説明

揺動装置

【課題】
簡単な構成により複雑な揺動を発生可能な揺動装置を提供する。
【構成】
モータ104の回転軸104aに直結されたフライホイール103をベース110に搭載してなり、前記モータ104の回転により前記回転軸104aと同軸で回転する出力軸105が形成された回転体102を、ケース120に形成された案内軌道150を構成する摺接面に対して前記出力軸105を摺接可能に、前記ケース120の内部に支承する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロモーメントを利用した体感デバイスとしての揺動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンピュータゲーム上で表現される様々なアクションに伴う振動や揺動等(以下、単に「揺動」という)の衝撃を、ディスプレイの画像や音響に付加してユーザに体感させて臨場感を高めることを目的として、コンピュータゲーム操作用の入力装置に、ジャイロモーメントを利用した揺動装置を搭載することがなされている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に示す従来の揺動装置は何れも、回転駆動されるフライホイールと、フライホイールの回転軸を回転自在に軸受で軸支してなるケースを備えており、前記ケースが傾斜され、フライホイールの回転軸も傾斜した場合に、外力に抗する偶力(ジャイロ効果による反作用=ジャイロモーメント)を利用して揺動を発生させ、その揺動をユーザに入力装置のケースを把持する手を介して体感させるように構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された揺動装置は、回転駆動されるフライホイールと、フライホイールの回転軸を回転自在に軸受で軸支してなるケースを備えており、前記フライホイールは、その回転軸をケースに対して垂直および/または水平にして軸支されている。そして、垂直に配設された回転軸により回転するフライホイールを備える揺動装置は、前記ケースの水平方向への傾斜によって、フライホイールの回転軸も傾斜した場合に、外力に抗する偶力(ジャイロ効果による反作用=ジャイロモーメント)を利用して揺動を発生させ、水平に配設された回転軸により回転するフライホイールを備える揺動装置は、前記ケースの垂直方向への傾斜によってジャイロモーメントを利用した揺動を発生させるように構成されており、ユーザは、発生した揺動を、前記ケースを把持する手を介して体感することができる。
【0005】
また、特許文献2に開示された揺動装置は、回転型ジャイロと、回転型ジャイロのジャイロ軸を回転自在に軸受で軸支してなるジャイロケースを備えており、前記回転型ジャイロは、そのジャイロ軸をケースに対して垂直にして軸支されている。そして、前記回転型ジャイロは、該回転型ジャイロの垂直方向における両面(上下面)に固着された永久磁石およびバックヨーク、ジャイロケースの内面に固着されたヨークおよびコイルから構成されるブラシレスDCモータにより回転可能とされている。
【0006】
また、この特許文献2に開示された揺動装置はさらに、モータ、減速機、ポテンショメータで構成された、回転型ジャイロの軸方向変動装置を備えている。
【0007】
そして、回転型ジャイロを常時高速回転させた状態で、コンピュータ等の指示信号により、モータが正転、逆転を交互に繰り返すことで、ジャイロケースには、ジャイロ効果による反作用としての揺動を発生させるように構成されており、モータの回転速度と回転方向をポテンショメータの出力からフィードバック制御することで、所望の揺動周波数と振幅を得ることにより、ユーザは、発生した揺動を、前記ジャイロケースを把持する手を介して体感することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−5442号公報
【特許文献2】特開平10−97375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの揺動装置は発生する揺動が単調であり、しかも、小型化を阻害する構成を未だ備えていた。
【0010】
そこで、本発明は、簡単な構成により複雑な揺動を発生可能な揺動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の揺動装置は、モータの回転軸に直結されたフライホイールをベースに搭載してなり、前記モータの回転により前記回転軸と同軸で回転する出力軸が形成された回転体が、ケースに形成された案内軌道を構成する摺接面に対して前記出力軸を摺接可能に、前記ケース内に支承されていることを第1の特徴とする。
【0012】
このような構成を備える本発明の揺動装置は、前記モータの回転駆動で回転するフライホールを有する回転体にジャイロモーメントを発生させるとともに、前記モータの回転駆動により回転する前記回転摺動部と前記摺接面との摩擦力により前記回転体をケース内において旋回させることで、ジャイロモーメントを利用した揺動をケースを介してユーザに体感させることができる。
【0013】
また、本発明の揺動装置は、前記案内軌道が、前記回転軸の直径よりも大きい間隙寸法で対向させた2面の前記摺接面を有し、前記出力軸は前記両摺接面間の空間に遊挿させて配設されていることを第2の特徴とする。
【0014】
この構成を備える本発明の揺動装置は、発生するジャイロモーメントを利用して、両摺接面間の空間に遊挿させた前記出力軸を両摺接面に交互に摺接させることで、前記回転体のケース内における旋回方向を切換え、揺動を変化させることができる。
【0015】
さらに、本発明の揺動装置は、前記案内軌道には、前記モータの回転軸の回転力を減速させて前記回転体の旋回力として伝達する減速機構が配設されていることを第3の特徴とする。
【0016】
前記減速機構としては、例えば、一面が前記摺接面として作用する、前記ケースに対して相対移動可能に配設された平板状のトラクションリングと、前記トラクションリングの前記摺接面として作用する面の反対側に配設され、トルクリングにより自転自在に保持されるボールを備えたボールベアリングとから構成することができる。
【0017】
