説明

搬送ベルトの駆動制御装置及び画像形成装置及び搬送ベルトの駆動制御方法

【課題】本発明はインクジェット記録方式の画像形成装置において記録紙の搬送ベルトの移動を制御する搬送ベルトの駆動制御装置等に関し、被搬送体を搬送する搬送ベルトの駆動制御を高精度に行うことを課題とする。
【解決手段】第1の分解能を有し搬送ベルト22の送り量を間接的に検出する間接エンコーダセンサ25と、搬送ベルトの駆動22を制御するCPU1とを有する駆動制御装置であって、間接エンコーダセンサ25よりも低い第2の分可能を有し搬送ベルト22の送り量を直接的に検出する直接エンコーダセンサ11を設ける。また、第2の分解能を有する直接エンコーダセンサ11では搬送ベルト22の停止位置の決定ができないと判断したとき、検出手段を直接エンコーダセンサ11から間接エンコーダセンサ25に切り換え、間接エンコーダセンサ25の出力に基づき搬送ベルト22の駆動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送ベルトの駆動制御装置及び画像形成装置及び搬送ベルトの駆動制御方法に係り、特にインクジェット記録方式の画像形成装置における記録紙の搬送ベルトの移動を制御する搬送ベルトの駆動制御装置及び画像形成装置及び搬送ベルトの駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ等の画像形成装置においては、印刷対象となる記録媒体(例えば紙)をインクジェットのノズル幅分だけ画像形成を行った後に、副走査方向に送り制御(及び停止制御)させている。これら動作を繰り返し実行することによって、最終的に1枚の記録媒体に所望の画像形成を行うものである。
【0003】
また、近年ではインクの耐光性、経時劣化性の改善によりインクが染料系から顔料系に変わり、しかもインク粘度の高粘度化が進んでいる。高粘度化により記録紙へのにじみが激減したが、逆にインク滴の記録紙着弾位置の位置ズレ精度の悪さが見た目に良く分かるようになった(白スジ、黒スジ、バンディング)。特に副走査方向の記録紙搬送時の停止位置精度の寄与率が大きいため、精度アップが必要不可欠の技術課題となってきた。
【0004】
インクジェット記録方式の画像形成装置における副走査記録紙搬送機構においては、従来、砥石搬送ローラや搬送ベルトによる搬送方法が一般的であり、これらの送り量制御には、搬送ローラ軸上にコードホイールを設置し、この値をエンコーダセンサで読み取り制御を行う方法が一般的である。
【0005】
この記録媒体の送り制御として様々な制御がすでに公知となっている(例えば、特許文献1参照)が、例えば図1のように搬送ベルト1の送り量制御を行うことによって、その搬送ベルト1上に載置された記録媒体の送り量を制御しようとする技術がある。このベルト制御は、駆動モータ221により回転するコードホイール233の円周上に形成されているロータリースケール226を間接エンコーダセンサ225によって読み取ることによってベルト制御を行っている。
【0006】
例えば、CPUなどの演算手段によってベルト送り量を1000パルス分行って停止する制御を行う場合は、間接エンコーダセンサ225によって1000パルス分に相当するスケールをカウントするまでベルトの送り量制御を行い、1000パルスのカウントが終了すると駆動モータ221への給電を停止させ、これにより搬送ベルト222を停止させている。尚、駆動モータ221とコードホイール233はベルト232で接続されており、また搬送ベルト222の図中右端は従動ローラ231に懸架されている。
【特許文献1】特開平7−243870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、間接エンコーダセンサ225によってコードホイール233に生成されているロータリースケール226をカウントすることによって行われる搬送ベルト222の送り及び停止制御は、そのコードホイール233の中心と回転軸にズレが生じている場合などは、同数のカウントを行った場合でもベルト送り量に違いが生じてしまう。
【0008】
説明の便宜上、図2に極端な例を示す。同図に示すようにコードホイール233の真の回転中心X2と、実際に取り付けられた回転中心X1にズレが生じている場合は、同じ1000パルスをカウントしたとしてもベルト送り量に違いが生じてしまうのは明らかである。また、取り付け誤差のみならず、コードホイール233が環境条件によって膨張したり、搬送ベルト222が理想的な一定厚さで成型されていない場合なども、同数のカウントを間接エンコーダセンサ225により読み取ったとしても、搬送ベルト222の送り量を一定移動量に制御することは困難となる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、被搬送体を搬送する搬送ベルトの駆動制御を高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1記載の発明は、
第1の分解能を有し、搬送ベルトの送り量を間接的に検出する第1の検出手段と、該第1の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御する制御手段とを有する駆動制御装置であって、
前記第1の分解能よりも低い第2の分解能をすると共に、前記搬送ベルトの送り量を直接的に検出する第2の検出手段を設け、
前記制御手段は、前記第2の分解能を有する第2の検出手段では前記搬送ベルトの停止位置の決定ができないと判断したとき、検出手段を前記第2の検出手段から第1の検出手段に切り換え、第1の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御する構成としたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記第1の検出手段を、
前記搬送ベルトを駆動させる回転軸に取り付けられた円盤に一定間隔で形成されたロータリースケールと、
該ロータリースケールを検出する毎に出力信号を生成する間接エンコーダと、
該間接エンコーダの出力をカウントする間接カウンタとにより構成したことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記第2の検出手段を、
前記搬送ベルトの周方向に一定間隔で形成されたベルトスケールと、
該ベルトスケールを検出する毎に出力信号を生成する直接エンコーダと、
