説明

揺動アクチュエータ

【課題】高い振動数で振動させることができる揺動アクチュエータを提供する。
【解決手段】揺動アクチュエータ4は、ベース5と、ベース5に対して揺動する揺動部材8と、揺動部材8を揺動可能に支持する支持部9a,9bと、揺動部材8を揺動させる一対の推力発生部10a,10bと、を備える。各推力発生部10a又は10bは、揺動部材8側に設けられるマグネット7a又は7b、及びベース5側に設けられるコイル6a又は6bを備える。一対の推力発生部10a,10bのうちのいずれか一方10aが、揺動部材8の一方の端部にベース5から離間する推力を与えるとき、一対の推力発生部10a,10bのうちの他方10bが、揺動部材8の他方の端部にベース5に接近する推力を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動部材を揺動させる揺動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
揺動部材を揺動させる揺動アクチュエータが知られている。揺動とは、図6に示すように揺動部材1を円弧2に沿って往復運動させたり、シーソのように中央部の支点を中心に回転運動させたりすること(図示せず)をいう。例えば、航空機や自動車の内燃機関において、揺動する揺動部材にオイルを噴射するノズルを取り付ければ、ノズルの首を振りながらオイルを噴射することができる。内燃機関のギヤ部分に広範囲に亘って一様にオイルを散布することが可能になるので、特に内燃機関のオイル散布用として揺動アクチュエータが要請されている。この揺動は、カムやクランクを用いて機械的に作られるのが一般的であった。しかし、カムやクランクを用いたのでは、機構が複雑になったり、コストがかかったりするという問題が発生する。
【0003】
他方、マグネット及びコイルを用いて電気的に振動を発生させる振動アクチュエータも知られている。一般的な振動アクチュエータは、振動対象を直線的に往復運動させるものが多く、振動対象を揺動させるものは少ない。振動対象を揺動させる振動アクチュエータとして、特許文献1には、基部が固定されて片持ち状態で支持された板ばねの先端に所定質量の錘を取り付け、錘をマグネット及びコイルを用いて振動させる振動アクチュエータが開示されている。錘にコイルを取り付け、固定側のベースにマグネットを取り付けている。コイルに交流を流すと、コイルとマグネットとの間に働く磁気的な吸引力によって錘が振動する。錘は板ばねの先端に取り付けられているので、板ばねの固定端を中心とした円弧に沿って往復運動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−95740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載に振動アクチュエータには、錘を板ばねの固有振動数以上の高い振動数で振動させることができないという問題がある。板ばねの復元力を利用して錘を振動させていることが原因の一つである。例えば内燃機関のオイルの散布に用いられる揺動アクチュエータには、高い振動数で振動することが要請されている。特許文献1の振動アクチュエータは高い振動数で揺動部材を揺動させるのに適していない。
【0006】
そこで本発明は、高い振動数で振動させることができる揺動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ベースと、前記ベースに対して揺動する揺動部材と、前記揺動部材の一方の端部が前記ベースに接近するとき、前記揺動部材の他方の端部がベースから離間し、前記揺動部材の前記一方の端部がベースから離間するとき、前記揺動部材の前記他方の端部がベースに接近するように、前記揺動部材を揺動可能に支持する支持部と、前記揺動部材を揺動させる一対の推力発生部と、を備え、各推力発生部は、前記揺動部材及び前記ベースのいずれか一方に設けられるマグネット、及び前記揺動部材及び前記ベースの他方に設けられるコイルを含み、前記一対の推力発生部のうちのいずれか一方が、前記揺動部材の前記一方の端部に前記ベースから離間する推力を与えるとき、前記一対の推力発生部のうちの他方が、前記揺動部材の前記他方の端部に前記ベースに接近する推力を与え、前記一対の推力発生部のうちの前記一方が、前記揺動部材の前記一方の端部に前記ベースに接近する推力を与えるとき、前記一対の推力