揮発性有機化合物を分解及び吸着する機能性壁紙
【課題】光照射時の光触媒による揮発性有機化合物の分解性能を高く維持しながら、光非照射時の吸着剤による揮発性有機化合物の吸着性能を発揮させることができる機能性壁紙を提供すること。
【解決手段】発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙。
【解決手段】発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁紙に関する。より詳しくは、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解及び吸着する機能性壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築仕上げでは、乾式工法の占める比率が非常に高く、特に室内の床・壁面・天井等においてはフローリング等の合板やパーティクルボード、ビニル壁紙、塩化ビニル床材などを内装材として用いた仕上げが多い。しかしながら、これらを内装材とする仕上げでは、通常、合板の接着部分に含まれるホルムアルデヒドやビニル材に含まれる可塑剤(フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、アジピン酸ジオクチル等)・難燃剤(トリクレジルホスフェート等)等の有害物質が室内に拡散するものである。住宅の密閉性が向上している昨今においては、これら有害物質の居住空間における濃度が高まりやすく、人体への悪影響が非常に懸念されている。
上述した所謂シックハウスの問題への対策として、さらに、ペット臭、生活臭などの問題への対策として、居住空間における有害な揮発性有機化合物の濃度を低下せしめる機能を有する建築用内装材が種々検討されている。特に、建築用内装材の中でも内装部材として最も大きな面積を有する壁面にそのような機能を持たせることが有効と考えられており、種々の壁紙が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には基材シートの表面に揮発性有機化合物を吸着する材料(ゼオライトなどの吸着剤)を含有する塗膜層を設けた壁紙が提案されており、特許文献2や3には光照射により空気中や水中等に存在する有機物や窒素酸化物を分解する材料(酸化チタンなどの光触媒)を含有する塗膜層を設けた壁紙が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の吸着剤層を設けた壁紙では、吸着剤が室内に揮発するホルムアルデヒト等の有害物質を物理的に吸着しており、その吸着能力には限界があるため、長期にわたって吸着効果を有効に発揮することが出来ない。さらに、吸着した有害物質を再放出して再汚染するおそれがあり、必ずしも満足すべき効果を期待できない。
一方、特許文献2や3に記載の光触媒層を設けた壁紙では、光が照射されている間はその光触媒機能が期待できるものの、夜間等の光が照射されてない時には、光触媒機能が作用しないという欠点を有する。
【0004】
特許文献4には、基材上に吸着剤と光触媒の混合物から構成される層を設けた壁紙が提案されている。特許文献4に記載の吸着剤−光触媒混合層を設けた壁紙では、光照射のない夜でも吸着剤による吸着性能が期待でき、光照射のある昼間は光触媒による分解性能を期待することができる。しかしながら、単一の層に光触媒と吸着剤を混合して含有させているため、光触媒を単独で含有させた場合と比較して、含有させることのできる光触媒量は減少し、光触媒による分解性能が減少するといった欠点がある。
さらに、特許文献2〜4に記載の壁紙では、光触媒を含む層が基材上に直接設けられているため、光触媒機能により基材中の樹脂成分が分解され、基材の劣化や光触媒粒子の脱落を招くなどのおそれがある。また、基材中に発泡層が設けられている場合には、発泡時のガスが光触媒に吸着し、性能発現速度を遅くする可能性がある。
特許文献5は、基材と光触媒層の間に無機質層を設けた壁紙が提案されている。しかしながら、特許文献5の壁紙も、特許文献2や3の壁紙同様、光触媒単独では空気中の有機物や窒素酸化物など汚染物質を積極的に吸着することは出来ず、さらに光照射のない夜間では分解性能が作用しないといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−310984号公報
【特許文献2】特開2000−225669号公報
【特許文献3】特開2002−155498号公報
【特許文献4】特開平9−300515号公報
【特許文献5】特開平10−180943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、光照射時の光触媒による揮発性有機化合物の分解性能を高く維持しながら、光非照射時の吸着剤による揮発性有機化合物の吸着性能を発揮させることができる機能性壁紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙、
(2)前記可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を更に有する、前記(1)に記載の機能性壁紙、
(3)前記中間層と前記可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を更に有する、前記(1)又は(2)に記載の機能性壁紙、
(4)前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の上面に、第1非発泡樹脂層を更に含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(5)前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の下面に、第2非発泡樹脂層を更に含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(6)前記壁紙基材と前記中間層との間に、絵柄模様層を更に有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(7)前記壁紙基材と前記中間層との間に、フィルム層を更に有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(8)前記壁紙基材と前記中間層との間に、前記壁紙基材から前記中間層の方向に向かって、絵柄模様層、接着層及びフィルム層をこの順に更に有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の機能性壁紙、及び
(9)前記フィルム層を構成する熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である、前記(7)又は(8)に記載の機能性壁紙、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の機能性壁紙は、光触媒による分解性能に吸着剤による吸着性能を加えることで、光照射時だけでなく光非照射時においても居住空間における揮発性有機化合物の濃度を低下させることができる。本発明の機能性壁紙においては、新規な層構成を採用することにより光触媒と吸着剤の利用効率を高め、光触媒による揮発性有機化合物の分解性能を従来よりも高く維持しながら、吸着剤による揮発性有機化合物の吸着性能を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例1で作製した壁紙を示す模式図である。
【図2】図2は実施例2で作製した壁紙を示す模式図である。
【図3】図3は実施例3で作製した壁紙を示す模式図である。
【図4】図4は実施例4で作製した壁紙を示す模式図である。
【図5】図5は実施例5で作製した壁紙を示す模式図である。
【図6】図6は実施例6で作製した壁紙を示す模式図である。
【図7】図7は実施例7で作製した壁紙を示す模式図である。
【図8】図8は実施例8で作製した壁紙を示す模式図である。
【図9】図9は実施例9で作製した壁紙を示す模式図である。
【図10】図10は実施例10で作製した壁紙を示す模式図である。
【図11】図11は実施例11で作製した壁紙を示す模式図である。
【図12】図12は実施例12で作製した壁紙を示す模式図である。
【図13】図13は比較例1で作製した比較用壁紙を示す模式図である。
【図14】図14は比較例2で作製した比較用壁紙を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の機能性壁紙(以後、単に「壁紙」とも呼ぶ)について説明する。
本発明の壁紙は、発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層は可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層は無機吸着剤を含有する。
【0011】
(1)壁紙基材
本発明の壁紙は壁紙基材を有する。壁紙基材は少なくとも発泡樹脂層を含み、必要に応じてさらに第1非発泡樹脂層、裏打ちシート層及び/又は第2非発泡樹脂層を含んでもよい。壁紙基材の好ましい層構成としては、裏打ちシート層/第1非発泡樹脂層/発泡樹脂層/第2非発泡樹脂層といった層構成(壁紙基材から中間層の方向に向かって、この順に)や、裏打ちシート層/発泡樹脂層といった層構成(壁紙基材から中間層の方向に向かって、この順に)が挙げられる。
【0012】
(1−1)発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は発泡樹脂層を含む。発泡樹脂層は、発泡剤と樹脂を含有する層(以後、「未発泡樹脂層」と記載する)が発泡することにより形成された層であり、壁紙に難燃性を付与することができる。
未発泡樹脂層に含まれる樹脂は、発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば特に制限されるものではなく、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ナイロン、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることできる。
【0013】
これらの中でも、環境保護の観点からはオレフィン系樹脂であることが好ましく、エチレン系樹脂であることがより好ましい。また、成膜性、柔軟性、低温での加工性、コスト等の観点からは塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0014】
エチレン系樹脂としては例えば、エチレン単独重合体樹脂(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のエチレン系共重合体樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。これらの樹脂は、後述する電離放射線を照射することにより、容易に樹脂架橋させることできる。これらの樹脂中では、EVA樹脂及びEMAA樹脂が好ましい。
エチレン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、ペンテン系樹脂、などが挙げられる。
【0015】
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂中の酢酸ビニル単位(共重合比率)は特に限定されるものではないが、5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい。なお、本明細書においてMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は特に限定されず、本発明の範囲を損なわない範囲で適宜設計することができる。
また、樹脂成分として、EMAA樹脂を用いる場合は、EMAA樹脂中のメタクリル酸単位(共重合比率)は、4〜20重量%程度であることが好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(JIS K 7210、190℃、2.16kg)は、用いる重合体の種類等によるが、通常は60〜200g/10分とすることが好ましい。特に、100〜200g/10分という高い範囲でも、良好な発泡状態を維持できるという点で有利である。
【0016】
本発明で使用する発泡剤は、化学発泡剤でも物理発泡剤でもよいが、化学発泡剤の方が好ましく、化学発泡剤の中でも熱分解型発泡剤が好ましい。
熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。
熱分解型発泡剤の配合量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率は、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であることから、熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
また、物理発泡剤としては、熱膨張型マイクロカプセルが挙げられ、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性液体膨張剤を塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー、メタアクリレート−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー等の熱可塑性高分子重合体殻中に内包したマイクロカプセルであって、平均直径が1〜100μmの範囲にあるようなものが利用可能である。
【0017】
未発泡樹脂層は、発泡剤、樹脂に加えて、セル調整剤、無機充填剤、顔料等の添加剤を含んでもよい。
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。該無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。該無機充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。該顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
発泡樹脂層の厚みについては、特に制限されず、所望の特性等に応じて適宜設定することができるが、製膜状態において(即ち、未発泡樹脂層の厚みで)30〜300μmが好ましく、発泡後の状態において(即ち、発泡樹脂層の厚みで)350〜1200μmが好ましい。
【0018】
(1−2)第1非発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は、発泡樹脂層の上面に、非発泡樹脂層(以後、後述の第2非発泡樹脂層と区別するため「第1非発泡樹脂層」と呼ぶ)を含んでもよい。第1非発泡樹脂層は、主として発泡樹脂層を保護すると共に、発泡樹脂層を形成する際の発泡工程で発泡ガス等の揮発成分による可視光型光触媒機能の低下(具体的には、酸化チタンなどの可視光型光触媒化合物の粒子への悪影響)を防止する機能を有する。
第1非発泡樹脂層を形成する樹脂としては、発泡樹脂層に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができる。尚、第1非発泡樹脂層に使用する樹脂は、発泡樹脂層に使用する樹脂種と同一でも異なってもよいが、第1非発泡樹脂層と発泡樹脂層との間の密着性を向上するために、同種類の樹脂もしくは樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0019】
前記樹脂成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組合せにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0020】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜15重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。非発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、3〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
前記樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。尚、メルトフローレート値(MFR)の測定条件は、発泡樹脂層の項に記載したのと同様である。
【0021】
発泡樹脂層/第1非発泡樹脂層としての好ましい組合せは、EVA樹脂/EVA樹脂、EMAA樹脂/EVA樹脂、EVA樹脂/EMAA樹脂、EMAA樹脂/EMAA樹脂、PE樹脂/PE樹脂が挙げられ、特にEVA樹脂/EMAA樹脂が好ましい。
