説明

揺動型運動装置

【課題】座部に対する着座時の不快感や着座位置のずれが生じないようにする。
【解決手段】使用者100が着座した座部2を揺動させることで、使用者100に運動負荷を付与する揺動型運動装置である。座部2の着座部40の幅方向の中央位置で、着座した使用者100の尾てい骨の接触部分に凹み2a,2bが形成されている。凹み2a,2bは、少なくとも座部2の前方に延在されている。凹み2aで、着座した使用者100の尾てい骨が座部2に接触しなくなる。凹み2bを目印とすれば、座部2の幅方向の中央位置に跨って着座していることが分かりやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動型運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揺動型運動装置は、使用者が着座した座部を揺動させることで、使用者に乗馬を模した運動負荷を付与するものである(特許文献1参照)。
【0003】
このような揺動型運動装置は、主として、使用者の下半身の筋肉を鍛えるものであり、子供から老人まで利用可能な手軽な運動器具として、当初のリハビリ目的の医療施設から、一般家庭へと普及してきている。
【0004】
そして、揺動型運動装置では、座部が前後、左右に揺動するものであるから、使用者の臀部との摩擦が生じるので、それを緩和するために、ある程度のクッション性を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−149468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、使用者の尾てい骨が座部と干渉するような場合、使用者によっては不快に感じることがあった。
【0007】
また、使用者は、座部の幅(左右)方向の中央位置に跨って着座しているつもりでも、実際には、左右のいずれか一方にずれていることもあり、左右の振れ幅の感じ方が使用者によって違うこともあった。
【0008】
本発明は、前記のような問題を解消するためになされたもので、座部に対する着座時の不快感や着座位置のずれが生じないようにした揺動型運動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、使用者が着座した座部を揺動させることで、使用者に運動負荷を付与する揺動型運動装置において、前記座部の着座部の幅方向の中央位置で、着座した使用者の尾てい骨の接触部分に凹みが形成されていることを特徴とする揺動型運動装置を提供するものである。
【0010】
請求項2のように、請求項1において、前記凹みは、少なくとも座部の着座部の前方に延在されていることが好ましい。
【0011】
請求項3のように、請求項1または2において、前記座部の着座部は、幅方向の中央位置である凹みで左右に2分割されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、座部の着座部の幅方向の中央位置に凹みを形成することで、着座した使用者の尾てい骨が座部に接触しなくなるから、座部が揺動しても、使用者の尾てい骨が座部と干渉しなくなるので、使用者が不快に感じることが少なくなる。
【0013】
また、着座した使用者は、尾てい骨が凹みに入っていることを感じれば、座部の幅(左右)方向の中央位置に跨って着座していることになるので、着座位置のずれが生じにくくなる。
【0014】
請求項2によれば、座部の着座部の前方に凹みを延在させることで、この延在された凹みを目印とすれば、座部の幅方向の中央位置に跨って着座していることが分かりやすくなる。
【0015】
請求項3によれば、座部は非常に大型であり、これを成形する金型も大型になって高価になるが、着座部を幅方向の中央位置である凹みで左右に2分割することで、着座部の成形金型が半分の大きさになって、安価になるとともに、成形も容易になる。また、着座部を凹みで左右に2分割することで、2分割した着座部を組み合わせても、組み合わせ部分が目立ちにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る揺動型運動装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の駆動装置を拡大して示す側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の背面図である。
【図5】(a)(b)は座部の動きを説明するための図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の座部の斜視図である。
【図7】図6の座部の横断面図である。
【図8】第1実施形態の座部の変形例の斜視図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の座部の斜視図である。
【図10】図9の座部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る揺動型運動装置1の全体構成を示す側面図である。
【0018】
この揺動型運動装置1は、馬の鞍を模した形状で使用者が着座(騎乗)する座部2を備えている。また、座部2を揺動させる駆動手段である駆動装置3と、座部2および駆動装置3を支える脚部30を備えている。
【0019】
図2は、駆動装置3を拡大して示す側面図であり、図3はその平面図であり、図4はその背面図である。図2および図4において、駆動装置3が揺動した状態を二点鎖線で示している。
