説明

揚げ物の調理方法

【課題】フライヤーや電子レンジを用いることなく揚げ物を調理する方法を提供する。
【解決手段】冷凍した加熱未了状態の揚げ物であるプリフライ素材を、スチームオーブンを用いて解凍し、加熱して調理する方法であって、中心部が加熱未了状態を保つように素材を揚げるプリフライ工程と、プリフライ工程の後に素材を冷凍する冷凍工程と、冷凍工程の後、素材をスチームオーブンにてスチームをゼロまたは十分少なくして加熱して乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程終了後、引き続きスチームを利用して加熱する本加熱工程と、を含む揚げ物の調理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍した加熱未了状態の揚げ物であるプリフライ素材を、スチームオーブンを用いて解凍し、所定の手順で加熱して調理することで揚げ物とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアなどのレジカウンター周辺には、唐揚げやコロッケなどの揚げ物料理が売られており、手軽に食せることから売上に貢献している。また、ファーストフード店やカラオケ店などでも、揚げ物は人気メニューである。揚げ物調理は、素材を高温の油に投入することで加熱調理が完了する。したがって、下ごしらえさえ済んでいれば、簡易かつ短時間で調理することができる。つまり、専門の調理人に依らずにパートやアルバイトなどによって調理が可能なのである。このように、調理が容易であるということが、様々な業態において揚げ物料理が取り扱われている要因であると言える。
【0003】
ところで、揚げ物調理を行うためには、「フライヤー」という揚げ物用の調理器を店舗内に設置しなければならない。ここで、いくつかの問題が生じる。フライヤーは油槽に油を溜め、これを加熱して揚げ物調理に用いる。フライヤーでの揚げ物調理は、多量の油に素材を入れて揚げるものであるが、その際に高温の油が飛散することがある。また、使用により汚れた油を交換したり、その際に油を溜める容器の清掃などを行う必要がある。そのため、火災などのリスクや調理に伴う怪我などのリスクが高まる。さらに、店舗の油汚れや、調理や器具の手入れに伴う人件費の増加などの負担が生じることになる。
【0004】
そこで、フライヤーを使わずに揚げ物を調理する工夫がされている。例えば、特許文献1には、プリフライ(予め揚げた)を施した後に冷凍した揚げ物を、底部に加熱シートを貼設した容器に入れて、電子レンジを用いて、解凍、加熱する調理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−271859
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の先行技術は、電子レンジを用いることによりフライヤーを用いる際のリスクと負担をなくし、かつ、電子レンジを用いるにしては美味しく調理することが可能となるであろうが、揚げ物の持つ本来的な美味しさは失われてしまう。なぜならば、電子レンジは食品に含まれる水分を電磁波により加熱して食品を温める機器であるところ、このような加熱の方法は、揚げるという加熱の方法と全く異なるものであるからである。揚げるという調理方法は、食材の表面が高温の油に触れることにより、表面の水分を蒸発させるとともにタンパク質などを熱変性により硬化させ、食材がもつ水分などを外部に流出させることなく加熱する調理方法である。そのため、表面が「サクッ」と仕上がり、内部が「ジューシー」になるのである。プリフライしたとしても、揚げ物を電子レンジで解凍、加熱すれば、油分の多い表面よりも、水分の多い内部により多くの電磁波が吸収され、揚げることにより閉じ込めておいた水分が失われてしまう。結果として、プリフライを施してあるとはいえ、電子レンジによる再加熱の段階で、揚げることによる得られる食感や風味が損なわれてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、以下の揚げ物の調理方法を提供するものである。すなわち、第一の発明として、中心部が加熱未了状態を保ち、かつ加熱されることで加熱前より硬くなった表面層を作るように素材を揚げるプリフライ工程と、プリフライ工程の後、素材を冷凍する冷凍工程と、冷凍工程の後、素材の表面層の水分量を減じるためにスチームオーブンにてスチームをゼロまたは十分少なくして加熱して乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程終了後、素材をスチームオーブンから取り出さないで中心部も加熱完了状態となるように素材を、スチームを利用して加熱する本加熱工程とを含む揚げ物の調理方法を提供する。
【0008】
第二の発明として、プリフライ工程は、二度揚げ以上するマルチフライ工程を含む第一の発明に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0009】