該直接エンコーダの出力をカウントする直接カウンタとにより構成したことを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記制御手段は、
指定された前記搬送ベルトの停止位置に基づき、前記搬送ベルトの移動距離を前記間接エンコーダのカウント数として示した停止指定カウント数を演算する手段と、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数を、前記停止指定カウント数から減算する手段と、
減算後の停止指定カウント数が前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数以下となり、かつ前記間接カウンタが前記減算後の停止指定カウント数分のカウントを行ったときに前記搬送ベルトを停止させる手段とを有することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記制御手段は、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記間接カウンタのカウント数をリセットする手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、
請求項4または5記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記搬送ベルトを停止させる手段は、
前記間接カウンタがカウントアップする毎に、前記減算後の停止指定カウント数をデクリメントし、該減算後の停止指定カウント数がゼロとなったときに前記搬送ベルトを停止させることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置において、
前記制御手段は、
前記搬送ベルトの送り量制御開始後、前記直接カウンタのカウント数が変化するまで、前記間接カウンタのカウント分を前記停止位置指定カウント数から減算することを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項8記載の発明は、
画像記録手段により被搬送体に対して画像形成処理を行う画像形成装置において、
前記被搬送体を、前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置を用いて搬送することを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項9記載の発明に係る搬送ベルトの駆動制御方法は、
第1の分解能を有した第1の検出手段により搬送ベルトの送り量を間接的に検出し、
前記第1の分解能よりも低い第2の分解能をする第2の検出手段により前記搬送ベルトの送り量を直接的に検出し、
前記第2の分解能を有する第2の検出手段では前記搬送ベルトの停止位置の決定ができないと判断したとき、検出手段を前記第2の検出手段から第1の検出手段に切り換え、第2の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御することを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、
請求項9記載の搬送ベルトの駆動制御方法において、
前記第1の検出手段を、前記搬送ベルトを駆動させる回転軸に取り付けられた円盤に一定間隔で形成されたロータリースケールと、該ロータリースケールを検出する毎に出力信号を生成する間接エンコーダと、該間接エンコーダの出力をカウントする間接カウンタとにより構成し、
前記第2の検出手段を、前記搬送ベルトの周方向に一定間隔で形成されたベルトスケールと、該ベルトスケールを検出する毎に出力信号を生成する直接エンコーダと、該直接エンコーダの出力をカウントする直接カウンタとにより構成し、
かつ、前記検出手段を前記第1の検出手段から第2の検出手段に切り換える際、
指定された前記搬送ベルトの停止位置に基づき、前記搬送ベルトの移動距離を前記間接エンコーダのカウント数として示した停止指定カウント数を演算し、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数を、前記停止指定カウント数から減算し、
減算後の停止指定カウント数が前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数以下となった後、前記間接カウンタが前記減算後の停止指定カウント数分のカウントを行ったときに前記搬送ベルトを停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、搬送ベルト上に形成されたスケールを直接エンコーダによって検出し、該直接エンコーダにより検出できない精度以上のタイミングで搬送ベルトを停止させる場合には、直接エンコーダより高精度の間接エンコーダから得られる検出値に基づいて搬送ベルト制御を行うので、記録媒体を載置した搬送ベルトの送り量制御(及び停止制御)を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は、ラインプリンタによるインクジェット記録方式を採用したものであり、用紙(被搬送体)411を高精度に搬送可能な搬送ベルト22に対向した位置にラインヘッド431を有し、このヘッド431へは別位置に設けたインクタンクからインク供給管432を経てインクが供給される構成となっている。
【0024】
記録紙441は給紙コロ412でピックアップされ、用紙分離パッド413で分離される。分離された一枚の記録紙441が搬送ガイド422にならって搬送されて、搬送ベルト22と先端コロ423との間に挟まれる形で、搬送ローラ38の回転によって印字位置に送られる。
【0025】
搬送ベルト22は、搬送ローラ38と従動ローラ22との間に張架されている。また、先端コロ423は、ベルト搬送ローラ38に対向する位置に配設されている。この先端コロ423は、搬送ローラ38の方向に加圧を行いうる構成とされている。
【0026】
記録紙441は用紙積載トレイ414上から給紙コロ412によってピックアップされ、用紙分離パット413で一枚ずつ搬送ガイド422へと導かれる。搬送ベルト22上へはこの時帯電ローラ425によって電荷が注入されており、記録紙441は搬送ベルト22に静電的に吸着しようとする。そして、記録紙441は先端コロ423によって搬送ベルト22に押しつけられて、効率的な静電吸着力を受けて搬送ベルト22と記録紙441とが隙間なく重なった状態で、印字部であるヘッド431へと搬送される。
【0027】