【0020】
座部2が取付けられる台座4は、左右を一対とする連結リンク5を介して可動架台6に前後に揺動可能に支持され、可動架台6はベース8で左右に揺動可能に支持されているとともに、台座4と可動架台6との間には駆動部13が収納されている。
【0021】
前記連結リンク5は、前リンク5aと、後リンク5bとから成る。前リンク5aの上端部は、台座4の前端部に設けた上軸ピン4aに嵌合され、前リンク5aの下端部は可動架台6の側板16の前端部に設けた下軸ピン7aに嵌合されている。また、後リンク5bの上端部は台座4の後端部に設けた上軸ピン4bに嵌合され、後リンク5bの下端部は可動架台6の側板16の後端部に設けた下軸ピン7bに嵌合されている。
【0022】
前後の各下軸ピン7a,7bは、連結リンク5を左右方向Yの軸線回りに回動可能に支持する左右軸7を構成しており、これによって、台座4は左右軸7回りに図2の矢印Mで示す前後方向に往復回転移動可能となっている。
【0023】
前記ベース8の前後方向Xの両端部には、図2および図4に示すように、軸支板24がそれぞれ上向きに設けられている。可動架台6の前後方向Xの両端部には前記軸支板24と対向する連結板25がそれぞれ下向きに設けられ、軸支板24に対して連結板25が前後軸9によって回動可能に連結されている。
【0024】
前後軸9は、ベース8の中央部の前後2箇所に配置されて可動架台6を前後軸9回りに回動可能に支持するものであり、これによって台座4は前後軸9回りに図4の矢印Nで示す左右方向に回転往復移動可能となっている。
【0025】
一方、駆動部13は、単体のモータ10を備えている。また、モータ10の出力回転軸12の回転力を台座4の前後方向Xの往復直進移動、左右軸7回りの回転往復移動、前後軸9回りの回転往復移動にそれぞれ変換して、これら3動作を組合わせて座部2を駆動可能とする2つの駆動部13a,13bを備えている。本例のモータ10はベース8上に縦据え置きされ、出力回転軸12の突出方向は上向きとされる。
【0026】
第1駆動部13aは、前後方向Xの往復直進移動および左右軸7回りの回転往復移動用であり、第2駆動部13bは、前後軸9回りの回転往復移動用である。
【0027】
第1駆動部13aは、図2および図3で示すように、出力回転軸12にモータギア11および第1ギア14を介して連結される第1シャフト17を備えている。また、第1シャフト17の一端部に偏心して連結される偏心クランク19と、一端部が偏心クランク19に連結され、他端部が前リンク5aに設けた軸ピン5cに嵌合されるアームリンク20とを備えている。
【0028】
第1シャフト17の両端部は台座4側にそれぞれ回動可能に支持されており、偏心クランク19が第1シャフト17に対して偏心円運動を行う。これによってアームリンク20を介して前リンク5aが前後方向Xに往復移動し、連結リンク5に連結されている台座4、すなわち座部2が図1および図2の矢印Mで示す方向に揺動可能となっている。
【0029】
また、第2駆動部13bは、図3および図4で示すように、第1シャフト17の連動ギア22と第2ギア15を介して連結された第2シャフト18を備えている。また、一端部が第2シャフト18の一端部に偏心して連結され、他端部がベース8に回動可能に連結される偏心ロッド21を備えている。第2シャフト18の両端部は台座4側に回動可能に支持されている。
【0030】
偏心ロッド21は、台座4の左側或いは右側のいずれか一方に配置され(図3および図4では右側)、偏心ロッド21の上端部21aが図4に示す軸ピン29により第2シャフト18の一端部に対して偏心して連結されている。偏心ロッド21の下端部21bはベース8に固定したL形連結金具27に対して軸ピン28により回動可能に連結されている。したがって、第2シャフト18の回転によって、偏心ロッド21の上端部が偏心円運動を行うことで、台座4、すなわち座部2が図4の矢印Nで示すように、前後軸9回りの回転往復移動可能となっている。
【0031】
前記構成において、モータ10の出力回転軸12が回転すると、モータギア11と第1ギア14との噛み合いによって第1シャフト17が回転すると同時に、第1シャフト17の連動ギア22と第2ギア15との噛み合いによって第2シャフト18が回転する。
【0032】
第1シャフト17が回転すると、第1シャフト17の一端部に連結された偏心クランク19が偏心円運動を行ない、アームリンク20を介して前リンク5aが前側の左右軸ピン7aを中心に前後方向Xに回動する。このとき、後リンク5bが協働して後側の左右軸ピン7b回りに回動することから、台座4、すなわち座部2は前後方向Xに往復移動および揺動する。
【0033】
また、第2シャフト18の回転によって、偏心ロッド21の上端部が偏心円運動を行い、台座4、すなわち座部2は前後軸9回りに回転往復移動する。
【0034】
このようにして、使用者100が座部2に着座(騎乗)した状態で、座部2は図5に示す前後方向X、左右方向Y、上下方向Zへの運動、およびθX方向、θY方向、θZ方向の揺動を行う。したがって、使用者100に乗馬を模した運動負荷が付与されることで、身体のバランス機能や運動機能を訓練することができる。
【0035】
前記揺動型運動装置1では、座部2の前下部の両側に、使用者が脚を乗せる鐙(あぶみ)が設けられていないとともに、座部2の前上部に、使用者が手で握る手綱(たずな)が設けられていないが、鐙や手綱を設けることもできる。
【0036】