このように減速機構を配設することにより、発生する揺動をゆっくりとした、大きなものとして、ユーザに体感させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の揺動装置は、前記回転体は、前記モータの回転軸と直交する軸を中心として旋回自由にケース内に支承されており、前記案内軌道は、前記回転体の旋回平面と平行な摺接面を有する円環状に形成されていることを第4の特徴とする。
【0019】
このように、回転体の旋回軸1軸のみの旋回機構を備えた揺動装置は、ケースを把持するなどして、該装置に若干の振動を与え、モータの駆動によって回転する回転軸の先端を案内軌道の摺接面に接触させる。そして、回転軸と摺接面との間に発生する摩擦力により、前記回転軸の先端を前記案内軌道に沿って案内し、移動させることで、前記モータを有する回転体を、該回転体を支承するベース毎、旋回させる。この時に回転軸と旋回方向に対して直交する方向に発生するジャイロモーメントを利用し、該装置に揺動を発生させる。
【0020】
その際、前記案内軌道内に配置された前記モータの回転軸は、回転体に作用するジャイロモーメントによって、前記案内軌道を構成する摺接面の夫々に交互に接触することとなる。これにより、該装置から発生する揺動を単調なものではなくすることができる。
【0021】
また、本発明の揺動装置は、旋回軸を中心に旋回可能に前記ケースに支承されたジンバルを備え、前記回転体は、前記モータの回転軸および前記ジンバルの旋回軸とそれぞれ直交する軸を中心として前記ジンバル内に旋回自由に支承されていることを第5の特徴とする。
【0022】
このように、ベースの旋回軸と、ジンバルの旋回軸との2軸の旋回機構を備えた揺動装置は、ケースを把持するなどして、該装置に若干の振動を与え、モータの駆動によって回転する回転軸の先端を案内軌道の摺接面に接触させる。そして、回転軸と摺接面との間に発生する摩擦力により、前記回転軸の先端を前記案内軌道に沿って案内し、移動させることで、前記モータを有する回転体を、該回転体を支承するベース、および前記ベースを支承するジンバル毎、旋回させる。この時に回転軸と旋回方向に対して直交する方向に発生するジャイロモーメントを利用し、該装置に揺動を発生させる。
【0023】
その際、前記案内軌道内に配置された前記モータの回転軸は、回転体に作用するジャイロモーメントによって、前記案内軌道を構成する摺接面の夫々に交互に接触することとなる。この時、前記モータの回転方向が一定であれば、回転体の回転軸の前記案内軌道内における移動方向は、接触する摺接面が切り替われば、その移動方向も逆方向となって、回転体により発生する揺動を単調なものではなくすることができる。
【0024】
この揺動装置においては、例えば、前記案内軌道は、無端状の波形に形成することができる。案内軌道を無端状の波形に形成することで、発生させる揺動をより複雑なものとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明によれば、1つのモータで、フライホイールの回転力と、ジャイロモーメントを発生させるためのトルク(回転体の旋回力)を得ることができ、簡単な構成で、複雑な揺動を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例の揺動装置の全体形状を示す斜視図
【図2】図1の揺動装置の要部断面図
【図3】図1の揺動装置における回転体の出力軸と案内軌道との位置関係を説明するための斜視図
【図4】図1の揺動装置の分解斜視図
【図5】本発明の第2実施例の揺動装置の全体形状を示す斜視図
【図6】図5の揺動装置の要部断面図
【図7】図5の揺動装置における回転体の出力軸と案内軌道との位置関係を説明するための斜視図
【図8】図5の揺動装置の一部(ケース)分解斜視図
【図9】本発明の第3実施例の揺動装置の全体形状を示す斜視図
【図10】図9の揺動装置における回転体の出力軸と案内軌道との位置関係を説明するための斜視図
【図11】図9の揺動装置の一部(ケース)分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態:1軸の旋回機構を備えた揺動装置>
本実施形態の揺動装置は、モータの回転軸に配設され、前記モータの回転軸と同軸で回転駆動されるフライホイールをベースに搭載した回転体と、前記回転体のベースを支承するケースとを有している。
【0028】
前記ケースには、回転体のベースが前記モータの回転軸と直交する軸を中心として旋回自由に支承されている。
【0029】
前記ケース内には、前記ベースと共に旋回する回転体の旋回平面と平行な円環状の摺接面を有する案内軌道が形成されており、前記回転体は前記モータの回転により前記回転軸と同軸で回転する出力軸を前記摺接面に対して摺接可能に前記ケース内に支承されている。
【0030】
前記案内軌道は、前記回転軸の直径よりも大きい間隙寸法で対向させた2面の摺接面を有しており、前記回転体の出力軸は対向する摺接面間に遊挿されて配設されている。
【0031】
また、前記案内軌道には、前記モータの回転軸の回転力を減速させて前記回転体の旋回力として伝達する減速機構が配設されている。
【0032】
図1乃至図3は、本発明の第1実施例を示す。第1実施例において、揺動装置101に搭載される回転体102のフライホイール103は、天井部を備えた円筒状に形成されており、前記天井部の中央上部には軸孔部103aが形成されている。回転体102にこのような円筒状のフライホイール103を用いることにより、回転モーメントを増大することができる。そして、フライホイール103は、円筒状に形成された本体内から前記モータ104の回転軸104aを軸孔部103aに嵌着させることで、モータ104の回転軸104aと一体に回転可能とされている。また、前記軸孔部103aの先端には摺動ピン105が嵌着され、モータ104の回転軸104aと同一軸上に配設されており、フライホール103の回転と共に回転する回転体102の出力軸とされている。
【0033】
回転体102を搭載するベース110は、底部を備えた略円筒状に形成されており、その底部に形成された開口部内に前記モータ104の回転軸104aが突出していない側(以下、こちら側をモータの下部(下方向)とする)を嵌着させた状態で、モータ104の下面に形成された電源供給用の端子104bを露出させて支承するとともに、前記フライホイール103を回転自在にして収納するように形成されている。