発生部のうちの前記他方が、前記揺動部材の前記他方の端部に前記ベースから離間する推力を与える揺動アクチュエータである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揺動部材を揺動させる一対の推力発生部を設け、一対の推力発生部から揺動部材の両端部に時計方向及び反時計方向のモーメントを与え、これにより揺動部材を振動させるので、板ばね等の固有振動数によらず、揺動部材を低い振動数から高い振動数まで振動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態の揺動アクチュエータの正面側から見た断面図
【図2】上記揺動アクチュエータの側面側から見た断面図
【図3】コイルの結線図
【図4】揺動アクチュエータの動作図(図中(a)及び(c)はテーブルがベースと平行になった状態を示し、図中(b)及び(d)はベースに対してテーブルが傾いた状態を示す)
【図5】本発明の第二の実施形態の揺動アクチュエータの概念図
【図6】揺動部材の軌跡の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態の揺動アクチュエータを示す。図1は揺動アクチュエータの正面側から見た断面図を示し、図2は揺動アクチュエータの側面側から見た断面図を示す。揺動アクチュエータ4は、ベース5、一対のコイル6a,6b、一対のコイル6a,6b内に挿入される一対のマグネットとしてのマグネット軸7a,7b、一対のマグネット軸7a,7bが結合される揺動部材としてのテーブル8、テーブル8を揺動可能に支持する支持部としての板ばね9a,9b、一対のマグネット軸7a,7bと反発する一対の予圧付与用マグネット12a,12bを備える。
【0011】
ベース5は磁性材料からなり、一方向(図1の左右方向)に長い長方形の板状に形成される。ベース5の一方向の中央部には、ベース5から垂直方向に立ちあがる板ばね9a,9bが取り付けられる。板ばね9a,9bは、ベース5の長辺側の一対の側面に取り付けられる。図2に示すように、ベース5の側面に固定された板ばね9a,9bは、U字状に折れ曲がった後、ベース5よりも上方に伸びる。板ばね9a,9bの上端には、テーブル8が取り付けられる。
【0012】
図1及び図2に示すように、テーブル8は一方向(図1の左右方向、以下左右方向という)に長い長方形の板状に形成される。テーブル8は磁性材料からなる。テーブル8の左右方向の中央部には、板ばね9a,9bの先端部が取り付けられる。板ばね9a,9bの先端部は、テーブル8の長辺側の一対の側面に取り付けられる。テーブル8が揺動ストロークの中心にあるとき(図4(a),(c)参照)、板ばね9a,9bは撓んでおらず、ベース5とテーブル8とは平行な状態にある。テーブル8が左右方向に揺動すると、板ばね9a,9bはベース5に固定された固定端を中心にして、左右方向に撓む(図4(b),(d)参照)。板ばね9a,9bは、テーブル8の左側の端部がベース5に接近するとき、テーブル8の右側の端部がベース5から離間し(図4(b)参照)、テーブル8の右側の端部がベース5に接近するとき、テーブル8の左側の端部がベース5から離間するように、テーブル8を揺動可能に支持する。
【0013】
図1に示すように、揺動アクチュエータ4の、板ばね9aを挟んだ両側には、一対の推力発生部10a,10bが設けられる。各推力発生部10a又は10bは、テーブル8側に取り付けられるマグネット軸7a又は7b、及びベース5側に取り付けられるコイル6a又は6bを備える。
【0014】
一対のマグネット軸7a,7bのうち、一方のマグネット軸7aはテーブル8の左右方向の一方の端部(以降、左側の端部という)に取り付けられ、他方のマグネット軸7bはテーブル8の左右方向の他方の端部(以降、右側の端部という)に取り付けられる。マグネット軸7a,7bはテーブル8から左右方向と直交する方向にベース5に向かって伸びる。マグネット軸7a,7bは互いに平行であり、軸線方向の長さも互いに等しい。マグネット軸7a,7bは軸線方向に着磁され、軸線方向の一方の端部にN極が、軸線方向の他方の端部にS極が形成される。左右一対のマグネット軸7a,7bは、互いに反対方向に着磁されていて、この実施形態では、左側のマグネット軸7aの上端部がN極に下端部がS極に着磁され、右側のマグネット軸7bの上端部がS極に下端部がN極に着磁されている。