第三の発明として、マルチフライ工程は、複数の揚げ工程間に冷凍工程を含む第二の発明に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0010】
第四の発明として、本加熱工程は、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度とする第一の発明から第三の発明に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0011】
第五の発明としては、本加熱工程または/及び乾燥工程は、素材に対して吹き付ける熱風を、加熱ムラを防ぐために正逆反転を繰り返しながら加熱する第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0012】
第六の発明としては、本加熱工程は、湿度8から35%の範囲内にて行う第一の発明から第五の発明いずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0013】
第七の発明としては、本加熱工程は、湿度14から28%の範囲内にて行う第一の発明から第五の発明のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0014】
第八の発明としては、本加熱工程は、湿度23から26%の範囲内にて行う第一の発明から第五の発明のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0015】
第九の発明としては、本加熱工程は、温度摂氏160から240度の範囲で行う第一の発明から第八の発明のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0016】
第十の発明としては、本加熱工程は、温度摂氏170から220度の範囲で行う第一の発明から第八の発明いずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0017】
第十一の発明としては、本加熱工程は、温度摂氏180から200度の範囲で行う第一の発明から第八の発明のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法を提供する。
【0018】
第十二の発明としては、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度以下に設定可能なスチーム発生器を備えたスチームコンベクションオーブンを提供する。
【0019】
第十三の発明としては、加熱のための送風を、正逆反転を繰り返すように制御可能な送風器を備えた第十二の発明に記載のスチームコンベクションオーブンを提供する。
【0020】
第十四の発明としては、前記スチーム発生器は、加熱時の湿度を8%から35%の範囲内で設定可能である第十二の発明又は第十三の発明に記載のスチームコンベクションオーブンを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の揚げ物の調理方法により、フライヤーを用いることなく、揚げ物の本来的な食感や風味を損なわず、かつ、簡易に調理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1にかかる揚げ物の調理方法の一例を示すフロー図
【図2】スチームコンベクションオーブンの構成を表す概念図
【図3】加熱方法による素材の表面層の水分量の変化を表す概念図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明はこれら実施の形態になんら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0024】
実施形態1は、主に請求項1、2、3について説明する。実施形態2は、主に請求項4、12について説明する。実施形態3は、主に請求項5、13について説明する。実施形態4は、主に請求項6、7、8、9、10、11、14について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0025】
本実施形態の揚げ物の調理方法は、本来揚げ物調理を行うことを想定して作られたものではない「スチームオーブン」を用いることを特徴とする揚げ物の調理方法であり、あらかじめ素材を揚げておくプリフライ工程と、プリフライされた素材を冷凍する冷凍工程と、冷凍された素材をスチームオーブンで加熱して乾燥させる乾燥工程と、引き続き中心部も加熱完了状態となるようにスチームを利用して加熱する本加熱工程とを行うことを特徴とするものである。
<実施形態1 構成>
【0026】
