説明

損傷した穴を修復する方法および拡大穴修復キット

【課題】費用軽減効果が高く、しかも耐久性のある、様々な部品における拡大した穴(46)を修復する方法を提供する。
【解決手段】損傷した穴(46)を修復するための方法と装置は、変形可能なロッド(62)とその中央部分(68)の周囲に巻かれたファブリック(64)とを備える。該ロッドの第1の部分(66)は損傷した穴内に挿入される。該ロッドは、その中央部分とファブリックとを穴の内側周辺部に整合させるために引き伸ばされる。該ロッドは、次いで、該穴の内側周辺部に対抗してファブリックを圧縮するために、弛緩される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、損傷した穴を修復する方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、ガスタービンエンジンの複合ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取り外し可能なノーズコーンは、ガスタービンエンジンのインレットの中央にあるハブに通常取り付けられる。ノーズコーンは、ハブ機材に対する滑らかな空力的表面被覆をもたらし、かつ、ファンブレードに空気を供給する。いくつかのエンジン設計において、ノーズコーンは、ファンブレードと共に回転する。
【0003】
ノーズコーンは、ハブ上の対応する穴に整合したノーズコーンのフランジ上の取り付け穴を通過する複数の取り付けボルトでハブに取り付けることができる。フランジは、交互に設けられた取り付け穴とバランスウェイト穴とを備える。バランスウェイト穴は、バランスウェイト穴を通してボルトを挿入することによってノーズコーンをハブに設置する前に、ノーズコーンのつり合いを取るのに使用される。取り付け穴用のボルトは、ノーズコーンをハブに整合させた後に挿入される。
【0004】
ガスタービンエンジン内部の作動条件に起因して、時間が経つにつれて、フランジ上の取り付け穴とバランスウェイト穴は拡大する。拡大した穴により、ボルトが穴内で移動することになる。そのため、ボルトが適切に取り付け穴とバランスウェイト穴内で固定されるよう、ボルト穴を修復する必要が生じることになる。
【0005】
拡大した穴を修復する方法の1つは、チョップドファイバ充填エポキシ樹脂で穴を詰めて、次いでボルトが再挿入される領域をドリルで空けることからなる。しかしながら、この方法は、その耐久性に関して不適切である。あるいはまた、ノーズコーン全体を交換することは、非常に高価である。
【0006】
したがって、費用軽減効果が高く、しかも耐久性のある、様々な部品における拡大した穴を修復する方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、費用軽減効果が高く、しかも耐久性のある、様々な部品における拡大した穴を修復する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、損傷した穴を修復するための方法と装置であり、変形可能なロッドの第1の部分を穴内に挿入することを含む。該ロッドは、ロッドの中央部分の周囲を取り巻く織られたファブリック(織物)を有する。本発明の方法はさらに、ロッドの中央部分とファブリックとを、穴の内側周辺部に整合させるためにロッドを引き伸ばすことと、該穴の内側周辺部に対抗してファブリックを圧縮するために、ロッドを弛緩させることとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、ターボファンガスタービンエンジン10の断面図であり、インレットノーズコーン12と、低圧圧縮機14と、高圧圧縮機16と、燃焼器18と、高圧タービン20と、低圧タービン22とを備える。
【0010】
低圧圧縮機14は、ファンセクション24と、内側ファンケース26と、外側ファンケース28とを備える。インレットノーズコーン12は、アクセスキャップ30を備える。ノーズコーン12は、反対側の端部でファンセクション24に取り付けられる。
【0011】
図2は、前方(前部)端32と後方(後部)端34とを有するインレットノーズコーン12の側面からの斜視図である。インレットノーズコーン12は、開口36と、本体部38と、後方フェアリング40と、ランプ42と、フランジ44とを備える。開口30は、ノーズコーン12の前方端32に位置しており、アクセスキャップ30を受容するよう形成されている。後方フェアリング40は、ノーズコーン12の後方端34において本体部38から延在している。ランプ42もまた、ノーズコーン12の後方端34において本体部38から延在している。本体部38、後方フェアリング40、およびランプ42は、それらの接合部でY字接合を形成するよう形成される。フランジ44はランプ42から延在している。フランジ44は、フランジ44の周囲に交互に設けられた複数のバランスウェイト穴46と、複数の取り付け穴48とを有する。
