記軸部は、筆記の際にグリップ部及びペン先に作用する力によって、当該筆記の方向とは逆の方向に弾性的に撓む可撓性軸部を有し、
前記可撓性軸部は、円周方向に所定間隔で配置され、当該可撓性軸部の撓みによって、 前記電源を充電するための起電力を生じる複数の圧電素子を有し、
前記複数の圧電素子の中の全部又は一部の圧電素子は、当該可撓性軸部の撓みに基づいて前記スタイラスペンの動作方向を検出するためのセンサとして機能し、
前記スタイラスペンの前記制御手段は、前記スイッチが作動状態にあるときに、同期信号と前記センサによって検出された前記スタイラスペンの動作方向に対応したデータ信号を生成するとともに、前記スタイラスペンの前記通信手段から前記同期信号及び前記データ信号を前記表示装置に送信し、
前記表示装置の前記通信手段は、前記同期信号及び前記データ信号を受信し、
前記表示装置の前記制御手段は、前記同期信号及び前記データ信号に基づき、前記表示手段に、前記スタイラスペンの動作に同期させて当該スタイラスペンの動作に対応した軌跡を表示するように構成されている、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記センサを4個備え、この4個のセンサは円周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−208576(P2012−208576A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71980(P2011−71980)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】