説明

揺動操作型スイッチ

【課題】他車種に流用しても操作に違和感が生じることのない揺動操作型スイッチを提供する。
【解決手段】筐体56,57に対して揺動軸58bを中心に揺動可能に支持されるシーソー式の操作子51を有し、該操作子51に、揺動軸58bを挟んで一方側に位置する第1押圧部55および他方側に位置する第2押圧部54が設けられている揺動操作型スイッチ50において、第1押圧部55を押し下げることで所定の装置が作動するように構成すると共に、第2押圧部54には、筐体56,57に当接することで中立位置からの押し下げ動作を不能とする規制部52を設ける。操作子51を筐体56,57に設けられる開口部70に配置する。規制部52を、開口部70を形成する開口端部60に当接し、かつ操作子51の周縁部51aのうち揺動軸58bから揺動軸58bの径方向に最も離間した部分に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動操作型スイッチに係り、特に、操作子を揺動操作することで車両の所定の機能を発揮させるようにした揺動操作型スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中立位置に対して一方側および他方側に揺動可能なシーソー式の操作子を適用し、一方側に揺動させる場合と他方側に揺動させる場合とで異なる機能が発揮されるようにした揺動操作型スイッチが知られている。
【0003】
特許文献1には、自動二輪車のイグニッションスイッチと一体に設けられた揺動操作型スイッチにおいて、操作子の一方側を押し込むと燃料リッドを開くためのワイヤが引かれると共に、他方側を押し込むと開閉式シートを開くためのワイヤが引かれるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された揺動操作型スイッチは、多くの車種に共通部品として流用することが想定される。しかしながら、牽引動作を必要とするワイヤを1本しか持たない車種にそのまま流用すると、ワイヤと連結されていない側は、押し込む操作が可能であるにもかかわらず何らの機能も発揮しないという違和感が生じることとなる。
【0006】
この違和感を生じないようにするためには、例えば、揺動操作型スイッチの操作子を一般的な押しボタン型の操作子に換装することが考えられるが、両者の操作子は互いに大きさが異なるため、操作子を支持する筐体の形状も変更する必要が生じてしまい、共通部品が減ると共に部品点数が増大して新たな型費や管理費が発生するという課題がある。一方、揺動操作型スイッチの構造を変更することなく上記したような違和感をなくす方法としては、例えば、特開2001−262631号公報に開示されているスイッチ誤操作防止装置のように、他方側の操作子の上部を箱状のカバー部材で覆う手法も考えられるが、特別なカバー部材によって部品点数が増加するだけでなく、一方側の操作子を押し下げた際に他方側の操作子が干渉しない大きさのカバー部材が必要となるため、スイッチ周辺の外観性低下にもつながることとなる。
【0007】
そこで、揺動操作型スイッチにおける上記したような違和感を、必要最小限の変更によって生じないようにする方法が検討されていた。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、他車種に流用しても操作に違和感が生じることのない揺動操作型スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、筐体(56,57)に対して揺動軸(58b)を中心に揺動可能に支持されるシーソー式の操作子(51)を有し、該操作子(51)に、前記揺動軸(58b)を挟んで一方側に位置する第1押圧部(55)および他方側に位置する第2押圧部(54)が設けられている揺動操作型スイッチ(50)において、前記第1押圧部(55)を押し下げることで所定の装置(17)が作動するように構成されていると共に、前記第2押圧部(54)には、前記筐体(56,57)に当接することで中立位置からの押し下げ動作を不能とする規制部(52)が設けられている点に第1の特徴がある。
【0010】
また、前記操作子(51)は、前記筐体(56,57)に設けられる開口部(70)に配置されており、前記規制部(52)は、前記開口部(70)を形成する開口端部(60)に当接する点に第2の特徴がある。
【0011】
また、前記規制部(52)は、前記操作子(51)の周縁部(51a)のうち、前記揺動軸(58b)から前記揺動軸(58b)の径方向に最も離間した部分に設けられている点に第3の特徴がある。