【0034】
前記ベース110の略円筒状の外周壁には、搭載するモータ104の回転軸104aと直交する軸上に、前記回転体102を搭載した状態のベース110を旋回させる旋回軸となる、一対のピボット111が配設されている。なお、各ピボット111の先端部には凹部が形成されており、この凹部内には、ベースの回転時の摺動補助部材として作用する小径のボール112が、その一部を凹部外に露出させた状態で回転自在に配設されている。
【0035】
ここで、モータ104の駆動力を供給する電気経路を説明する。本実施例の揺動装置101は、金属薄板からなり、略円盤状の本体115aと、本体の一端に接続され、ケース120の外方へ延出して不図示の電源系に接続される延出部115bとからなる2枚の第1コンタクト板115を備えており、前記本体115aの中央部には、前記ピボット111を嵌挿させる第1開孔部115cが形成されている。
【0036】
さらに、前記揺動装置101は、金属薄板からなる長尺な片状に形成され、前記ベース110と第1コンタクト板115との間に配置されているとともに、一端部をベース110の外周壁において前記第1コンタクト板115に接触させ、他端部をベース110の底部外壁に固定させる2枚の第2コンタクト板116を備えている。
【0037】
各第2コンタクト板116の前記一端部には、ケース120にベースを支承するピボット111を嵌挿させる第2開孔部116aが形成されている。そして、各第2コンタクト板116の当該一端部は、前記第1コンタクト板115と重ねて接触させて電気的な導通を確保した状態で、前記第2開孔部116aおよび第1開孔部115cを嵌挿するピボット111により軸支されており、前記一対のピボット111を旋回軸としてベース110が旋回する際に、該第2コンタクト板116も電気的導通をとりながらベース110と一体に前記ピボット111の周囲を回動するように構成されている。なお、第2コンタクト板116の一端部と第1コンタクト板115との接触部位に導電グリスを塗布して、導通を確保しつつ、滑らかな回転を促すようにするとよい。
【0038】
また、各第2コンタクト板116の前記他端部には、ねじ止め用のねじ挿通孔116bが形成されている。そして、各第2コンタクト板116の各他端部は、ベース110におけるモータ104の端子部近傍となる位置に、前記ねじ挿通孔116bを用いてねじ止めすることによって固定されており、モータ104の端子104bに、不図示のコンタクト部材を用いて接続することで、前記モータ104に駆動力を供給可能に形成されている。
【0039】
このように構成された回転体102を支持するケース120は、樹脂製からなる中空な略半球状の上ケース121と、同じく中空な略半球状の下ケース122とから構成されている。
【0040】
前記上ケース121及び下ケース122の略半球状の頂部内面は、略円盤状とされた前記第1コンタクト板115の本体115aと略同形状の略円形状の平底に形成されており、平底の中心部には、前記ピボット111の先端部を位置させてベース110を回動自在に軸支する円柱状の軸孔120aが形成されている。
【0041】
また、前記下ケース121及び下ケース122には、前記平底と連続する面を備えてケース外に開口する連通孔120bがそれぞれ形成されており、前記第1コンタクト板115は、前記延出部115を前記連通孔120bから各ケース121,122外へ延在させ、本体115aを前記平底に嵌着させて配設されている。
【0042】
前記下ケース121と下ケース122の円形状開口部の外周縁には、両ケース121,122の互いの配設方向に延在する複数個のブラケット123が対向する位置にそれぞれ形成されている。本実施例においては、それぞれ4つのブラケット123が等間隔(90°ずつ)に形成されている。そして、上ケース121のブラケット123AにはねじNを挿通させるねじ挿通孔123aが形成され、下ケース122のブラケット123BにはねじNを螺合させるねじ穴123bが形成されている。
【0043】
そして、上ケース121と下ケース122は、夫々に形成された軸孔120aを対向させ、前記ベース110のピボット孔110aに配設されたピボット111を位置させて回転体102を軸支した状態で、上ケース121のブラケット123Aと下ケース122のブラケット123Bを位置合わせし、ねじNを前記ねじ挿通孔123aに挿通させ、さらに前記ねじ穴123bに螺合させることで、中空部を備えた外形状略球状のケース120内に回転体102を支承するようになされている。
【0044】
前記下ケース122の円形状開口部の内周縁近傍には、前記円形状開口部の中心と同一軸上の一点を中心とするリング状の段部124が、前記回転体102の旋回平面と平行に形成されている。
【0045】
そして、本実施例においては、モータ104の回転軸104aの回転力を減速させて回転体102の旋回力として伝達する減速機構が配設されている。前記減速機構は、トルクリング130により前記段部124の上面に自転自在に保持されるボール131を備えたボールベアリング132を備えている。さらには、前記ボールベアリング132の上面に配設され、ケース120に対して相対移動可能に配設された平板状のトラクションリング133を備えており、これらは前記下ケース122に嵌着された状態で前記段部124上に積層載置されている。
【0046】
本実施例において、前記トラクションリング133は、前記摺動ピン105の外径寸法(0.6mm)の50倍の径寸法(30mm)に形成されており、50:1の減速機構を実現するものとされている。このように、摺動ピン105の外周寸法とそれが摺動する周回面の長さ比、つまり、本実施例においては前記トラクションリング133の周回長さ比を調整することで、揺動感を調整することができる。モータの回転、すなわち、フライホイールの回転を速くした上で、減速機構を用いて大きな揺動感を得ることが望ましい。
【0047】
また、本実施例の揺動装置101は、対向配置される面との間に案内軌道150を形成する平面を有するスリップリング134を備えている。本実施例において、前記スリップリング134は、前記トラクションリング133の上面と対向する環状の平面と、その平面における外縁部から前記トラクションリング133の配設方向へ垂設された壁面とにより、断面形状L字状に形成されている。