図1に本実施形態の揚げ物の調理方法の各工程の流れを表すフロー図の一例を示す。本実施形態の揚げ物の調理方法は、以下の各工程を含むものである。まず、中心部が加熱未了状態を保ち、かつ加熱されることで加熱前より硬くなった表面層を作るように素材を揚げる(プリフライ工程 S0101)。次に、プリフライ工程にて揚げた素材を冷凍する(冷凍工程 S0102)。次に、冷凍工程にて冷凍された素材の表面層の水分量を減じるためにスチームオーブンにてスチームをゼロまたは十分少なくして加熱して乾燥させる(乾燥工程 S0103)。さらに、乾燥工程にて乾燥された素材を、スチームオーブンから取り出さないで中心部も加熱完了状態となるようにスチームを利用して加熱する(本加熱工程 S0104)。
【0027】
「プリフライ工程(S0101)」は、中心部が加熱未了状態を保ち、かつ加熱されることで加熱前より硬くなった表面層を作るように素材を揚げる工程である。まず、「素材」とは、調理されることにより料理として食することが可能となる食材や、食材を下拵えしたものなどをいう。揚げ物の調理法には、カツレツ、コロッケ、唐揚げ、龍田揚げ、天ぷらなどのように素材の表面に、パン粉や小麦粉や片栗粉などの衣をつけて揚げたり、あるいは、フライドポテトなどのように素材をそのまま揚げたりするなどの、種々の方法がある。したがって、上記の例によれば、カツレツにおいては、肉やコロッケ種などに小麦粉、卵、パン粉の順に衣をつけたものが素材となり、フライドポテトにおいては、じゃがいもそのものが素材となる。
【0028】
「プリフライ」とは、加熱未了状態で素材をあらかじめ揚げておくこと、あるいは、そのように揚げた物をいう。ここで、食品業界においては、加熱未了の度合いにより、加熱未了の度合いが高いもの(あまり火を通さない)を「プリフライ」と称し、加熱未了の度合いが低いもの(相当火を通す)を「ディープフライ」と称する場合があるが、本明細書における「プリフライ」とは、広義の意味において、加熱未了状態で素材をあらかじめ揚げておくこと、あるいは、そのように揚げた物をいうものである。すなわち、素材に応じて加熱未了の度合いに幅を持ちつつ、素材をあらかじめ揚げておくこと、あるいは、そのように揚げたものをいう。したがって、本明細書における「プリフライ」には、狭義の「プリフライ」及び「ディープフライ」を含むものである。
【0029】
「中心部が加熱未了状態」であるとは、素材の中心部まで完全に火を通さない状態をいう。つまり、素材の中心部は食するには適した状態には至っていない場合もある。これは、後の「本加熱工程」での加熱により、丁度良く素材の内部への加熱が完了するための余地を残すためである。したがって、後の本加熱工程において、素材の中心部が食するのに丁度よい加熱完了状態に至るのである。
【0030】
プリフライ工程では、素材を揚げることにより表面層を硬くする。なお、表面層とは、素材自体の表面や素材の表面につけられた衣などをいう。素材を揚げることにより、その表面は高温の油に触れることで水分が蒸発し、また、タンパク質などが熱変性することにより、表面層は硬くなる。油の温度は素材の種類、大きさ、厚み、衣の種類などに応じたものとなるが、概ね摂氏130から200度である。高温であるほど短時間で表面層を硬くすることができる。
【0031】
プリフライ工程において、素材を二度揚げ以上するマルチフライ工程を含んでいてもよい。素材を揚げることにより表面層は硬くなる。しかし、長時間揚げ続けると素材の中心部まで熱が行き届き加熱完了状態となってしまう場合がある。そこで、一回の揚げ時間を短くし、複数回揚げることにより、中心部を加熱未了状態としつつ加熱前より表面層を硬くする。したがって、一度揚げてから次に揚げるまでの時間的間隔をおいたり、一度揚げてから一旦素材を冷蔵するなどして、素材を冷ましてもよい。
【0032】
マルチフライ行程において、複数の揚げ工程間に冷凍行程を含んでいてもよい。一度揚げた後、再度揚げるまでの間に素材を冷凍することにより、再度揚げる際に素材の中心部まで加熱されてしまうことを防止し、加熱未了状態を維持することができる。
【0033】
「冷凍工程(S0102)」は、プリフライ工程の後、素材を冷凍する工程である。素材を冷凍することにより、腐敗や菌の増殖を抑制し長期間の保存が可能となる。また、冷凍することにより、衛生面における品質劣化を抑制しつつ流通させることが可能となり、商品価値を高めることができる。
【0034】