【0012】
また、前記第1押圧部(55)を押し下げ操作することにより、前記所定の装置(17)に連結されたワイヤ(10a)が牽引されて前記所定の装置(17)が作動するように構成されている点に第4の特徴がある。
【0013】
また、前記規制部(52)は、前記筐体(56,57)の外方側で前記開口端部(60)に接するように形成されている点に第5の特徴がある。
【0014】
また、前記操作子(51)の前記第1押圧部(55)および第2押圧部(54)は、前記筐体(56,57)の開口部(70)から前記筐体(56,57)の外方に突出しており、前記開口部(70)を構成する4辺のうち、前記揺動軸(58a)と垂直方向に指向する1辺に沿って板状のリブ(53)が立設して設けられており、前記操作子(51)は、その中立位置において、前記第1押圧部(54)の突出高さが前記リブ(53)と同等となる一方、前記第2押圧部(55)の突出高さが前記リブ(53)より低くなるように形成されている点に第6の特徴がある。
【0015】
また、前記開口部(70)からの前記操作子(51)の突出量が、前記第1押圧部(55)より前記第2押圧部(54)の方が小さく設定されている点に第7の特徴がある。
【0016】
また、前記揺動操作型スイッチ(50)は、自動二輪車(1)のイグニッションスイッチ(40)のキーシリンダ(46)と一体に構成されると共に、前記キーシリンダ(46)を所定の位置に回動させた際に前記第1押圧部(55)の押し下げ操作が可能となるように構成されており、前記イグニッションスイッチ(40)は、前記自動二輪車(1)のハンドル(6)の下方で乗員に対向配置されるインナカバー(8)に埋設されており、前記操作子(51)は、前記第1押圧部(55)に対して前記第2押圧部(54)の方が車体下方側に位置するように配設されている点に第8の特徴がある。
【0017】
また、前記操作子(51)には、前記第1押圧部(55)と前記第2押圧部(54)との間の位置に、前記操作子(51)から立設する立設部(51b)が設けられている点に第9の特徴がある。
【0018】
さらに、前記所定の装置(17)は、シート(14)を開操作可能なシート解錠装置であり、前記第1押圧部(55)は、前記第2押圧部(54)の車体下方側の位置で、かつ自動二輪車(1)のイグニッションスイッチ(40)のキーシリンダ(46)のキー孔(42)に対して、前記キーシリンダ(46)をオフ位置からオン位置に回動させる回転方向側の斜め下方の位置に配設されている点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
第1の特徴によれば、第1押圧部を押し下げることで所定の装置が作動するように構成されていると共に、第2押圧部には、筐体に当接することで中立位置からの押し下げ動作を不能とする規制部が設けられているので、特別なカバー部材を設ける必要がなく、操作子に規制部を設けるのみの簡単な構造変更によって、何らの機能も発揮されない方向に操作子が押圧操作されることを不能とすることができる。これにより、専用の押しボタン型の操作子を別途設ける必要もなく、2種の機能に対応するシーソー式の揺動操作型スイッチを1種の機能のみを有する機種に流用することができ、何らの機能も発揮されない方向へ空振り動作することがなく、乗員に違和感を与えることがなくなる。
【0020】
第2の特徴によれば、操作子は、筐体に設けられる開口部に配置されており、規制部は、開口部を形成する開口端部に当接するので、簡単な構造によって、操作子の一方側への押し下げ動作を確実に不能とすることができる。
【0021】
第3の特徴によれば、規制部は、操作子の周縁部のうち、揺動軸から揺動軸の径方向に最も離間した部分に設けられているので、揺動軸に近い位置に規制部を設ける場合に比して、押し下げ操作に伴って規制部に加わる荷重を低減することが可能となる。これにより、規制部を小型化して設置を容易にすると共に、規制部のデザインの自由度を高めることができる。
【0022】
第4の特徴によれば、第1押圧部を押し下げ操作することにより、所定の装置に連結されたワイヤが牽引されて所定の装置が作動するように構成されているので、開閉式シートのシートキャッチや燃料リッドのロック解除装置等、ワイヤによる遠隔操作で作動する種々の装置と組み合わせることが可能な揺動操作型スイッチが得られる。
【0023】
第5の特徴によれば、規制部は、筐体の外方側で開口端部に接するように形成されているので、操作子の一方側への揺動動作が不能であることを視覚によって認識させやすくなる。
【0024】
