説明

搬送ローラー、搬送ユニット、及び印刷装置

【課題】コストダウンや軽量化が可能となり、さらにはインク等の転写が防止された搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送ユニット、印刷装置を提供する。
【解決手段】プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体16を有してなる搬送ローラーである。ローラー本体16は、その両端部16eに対して両端部間の中央部16f(16h)が小径になるよう、両端部16eから中央部16f(16h)にかけて外径が連続的に変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラー、搬送ユニット、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として種々のプリンターが提供されている。このようなプリンターでは、用紙等の記録媒体を搬送ローラー(紙送りローラー)及び従動ローラーで印刷部に搬送し、ここで印刷した後、排紙ローラー(駆動ローラー)及びその従動ローラー(ギザローラー)で記録媒体を排出するように構成されている。
【0003】
このようなプリンターにおいて搬送ローラーは、従動ローラーとの間に用紙を挟持し、その状態で回転駆動することにより、用紙をキャリッジの移動方向と直交する副走査方向に移動させるようになっている。したがって、用紙を記録位置まで精度良く搬送し、さらに印刷速度に合わせて順次送り込むことから、高い搬送力が要求されている。
【0004】
そこで、搬送ローラーに高い摩擦力を保持させるため、特許文献1には金属製丸棒の周面に、目打ち加工によって多数の突起を形成する技術が開示されている。
ところが、この技術では、軸状(円柱状)の表面に周方向に沿って突起を形成するため、作業性が悪いといった課題がある。また、中実の材料を用いるため、コストが嵩むといった課題もある。
【0005】
このような背景のもとに特許文献2には、コストダウンを目的として、金属板を曲げ加工して円筒状(中空状)の軸(円筒軸)に成形し、この円筒軸を中実の金属製丸棒材に替えて用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3271048号公報
【特許文献2】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特にコストダウンや軽量化を図るべく、前記特許文献2に提案されているような円筒状の軸を搬送ローラーに適用しようとした場合、これに高い摩擦力を付与するのが困難になっている。
例えば、プレス加工によって表面を叩き、前記特許文献1のように突起を形成することが考えられるが、その場合には、中空であるため変形が生じ易いといった課題がある。
【0008】
また、一般に搬送ローラーは、従動ローラーとの間に用紙を挟持するべく、この従動ローラーによって比較的大きな荷重を受ける。そのため、用紙には従動ローラーによる押圧力がかかり、これによって用紙は搬送ローラー側に押し付けられる。
ところが、特に両面印刷が可能なプリンターでは、両面印刷を行うべく一方の面を印刷した後、他方の面を印刷する際、既に印刷されている一方の面が十分に乾いていないと、この一方の面が搬送ローラーに押し付けられることにより、この用紙のインク(またはトナー)が搬送ローラーに転写されてしまうおそれがある。
特に、印刷された面は搬送方向と直交する方向において、その中央部が外側に膨らんで湾曲することから、この膨らんだ中央部が搬送ローラーにより強く当接することで、この中央部において転写が起こり易くなってしまう。
そして、このようにインク等が搬送ローラーに転写されてしまうと、転写されたインク等が次の用紙の搬送時にこの用紙に再転写されてしまい、用紙が汚れて印刷不良を引き起こしてしまう。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、コストダウンや軽量化が可能となり、さらにはインク等の転写が防止された搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送ユニット、印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の搬送ローラーは、プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体を有し、
前記ローラー本体は、その両端部に対して該両端部間の中央部が小径になるよう、前記両端部から前記中央部にかけて外径が連続的に変化していることを特徴としている。
【0011】
この搬送ローラーによれば、円筒状にプレス加工されてなるローラー本体を用いることにより、中実の丸棒材を用いた場合に比べてコストダウン及び軽量化が可能になる。