【0012】
バランスウェイト穴46は、ファンセクション24に取り付ける前にノーズコーン12のつり合いをとるために設計される。バランスウェイト穴46は、(図示しない)バランスウェイトボルトと、つり合いおもりワッシャおよびナットとを受容するよう形成される。
【0013】
取り付け穴48は、ファンセクション24上の(図示しない)対応する穴に整合するよう形成される。ノーズコーン12をファンセクション24に取り付けるために、取り付けボルト(図示せず)を、取り付け穴48とファンセクション24に設けられた穴とを通って挿入することができる。
【0014】
図3は、図2のインレットノーズコーン12の別の斜視図である。
【0015】
図4は、図3のインレットノーズコーン12の一部の断面図である。図4に示すように、ノーズコーン12は、本体部38と、後方フェアリング40と、ランプ42と、バランスウェイト穴46を有するフランジ44とを備える。フランジ44はまた、外側面50と内側面52とを備える。
【0016】
時間が経つにつれて、ガスタービンエンジン10内の作動条件により、バランスウェイト穴46の径Dが拡大する。このため、穴46を介して固定されている(図示しない)ボルトが移動するようになり、望ましくない。そのため、拡大したバランスウェイト穴46を修復する必要が生じる。
【0017】
図4においては示していないが、フランジ44の取り付け穴48もまた、時間が経つにつれて径が大きくなる。そのため、取り付け穴48も、拡大した穴の寸法を小さくするために修復する必要がある。
【0018】
一実施態様において、取り付け穴48の径はバランスウェイト穴46の径より大きい場合がある。たとえば、取り付け穴48を、0.30インチ(7.62mm)より小さく、また、バランスウェイト穴46を0.25インチ(6.35mm)より小さくなるよう設計する場合がある。しかしながら、あらゆる寸法のボルト穴の修復も本発明の範囲内であることが認められる。
【0019】
拡大したバランスウェイト穴または取り付け穴は、穴全体を複合材料で充填することによって修復することができる。航空機産業においては、ファイバーグラスが丈夫で耐久性があり、非常な高温に対する耐性を有するため用いるのに好ましい。例として、エポキシなどの樹脂と組み合わせたファイバーグラスのチョップドストランドを、穴の全領域いっぱいに充填するよう、穴内に挿入することができる。ファイバーグラスとエポキシの複合体は、次いで、穴の内側で固まるよう硬化される。その後、ボルトが修復した穴内で受容されるよう、ボルト径とほぼ等しい径の領域をドリルで空ける。
【0020】
樹脂と組み合わせたファイバーグラスのチョップドストランドを使用する難点の1つとは複合体が、樹脂を含浸させた織られたファブリックほど耐久性が高くないということである。拡大した穴の適切な修復には、十分に耐久性を有する丈夫な材料が必要である。さらには、上記方法の別の難点とは、穴にボルトを挿入するための領域を形成するために、材料をドリルで穴空けして取り除くというさらなる工程が必要であるということである。
【0021】
図5〜図7は、本発明の実施態様、装置60を図示しており、この装置は、これに限定されるものではないが、インレットノーズコーンの拡大したボルト穴などの拡大した穴の修復に使用される。装置60は、ロッド62とファブリック64のロールとを備える。以下でより詳細に説明するように、ファブリック64は、拡大した穴に挿入されるように設計されており、穴の内側のブッシュとして機能するため、穴の径を減少させることができる。ロッド62は、やはり以下で説明するように、弛緩状態と伸張状態とを有する。
【0022】
図5は、ファブリック64をロッド62の周囲に取り巻く前の、弛緩状態にあるロッド62とファブリック64の斜視図である。ロッド62は、長さL1と、第1の端領域66と、中央領域68と、第2の端領域70とを備える。第1の端領域66は第1の径D1を有する。ロッド62が弛緩状態にあるとき、中央領域68は径RDを有する。図5に示すように、ロッド62は、第1の端領域66の第1の径D1が中央領域68の径RDより小さくなるよう、段状に径が減少した部分を有する。
【0023】
図5では示していないが、ロッド62は、第2の端領域70もまた段状の径減少部と、中央領域68の径RDより小さい径とを有するよう形成することができる。
【0024】
図5の代替実施態様として、段状の径減少部の代わりに、テーパー状の径減少部を有するよう、ロッド62に第1の端領域66の周囲で内側に向かってテーパーをつけることができる。同様にして、第2の端領域70もまた、テーパー状の径減少部を有することができる。
【0025】