【0015】
ベース5側に取り付けられるコイル6a,6bは、マグネット軸7a,7bの先端部を囲む。二つのコイル6a,6bの中心線は互いに平行であり、その中心線方向の全長も互いに等しい。コイル6a,6bは非磁性材料のボビン11a,11bに巻かれる。ボビン11a,11bは管状の本体部の両端にフランジを備える。コイル6a,6bはベース5側に取り付けられる。
【0016】
ベース5とテーブル8が平行な状態において、マグネット軸7a,7bの軸線A1とコイル6a,6bの軸線A2とは共通する。テーブル8の揺動に伴って、マグネット軸7a,7bの軸線も傾くので(図4(b),(d)参照)、テーブル8が左右に揺動したとき、マグネット軸7a,7bの軸線がコイル6a,6bの中心線に対して僅かに傾く。本実施形態では、このような場合も含めてマグネット軸7a,7bの軸線とコイル6a,6bの中心線とが実質的に共通する、という。
【0017】
推力発生部10a,10bを、軸線方向に着磁されたマグネット軸7a,7b、及びマグネット軸7a,7bの軸線と共通する軸線を持つコイル6a,6bから構成することで、マグネット軸7a,7bの軸線方向に沿った、相反する方向の推力を簡単な構造で容易に発生させることができる。
【0018】
図1に示すように、ベース5とテーブル8が平行な状態において、マグネット軸7a,7bがコイル6a,6bの中に入っている深さD1は、コイル6a,6bの中心線方向の全長L1の1/2よりも大きい。深さD1は振動数や揺動ストロークに影響を与える。深さD1が小さければ、揺動ストロークが大きくなり、振動数が小さくなる傾向がある。D1が深くなると、マグネット軸7a,7bと与圧付与用マグネットとの反発力が大きくなることが、振動数が大きくなる理由の一つであると考えられる。高い振動数で振動させるために、深さD1をコイル6a,6bの全長L1の1/2よりも大きくすることが望ましい。より望ましくは、深さD1はコイル6a,6bの全長の3/4倍程度に設定される。
【0019】
コイル6a,6bとベース5との間には、円板状の一対の予圧付与用マグネット12a,12bが設けられる。予圧付与用マグネット12a,12bは、図1の上下方向(マグネット軸7a,7bの軸線方向に等しく、左右方向に直交する方向)に着磁され、上面側がN極及びS極の一方に形成され、下面側がN極及びS極の他方に形成される。この実施形態では、左側の予圧付与用マグネット12aの上面側がS極に形成され、左側の予圧付与用マグネット12aは左側のマグネット軸7aに反発する。また、右側の予圧付与用マグネット12bの上面側がN極に形成され、右側の予圧付与用マグネット12bは右側のマグネット軸7bに反発する。右側のマグネット軸7bと右側の予圧付与用マグネット12bとの反発力は、左側のマグネット軸7aと左側の予圧付与用マグネット12aとの反発力とバランスがとれている。このため、コイル6a,6bに電流を流していないとき、テーブル8はその揺動ストロークの中心に位置する。予圧付与用マグネット12a,12bの中心線は、マグネット軸7a,7b及びコイル6a,6bの中心線A1,A2と一致する。予圧付与用マグネット12a,12bの直径は、マグネット軸7a,7bの直径よりも大きく、コイル6a,6bの直径と略等しい。予圧付与用マグネット12a,12bはベース5の裏側に設けてもよい。
【0020】
図3は、一対のコイル6a,6bの結線図の一例を示す。一対のコイル6a,6bは、交流電源13に直列又は並列に接続される。交流電源13が一対のコイル6a,6bに正弦波、三角波、矩形波等の交流電圧を印加すると、一対のコイル6a,6bには同一位相の交流が流れる。これにより、一つのコイル6a,6bの両端部には、同一の磁極が形成される。すなわち、例えば左側のコイル6aの上端部にS極、下端部にN極が形成され、右側のコイル6bの上端部にS極、下端部にN極が形成される。
【0021】
図4は、揺動アクチュエータ4の動作図を示す。図4(a)はコイル6a,6bに電流を流していない初期状態を示す。コイル6a,6bに交流を流すと、(a)→(b)→(c)→(d)の順番にテーブル8の姿勢が変化する。(a)→(b)→(c)→(d)までがテーブル8の揺動ストロークの一周期になり、以降この(a)から(d)までの動作を繰り返す。
【0022】
