説明

搬送システム、搬送方法および搬送車

【課題】搬送車が装置前に到着した後、待機時間が生じることなく直ちに移載動作が開始される搬送システムを提供する。
【解決手段】無人搬送車1と処理装置2との間で荷物を移載する搬送システムであって、無人搬送車1は、搭載している荷物を処理装置2に差し出す、又は、処理装置2から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載機構部31と、処理装置2に対して移載許可を要求する移載要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す移載許可信号を取得する搬送車通信部33と、搬送車通信部33が移載許可信号を取得する前に、移載機構部31が処理装置2に侵入しない範囲で移載動作を行うように、移載機構部31を制御する搬送車制御部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車と処理装置との間で荷物を移載する搬送システムに関し、特に、インターロック通信機能を備えた搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示器の製造ラインでは、微細加工の高精度化や工程数の増加に伴い、各工程の作業や工程間のワーク受け渡しを無人化および自動化としているケースが増加している。特に、工程間のワーク受け渡しでは、無人搬送車が各処理装置と相互通信をしながら、工程に従ってワークを移載している。
【0003】
たとえば、半導体デバイスの製造ラインでは、決められた搬送路を車輪で自走するAGV(Automated Guided Vehicle)が、無人搬送車として使用されている。このAGVは、その搬送路の両側に配置された半導体処理装置に対してアームとハンドを突出させ、ウェハカセットを受け渡しする。
【0004】
上述したウェハカセットの受け渡しは、半導体デバイス製造ライン全体を制御するコントロールシステムの指示に基づき、無人搬送車と半導体処理装置の各々に搭載されたコンピュータによって実現される。この実現にあたっては、無人搬送車と半導体処理装置の双方に設けた光データ通信装置を採用しているケースが多い。
【0005】
また、半導体デバイスの製造ラインの移載物であるウェハなどは、高価で割れやすいものであるため、衝撃を与えないよう自動搬送を安全に行う必要がある。このため、上記光データ通信装置を活用することにより、移載相手を特定し、相手の状態を打診し相手からの返信を確認した上で移載作業を進めるという、インターロック通信システムが採用されている。
【0006】
ここで、従来のインターロック通信による移載動作を説明する。
【0007】
図10は、無人搬送車がウェハカセットを半導体処理装置に積み降ろす場合の、光信号によるインターロック通信を示すタイミングチャートである。まず、無人搬送車が処理装置ステーション前に到着すると、無人搬送車は移載要求信号をONにするとともに半導体処理装置へ発信する(S81)。これにより、インターロック通信が開始される。移載要求信号を受信した半導体処理装置は、ウェハカセット載置部に別のウェハカセットが既に存在するか否かの確認を行い、ウェハカセットが載置部にない場合はウェハカセットが受け取り可能であることを示す移載許可信号をONにし、無人搬送車に発信する(S82)。この移載許可信号を無人搬送車が受信した時点でインターロックが成立する。その後、無人搬送車は、移載動作信号をONにし、ここで初めて移載動作を開始する。この移載要求信号送信から移載動作開始までの時間Taは、半導体デバイスの製造ラインにおいては、例えば5秒程度であり、無人搬送車の動作しない待機時間となってしまう。
【0008】
やがて、無人搬送車の移載動作が完了すると、無人搬送車は移載動作信号をOFFにすると同時に、移載終了要求信号をONにし(S83)、半導体処理装置に対して送信する(S84)。移載終了要求信号を受信した半導体処理装置は、その載置部にウェハカセットが存在することを確認して、移載終了許可信号をONにし、無人搬送車に対し送信する(S85)。移載終了許可信号を受信した無人搬送車は、移載終了要求信号および移載要求信号をOFFにする(S86)。このとき、インターロックが解除されるとともにインターロック通信が終了する。この無人搬送車が移載終了要求信号を送信してから、移載終了許可信号を受信するまでの時間Tcも、Ta同様、例えば5秒程度であり、この間、無人搬送車は動作せず、移載動作開始前と同様、待機時間となってしまう。
【0009】
また、ウェハカセットを半導体処理装置ステーションから無人搬送車へ積み込む場合も、前記同様の手順で行われ、無人搬送車の移載動作が開始される前および移載動作が終了した後において同様の待機時間が発生する。
【0010】
この待機時間は、プロセス処理数の多い半導体デバイスの製造ラインでは処理工程毎に発生するため、待機時間の発生が製造ライン全体としての製造効率を低下させ、製造コスト低減への障害となる。
【0011】
これを解決する手段として、無人搬送車が処理装置ステーション前へ到着するまでに、つまり、無人搬送車の移動中に、無人搬送車が相手の半導体処理装置に移載要求信号を送信しインターロック通信を開始するという光データ伝送システムが提案されている(特許文献1)。具体的には、無人搬送車の移動中に光通信を実現させるため、無人搬送車および移載相手の半導体処理装置の双方に設置された各光通信デバイスの投光エリアおよび受光エリアを大きくし、かつそれらのエリアを大きくしたことによる処理装置間の混信を避けるため、自己のIDを設定するというものである。
【0012】
つまり、この光データ伝送システムは、無人搬送車が相手の処理装置ステーション前に到着するまでに、他の半導体処理装置と混信することなくインターロック通信を開始し、無人搬送車の待機時間をなくし若しくは短縮することにより製造効率を向上させるといったものである。
【特許文献1】特開2000−299364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、プロセス処理数が多く工程が複雑化するような半導体製造ラインなどにおいては、無人搬送車が処理装置ステーションの前に到着するまでに、つまり無人搬送車と処理装置ステーションが正対していない状態で、相互通信できるような装置配置がなされているとは限らない。よって処理装置ステーション前に到着した時に、すでにインターロックが成立しているとは限らない。
【0014】
そのために、処理装置ステーションの前に到着した後、インターロックが成立するまでに無人搬送車の待機時間が発生する場合があり、製造工程全体として製造時間の短縮化が効果的になされないという問題が生じる。
【0015】
前記に鑑み、本発明は、プロセス処理数が多く工程が複雑化するような半導体製造ラインなどにおいて、無人搬送車の移動中にインターロック通信を開始せずとも、無人搬送車が処理装置ステーションの前に到着した後、待機時間が生じることなく直ちに移載動作が開始される搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送システムは、搬送車と装置との間で荷物を移載する搬送システムであって、前記搬送車及び前記装置の一方は、搭載している荷物を前記搬送車及び前記装置の他方である相手側に差し出す、又は、相手側から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載機構部と、前記相手側に対して移載許可を要求する移載要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す移載許可信号を取得する通信手段と、前記通信手段が前記移載許可信号を取得する前に、前記移載機構部が前記相手側に侵入しない範囲で移載動作を行うように、前記移載機構部を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、搬送車及び装置の一方は、移載許可信号を取得するまでに待機時間を保持せず、搬送車の停止後、直ちに移載動作を実行できる。よって、移載物および搬送システムの安全性を確保しつつ、搬送車の停止時間が短縮され、それに伴い製造時間が短縮され、結果的に製造コストの低減化が実現される。
【0018】
なお、「相手側に侵入しない範囲」とは、相手側がいかなる動作をした場合であっても、装置間で物理的な干渉が生じない範囲をいい、具体的には、相手側の動作空間に侵入しない範囲である。
【0019】
ここで、前記移載機構部は、搭載している荷物を覆うシャッターを備え、前記制御手段は、前記相手側に侵入しない範囲での移載動作として、前記シャッターを開かせる制御をしてもよい。
【0020】
これにより、搬送車の停止時間を増加させずに、搬送車の移動中および停止直後における移載物の損傷が防止される。
【0021】
また、前記通信手段はさらに、前記相手側に対して移載の終了許可を要求する終了要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す終了許可信号を取得し、前記制御手段はさらに、前記移載機構部が前記相手側から退出したときに、前記通信手段が前記終了要求信号を発するように、前記通信手段を制御してもよい。
【0022】
これにより、前記搬送車及び装置の一方が終了要求信号を発信すると同時に、自己の領域内における移載終了動作を実行することができる。そうすると、当該搬送車及び装置の一方が終了許可信号を受信した時には既に移載動作が完了しているため、その完了後直ちに搬送車は移動することが可能となる。これは、プロセス処理されたウェハなどの経時変化を極力防止することにつながる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る搬送方法は、搬送車と装置との間で荷物を移載する搬送方法であって、前記搬送車と前記装置との間で、一方の装置から他方の装置に対して、移載許可を要求し、前記他方の装置から前記一方の装置に対して、当該要求に対する許可を提示する通信を行う通信ステップと、前記一方の装置が、搭載している荷物を、前記他方の装置に差し出す、又は、前記一方の装置が前記他方の装置から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載ステップとを含み、前記移載ステップは、前記通信ステップにおいて前記許可が提示される前に、開始されることを特徴とする。
【0024】
このとき、前記移載ステップでは、前記通信ステップにおいて前記許可が提示される前に、前記一方の装置が前記他方の装置に侵入するまでの移載動作が行われる。
【0025】
これにより、搬送車及び装置の一方は、相手から移載許可が提示される前に待機時間を保持せず、搬送車の停止後、直ちに移載ステップを開始できる。よって、移載物および搬送システムの安全性を確保しつつ、搬送車が停止している時間が短縮され、それに伴い製造時間が短縮化され、結果的に製造コストの低減化が実現される。
【0026】
なお、本発明は、搬送システム、搬送方法として実現できるだけでなく、搬送システムを構成する特徴的な動作をする搬送車単体又は装置単体として実現することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、プロセス処理数が多く工程が複雑化するような半導体製造ラインなどにおいて、無人搬送車が処理装置ステーション前に到着した後、インターロック通信による無人搬送車の待機時間が生じず、無人搬送車がステーション前の停車時間が短縮される。よって、製造時間が短縮され、結果的には、製造コストの低減化が実現されることとなり、本発明の実用的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る搬送システムの構成の一例を示す図であり、本実施の形態では、半導体デバイスの製造ラインにおけるウェハカセットの搬送システムの構成を示す。このシステムは、無人搬送車1と、処理装置2と、光通信3と、ウェハカセット4と、搬送車コントローラ6と、端末装置7と、LAN8と、搬送レール9とから構成される。
【0030】
無人搬送車1は、スカラーアーム11と、光データ通信装置5とを備える。また、無人搬送車1は、搬送車コントローラ6と光通信3により通信し、搬送レール9上を移動する。
【0031】
処理装置2は、処理装置ステーション21と、光データ通信装置5とを備える。
【0032】
無人搬送車1と処理装置2は、各々有する光データ通信装置5および光通信3を介してインターロック通信を行う。
【0033】
搬送車コントローラ6は、端末装置7から受けた指示や、製造ライン全体の手順や無人搬送車1の仕様に従い、光通信10を介して、無人搬送車1に各種指示を与え、また各種設定をする。
【0034】
端末装置7はLAN8を介して搬送車コントローラ6にアクセスし、搬送車コントローラ6に対して各種指示を与えたり、各種設定をする端末装置である。
【0035】
無人搬送車1は、搬送車コントローラ6よりウェハカセット4の移載指示を受け、処理装置ステーション21の前で停止し、光通信3を介して処理装置2とインターロック通信をしながらウェハカセット4の移載動作を開始する。
【0036】
無人搬送車1は本発明に係る搬送システムの構成要素の一例であり、図2に示す無人搬送車1の平面図および図3に示す無人搬送車1の正面図を用いてその機構を説明する。
【0037】
無人搬送車1は、スカラーアーム11とシャッター12と昇降部13と旋回テーブル14と搬送車制御部15とを備える。
【0038】
旋回テーブル14は距離センサ141を備える。
【0039】
処理装置ステーション21は距離センサ141のターゲット211を備える。この距離センサ141およびターゲット211が作動し、処理装置ステーション21に対する無人搬送車1の停止位置のズレが検出される。
【0040】
旋回テーブルは、移載動作時のスカラーアームの突出方向が移載相手の処理装置方向となるよう、スカラーアーム11を自在に旋回させる機能をもつ。
【0041】
スカラーアーム11は、第1アーム111、第2アーム112、第2アーム112の先端に設けられる旋回自由な物品支持テーブル114を有するハンド113を備え、駆動機構により進退するようになっている。
【0042】
シャッター12は、移載物であるウェハカセット4の保護を目的とし、無人搬送車1が搬送レール9上を移動している間は閉じられており、無人搬送車1が処理装置ステーション21の前で停止状態にあるときは開放される。
【0043】
昇降部13は、処理装置ステーション21へウェハカセット4を降ろすときは、物品支持テーブル114とウェハカセット4を離すため、スカラーアーム11全体を下降させる。また、昇降部13は、処理装置ステーション21からウェハカセット4を受け取る(あるいは、取り出す)ときは、物品支持テーブル114とウェハカセット4を接触させるため、スカラーアーム11全体を上昇させる。
【0044】
なお、スカラーアーム11は、昇降部13をハンド113に内蔵し、物品支持テーブル114のみを昇降させるようにしてもよい。
【0045】
搬送車制御部15は、上記説明したスカラーアーム11、シャッター12、昇降部13、旋回テーブル14の動きを制御する。
【0046】
図4は、図1に示された本発明に係る搬送システムの機能構成を示すブロック図である。
【0047】
この搬送システムは、機能的には、無人搬送車1に移載機構部31、搬送車制御部15、搬送車通信部33を備え、処理装置2に載置部34、装置制御部35、装置通信部36、プロセス部37を備える。
【0048】
移載機構部31は、搭載している荷物を処理装置2に差し出す(ロード)、又は、処理装置2から荷物を取り出すこと(アンロード)によって荷物を移載する機構部であり、図2および図3におけるスカラーアーム11、シャッター12、昇降部13、旋回テーブル14を備え、搬送車制御部15による制御の下で、無人搬送車1のシャッターの開閉、スカラーアーム11の伸縮および旋回、昇降を実行する。
【0049】
搬送車通信部33は、図1における光データ通信装置5を備え、搬送車制御部15からの指示により装置通信部36へ光信号を送信し、また装置通信部36からの光信号を受信し搬送車制御部15へその信号を渡す機能を有し、例えば、処理装置2に対して移載許可を要求する移載要求信号を発した後に当該要求に対する許可を示す移載許可信号を取得したり、処理装置2に対して移載の終了許可を要求する終了要求信号を発した後に当該要求に対する許可を示す終了許可信号を取得したりする。
【0050】
搬送車制御部15は、移載機構部31での動作状態と搬送車通信部33からの信号により処理装置2の状態を判断し、移載機構部31に対し次の動作を指示し、また搬送車通信部33へ次の送受信の指示を行うCPU等であり、搬送車通信部33が移載許可信号を取得する前に、移載機構部31が処理装置2に侵入しない範囲で移載動作を行うように移載機構部31を制御したり、移載機構部31が処理装置2から退出したときに、搬送車通信部33が終了要求信号を発するように搬送車通信部33を制御したりする。
【0051】
載置部34は、処理装置ステーション21を備え、ウェハカセット4の載置スペースを提供する。また、載置スペースにおけるウェハカセット4の存否情報を装置制御部35へ渡す。
【0052】
装置通信部36は、図1における光データ通信装置5を備え、装置制御部35からの指示により搬送車通信部33へ光信号を送信し、また搬送車通信部33からの光信号を受信し装置制御部35へその信号を渡す。
【0053】
装置制御部35は、載置スペースにおけるウェハカセット4の存否情報を載置部34から受信し、また装置通信部36からの信号により無人搬送車1の状態を判断し、装置通信部36へ次の送受信の指示を行う。また既に受け取ったウェハカセット4に対するプロセス処理の指示をプロセス部37に対し行う。
【0054】
プロセス部37は、装置制御部35の指示により、既に受け取ったウェハカセット4のプロセス処理を実行する。
【0055】
次に、以上のように構成された本実施の形態における搬送システムの動作について説明する。
【0056】
図5は、この搬送システムによるウェハカセット4の移載動作手順を示すフローチャートである。ここでは、ウェハカセット4を無人搬送車1から処理装置2へ降ろす(以降、カセットロードすると記す)場合の、無人搬送車1の移載動作の手順が示されている。
【0057】
まず、無人搬送車1は、処理装置ステーション21の前に到着すると、搬送車通信部33から装置通信部36へ移載要求信号を発信する(S10)。これによりインターロック通信が開始される。
【0058】
同時に、搬送車制御部15は、移載機構部31に対し、処理装置2の領域へ侵入しない範囲での移載前動作を実行させる(S20)。このとき、搬送車通信部33は、まだ装置通信部36からの移載許可信号を受信していない。
【0059】
この移載前動作に並行して、装置通信部36では、搬送車通信部33が発信した移載要求信号を受信する。また、装置制御部35は、載置部34に別のウェハカセット4が載置されているか否かの確認を行わせる(S110)。
【0060】
そして、装置制御部35が載置部34に別のウェハカセット4が存在しないことを確認すると、上述した無人搬送車1の移載機構部31による移載前動作の完了とほぼ同時期に、装置通信部36から搬送車通信部33に対し、移載許可信号が発信される(S120)。
【0061】
その後、搬送車通信部33が、装置通信部36からの移載許可信号を受信する(S30)と、無人搬送車1と処理装置2の間にインターロックが成立する。
【0062】
このインターロック成立の後、無人搬送車1は、移載機構部31による処理装置2の領域に侵入した移載本動作を実行する(S40)。
【0063】
やがて、移載本動作が終了すると、搬送車通信部33は、移載機構部31が処理装置2の領域から退行した時点で、直ちに、装置通信部36に対し移載終了要求信号を発信する(S50)。
【0064】
同時に、搬送車制御部15は、移載機構部31に対し、処理装置2の領域へ侵入しない範囲での移載後動作を実行させる(S60)。このとき、搬送車通信部33は、装置通信部36からの移載終了許可信号をまだ受信していない。
【0065】
この移載後動作に並行して、装置通信部36は、搬送車通信部33が発信した移載終了要求信号を受信する。これを受け、装置制御部35は、載置部34に、移載目的とするウェハカセット4が正常に載置されたか否かの確認を行う(S130)。
【0066】
そして、装置制御部35が載置部34に移載目的のウェハカセット4が正常に載置されたことを確認すると、上述した無人搬送車1による移載後動作の完了とほぼ同時期に、装置通信部36から搬送車通信部33に対し、移載終了許可信号が発信される(S140)。ここで、移載終了許可信号は、装置側の移載が正常に終了したことを確認した上で終了を許可するという役割を果たす。
【0067】
その後、搬送車通信部33が、装置通信部36からの移載終了許可信号を受信する(S70)と、無人搬送車1と処理装置2の間のインターロックが解除される。
【0068】
このように、無人搬送車1は、移載許可信号を取得する前に、処理装置2に侵入しない範囲で移載動作を行うので、移載許可信号を取得してから移載動作を開始する場合に比べ、移載時間が短縮化される。さらに、無人搬送車1は、移載機構部31が処理装置2から退出したときに、終了要求信号を発するので、移載動作の完了後に終了要求信号を発する場合に比べ、移載完了に伴う処理時間が短縮化される。
【0069】
図6のフローチャートは、図5のフローチャートにおける移載開始から移載終了までを詳細説明したものに対応する。同じ点は説明を省略して、以下、異なる点である移載前動作、移載本動作、移載後動作について説明する。
【0070】
まず第1に、カセットロード時の移載前動作(S20)の説明をする。前述したように、この移載前動作は、インターロック成立前の動作であるので、相手の処理装置2の領域に侵入しない範囲での動作に限定される。まず、無人搬送車1は、カセットロードする側のシャッター12を開ける(S201)。次に、カセットロードする方向へ、旋回テーブル14を旋回させる(S202)。次に、処理装置2の載置部34の高さと物品支持テーブル114の高さを合わせるため、昇降部13によりスカラーアーム11を上昇させる(S203)。最後に、補正動作として、旋回テーブル14を補正旋回させる(S204)。
【0071】
ここで、上述した補正動作を図7を用いて説明する。図7において、破線で示した位置が無人搬送車1の理想的な停止位置である。停止した無人搬送車1は、実線に示すように、理想的な位置に対して傾いているとともに、前後方向にもずれて停止する場合がある。無人搬送車1は、通常、距離センサ141の設置されている面を進行方向に向けている。処理装置ステーション21の前に停止した後、無人搬送車1は処理装置ステーション21の存在する方向により、旋回テーブル14を時計回りに90°もしくは反時計回りに90°旋回させる。そして距離センサ141およびそのターゲット211との距離を計測する。測定の結果から無人搬送車1の実際の停止位置と理想の停止位置とのズレを算出する。その算出値より、スカラーアームの先端である物品支持テーブル114が処理装置ステーション21の載置目的位置に到達できるよう旋回テーブル14の補正旋回(図中の旋回角度a)を実行する。これが上述したカセットをロードする場合の補正動作である。後述するアンロードの場合の補正動作では、上記旋回テーブル14の補正旋回および物品支持テーブル114のアーム上補正旋回(図中のアーム上旋回角度b)を実行する。
【0072】
第2に、図6におけるカセットロード時の移載本動作(S40)の説明をする。この移載本動作は、インターロック成立後の動作であるので、相手の処理装置2の領域に侵入した動作を実行する。まず、物品支持テーブル114を処理装置ステーション21の載置パターンにあうように旋回する前に、無人搬送車1の領域内にあった第1アーム111および第2アーム112を所定位置まで伸張させる(S401)。次に、物品支持テーブル114を処理装置ステーション21の載置パターンにあうようにアーム上旋回させる(S402)。次に、物品支持テーブル114が処理装置ステーション21の載置位置に来るよう第1アーム111および第2アーム112を所定位置まで伸張させる(S403)。次に、ウェハカセット4と物品支持テーブル114を離すため、昇降部13によりスカラーアーム11を下降させ、ウェハカセット4を処理装置ステーション21側へ渡す(S404)。最後に、第1アーム111および第2アーム112を原点位置まで戻す(S405)。
【0073】
第3に、図6におけるカセットロード時の移載後動作(S60)の説明をする。この移載後動作は、インターロック成立中の動作であるが、処理装置2の領域内から退出した後の動作であるため、インターロック成立の有無には関係なく実行できる。まず、旋回テーブル14を原点位置まで戻す(S601)。次に、物品支持テーブル114を原点位置まで戻す(S602)。最後に、シャッター12を閉める(S603)。
【0074】
以上のカセットロード時の移載動作について、図8に示すタイミングチャートを用いて説明する。図8は、カセットロードする場合の、インターロック通信を示すタイミングチャートである。まず、無人搬送車1が処理装置ステーション21の前に到着すると、インターロック通信が開始され、無人搬送車1は移載要求信号をONにし、処理装置2へ移載要求信号を発信する(S10)。移載要求信号を受信した処理装置2は、載置部34に別のウェハカセットが既に存在するか否かの確認を行い(S110)、ウェハカセットが載置部にない場合はウェハカセット受け取り可能であることを示す移載許可信号をONにし、無人搬送車1に発信する(S120)。このS10、S110、S120が実行されている時間T1のうちに、無人搬送車1は時間T1を待機時間とすることなく、並行して、上述した移載前動作を実行する(S20)。
【0075】
そして、時間T1の経過後、インターロックが成立する。無人搬送車1は、移載本動作信号をONにし、時間T2のなかで移載本動作を開始する(S40)。
【0076】
やがて、無人搬送車1の移載本動作が完了すると、無人搬送車1は移載動作信号をOFFにすると同時に、移載終了要求信号をONにし、処理装置2に対して移載終了要求信号を送信する(S50)。移載終了要求信号を受信した処理装置2は、載置部34にウェハカセット4が存在することを確認し(S130)、移載終了許可信号をONにし、無人搬送車1に対し移載終了許可信号を送信する(S140)。移載終了許可信号を受信した無人搬送車1は、移載終了要求信号および移載要求信号をOFFにする。このステップS130、S140が実行されている時間T3のうちに、無人搬送車1は時間T3を待機時間とすることなく、並行して、上述した移載後動作を実行する(S60)。そして、時間T3の経過後、インターロックが解除される。
【0077】
なお、上記記載の、移載終了許可信号をONにし、無人搬送車1に対し移載終了許可信号を送信する(S140)という動作においては、移載終了許可信号を設けず、移載終了許可信号をONにする代わりに、移載許可信号をOFFにすることとしてもよい。この場合、無人搬送車1は移載許可信号のONからOFFへの変化を受信することで、移載終了要求信号および移載要求信号をOFFにする。
【0078】
従来の移載動作は、図10に示されるように、移載前動作、移載本動作、移載後動作はすべて時間T2において実行されており、本実施形態の場合に比べ、時間T2が長くなる。一方、時間T1およびT3は、それぞれ、インターロック成立に必要な通信時間およびインターロック解除に必要な通信時間であり、従来および本実施形態とも各々同時間である。
【0079】
本発明の実施形態によれば、無人搬送車1は、時間T1のうちに移載前動作を実行し、時間T2のうちに移載本動作を実行し、時間T3のうちに移載後動作を実行するので、無人搬送車1の待機時間が消滅し、また時間T2も短縮されるので、移載動作全体に必要な停止時間の短縮化が実現される。
【0080】
図9は、無人搬送車1がウェハカセット4を処理装置2から受け取る、あるいは、取り出す(以降、カセットアンロードすると記す)場合の、無人搬送車1の移載動作の詳細なフローチャートである。つまり、図9のフローチャートは、図5のフローチャートにおける移載開始から移載終了までを詳細説明したものに対応する。同じ点は説明を省略して、以下、異なる点である移載前動作、移載本動作、移載後動作について説明する。
【0081】
まず第1に、カセットアンロード時の移載前動作(S20)の説明をする。前述したように、この移載前動作は、インターロック成立前の動作であるので、相手の処理装置2の領域に侵入しない範囲での動作に限定される。
【0082】
まず、カセットアンロードする側のシャッター12を開ける(S211)。次に、カセットアンロードする方向へ、旋回テーブル14を旋回させる(S212)。次に、物品支持テーブル114を処理装置ステーション21の載置パターンにあうようにアーム上旋回させる(S213)。次に、補正動作として旋回テーブル14を補正旋回させ、物品支持テーブル114をアーム上補正旋回させる(S214)。補正動作についてはカセットロード時の移載動作にて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0083】
第2に、カセットアンロード時の移載本動作(S40)の説明をする。この移載本動作は、インターロック成立後の動作であるので、相手の処理装置2の領域に侵入した動作を実行する。まず、物品支持テーブル114が処理装置ステーション21の載置位置に来るよう、第1アーム111および第2アーム112を所定位置まで伸張させる(S411)。次に、昇降部13によりスカラーアーム11を上昇させ、処理装置2の載置部34にあるウェハカセット4を物品支持テーブル114ですくい取る。(S412)。次に、物品支持テーブル114がアーム上旋回する位置まで第1アーム111および第2アーム112を縮める(S413)。次に、物品支持テーブル114をアーム上旋回させる(S414)。最後に、スカラーアーム11を原点位置まで戻す(S415)。
【0084】
第3に、カセットアンロード時の移載後動作(S60)の説明をする。この移載後動作は、インターロック成立中の動作であるが、処理装置2の領域内から退出した後の動作であるため、インターロック成立の有無には関係なく実行できる。まず、旋回テーブル14を原点位置まで戻す(S611)。次に、昇降部13によりスカラーアーム11を下降させる(S612)。最後に、シャッター12を閉める(S613)。
【0085】
カセットアンロード時の移載動作を示すタイミングチャートについては、図8に示すカセットロード時の移載動作を示すタイミングチャートと同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0086】
このように、本発明の実施形態によれば、カセットアンロード時においても、カセットロード時と同様、移載要求信号の送信と同時に移載前動作が実行され、インターロック成立後直ちに移載本動作が実行され、移載終了要求信号の送信と同時に移載後動作が実行される。よって、無人搬送車1の待機時間が発生せず、移載動作全体に必要な停止時間の短縮化が実現される。
【0087】
以上のように、本実施の形態における搬送システムによれば、無人搬送車は、移載相手の処理装置ステーションの前に到着した後、(1)インターロックが成立するまでに、シャッター開動作、テーブル旋回動作、スカラーアーム昇降動作、補正旋回動作など、相手の処理装置の領域に侵入しない範囲での移載前動作を実行すること、(2)インターロックが成立したあと直ちに、スカラーアームの伸縮動作、アーム上旋回動作、スカラーアーム昇降動作など、相手の処理装置の領域内に侵入した移載本動作を実行すること、(3)インターロックが解除されるまでに、物品支持テーブルおよび旋回テーブルの原点復帰動作、スカラーアームの昇降動作、シャッター閉動作など、相手の処理装置の領域に侵入しない範囲での移載後動作を実行することから、無人搬送車の待機時間が削減されるとともに停止時間が短縮され、その結果、製造時間の短縮化が図られ、製造コストの低減が実現される。
【0088】
以上、本発明に係る搬送システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0089】
たとえば、本実施の形態では、移載物をウェハカセットとしたが、本発明は、このような半導体デバイスの製造工程における搬送システムに限定されるものではなく、大きなガラスを移載物とした液晶表示器の製造ラインなど、インターロック通信を用いた無人搬送車により移載物を搬送するシステムであれば、いかなる搬送システムであってもよい。
【0090】
また、本実施の形態では、インターロック通信手段を光データ通信としたが、本発明は、このような光データ通信に限定されるものではなく、RF帯や赤外線を用いた無線通信であってもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、無人搬送車がスカラーアームを所持したが、本発明は、このような無人搬送車が主体となって移載動作をする搬送システムに限定されるものではなく、設置された処理装置がスカラーアームなどの移載機構を備え、インターロック通信による移載動作を実行する搬送システムであってもよい。つまり、移載許可信号を取得する前に相手側に侵入しない範囲で移載動作を行う主体が、無人搬送車ではなく、処理装置であってもよい。さらに、移載機構部が相手側から退出したときに終了要求信号を発する主体が、無人搬送車ではなく、処理装置であってもよい。
【0092】
また、本実施の形態では、搬送システムは、無人搬送車と処理装置とから構成されたが、無人搬送車と無人搬送車から構成されてもよいし、無人搬送車に代えて有人搬送車から構成されてもよい。
【0093】
また、本実施の形態では、無人搬送車が処理装置ステーションの前に到着してからインターロック通信を開始しているが、本発明は、無人搬送車が処理装置ステーションの前に到着する前からインターロック通信を開始するシステムであってもよい。ただし、この場合は、移載本動作は、当然、無人搬送車が停止してからなされるべきものであり、無人搬送車の移動中に実行してよい移載前動作は、移載物および無人搬送車に損傷を与えない動作に限定されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、例えば、半導体デバイスや液晶表示器等の製造ラインにおけるインターロック機能を備えた搬送システム、無人搬送車、処理装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る搬送システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における無人搬送車の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における無人搬送車の正面図である。
【図4】本発明の実施の形態における搬送システムの機能構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態における搬送システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】ウェハロード時の無人搬送車1の移載動作を示す詳細なフローチャートである。
【図7】図6および図9のフローチャートに示される補正動作を説明する図である。
【図8】カセットロード時のインターロック通信を説明するタイミングチャートである。
【図9】カセットアンロード時の無人搬送車1の移載動作を示す詳細なフローチャートである。
【図10】従来の搬送システムにおけるインターロック通信を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 無人搬送車
2 処理装置
3、10 光通信
4 ウェハカセット
5 光データ通信装置
6 搬送車コントローラ
7 端末装置
8 LAN
9 搬送用レール
11 スカラーアーム
12 シャッター
13 昇降部
14 旋回テーブル
15 搬送車制御部
21 処理装置ステーション
31 移載機構部
33 搬送車通信部
34 載置部
35 装置制御部
36 装置通信部
37 プロセス部
111 第1アーム
112 第2アーム
113 ハンド
114 物品支持テーブル
141 距離センサ
211 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車と装置との間で荷物を移載する搬送システムであって、
前記搬送車及び前記装置の一方は、
搭載している荷物を前記搬送車及び前記装置の他方である相手側に差し出す、又は、相手側から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載機構部と、
前記相手側に対して移載許可を要求する移載要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す移載許可信号を取得する通信手段と、
前記通信手段が前記移載許可信号を取得する前に、前記移載機構部が前記相手側に侵入しない範囲で移載動作を行うように、前記移載機構部を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記移載機構部は、搭載している荷物を覆うシャッターを備え、
前記制御手段は、前記相手側に侵入しない範囲での移載動作として、前記シャッターを開かせる制御をする
ことを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記通信手段はさらに、前記相手側に対して移載の終了許可を要求する終了要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す終了許可信号を取得し、
前記制御手段はさらに、前記移載機構部が前記相手側から退出したときに、前記通信手段が前記終了要求信号を発するように、前記通信手段を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項4】
搬送車と装置との間で荷物を移載する搬送方法であって、
前記搬送車と前記装置との間で、一方の装置から他方の装置に対して、移載許可を要求し、前記他方の装置から前記一方の装置に対して、当該要求に対する許可を提示する通信を行う通信ステップと、
前記一方の装置が、搭載している荷物を、前記他方の装置に差し出す、又は、前記一方の装置が前記他方の装置から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載ステップとを含み、
前記移載ステップは、前記通信ステップにおいて前記許可が提示される前に、開始される
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項5】
前記移載ステップでは、前記通信ステップにおいて前記許可が提示される前に、前記一方の装置が前記他方の装置に侵入するまでの移載動作が行われる
ことを特徴とする請求項4記載の搬送方法。
【請求項6】
相手装置との間で荷物を移載する搬送車であって、
搭載している荷物を前記相手装置に差し出す、又は、相手装置から荷物を取り出すことによって荷物を移載する移載機構部と、
前記相手装置に対して移載許可を要求する移載要求信号を発し、当該要求に対する許可を示す移載許可信号を前記相手装置から取得する通信手段と、
前記通信手段が前記移載許可信号を取得する前に、前記移載機構部が前記相手装置に侵入しない範囲で移載動作を行うように、前記移載機構部を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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