上記の搬送ベルト22は、搬送ベルトの駆動制御装置(以下、単に駆動制御装置という)により駆動を制御される。以下、駆動制御装置について説明する。図4は、本発明の一実施形態としての駆動制御装置(以下、単に駆動制御装置という)の主に制御系を示すブロック構成図である。
【0028】
同図において、1は全体を制御するCPU、2はプログラム等を格納するROM、3は作業用のRAM、4はユーザが操作すると共に必要な情報を表示する操作表示部、5は位置制御カウンタ部で、後述する各エンコーダセンサの出力であるエンコーダセンサ信号を処理する。6はシステムバス、7は駆動制御部で、後述するモータ21を駆動するPWM波形や、ステッピングモータの励磁相等を発生する。8はドライバ部で、モータ駆動回路である。10はセンサ入力部で、各エンコーダセンサ11,25からの入力信号のチャタリングを取り除いたりする。11は直接エンコーダセンサで、直接エンコーダセンサ信号を出力する。25は間接エンコーダセンサで、間接エンコーダセンサ信号を出力する。尚、間接エンコーダセンサ12は直接エンコーダセンサ11より高分解能を持っている。
【0029】
図5は、本発明の一実施形態として駆動制御装置の主に駆動系を示すブロック構成図である。同図において、記録紙441を搬送する搬送ベルト22は、搬送ローラ38と従動ローラ31との間に掛け渡されている。搬送ローラ38はモータ21によりベルト32を介して回転される。直接エンコーダセンサ11は、搬送ベルト22の裏面に設けられたベルトスケール24を読む。
【0030】
直接エンコーダセンサ11は、間接エンコーダセンサ25より低分解能である。しかしながら、搬送ベルト22は記録紙441をダレクトに搬送しているので、この直接エンコーダセンサ11の出力(直接エンコーダセンサ信号)をカウントすることにより、前記の誤差なしに搬送ベルト22の搬送を制御することができる。ベルトスケール24は、ベルト裏に例えば白黒の等間隔のラインスケール(図7,図8参照)が形成されたものである。
【0031】
搬送ローラ38と同軸上に設けられたコードホイール33の外周には、ロータリースケール26が設けられている。間接エンコーダセンサ25はこのロータリースケール26を読む。ロータリースケール26は、例えば外周に透明・黒の等間隔のラインが形成されたものである。間接エンコーダセンサ25は高分解能であるが、記録紙441を直接搬送する搬送ベルト22ではなく、これを駆動する搬送ローラ38に同軸的に設けられたコードホイール33のロータリースケール26を読み取る構成である。このため、間接エンコーダセンサ25の出力(間接エンコーダセンサ信号)には、誤差が含まれる可能性がある。
【0032】
ここで、誤差とは搬送ローラの偏心、振れ、温度変化や駆動プーリ、コードホイールの偏心、振れ、搬送ベルトの厚み偏差等の部品精度、組み付け精度の影響等である。このような誤差が検出信号に混入すると、例え分解能が高くても、搬送ベルと22の高精度の駆動制御を行うことはできない。
【0033】
図6は前記位置制御カウンタ部5のブロック図である。図中、310は各パルス生成部で、入力されるつなぎ目センサ信号と直接エンコーダセンサ信号に基づいて、直接エンコーダセンサ信号カウンタ320に対するカウントパルス、間接エンコーダセンサ信号カウンタ330に対するリセットパルス、動作開始時レジスタ34に対するラッチパルス等を発生する。
【0034】
320は直接エンコーダセンサ信号カウンタで、直接エンコーダセンサ信号のエッジから各パルス生成部310で生成されるカウントパルスをカウントする。330は間接エンコーダセンサ信号カウンタで、間接エンコーダセンサ信号を4逓倍してカウントする。
【0035】
間接エンコーダセンサ信号は、90度位相の異なるA相・B相の信号であるので、それらのエッジを検出することにより4逓倍することができる。また、この間接エンコーダセンサ信号カウンタ330は、各パルス生成部310から直接エンコーダセンサ信号のタイミングで得られるリセットパルスによりリセットされながらカウントを行う。
【0036】
34は動作開始時レジスタで、動作開始からリセットパルス1発目までの間接エンコーダセンサ信号カウンタ330の値をこのレジスタに保存する。即ち、高分解能のカウンタで補完している。35は合計レジスタで、ソフト処理を早め、サンプリングと処理のタイムラグを少なくするためのレジスタである。36は加算器で、間接エンコーダセンサ信号カウンタ330のカウント値と動作開始時レジスタ34の値を加算して合計レジスタ36に出力する。
【0037】
続いて、上記構成とされた駆動制御装置における、搬送ベルト22の駆動制御の原理について、主に図7及び図8を用いて説明する。
【0038】
前記したように、本実施形態に係る駆動制御装置では、搬送ベルト22に設けられたベルトスケール24を直接エンコーダセンサ11にて検知することで、ロータリースケール26を検知する間接エンコーダセンサ25のみを用いた場合に比べて、よりダイレクトな制御を可能としている。しかし、直接エンコーダセンサ11は間接エンコーダセンサ25に比べて低分解能なので、停止位置を高精度に検出することが間接エンコーダセンサ25を用いて停止させる場合に比べて困難となる弱点がある。
【0039】
例えば、図7(A)に示されるように、直接エンコーダセンサ11は搬送ベルト22に形成されたベルトスケール24を検出する際に、ベルトスケール24を構成する矩形状の個々の反射部24aに光を照射する。この反射部24aは白や銀に着色されており、よって直接エンコーダセンサ11からの光は反射部24aで反射され、この反射された光は直接エンコーダセンサ11で検出される。
【0040】
具体的には、本実施形態では図7(B)に示すように、反射部24aのエッジ(本実施形態では、搬送ベルト22の進行方向に対する後端のエッジ)を検出した時点で発生するパルスを生成し、このパルス数をカウントすることで送り量制御を行う構成としている。このように直接エンコーダセンサ11から出力される直接エンコーダセンサ信号は、搬送ベルト22の移動(即ち、記録用紙441の移動)を直接検出しているため、誤差の影響が少ない信号である。よって、直接エンコーダセンサ11を用いて搬送ベルト22の駆動制御を行うことにより、誤差のない駆動制御を行うことが可能となる。
【0041】