第6の特徴によれば、操作子の第1押圧部および第2押圧部は、筐体の開口部から筐体の外方に突出しており、開口部を構成する4辺のうち、揺動軸と垂直方向に指向する1辺に沿って板状のリブが立設して設けられており、操作子は、その中立位置において、第1押圧部の突出高さがリブと同等となる一方、第2押圧部の突出高さがリブより低くなるように形成されているので、乗員が第2押圧部を押圧操作しようとした場合に、指先が第2押圧部より先にリブに当接することとなり、第2押圧部を押し下げる動作が不能であることを指先の感覚で認識することが可能となる。
【0025】
第7の特徴によれば、開口部からの操作子の突出量が、第1押圧部より第2押圧部の方が小さく設定されているので、リブの高さを変えることなく、操作子の形状変更によってリブと操作子との高さの差を生じさせることができる。
【0026】
第8の特徴によれば、揺動操作型スイッチは、自動二輪車のイグニッションスイッチのキーシリンダと一体に構成されると共に、キーシリンダを所定の位置に回動させた際に第1押圧部の押し下げ操作が可能となるように構成されており、イグニッションスイッチは、自動二輪車のハンドルの下方で乗員に対向配置されるインナカバーに埋設されており、操作子は、第1押圧部に対して第2押圧部の方が車体下方側に位置するように配設されているので、例えば、走行中に操作子の揺動動作を禁止する等の設定が可能であると共に、シートに着座した乗員がイグニッションスイッチに対して斜め上方から操作する際に押し下げ動作がしやすい揺動操作型スイッチが得られる。
【0027】
第9の特徴によれば、操作子には、第1押圧部と第2押圧部との間の位置に、操作子から立設する立設部が設けられているので、立設部を傾動させることによっても操作子を揺動操作することができ、揺動操作型スイッチの利便性が向上する。
【0028】
第10の特徴によれば、所定の装置は、シートを開操作可能なシート解錠装置であり、第1押圧部は、第2押圧部の車体下方側の位置で、かつ自動二輪車のイグニッションスイッチのキーシリンダのキー孔に対して、キーシリンダをオフ位置からオン位置に回動させる回転方向側の斜め下方の位置に配設されているので、例えば、第1押圧部がキー孔の右下の位置に配設されている場合、シートを開くためにイグニッションキーを右回りに回動させて揺動操作型スイッチの操作可能位置とする際に、回動操作した手の動きがなす軌跡の延長線上に第1押圧部が位置することとなる。これにより、キーシリンダおよび操作子の連続操作がしやすくなり、揺動操作型スイッチの使い勝手がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】揺動操作型スイッチを適用した自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車のハンドルの周辺の拡大図である。
【図3】インナカバーから露出する部分のコンビスイッチユニットの正面図である。
【図4】コンビスイッチユニットの斜視図である。
【図5】揺動操作型スイッチの斜視図である。
【図6】揺動操作型スイッチの側面図である。
【図7】揺動操作型スイッチの一部断面斜視図である。
【図8】揺動操作型スイッチの一部断面拡大図である。
【図9】コンビスイッチユニットの一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る揺動操作型スイッチを適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は、自動二輪車1のハンドル6の周辺の拡大図である。自動二輪車1は、低床フロア12を有するスクータ型のエンジン車両である。車体フレーム2の前端部のヘッドパイプ3には、ハンドル6の下部に連結されたステムパイプ(不図示)が回動自在に軸支されている。前輪WFは、このステムパイプに連結されたフロントフォーク(不図示)によって回転自在に軸支されている。前輪WFの上部は、フロントフォークに固定されたフロントフェンダ11によって覆われている。
【0031】
低床フロア12の下部には、車体フレーム2のアンダフレーム4が配設されており、アンダフレーム4の後方上方には、リヤフレーム5が連結されている。アンダフレーム4とリヤフレーム5との間には、エンジンおよび変速機を一体に形成したユニットスイング13が揺動自在に軸支されており、ユニットスイング13の後部に駆動輪としての後輪WRが回転自在に軸支されている。
【0032】