【0022】
(1−3)裏打ちシート層
本発明の壁紙基材は、裏打ちシート層を含んでもよい。裏打ちシート層は、発泡樹脂層の下面に、又は後述する第2非発泡樹脂層の下面に設けられる。裏打ちシート層は特に限定されず、例えば、樹脂シート、紙等の繊維質シートなどが一般に使用できるが、紙等の繊維質シートが好ましく、具体的には、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
裏打ちシート層の坪量は特に限定されないが、50〜300g/m2程度が好ましく、50〜80g/m2程度がより好ましい。
【0023】
(1−4)第2非発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は、発泡樹脂層の下面に、非発泡樹脂層(以後、前述の第1非発泡樹脂層と区別するため「第2非発泡樹脂層」と呼ぶ)を含んでもよい。壁紙基材が裏打ちシート層を含む場合には、発泡樹脂層と裏打ちシート層との間に第2非発泡樹脂層を含んでよく、第2非発泡樹脂層が接着剤層として機能することにより、優れた密着性を得ることができる。
第2非発泡樹脂層としては、発泡樹脂層に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができるが、密着性の向上という観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体を好適に用いることができる。第2非発泡樹脂層は樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
第2非発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、3〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0024】
[壁紙基材の形成方法]
本発明の壁紙基材は、(ア)未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する工程、及び(イ)該未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する工程、を経て形成される。
未発泡樹脂層は工程(イ)にて発泡して発泡樹脂層を形成することから、未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材は工程(イ)にて発泡樹脂層を含む壁紙基材へと変化する。つまり、「発泡前壁紙基材」と「壁紙基材」は、発泡前の名称と発泡後の名称を便宜上区別したものである。
【0025】
(ア)未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する工程
発泡前壁紙基材の形成方法は特に限定されないが、例えば、Tダイ押出し機によって形成することができる。
未発泡樹脂層だけでなく第1非発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する場合には、2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、未発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物及び第1非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。
同様に、未発泡樹脂層、第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する場合には、未発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物、第1非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物、及び第2非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、3種3層を同時に押出し成膜・積層すればよい。
【0026】
裏打ちシート層を含む発泡前壁紙基材を形成するには、上記の方法で同時押出した積層体を、裏打ちシート層上に同時積層(成膜)すればよい。裏打ちシート層上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため裏打ちシート層と接着される。あるいは、予め同時成膜した積層体を用意して、それを裏打ちシート層上に載せて、熱ラミネートすることで接着させてもよい。
【0027】
未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物が無機充填剤を含有するときに、未発泡樹脂層を押出し成形により形成する場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、未発泡樹脂層に無機充填剤が含まれる場合には、上記第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層をそれぞれ形成する樹脂組成物を、未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物と共に同時押出し成形することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように未発泡樹脂層を2つの非発泡樹脂層(第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層)によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0028】
発泡前壁紙基材に、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、壁紙基材の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう)を用いて実施することもできる。
電子線照射を行う場合には、樹脂組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100質量部に対して0〜10質量部程度とすることが好ましく、特に1〜4質量部とすることがより好ましい。
【0029】
(イ)該未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する工程
未発泡樹脂層を発泡させる方法は、発泡剤の種類に応じて公知の方法から適宜選択されるものであり、特に限定されない。
発泡剤として熱分解型発泡剤を用いた場合、加熱条件は熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されないが、加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
なお、工程(イ)は、可視光型光触媒層形成用の分散液を塗布した後に行うことが好ましい。可視光型光触媒層を形成するために行う分散液の乾燥と、未発泡樹脂層の発泡とを同時に行なえることで製造工程が少なくなり、コストを低減できる。また、発泡後に、絵柄模様層、中間層、可視光型光触媒層を形成した場合、発泡樹脂層の凹凸の影響により、前記層を綺麗に塗付することが難しかったが、発泡前に前記層を形成することで綺麗に塗付することが可能となる。
【0030】
(2)中間層
本発明の壁紙は中間層を有し、該中間層は無機吸着剤を含有する。無機吸着剤は夜間等の光非照射時にも、大気中の有機物、窒素酸化物などを積極的に吸着することが出来る。
本発明においては、無機吸着剤を含有する中間層と、可視光型光触媒化合物を含有する可視光型光触媒層とが別個の層として設けられ、かつ、該中間層が該可視光型光触媒層の下に位置することで、可視光型光触媒化合物の分解性能を高く維持しながら、吸着剤の吸着性能を発揮させることを可能にしている。具体的には、以下の通りである。
中間層の無機吸着剤は、発泡樹脂層を形成する際の発泡工程で生じる発泡ガス等の揮発成分を吸着することで、当該揮発成分による光触媒機能の低下を防止することができる。さらに、光非照射時にも吸着性能を発揮することで、光非照射時にも大気中の有機物、窒素酸化物などを積極的に吸着することが出来る
可視光型光触媒層が壁紙基材又は絵柄模様層の上に直接設けられると、それらの層に存在する樹脂等の有機物の分解に光触媒機能が消費され、光触媒機能が低下するおそれがある。また、当該分解によって壁紙基材や絵柄模様層が劣化してしまったり、密着性が低下してしまったりするおそれがある。特に、意匠性や密着性向上のため、エンボス加工などを施した場合には、可視光型光触媒化合物が可視光型光触媒層の下に位置する絵柄模様層や壁紙基材に埋没しやすく、これらの問題が生じやすい。本発明では、可視光型光触媒層と壁紙基材又は絵柄模様層との間に中間層を設けることによって、これらの問題が生じるのを抑制することができる。
可視光型光触媒層は中間層の上に位置しているため、照射光が光触媒化合物に十分に届き、光触媒性能を発揮することが出来る。
【0031】
中間層は、無機吸着剤を無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料に添加させてなるが、光触媒機能の持続性の観点から無機系材料を用いることが好ましい。本発明の中間層中における無機吸着剤の含有量は、特に限定される訳ではないが、5〜95質量%程度であり、密着性及び吸着性の最適化の観点から30〜70質量%が好ましい。
無機系材料としては、例えば、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
有機・無機ハイブリッド材料としては、公知、市販のものが使用できるが、例えば、石原産業(株)製のアンダーコート剤「STK−102」を挙げることができる。なお、有機・無機ハイブリッド材料を用いた場合、材料同士の相性から、無機成分が可視光型光触媒層側へ、有機成分が壁紙基材側へ偏在するので、光触媒機能の低下を当該無機成分によって抑制することができる。
【0032】
無機吸着剤としては、例えば、ゼオライト、リン酸アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、アミン系化合物を担持した無機塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。吸着性能の観点から、モルデナイト型、Y型、ZSM−5型ゼオライトが好ましく、水素イオン交換したZSM−5型ゼオライト(例えば、東ソー製HSZ−800)がより好ましい。
中間層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。なお、本明細書において「塗布量」とは、特に断りの無い限り、乾燥後の重量を指す。
【0033】
[中間層の形成方法]
本発明の中間層は、発泡前壁紙基材上に、中間層コーティング液を塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。壁紙基材上に中間層コーティング液を塗布(すなわち、発泡後に中間層コーティング液を塗布)してもよいが、発泡樹脂層の凹凸の影響により中間層を綺麗に塗付することが難しくなるため、発泡前壁紙基材上に中間層コーティング液を塗布(すなわち、発泡前に中間層コーティング液を塗布)する方が好ましい。
中間層コーティング液は、上述した無機吸着剤及び無機系材料若しくは有機・無機ハイブリッド系材料と、溶媒とを含む。前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
本発明の中間層コーティング液を用いて中間層を形成するに際しては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなど従来公知の方法により中間層コーティング液を塗布し、その後、中間層コーティング液中の溶媒を除去しうる温度で加熱すればよい。
【0034】
(3)可視光型光触媒層
本発明の壁紙は可視光型光触媒層を有し、該可視光型光触媒層は可視光型光触媒化合物(以後、単に「光触媒化合物」と呼ぶこともある)を含有する。
光触媒化合物としては、可視光線により光触媒作用を奏する化合物であれば特に制限ないが、蛍光灯による光照射に対して光触媒活性を示す化合物であることが好ましい。詳しくは、波長約430nm〜約830nmの光照射に対して光触媒活性を示す化合物が好ましい。
光触媒化合物の具体例としては、特開2007−268523号公報に開示されているように、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh,Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などを挙げることができる。これらの中でもアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線ないし蛍光灯の照射で触媒活性を示すものとしてアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
可視光応答性を有する酸化チタン粒子の製造法としては、特開2001−278625号公報、特開2001−302241号公報、特開2003−275600号公報等に開示されている製造方法を使用することができる。
本発明の可視光型光触媒層中における光触媒化合物の含有量は5〜95質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の可視光型光触媒層は、光触媒化合物をバインダーに添加させてなる。可視光型光触媒層のバインダーとして樹脂組成物(有機バインダー)を使用すると、可視光型光触媒化合物は樹脂組成物中に分散するか、樹脂によりコートされた状態で存在するので、可視光型光触媒化合物が十分に露出しておらず、可視光型光触媒機能が十分に発現しないおそれがある。従って、本発明においては、可視光型光触媒層のバインダーとして有機バインダーを使用するよりは無機バインダーを使用して、多孔質層として、光触媒化合物を可視光型光触媒層の表面に多く露出させることが望ましい。
無機バインダーの具体例としては、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
本発明の可視光型光触媒層中におけるバインダーの含有量は1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の可視光型光触媒層は、更に無機吸着剤を含有してもよい。可視光型光触媒層に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
可視光型光触媒層にも無機吸着剤を含有させた場合、夜間等の光非照射時における大気中の有機物、窒素酸化物などの吸着性能をさらに向上させることができるという利点がある。一方で、可視光型光触媒層の無機バインダーが保持できる物質の量は無限ではないため、無機吸着剤を添加量に相当する量の可視光型光触媒化合物を減少させる必要が生じる場合がある。そのような場合には、光照射時の揮発性有機化合物の分解性能が低下してしまうという欠点がある。したがって、可視光型光触媒層における光触媒化合物と無機吸着剤のそれぞれの含有量は、上記利点と上記欠点を考慮しながら、壁紙の使用環境に応じて、適宜決定される。
光照射時の揮発性有機化合物の分解性能に重点を置く場合には、可視光型光触媒層にはおける無機吸着剤の含有量は、可視光型光触媒化合物100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下であり、特に好ましくは0質量部である。
【0037】
本発明の可視光型光触媒層は、さらに艶消し剤を含有してもよい。可視光型光触媒層に艶消し剤を添加することで、壁紙に艶消し感を付与することができる。艶消し剤の粒径は0.5〜7μmが好ましく、1〜6.5μmであることがより好ましく、2〜5μmであることが特に好ましい。0.5μmより小さいと、光触媒層の凹凸が不十分になり艶消し効果が十分に得られないおそれがある。また、粒子径が7μmより大きいと、塗布性が低下するおそれ、可視光型光触媒層膜の厚さに比して粒子径が過剰となり艶消し剤が脱落するおそれ、及び艶消し剤の下側(光が届きにくいエリア)に入り込む光触媒化合物の量が増えて光触媒機能が低下するおそれがある。
艶消し剤の材料は、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ砂、シラスバルーンのような無機質中空体を主組成とした粒子が挙げられる。光触媒化合物の酸化分解性能を考慮した場合、できる限り有機成分が少ない材料であることが望ましく、特には、吸油性の高いシリカが好ましい。