しかしながら、直接エンコーダセンサ11のパルス検出間隔は、設計思想にもよるが、高分解能の間接エンコーダセンサ25を用いた場合と比較すると、数倍〜数十倍程度長くなっている。そのため、例えば図7(A)に矢印Aで示す地点で搬送ベルト22を停止させる場合と、同図中矢印B地点で停止させる場合とでは、停止位置に違いがあるにもかかわらず直接エンコーダセンサ11のみを用いて搬送ベルト22の駆動制御する限り、その違いを正確に反映させた駆動制御(停止位置制御)を行うことはできなかった。
【0042】
そこで、本実施形態では、直接エンコーダセンサ11と間接エンコーダセンサ25とを合わせて使用することにより、各エンコーダセンサ11,25の有している良好な特性を重畳させると共に、個々のエンコーダセンサ11,25の有している不利な特性については互いに補完する構成としている。
【0043】
次に、図8を用いて本実施形態における駆動制御の具体的な動作原理について説明する。ここでは、図8に矢印で示すスタート位置から図中右方向に搬送ベルト22を移動させ、図中矢印で示す停止位置で搬送ベルト22を停止させる場合について説明する。
【0044】
前記したように、この構成では、スタート位置及び停止位置が、反射部24aのエッジ(本実施形態では、搬送ベルト22の進行方向に対する前端のエッジ)と一致していない。このため、直接エンコーダセンサ11だけを用いた駆動制御では、搬送ベルト22を停止位置で正確に停止制御することはできない。そこで、直接エンコーダセンサ11と間接エンコーダセンサ25を組み合わせて停止制御を行う。
【0045】
搬送ベルト22の移動距離と間接エンコーダセンサ25が検出するパルス数は、ロータリースケール26の間隔により予め定められるものであ。例えば、本実施形態においては、搬送ベルト22が10.0mm移動するとき、間接エンコーダセンサ25は200パルスを出力する構成とされており、このデータは予めRAM3等の記憶手段に格納されている。
【0046】
いま、図8に示す例で、スタート位置から停止位置までの距離が12.5mmであったとすると、CPU1(図4参照)は、このスタート位置から停止位置までの距離を間接エンコーダセンサ25の出力するパルス数に換算する(以下、このように換算演算されたパルス数を停止指定カウント数Pという)。前記のように本実施形態では、搬送ベルト22が10.0mm移動するとき間接エンコーダセンサ25は200パルス出力するため、スタート位置から停止位置までの距離を間接エンコーダセンサ25の出力するパルス数に換算すると250パルスとなる。
【0047】
一方、直接エンコーダセンサ11は間接エンコーダセンサ25に比べて分解能が低いため、直接エンコーダセンサ11の1パルスの周期は、間接エンコーダセンサ25の1パルスの周期に比べて長くなる。本実施形態では、図8(B),(C)に示すように、直接エンコーダセンサ信号カウンタ320が1パルスをカウントする間に、間接エンコーダセンサ信号カウンタ330は64パルスをカウントする構成とされている。
【0048】
上記した条件において搬送ベルト22の送り制御が開始されると、開始直後においてはCPU1はセンサ入力部10を制御することにより、直接エンコーダセンサ11及び間接エンコーダセンサ25の双方から出力された信号に基づき駆動制御を行う。
【0049】
具体的には、CPU1は位置制御カウンタ部5を制御することにより、そのスタート位置からはじめの直接エンコーダパルス信号を検出するまで停止指定パルス数から間接エンコーダセンサ信号カウンタ320が出力するカウントを減算する。仮に、スタート位置からはじめの直接エンコーダパルス信号を検出するまで、間接エンコーダセンサ信号カウンタ320が出力するカウント数が28カウントであった場合、はじめの直接エンコーダパルス信号が検出された時点で、停止指定カウント数PはP=250−28=222となる。
【0050】
上記のようにはじめの直接エンコーダパルス信号を検出され、停止指定カウント数Pの減算処理が行われると、CPU1は直接エンコーダセンサ11から出力された信号に基づき搬送ベルト22の駆動制を行う。即ち、直接エンコーダセンサ11によりパルスをカウントするたびに、直接エンコーダセンサ11の1周期に対応する間接エンコーダセンサ25の出力パルス数である「64」を停止指定カウント数Pから減算してゆく。
【0051】
よって、搬送ベルト22が移動を開始した後、直接エンコーダセンサ11からN回目の直接エンコーダパルス信号が検出されると、停止指定カウント数PはP=222−64×(N−1)となる。また、この減算処理を行った後、CPU1は減算後の停止指定カウント数Pが「64」未満であるか否かを判断する。
【0052】
本実施形態の場合には、はじめの直接エンコーダパルス信号を検出された時点で停止指定カウント数PはP=222であるため、4回目の直接エンコーダパルス信号を検出された時点で停止指定カウント数Pは、P=222−64×(4−1)=30となり、「64」未満となる。
【0053】
このように、停止指定カウント数Pが直接エンコーダセンサ11の1周期に相当する間接エンコーダセンサセンサ25の出力数に満たなくなると、直接エンコーダセンサ11では停止位置が定められなくなる。このため、CPU1はセンサ入力部10を制御することにより直接エンコーダセンサ11を停止させ、使用するセンサを間接エンコーダセンサセンサ25のみとなるよう切り替え処理を行う。
【0054】
そしてこの切換処理後、位置制御カウンタ部5において間接エンコーダセンサセンサ25から出力されるパルスを間接エンコーダセンサ信号カウンタ330がカウントし、その間接エンコーダセンサ信号カウンタ値が「30」となった時点で、CPU1はドライバ部8を制御してモータ9を停止させる。これにより、搬送ベルト22は停止位置に高精度に停止する。
【0055】
このように、直接エンコーダセンサ11によるパルスカウント値と間接エンコーダセンサ25のカウント値とを組み合わせて制御することにより、搬送ベルト22の駆動制御を高精度で実施することが可能となる。尚、間接エンコーダパルスセンサ25で出力され間接エンコーダセンサ信号カウンタ330でカウントされたカウント値は、直接エンコーダセンサ11からパルス信号が出力されると同時にリセットされる構成となっている。
【0056】
図9は、上記した駆動制御原理に基づきCPU1が実施する搬送ベルト22の駆動制御処理を示すフローチャートである。同図に示す搬送ベルト22の駆動制御処理は、CPU1からCPU1に対して搬送ベルト22の駆動指示が出された場合に起動する処理である。
【0057】