ハンドル6の車幅方向中央部は、メータ装置21を保持するハンドルカバー7に覆われている。車体フレーム2のヘッドパイプ3は、このハンドルカバー7の下方で車体前方側のフロントカバー9と車体後方側で乗員に対向配置されるインナカバー8とによって車体前後から覆われている。リヤフレーム5の上方には、左右一対のリヤフレーム5に挟まれるように、収納ボックス16および燃料タンク18が前後に並んで配設されている。シート14は、その前端部に設けられた回動軸を中心に開閉可能に構成されており、シート14を開くことで、収納ボックス16および燃料タンク18の給油口にアクセスできる。シート14の下方からリヤフレーム5にかけてはリヤカバー19によって覆われており、その後端部にリヤフェンダ20が取り付けられている。
【0033】
ヘッドパイプ3の車幅方向右側には、携帯キー(不図示)を用いて車両の主電源のオンオフ等を行うコンビスイッチユニット30が配設されている。コンビスイッチユニット30は、その操作部分のみが、シート14に着座した乗員に対向するようにインナカバー8の開口から露出するように配設されている。コンビスイッチユニット30には、シート14の開動作を禁止するシートキャッチ17に連結されたワイヤケーブル10が連結されている。本発明に係る揺動操作型スイッチは、コンビスイッチユニット30に一体に設けられてシートキャッチ17を作動させるシーソー式のスイッチに適用されており、これを操作することにより、ワイヤケーブル10内のワイヤが引かれてシート14のロックが解除されるように構成されている。
【0034】
図3は、インナカバー8から露出する部分のコンビスイッチユニット30の正面図である。また、図4は、コンビスイッチユニット30の斜視図である。コンビスイッチユニット30は、イグニッションスイッチ40と揺動操作型スイッチ50とを2本の締結ネジ67で締結して構成されている。イグニッションスイッチ40は、キーシリンダ46と操作盤41とから構成されている。操作盤41には、携帯キー(不図示)を挿入するキー孔42、該キー孔42を塞ぐシャッターを開閉動作させるためのシャッターキー用凹部44および手動ノブ45が設けられている。シャッターは、手動ノブ45を半時計回りに回動させることで閉状態となり、一方、シャッターキー用凹部44にシャッターキー(不図示)を係合させて時計方向に回動させることで開状態に切り替わる。コンビスイッチユニット30は、シート14に着座した乗員に対向するように操作盤41を車体後方上方に指向させて配設されている。
【0035】
携帯キーをキー孔42に挿入すると、キーシリンダ46の回動操作が可能となる。キー孔42の周囲には、キーシリンダ46の回動位置に対応して発揮される機能が記載されている。「ON」および「OFF」位置で主電源をオンオフするほか、「LOCK」位置に回動させた場合には、キーシリンダ46の側面からハンドルロックピン47が突出して、ハンドル6の回動操作が禁止される。そして、「SEAT」位置に回動させると、揺動操作型スイッチ50の操作子51がロック状態から揺動可能状態に切り替わる。キーシリンダ46の車体下方側の端部には、複数の配線からなるハーネス48が接続されている。
【0036】
揺動操作型スイッチ50の操作子51は、その正面視で車体上下方向を長手方向とする略長方形とされ、キーシリンダ46を「SEAT」位置に回動させた際には、操作子51の車体下方側、すなわち、「SEAT」と記載された側を押し下げて揺動動作させることができる。一方、操作子51の車体上方側には、車体上方に延出した規制部52が形成されており、この規制部52が存在することにより、車体上方側の押し下げ動作が不能となるように構成されている。
【0037】
イグニッションスイッチ40と揺動操作型スイッチ50との間には、操作子51の突出方向と同方向に立設すると共に、互いに同形状のリブ43,53が形成されている。イグニッションスイッチ40側のリブ43は、操作盤41から立設し、また、揺動操作型スイッチ50側のリブ53は、操作子51を保持する筐体から立設している。
【0038】
図5は、揺動操作型スイッチ50の斜視図である。また、図6は、揺動操作型スイッチ50の側面図である。操作子51は、揺動軸カバー58の軸方向に分割された筐体56,57によって揺動可能に支持されている。操作子51は、筐体56,57によって形成される開口部70(図8参照)から突出しており、操作子51の規制部52は、この開口部70の周囲を構成する開口端部60に当接するように設けられている。筐体56,57には、イグニッションスイッチ40と揺動操作型スイッチ50とを締結するための締結ネジ67(図4参照)が貫通する貫通孔67aが形成されている。
【0039】