【0048】
前記スリップリング134の外周には、前記トルクリング130、トラクションリング133、およびスリップリング134の重ね方向に延在するねじ挿通孔135aが設けられたブラケット135が形成されている。
【0049】
スリップリング134は、ブラケット135を下ケース122の前記切欠き部122aからケース120の外方へ延出させるようにして、下ケース122に納められる。これにより、下ケース122の段部の上面と前記スリップリング134の下面との間に、トルクリング130およびトラクションリング133が摺動回転自在に配設される。
【0050】
なお、本実施例の揺動装置101を組み立てる時には、スリップリング134を下ケース122に納める前に、回転体102を下ケース122内に、その一方のピボットが前記軸孔120aに配置され、摺動ピン105が前記トラクションリング133の上面に摺接させるようにして収納しておく。
【0051】
また、前記下ケース122の円形状開口部の外周縁には、スリップリング134に形成されたブラケット135を下ケース122の外方へ延在させるための切欠き部122aが形成されており、この切欠き部122aに対応する前記下ケース122の外周壁には、前記トルクリング130、トラクションリング133、およびスリップリング134の重ね方向に延在するねじ穴125aが設けられたリング用ブラケット125が形成されている。
【0052】
そして、スリップリング134のブラケット135と下ケース122のリング用ブラケット125とを位置合わせした状態で、ねじNをねじ挿通孔135aに挿通させ、さらにねじ穴125aに螺合させることで、下ケース122の段部の上面と前記スリップリングの下面との間に、トルクリング130およびトラクションリング133が摺動回転自在に配設され、前記トラクションリング133の上面とスリップリング130の下面との間に、出力軸として作用する摺動ピン105の直径よりも大きい間隙寸法の空間からなり、ベース110に載置された回転体102の出力軸としての摺動ピン105が遊挿される案内軌道150が形成されている。案内軌道150内で対向配置された前記トラクションリング133の上面とスリップリング130の下面は案内軌道150を構成する摺接面として作用する。
【0053】
なお、前記上ケース121は、このようにして案内軌道150が形成された下ケース122に対し、上述のようにしてピボット111を軸孔120aに配置させつつねじNを用いて固定される。
【0054】
このような構成とされた揺動装置101は、次のようにして揺動を発生させる。
【0055】
まず、回転体102のモータ104に駆動力を供給し、このモータ104の回転軸に固定されたフライホイール103を回転させる。その状態で、ケース120を手によって把持して該装置101に若干の振動を与え、モータ104の回転軸と同一軸上に配設された摺動ピン105からなる回転体102の出力軸を、案内軌道150のいずれかの摺接面に接触させる。そして、出力軸と摺接面との間に発生する摩擦力により、前記出力軸を前記案内軌道150に沿って案内し、移動させることで、モータ104を有する回転体102をベース110毎、前記ベース110の旋回軸の1軸で旋回させる。この時、モータ104の回転軸104aとその旋回方向に対して直交する方向にジャイロモーメントが発生するので、このジャイロモーメントを利用し、該装置101にジャイロ効果の反作用としての揺動を発生させる。
【0056】
すなわち、前記案内軌道150内に遊挿された前記回転体102の出力軸は、その周面を案内軌道150を構成する摺接面に押し付けるように作用するジャイロモーメントにより、対向して配設された摺接面の夫々に交互に接触する。このとき、ジャイロモーメントが摺接面からケース120を介してユーザの手に伝達され、ユーザは複雑な揺動を体感することができる。つまり、前記出力軸は常に一定方向に回転するため、接触する摺接面が対向する前記トラクションリング133の上面とスリップリング130の下面とで変わることによって、前記出力軸が案内されて移動する方向(旋回方向)も切り替わり、反転するため、予測不可能な揺動を発生させることができる。
【0057】
また、前記減速機構を配設することにより、発生する揺動をゆっくりとした、大きなものとして、ユーザに体感させることが可能となる。
【0058】
具体的には、本実施例においては、第1の減速機構として、回転体102の出力軸としての摺動ピン105の直径と、それに摺接するトラクションリング133およびスリップリング134の直径の比を1:50として、回転体102の回転を減速してケース120側に伝達するようにしている。
【0059】
さらに、本実施例においては、第2の減速機構としてトラクションリング133およびトルクリング134を設けて更に1/2に減速している。
【0060】
この第2の減速機構の動作を説明すると、回転体102の出力軸が減速機構のトラクションリング133に接触した場合には、当該トラクションリング133がトルクリング134によって周方向に回転自在に配設されているために、出力軸が旋回を停止し、代わってトラクションリング133が出力軸との摩擦接線によって周方向(旋回方向)に回転させられる。このことにより、出力軸の回転のケース120への伝達を1/2に減速させることとなる。また、出力軸とトラクションリング133とが接触することにより、両者が旋回方向に互いに逆方向に旋回することもあり、より複雑な揺動を発生させることができる。これにより、回転体102をより高速に回転させることによって、大きな回転エネルギーを発生させて、大きな回転モーメントを得て、ゆっくりとした大きな揺動を発生させることができる。
【0061】
なお、前記第2の減速機構は省略することも可能である。また、所望の回転体効果を得るには、50rps(3000rpm)が必要であり、適当な揺動感を得るためには1Hz以下の周波数の低い揺動運動とすることが望ましい。
【0062】
<第2実施形態:2軸の旋回機構を備えた揺動装置>