揺動ストロークの一周期の間に、テーブル8は板ばね9a,9bの固定端を中心にして左右に揺動する。テーブル8の揺動は、板ばね9a,9bの固定端を中心にする円弧に沿った曲線運動と、テーブル8の回転運動とを組み合わせた運動になる。
【0023】
図4(a)又は(c)に示すように、テーブル8が揺動ストロークの中心に位置するとき、テーブル8とベース5とが平行になる。図中(b)に示すように、テーブル8の揺動ストロークの一端に位置するとき、テーブル8が最も反時計方向に傾いた状態になる。図中(d)に示すように、テーブル8の揺動ストロークの他端に位置するとき、テーブル8が最も時計方向に傾いた状態になる。
【0024】
図4(a)に示すテーブル8とベース5とが平行な状態において、一対のコイル6a,6bの上端部がS極に下端部がN極になるような交流を流すと、図4(b)に示すように、左側のマグネット軸7aの下端部のS極が左側のコイル6aの下端部のN極に吸引され、右側のマグネット軸7bの下端部のN極が右側のコイル6bの下端部のN極と反発するようになる(言い換えれば、左側の推力発生部10aがテーブル8の左端部にベース5に接近する推力を与え、右側の推力発生部10bがテーブル8の右端部にベース5から離間する推力を与える)。これにより、テーブル8に反時計方向のモーメントが働き、テーブル8が反時計方向に回転する。図4(c)に示すように、一対のコイル6a,6bに流す電流が零になると、テーブル8とベース5とが平行な状態に戻る。その後、図4(d)に示すように、一対のコイル6a,6bの上端部がN極に下端部がS極になるような交流を流すと、左側のマグネット軸7aの下端部のS極が左側のコイル6aの下端部のS極と反発し、右側のマグネット軸7bの下端部のN極が右側のコイル6bの下端部のS極に吸引されるようになる(言い換えれば、左側の推力発生部10aが、テーブル8の左端部にベース5から離間する推力を与え、右側の推力発生部10bがテーブル8の右端部にベース5に接近する推力を与える。これにより、テーブル8に時計方向のモーメントが働き、テーブル8が時計方向に回転する。図4(a)に示すように、一対のコイル6a,6bに流す電流が零になると、テーブル8とベース5とが平行な状態に戻る。
【0025】
なお、一対のコイル6a,6bに流れる電流が零にならなくても、図4(a)や(c)に示すように、テーブル8とベース5とが平行な状態に戻る場合もある。例えば、一対のコイル6a,6bに矩形波の交流を流した場合、瞬間的に逆の位相の交流が流れるので、図4(a)や(c)に示すように、瞬間的にテーブル8とベース5とが平行な状態に戻る。また、厳密にいえば、一対のコイル6a,6bに流す交流に対して僅かな時間的な遅れを持ってテーブル8が揺動しているので、一対のコイル6a,6bに流れる電流が零になる瞬間に遅れて、テーブル8とベース5とが平行な状態になる瞬間が起きる。
【0026】
本実施形態によれば、板ばね9a,9bを挟んだ両側に設けた一対の推力発生部10a,10bによって、テーブル8の両端部に時計方向及び反時計方向のモーメントを与え、これによりテーブル8を振動させるので、板ばね9a,9bの固有振動数によらず、テーブル8を低い振動数から高い振動数まで振動させることが可能になる。テーブル8の振動数はコイル6a,6bに流れる交流の周波数と一致する。振動源として一対のマグネット軸7a,7b及びコイル6a,6bを用いているので、揺動アクチュエータ4の長寿命も実現できる。揺動アクチュエータ4の構造も簡単になるので、組み立て工数も少なくなる。
【0027】
一対の予圧付与用マグネット12a,12bを設けることによって、テーブル8を高い振動数で振動させることが可能になる。図4(b)に示すように、テーブル8が反時計方向に回転したとき、左側のマグネット軸7aと左側の予圧付与用マグネット12aとの間に働く反発力は、右側のマグネット軸7bと右側の予圧付与用マグネット12bとの間に働く反発力よりも大きくなる。この反発力によって、揺動ストロークの一端まで回転したテーブル8に、揺動ストロークの中心に戻す復元力が付加される。一方、図4(d)に示すように、テーブル8が時計方向に回転したときも、右側のマグネット軸7bと右側の予圧付与用マグネット12bとの間に働く反発力によって、テーブル8に揺動ストロークの中心に戻す復元力が付加される。この復元力は、テーブル8を高い振動数で振動させても、テーブル8の振動がコイル6a,6bに流れる交流に追従することを可能にする。
【0028】