イグニッションスイッチ40と接する側の一方側筐体56には、操作子51を中立位置に保持するためのスイッチロックピン(不図示)が挿入される貫通孔59が形成されている。略方形断面を有するスイッチロックピンは、キーシリンダ46を「SEAT」位置に回動させた場合にのみ没入し、これにより、操作子51が揺動可能状態となる。
【0040】
一方側筐体56と他方側筐体57との間には、操作子51の揺動動作に応じて回動する回動子61が配設されている。回動子61にはワイヤケーブル10と連結するためのタイコ孔62が設けられている。
【0041】
操作子51は、正面視で略長方形とされ、また、揺動軸カバー58の軸方向から見た側面視では、第1押圧部55および第2押圧部54が乗員側に突出した形状とされている。本実施形態では、操作子51が中立位置にある場合の開口端部60からの突出量が、第2押圧部54より第1押圧部55の方が大きく設定されている。前記したように、第2押圧部54は、その一端部に形成された規制部52が筐体56,57の開口端部60に当接するため、押し込む操作が不能である。一方、図6に破線で示したように、第1操作部55を十分に押し込んだ際には、第2押圧部54がリブ53の高さを超えて持ち上がることとなる。
【0042】
図7は、揺動操作型スイッチ50の一部断面斜視図である。イグニッションスイッチ40と揺動操作型スイッチ50とは、2本の締結ネジ67によって固定されている。操作子51の裏面側には、金属製の板材等からなる一方側アーム65および他方側アーム64が固定されており、この両者を貫通して揺動軸58bが固定されている。一方側アーム65には、前記したスイッチロックピンが挿入される貫通孔65bが形成されている。本実施形態では、一方側アーム65および他方側アーム64が一体成形部品とされ、両アームを連結する天板部分(不図示)が樹脂等からなる操作子51にインサート成型されている。
【0043】
キーシリンダ46が「SEAT」の位置、すなわち、スイッチロックピンが貫通孔65bに挿入されていない状態において、操作子51の第1押圧部55を押圧すると、一方側アーム65に形成された押圧端部65aが回動子61の被押圧端部63を押圧し、これに応じて、回動子61が回動軸66を中心にして反時計回りに回動する。
【0044】
一方、第2押圧部54は、スイッチロックピンが貫通孔65bに挿入されていない状態においても、その端部に設けられた規制部52によって押し下げることができない。これは、本実施形態に示す揺動操作型スイッチが、本来、シートキャッチおよび燃料リッドのロック解除装置等の2種の装置を作動させることを想定したものであるところ、必要最小限の変更によって操作子51の一方側を押し下げた際に空振り感が生じないように構成した結果である。すなわち、作動させる装置を1つだけ持つ車種に流用するために新たに設けられた部品は操作子51のみであり、ケーブルガイド部68,69を有する一方側筐体56のほか、一方側アーム65および他方側アーム64も共通部品で構成することが可能である。さらに、本実施形態では、他方側アーム64に接する回動子(不図示)を取り外して部品点数の削減も達成している。
【0045】
図8は、揺動操作型スイッチ50の一部断面拡大図である。前記したように、操作子51は、一方側筐体56と他方側筐体57との間に形成された略長方形の開口部70に挿入されている。開口部70の周囲には開口端部60が形成されており、この開口端部60の上端面に操作子51の規制部52が当接することで第2押圧部54の押し下げ操作が不能となる。この規制部52が存在せず、第2押圧部54が押し下げ可能であった場合には、第2押圧部54を押し下げても何らの機能も発揮されず、乗員に違和感を与える可能性があったが、本実施形態に係る構成によれば、第2押圧部54の押し下げ操作が不能となっているため、乗員が違和感を覚える可能性が低減される。
【0046】
本実施形態に係る操作子51は、正面視において略長方形の短辺にあたる部分、換言すれば、揺動軸58bを基準として、揺動軸58bの径方向に最も離間した部分に規制部52が設けられている、これにより、例えば、規制部を略長方形の長辺にあたる部分等に設ける場合に比して、押し下げ操作に伴って規制部に加わる荷重を低減することが可能となり、規制部を小型化して設置を容易にすると共に、規制部のデザインの自由度を高めることができる。また、操作子51は、揺動軸58bを車幅方向に指向させると共に、第2押圧部54より第1押圧部55の方が車体下方側に位置するように配設されているので、シート14に着座した乗員が斜め後方上方から手を伸ばした際の押圧動作が容易である。
【0047】