本実施形態の揺動装置は、モータの回転軸に配設され、前記モータの回転軸と同軸で回転駆動するフライホイールをベースに搭載した回転体と、前記回転体のベースを支承するケースとを有している。
【0063】
前記ケースにはジンバルが、ある一軸を旋回軸として旋回可能に支承されており、前記ジンバルには、前記回転体のベースが、前記モータの回転軸および前記ジンバルの旋回軸とそれぞれ直交する軸を中心として旋回自由に支承されている。
【0064】
前記ケース内には、前記モータの回転により前記回転軸と同軸で回転する回転体の出力軸を摺接させる摺接面を有する案内軌道が形成されている。
【0065】
前記案内軌道は、前記回転軸の直径よりも大きい間隙寸法で対向させた2面の摺接面を有しており、前記回転体は、出力軸を対向する摺接面間に遊挿させ、前記摺接面に対して摺接可能に、前記ジンバルを介して前記ケース内に支承されている。
【0066】
図5乃至図8は、本発明の第2実施例(第2実施形態の第1実施例)を示す。本実施例において、前記ベース210は、天井部を有する円筒状の収容部210aと、その下縁部周縁に連接されたフランジ部210bと、フランジ部210bの外周縁における対向位置に前記収容部210aに沿って立接された一対の袖壁部210cを備えて形成されている。前記天井部の中央上部には軸孔部210dが形成されており、前記ベース210は、その収容部210aをモータ204に回転軸側(上側)から嵌着させ、軸孔部内210dにモータ204の回転軸204aを配置するとともに、モータ204の下面に形成された電源供給用の端子204bを下方へ露出させて支承している。
【0067】
また、前記回転体202のフライホイール203は天井部を備えた円筒状に形成されており、前記天井部の中央上部には軸孔部203aが形成されている。回転体202にこのような円筒状のフライホイール203を用いることにより、回転モーメントを増大することができる。そして、フライホイール203は、円筒状に形成された本体をベース210の収容部210aに前記モータ204の回転軸側(上側)から嵌着させ、軸孔部210dから突出するモータ204の回転軸204aを軸孔部203aに嵌着させることで、略円筒状の外周壁をベース210の収容部210a、フランジ部210bおよび袖壁部210cとにより囲繞された空間内に位置させ、モータ204の回転軸204aと一体に回転可能とされている。
【0068】
また、フライホイール203の軸孔部203aの先端には摺動ピン205が嵌着され、モータ204の回転軸204aと同一軸上に配設されており、フライホール203の回転と共に回転する回転体202の出力軸とされている。
【0069】
前記ベース210の袖壁部210cには、モータ204の回転軸204と直交する軸上に、前記回転体202を搭載した状態のベース210を旋回させる旋回軸となる一対のピボット211が配設されている。
【0070】
また、本実施例においては、上面視十字状に周壁を延在させ、全体形状略半球状に曲面形成されたジンバル240を有している。十字状に延在する周壁のうち、対向する一対の周壁は、該ジンバル240を該揺動装置のケース220に対し、一対のピポット241により旋回可能に軸支するためのケース連結壁240aとされている。また、他の一対の周壁は、該ジンバル240内に、前記ベース210を前記一対ピポット211により旋回可能に軸支するためのベース連結壁240bとされている。
【0071】
また、ジンバル240の頂部には、前記一対のケース連結壁240aに亘って延在し、該ジンバル240に軸支するベース210に搭載された回転体202の出力軸となる摺動ピン205を移動可能に遊挿させる開口部240cが形成されている。
【0072】
ここで、モータ204の駆動力を供給する電気経路を説明する。
【0073】
本実施例の揺動装置201は、金属薄板からなり、略円盤状の本体215aと、本体215aの両端に接続され、ケース220の外方へ延出して不図示の電源系に接続される延出部215bとからなる2枚の第1コンタクト板215を備えており、前記本体215aの中央部には、前記ケース連結壁240aの外周面から外方へ突出させて配設されて前記ケース240に軸支されるピボット241を嵌挿させる第1開孔部(図示せず)が形成されている。
【0074】
また、前記揺動装置201は、金属薄板からなる長尺な片状に形成され、ケース220とジンバル240との間に配置されているとともに、一端部をジンバル240のケース連結壁240aの外周面において前記第1コンタクト板215に接触させ、他端部をジンバル240のベース連結壁240bの外周面に固定させた、2枚の第2コンタクト板216を備えている。
【0075】
各第2コンタクト板216の前記一端部には、ケース220にジンバル240を支承する前記ピボット241を嵌挿させる第2開孔部(図示せず)が形成されている。そして、各第2コンタクト板216の当該一端部は、第1コンタクト板215と重ねて接触させて電気的な導通を確保した状態で、前記第2開孔部および第1開孔部を嵌挿するピボット241により軸支されており、この一対のピボット241を旋回軸としてジンバル240が旋回する際に、該第2コンタクト板216も電気的導通をとりながらジンバル240と一体に前記ピボット211の周囲を回動するように構成されている。なお、前記第2コンタクト板216の一端部と第1コンタクト板215との接触部位に導電グリスを塗布して、導通を確保しつつ、滑らかな回転を促すようにするとよい。
【0076】
また、各第2コンタクト板216の前記他端部には、ジンバル240にベース210を支承するピボット211の先端部を嵌挿させる第3開孔部(図示せず)が形成されている。
【0077】
さらに、前記揺動装置201は、金属薄板からなる長尺な片状に形成され、前記ジンバル240とベース210とに亘って配置されているとともに、一端部をジンバル240のケース連結壁240aにおいて前記第2コンタクト板216に接触させ、他端部をベース210の外周面に固定させた2枚の第3コンタクト板217を備えている。
【0078】