図9に示す駆動制御処理が起動すると、先ずステップ10(図では、ステップをSと略称している)において、今回の駆動処理において搬送ベルト22を移動させようとする移動距離Lが入力される。続くステップ12では、移動距離Lを停止指定カウント数Pに変換する処理を行う。尚、搬送ベルト22の移動距離と、これに相関する間接エンコーダセンサ25のカウント値数は、予めRAM3に格納されている。
【0058】
ステップ12で停止指定カウント数Pが演算されると、ステップ14においてCPU1は駆動制御部7,ドライバ部8を介してモータ21を起動し、これにより搬送ベルト22は移動を開始し記録紙441も移動を開始する。また、これに伴いCPU1は、センサ入力部10を制御し、直接エンコーダセンサ11及び間接エンコーダセンサ25の双方からの信号に基づき、搬送ベルト22の駆動制御を行う。
【0059】
ステップ16では、直接エンコーダセンサ11から直接エンコーダセンサ信号が出力されたかどうかを判断する。このステップ16の処理は、直接エンコーダセンサ11から直接エンコーダセンサ信号が出力されるまで行われる。また、このステップ16の処理を実施している最中も、ステップ18において高分解能を有する間接エンコーダセンサ25からの間接エンコーダセンサ信号が出力されており、この間接エンコーダセンサ信号は位置制御カウンタ部5でカウントされる(以下、このカウント値を始動時補完カウント値aという)。
【0060】
一方、ステップ16において、直接エンコーダセンサ11から直接エンコーダセンサ信号が出力されたと判断されると、処理はステップ20に進み、ステップ12で演算された停止指定カウント数Pから、ステップ18でカウントされた始動時補完カウント値aを減算処理する。尚、このステップ20の処理は、上記した原理説明における、(P=250−28=222)の処理と等価である。
【0061】
続くステップ22では、CPU1はステップ16で最初の直接エンコーダセンサ信号が出力された後、更に直接エンコーダセンサ信号が出力されたかどうかを検出する。ステップ22で直接エンコーダセンサ信号が出力されたと判断されると、処理はステップ24に進み、ステップ20において始動時補完カウント値aが減算された停止指定カウント数Pから、直接エンコーダセンサ11の1周期に対応する間接エンコーダセンサ25の出力パルス数b(以下、1周期対応パルス数という)上記した原理説明では、b=64である)を減算する。
【0062】
続くステップ26では、1周期対応パルス数bが減算処理された停止指定カウント数Pが、1周期対応パルス数b未満となったかどうかが判断される。上記したステップ22〜26の処理は、停止指定カウント数Pが1周期対応パルス数b未満となるまで実施される。
【0063】
一方、ステップ26において停止指定カウント数Pが1周期対応パルス数b未満となったと判断されると、続いてステップ28において、間接エンコーダセンサ25から間接エンコーダセンサ信号が出力される毎に、ステップ24で得られた停止指定カウント数Pに対してデクリメント処理を行う。そして、このデクリメント処理を実施する毎に、CPU1は、ステップ30においてデクリメントされた停止指定カウント数Pがゼロになったかどうかを判断する。
【0064】
このステップ28,30の処理は、停止指定カウント数Pがゼロとなるまで続けられる。そして、ステップ30において停止指定カウント数Pがゼロになったと判断されると、CPU1は駆動制御部7,ドライバ部8を制御することにより、モータ21を停止させる。これにより搬送ベルトと22も停止される。これにより、搬送ベルト22をステップ10で指示された移動距離を移動した位置で高精度に停止され、よって搬送ベルト22に装着して搬送される記録紙441の位置決め精度を高めることができる。
【0065】
次に、本発明に係る第1の他の実施形態を図面と共に説明する。尚、本発明の他の実施形態の説明において、上記した実施形態の説明に用いた図3乃至図11と同一構成については、共通の符号を用いると共にその説明を省略するものとする。
【0066】
図10及び図11は、本発明の第1の他実施形態の動作開始時のタイミングチャートである。尚、本他実施形態に係る駆動系及び制御系の構成は、前記した実施形態の説明に用いた図3乃至図6と略同一であるため、その図示を省略する。
【0067】
本他実施形態では、動作開始時一定値カウント終了信号(間接エンコーダセンサ信号でカウント)がカウント終了したら、直接エンコーダセンサ信号のエッジを受け付ける構成としている。その後1発目の、直接エンコーダセンサ信号のエッジでリセットパルスと動作開始時レジスタラッチパルスを生成する。
【0068】
リセットパルスで間接エンコーダセンサ信号カウンタ330をリセットし、動作開始時レジスタラッチパルスで動作開始からリセットパルス1発目までの間接エンコーダセンサ信号カウンタの値をこのレジスタに保存する(要は、高分解能のカウンタで補完している。)。
【0069】
次の直接エンコーダセンサ信号のエッジからは、直接エンコーダセンサ信号カウンタカウントパルスを生成し、直接エンコーダセンサ信号カウンタ320をカウントする。
【0070】
一方、図11は動作停止時のタイミングチャートである。停止指示がでたら、直接エンコーダセンサ信号のエッジは無視して、リセットパルスも直接エンコーダセンサ信号カウンタカウントパルスも生成しない。よって、停止指示後は間接エンコーダセンサ信号でカウントし補完することになる。
【0071】
また、図4乃至図9を用いて説明した実施形態では、最後の直接エンコーダセンサ信号を検出した後、CPU1は使用するセンサを直接エンコーダセンサ11から間接エンコーダセンサ25に切り替えを行っているが、本他実施形態では、位置制御カウンタ部5が示したパルス数の残りが所定値(例えば100パルスや200パルス)になったら強制的に間接エンコーダによる制御に切り替える構成としている。
【0072】
ここで、搬送ベルト22を停止させる際には、停止の反動で搬送ベルト22が一瞬移動量方向とは逆方向に戻ることがあるが、間接エンコーダセンサ25は搬送ベルト22が戻った場合は、カウンタ値も戻り量に応じて減算することが可能である。しかし、直接エンコーダセンサ11は、搬送ベルト22が上記のように戻った場合には通常の仕様ではカウンタ値は戻らない(尚、カウンタ値を戻す処理は不可能ではないが、種々の不都合が発生する可能性が高い)。そのため、上記した図11に示された処理を行うことにより、搬送ベルと22の送り量制御(及び停止制御)をより正確に行うことが可能となる。
【0073】