艶消し剤の含有量は特に限定はされないが、可視光型光触媒化合物100質量部に対して5〜100質量部が好ましい。
【0038】
また、可視光型光触媒層には、必要に応じて、各種添加剤を分散体として含有させてもよい。
このような添加剤としては、例えば、非晶質シリカ、シリカゾルのような珪素酸化物、非晶質アルミナ、アルミナゾルのようなアルミニウムの酸化物や水酸化物、ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、ならびにTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の水酸化物およびこれらの金属元素の非晶質酸化物などが挙げられる。
これら添加物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
可視光型光触媒層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。
【0039】
[可視光型光触媒層の形成方法]
本発明の可視光型光触媒層は、例えば、可視光型光触媒化合物及び無機バインダーを溶媒に分散させた分散液(以後、「可視光型光触媒分散液」とも呼ぶ)を、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート、又はハケ塗りなどの方法により中間層上に塗布し、その後、分散液中の溶媒を除去しうる温度で加熱する方法が挙げられるが本発明は該方法に限定されるものではない。
可視光型光触媒分散液は、中間層上に直接塗布してもよいが、光触媒層転写フィルムを作製して転写法によって転写することも可能である。塗布する手段は、例えば、前述した通りのグラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。
その後、溶媒を除去しうる程度の温度で加熱乾燥して溶媒を除去する。乾燥が完了した後、30〜60℃程度の温度で所要時間エージングを行うこともできる。これにより、コーティングした可視光型光触媒層の剥離強度を向上させることができる。
【0040】
本発明の可視光型光触媒分散液中に存在する光触媒化合物は、粒子状でも繊維状でもよい。粒子状の場合の平均一次粒子径通常500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下であるのが好ましく、また、その平均二次粒子径は通常15μm以下であるのが好ましい。
本発明の可視光型光触媒分散液中に占める光触媒化合物の含有量は、用途に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、通常、下限は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、上限は30重量%以下になるように設定される。なお、光触媒化合物の含有量(すなわち分散液中の粉末の量)が多くなるほど、後述する混合(特に初期混合)を効率的に行うことができる。このことを考慮して、仕込み時には光触媒化合物の含有量が所定量よりも多くなるような設定にしておき、後工程で溶媒を添加して希釈することにより所望の含有量となるようにすることもできる。
【0041】
本発明における水系溶媒は、水を主成分とし、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
【0042】
本発明の可視光型光触媒分散液を得るに際しては、前記混合で得られた混合物に、さらに必要に応じて、粗大粒子の除去、光触媒化合物含有量の調整(希釈等)、pH調整などの操作を施すことができる。これら操作の具体的手法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用すればよい。
本発明の可視光型光触媒分散液を保管する際には、光が当たらない条件下で保管することが好ましく、例えば、暗室内に保管するか、もしくは、紫外線および可視光線の透過率が各々10%以下の遮光性容器に入れて保管することが好ましい。
【0043】
(4)パターン層
本発明の壁紙は、可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を有してもよい。前記パターン層を設けることで、壁紙に更なる吸着性能、分解性能を付与することができる。
パターン層中に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
パターン層中に含有される可視光型光触媒化合物としては、可視光型光触媒層に含有される可視光型光触媒化合物として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
パターン層のマトリックス材料としては、中間層を形成する無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料として例示した材料が挙げられる。
パターン層中における無機吸着剤の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
パターン層中における光触媒化合物の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
パターン層のパターン形状としてはメッシュ形状やストライプ形状が挙げられるが、それらに限定されるものではない。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。
可視光型光触媒層の光触媒機能を阻害しないようにするためには、パターン層による可視光型光触媒層の被覆率は50%以下であることが好ましい。パターンの線幅は10〜200μm、線間ピッチは10〜200μmとすることが好ましい。
パターン層の塗布量は、パターン形状や被覆率により異なるが、0.2〜3g/m2程度とすることが好ましい。
(5)第2中間層
本発明の壁紙は、中間層と可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を有してもよい。第2中間層を設けることで、壁紙に更なる吸着性能、分解性能を付与することができる。
第2中間層中に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
第2中間層中に含有される可視光型光触媒化合物としては、可視光型光触媒層に含有される可視光型光触媒化合物として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
第2中間層のマトリックス材料としては、中間層を形成する無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料として例示した材料が挙げられる。
第2中間層中における無機吸着剤の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
第2中間層中における光触媒化合物の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
第2中間層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。
【0044】
(6)絵柄模様層
本発明の壁紙は、壁紙基材と中間層との間に、更に絵柄模様層を有してもよい。絵柄模様層は、壁紙に意匠性を付与することができる。絵柄模様層の絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。該絵柄模様は、本発明の壁紙の種類に応じて選択できる。絵柄模様層は、例えば、壁紙基材の表面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0045】
前記着色剤としては、例えば、前記の未発泡樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。バインダー樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0046】
前記溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0047】
(7)フィルム層
本発明の壁紙は、壁紙基材と中間層の間にフィルム層を更に有してもよい。フィルム層より下側(壁紙基材側)に位置する発泡樹脂層等に光触媒が埋没するのを防ぎ、発泡樹脂層等を光触媒による分解から保護し、光触媒の活性の低下を抑制することができる。即ち、壁紙に優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与するものである。さらに、耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与することも可能である。
【0048】
フィルム層を構成する樹脂としては、特に制限はないが、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂単体及び各種共重合体樹脂を好ましく挙げることができる。これらのなかでも、本発明の壁紙に耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与し、エンボス加工を施す場合には優れた凹凸追従性を付与し、燃焼時の煙濃度が少なく、かつ製造コストを安価におさえる観点から、オレフィン系樹脂が好ましく、オレフィンの単独重合体樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂がより好ましい。
【0049】
フィルム層に用いられるフィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、5〜15μmがより好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、該フィルムの製造上の制約をうけることなく、またエンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保することができる。
【0050】
(8)接着剤層
本発明の壁紙は、接着剤層を有してもよい。フィルム層とその下の層(例えば、絵柄模様層や壁紙基材)との接着性が低い場合、例えば上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを用いた場合は、必要に応じて両層間に接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層に用いられる接着剤としては、特に制限はないが、製造工程の観点より感熱接着剤が好ましい。感熱接着剤とは、一般に常温では固体であり、加熱により溶融又は軟化して接着性を発現し、冷却すると固化して強固に接着する性質を有する熱可塑性樹脂を主要成分とする接着剤のことをいう。これを適当な溶剤に溶解、もしくは加温により溶融させて、被接着体の一方又は両方の接着面に塗布し、両者を重ね合わせて加熱加圧することにより接着させるものである。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系共重合体樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂、オレフィン−αオレフィン系共重合体樹脂などの易接着樹脂単体、及びオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、フィルム層の主成分となる熱可塑性樹脂とのブレンド品などが好ましく挙げられる。
【0051】
接着剤層は、層間接着力の向上を図ることを目的に、必要に応じて裏打ちシート層と発泡樹脂層との層間に設けることもできる。また、接着剤層を設ける以外に、層間接着力を向上させるために、所望により、裏打ちシート層の表面に片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0052】
(9)プライマ層
本発明の壁紙はプライマ層を有してもよい。フィルム層とその上の層(例えば、中間層)との密着性を向上させる目的で、これらの層の間に必要に応じてプライマ層を設けることが好ましい。ここで好ましく用いられる樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタン−アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。また、層間接着力の強化の目的で、壁紙基材とフィルム層との層間に、プライマ層を設けることもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法になんら限定されるものではない。
【0054】
(1)壁紙及び比較用壁紙の作成
[実施例1]
公知のTダイ押出機を用いて、第1非発泡樹脂層/未発泡樹脂層/第2非発泡樹脂層の順に、各層の厚みが15μm/100μm/10μmになるように製膜して3層から成る積層体Aを得た。
第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層に用いた樹脂と、未発泡樹脂層に用いた樹脂組成物は以下の通りである。
(a)第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層に用いた樹脂:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)、100質量部
(b)未発泡樹脂層に用いた樹脂組成物:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)、100質量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3)、4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH)、30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108)、20質量部
・光安定剤((株)ADEKA製、商品名:OF−101)、1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702)、1質量部
【0055】
次に、前記積層体Aの第2非発泡層樹脂層に裏打ちシート層(米秤量60g/m2、興人(株)製、WK−FKKD)を積層して積層体B(発泡前壁紙基材)を得た。その後、積層体Aの表面強度の向上を図る目的で、積層体Bに対して200kV、5Mradにて電子線照射を行なった。
次いで、グラビア印刷により、積層体Bの第1非発泡樹脂層面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様(絵柄模様層)を印刷して積層体Cを得た。
【0056】
積層体Cの絵柄模様層の上に中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Dを得た後、当該積層体Dの中間層の上に可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Eを得た。
前記中間層コーティング液の組成は以下の通りである。
・プレコート剤(コルコート(株)製、エチルシリケート40(加水分解液))、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
前記可視光型光触媒コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
【0057】
その後、積層体Eを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図1に示す。壁紙100は、裏打ちシート層111、第2非発泡樹脂層112、発泡樹脂層113並びに第1非発泡樹脂層114を含む壁紙基材110上に、絵柄模様層120、無機吸着剤130aを含有する中間層130、及び光触媒化合物140bを含有する可視光型光触媒層140を有している。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様に積層体Eを作製した後、その上にパターン層コーティング液を、グラビア印刷によって、乾燥後の重量が0.5g/m2、メッシュ形状のパターン(被覆率:50%)が形成するように塗布して積層体Fを得た。
前記パターン層コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
その後、積層体Fを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図2に示す。壁紙200は、裏打ちシート層211、第2非発泡樹脂層212、発泡樹脂層213並びに第1非発泡樹脂層214を含む壁紙基材210上に、絵柄模様層220、無機吸着剤230aを含有する中間層230、光触媒化合物240bを含有する可視光型光触媒層240、及び無機吸着剤250a並びに光触媒化合物250bを含有するパターン層250を有している。