さらに、左右一対の推力発生部10a,10bに発生する推力の大きさをずらすことによって、テーブル8を高い振動数で振動させることが可能になると考えられる。図4(b)に示すように、テーブル8が反時計方向に回転したとき、左側のマグネット軸7aが左側のコイル6aの中に入っている深さが大きくなり、右側のマグネット軸7bが右側のコイル6bの中に入っている深さが小さくなる。これに伴い、左側の推力発生部10aに発生する推力の大きさと右側の推力発生部10bに発生する推力の大きさとにずれが発生する。推力の大きさのずれが発生することによって、反時計方向に回転するテーブル8に早めにブレーキがかかると考えられる。同様に、図4(d)に示すように、テーブル8が時計方向に回転したき、時計方向に回転するテーブル8に早めにブレーキがかかると考えられる。このことも、テーブル8を高い振動数で振動させることができる理由の一つであると考えられる。ただし、テーブル8の揺動角度が±1度以下の場合には、一対の推力発生部10a,10bに発生する推力のずれは小さくなる。この場合、一対の推力発生部10a,10bに発生する推力のずれが大きくなるように、一対のコイル6a,6bに流す交流の位相をずらしてもよい。
【0029】
さらに、マグネット軸7a,7bがコイル6a,6bの中に入っている深さD1をコイル6a,6bの中心線方向の全長L1の1/2よりも大きくすることによって、一方のコイル6aに発生する逆記電力が他方のコイル6bに発生する逆記電力で相殺される。二つのコイル6a,6bに発生する逆記電力は完全に相殺されて零になる訳ではないが、小さくなる。
【0030】
図5は、本発明の第二の実施形態の揺動アクチュエータ14を示す。この実施形態の揺動アクチュエータ14も、第一の実施形態の揺動アクチュエータ4と同様に、ベース5、一対のコイル6a,6b、一対のコイル6a,6b内に挿入される一対のマグネット軸7a,7b、一対のマグネット軸7a,7bと反発する一対の予圧付与用マグネット12a,12bを備える。これらの構造は、上記第一の実施形態の揺動アクチュエータ4と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0031】
第二の実施形態の揺動アクチュエータ14では、第一の実施形態の揺動アクチュエータと異なり、ベース5に対して揺動する揺動部材として、一対のマグネット軸7a,7bにその両端部が回転可能に連結される一対の平行リンク21a,21bが用いられる。そして、一対の平行リンク21a,21bを揺動可能に支持する支持部として、ベース5に立設した支柱22が用いられる。支柱22の上端部には、一対の平行リンク21a,21bの下側のリンク21bが回転可能に支持されている。
【0032】
一対の平行リンク21a,21bの長さは互いに等しく、一対のマグネット軸7a,7bの長さも互いに等しい。このため、一対の平行リンク21a,21b及び一対のマグネット軸7a,7bによって、平行運動機構が構成される。一対の平行リンク21a,21bは、互いに平行を保ったまま時計方向及び反時計方向に回転する。そして、一対のマグネット軸7a,7bは、互いに平行を保ったまま、上下運動する。
【0033】
一対のコイル6a,6bに交流を流すことによって、一方のマグネット軸7aに下降する推力が与えられ、他方のマグネット軸7bに上昇する推力が与えられる。一対のマグネット軸7a,7bの相反する方向への上下運動に伴って、一対の平行リンク21a,21bが反時計方向に回転する。一方のマグネット軸7aに上昇する推力を与え、他方のマグネット軸7bに下降する推力を与えると、一対の平行リンク21a,21bは時計方向に回転する。
【0034】
なお、上記実施形態は、本発明の揺動アクチュエータの基本概念を具現化するものであり、具体的な構造は具体的な用途等に応じて、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0035】
例えば、テーブルが揺動ストロークの端に移動したとき、コイルとマグネット軸とが衝突するのを防止するストッパを設けてもよい。
【0036】
テーブルが揺動ストロークの端に移動しても、マグネット軸とコイルとの間のすきまが小さくならないように、コイル内径の長さ方向の中央部を窪ませ、コイル内径の長さ方向の上端部を拡大させてもよい。
【0037】