次に、図13乃至図16を参照し、本発明に係る第2の他の実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態の説明に用いる図13乃至図16においても、上記した実施形態の説明に用いた図3乃至図11と同一構成については、共通の符号を用いると共にその説明を省略するものとする。
【0074】
本実施形態では図4及び図5に示した前記した実施形態に対し、図12及び図13に示すように、つなぎ目センサ13を加えた構成としている。また、図6と図14に示すように、本実施形態では位置制御カウンタ部5にスレッシュレジスタ41,比較器42,累積レジスタ43,回数カウンタ44,及び最小欠落幅レジスタ45等を新たに設けた構成としている。
【0075】
つなぎ目センサ13は、搬送ベルト22に設けられているつなぎ目を検出することによりつなぎ目センサ信号を出力し、ベルト裏のスケールのつなぎ目・ゴミ等を検出して直接エンコーダセンサ信号が欠落しそうな所を検出する。
【0076】
また、スレッシュレジスタ41は、直接エンコーダセンサ11の出力の欠落を検知するための一定値Aが設定されている。この一定値Aは間接エンコーダセンサ25の出力カウント数で設定される。直接エンコーダセンサ11の出力と間接エンコーダセンサ25の出力との比は略一定になっているため、この比の分より多少大きな値を一定値Aとして設定することにより、一定値Aを超えても、次の直接エンコーダセンサ出力のエッジがこない場合は、エッジ欠落があったと判断する。
【0077】
例えば、直接エンコーダセンサ11の出力と間接エンコーダセンサ25の出力との比が1:64だとすれば(直接エンコーダセンサ11の出力が1回カウントされると、エンコーダセンサ25の出力は64回カウントされる。)間接エンコーダセンサ25で90カウントしても直接エンコーダセンサ11がカウントされなければ、直接エンコーダセンサ11のエッジが欠落したと判断できる。一定値Aとはここでいう90カウントのことをいう。
【0078】
比較器42は、スレッシュレジスタ41に設定された一定値Aと間接エンコーダセンサ信号カウンタ330のカウント値とを比較し、カウント値が一定値Aを超えれば、直接エンコーダセンサ出力が欠落したことを示す欠落信号がアサートされる。
【0079】
累積レジスタ43は、エッジ欠落時に直接エンコーダセンサ信号のカウントに代えて間接エンコーダセンサ信号をカウントして補完した値をラッチパルスで累積する。加算器46は、間接エンコーダセンサ信号カウンタ33のカウント値と累積レジスタ43の値とを加算して累積レジスタ43に出力する。
【0080】
回数カウンタ44は、エッジ欠落時に直接エンコーダセンサ信号のカウントに代えて間接エンコーダセンサ信号をカウントして補完した回数をラッチパルスでラッチする。最小欠落幅レジスタ45は、一度欠落したらある程度の幅を持たせて、欠落範囲を持たせるレジスタである。直接エンコーダセンサ信号をカウントしたり、間接エンコーダセンサ2信号をカウントしたりを頻繁に繰り返すことを防止するためのものである。直接エンコーダセンサ信号と間接エンコーダセンサ信号は非同期のため頻繁に繰り返すと、微少な誤差が積み重なる。
【0081】
次に、動作について説明する。
【0082】
図15は直接エンコーダセンサ信号の欠落時の動作を示すタイミングチャートである。本実施形態は、低分解能の直接エンコーダセンサ11の出力である直接エンコーダセンサ信号のカウント値に基づいて位置制御を行うのが基本である。
【0083】
直接エンコーダセンサ11は搬送ベルト22の動きをダイレクトに検出しているため、移動量を正確に計測でき、前述した偏芯、振れ等の部品精度、組み付け精度誤差をキャンセルすることが可能である。しかし、直接エンコーダセンサ11を高分解能化するには種々の問題がある。
【0084】
このため、本実施形態では、搬送ベルト22の動きを間接的に検出する高分解能を有する間接エンコーダセンサ25を組み合わせて使用している。低分解能のパルス間(エッジ間)は、それ以上は低分解能の直接エンコーダセンサ11ではカウントできないので、その間を高分解能の間接エンコーダセンサ25でカウントして補完するようにしている。即ち、低分解能でのカウント値+高分解能でのカウント値で位置制御を行う。
【0085】
搬送ベルト22の停止時や動作開始時は低分解能のパルス間(エッジ間)で停止又は動作開始することが多い。動作開始時には、一発目の低分解能パルスのエッジまでの間を間接エンコーダセンサ25により高分解能でカウントし、そのカウント値を動作開始時レジスタ34にラッチしておく。
【0086】
停止時は停止直前から直接エンコーダセンサ11による低分解能でのカウントをやめると同時に、間接エンコーダセンサ信号カウンタ330のリセットを中止し、停止するまでの間を間接エンコーダセンサ25により高分解能でカウントして補完する。そして、このカウント値と動作開始時に動作開始時レジスタ34にラッチした値との和を加算器36と、合計レジスタ35とでとれば、高分解能の間接エンコーダセンサ25で補完したカウント数の総和を求めることができる。
【0087】
直接エンコーダセンサ信号と間接エンコーダセンサ信号との比は略一定になっているので、その一定値をある程度超えても次の直接エンコーダセンサ信号のエッジがこない場合は、エッジ欠落があったと判断できる。
【0088】
そこで、スレッシュレジスタ41に設定された一定値Aを超えても直接エンコーダセンサ信号のエッジが来ないと、欠落信号がアサートされる。欠落信号は一度アサートされると、最小欠落幅レジスタ45に設定された一定値Bまでは、直接エンコーダセンサ信号を受け付けない。
【0089】
即ち、もし一定値Bまでの間に直接エンコーダセンサ信号が復帰しても無視し、一定値Bをカウントしたら欠落信号をネゲートする。ネゲート後、直接エンコーダセンサ信号がきたら、図4の矢印の区間(欠落信号がONする前のリセットパルス〜復帰後リセットパルス1発目)の間接エンコーダセンサ信号のカウンタ値を累積レジスタ43に累積保存する。また、補完した回数は回数カウンタ44でカウントされる。
【0090】
一方、図16はつなぎ目センサ信号検出時のタイミングチャートである。
【0091】
図13に示す直接エンコーダセンサ11は搬送ベルト22の動きをダイレクトに検知している。しかしながら、搬送ベルト22に蒸着又は印刷等より形成したベルトスケール24には、ゴミやインク粒子が付着することが考えられ、この場合には直接エンコーダセンサ22の出力信号を正確に取り出せなくなることが考えられる。
【0092】