【0059】
[実施例3]
実施例1と同様に積層体Dを作製した後、積層体Dの中間層の上に第2中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して、さらにその上に実施例1と同じ組成の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Gを得た。
前記第2中間層コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
その後、積層体Gを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図3に示す。壁紙300は、裏打ちシート層311、第2非発泡樹脂層312、発泡樹脂層313並びに第1非発泡樹脂層314を含む壁紙基材310上に、絵柄模様層320、無機吸着剤330aを含有する中間層330、無機吸着剤360a並びに光触媒化合物360bを含有する第2中間層360、及び光触媒化合物340bを含有する可視光型光触媒層340を有している。
【0060】
[実施例4]
図4に示す壁紙を以下に記載する方法で作製した。
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
得られた壁紙の模式図を図4に示す。壁紙400は、裏打ちシート層411、第2非発泡樹脂層412、発泡樹脂層413並びに第1非発泡樹脂層414を含む壁紙基材410上に、絵柄模様層420、無機吸着剤430aを含有する中間層430、及び無機吸着剤440aと光触媒化合物440bを含有する可視光型光触媒層440を有している。
【0061】
[実施例5]
実施例1と同様に積層体Cを作製した後、積層体Cを230℃の加熱発泡炉内で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させ、発泡樹脂層が形成された積層体Hを得た。
一方で、フィルム層として予め接着剤が塗布されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂((株)クラレ製、商品名:エバールフィルムHF−ME、厚み:12μm、エチレン含有量:44mol%)を用い、該フィルム層の上面(接着剤が塗布されていない側)に実施例1と同じ組成の中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体aを得た。さらに、積層体aの中間層の上に実施例1と同様の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体bを得た。
次いで、積層体Hを積層体bと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図5に示す。壁紙500は、裏打ちシート層511、第2非発泡樹脂層512、発泡樹脂層513並びに第1非発泡樹脂層514を含む壁紙基材510上に、絵柄模様層520、フィルム層570、無機吸着剤530aを含有する中間層530、及び光触媒化合物540bを含有する可視光型光触媒層540を有している。
【0062】
[実施例6]
実施例5と同様にして積層体Hを作製した。
一方で、実施例5と同様に積層体bを作製した後、その上に実施例2と同じ組成のパターン層コーティング液をグラビア印刷によって、乾燥後の重量が0.5g/m2、メッシュ形状のパターン(被覆率:50%)が形成するように塗布して積層体cを得た。
次いで、積層体Hを積層体cと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図6に示す。壁紙600は、裏打ちシート層611、第2非発泡樹脂層612、発泡樹脂層613並びに第1非発泡樹脂層614を含む壁紙基材610上に、絵柄模様層620、フィルム層670、無機吸着剤630aを含有する中間層630、光触媒化合物640bを含有する可視光型光触媒層640、及び無機吸着剤650a並びに光触媒化合物650bを含有するパターン層650を有している。
【0063】
[実施例7]
実施例5と同様にして積層体Hを作製した。
一方で、実施例5と同様にして、積層体aを作製した後、積層体aの中間層の上に実施例3と同じ組成の第2中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して、さらにその上に実施例1と同じ組成の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体dを得た。
次いで、積層体Hを積層体dと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図7に示す。壁紙700は、裏打ちシート層711、第2非発泡樹脂層712、発泡樹脂層713並びに第1非発泡樹脂層714を含む壁紙基材710上に、絵柄模様層720、フィルム層770、無機吸着剤730aを含有する中間層730、無機吸着剤760a並びに光触媒化合物760bを含有する第2中間層760、及び光触媒化合物740bを含有する可視光型光触媒層740を有している。
【0064】
[実施例8]
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例5と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
得られた壁紙の模式図を図8に示す。壁紙800は、裏打ちシート層811、第2非発泡樹脂層812、発泡樹脂層813並びに第1非発泡樹脂層814を含む壁紙基材810上に、絵柄模様層820、フィルム層870、無機吸着剤830aを含有する中間層830、及び無機吸着剤840aと光触媒化合物840bを含有する可視光型光触媒層840を有している。
【0065】
[実施例9]
裏打ちシート層として、米秤量60g/m2の壁紙用裏打紙(興人(株)製、WK−FKKD)を用い、該裏打ちシート層上に下記の発泡樹脂組成物をコンマコート法によりコーティングして未発泡樹脂層を形成した。次いで、前記未発泡樹脂層の上に、アクリル系樹脂をバインダーとし、カーボンブラックと弁柄を着色剤とするインキを用いて、塗布量3g/m2にてグラビア印刷を施して絵柄模様層を形成し、積層体Iを作製した。さらに、積層体Iを230℃の加熱発泡炉内で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させ、発泡樹脂層が形成された積層体Jを得た。
発泡樹脂組成物組成
塩ビレジン(東ソー製、商品名:R−720):100質量部
炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH):100質量部
発泡剤(大塚化学製、商品名:ユニフォームAZウルトラ):3質量部
防カビ剤(タイショウテクノス製、商品名:ビオサイト7663DS):0.2質量部
光安定剤(アデカアーガス化学製、商品名:O−1305):5質量部
希釈剤(シェル石油製、商品名:シェルゾールS):20質量部
可塑剤(フタル酸ジイソノニル):38質量部
一方で、実施例5と同様にして積層体bを作製した。
次いで、積層体Jを積層体bと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図9に示す。壁紙900は、裏打ちシート層911並びに発泡樹脂層913を含む壁紙基材910上に、絵柄模様層920、フィルム層970、無機吸着剤930aを含有する中間層930、及び光触媒化合物940bを含有する可視光型光触媒層940を有している。
【0066】
[実施例10]
実施例9と同様の方法で積層体Jを作製した。
一方で、実施例6と同様の方法で積層体cを作製した。
次いで、積層体Jを積層体cと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図10に示す。壁紙1000は、裏打ちシート層1011並びに発泡樹脂層1013を含む壁紙基材1010上に、絵柄模様層1020、フィルム層1070、無機吸着剤1030aを含有する中間層1030、光触媒化合物1040bを含有する可視光型光触媒層1040、及び無機吸着剤1050a並びに光触媒化合物1050bを含有するパターン層1050を有している。
【0067】
[実施例11]
実施例9と同様の方法で積層体Jを作製した。
一方で、実施例7と同様の方法で積層体dを作製した。
次いで、積層体Jを積層体dと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図11に示す。壁紙1100は、裏打ちシート層1111並びに発泡樹脂層1113を含む壁紙基材1110上に、絵柄模様層1120、フィルム層1170、無機吸着剤1130aを含有する中間層1130、無機吸着剤1160a並びに光触媒化合物1160bを含有する第2中間層1160、及び光触媒化合物1140bを含有する可視光型光触媒層1140を有している。
【0068】
[実施例12]
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例9と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部 得られた壁紙の模式図を図12に示す。壁紙1200は、裏打ちシート層1211並びに発泡樹脂層1213を含む壁紙基材1210上に、絵柄模様層1220、フィルム層1270、無機吸着剤1230aを含有する中間層1230、及び無機吸着剤1240aと光触媒化合物1240bを含有する可視光型光触媒層1240を有している。
【0069】
[比較例1]
中間層コーティング液の組成をコルコート(株)製、エチルシリケート40(加水分解液)のみ(無機吸着剤の添加無し)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較用壁紙を得た。
得られた比較用壁紙の模式図を図13に示す。比較用壁紙1300は、裏打ちシート層1311、第2非発泡樹脂層1312、発泡樹脂層1313並びに第1非発泡樹脂層1314を含む壁紙基材1310上に、絵柄模様層1320、比較用中間層1380、及び光触媒化合物1340bを含有する可視光型光触媒層1340を有している。比較用壁紙1300においては、比較用中間層1380は無機吸着剤を含有していない。
【0070】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で積層体Bに布目模様(絵柄模様層)の印刷まで行った後、当該絵柄模様層の上に、以下の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Kを得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
その後、積層体Kを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、比較用壁紙を得た。
得られた比較用壁紙の模式図を図14に示す。比較用壁紙1400は、裏打ちシート層1411、第2非発泡樹脂層1412、発泡樹脂層1413並びに第1非発泡樹脂層1414を含む壁紙基材1410上に、絵柄模様層1420、及び無機吸収剤1440a並びに可視光型光触媒1440bを含有する可視光型光触媒層1440を有している。比較用壁紙1400は、無機吸収剤を含有する中間層を有していない。
【0071】
(2)壁紙の性能評価
実施例1〜12で得た壁紙及び比較例1〜2で得た比較用壁紙について、以下の通り性能評価を行った。
壁紙試験片(10cm×10cm)を、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、1Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕をテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cm2で16時間初期化処理をした。その後、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバッグ内に送り込み、以下の2通りの条件で測定した。
条件1:光照射無しで1時間静置後のアセトアルデヒド濃度を測定、
条件2:蛍光灯6000lxを照射し1時間後のアセトアルデヒド濃度を測定。
テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。また、ブランクとして中間層、光触媒層のない壁紙を上記テドラーバック内に挿入し、上記の2通りの条件で測定を実施した。
【0072】
実施例1〜12、比較例1〜2、ブランクの評価結果を以下の表1に示す。
【表1−1】
【表1−2】
【符号の説明】
【0073】
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200 壁紙
1300,1400 比較用壁紙
110,210,310,410,510,610,710,810,910,1010,1110,1210,1310,1410 壁紙基材
111,211,311,411,511,611,711,811,911,1011,1111,1211,1311,1411 裏打ちシート層
112,212,312,412,512,612,712,812,1312,1412 第2非発泡樹脂層
113,213,313,413,513,613,713,813,913,1013,1113,1213,1313,1413 発泡樹脂層
114,214,314,414,514,614,714,814,1314,1414 第1非発泡樹脂層
120,220,320,420,520,620,720,820,920,1020,1120,1220,1320,1420 絵柄模様層
130,230,330,430,530,630,730,830,930,1030,1130,1230 中間層
140,240,340,440,540,640,740,840,940,1040,1140,1240,1340,1440 可視光型光触媒層250,650,1050 パターン層
360,760,860 第2中間層
570,670,770,870,970,1070,1170,1270 フィルム層
1380 比較用中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は壁紙に関する。より詳しくは、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解及び吸着する機能性壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築仕上げでは、乾式工法の占める比率が非常に高く、特に室内の床・壁面・天井等においてはフローリング等の合板やパーティクルボード、ビニル壁紙、塩化ビニル床材などを内装材として用いた仕上げが多い。しかしながら、これらを内装材とする仕上げでは、通常、合板の接着部分に含まれるホルムアルデヒドやビニル材に含まれる可塑剤(フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、アジピン酸ジオクチル等)・難燃剤(トリクレジルホスフェート等)等の有害物質が室内に拡散するものである。住宅の密閉性が向上している昨今においては、これら有害物質の居住空間における濃度が高まりやすく、人体への悪影響が非常に懸念されている。
上述した所謂シックハウスの問題への対策として、さらに、ペット臭、生活臭などの問題への対策として、居住空間における有害な揮発性有機化合物の濃度を低下せしめる機能を有する建築用内装材が種々検討されている。特に、建築用内装材の中でも内装部材として最も大きな面積を有する壁面にそのような機能を持たせることが有効と考えられており、種々の壁紙が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には基材シートの表面に揮発性有機化合物を吸着する材料(ゼオライトなどの吸着剤)を含有する塗膜層を設けた壁紙が提案されており、特許文献2や3には光照射により空気中や水中等に存在する有機物や窒素酸化物を分解する材料(酸化チタンなどの光触媒)を含有する塗膜層を設けた壁紙が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の吸着剤層を設けた壁紙では、吸着剤が室内に揮発するホルムアルデヒト等の有害物質を物理的に吸着しており、その吸着能力には限界があるため、長期にわたって吸着効果を有効に発揮することが出来ない。さらに、吸着した有害物質を再放出して再汚染するおそれがあり、必ずしも満足すべき効果を期待できない。