リブ43,53は、揺動軸58bの軸方向視において、揺動軸58bを挟んで左右対称に形成されている。これに対し、操作子51は、中立位置における突出量が、第2押圧部54より第1押圧部55の方が大きくなるように設定されている。この構成により、リブ43,53の形状を変えることなく、操作子51の第2押圧部54とリブ43,53との間に突出量の差を設けることを可能とし、これにより、乗員が第2押圧部54を押し下げようとしても、指が第2押圧部54より先にリブ43,53に当接して、第2押圧部を押し下げる動作が不能とされていることを、指先の感覚で認識することができる。
【0048】
また、特に図2,3を参照して、第1押圧部55は、第2押圧部54の車体下方側の位置で、かつキーシリンダ46のキー孔42に対して、キーシリンダ46を「OFF」位置から「ON」位置に回動させる回転方向側の斜め下方の位置に配設されている。本実施形態では、「OFF」位置から「ON」位置に回動させる方向は時計回りであり、両位置の間に「SEAT」位置が設けられている。
【0049】
したがって、これから乗車しようとしてシート14の下部に収納したヘルメット等を取り出す場合には、キーシリンダ46を「OFF」位置から時計回りに回動させて「SEAT」位置とし、続けて、キー孔42の右下に位置する第1押圧部55を押圧することでシート14を解錠することとなる。すなわち、上記したようなキー孔42と第1押圧部55との配置関係によれば、シート14を開くために携帯キーを右回りに回動させて「SEAT」位置とする際に、回動操作した手の動きがなす軌跡の延長線上に第1押圧部55が位置することとなる。これにより、キーシリンダ46および操作子51の連続操作がしやすくなり、揺動操作型スイッチ50の使い勝手がさらに向上する。
【0050】
図9は、コンビスイッチユニット30の一部断面側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この図では、操作子51の裏面側に固定される他方側アーム64を省略している。コンビスイッチユニット30は、開口部70を形成する開口端部60がインナカバー8から少しだけ突出するように配設することができる。なお、筐体56,57間は、互いに係合爪57aによって係合しているのみであるが、前記したように、イグニッションスイッチ40と揺動操作型スイッチ50とを固定する締結ネジ67を締め付けることにより、筐体56,57間も共締めにより固定されることとなる。
【0051】
ワイヤケーブル10の端部は、一方側筐体56に形成されたケーブルガイド部68(図7参照)に支持され、ワイヤ10aの端部に固定された円筒状のタイコ10bは、回動子61のタイコ孔62(図7参照)に嵌め込まれている。そして、乗員が操作子51の第1押圧部55を押し下げると、一方側アーム65の押圧端部65aが回動子61を反時計回りに回動し、ワイヤ10aが牽引されて、シートキャッチ17が作動することとなる。
【0052】
なお、操作子の形状は種々の変更が可能であり、例えば、図9に破線で示すような立設部51bを第1押圧部55および第2押圧部54の間に設けた場合には、立設部51bを把持して操作子51を揺動させることができ、揺動操作型スイッチの利便性を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、揺動操作型スイッチの形状や構造、操作子の第1押圧部および第2押圧部の形状、規制部や筐体の形状、揺動操作型スイッチにより作動させる装置の構造等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、揺動操作型スイッチは、電気的接点のオンオフを切り替えるスイッチであってもよい。本発明に係る揺動操作型スイッチは、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…自動二輪車、6…ハンドル、8…インナカバー、10…ワイヤケーブル、10a…ワイヤ、10b…タイコ、17…シートキャッチ(所定の装置)、30…コンビスイッチユニット、43,53…リブ、50…スイッチユニット(揺動操作型スイッチ)、51…操作子、51a…周縁部、51b…立設部、52…規制部、54…第2押圧部、55…第1押圧部、56,57…筐体、58b…揺動軸、60…開口端部、61…回動子、66…回動軸、70…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(56,57)に対して揺動軸(58b)を中心に揺動可能に支持されるシーソー式の操作子(51)を有し、該操作子(51)に、前記揺動軸(58b)を挟んで一方側に位置する第1押圧部(55)および他方側に位置する第2押圧部(54)が設けられている揺動操作型スイッチ(50)において、