また、ベルトスケール24のスケールはベルトに対してシームレスに等間隔に貼り付けることができないで、必然的につなぎ目が生じてしまい、その間では直接エンコーダセンサ22の出力信号を正確に取り出すことができない。この場合は直接エンコーダセンサ11ではカウントできないので、間接エンコーダセンサ25でカウントして補完すれば、直接エンコーダセンサ11でカウントできないときを補うことができる。
【0093】
図16は、図13に示すつなぎ目センサ13と直接エンコーダセンサ11とが時間的に同時に同じベルトスケール24を読む場合のタイミングチャートである。
【0094】
つなぎ目センサ13の方が直接エンコーダセンサ11より時間的に前にある場合には、つなぎ目センサ信号を遅らせて利用する必要がある。基本的につなぎ目センサ信号がONしている区間は、直接エンコーダセンサ信号のエッジが欠落したり、不安定だったりするので、その間は直接エンコーダセンサ信号のカウントは行わないで、間接エンコーダセンサ信号のカウントで補完する。補完した値は累積レジスタ43に累積保存する。また、補完した回数は回数カウンタ44でカウントされ、カウント値が表示される。
【0095】
図12乃至図16を用いて上記した他実施形態に係る駆動制御装置によれば、直接エンコーダセンサの出力に欠落がないかの判定に使うスレッシュレジスタ41を設け、間接エンコーダセンサ信号のカウント値とスレッシュレジスタ41の一定値Aとを比較し、カウント値が一定値Aを超えたとき欠落信号をアサートし、直接エンコーダセンサ11の出力が回復したとき、欠落している間にカウントした間接エンコーダセンサ信号のカウント値を累積レジスタ43に格納するようにしたので、搬送ベルト22にゴミやインク粒子が付着して直接エンコーダセンサ11の出力が欠落したときでも、間接エンコーダセンサ25の出力のカウント値で補完することができる。
【0096】
このため、搬送ベルト22の送り(紙送り)をダイレクトに検出することができるが、低分解能であるという直接エンコーダセンサ11の欠点を、間接エンコーダセンサ25で補完することにより、補うことが可能となる。搬送ベルト22の送りは、直接エンコーダセンサ11を主体として送るので、しいては、偏芯、振れ等の部品精度、組み付け精度誤差等の影響を受けない、高精度停止位置制御が可能になる。
【0097】
また、最小欠落幅レジスタ45を備え、一旦直接エンコーダセンサ信号の欠落を検出したならば、このレジスタ値を超えるまでは間接エンコーダセンサ信号のカウントを続けるようにしたので、断続的に発生している汚れに対して、一つの大きなゴミやインク粒子等を欠落として扱うことができる。そのため、直接エンコーダセンサ信号をカウントしたり、間接エンコーダセンサ信号をカウントしたりすることを頻繁に繰り返すのを防止することが可能となる。(直接エンコーダセンサ信号と間接エンコーダセンサ信号とは非同期のため頻繁に繰り返すと、微少な誤差が積み重なる。)そのため、非同期信号による微少な誤差の累積を減らすことができる。しいては、偏芯、振れ等の部品精度、組み付け精度誤差等の影響を受けない、高精度停止位置制御が可能になる。
【0098】
一方、累積レジスタ43は欠落毎に更新され、累積値をカウントするのでソフトとしては、別々のレジスタをリードして足し込む必要がなくなる。また、欠落が起きた回数をカウントする回数カウンタ44を備えているので、そのカウント値を表示することにより、欠落の回数、即ち、搬送ベルト22の汚れ具合を知ることができる。
【0099】
また、直接エンコーダセンサ11の出力をカウントすると同時に間接エンコーダセンサ25の出力のカウントを直接エンコーダセンサ11の出力タイミングでリセットするので、間接エンコーダセンサ25の出力と直接エンコーダセンサ11の出力との同期が常にとれ、直接エンコーダセンサ11の出力がいつ欠落しても対応することができる。
【0100】
上記した各実施形態によれば、上述したように、駆動系の動きを直接的に検知する低分解能のエンコーダセンサと間接的に検知する高分解能のエンコーダセンサとを用いて位置制御を行うので、機械的な誤差等の影響のない高精度な停止及び動作開始位置制御を実現することができ、オフィス向けプリンタ、FAX、コピーとして使用に十分耐える高耐光性、高画質、高信頼性のインクジェットエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】従来の一例である画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の問題点を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態である搬送ベルトの駆動制御装置のブロック構成図である。
【図5】本発明の一実施形態である搬送ベルトの駆動制御装置の概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態としての画像形成装置の位置制御カウンタ部のブロック図である。
【図7】従来における搬送ベルトの駆動制御装置の制御処理を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態である搬送ベルトの駆動制御装置における制御動作の原理を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態である搬送ベルトの駆動制御装置における制御動作処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施形態としての画像形成装置の動作開始時のタイミングチャートである。
【図11】本発明の他の実施形態としての画像形成装置の停止時のタイミングチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態としての画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施形態としての画像形成装置における駆動系位置制御装置としての副走査記録紙搬送部の構成図である。
【図14】図13の位置制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】直接エンコーダセンサ出力の欠落時の動作を示すタイミングチャートである。
【図16】つなぎ目センサ信号検出時の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 CPU
5 位置制御カウンタ部
11 直接エンコーダセンサ
12,25 間接エンコーダセンサ