「乾燥工程(S0103)」は、冷凍工程の後、素材の表面層の水分量を減じるためにスチームオーブンにてスチームをゼロまたは十分少なくして加熱して乾燥させる工程である。冷凍工程において、素材の表面にはわずかながら水分の凝結が起こっており、この水分が表面に浸みこむことで食感を損ねるものとなり、これを乾燥工程において防止する。ここで、「スチームオーブン」について説明する。図2は、例としてスチームコンベクションオーブンの構成を表した概念図である。スチームオーブンとは、ヒータ(0201)により庫内(0202)の温度を高めて素材(0203)を加熱するオーブン機器に、さらに、庫内にスチーム(蒸気)を導入させる機能を加えたものである。蒸気発生装置(0204)により発生した蒸気が素材に触れることにより、蒸気が蓄えた熱量を一気に放出して素材を加熱する。そのため、単に高温の空気で加熱するよりも、短時間で素材を加熱することができる。これは、素材に熱を伝達する場合、空気より上記の方が、熱伝達媒体として熱伝達効率が高いからである。また、蒸気は熱量を放出して水となり、表面が乾燥することを抑制する。スチームオーブンには、さらに、ファン(0205)などをモータ(0206)で駆動して庫内に熱風や蒸気を循環させる機能を加えた、いわゆるスチームコンベクションオーブンも含まれる。また、吸排気を行うためのダンパー(0207)を備える。このようなスチームオーブンは、熱風と蒸気を組み合わせて庫内の状況を様々に制御することができる。なお、スチームオーブンは、電気により作動するものとガスにより作動するものなどがあるが、フライヤーと異なり、高温の油を用いるものでないので、取扱が簡便で安全であることは言うまでもない。
【0035】
スチームをゼロまたは十分に少なくして加熱することにより、素材の表面層の水分量は蒸発して減少する。これにより、揚げ物の表面層は乾燥して硬さを維持することができる。この工程は、素材の中心部まで加熱することを目的とするものではない。スチームオーブンの庫内温度設定は、素材に応じたものとなるが、例えば、180から250℃といった高温で加熱してもよい。高温で加熱することにより、短時間で表面層を加熱し固くすることができる。また、乾燥工程に要する時間は、素材に応じたものになるが、例えば、唐揚げ80グラムを調理する場合には、3分程度を要する。なお、乾燥工程を行う際には、あらかじめヒータをオンにし(予熱)、庫内温度を高めておくことにより、より短時間で乾燥工程を行うことができる。
【0036】
「本加熱工程(S0104)」は、乾燥工程終了後、素材をスチームオーブンから取り出さないで中心部も加熱完了状態となるように素材を、スチームを利用して加熱する工程である。素材をスチームオーブンから取り出さないのは、庫内温度の低下を防止するためである。スチームを利用して加熱することにより、熱風のみの乾燥した庫内条件での加熱よりも短時間で素材の中心部も加熱完了状態となるように加熱することができる。
【0037】
乾燥工程から本加熱工程を経ることによる、冷凍された素材の状態の変化について説明する。乾燥工程を経ることにより、表面層は乾燥しプリフライ工程の段階よりもさらに水分は失われ硬くなっている。そして、その中心部においては、依然として加熱未了状態である。その後、スチームを加えた本加熱工程にて、中心部も加熱完了状態になるとともに、表面層には水分が加えられることにより望ましい水分量を保持した表面の仕上がりとなる。スチームオーブンには、温度、湿度、加熱時間などの庫内環境を様々にプログラミングできる機能が付加されたものもある。そのようなスチームオーブンを用いる場合には、本実施形態に係る揚げ物の調理方法は、より簡便に実施することができる。なお、スチームを加えないで加熱する乾燥工程と、スチームを加えて加熱する本加熱工程の順序を逆にした場合についても補足的に説明する。出願人の試行により得られた結果としては、先に表面を乾燥させて、その後にスチームを利用して加熱を行う方が、その逆の順序で行うことに比べ、短時間で良好に調理できることが分かった。これについて、図3の概念図を用いて説明する。横軸を時間、縦軸を表面の水分量としたグラフにおいて、実線で示したものが「スチームを加えない加熱からスチームを加える加熱」の順序で調理した場合の水分量の変化である。また、一点鎖線で示したのが「スチームを加える加熱からスチームを加えない加熱」の場合である。プリフライ工程にて表面層を硬く仕上げているため、いずれかの加熱を開始する時間=tまでは、表面層の水分量は適正な水分量を下回っている。出願人の試行結果によると、先にスチームを加えてしまうと、表面層が適正な水分量となるまでの加熱に要する時間が、相対的に長くなり、調理完了に要する時間が長くなってしまう(t<t)。
【0038】
スチームオーブンは、焼く、煮る、蒸すなどといった調理を行うための調理機器であり、本来、揚げ物料理をすることはできない。したがって、市販されているスチームオーブンにおいて、調理方法の選択肢の中には「揚げる」という調理方法は存在しない。しかし、本実施形態の調理方法により、プリフライした揚げ物を、再度揚げることなく、揚げたときと同様に加熱調理することが可能となる。
<実施形態1 効果>
【0039】
本実施形態の揚げ物の調理方法により、フライヤーを用いることなく、揚げ物の本来的な食感や風味を損なわず、かつ、簡易に調理することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0040】
本実施形態は、実施形態1の揚げ物の調理方法を基本とし、本加熱工程においてスチームを発生させる温度を摂氏75度から95度とすることを特徴とするものである。
<実施形態2 構成>
【0041】
本加熱工程は、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度とするものである。スチームオーブンにはスチーム発生器が備えられており、ボイラーで湯を沸かし庫内に導入するための蒸気を発生させている。そして、発生させる蒸気の温度を設定することができる。このようなスチームオーブンには、もちろん、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度に設定可能なスチーム発生器を備えたスチームコンベクションオーブンも含まれる。本加熱工程では、蒸気が素材に触れることにより、素材を加熱するものであるが、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度により調理の仕上がりが異なってくる。高い温度で発生したスチームほど、素材への水分の浸透率が高くなり、サクッとした仕上がりになりにくい。一方、低すぎると加熱完了に時間がかかるとともに表面層をサクッとした仕上がりにすることができなくなる。そこで、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度とすることが望ましい。
<実施形態2 効果>
【0042】
本実施形態の揚げ物の調理方法により、より短時間で中心部までの加熱と揚げ物らしく表面を仕上げた調理が可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0043】
本実施形態は、実施形態1または2の揚げ物の調理方法を基本とし、素材に対して吹き付ける熱風を、正逆反転を繰り返しながら加熱することにより、よりむらなく調理することを特徴とする。
<実施形態3 構成>
【0044】
本実施形態において、本加熱工程または/及び乾燥工程は、素材に対して吹き付ける熱風を、加熱むらを防ぐために正逆反転を繰り返しながら加熱する。実施形態1にて既に説明したように、スチームオーブンには、ファンなどにより加熱のための送風を、正逆反転を繰り返すように制御可能な送風器を備えたスチームコンベクションオーブンが含まれる。このようにヒータで暖められた庫内の空気が循環され熱風となり、素材に対して吹きつけられる。乾燥工程においては、スチームを加えない乾いた熱風が、素材に対して吹きつけられ、また、本加熱工程においては、スチームを加えた湿った熱風が、素材に対して吹きつけられる。そして、ファンなどの回転を正逆反転させることにより、この熱風が正逆反転を繰り返しながら、素材に対して吹きつけるようにする。このように熱風の風向きを変えることにより、素材に対してより効率よくむらのない加熱が可能となる。
【0045】
スチームオーブンは、庫内に複数の棚受けを備えており、そこに複数の調理用の平鍋(ホテルパンなど)を設置し、一度に多数の素材を調理できるものもある。そのような場合には、熱風を正逆反転させて加熱することにより、庫内全体においてむらなく加熱することができる。正逆反転の間隔は、例えば、略120秒としてもよい。もちろん、棚の数や庫内の容積に応じたものとなるが、間隔が短すぎると、相対的に熱風が滞りがちになってしまい、一方、間隔が長すぎると、相対的に加熱むらが生じるおそれが増加してしまう。
<実施形態3 効果>
【0046】
本実施形態の揚げ物の調理方法により、複数の素材を一度に調理する場合であっても、複数の素材に対して、より効率よくむらのない加熱をすることが可能となる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0047】
本実施形態は、実施形態1から3のいずれか一を基本とし、本加熱工程を、湿度を8から35%の範囲内にて行うことを特徴とするものである。
<実施形態4 構成>
【0048】
本実施形態の揚げ物の調理方法において、本加熱工程は、湿度8から35%の範囲内にて行う。「湿度」とは、加熱時の庫内の湿度をいう。また、スチームオーブンに対して、「湿度」や「蒸気量」などといった庫内の湿度を設定するパラメータを、湿度8から35%の範囲内の値を設定して、機器を作動して加熱することも、本加熱工程を、湿度8から35%の範囲内にて行うことに含まれる。本実施形態における本加熱工程は、加熱時の湿度を湿度8から35%の範囲内で設定可能であるスチーム発生器を備えるスチームコンベクションオーブンなどを用いて行うことができる。
【0049】
湿度の設定は、加熱完了状態となるまでの時間や素材の表面層の仕上がりなどを左右する。例えば、湿度が低すぎると加熱完了に至るまでに相対的に長い時間を要することになり、また、湿度が高すぎると表面層が多くの水分を含んでしまいサクッとした仕上がりにならなくなってしまうおそれがある。そこで、湿度8から35%の範囲内で本加熱工程を行うことにより、中心部までの加熱と、表面層の仕上がりとをバランスよく調理することが可能となる。また、本加熱工程は、湿度14から28%の範囲内にて行うものとしてもよい。さらに、本加熱工程は、湿度23から26%の範囲内にて行うものとしてもよい。