支持部として、板ばねの替わりに又は板ばねに付加してテーブルの揺動を案内するガイドを設けてもよい。また、支持部は、マグネットの反発力によってテーブルがベースから離れるのを防止するようにテーブルを拘束できればよく、支持部として、板ばねの替わりに紐状の部材や糸状の部材を用いることもできる。
【0038】
円柱状のマグネット軸の周囲を円筒状のコイルで囲む替わりに、円筒状のコイルの周囲を中空の円筒状のマグネット軸で囲んでもよい。
【0039】
揺動部材を振動させる替わりに、コイルに流す電流を制御することによって、揺動部材の位置を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の揺動アクチュエータは、自動車や航空機の内燃機関、ロボット、医療機器、計測機器、産業機械、民生機器等の分野で利用できる。特に、内燃機関のオイル散布用のアクチュエータとして、200〜400Hzの高い振動数で振動するのに適している。
【符号の説明】
【0041】
4,14…揺動アクチュエータ,5…ベース,6a,6b…コイル,7a,7b…マグネット軸(マグネット),8…テーブル(揺動部材),9a,9b…板ばね(支持部),10a,10b…推力発生部,12a,12b…予圧付与用マグネット,21a,21b…平行リンク(揺動部材),22…支柱(支持部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して揺動する揺動部材と、
前記揺動部材の一方の端部が前記ベースに接近するとき、前記揺動部材の他方の端部がベースから離間し、前記揺動部材の前記一方の端部がベースから離間するとき、前記揺動部材の前記他方の端部がベースに接近するように、前記揺動部材を揺動可能に支持する支持部と、
前記揺動部材を揺動させる一対の推力発生部と、を備え、
各推力発生部は、前記揺動部材及び前記ベースのいずれか一方に設けられるマグネット、及び前記揺動部材及び前記ベースの他方に設けられるコイルを含み、
前記一対の推力発生部のうちのいずれか一方が、前記揺動部材の前記一方の端部に前記ベースから離間する推力を与えるとき、前記一対の推力発生部のうちの他方が、前記揺動部材の前記他方の端部に前記ベースに接近する推力を与え、
前記一対の推力発生部のうちの前記一方が、前記揺動部材の前記一方の端部に前記ベースに接近する推力を与えるとき、前記一対の推力発生部のうちの前記他方が、前記揺動部材の前記他方の端部に前記ベースから離間する推力を与える揺動アクチュエータ。
【請求項2】
前記各推力発生部の前記マグネットは、軸線方向の一方の端部にN極が軸線方向の他方の端部にS極が着磁されるマグネット軸からなり、
前記マグネット軸の軸線と前記コイルの中心線とが実質的に共通することを特徴とする請求項1に記載の揺動アクチュエータ
【請求項3】
前記揺動部材及び前記ベースの他方には、前記一対の推力発生部の前記コイルに電流を流していないとき、前記揺動部材がその揺動ストロークの中心に位置するように、前記一対の推力発生部の前記マグネットに反発する一対の予圧付与用マグネットが設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の揺動アクチュエータ。
【請求項4】
前記マグネット軸が前記コイルに囲まれ、
前記揺動部材がその揺動ストロークの中心に位置するとき、
前記マグネット軸が前記コイルの中に入っている深さが、前記コイルの中心線方向の全長の1/2よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の揺動アクチュエータ。
【請求項5】
前記揺動部材は、一方向に長く形成され、
前記支持部は、基部が前記ベースに固定され、先端部が前記揺動部材の前記一方向の中央部に固定される板ばねであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の揺動アクチュエータ。
【請求項6】
前記一対の推力発生部の前記コイルに同一位相の交流を流すことによって、前記揺動部材を揺動させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の揺動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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