一方、特許文献2や3に記載の光触媒層を設けた壁紙では、光が照射されている間はその光触媒機能が期待できるものの、夜間等の光が照射されてない時には、光触媒機能が作用しないという欠点を有する。
【0004】
特許文献4には、基材上に吸着剤と光触媒の混合物から構成される層を設けた壁紙が提案されている。特許文献4に記載の吸着剤−光触媒混合層を設けた壁紙では、光照射のない夜でも吸着剤による吸着性能が期待でき、光照射のある昼間は光触媒による分解性能を期待することができる。しかしながら、単一の層に光触媒と吸着剤を混合して含有させているため、光触媒を単独で含有させた場合と比較して、含有させることのできる光触媒量は減少し、光触媒による分解性能が減少するといった欠点がある。
さらに、特許文献2〜4に記載の壁紙では、光触媒を含む層が基材上に直接設けられているため、光触媒機能により基材中の樹脂成分が分解され、基材の劣化や光触媒粒子の脱落を招くなどのおそれがある。また、基材中に発泡層が設けられている場合には、発泡時のガスが光触媒に吸着し、性能発現速度を遅くする可能性がある。
特許文献5は、基材と光触媒層の間に無機質層を設けた壁紙が提案されている。しかしながら、特許文献5の壁紙も、特許文献2や3の壁紙同様、光触媒単独では空気中の有機物や窒素酸化物など汚染物質を積極的に吸着することは出来ず、さらに光照射のない夜間では分解性能が作用しないといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−310984号公報
【特許文献2】特開2000−225669号公報
【特許文献3】特開2002−155498号公報
【特許文献4】特開平9−300515号公報
【特許文献5】特開平10−180943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、光照射時の光触媒による揮発性有機化合物の分解性能を高く維持しながら、光非照射時の吸着剤による揮発性有機化合物の吸着性能を発揮させることができる機能性壁紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙、
(2)前記可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を更に有する、前記(1)に記載の機能性壁紙、
(3)前記中間層と前記可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を更に有する、前記(1)又は(2)に記載の機能性壁紙、
(4)前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の上面に、第1非発泡樹脂層を更に含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(5)前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の下面に、第2非発泡樹脂層を更に含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(6)前記壁紙基材と前記中間層との間に、絵柄模様層を更に有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(7)前記壁紙基材と前記中間層との間に、フィルム層を更に有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の機能性壁紙、
(8)前記壁紙基材と前記中間層との間に、前記壁紙基材から前記中間層の方向に向かって、絵柄模様層、接着層及びフィルム層をこの順に更に有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の機能性壁紙、及び
(9)前記フィルム層を構成する熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である、前記(7)又は(8)に記載の機能性壁紙、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の機能性壁紙は、光触媒による分解性能に吸着剤による吸着性能を加えることで、光照射時だけでなく光非照射時においても居住空間における揮発性有機化合物の濃度を低下させることができる。本発明の機能性壁紙においては、新規な層構成を採用することにより光触媒と吸着剤の利用効率を高め、光触媒による揮発性有機化合物の分解性能を従来よりも高く維持しながら、吸着剤による揮発性有機化合物の吸着性能を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例1で作製した壁紙を示す模式図である。
【図2】図2は実施例2で作製した壁紙を示す模式図である。
【図3】図3は実施例3で作製した壁紙を示す模式図である。
【図4】図4は実施例4で作製した壁紙を示す模式図である。
【図5】図5は実施例5で作製した壁紙を示す模式図である。
【図6】図6は実施例6で作製した壁紙を示す模式図である。
【図7】図7は実施例7で作製した壁紙を示す模式図である。
【図8】図8は実施例8で作製した壁紙を示す模式図である。
【図9】図9は実施例9で作製した壁紙を示す模式図である。
【図10】図10は実施例10で作製した壁紙を示す模式図である。
【図11】図11は実施例11で作製した壁紙を示す模式図である。
【図12】図12は実施例12で作製した壁紙を示す模式図である。
【図13】図13は比較例1で作製した比較用壁紙を示す模式図である。
【図14】図14は比較例2で作製した比較用壁紙を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の機能性壁紙(以後、単に「壁紙」とも呼ぶ)について説明する。
本発明の壁紙は、発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層は可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層は無機吸着剤を含有する。
【0011】
(1)壁紙基材
本発明の壁紙は壁紙基材を有する。壁紙基材は少なくとも発泡樹脂層を含み、必要に応じてさらに第1非発泡樹脂層、裏打ちシート層及び/又は第2非発泡樹脂層を含んでもよい。壁紙基材の好ましい層構成としては、裏打ちシート層/第1非発泡樹脂層/発泡樹脂層/第2非発泡樹脂層といった層構成(壁紙基材から中間層の方向に向かって、この順に)や、裏打ちシート層/発泡樹脂層といった層構成(壁紙基材から中間層の方向に向かって、この順に)が挙げられる。
【0012】
(1−1)発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は発泡樹脂層を含む。発泡樹脂層は、発泡剤と樹脂を含有する層(以後、「未発泡樹脂層」と記載する)が発泡することにより形成された層であり、壁紙に難燃性を付与することができる。
未発泡樹脂層に含まれる樹脂は、発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば特に制限されるものではなく、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ナイロン、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることできる。
【0013】
これらの中でも、環境保護の観点からはオレフィン系樹脂であることが好ましく、エチレン系樹脂であることがより好ましい。また、成膜性、柔軟性、低温での加工性、コスト等の観点からは塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0014】
エチレン系樹脂としては例えば、エチレン単独重合体樹脂(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のエチレン系共重合体樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。これらの樹脂は、後述する電離放射線を照射することにより、容易に樹脂架橋させることできる。これらの樹脂中では、EVA樹脂及びEMAA樹脂が好ましい。
エチレン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、ペンテン系樹脂、などが挙げられる。
【0015】
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂中の酢酸ビニル単位(共重合比率)は特に限定されるものではないが、5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい。なお、本明細書においてMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は特に限定されず、本発明の範囲を損なわない範囲で適宜設計することができる。
また、樹脂成分として、EMAA樹脂を用いる場合は、EMAA樹脂中のメタクリル酸単位(共重合比率)は、4〜20重量%程度であることが好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(JIS K 7210、190℃、2.16kg)は、用いる重合体の種類等によるが、通常は60〜200g/10分とすることが好ましい。特に、100〜200g/10分という高い範囲でも、良好な発泡状態を維持できるという点で有利である。
【0016】
本発明で使用する発泡剤は、化学発泡剤でも物理発泡剤でもよいが、化学発泡剤の方が好ましく、化学発泡剤の中でも熱分解型発泡剤が好ましい。
熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。
熱分解型発泡剤の配合量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率は、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であることから、熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
また、物理発泡剤としては、熱膨張型マイクロカプセルが挙げられ、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性液体膨張剤を塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー、メタアクリレート−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー等の熱可塑性高分子重合体殻中に内包したマイクロカプセルであって、平均直径が1〜100μmの範囲にあるようなものが利用可能である。
【0017】
未発泡樹脂層は、発泡剤、樹脂に加えて、セル調整剤、無機充填剤、顔料等の添加剤を含んでもよい。
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。該無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。該無機充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。該顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
発泡樹脂層の厚みについては、特に制限されず、所望の特性等に応じて適宜設定することができるが、製膜状態において(即ち、未発泡樹脂層の厚みで)30〜300μmが好ましく、発泡後の状態において(即ち、発泡樹脂層の厚みで)350〜1200μmが好ましい。
【0018】
(1−2)第1非発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は、発泡樹脂層の上面に、非発泡樹脂層(以後、後述の第2非発泡樹脂層と区別するため「第1非発泡樹脂層」と呼ぶ)を含んでもよい。第1非発泡樹脂層は、主として発泡樹脂層を保護すると共に、発泡樹脂層を形成する際の発泡工程で発泡ガス等の揮発成分による可視光型光触媒機能の低下(具体的には、酸化チタンなどの可視光型光触媒化合物の粒子への悪影響)を防止する機能を有する。
第1非発泡樹脂層を形成する樹脂としては、発泡樹脂層に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができる。尚、第1非発泡樹脂層に使用する樹脂は、発泡樹脂層に使用する樹脂種と同一でも異なってもよいが、第1非発泡樹脂層と発泡樹脂層との間の密着性を向上するために、同種類の樹脂もしくは樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0019】
前記樹脂成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組合せにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0020】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜15重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。非発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、3〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
前記樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。尚、メルトフローレート値(MFR)の測定条件は、発泡樹脂層の項に記載したのと同様である。
【0021】
発泡樹脂層/第1非発泡樹脂層としての好ましい組合せは、EVA樹脂/EVA樹脂、EMAA樹脂/EVA樹脂、EVA樹脂/EMAA樹脂、EMAA樹脂/EMAA樹脂、PE樹脂/PE樹脂が挙げられ、特にEVA樹脂/EMAA樹脂が好ましい。
【0022】
(1−3)裏打ちシート層
本発明の壁紙基材は、裏打ちシート層を含んでもよい。裏打ちシート層は、発泡樹脂層の下面に、又は後述する第2非発泡樹脂層の下面に設けられる。裏打ちシート層は特に限定されず、例えば、樹脂シート、紙等の繊維質シートなどが一般に使用できるが、紙等の繊維質シートが好ましく、具体的には、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
裏打ちシート層の坪量は特に限定されないが、50〜300g/m2程度が好ましく、50〜80g/m2程度がより好ましい。
【0023】
(1−4)第2非発泡樹脂層
本発明の壁紙基材は、発泡樹脂層の下面に、非発泡樹脂層(以後、前述の第1非発泡樹脂層と区別するため「第2非発泡樹脂層」と呼ぶ)を含んでもよい。壁紙基材が裏打ちシート層を含む場合には、発泡樹脂層と裏打ちシート層との間に第2非発泡樹脂層を含んでよく、第2非発泡樹脂層が接着剤層として機能することにより、優れた密着性を得ることができる。
第2非発泡樹脂層としては、発泡樹脂層に使用したのと同様のオレフィン系樹脂を使用することができるが、密着性の向上という観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体を好適に用いることができる。第2非発泡樹脂層は樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
第2非発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、3〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0024】
[壁紙基材の形成方法]
本発明の壁紙基材は、(ア)未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する工程、及び(イ)該未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する工程、を経て形成される。
未発泡樹脂層は工程(イ)にて発泡して発泡樹脂層を形成することから、未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材は工程(イ)にて発泡樹脂層を含む壁紙基材へと変化する。つまり、「発泡前壁紙基材」と「壁紙基材」は、発泡前の名称と発泡後の名称を便宜上区別したものである。
【0025】
(ア)未発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する工程
発泡前壁紙基材の形成方法は特に限定されないが、例えば、Tダイ押出し機によって形成することができる。
未発泡樹脂層だけでなく第1非発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する場合には、2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、未発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物及び第1非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。
同様に、未発泡樹脂層、第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層を含む発泡前壁紙基材を形成する場合には、未発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物、第1非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物、及び第2非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、3種3層を同時に押出し成膜・積層すればよい。
【0026】
裏打ちシート層を含む発泡前壁紙基材を形成するには、上記の方法で同時押出した積層体を、裏打ちシート層上に同時積層(成膜)すればよい。裏打ちシート層上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため裏打ちシート層と接着される。あるいは、予め同時成膜した積層体を用意して、それを裏打ちシート層上に載せて、熱ラミネートすることで接着させてもよい。
【0027】
未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物が無機充填剤を含有するときに、未発泡樹脂層を押出し成形により形成する場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、未発泡樹脂層に無機充填剤が含まれる場合には、上記第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層をそれぞれ形成する樹脂組成物を、未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物と共に同時押出し成形することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように未発泡樹脂層を2つの非発泡樹脂層(第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層)によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0028】
発泡前壁紙基材に、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、壁紙基材の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう)を用いて実施することもできる。
電子線照射を行う場合には、樹脂組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100質量部に対して0〜10質量部程度とすることが好ましく、特に1〜4質量部とすることがより好ましい。
【0029】
(イ)該未発泡樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する工程
未発泡樹脂層を発泡させる方法は、発泡剤の種類に応じて公知の方法から適宜選択されるものであり、特に限定されない。
発泡剤として熱分解型発泡剤を用いた場合、加熱条件は熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されないが、加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
なお、工程(イ)は、可視光型光触媒層形成用の分散液を塗布した後に行うことが好ましい。可視光型光触媒層を形成するために行う分散液の乾燥と、未発泡樹脂層の発泡とを同時に行なえることで製造工程が少なくなり、コストを低減できる。また、発泡後に、絵柄模様層、中間層、可視光型光触媒層を形成した場合、発泡樹脂層の凹凸の影響により、前記層を綺麗に塗付することが難しかったが、発泡前に前記層を形成することで綺麗に塗付することが可能となる。
【0030】
(2)中間層
本発明の壁紙は中間層を有し、該中間層は無機吸着剤を含有する。無機吸着剤は夜間等の光非照射時にも、大気中の有機物、窒素酸化物などを積極的に吸着することが出来る。
本発明においては、無機吸着剤を含有する中間層と、可視光型光触媒化合物を含有する可視光型光触媒層とが別個の層として設けられ、かつ、該中間層が該可視光型光触媒層の下に位置することで、可視光型光触媒化合物の分解性能を高く維持しながら、吸着剤の吸着性能を発揮させることを可能にしている。具体的には、以下の通りである。
中間層の無機吸着剤は、発泡樹脂層を形成する際の発泡工程で生じる発泡ガス等の揮発成分を吸着することで、当該揮発成分による光触媒機能の低下を防止することができる。さらに、光非照射時にも吸着性能を発揮することで、光非照射時にも大気中の有機物、窒素酸化物などを積極的に吸着することが出来る
可視光型光触媒層が壁紙基材又は絵柄模様層の上に直接設けられると、それらの層に存在する樹脂等の有機物の分解に光触媒機能が消費され、光触媒機能が低下するおそれがある。また、当該分解によって壁紙基材や絵柄模様層が劣化してしまったり、密着性が低下してしまったりするおそれがある。特に、意匠性や密着性向上のため、エンボス加工などを施した場合には、可視光型光触媒化合物が可視光型光触媒層の下に位置する絵柄模様層や壁紙基材に埋没しやすく、これらの問題が生じやすい。本発明では、可視光型光触媒層と壁紙基材又は絵柄模様層との間に中間層を設けることによって、これらの問題が生じるのを抑制することができる。
可視光型光触媒層は中間層の上に位置しているため、照射光が光触媒化合物に十分に届き、光触媒性能を発揮することが出来る。
【0031】
中間層は、無機吸着剤を無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料に添加させてなるが、光触媒機能の持続性の観点から無機系材料を用いることが好ましい。本発明の中間層中における無機吸着剤の含有量は、特に限定される訳ではないが、5〜95質量%程度であり、密着性及び吸着性の最適化の観点から30〜70質量%が好ましい。
無機系材料としては、例えば、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
有機・無機ハイブリッド材料としては、公知、市販のものが使用できるが、例えば、石原産業(株)製のアンダーコート剤「STK−102」を挙げることができる。なお、有機・無機ハイブリッド材料を用いた場合、材料同士の相性から、無機成分が可視光型光触媒層側へ、有機成分が壁紙基材側へ偏在するので、光触媒機能の低下を当該無機成分によって抑制することができる。
【0032】
無機吸着剤としては、例えば、ゼオライト、リン酸アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、アミン系化合物を担持した無機塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。吸着性能の観点から、モルデナイト型、Y型、ZSM−5型ゼオライトが好ましく、水素イオン交換したZSM−5型ゼオライト(例えば、東ソー製HSZ−800)がより好ましい。
中間層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。なお、本明細書において「塗布量」とは、特に断りの無い限り、乾燥後の重量を指す。
【0033】
[中間層の形成方法]
本発明の中間層は、発泡前壁紙基材上に、中間層コーティング液を塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。壁紙基材上に中間層コーティング液を塗布(すなわち、発泡後に中間層コーティング液を塗布)してもよいが、発泡樹脂層の凹凸の影響により中間層を綺麗に塗付することが難しくなるため、発泡前壁紙基材上に中間層コーティング液を塗布(すなわち、発泡前に中間層コーティング液を塗布)する方が好ましい。
中間層コーティング液は、上述した無機吸着剤及び無機系材料若しくは有機・無機ハイブリッド系材料と、溶媒とを含む。前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
本発明の中間層コーティング液を用いて中間層を形成するに際しては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなど従来公知の方法により中間層コーティング液を塗布し、その後、中間層コーティング液中の溶媒を除去しうる温度で加熱すればよい。
【0034】
(3)可視光型光触媒層
本発明の壁紙は可視光型光触媒層を有し、該可視光型光触媒層は可視光型光触媒化合物(以後、単に「光触媒化合物」と呼ぶこともある)を含有する。
光触媒化合物としては、可視光線により光触媒作用を奏する化合物であれば特に制限ないが、蛍光灯による光照射に対して光触媒活性を示す化合物であることが好ましい。詳しくは、波長約430nm〜約830nmの光照射に対して光触媒活性を示す化合物が好ましい。
光触媒化合物の具体例としては、特開2007−268523号公報に開示されているように、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh,Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などを挙げることができる。これらの中でもアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線ないし蛍光灯の照射で触媒活性を示すものとしてアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
可視光応答性を有する酸化チタン粒子の製造法としては、特開2001−278625号公報、特開2001−302241号公報、特開2003−275600号公報等に開示されている製造方法を使用することができる。
本発明の可視光型光触媒層中における光触媒化合物の含有量は5〜95質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の可視光型光触媒層は、光触媒化合物をバインダーに添加させてなる。可視光型光触媒層のバインダーとして樹脂組成物(有機バインダー)を使用すると、可視光型光触媒化合物は樹脂組成物中に分散するか、樹脂によりコートされた状態で存在するので、可視光型光触媒化合物が十分に露出しておらず、可視光型光触媒機能が十分に発現しないおそれがある。従って、本発明においては、可視光型光触媒層のバインダーとして有機バインダーを使用するよりは無機バインダーを使用して、多孔質層として、光触媒化合物を可視光型光触媒層の表面に多く露出させることが望ましい。
無機バインダーの具体例としては、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
本発明の可視光型光触媒層中におけるバインダーの含有量は1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の可視光型光触媒層は、更に無機吸着剤を含有してもよい。可視光型光触媒層に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
可視光型光触媒層にも無機吸着剤を含有させた場合、夜間等の光非照射時における大気中の有機物、窒素酸化物などの吸着性能をさらに向上させることができるという利点がある。一方で、可視光型光触媒層の無機バインダーが保持できる物質の量は無限ではないため、無機吸着剤を添加量に相当する量の可視光型光触媒化合物を減少させる必要が生じる場合がある。そのような場合には、光照射時の揮発性有機化合物の分解性能が低下してしまうという欠点がある。したがって、可視光型光触媒層における光触媒化合物と無機吸着剤のそれぞれの含有量は、上記利点と上記欠点を考慮しながら、壁紙の使用環境に応じて、適宜決定される。
光照射時の揮発性有機化合物の分解性能に重点を置く場合には、可視光型光触媒層にはおける無機吸着剤の含有量は、可視光型光触媒化合物100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下であり、特に好ましくは0質量部である。
【0037】
本発明の可視光型光触媒層は、さらに艶消し剤を含有してもよい。可視光型光触媒層に艶消し剤を添加することで、壁紙に艶消し感を付与することができる。艶消し剤の粒径は0.5〜7μmが好ましく、1〜6.5μmであることがより好ましく、2〜5μmであることが特に好ましい。0.5μmより小さいと、光触媒層の凹凸が不十分になり艶消し効果が十分に得られないおそれがある。また、粒子径が7μmより大きいと、塗布性が低下するおそれ、可視光型光触媒層膜の厚さに比して粒子径が過剰となり艶消し剤が脱落するおそれ、及び艶消し剤の下側(光が届きにくいエリア)に入り込む光触媒化合物の量が増えて光触媒機能が低下するおそれがある。
艶消し剤の材料は、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ砂、シラスバルーンのような無機質中空体を主組成とした粒子が挙げられる。光触媒化合物の酸化分解性能を考慮した場合、できる限り有機成分が少ない材料であることが望ましく、特には、吸油性の高いシリカが好ましい。
艶消し剤の含有量は特に限定はされないが、可視光型光触媒化合物100質量部に対して5〜100質量部が好ましい。
【0038】
また、可視光型光触媒層には、必要に応じて、各種添加剤を分散体として含有させてもよい。
このような添加剤としては、例えば、非晶質シリカ、シリカゾルのような珪素酸化物、非晶質アルミナ、アルミナゾルのようなアルミニウムの酸化物や水酸化物、ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、ならびにTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の水酸化物およびこれらの金属元素の非晶質酸化物などが挙げられる。
これら添加物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
可視光型光触媒層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。
【0039】
[可視光型光触媒層の形成方法]
本発明の可視光型光触媒層は、例えば、可視光型光触媒化合物及び無機バインダーを溶媒に分散させた分散液(以後、「可視光型光触媒分散液」とも呼ぶ)を、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート、又はハケ塗りなどの方法により中間層上に塗布し、その後、分散液中の溶媒を除去しうる温度で加熱する方法が挙げられるが本発明は該方法に限定されるものではない。
可視光型光触媒分散液は、中間層上に直接塗布してもよいが、光触媒層転写フィルムを作製して転写法によって転写することも可能である。塗布する手段は、例えば、前述した通りのグラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。
その後、溶媒を除去しうる程度の温度で加熱乾燥して溶媒を除去する。乾燥が完了した後、30〜60℃程度の温度で所要時間エージングを行うこともできる。これにより、コーティングした可視光型光触媒層の剥離強度を向上させることができる。
【0040】
本発明の可視光型光触媒分散液中に存在する光触媒化合物は、粒子状でも繊維状でもよい。粒子状の場合の平均一次粒子径通常500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下であるのが好ましく、また、その平均二次粒子径は通常15μm以下であるのが好ましい。
本発明の可視光型光触媒分散液中に占める光触媒化合物の含有量は、用途に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、通常、下限は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、上限は30重量%以下になるように設定される。なお、光触媒化合物の含有量(すなわち分散液中の粉末の量)が多くなるほど、後述する混合(特に初期混合)を効率的に行うことができる。このことを考慮して、仕込み時には光触媒化合物の含有量が所定量よりも多くなるような設定にしておき、後工程で溶媒を添加して希釈することにより所望の含有量となるようにすることもできる。