図6は第1実施形態の座部2の斜視図、図7は座部2の横断面図である。座部2は、基台35を備え、この基台35の上面にウレタンフォーム(クッション)36が設けられ、このウレタンフォーム36の上面が表皮37で覆われている。そして、座部2の基台35が座部筐体38にねじ39で固定されている。前記基台35、ウレタンフォーム36および表皮37は、座部2の着座部40を構成する。
【0037】
座部2の着座部40の幅(左右)方向Yの中央位置で、着座した使用者100の尾てい骨の接触部分100a(二点鎖線参照)には、凹み2aが形成されている。この凹み2aに連なるように、座部2の幅(左右)方向Yの中央位置の状態で、凹み2bが座部2の前方、具体的には最前端まで延在されている。凹み2a,2bは、例えば深さ2cm、幅5cm程度であり、本実施形態では、使用者100の体型の相違を考慮して、凹み2aを後方に15cm程度で延在させているが、最後端まで延在させてもよい。
【0038】
図8は、変形例であり、着座した使用者100の尾てい骨の接触部分100aの凹み2aは、後方に延在させる長さに相当する分だけ、前方に延在する凹み2bよりも大きく形成している。
【0039】
前記のような第1実施形態の座部2であれば、座部2の着座部40の幅方向の中央位置に凹み2aを形成することで、着座した使用者100の尾てい骨が座部2に接触しなくなるから、座部2が揺動しても、使用者100の尾てい骨が座部2と干渉しなくなるので、使用者100が不快に感じることが少なくなる。
【0040】
また、着座した使用者100は、尾てい骨が凹み2aに入っていることを感じれば、座部2の幅(左右)方向Yの中央位置に跨って着座していることになるので、着座位置のずれが生じにくくなる。
【0041】
さらに、座部2の着座部40の前方に凹み2bを延在させることで、この延在された凹み2bを目印とすれば、座部2の幅方向の中央位置に跨って着座していることが分かりやすくなる。
【0042】
前記実施形態は、座部2の着座部40の前方に凹み2bを延在させることで、着座位置の目印としたものであったが、凹み2bを設ける代わりに、着色ライン等を印刷することで、着座位置の目印とすることもできる。要するに、使用者が座部2に着座した状態で、座部2の幅方向の中央位置であることが視認できるマークとなれば、どのような目印であってもよい。
【0043】
座部2の着座部40に凹み2a,2bを形成するには、塩化ビニル等の軟質材製の表皮37に、凹み2a,2bに相当する凹みを予め真空成型等で型付けしておき、その表皮37と基台35との隙間に、ウレタンフォーム36を発泡させながら充填すればよい。
【0044】
一方、座部2の着座部40は非常に大型であり、これを成形する金型も大型になって高価になる。そこで、座部2の着座部40は、幅方向の中央位置である凹み2a,2bで左右に2分割することもできる。
【0045】
すなわち、図9および図10に示す第2実施形態の座部2は、座部筐体38の幅方向の中央部分に、凹み2a,2bの底を形成するように立ち上げた立ち上げ部38aが一体形成されている。
【0046】
また、基台35(A)(B)は、座部筐体38の立ち上げ部38aの上端38bとほぼ同じ高さで、この上端38bを挟んで対向するように、左右に2分割され、各基台35(A)(B)は、座部筐体38にねじ39でそれぞれ固定されている。
【0047】
そして、各基台35(A)(B)の上面にウレタンフォーム(クッション)36(A)(B)がそれぞれ設けられ、各ウレタンフォーム36(A)(B)の上面が表皮37(A)(B)でそれぞれ覆われている。前記基台35(A)(B)、ウレタンフォーム36(A)(B)および表皮37(A)(B)は、座部2の左右の着座部40(A)(B)を構成する。
【0048】
前記のような第2実施形態の座部2であれば、左右の着座部40(A)(B)と座部筐体38の立ち上げ部38aの上端38bとの間、つまり、座部2の幅方向の中央位置に凹み2a,2bが形成されるので、第1実施形態の座部2と同様の効果を奏することができる。
【0049】
加えて、着座部40(A)(B)を幅方向の中央位置である凹み2a,2bで左右に2分割することで、着座部40(A)(B)の成形金型が半分の大きさになって、安価になるとともに、成形も容易になる。また、着座部40(A)(B)を凹み2a,2bで左右に2分割することで、2分割した着座部40(A)(B)を組み合わせても、組み合わせ部分が目立ちにくくなる。
【符号の説明】
【0050】
1 揺動型運動装置
2 座部
2a,2b 凹み
3 駆動装置
35(A)(B) 基台
36(A)(B) ウレタンフォーム
37(A)(B) 表皮
38 座部筐体
38a 立ち上げ部
40(A)(B) 着座部
100 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座した座部を揺動させることで、使用者に運動負荷を付与する揺動型運動装置において、
前記座部の着座部の幅方向の中央位置で、着座した使用者の尾てい骨の接触部分に凹みが形成されていることを特徴とする揺動型運動装置。
【請求項2】
前記凹みは、少なくとも座部の着座部の前方に延在されていることを特徴とする請求項1に記載の揺動型運動装置。
【請求項3】
前記座部の着座部は、幅方向の中央位置である凹みで左右に2分割されていることを特徴とする請求項1または2に記載の揺動型運動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate