説明

搬送パイプ

【課題】原料貯留容器に貯留された原料の搬出作業に係る作業効率向上および費用削減等を図る。
【解決手段】搬送パイプ32は、原料貯留容器に貯留された原料に浸漬されるパイプ本体39に、該パイプ本体39内を移動する原料の温度調整を行なう温度調整手段50を備えている。パイプ本体39は、先端から吸込まれた原料が流通する内側筒体部40と、内側筒体部40の外側に配設されて該内側筒体部40との間に内部空間46を画成する外側筒体部42とを備え、温度調整手段50が内部空間46内に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送パイプに関し、更に詳細には、原料貯留容器に貯留されている原料を吸込んで外部へ搬送する搬送パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料や熱可塑性樹脂のような温度変化により粘度が変動する原料は、適宜の原料貯留容器(例えば、200リッターサイズのドラム缶等)に収容したもとで、輸送されると共に保管される。そして、原料貯留容器に収容されている原料は、例えば図8に示すような原料搬送装置10を使用して、該原料貯留容器Tから吸出して使用に供されるようになっている。図8に示した原料搬送装置10は、吸込み口18を先端に開設した搬送パイプ12を備え、原料貯留容器Tに貯留された原料Lに搬送パイプ12を浸漬させたもとで、搬送パイプ12の後端側に送出パイプ16を介して連結したポンプ手段14を作動して該原料Lを吸出すよう構成されている。
【0003】
ところで、粘度が高い原料Lは低温状態で一段と流動性が低くなるので、搬送パイプ12からポンプ手段14へ該原料Lがスムーズに流れず、原料Lが低温状態のままでは原料搬送装置10による吸出し作業を円滑かつ効率的に行なうことが不可能である。そこで、例えば特許文献1に開示されているような圧送装置を使用して、前述した原料Lの搬送を行なっている。すなわち、特許文献1に開示された圧送装置は、ヒータを装備したタンクと、このタンクに連結されて途中にギアポンプ等が配設された送出パイプと、送出パイプ内の原料をタンクに回収する戻し通路等を備えている。従って、タンク内に貯留された樹脂(原料L)は、ヒーターにより加熱して粘度を低下させたもとでギアポンプにより圧送されてガンから送出され、該ガンからの送出量が減少した際に原料が戻し通路を介してタンクに戻るようになっている。
【特許文献1】実開平7−34203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された圧送装置では、タンク内に貯留されている原料の調温(加熱)に電気式ヒーターが使用されており、原料が底部に染込んで該電気式ヒーターに接触すると、漏電やショートの原因となる。また、リリーフバルブからタンクまでの戻し通路が長いと、原料が戻し通路内で冷えて流れ難くなる問題もあった。更に、原料を圧送すると共にタンクへ回収するため、出力の大きなポンプが必要となって装置の設備費用が嵩む問題も指摘される。一方、前述した原料貯留容器Tからタンクへの原料Lの移し替え作業が必要となり、しかも加熱する前の流動性が低い原料Lをタンクに移し替えることになるので、原料Lを圧送する前の準備作業が面倒かつ煩わしいものとなっていた。
【0005】
なお、前述した特許文献1に開示されたような圧送装置を使用せず、例えば図9および図10に示すように、原料貯留容器Tに貯留されている原料Lを該容器T内で加熱して、流動性を高めた状態の該原料Lを図8に示す原料搬送装置10を使用して吸出す方法も実施されている。図9では、容器装着型ヒータH1を原料貯留容器Tの外周面に巻付けて装着し、該容器装着型ヒータH1により材料貯留容器Tを加熱することで、粘度低下により流動性が高められた原料Lを原料搬送装置10で吸出すようになっている。また図10は、浸漬型ヒータH2を材料貯留容器Tの上部に設けられた開口部(通気口等)20を介して原料Lへ浸漬させ、該浸漬型ヒータH2により原料Lを所要温度まで加熱することで、粘度低下により流動性が高められた原料Lを原料搬送装置10で吸出すようになっている。
【0006】
しかるに、図9および図10に示した方法では、容器装着型ヒータH1および浸漬型ヒータH2による加熱位置と搬送パイプ12の浸漬位置とが離れているので、搬送パイプ12の周囲に位置する原料Lを、原料搬送装置10により吸出すのに適した温度まで加熱するには、原料貯留容器T内に貯留されている該原料Lを全体的に加熱する必要があった。従って、原料搬送装置10により原料Lを吸出すまでの準備(原料Lの加熱)にかなりの時間を要すると共に、特に原料貯留容器Tが大型の場合には原料Lの加熱に要する費用(電気代等)が嵩む問題を内在している。
【0007】
そこで本発明では、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、原料貯留容器に貯留された原料の搬出作業に係る作業効率向上および費用削減等を図るようにした搬送パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、先端が開口したパイプ本体を備え、原料貯留容器に貯留された原料に前記パイプ本体を浸漬させたもとで、該パイプ本体の後端側に連結または配設したポンプ手段を作動して、先端から吸込んだ前記原料を搬送する搬送パイプにおいて、
前記パイプ本体に、該パイプ本体内を移動する前記原料の温度調整を行なう温度調整手段を設けたことを要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、パイプ本体内に吸込まれた原料が温度調整手段より所要温度に調温されるので、例えば低温状態で流動性が低い原料を温度調整手段で加熱すれば粘度低下に伴って流動性が高められ、原料の搬出作業の効率化を図り得る。そして、原料貯留容器内の原料を全体的に温度調整する必要がなく、浸漬させた搬送パイプの周辺の原料および搬送パイプに吸込まれた原料を効率的に温度調整し得るので、該搬送パイプを浸漬してから短時間のうちに原料の吸出しを開始することができ、搬出作業時間に係る作業効率向上および費用削減等を図り得る。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記パイプ本体は単層構造とされ、前記原料が流通する内側に前記温度調整手段が配設されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、パイプ本体内に吸込まれた原料が温度調整された温度調整手段に直接接触するようになり、該原料の温度調整に係る効率が向上する。また、パイプ本体により温度調整手段が保護されるので、原料貯留容器に対して搬送パイプを差込む際および引抜く際に、該温度調整手段が破損することを防止し得る。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記パイプ本体は、先端から吸込まれた前記原料が流通する内側筒体部と、前記内側筒体部の外側に配設され、該内側筒体部との間に内部空間を画成する外側筒体部とを備え、前記内部空間に、内側筒体部に接触する状態で前記温度調整手段が配設されることを特徴とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、パイプ本体に配設された温度調整手段が、内側筒体部および外側筒体部により形成された内部空間内に収容されて原料に直接的に接触することがないので、漏電やショート等の発生を好適に防止し得る。更に、温度調整手段が外側筒体部により被覆・保護されているので、原料の搬出作業準備中や搬出作業中に温度調整手段が破損することを防止し得る。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記温度調整手段は、調温された熱媒体を流通させる温調パイプであることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、熱媒体により温調パイプの温度調整を行なうことで、パイプ本体内を移動する原料の温度調整を図り得る。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記温度調整手段は電気ヒータであることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、電気ヒータに対する通電により該電気ヒータを加熱することで、パイプ本体内を移動する原料を加熱し図り得る。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記パイプ本体は、該パイプ本体内に吸込まれた前記原料が前記原料貯留容器内へ逆流するのを防止する逆流防止部を備えることを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、パイプ本体内に吸込まれた原料が該パイプ本体から外部へ逆戻りすることが防止され、原料の温度調整に伴う損失の発生を防止し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る搬送パイプによれば、パイプ本体を原料に浸漬して該原料を吸出す際に、温度調整手段によりパイプ本体内を移動する該原料の温度を調節するようにしたので、原料の搬出作業に係る作業効率向上および費用削減等を図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る搬送パイプにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0017】
図2は、実施例の搬送パイプ32を備えた原料搬送装置30を、原料貯留容器Tに貯留された原料Lを吸出し得る状態で示した説明図であり、図1は、図2に示した実施例の搬送パイプ12の内部構成を一部破断して示した説明断面図である。原料搬送装置30は、吸込み口38が先端に開設された搬送パイプ32を備え、この搬送パイプ32を送出パイプ36を介してポンプ手段34に接続して構成されている。そして、原料貯留容器Tに貯留された原料Lに搬送パイプ32を先端から浸漬させ、この状態でポンプ手段34を作動することで、原料Lの吸出しを行なうよう構成されている。
【0018】
実施例の搬送パイプ32は、図1および図2に示すように、搬送パイプ32を構成するパイプ本体39に温度調整手段50を備えており、この温度調整手段50によりパイプ本体39を加熱しながらポンプ手段34を作動して、原料Lの吸出しを行なうよう構成されている。例えば低温状態で流動性が低い原料Lを吸出す場合には、前述した温度調整手段50によりパイプ本体39を加熱して、該パイプ本体39内を流通する原料Lの温度を上昇させ、温度上昇に伴う粘度低下により流動性が高められた原料Lを吸出すよう構成されている。
【0019】
実施例の搬送パイプ32におけるパイプ本体39は、図1に示すように、先端から吸込まれた原料Lが流通する流通空間44を内部に形成した内側筒体部40と、内側筒体部40の外側に配設され、該内側筒体部40との間に内部空間46を画成する外側筒体部42とを備えている。そして、前述した内部空間46内に、内側筒体部40および外側筒体部42に夫々接触する状態で前述の温度調整手段50が配設されている。従って、温度調整手段50を加熱した際には、該温度調整手段50に接触した内側筒体部40および外側筒体部42の温度が上がり、温度調整手段50を冷却した際には、該温度調整手段50に接触した内側筒体部40および外側筒体部42の温度が下がるようになっている。
【0020】
内側筒体部40は、熱伝導性に優れ、かつ吸出し対象とされる原料Lに対する耐薬品性および防錆性等に優れた素材(例えば、熱伝導率が10〜500W/m・℃程度のステンレス、銅等)から形成された細長のパイプ状部材であり、実施例ではステンレス(SUS430(熱伝導率;26W/m・℃))から形成されている。また、内側筒体部40の先端部内側には雌ネジ54が形成されており、後述する逆流防止部材(逆流防止部)70が装着されるようになっている。更に、内側筒体部40の後端部分には雄ネジ56が形成されており、搬送パイプ32とポンプ手段34とを接続する送出パイプ36の端部が連結されるようになっている。なお搬送パイプ32は、図2に示すように、送出パイプ36を介してポンプ手段34に接続されたポンプ別体タイプとして構成されている。
【0021】
外側筒体部42は、吸出し対象とされる原料Lに対する耐薬品性および防錆性に優れ、また熱伝導性に優れると共に、更に耐衝撃性に優れた素材(例えば、熱伝導率が10〜500W/m・℃程度のステンレスやスチール等)から形成され、内側筒体部40より大径で短いパイプ状部材であって、実施例では軟鋼(SPCC(熱伝導率;79W/m・℃))から形成されている。外側筒体部42の先端部分は径方向内側に突出しており、内側筒体部40の先端外周面に隙間なく接合されている。また、外側筒体部42の後端部分は径方向内側へ折曲形成されており、内側筒体部40の外周面に接合されている。そして、外側筒体部42の後端折曲部分には、温度調整手段50を構成する後述の温調パイプ62の引込み口58および引出し口60が形成されている。なお、外側筒体部42の外周面は凹凸がない平滑面に構成されており、原料貯留容器Tの注入口Nに対してスムーズに抜き差しでき、外表面に付着した原料Lが残留し難いと共に該原料Lを簡易に拭き取ることが可能となっている。
【0022】
温度調整手段50は、図2に示すように、原料搬送装置30に付設した温度制御部52に両端部が連結された1本の温調パイプ62であり、温度制御部52において温度調整した熱媒体が該温調パイプ62内を流通することで加熱または冷却される。この温調パイプ62は、熱伝導性に優れた素材(例えば、熱伝導率が5〜500W/m・℃程度、好ましくは70〜500W/m・℃程度の銅、アルミ合金等)から形成され、実施例では銅(C1220P(熱伝導率;376W/m・℃))が使用されている。また温調パイプ62は、内側筒体部40の外周面および外側筒体部42の内周面に接触した状態で略螺旋状に巻付けられ、これら内側筒体部40および外側筒体部42を効率的に加熱し得るよう構成されている。すなわち温調パイプ62は、内側筒体部40の後端側から先端側に向けて該温調パイプ62の外径と同等の間隔をおいて螺旋状に巻付けられ、先端部分において折り曲げた後に、後端側に向けて既に巻付けられた温調パイプ62の間を螺旋状に巻付けられている。なお、前述した温度制御部52は、水を加熱する既存の小型温水器または小型蒸気発生器等であり、温調パイプ62に流通する熱媒体としては例えば温水やスチーム等が好適に使用される。
【0023】
内側筒体部40の先端開口部分には逆流防止部材70が取付けられており、パイプ本体39内に吸込んだ原料Lが、該パイプ本体39の外部へ逆流するのを防止し得るようになっている。この逆流防止部材70は、図3および図4に示すように、内側筒体部40の先端内周面に密着した状態で嵌合する円筒状の本体部材72と、この本体部材72内に移動可能に配設されたシャッター部材74と、本体部材72の後端側の内側に架設されたストッパー部材76とを備えている。本体部材72の外周面には、内側筒体部40に形成した雌ネジ54に螺合する雄ネジ78が形成され、この雄ネジ78を雌ネジ54に螺合させることで内側筒体部40の先端部分に本体部材72が固定される。本体部材72の先端側には、前述した吸込み口38として機能する開口部が形成されると共に、この吸込み口38から後方側には、該吸込み口38より大径に形成されてシャッター部材74が収容される送通路80が形成されている。そして、吸込み口38と送通路80との境界部分には、これら吸込み口38と送通路80との直径差による段差が形成されており、この段差はシャッター部材74が離間可能に密着し得る台座部82とされている。
【0024】
シャッター部材74は、図4に示すように、対角線長が送通路80の内径と略同一に設定された矩形板部材であって、4つの各頂点部分が送通路80の内壁面に軽く接触した状態で、本体部材72の軸方向への往復移動が可能となっている。そして、シャッター部材74が台座部82へ密着した際(図1の状態)では、吸込み口38が完全に閉塞されて原料Lの流通を遮断するようになっている。また図4に示すように、本体部材72の軸方向と直交する方向における送通路80の断面形状が円形であり、シャッター部材74が矩形であるから、送通路80の内壁面とシャッター部材74の4つの各端縁との間には、合計4個の隙間Sが画成されている。従って、シャッター部材74が台座部82から離間した際(図3の状態)には、吸込み口38と送通路80とが各隙間Sを介して連通した状態となり、吸込み口38から送通路80への原料Lの流通が許容される。
【0025】
ストッパー部材76は、送通路80内に配設されたシャッター部材74の移動量を規制するもので、軸方向と直交する向きに延在するよう本体部材72に取付けられている。すなわちシャッター部材74は、台座部82に密着して吸込み口38を閉鎖した位置およびストッパー部材76と接触して吸込み口38を開放した位置の間を移動可能となっている。従って、ポンプ手段34が作動した際には、搬送パイプ32の内部(流通空間44)が負圧となることで、シャッター部材74はストッパー部材76に当接する位置まで移動する。
【0026】
前述した逆流防止部材70は、図1および図3に示すように、本体部材72の先端部分が所要長さだけ突出した状態で搬送パイプ32の先端に取付けられている。従って、搬送パイプ32を原料貯留容器T内の原料Lに浸漬させるに際して、先端部が該原料貯留容器Tの内部底面に接触するようになった場合は、逆流防止部材70の本体部材72が接触するようになり、搬送パイプ32の外側筒体部42が接触することを防止し得るようになっている。また、本体部材72の搬送パイプ32から突出した部分には、吸込み口38を挟んで対向する位置に2つの先端凹部84,84が、本体部材72の周方向へ所要幅で形成されている。従って、原料貯留容器T内の原料Lに搬送パイプ32を浸漬させた際に、本体部材72の先端部が原料貯留容器Tの内部底面に接触していても、原料貯留容器Tと吸込み口38とが前記先端凹部84,84を介して連通しており、原料Lの吸込みが適切に行なわれる。
【0027】
前述のように構成された実施例の搬送パイプ32を備えた原料搬送装置30は、例えば温度制御部52により加熱した熱媒体を温調パイプ62内へ流通させることで該温調パイプ62が加熱され、これにより温調パイプ62に接触する内側筒体部40および外側筒体部42が全体的に加熱される。そして、内側筒体部40の外側に巻付けられた温調パイプ62が外側筒体部42で被覆・保護されており、該外側筒体部42が原料貯留容器Tの端部等に接触しても、温調パイプ62の破損が防止されるよう構成されている。また、内側筒体部40および外側筒体部42により密封された内部空間46内に温調パイプ62が収容されているので、原料貯留容器T内の原料Lに搬送パイプ32を浸漬させた際に、温調パイプ62内の熱媒体が該原料Lと直接的に接触することが防止されている。更に、内側筒体部40が加熱されることで、該内側筒体部40の先端に装着された逆流防止部材70の本体部材72も加熱される。
【0028】
なお、前述のように構成された実施例の搬送パイプ32は、パイプ本体39のサイズ(長さ、外径等)の設定により、様々な形状・サイズの原料貯留容器Tに対応し得る。例えば、原料貯留容器Tが前述した既存のドラム缶(200リッター・タイトヘッドタイプ)の場合は、このドラム缶の全高が約900mm、天板に設けた注入口Nの内径が約60.5mmとなっている。従って、搬送パイプ32を構成するパイプ本体39の内側筒体部40は、全長が1100〜1200mmで内径が25〜30mm、該パイプ本体39の外側筒体部42は、全長が1000〜1100mmで外径が50〜55mm、温調パイプ62は、外径が8mm程度に設定するのが望ましい。
【0029】
(実施例の作用)
次に、前述のように構成された実施例の搬送パイプの作用につき説明する。なお以下では、低温状態で流動性が低い原料Lを原料貯留容器Tから搬出する場合を説明する。
【0030】
先ず、温度制御部52を作動して熱媒体を所要温度まで加熱し、加熱された熱媒体を温調パイプ62に流通させ、パイプ本体39の内側筒体部40および外側筒体部42を加熱する。内側筒体部40および外側筒体部42が所定温度(例えば60℃程度)になったら、搬送パイプ32を注入口Nから原料貯留容器T内へ差込み、加熱されていない原料Lに該搬送パイプ32を浸漬させる。従って、搬送パイプ32の外側筒体部42に接触した原料Lは、適宜加熱されて温度が上昇する。なお、搬送パイプ32を原料Lに浸漬させてから、温調パイプ62へ熱媒体の供給を開始して搬送パイプ32を加熱するようにしてもよい。
【0031】
搬送パイプ32を浸漬して、該パイプ本体39周辺の原料Lが加熱されたら、適宜タイミングでポンプ手段34を作動させる。これにより、パイプ本体39内が負圧となるので、シャッター部材74が台座部82から離間してストッパー部材76に当接するまで移動し、搬送パイプ32の先端付近の加熱された原料Lが、吸込み口38から各隙間Sを介して搬送パイプ32内(内側筒体部40内の流通空間44内)に順次吸込まれる。パイプ本体39内へ流入した原料Lは、流通空間44内をポンプ手段34側へ移動する際に加熱されている内側筒体部40の壁面に接触するので、更に加熱されて温度が上昇すると共に粘度が低下する。従って原料Lは、搬送パイプ32から送出パイプ36内へ移動する時点でかなり温度が上昇し、これに伴う粘度低下により流動性が高められた状態となる。従って原料Lは、流動し易くなった状態で送出パイプ36を移動するようになるので、該送出パイプ36内をスムーズに移動してポンプ手段34へ至り、順次外部へ搬送される。
【0032】
一方、吸込み作業中の適時にポンプ手段34の作動を停止した場合には、パイプ本体39内の負圧が解除され、パイプ本体39内に残留した原料Lの重みがシャッター部材74に加わるため、該シャッター部材74が吸込み口38側へ移動して台座部82に密着するようになる。これにより吸込み口38が閉塞され、パイプ本体39内に流入して適宜温度が上昇した原料Lが、該吸込み口38の外部(原料貯留容器T内)へ逆流することが防止される。
【0033】
従って、実施例の搬送パイプ32によれば、次のような作用効果を奏する。先ず、原料貯留容器T内に貯留されている原料Lにパイプ本体29を浸漬させて該原料Lを搬出するに際し、パイプ本体39内に吸込まれた原料Lが温度調整手段50より所要温度に調温されるので、例えば低温状態で流動性が低い原料Lを温度調整手段50で加熱すれば粘度低下に伴って流動性が高められるので、該原料Lの搬出が円滑になされて搬出作業の効率化を図り得る。そして、原料貯留容器T内に貯留されている原料Lの温度調整を行なうための別途の温度調整手段を準備する必要がなく、また容器内の原料Lの全体を温度調整する必要もない。すなわち、浸漬させた搬送パイプ32の周辺の原料Lおよび搬送パイプ32に吸込まれた原料Lのみを効率的に温度調整し得るので、該搬送パイプ32を浸漬してから短時間のうちに原料Lの吸出しを開始することができ、搬出作業時間に係る作業効率向上および費用削減等を図り得る。しかも、原料貯留容器T内の原料Lを循環させないので循環用のポンプ等を装備する必要もない。
【0034】
また、パイプ本体39に配設された温調パイプ62は、内側筒体部40および外側筒体部42により形成された内部空間46内に収容されて原料Lに直接的に接触することがないので、該温調パイプ62の劣化等に伴って該熱媒体が原料L内へ漏出することが防止される。更に、温調パイプ62が外側筒体部42により完全に被覆・保護されているので、原料貯留容器Tに対して搬送パイプ32を抜き差しする際(吸出し作業準備中)や、吸出し作業中に、該原料貯留容器Tの壁部等に該搬送パイプ32が接触しても温調パイプ62の破損を好適に防止し得る。更にまた、外側筒体部42の外壁が凹凸のない平滑面となっているため、原料貯留容器Tの注入口Nに対して搬送パイプ32をスムーズに抜き差しでき、外側筒体部42の外表面に付着した原料Lを簡易に拭き取ることが可能となる。一方、原料貯留容器T内の原料Lを別の圧送装置等に移し替える必要がないので、搬送作業に係る準備作業の簡易化および効率化を図り得る。
【0035】
また、逆流防止部材70を装備したことにより、パイプ本体39内に吸込んだ原料Lが、吸込み口38を介してパイプ本体39の外部へ逆戻りしない。すなわち、搬送パイプ32内で温度調整された原料Lが原料貯留容器T内に逆戻りすることがないので、温度調整された原料Lが冷されることによる損失の発生を防止し得る。
【0036】
(変更例)
図5は、変更例1に係る搬送パイプ32の構成を、破断した状態で示した説明断面図である。変更例1の搬送パイプ32は、前述した実施例と同様にパイプ本体39を内側筒体部40および外側筒体部42の2重構造としたもとで、通電可能な温度制御部52により温度調整される温度調整手段50としての電気ヒータ90を、内部空間46内に配設したものである。内部空間46内に収容された電気ヒータ90は、内側筒体部40の外周面において搬送パイプ32の長手方向へ直線状に延在させると共に周方向へ複数回折り返すように配設され、内側筒体部40の外周面および外側筒体部42の内周面の略全面領域に接触している。従って、温度制御部52により電気ヒータ90に通電することで内側筒体部40および外側筒体部42が好適に加熱され、前述した実施例と同様の作用効果を奏する。なお、密封された内部空間46内に電気ヒータ90が収容されているので、該電気ヒータ90が原料Lと接触することはなく、漏電やショート等の発生を防止し得る。また、外側筒体部42により電気ヒータ90が保護されるので、原料貯留容器Tに対して搬送パイプ32を差込む際および引抜く際に、電気ヒータ90が破損することを防止し得る。
【0037】
図6は、変更例2に係る搬送パイプ32の構成を、破断した状態で示した説明断面図である。変更例2の搬送パイプ32は、パイプ本体39を単層構造とし、原料Lが流通する該パイプ本体39の内側に温度調整手段50を配設してある。すなわち温度調整手段50は、パイプ本体39内の流通空間44に露出して配設され、該流通空間44内を流通する原料Lと接触するようになる。従って温度調整手段50は、実施例と同様に、温度制御部52において温度調整された熱媒体が該温調パイプ62が好適に採用される。従って、温度制御部52により例えば所要温度に加熱された熱媒体を温調パイプ62内に流通させることで、パイプ本体39内に吸込まれた原料Lが加熱された温調パイプ62に直接接触するようになり、該原料Lに熱が伝わり易くなる。なお、温度調整手段50が温調パイプ62の場合には、漏電やショート等の発生を好適に防止し得る。また、パイプ本体39により温調パイプ62が保護されるので、原料貯留容器Tに対して搬送パイプ32を差込む際および引抜く際に、該温調パイプ62が破損することを防止し得る。
【0038】
実施例における温調パイプ62は、図5に示した電気ヒータ90のような態様で内側筒体部40の外周面に配設してもよい。また、変更例における電気ヒータ90は、図1に示した調温パイプ62のような態様で内側筒体部40の外周面に巻付けるように配設してもよい。
【0039】
実施例および各変更例では、内部空間46内に配設した温調パイプ62または電気ヒータ90を、内側筒体部40および外側筒体部42の両方に接触させるようにしたが、これら温調パイプ62および電気ヒータ90は、少なくとも内側筒体部40にのみ接触していればよい。すなわち、内側筒体部40のみを加熱すれば、搬送パイプ32の流通空間44内を移動する原料Lを好適に加熱することが可能である。なお、外側筒体部42も加熱されるようにすれば、搬送パイプ32内に吸込まれる前の原料Lを適宜加熱することが可能となる。
【0040】
また、パイプ本体39の内部空間46内に温調パイプ62または電気ヒータ90を配設した際には、該内部空間46内に隙間が画成されている。従って、(1)温調パイプ62から熱媒体が漏出することがないこと、(2)内側筒体部40と外側筒体部42とが確実に接合されて、内部空間46内に原料Lが入り込むことがないこと、等の条件下において、(a)熱媒体、オイル、シリコンオイル、(b)水、(c)アルミ粉、銅粉、(c)微細樹脂片、(d)熱伝セメント、等を内部空間46の隙間に充填させることができる。前述のような物質を内部空間46内に充填させることで、温調パイプ62または電気ヒータ90により内側筒体部40と外側筒体部42とを均一に調温することが可能である。そして、充填する物質の熱伝導率が高い場合には、内側筒体部40および外側筒体部42の温調効率を高めることができ、また充填する物質の熱伝導率が低い場合には、温調パイプ62に対する温調を停止した後に保温効果が期待できる。
【0041】
実施例で示した搬送パイプ32は、前述すると共に図2に示すように、送出パイプ36を介してポンプ手段34に接続されるポンプ別体タイプとして構成されていたが、この搬送パイプ32は、図7に示すように、送出パイプ36を介さずにポンプ手段34を配設したポンプ一体タイプとして構成することもできる。
【0042】
また、内側筒体部40と外側筒体部42との間に内部空間46を画成した実施例のパイプ本体39の場合は、該内部空間46内に熱媒体を直接流通させる構成としてもよい。なお、このような構成では、熱媒体そのものが温度調整手段50として構成される。
【0043】
実施例では、温度制御部52により温度調整手段50を加熱することで、原料貯留容器T内からパイプ本体39内に吸込んだ原料Lを加熱して、粘度低下により流動性を高めた該原料Lを搬出する場合を例示したが、温度制御部52により温度制御手段50を冷却するようにすれば、原料貯留容器T内からパイプ本体39内に吸込んだ原料Lを冷却しながら搬出することも可能である。原料Lを冷却しながら搬出する場合でも、原料貯留容器T内の原料Lを全体的に冷却する必要がなく、浸漬させた搬送パイプ32の周辺の原料Lおよび搬送パイプ32に吸込まれた原料Lのみを効率的に冷却し得るので、該搬送パイプ32を浸漬してから短時間のうちに原料Lの吸出しを開始することができ、搬送作業時間の短縮化および効率化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図2に示した実施例の搬送パイプの内部構成を、一部破断して示した説明断面図である。
【図2】実施例の搬送パイプを備えた原料搬送装置により、原料貯留容器に貯留された原料を搬出している状態で示した説明図である。
【図3】搬送パイプにおける先端部分の内部構造を示した部分拡大断面図である。
【図4】搬送パイプにおける先端部分の正面図である。
【図5】変更例1の搬送パイプの内部構成を、一部破断して示した説明断面図である。
【図6】変更例2の搬送パイプの内部構造を、一部破断して示した説明断面図である。
【図7】ポンプ手段を配設したポンプ一体タイプの搬送パイプを示した説明図である。
【図8】原料貯留容器に貯留されている原料を、従来の搬送パイプを装備した原料搬送装置で搬送する状態を示した説明図である。
【図9】容器装着型ヒータを原料貯留容器の外周面に巻付けて装着し、該容器装着型ヒータにより材料貯留容器を加熱することで、粘度低下により流動性が高められた原料を搬送する状態を示した説明図である。
【図10】浸漬型ヒータを材料貯留容器の上部に設けられた開口部を介して原料へ浸漬させ、該浸漬型ヒータにより原料を所要温度まで加熱することで、粘度低下により流動性が高められた原料を搬送する状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0045】
32 搬送パイプ,34 ポンプ手段,39 パイプ本体,40 内側筒体部
42 外側筒体部,46 内部空間,50 温度調整手段,62 温調パイプ,
70 逆流防止部材(逆流防止部),90 電気ヒータ,T 原料貯留容器,L 原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開口したパイプ本体を備え、原料貯留容器に貯留された原料に前記パイプ本体を浸漬させたもとで、該パイプ本体の後端側に連結または配設したポンプ手段を作動して、先端から吸込んだ前記原料を搬送する搬送パイプにおいて、
前記パイプ本体に、該パイプ本体内を移動する前記原料の温度調整を行なう温度調整手段を設けた
ことを特徴とする搬送パイプ。
【請求項2】
前記パイプ本体は単層構造とされ、前記原料が流通する内側に前記温度調整手段が配設される請求項1記載の搬送パイプ。
【請求項3】
前記パイプ本体は、先端から吸込まれた前記原料が流通する内側筒体部と、前記内側筒体部の外側に配設され、該内側筒体部との間に内部空間を画成する外側筒体部とを備え、前記内部空間に、内側筒体部に接触する状態で前記温度調整手段が配設される請求項1記載の搬送パイプ。
【請求項4】
前記温度調整手段は、調温された熱媒体を流通させる温調パイプである請求項2または3記載の搬送パイプ。
【請求項5】
前記温度調整手段は電気ヒータである請求項3記載の搬送パイプ。
【請求項6】
前記パイプ本体は、該パイプ本体内に吸込まれた前記原料が前記原料貯留容器内へ逆流するのを防止する逆流防止部を備える請求項1〜5の何れか一項に記載の搬送パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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