各第3コンタクト板217の前記一端部には、ジンバル240にベース210を支承するピボット211を嵌挿させる第4開孔部(図示せず)が形成されている。そして、各第3コンタクト板217の当該一端部は、第2コンタクト板216と重ねて接触させて電気的な導通を確保した状態で、前記第3開孔部および第4開孔部を嵌挿するピボット211により軸支されており、この一対のピボット211を揺動軸としてベース210が揺動する際に、該第3コンタクト板217も電気的導通をとりながらベース210と一体に前記ピボット211の周囲を揺動するように構成されている。
【0079】
各第3コンタクト板217の前記他端部には、ねじ止め用のねじ挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、各第3コンタクト板217の各他端部は、ベース210におけるモータ204の端子部近傍となる位置に、前記ねじ挿通孔を用いてねじ止めすることによって固定されており、モータ204の下面に形成された電源供給用の端子に、不図示のコンタクト部材を用いて接続することで、前記モータ204に駆動力を供給可能に形成されている。
【0080】
このように構成された回転体202を支持するケース220は、樹脂製からなり、円形の開口部を有する中空なたこつぼ状の本体ケース221と、前記開口部を覆う蓋ケース222とから構成され、これらを接合することによって、ケース220の内部には略球体状の空間が形成され、前述のジンバル240と回転体202とが配設されるようになっている。
【0081】
本体ケース220は前記ジンバル240を支承するピボット241が配設される軸孔を通って前記開口部を2分割する分割ラインによって、2つに対称に分割された略半球状とされた右本体ケース221aと左本体ケース221bから構成されている。なお、以下では、右本体ケース221aと左本体ケース221bの夫々の前記分割ラインによる断面を接合面という。
【0082】
そして、前記右本体ケース221aと左本体ケース221bの前記接合面における周壁内側には、前記ケース連接壁240aに配設されたピボット241の先端部を位置させて、前記ジンバル240を旋回自在に軸支するための半円柱状の軸孔220cがそれぞれ対応させて形成されている。
【0083】
また、前記接合面における前記軸孔220cの両隣には、前記第1コンタクト板215の延出部215bを配置させるための、ケース220の外方と連通する連通孔220dがそれぞれ対応させて形成されている。
【0084】
前記右本体ケース221aと左本体ケース221bの前記分断面における外周壁縁部には、両ケース221a,221bの互いの配設方向に延在する複数個の第1ブラケット221cおよび第2ブラケット221dが、それぞれに対向させるように形成されている。本実施例においては、一方の第1ブラケット221cにはねじNを挿通させるねじ挿通孔221eが形成され、他方の第2ブラケット221dにはねじNを螺合させるねじ穴221fが形成されている。
【0085】
そして、右本体ケース221aの第1ブラケット221cと左本体ケース221bの第2ブラケット221d、右本体ケース221aの第2ブラケット221dと左本体ケース221bの第1ブラケット221cをそれぞれ位置合わせした状態でねじNを前記ねじ挿通孔221eに挿通させ、更に前記ねじ穴221fに螺合させることで、略球状の中空部を備えたたこつぼ状の本体ケース221が形成されるようになされている。
【0086】
なお、本実施例の揺動装置201を組み立てる時には、右本体ケース221aと左本体ケース221bをねじ止めする際に、回転体202のピボット241を前記軸孔220cに配置し、連通孔220dに前記第1コンタクト板215の延出部を215bを位置させるようにする。
【0087】
また、本体ケース221の円形状の開口部の外周縁部には、本体ケース221と蓋ケース222の配設方向に延在し、ねじNを螺合させるねじ穴221hが形成された第3ブラケット221gが等間隔(90°ずつ)に形成されている。
【0088】
ここで、蓋ケース222は本体ケース221の開口部外周と同型の略円形状とされており、本体ケース221の開口部を構成する周壁縁部に当接する、平板な円環状の接合部222aと、その接合部222aに囲繞された中央部分であって、本体ケース221の内周壁面と略連続してケース220の内部に略球状の中空部を形成するべく、ドーム状に突出する曲面部222bとが形成されている。そして、蓋ケース222の外周には、前記第3ブラケット221gと対応させて、ねじNを挿通させるねじ挿通孔222dが形成された第4ブラケット222cが形成されており、蓋ケース222の第4ブラケット222cと本体ケース221の第3ブラケット221gを位置合わせした状態でねじNを前記ねじ挿通孔222dに挿通させ、さらに前記ねじ穴221hに螺合させることで、略球状の中空部を備えた外形状略球状のケース220が形成されるようになされている。
【0089】
前記蓋ケース222の下面の前記接合部222aと曲面部222dとの境界部には、浅溝222eが形成されており、この浅溝222eによって凸状の角部が形成された前記曲面部222dの周縁端部が、本実施例の揺動装置201における案内軌道250の一方の摺接面として作用するように構成されている。
【0090】
さらに、本体ケース221の開口部近傍となる内周壁には、前記開口部よりも小径の円形状とされたリング状の段部223が、前記回転体202の旋回平面と平行にケース220内へ突出形成されている。この段部223の内周縁部は面取りされ、本実施例の揺動装置201における案内軌道250のもう一方の摺接面として作用するように構成されている。
【0091】
そして、前述のようにして蓋ケース222と本体ケース221とがブラケット221g、221hとねじNを用いて接合されると、本体ケース221の開口部近傍となる内周壁は、蓋ケース222の内面に形成された浅溝222eの外方縁と連接し、段部223と浅溝222eとにより、前記段部223に形成された摺接面と、前記曲面部222bの周縁部からなる摺接面とを備えた案内軌道250の空間部が形成される。
【0092】
なお、本実施例の揺動装置201を組み立てる時には、本体ケース221と蓋ケース222をねじ止めする際に、回転体202の出力軸となる摺動ピン205をこの案内軌道250内に遊挿するようにする。
【0093】