【0050】
温度の設定についても、加熱完了状態となるまでの時間や素材の表面層の仕上がりなどを左右する。温度設定を高くした場合には、表面層をパリッとさせたり、香ばしく仕上げるのに好適である。また、厚みのある素材などをじっくり加熱する場合には温度設定を低くしてもよい。設定温度については、概ね摂氏160から240度の範囲が好適であるが、素材や湿度に応じて、摂氏170から220度の範囲でも好適に調理可能であり、さらに、摂氏180から200度の範囲であってもよい。
<実施形態4 効果>
【0051】
本実施形態の揚げ物の調理方法により、中心部までの加熱と、表面層の仕上がりとをバランスよく調理することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
S0101 プリフライ工程
S0102 冷凍工程
S0103 乾燥工程
S0104 本加熱工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部が加熱未了状態を保ち、かつ加熱されることで加熱前より硬くなった表面層を作るように素材を揚げるプリフライ工程と、
プリフライ工程の後、素材を冷凍する冷凍工程と、
冷凍工程の後、素材の表面層の水分量を減じるためにスチームオーブンにてスチームをゼロまたは十分少なくして加熱して乾燥させる乾燥工程と、
乾燥工程終了後、素材をスチームオーブンから取り出さないで中心部も加熱完了状態となるように素材を、スチームを利用して加熱する本加熱工程と、
を含む揚げ物の調理方法。
【請求項2】
前記プリフライ工程は、二度揚げ以上するマルチフライ工程を含む請求項1に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項3】
マルチフライ工程は、複数の揚げ工程間に冷凍工程を含む請求項2に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項4】
本加熱工程は、スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度とする請求項1から3のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項5】
本加熱工程または/及び乾燥工程は、素材に対して吹き付ける熱風を、加熱ムラを防ぐために正逆反転を繰り返しながら加熱する請求項1から4のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項6】
本加熱工程は、湿度8から35%の範囲内にて行う請求項1から5のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項7】
本加熱工程は、湿度14から28%の範囲内にて行う請求項1から5のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項8】
本加熱工程は、湿度23から26%の範囲内にて行う請求項1から6のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項9】
本加熱工程は、温度摂氏160から240度の範囲で行う請求項1から8のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項10】
本加熱工程は、温度摂氏170から220度の範囲で行う請求項1から8のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項11】
本加熱工程は、温度摂氏180から200度の範囲で行う請求項1から8のいずれか一に記載の揚げ物の調理方法。
【請求項12】
スチームを発生させるボイラー機器内部の水温度を摂氏75度から95度に設定可能なスチーム発生器を備えたスチームコンベクションオーブン。
【請求項13】
加熱のための送風を正逆反転を繰り返すように制御可能な送風器を備えた請求項12に記載のスチームコンベクションオーブン。
【請求項14】
前記スチーム発生器は、加熱時の湿度を8から35%の範囲内で設定可能である請求項12または13に記載のスチームコンベクションオーブン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−268757(P2010−268757A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124778(P2009−124778)
【出願日】平成21年5月23日(2009.5.23)
【出願人】(507422884)株式会社 キュイジーヌ・ラボ (8)
【Fターム(参考)】