13 つなぎ目センサ
22 搬送ベルト
24 ベルトスケール
26 ロータリースケール
34 動作開始レジスタ
35 合計レジスタ
36 加算器
41 スレッシュレジスタ
42 比較器
43 累積レジスタ
44 回数カウンタ
45 最小欠落レジスタ
310 各パルス生成部
320 直接エンコーダセンサ信号カウンタ
330 間接エンコーダセンサ信号カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分解能を有し、搬送ベルトの送り量を間接的に検出する第1の検出手段と、該第1の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御する制御手段とを有する駆動制御装置であって、
前記第1の分解能よりも低い第2の分解能をすると共に、前記搬送ベルトの送り量を直接的に検出する第2の検出手段を設け、
前記制御手段は、前記第2の分解能を有する第2の検出手段では前記搬送ベルトの停止位置の決定ができないと判断したとき、検出手段を前記第2の検出手段から第1の検出手段に切り換え、第1の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御する構成としたことを特徴とする搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段を、
前記搬送ベルトを駆動させる回転軸に取り付けられた円盤に一定間隔で形成されたロータリースケールと、
該ロータリースケールを検出する毎に出力信号を生成する間接エンコーダと、
該間接エンコーダの出力をカウントする間接カウンタと、
により構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項3】
前記第2の検出手段を、
前記搬送ベルトの周方向に一定間隔で形成されたベルトスケールと、
該ベルトスケールを検出する毎に出力信号を生成する直接エンコーダと、
該直接エンコーダの出力をカウントする直接カウンタと、
により構成したことを特徴とする請求項1または2記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
指定された前記搬送ベルトの停止位置に基づき、前記搬送ベルトの移動距離を前記間接エンコーダのカウント数として示した停止指定カウント数を演算する手段と、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数を、前記停止指定カウント数から減算する手段と、
減算後の停止指定カウント数が前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数以下となり、かつ前記間接カウンタが前記減算後の停止指定カウント数分のカウントを行ったときに前記搬送ベルトを停止させる手段と
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記間接カウンタのカウント数をリセットする手段とを備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトを停止させる手段は、
前記間接カウンタがカウントアップする毎に、前記減算後の停止指定カウント数をデクリメントし、該減算後の停止指定カウント数がゼロとなったときに前記搬送ベルトを停止させることを特徴とする請求項4または5記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記搬送ベルトの送り量制御開始後、前記直接カウンタのカウント数が変化するまで、前記間接カウンタのカウント分を前記停止位置指定カウント数から減算することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置。
【請求項8】
画像記録手段により被搬送体に対して画像形成処理を行う画像形成装置において、
前記被搬送体を、前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載の搬送ベルトの駆動制御装置を用いて搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
第1の分解能を有した第1の検出手段により搬送ベルトの送り量を間接的に検出し、
前記第1の分解能よりも低い第2の分解能をする第2の検出手段により前記搬送ベルトの送り量を直接的に検出し、
前記第2の分解能を有する第2の検出手段では前記搬送ベルトの停止位置の決定ができないと判断したとき、検出手段を前記第2の検出手段から第1の検出手段に切り換え、第2の検出手段の出力に基づき前記搬送ベルトの駆動を制御することを特徴とする搬送ベルトの駆動制御方法。
【請求項10】
前記第1の検出手段を、前記搬送ベルトを駆動させる回転軸に取り付けられた円盤に一定間隔で形成されたロータリースケールと、該ロータリースケールを検出する毎に出力信号を生成する間接エンコーダと、該間接エンコーダの出力をカウントする間接カウンタとにより構成し、
前記第2の検出手段を、前記搬送ベルトの周方向に一定間隔で形成されたベルトスケールと、該ベルトスケールを検出する毎に出力信号を生成する直接エンコーダと、該直接エンコーダの出力をカウントする直接カウンタとにより構成し、
かつ、前記検出手段を前記第1の検出手段から第2の検出手段に切り換える際、
指定された前記搬送ベルトの停止位置に基づき、前記搬送ベルトの移動距離を前記間接エンコーダのカウント数として示した停止指定カウント数を演算し、
前記直接カウンタがカウントアップする毎に、前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数を、前記停止指定カウント数から減算し、
減算後の停止指定カウント数が前記直接カウンタの1カウント分に相等する前記間接カウンタのカウント数以下となった後、前記間接カウンタが前記減算後の停止指定カウント数分のカウントを行ったときに前記搬送ベルトを停止させることを特徴とする請求項9記載の搬送ベルトの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−159895(P2006−159895A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315060(P2005−315060)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】