【0041】
本発明における水系溶媒は、水を主成分とし、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。
【0042】
本発明の可視光型光触媒分散液を得るに際しては、前記混合で得られた混合物に、さらに必要に応じて、粗大粒子の除去、光触媒化合物含有量の調整(希釈等)、pH調整などの操作を施すことができる。これら操作の具体的手法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用すればよい。
本発明の可視光型光触媒分散液を保管する際には、光が当たらない条件下で保管することが好ましく、例えば、暗室内に保管するか、もしくは、紫外線および可視光線の透過率が各々10%以下の遮光性容器に入れて保管することが好ましい。
【0043】
(4)パターン層
本発明の壁紙は、可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を有してもよい。前記パターン層を設けることで、壁紙に更なる吸着性能、分解性能を付与することができる。
パターン層中に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
パターン層中に含有される可視光型光触媒化合物としては、可視光型光触媒層に含有される可視光型光触媒化合物として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
パターン層のマトリックス材料としては、中間層を形成する無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料として例示した材料が挙げられる。
パターン層中における無機吸着剤の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
パターン層中における光触媒化合物の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
パターン層のパターン形状としてはメッシュ形状やストライプ形状が挙げられるが、それらに限定されるものではない。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。
可視光型光触媒層の光触媒機能を阻害しないようにするためには、パターン層による可視光型光触媒層の被覆率は50%以下であることが好ましい。パターンの線幅は10〜200μm、線間ピッチは10〜200μmとすることが好ましい。
パターン層の塗布量は、パターン形状や被覆率により異なるが、0.2〜3g/m2程度とすることが好ましい。
(5)第2中間層
本発明の壁紙は、中間層と可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を有してもよい。第2中間層を設けることで、壁紙に更なる吸着性能、分解性能を付与することができる。
第2中間層中に含有される無機吸着剤としては、中間層に含有される無機吸着剤として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
第2中間層中に含有される可視光型光触媒化合物としては、可視光型光触媒層に含有される可視光型光触媒化合物として例示した具体例が挙げられ、好ましい具体例も同様である。
第2中間層のマトリックス材料としては、中間層を形成する無機系材料又は有機・無機ハイブリッド系材料として例示した材料が挙げられる。
第2中間層中における無機吸着剤の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
第2中間層中における光触媒化合物の含有量は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。
第2中間層の塗布量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/m2が好ましい。
【0044】
(6)絵柄模様層
本発明の壁紙は、壁紙基材と中間層との間に、更に絵柄模様層を有してもよい。絵柄模様層は、壁紙に意匠性を付与することができる。絵柄模様層の絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。該絵柄模様は、本発明の壁紙の種類に応じて選択できる。絵柄模様層は、例えば、壁紙基材の表面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0045】
前記着色剤としては、例えば、前記の未発泡樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。バインダー樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0046】
前記溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0047】
(7)フィルム層
本発明の壁紙は、壁紙基材と中間層の間にフィルム層を更に有してもよい。フィルム層より下側(壁紙基材側)に位置する発泡樹脂層等に光触媒が埋没するのを防ぎ、発泡樹脂層等を光触媒による分解から保護し、光触媒の活性の低下を抑制することができる。即ち、壁紙に優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与するものである。さらに、耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与することも可能である。
【0048】
フィルム層を構成する樹脂としては、特に制限はないが、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂単体及び各種共重合体樹脂を好ましく挙げることができる。これらのなかでも、本発明の壁紙に耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与し、エンボス加工を施す場合には優れた凹凸追従性を付与し、燃焼時の煙濃度が少なく、かつ製造コストを安価におさえる観点から、オレフィン系樹脂が好ましく、オレフィンの単独重合体樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂がより好ましい。
【0049】
フィルム層に用いられるフィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、5〜15μmがより好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、該フィルムの製造上の制約をうけることなく、またエンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保することができる。
【0050】
(8)接着剤層
本発明の壁紙は、接着剤層を有してもよい。フィルム層とその下の層(例えば、絵柄模様層や壁紙基材)との接着性が低い場合、例えば上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを用いた場合は、必要に応じて両層間に接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層に用いられる接着剤としては、特に制限はないが、製造工程の観点より感熱接着剤が好ましい。感熱接着剤とは、一般に常温では固体であり、加熱により溶融又は軟化して接着性を発現し、冷却すると固化して強固に接着する性質を有する熱可塑性樹脂を主要成分とする接着剤のことをいう。これを適当な溶剤に溶解、もしくは加温により溶融させて、被接着体の一方又は両方の接着面に塗布し、両者を重ね合わせて加熱加圧することにより接着させるものである。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系共重合体樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂、オレフィン−αオレフィン系共重合体樹脂などの易接着樹脂単体、及びオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、フィルム層の主成分となる熱可塑性樹脂とのブレンド品などが好ましく挙げられる。
【0051】
接着剤層は、層間接着力の向上を図ることを目的に、必要に応じて裏打ちシート層と発泡樹脂層との層間に設けることもできる。また、接着剤層を設ける以外に、層間接着力を向上させるために、所望により、裏打ちシート層の表面に片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0052】
(9)プライマ層
本発明の壁紙はプライマ層を有してもよい。フィルム層とその上の層(例えば、中間層)との密着性を向上させる目的で、これらの層の間に必要に応じてプライマ層を設けることが好ましい。ここで好ましく用いられる樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタン−アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。また、層間接着力の強化の目的で、壁紙基材とフィルム層との層間に、プライマ層を設けることもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法になんら限定されるものではない。
【0054】
(1)壁紙及び比較用壁紙の作成
[実施例1]
公知のTダイ押出機を用いて、第1非発泡樹脂層/未発泡樹脂層/第2非発泡樹脂層の順に、各層の厚みが15μm/100μm/10μmになるように製膜して3層から成る積層体Aを得た。
第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層に用いた樹脂と、未発泡樹脂層に用いた樹脂組成物は以下の通りである。
(a)第1非発泡樹脂層及び第2非発泡樹脂層に用いた樹脂:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)、100質量部
(b)未発泡樹脂層に用いた樹脂組成物:
・エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)、100質量部
・発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3)、4質量部
・炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH)、30質量部
・二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108)、20質量部
・光安定剤((株)ADEKA製、商品名:OF−101)、1質量部
・架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702)、1質量部
【0055】
次に、前記積層体Aの第2非発泡層樹脂層に裏打ちシート層(米秤量60g/m2、興人(株)製、WK−FKKD)を積層して積層体B(発泡前壁紙基材)を得た。その後、積層体Aの表面強度の向上を図る目的で、積層体Bに対して200kV、5Mradにて電子線照射を行なった。
次いで、グラビア印刷により、積層体Bの第1非発泡樹脂層面に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様(絵柄模様層)を印刷して積層体Cを得た。
【0056】
積層体Cの絵柄模様層の上に中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Dを得た後、当該積層体Dの中間層の上に可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Eを得た。
前記中間層コーティング液の組成は以下の通りである。
・プレコート剤(コルコート(株)製、エチルシリケート40(加水分解液))、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
前記可視光型光触媒コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
【0057】
その後、積層体Eを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図1に示す。壁紙100は、裏打ちシート層111、第2非発泡樹脂層112、発泡樹脂層113並びに第1非発泡樹脂層114を含む壁紙基材110上に、絵柄模様層120、無機吸着剤130aを含有する中間層130、及び光触媒化合物140bを含有する可視光型光触媒層140を有している。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様に積層体Eを作製した後、その上にパターン層コーティング液を、グラビア印刷によって、乾燥後の重量が0.5g/m2、メッシュ形状のパターン(被覆率:50%)が形成するように塗布して積層体Fを得た。
前記パターン層コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
その後、積層体Fを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図2に示す。壁紙200は、裏打ちシート層211、第2非発泡樹脂層212、発泡樹脂層213並びに第1非発泡樹脂層214を含む壁紙基材210上に、絵柄模様層220、無機吸着剤230aを含有する中間層230、光触媒化合物240bを含有する可視光型光触媒層240、及び無機吸着剤250a並びに光触媒化合物250bを含有するパターン層250を有している。
【0059】
[実施例3]
実施例1と同様に積層体Dを作製した後、積層体Dの中間層の上に第2中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して、さらにその上に実施例1と同じ組成の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Gを得た。
前記第2中間層コーティング液の組成は以下の通りである。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
その後、積層体Gを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図3に示す。壁紙300は、裏打ちシート層311、第2非発泡樹脂層312、発泡樹脂層313並びに第1非発泡樹脂層314を含む壁紙基材310上に、絵柄模様層320、無機吸着剤330aを含有する中間層330、無機吸着剤360a並びに光触媒化合物360bを含有する第2中間層360、及び光触媒化合物340bを含有する可視光型光触媒層340を有している。
【0060】
[実施例4]
図4に示す壁紙を以下に記載する方法で作製した。
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
得られた壁紙の模式図を図4に示す。壁紙400は、裏打ちシート層411、第2非発泡樹脂層412、発泡樹脂層413並びに第1非発泡樹脂層414を含む壁紙基材410上に、絵柄模様層420、無機吸着剤430aを含有する中間層430、及び無機吸着剤440aと光触媒化合物440bを含有する可視光型光触媒層440を有している。
【0061】
[実施例5]
実施例1と同様に積層体Cを作製した後、積層体Cを230℃の加熱発泡炉内で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させ、発泡樹脂層が形成された積層体Hを得た。
一方で、フィルム層として予め接着剤が塗布されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂((株)クラレ製、商品名:エバールフィルムHF−ME、厚み:12μm、エチレン含有量:44mol%)を用い、該フィルム層の上面(接着剤が塗布されていない側)に実施例1と同じ組成の中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体aを得た。さらに、積層体aの中間層の上に実施例1と同様の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体bを得た。