前記第1押圧部(55)を押し下げることで所定の装置(17)が作動するように構成されていると共に、前記第2押圧部(54)には、前記筐体(56,57)に当接することで中立位置からの押し下げ動作を不能とする規制部(52)が設けられていることを特徴とする揺動操作型スイッチ。
【請求項2】
前記操作子(51)は、前記筐体(56,57)に設けられる開口部(70)に配置されており、
前記規制部(52)は、前記開口部(70)を形成する開口端部(60)に当接することを特徴とする請求項1に記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項3】
前記規制部(52)は、前記操作子(51)の周縁部(51a)のうち、前記揺動軸(58b)から前記揺動軸(58b)の径方向に最も離間した部分に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項4】
前記第1押圧部(55)を押し下げ操作することにより、前記所定の装置(17)に連結されたワイヤ(10a)が牽引されて前記所定の装置(17)が作動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項5】
前記規制部(52)は、前記筐体(56,57)の外方側で前記開口端部(60)に接するように形成されていることを特徴とする1ないし4のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項6】
前記操作子(51)の前記第1押圧部(55)および第2押圧部(54)は、前記筐体(56,57)の開口部(70)から前記筐体(56,57)の外方に突出しており、
前記開口部(70)を構成する4辺のうち、前記揺動軸(58a)と垂直方向に指向する1辺に沿って板状のリブ(53)が立設して設けられており、
前記操作子(51)は、その中立位置において、前記第1押圧部(54)の突出高さが前記リブ(53)と同等となる一方、前記第2押圧部(55)の突出高さが前記リブ(53)より低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項7】
前記開口部(70)からの前記操作子(51)の突出量が、前記第1押圧部(55)より前記第2押圧部(54)の方が小さく設定されていることを特徴とする請求項6に記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項8】
前記揺動操作型スイッチ(50)は、自動二輪車(1)のイグニッションスイッチ(40)のキーシリンダ(46)と一体に構成されると共に、前記キーシリンダ(46)を所定の位置に回動させた際に前記第1押圧部(55)の押し下げ操作が可能となるように構成されており、
前記イグニッションスイッチ(40)は、前記自動二輪車(1)のハンドル(6)の下方で乗員に対向配置されるインナカバー(8)に埋設されており、
前記操作子(51)は、前記第1押圧部(55)に対して前記第2押圧部(54)の方が車体下方側に位置するように配設されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項9】
前記操作子(51)には、前記第1押圧部(55)と前記第2押圧部(54)との間の位置に、前記操作子(51)から立設する立設部(51b)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。
【請求項10】
前記所定の装置(17)は、シート(14)を開操作可能なシート解錠装置であり、
前記第1押圧部(55)は、前記第2押圧部(54)の車体下方側の位置で、かつ自動二輪車(1)のイグニッションスイッチ(40)のキーシリンダ(46)のキー孔(42)に対して、前記キーシリンダ(46)をオフ位置からオン位置に回動させる回転方向側の斜め下方の位置に配設されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の揺動操作型スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69608(P2013−69608A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208541(P2011−208541)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】