ロッド62は、変形可能で固着しない(non−stick)の面を有するよう設計される。好ましい実施態様では、ロッド62は、ゴムなどの弾性材料(エラストマー)から形成される。しかしながら、ロッド62は様々なその他の材料から形成できることが認められる。
【0026】
一実施態様において、ファブリック64は織られたファイバーグラスから形成される。上述したように、ファイバーグラスは航空エンジン部品の修復に使用するのに好ましい材料である。しかし、他の材料も使用可能である。ファブリック64は樹脂で含浸してもよく、その際、この用途に特に適した樹脂はエポキシである。使用可能なその他の種類の樹脂には、ポリエステル、ビスマレイミド(BMI)、ポリイミドが包含される。
【0027】
図6は、ロッド62の中央領域68周囲にコイル状に巻かれるプロセスにあるファブリック64を示している。実施態様において、ファブリック64の最低2つの完全な層でロッド62周囲を取り巻くことができる。ファブリックの厚さがロッド62の周囲で均一になるように一周にわたって完全に取り巻くことが好ましい。
【0028】
図7は、ファブリック64をロッド62周囲に取り巻いた後の、ロッド62とファブリック64の上面図を示している。図7に示す実施態様では、3つのファブリック64の完全な層(第1のプライP1、第2のプライP2と、第3のプライP3)が、ロッド62周囲にコイル状に巻かれている。
【0029】
図5〜図7において、ロッド62は弛緩状態にある。上述したように、ロッド62は変形可能に設計されている。ロッド62は伸張した状態にするために引っ張って長く伸ばすことができる。その伸張された状態では、ロッド62は長さL1より長い長さを有し、中央領域68は(弛緩された状態の)径RDよりも小さい径を有する。
【0030】
ロッド62と同様のロッドにファブリック64に類似のファブリックを予め巻くことができ、その場合には、図5と図6に示す工程は不要となる。
【0031】
図8〜図15は、拡大したボルト穴を修復するために装置60を用いるための概略的な工程を示している。図8は、ファブリック64で巻かれたロッド62を備える装置60と、図4で示すようにいずれもノーズコーン12にある(断面で示す)バランスウェイト穴46を有するフランジ44とランプ42の一部とを示している。図8において、ノーズコーン12は、図4の位置に対しておおよそ90°時計方向に回転されている。
【0032】
すぐ下の説明において、装置60は、フランジ44のバランスウェイト穴46の修復に関して使用されている。装置60はまた、フランジ44の取り付け穴48や、その他種々の部品の多くのその他の種類の拡大した穴を修復するのに使用することができる。
【0033】
図8は、穴46を通って挿入されるロッド62の第1の端領域66を示している。第1の端領域66の第1の径D1が、拡大した穴46の径Dよりも小さいため、第1の端領域66を容易に穴46に通すことができる。一旦、第1の端領域66を穴46に通した後、第1の端領域66と第2の端領域70とをそれぞれつかんで、伸張された状態へ引き伸ばしたロッド62へと引っ張る。
【0034】
図9は、図8の弛緩された状態と比較した際の伸張された状態のロッド62を示している。伸張された状態では、ロッド62は弛緩された状態の長さL1よりも実質的に長い第2の長さL2を有し、ロッド62の中央領域68は弛緩された状態の径RDよりも実質的に小さい伸張された径SDを有する。
【0035】
上述したように、実施態様において、ファブリック64はエポキシなどの樹脂で含浸することができる。したがって、ファブリック64は粘着性があるため、引き伸ばし工程中にロッド62に接着する。ファブリック64が最初に弛緩された状態のロッド62周囲に巻かれるとき、ファブリック64はコイル状の層(第1のプライP1、第2のプライP2、第3のプライP3)が相互に完全に整合するようにきつく巻かれる。ロッド62が引き伸ばされるとき、ファブリック64もまたロッド62と共に伸張されて、ファブリック64は図9に示すように、ロッド62上でいく分巻きを解かれる。
【0036】
一旦ロッド62を伸張された状態にした後、中央領域68の伸張された径SDは、穴46の拡大された径Dよりも小さく、そのため、伸張されたロッド62は、ファブリック64が穴46に整合するまで穴46を通して引っ張ることができる。中央領域68の伸張された径SDが穴46の拡大した径Dより小さいため、それを取り巻くファブリック64を有するロッド62の中央領域68は、ファブリック64を穴46の内側周辺部に接触させることなく、穴46を容易に通過させることができる。ファブリック64が粘着性を有するため、穴46を通してロッド62を移動させる間、ファブリック64は穴46の内側周辺部に接触しないことが好ましい。また、挿入する間、ファブリック64にしわが寄らないことが好ましい。
【0037】
ファブリック64を穴46に整合させるとき、過剰なファブリックは両端から穴46を超えて延びるべきである。この過剰部分は、上述したロッド62上でのファブリック64の伸張による部分がある。ファブリック64が適切に整合した後、ロッド62を第1の端領域66と第2の端領域70にかかっている引っ張る力を解除することにより、弛緩された状態に戻すことができる。ロッド62が緩むと、ロッド62は元の長さL1および中央領域68が径RDを有する寸法形状に戻る。
【0038】
図10は、ロッド62が弛緩された状態に戻った後のロッド62とファブリック64とを示している。中央領域が径RDを有するようになるまで拡がって戻るとき、ファブリック64は、穴46の内側周辺部に対して圧縮される。図10では見えないが、ファブリック64の3つの層(第1のプライP1、第2のプライP2、第3のプライP3)が穴46の内側とロッド62との間で圧縮される。
【0039】
ファブリック64は、その後、ファブリック64に含浸された樹脂が固まってファブリック64を固定するよう高温で硬化される。ファブリック64が硬化すると穴46の内側周辺部に接着する。その結果、ファブリック64は動かなくなり、穴46の内側に固定される。
【0040】
高温硬化プロセスの代わりに、室温で硬化する樹脂も使用できるが、上述した図8〜図10で示した工程をファブリック中の樹脂が硬化する前に迅速に行う必要がある。
【0041】
ロッド62が伸張された状態まで引き伸ばされたとき、ファブリック64は一緒に伸ばされて捻れる(図9を参照)。ロッド62がその弛緩された状態まで圧縮されて戻るとき、ファブリック64は元のコイル状に巻かれた形態に戻り、ファブリック64の厚さはロッド62の中央領域68周囲のすべての箇所で実質的に均一となる。
【0042】
図10に示すように、過剰なファブリック64はフランジ44の外側面50と内側面52(図11参照)を超えて延びている。過剰なファブリックは、様々な方法で処理することができ、以下にその2つを説明する。
【0043】
図11〜図12と図14〜図15では、図8〜図10と比較してフランジ44はおおよそ90°時計方向に回転されている。図11は、フランジ44の内側面52上にある過剰なファブリックが、ナイフKで切り取られていることを示している。フランジ44の内側面52は、ファブリック64の層全体を切るための裏当て面として用いることができる。
【0044】
過剰なファブリックをトリミングによって除去する代わりの例として、過剰なファブリックを、フランジ44の外側面50か、内側面52の穴46を取り囲む領域の周囲で、フランジ付ブッシュヘッドと同様に、ボウタイを形成するのに使用することができる。図12〜図14は、フランジ44の外側面50の周囲にボウタイを形成するための概略的な工程を図示している。ボウタイ形をここで説明しているが、その他の適当な形状もまた利用可能であることは留意すべきである。
【0045】
図12は、フランジ44の外側面50上にボウタイを形成する工程における第1のステップを示している。ロッド62を切断面として使用して、ファブリック64を通る最初の、第1の垂直なカットC1を形成するのに、ナイフKを使用することができる。
【0046】
図13は、ロッド62とファブリック64の、ボウタイを形成する工程における第2のステップを示す底面図である。カットC1に加えて、第2の垂直なカットC2と、第3の垂直なカットC3と、第4の垂直なカットC4とを、ファブリック64の層を通って同様に形成することができる。図13に示すように、次いで、カットC1とカットC2との間のファブリックを除去してよく、その後、カットC3とカットC4との間のファブリックを除去することができる。ファブリックの2つの残存するボウタイ部分(第1の部分はカットC1とカットC2の間、第2の部分はカットC3とカットC4の間)を、その後、ボウタイを形成するのに使用することができる。
【0047】
実施態様においては、カットC1とカットC4との間(同様に、カットC2とカットカットC3との間)の角度は120°より小さくてよい。カットC1とカットC4との間(およびカットC2とカットC3との間)の好ましい角度範囲は、60°と90°の間であり、図13に示すようにカットC1〜カットC4は所望の角度に応じて、陰影をつけた領域のいずれかの箇所に形成してよい。
【0048】
図14は、外側面50上に例示的なボウタイを形成する工程における第3のステップを示している。ファブリック64を2つのボウタイ部分に形成した後、外側のプライP2,P3を外側面50の穴46の両側に折って、ナイフKと外側面50を裏当て面として用いて切り取ることができる。プライP2とP3とは、(図14に示すように)別途、または単一のカットとして切ることができる。プライP2,P3は、切り取られて除去され、残存する過剰なファブリックは第1のプライP1の2つの半割部のみであり、これらを、次いで、フランジ44の外側面50と同じ面上に折ってボウタイを形成することができる。
【0049】
図15は、フランジ44の外側面50に位置した例示的な(第1のプライP1から形成された)ボウタイ80を示している。ボウタイ80の利点は、フランジ付ブッシュと同様に穴46の内側周囲に対して圧縮されたファブリック64の3つの層が穴46内でしっかりと保持されることである。ボウタイ80はまた、穴46内のファブリック64の層を、穴46内に固定されたボルトによって引きはがされたり破損したりすることから保護する。
【0050】
図11〜図15を参照しながら上で説明したように、フランジ44の内側面52を超えて延びている過剰ファブリックは切り取られ、また、フランジ44の外側面50を超えて延びているファブリックはボウタイ80を形成するのに使用した。しかしながら、第2のボウタイをフランジ44の内側面52上に同様に形成することも可能であることは認められる。ボウタイのない代替的な実施態様では、過剰なファブリックをフランジ44の両側で切り取ることができる。
【0051】
上述した図8〜図15に示した実施態様において、ファブリック64は、3つの層(第1のプライP1、第2のプライP2、第3のプライP3)を有するコイルをロッド62の周囲に形成した。しかし、他の実施例では、ファブリック64のコイルは、1層、2層または3層以上とすることができる。図15のボウタイ80に類似したボウタイを形成するために、何層のプライが存在するかにかかわらず、(図14に示すように)最も内側の層を除く全ての層を切り取って取り除いてよい。その後、最も内側の層の2つのボウタイ部分を、1層のボウタイを形成するよう折ることができる。他の実施例では、所望であれば複数層のボウタイを同様に形成してもよい。
【0052】
ボウタイ80はまた、代替的な方法を用いて形成することもできる。(図12と図13に示すように)ファブリック64の3つの層全てを通る垂直なカットを形成する代わりに、外側の巻きを(第3のプライP3から開始して)ファブリックの最も内側の層(第1のプライP1)がさらされるまで解くことができる。ナイフKは、すでに解かれたファブリックを切り取るのに使用することができる。第1のプライP1はロッド62上で無傷のままである。図13を参照して上記で説明した(4つのカットを形成して、2つのカットの間のファブリックを取り除く)工程を、次いで、第1のプライ1について実施して2つのボウタイ部分を形成し、この部分はその後1層のボウタイを形成するよう引きはがされる。
【0053】
図15は、修復された穴46から取り除かれているときのロッド62を示している。ファブリック64が硬化されて固まっているため、ロッド62はファブリック64との接触から解放可能である。ロッド62は、再び伸ばして中央領域68が伸張された径SDを有する伸張された状態に戻される。伸張された状態では、ロッド62が容易に穴46を通して除去可能である。
【0054】
好ましい実施態様においては、ロッドは安価なゴムから作製され、ロッド62は穴46から取り除かれた後に破棄可能である。あるいはまた、別の拡大した穴を修復するために、ロッド62は、再使用してその中央部分の周囲にファブリックのコイルを巻くことができる。
【0055】
図16と図17は、ブッシュとして挿入されたファブリック64と、穴46内に固定されたボルトBとを有する修復されたバランスウェイト穴46を備えるフランジ44を示している。図16は、フランジ44と、上述のボウタイ80を備えるファブリック64を有する穴46の断面図である。図16は、ファブリック64の第1のプライP1と、第2のプライP2と、第3のプライP3とを示している。図16に示すように、ボウタイ80は第1のプライP1から形成される。
【0056】
図17は、フランジ44の外側面50と、ボウタイ80と、ボルトBの上面図である。図16と図17に示すように、好ましい実施態様において、ボウタイ80は、ボウタイ80の主軸がエンジン(図1参照)の軸に対して周方向に延在し、かつ、ボウタイ80がフランジ44の縁に対して平行であるよう形成される。しかしながら、別の実施態様においては、ボウタイを、フランジ44の縁に対して垂直に配向されるように形成することも可能である。したがって、図16と図17のボウタイ80と比較した際、ボウタイは外側面50上で90°回転されている。
【0057】
上述したように、ファブリック64は、好ましい実施態様において織られたファイバーグラスから作製される。異なる織り方ならびにヤーンの寸法も全ての織られたファブリックに対して可能である。この種の用途に関して、ファブリックの厚さは、適当な厚さを用いてよいが、通常、織り方によって変化し、1プライ当たりおおよそ0.002インチ(0.0508mm)から0.030インチ(0.762mm)である。織られたファイバーグラスの代表的な規格の例はSAE AMS3824である。
【0058】
図5〜図7および図8〜図15を参照しながら上述した工程を実行する前に、穴に挿入される適切なファブリックの厚さ、ならびにプライの層の数を決定するために、損傷した穴の径を測定することができる。本発明はまた、損傷した穴の種々の寸法形状に適応するような径範囲を有するロッドを包含する。
【0059】
本発明はガスタービンエンジンのノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための方法と装置に関するが、この方法と装置はあらゆる種類の拡大したあるいは損傷した穴、特にボルト穴の修復に使用できることは認められる。
【0060】
本発明を好ましい実施態様を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨ならびに範囲から逸脱することなく、形態および細部において変更可能であることは認めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ターボファンエンジンの断面図。
【図2】図1のターボファンエンジンのインレットノーズコーンの斜視図。
【図3】図2のインレットノーズコーンを90°時計方向に回転させた斜視図。
【図4】修復を要する拡大したボルト穴を含む、図3のノーズコーンの一部の断面図。
【図5】拡大ボルト穴を修復するために使用される装置を示す図。
【図6】拡大ボルト穴を修復するために使用される装置を示す図。
【図7】拡大ボルト穴を修復するために使用される装置を示す図。
【図8】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図9】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図10】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図11】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図12】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図13】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図14】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図15】ノーズコーンの拡大したボルト穴を修復するための、図5〜図7に示す装置を用いるための概略的な工程を示す図。
【図16】修復された穴と、その穴内に固定されボルトを有する、図4のノーズコーンの一部の断面図。
【図17】図16のノーズコーンを90°時計方向に回転させた上面図。
【符号の説明】
【0062】
44…フランジ
46…バランスウェイト穴
62…ロッド
64…ファブリック
66…第1の端領域
68…中央領域
70…第2の端領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部分の周囲に織られたファブリックが巻かれた、変形可能なロッドの第1の部分を損傷した穴内に挿入するステップと、
前記ロッドの中央部分とファブリックとを前記穴の内側周辺部に整合させるために、前記ロッドを伸張させるステップと、
前記穴の内側周辺部に対抗して前記ファブリックを圧縮するために、前記ロッドを弛緩させるステップと、
を含んでなることを特徴とする、損傷した穴を修復する方法。
【請求項2】
前記ファブリック中に含浸させた樹脂が固まって、それにより、前記ファブリックが前記穴の内側周辺部に接着して該穴の内側でファブリックを固定することができるよう、前記ファブリックを硬化させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ロッドを前記ファブリックとの接触から解放するために、前記ロッドを伸張させるステップと、
前記ロッドを前記穴から除去するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記穴を超えて延びる前記ファブリック部分の少なくとも1つの外側層を除去するステップと、
前記穴を超えて延びる前記ファブリック部分の内側層の少なくとも一部を、それを用いて2つのボウタイ部分を形成するために除去するステップと、
前記穴を取り囲む領域に、ボウタイ部分のそれぞれを固定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記織られたファブリックがファイバーグラスであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記織られたファブリックが樹脂で含浸されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂がエポキシであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ロッドがエラストマーからなることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記エラストマーがゴムであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
織られた含浸されたファブリックを、第1の端領域と、第2の端領域と、本体領域とを有し、該第1の端領域は該本体領域の径よりも小さい径を有する弾性ロッドの該本体領域の周囲に巻くステップと、
前記ロッドの第1の端領域を拡大した穴を通して挿入するステップと、
前記ロッドを引き伸ばして前記本体領域の径を、前記拡大した穴の径よりも小さくなるよう減少させるために、前記ロッドを伸張させるステップと、
前記ロッド上に巻かれた前記ファブリックが前記拡大した穴の内側に位置するよう、前記引き伸ばされたロッドを前記拡大した穴内に配置するステップと、
前記拡大した穴の内側周辺部に対抗して前記ファブリックを圧縮するために、前記ロッドを弛緩させるステップと、
を含んでなることを特徴とする、径を有する拡大した穴を修復する方法。
【請求項11】
前記ファブリック中に含浸させた樹脂が固まって、それにより、前記ファブリックが前記穴の内側周辺部に接着して該穴の内側でファブリックを固定することができるよう、前記ファブリックを硬化させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ロッドを再度引き伸ばして、前記本体領域の径を減少させるために、前記ロッドを伸張させるステップと、
前記ロッドを、前記ファブリックとの接触から解放するステップと、
前記穴から前記ロッドを除去するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記織られたファブリックの少なくとも2つの完全な層が前記ロッドの周囲に巻かれることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記拡大した穴が、ガスタービンエンジンのノーズコーンに形成された複数の穴のうちの1つであることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項15】
元来は弛緩された径を有する弛緩状態である、該弛緩された径よりも小さい伸張された径を有する伸張状態へ引き伸ばすことが可能な、弾性ロッドと、
前記ロッドの周囲に巻かれる含浸されたファブリックであって、該ファブリックは前記ロッドが伸張状態にあるときに拡大した穴の内側周辺部内に挿入可能であり、かつ、該ファブリックは前記ロッドが弛緩状態に戻ったときに前記穴の内側周辺部と係合可能である、ファブリックと、
を含んでなることを特徴とする、拡大穴修復キット。
【請求項16】
前記ファブリックが前記穴の内側周辺部と係合した後に、前記ファブリック中に含浸された樹脂が固まって前記ファブリックが前記穴の内側周辺部に接着するよう、前記ファブリックを硬化させる硬化装置をさらに含むことを特徴とする、請求項15記載の修復キット。
【請求項17】
前記ファブリックが、前記ロッドの周囲に少なくとも1回巻かれることを特徴とする、請求項15記載の修復キット。
【請求項18】
前記ロッドが、
径を有する第1の端部分と、
第2の端部分と、
径を有し、前記第1の端部分と第2の端部分との間に配置される本体部分であって、前記ロッドが前記弛緩状態にあるときに、前記第1の端部分の径が該本体部分の径よりも小さい、本体部分と、
を含んでなることを特徴とする、請求項15記載の修復キット。
【請求項19】
前記第2の端部分が前記第1の端部分の径と実質的に等しい径を有することを特徴とする、請求項18記載の修復キット。
【請求項20】
前記ファブリックを前記穴の内側周辺部に対して保持するために、前記ファブリックの一部が前記穴を取り囲む領域上に拡がるように、前記穴の内側周辺部を超えて延びる前記ファブリックの部分を切断する切断装置をさらに含むことを特徴とする、請求項15記載の修復キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−271083(P2007−271083A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86554(P2007−86554)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】