本実施例において、前記案内軌道250は、前記摺動ピン(0.6mm)の外径寸法の50倍の径寸法(30mm)に形成されており、50:1の減速機構を実現するものとされている。このように、摺動ピンの外周寸法と、前記案内軌道の周回長さ比を調整することで、揺動感を調整することができる。モータの回転、すなわち、フライホイールの回転を速くした上で、減速機構を用いて大きな揺動感を得ることが望ましい。
【0094】
このようにして、ジンバル240には、回転体202がモータ204の回転軸204aと直交する軸を旋回軸として支承され、ケース220には、前記ジンバル240が前記モータ204の回転軸、および回転体202の旋回軸とそれぞれ直交する軸を旋回軸として支承され、前記案内軌道250には、回転体202の出力軸としての摺動ピン205が遊挿された揺動装置201を形成する。
【0095】
第2実施例のような、回転体202のベース210の旋回軸とジンバル240の旋回軸との2軸で旋回する構成の揺動装置202における揺動発生のメカニズムは前記第1実施例と同様であり、回転体202の出力軸と案内軌道250の摺接面との間に発生する摩擦力により、出力軸の先端を案内軌道250に沿って案内し、移動させることで、モータ204を有する回転体202をベース210毎、前記ベース210の旋回軸およびジンバル240の旋回軸との2軸で旋回させる。この時にモータ204の回転軸204aと旋回方向に対して直交する方向にジャイロモーメントが発生するので、このジャイロモーメントを利用し、該装置201にジャイロ効果の反作用としての揺動を発生させる。
【0096】
また、本実施例においても、減速機構として回転体202の出力軸としての摺動ピン205の直径と、段部に形成された摺接面あるいは蓋ケース222の内面に形成された摺接面からなる案内軌道250の直径の比を1:50として、回転体202の回転を減速してケース220側に伝達するようにしている。これにより、回転体202をより高速に回転させることによって大きな回転エネルギーを発生させ、大きな回転モーメントを得て、ゆっくりとした大きな揺動を発生させることができる。
【0097】
図9乃至図11は、本発明の第3実施例(第2実施形態の第2実施例)を示す。
本実施例におけるケース以外の構成は前記第2実施例と同様とし、その説明は省略する。なお、図中に示す部材の符号は、第2実施例における夫々の符号の百の桁を「3」に代えて付し、説明に供する。
【0098】
本実施例の揺動装置301のケース320は、全体形状略球体状とされており、樹脂製からなる4枚の分割ケース321を組みあわせて接合することにより、ケース320の内部には略球体状の空間が形成され、前記空間に前述のジンバル340と回転体302とが支承されるようになっている。また、ケース320の内部、具体的には、ケース320の内壁には、旋回自在に支承された回転体302の出力軸を遊挿させ、摺動旋回可能とする1本の案内軌道350が無端の波状に形成されている。
【0099】
詳しくは、前記4枚の分割ケース321は、中空のケース320を波形に形成された無端状の案内軌道350に沿った分割ラインで2つに分割して小ケースとし、さらに夫々の小ケースについて、ジンバル340をケース320に支承するピボット341の軸孔320cと、その両隣に形成された、後述の連通孔322dを通る直線状の分割ラインで2つに分割することで形成されている。
【0100】
なお、以下では、各分割ケース321の端面に形成された、前記案内軌道350に沿った分割ラインによる断面を軌道接合面といい、前記ジンバル340をケース320に支承するピボット341が配置される、後述の軸孔320c等を通る直線状の分割ラインによる断面を軸孔接合面という。
【0101】
各分割ケース321の軸孔接合面における周壁内側には、前記ケース連接壁340aに配設されたピボット341の先端部を位置させて、前記ジンバル340を旋回自在に軸支するための半円柱状の軸孔320cがそれぞれ対応させて形成されている。
【0102】
また、前記軸孔接合面における前記軸孔320cの両隣には、前記第1コンタクト板315の延出部315bを折り曲げて配置させるための、ケース320の外方と連通する連通孔320dがそれぞれ対応させて形成されている。
【0103】
さらに、前記軸孔接合面には嵌合部材360が配設されている。この嵌合部材360は、ピン部材361とこのピン部材を嵌合させるピン孔362とで一対とされており、2つの分割ケース321のうち、一方の分割ケース321にはピン部材361を形成し、対応する他方の分割ケース321には、前記ピン部材361と対応させてピン孔362を形成するようにして、各分割ケース321の軸孔接合面に配設されている。
【0104】
そして、前記4つの分割ケース321の中から互いに対応する2枚を選び、前記軸孔接合面で接合することにより、開口部に環状の前記軌道接合面が形成された2つの小ケースとされている。
【0105】
なお、本実施例の揺動装置301を組み立てる時には、前記4つの分割ケース321の中から互いに対応する2枚を選び、ねじ止めして2つの小ケースとする際に、回転体302のピボット341を前記軸孔320cに配置し、連通孔320dに前記第1コンタクト板315の延出部315bを位置させるようにする。
【0106】
前記各分割ケース321の外周縁部には、隣位する他の分割ケース321の配置方向に延在する複数個の第1ブラケット321c及び第2ブラケット321dがそれぞれに対向させるように形成されている。本実施例においては、一方の第1ブラケット321cにはねじを挿通させるねじ挿通孔321eが形成され、他方の第2ブラケット321dにはねじを螺合させるねじ穴321fが形成されている。
【0107】
そして、各分割ケース321の第1ブラケット321cとそれに対応する隣位の他の分割ケース321の第2ブラケット321dトをそれぞれ位置合わせした状態でねじNを前記ねじ挿通孔321eに挿通させ、更に前記ねじ穴321fに螺合させることで4枚の分割ケース321は結合され、中空部を備えた略球状のケース320が形成されるようになされている。
【0108】
ここで、前記軌道接合面は、ケース320の内壁側が外壁側から一段下がった段状に形成されており、外壁側に位置する面は他の分割ケース321と面接触させる面とされ、内壁側に位置する面は案内軌道350の底部を形成する面とされる。そして、外壁側の面と内壁側の面とを連続させる、該軌道接合面に直交する方向に延びる面は、本実施例の揺動装置における案内軌道350の摺接面として作用するように構成されている。