次いで、積層体Hを積層体bと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図5に示す。壁紙500は、裏打ちシート層511、第2非発泡樹脂層512、発泡樹脂層513並びに第1非発泡樹脂層514を含む壁紙基材510上に、絵柄模様層520、フィルム層570、無機吸着剤530aを含有する中間層530、及び光触媒化合物540bを含有する可視光型光触媒層540を有している。
【0062】
[実施例6]
実施例5と同様にして積層体Hを作製した。
一方で、実施例5と同様に積層体bを作製した後、その上に実施例2と同じ組成のパターン層コーティング液をグラビア印刷によって、乾燥後の重量が0.5g/m2、メッシュ形状のパターン(被覆率:50%)が形成するように塗布して積層体cを得た。
次いで、積層体Hを積層体cと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図6に示す。壁紙600は、裏打ちシート層611、第2非発泡樹脂層612、発泡樹脂層613並びに第1非発泡樹脂層614を含む壁紙基材610上に、絵柄模様層620、フィルム層670、無機吸着剤630aを含有する中間層630、光触媒化合物640bを含有する可視光型光触媒層640、及び無機吸着剤650a並びに光触媒化合物650bを含有するパターン層650を有している。
【0063】
[実施例7]
実施例5と同様にして積層体Hを作製した。
一方で、実施例5と同様にして、積層体aを作製した後、積層体aの中間層の上に実施例3と同じ組成の第2中間層コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して、さらにその上に実施例1と同じ組成の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体dを得た。
次いで、積層体Hを積層体dと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図7に示す。壁紙700は、裏打ちシート層711、第2非発泡樹脂層712、発泡樹脂層713並びに第1非発泡樹脂層714を含む壁紙基材710上に、絵柄模様層720、フィルム層770、無機吸着剤730aを含有する中間層730、無機吸着剤760a並びに光触媒化合物760bを含有する第2中間層760、及び光触媒化合物740bを含有する可視光型光触媒層740を有している。
【0064】
[実施例8]
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例5と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
得られた壁紙の模式図を図8に示す。壁紙800は、裏打ちシート層811、第2非発泡樹脂層812、発泡樹脂層813並びに第1非発泡樹脂層814を含む壁紙基材810上に、絵柄模様層820、フィルム層870、無機吸着剤830aを含有する中間層830、及び無機吸着剤840aと光触媒化合物840bを含有する可視光型光触媒層840を有している。
【0065】
[実施例9]
裏打ちシート層として、米秤量60g/m2の壁紙用裏打紙(興人(株)製、WK−FKKD)を用い、該裏打ちシート層上に下記の発泡樹脂組成物をコンマコート法によりコーティングして未発泡樹脂層を形成した。次いで、前記未発泡樹脂層の上に、アクリル系樹脂をバインダーとし、カーボンブラックと弁柄を着色剤とするインキを用いて、塗布量3g/m2にてグラビア印刷を施して絵柄模様層を形成し、積層体Iを作製した。さらに、積層体Iを230℃の加熱発泡炉内で加熱することにより、未発泡樹脂層を発泡させ、発泡樹脂層が形成された積層体Jを得た。
発泡樹脂組成物組成
塩ビレジン(東ソー製、商品名:R−720):100質量部
炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH):100質量部
発泡剤(大塚化学製、商品名:ユニフォームAZウルトラ):3質量部
防カビ剤(タイショウテクノス製、商品名:ビオサイト7663DS):0.2質量部
光安定剤(アデカアーガス化学製、商品名:O−1305):5質量部
希釈剤(シェル石油製、商品名:シェルゾールS):20質量部
可塑剤(フタル酸ジイソノニル):38質量部
一方で、実施例5と同様にして積層体bを作製した。
次いで、積層体Jを積層体bと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図9に示す。壁紙900は、裏打ちシート層911並びに発泡樹脂層913を含む壁紙基材910上に、絵柄模様層920、フィルム層970、無機吸着剤930aを含有する中間層930、及び光触媒化合物940bを含有する可視光型光触媒層940を有している。
【0066】
[実施例10]
実施例9と同様の方法で積層体Jを作製した。
一方で、実施例6と同様の方法で積層体cを作製した。
次いで、積層体Jを積層体cと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図10に示す。壁紙1000は、裏打ちシート層1011並びに発泡樹脂層1013を含む壁紙基材1010上に、絵柄模様層1020、フィルム層1070、無機吸着剤1030aを含有する中間層1030、光触媒化合物1040bを含有する可視光型光触媒層1040、及び無機吸着剤1050a並びに光触媒化合物1050bを含有するパターン層1050を有している。
【0067】
[実施例11]
実施例9と同様の方法で積層体Jを作製した。
一方で、実施例7と同様の方法で積層体dを作製した。
次いで、積層体Jを積層体dと同時にエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する壁紙を得た。
得られた壁紙の模式図を図11に示す。壁紙1100は、裏打ちシート層1111並びに発泡樹脂層1113を含む壁紙基材1110上に、絵柄模様層1120、フィルム層1170、無機吸着剤1130aを含有する中間層1130、無機吸着剤1160a並びに光触媒化合物1160bを含有する第2中間層1160、及び光触媒化合物1140bを含有する可視光型光触媒層1140を有している。
【0068】
[実施例12]
可視光型光触媒コーティング液の組成を以下のように変更した以外は、実施例9と同様の方法で壁紙を得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部 得られた壁紙の模式図を図12に示す。壁紙1200は、裏打ちシート層1211並びに発泡樹脂層1213を含む壁紙基材1210上に、絵柄模様層1220、フィルム層1270、無機吸着剤1230aを含有する中間層1230、及び無機吸着剤1240aと光触媒化合物1240bを含有する可視光型光触媒層1240を有している。
【0069】
[比較例1]
中間層コーティング液の組成をコルコート(株)製、エチルシリケート40(加水分解液)のみ(無機吸着剤の添加無し)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較用壁紙を得た。
得られた比較用壁紙の模式図を図13に示す。比較用壁紙1300は、裏打ちシート層1311、第2非発泡樹脂層1312、発泡樹脂層1313並びに第1非発泡樹脂層1314を含む壁紙基材1310上に、絵柄模様層1320、比較用中間層1380、及び光触媒化合物1340bを含有する可視光型光触媒層1340を有している。比較用壁紙1300においては、比較用中間層1380は無機吸着剤を含有していない。
【0070】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で積層体Bに布目模様(絵柄模様層)の印刷まで行った後、当該絵柄模様層の上に、以下の可視光型光触媒コーティング液を乾燥後の重量が1g/m2となるように塗布して積層体Kを得た。
・酸化チタン光触媒コーティング剤(住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機バインダー入)N.V.5wt%、酸化チタン粒径100nm)、100質量部
・無機吸着剤(東ソー製、HSZ800シリーズ890HOAタイプ)、50質量部
・艶消し剤(メラミンとシリカからなる粒子、日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、粒径3.5μm)、3.5質量部
その後、積層体Kを230℃の加熱発熱炉内で、発泡剤が含有されている未発泡樹脂層を発泡させ発泡樹脂層を形成し、次にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型し、比較用壁紙を得た。
得られた比較用壁紙の模式図を図14に示す。比較用壁紙1400は、裏打ちシート層1411、第2非発泡樹脂層1412、発泡樹脂層1413並びに第1非発泡樹脂層1414を含む壁紙基材1410上に、絵柄模様層1420、及び無機吸収剤1440a並びに可視光型光触媒1440bを含有する可視光型光触媒層1440を有している。比較用壁紙1400は、無機吸収剤を含有する中間層を有していない。
【0071】
(2)壁紙の性能評価
実施例1〜12で得た壁紙及び比較例1〜2で得た比較用壁紙について、以下の通り性能評価を行った。
壁紙試験片(10cm×10cm)を、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、1Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕をテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cm2で16時間初期化処理をした。その後、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバッグ内に送り込み、以下の2通りの条件で測定した。
条件1:光照射無しで1時間静置後のアセトアルデヒド濃度を測定、
条件2:蛍光灯6000lxを照射し1時間後のアセトアルデヒド濃度を測定。
テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。また、ブランクとして中間層、光触媒層のない壁紙を上記テドラーバック内に挿入し、上記の2通りの条件で測定を実施した。
【0072】
実施例1〜12、比較例1〜2、ブランクの評価結果を以下の表1に示す。
【表1−1】
【表1−2】
【符号の説明】
【0073】
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200 壁紙
1300,1400 比較用壁紙
110,210,310,410,510,610,710,810,910,1010,1110,1210,1310,1410 壁紙基材
111,211,311,411,511,611,711,811,911,1011,1111,1211,1311,1411 裏打ちシート層
112,212,312,412,512,612,712,812,1312,1412 第2非発泡樹脂層
113,213,313,413,513,613,713,813,913,1013,1113,1213,1313,1413 発泡樹脂層
114,214,314,414,514,614,714,814,1314,1414 第1非発泡樹脂層
120,220,320,420,520,620,720,820,920,1020,1120,1220,1320,1420 絵柄模様層
130,230,330,430,530,630,730,830,930,1030,1130,1230 中間層
140,240,340,440,540,640,740,840,940,1040,1140,1240,1340,1440 可視光型光触媒層250,650,1050 パターン層
360,760,860 第2中間層
570,670,770,870,970,1070,1170,1270 フィルム層
1380 比較用中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙。
【請求項2】
前記可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を更に有する、請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項3】
前記中間層と前記可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を更に有する、請求項1又は2に記載の機能性壁紙。
【請求項4】
前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の上面に、第1非発泡樹脂層を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項5】
前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の下面に、第2非発泡樹脂層を更に含む、請求項1〜4のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項6】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、絵柄模様層を更に有する、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項7】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、フィルム層を更に有する、請求項1〜6のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項8】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、前記壁紙基材から前記中間層の方向に向かって、絵柄模様層、接着層及びフィルム層をこの順に更に有する、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項9】
前記フィルム層を構成する熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である、請求項7又は8に記載の機能性壁紙。
【請求項1】
発泡樹脂層を含む壁紙基材上に、中間層、可視光型光触媒層をこの順に有する壁紙であって、該可視光型光触媒層が可視光型光触媒化合物を含有し、該中間層が無機吸着剤を含有する、機能性壁紙。
【請求項2】
前記可視光型光触媒層の上に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有するパターン層を更に有する、請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項3】
前記中間層と前記可視光型光触媒層の間に、無機吸着剤及び可視光型光触媒化合物を含有する第2中間層を更に有する、請求項1又は2に記載の機能性壁紙。
【請求項4】
前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の上面に、第1非発泡樹脂層を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項5】
前記壁紙基材が、前記発泡樹脂層の下面に、第2非発泡樹脂層を更に含む、請求項1〜4のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項6】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、絵柄模様層を更に有する、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項7】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、フィルム層を更に有する、請求項1〜6のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項8】
前記壁紙基材と前記中間層との間に、前記壁紙基材から前記中間層の方向に向かって、絵柄模様層、接着層及びフィルム層をこの順に更に有する、請求項1〜5のいずれかに記載の機能性壁紙。
【請求項9】
前記フィルム層を構成する熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である、請求項7又は8に記載の機能性壁紙。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−92473(P2012−92473A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68678(P2011−68678)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]