【0109】
つまり、4枚の分割ケース321が結合され、中空部を備えた略球状のケース320が形成されたとき、ケース320の内壁の前記軌道接合面が対向する位置に、案内軌道350としてのコ字状の溝が形成される。
【0110】
そして、本実施例の揺動装置301を組み立てる時には、小ケースをねじ止めする際に、回転体302の出力軸となる摺動ピン305をこの案内軌道350内に遊挿するようにする。
【0111】
このようにして、ジンバル340には、回転体302がモータ304の回転軸304aと直交する軸を旋回軸として支承され、ケース320には、前記ジンバル340が前記モータ304の回転軸、および回転体302の旋回軸とそれぞれ直交する軸を旋回軸として支承され、前記案内軌道350には、回転体302の出力軸としての摺動ピン305が遊挿された揺動装置301を形成する。
【0112】
この第3実施例のような、回転体302のベース310の旋回軸とジンバル340の旋回軸との2軸で旋回する構成の揺動装置301における揺動発生のメカニズムも、前記第1、第2実施例と同様であり、回転体302の出力軸と摺接面との間に発生する摩擦力により、出力軸の先端を案内軌道350に沿って案内し、移動させることで、モータ304を有する回転体302をベース毎、前記回転体302のベース310の旋回軸およびジンバル340の旋回軸との2軸で旋回させる。この時にモータ304の回転軸304aと旋回方向に対して直交する方向にジャイロモーメントが発生するので、このジャイロモーメントを利用し、該装置301に揺動を発生させることができる。その際、本実施例においては、前記出力軸は波形に形成された案内軌道350を構成する摺接面の夫々に交互に接触することとなる。これにより、該装置301から発生する揺動をより複雑なものとすることができる。
【0113】
そして、本第2実施形態の2つの実施例に示すように、回転体202,302を搭載するベース210,310の旋回軸と、ジンバル240,340の旋回軸との2軸の旋回機構を備えた揺動装置200,300によれば、1つのモータ204,304で、フライホイール203,303の回転力と、ジャイロモーメントを発生させるためのトルク(回転体の旋回力)を得ることができ、簡単な構成で、複雑な揺動を発生させることができる。
【0114】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0115】
例えば、第2実施形態においても、第1実施形態における第2の減速機構と同様の、滑りを利用した減速機構を案内溝内に配設してもよい。また、案内軌道は必ずしもケースの内壁に形成されている必要はなく、ケース内に案内軌道部材を別に配設してもよい。また、摺動ピンを設けず、モータの回転軸を直接、案内軌道内に遊挿する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
ゲーム機等に用いられる、把持した状態で操作するコントローラ(入出力装置)に搭載することで、前記コントローラを操作するユーザに力覚的な刺激を付与することができる。
【符号の説明】
【0117】
101 揺動装置
102 回転体
103 フライホイール
103a 軸孔部
104 モータ
104a 回転軸
104b 端子
105 摺動ピン(出力軸)
110 ベース
111 ピボット
112 ボール
115 第1コンタクト板
115a 本体
115b 延出部
115c 第1開孔部
116 第2コンタクト板
116a 第2開孔部
116b ねじ挿通孔
120 ケース
120a 軸孔
120b 連通孔
121 上ケース
122 下ケース
122a 切欠き部
123A、123B ブラケット
123a ねじ挿通孔
123b ねじ穴
124 段部
125 リング用ブラケット
125a ねじ穴
130 トルクリング
131 ボール
132 ボールベアリング
133 トラクションリング
134 スリップリング
135 ブラケット
135a ねじ挿通孔
150 案内軌道
N ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に直結されたフライホイールをベースに搭載してなり、前記モータの回転により前記回転軸と同軸で回転する出力軸が形成された回転体が、
ケースに形成された案内軌道を構成する摺接面に対して前記出力軸を摺接可能に、前記ケース内に支承されていることを特徴とする揺動装置。
【請求項2】
前記案内軌道は、前記回転軸の直径よりも大きい間隙寸法で対向させた2面の前記摺接面を有し、前記出力軸は前記両摺接面間の空間に遊挿させて配設されていることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項3】
前記案内軌道には、前記モータの回転軸の回転力を減速させて前記回転体の旋回力として伝達する減速機構が配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の揺動装置。
【請求項4】
前記回転体は、前記モータの回転軸と直交する軸を中心として旋回自由にケース内に支承されており、前記案内軌道は、前記回転体の旋回平面と平行な摺接面を有する円環状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の揺動装置。
【請求項5】
旋回軸を中心に旋回可能に前記ケースに支承されたジンバルを備え、前記回転体は、前記モータの回転軸および前記ジンバルの旋回軸とそれぞれ直交する軸を中心として旋回自由に前記ジンバル内に支承されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の揺動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−224116(P2011−224116A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95948(P2010−95948)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】