さらに、ローラー本体の両端部に対して該両端部間の中央部が小径になるよう、少なくとも両端部から中央部にかけてローラー本体の外径を連続的に変化させているので、特に両面印刷可能な印刷装置(プリンター)に用いられた場合に、搬送ローラーにインク等が転写されることが防止される。すなわち、一方の面を印刷した後、他方の面を印刷する際、既に印刷されている一方の面が搬送ローラー側に押し付けられても、この搬送ローラーはその中央部が両端部に対して小径になっているので、この中央部において従動ローラーによる押圧力が相対的に小となる。したがって、この搬送ローラーは、従動ローラーの押圧力によるインク等の転写が防止されたものとなる。
【0012】
また、本発明の他の搬送ローラーは、プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体を有し、
前記ローラー本体は、その両端部から中央部にかけて、外径が漸次小径になるよう、連続的に変化していることを特徴としている。
【0013】
この搬送ローラーによれば、円筒状にプレス加工されてなるローラー本体を用いることにより、中実の丸棒材を用いた場合に比べてコストダウン及び軽量化が可能になる。
さらに、ローラー本体の両端部から中央部にかけて、外径が漸次小径になるよう、連続的に変化させているので、特に両面印刷可能な印刷装置(プリンター)に用いられた場合に、搬送ローラーにインク等が転写されることが防止される。すなわち、一方の面を印刷した後、他方の面を印刷する際、既に印刷されている一方の面が搬送ローラー側に押し付けられても、この搬送ローラーはその中央部が両端部に対して小径になっているので、この中央部において従動ローラーによる押圧力が相対的に小となる。したがって、この搬送ローラーは、従動ローラーの押圧力によるインク等の転写が、防止されたものとなる。
【0014】
また、前記搬送ローラーにおいては、前記ローラー本体の外径が最小の部位が、前記ローラー本体の軸方向における中心からずれていてもよい。
搬送ローラーを用いた一般的な搬送機構では、異なるサイズの用紙に対応させることなどにより、搬送ローラーの片側を基準にして用紙をセットする。したがって、従動ローラーの荷重の中心位置も、通常は搬送ローラーの中心位置に対応することなく、基準となる側にずれる。そこで、ローラー本体の外径が最小の部位を、従動ローラーの荷重の中心位置に対応させてずらしておくことにより、両面印刷装置において一方の面を印刷した後、他方の面を印刷する際、搬送ローラーにインク等が転写されにくくなる。すなわち、従動ローラーの荷重の中心位置であり、したがって従動ローラーによる押圧力が最も強くかかる位置において、搬送ローラーはその外径が最小になっているので、この部位において従動ローラーによる押圧力が十分に小さくなる。よって、この搬送ローラーは、従動ローラーの押圧力によるインク等の転写が、より良好に防止されたものとなる。
【0015】
また、前記搬送ローラーにおいて、前記高摩擦層は、前記ローラー本体の両端部を除く中央部に設けられているのが好ましい。
ローラー本体の表面に、無機粒子を含有してなる高摩擦層を設けているので、この高摩擦層によって良好な搬送力が発揮される。
また、ローラー本体の両端部は、通常は歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための部位となり、紙等の記録媒体に直接接触するのは、ローラー本体の中央部となる。したがって、記録媒体に直接接触する中央部のみに高摩擦層を設けることにより、高摩擦層の材料コストが最小限に抑えられる。
【0016】
本発明の搬送ユニットは、前記の搬送ローラーと、該搬送ローラーに従動する従動ローラーと、前記搬送ローラーを回転駆動する駆動装置と、を備えたことを特徴としている。
この搬送ユニットによれば、前述したようにコストダウン及び軽量化が可能であり、良好な搬送力を発揮し、さらには従動ローラーの押圧力に起因するインク等の転写が防止された搬送ローラーを備えているので、この搬送ユニット自体のコストダウン及び軽量化が可能になり、さらには、両面印刷の際、転写に起因して用紙を汚すこともない、優れたものとなる。
【0017】
また、前記搬送ユニットにおいては、前記従動ローラーの表面に低摩耗処理が施されているのが好ましい。
このようにすれば、搬送ローラーとの接触、特に高摩擦層との接触により、従動ローラーにダメージが加わることが抑制される。
【0018】
また、前記搬送ユニットにおいて、前記従動ローラーは、前記搬送ローラーの前記高摩擦層に当接する位置に配置されているのが好ましい。
このようにすれば、搬送ローラーと従動ローラーとの間で紙等の記録媒体を挟持する力が大きくなり、記録媒体の搬送性がより良好になる。
【0019】
また、前記搬送ユニットにおいて、前記ローラー本体は、その外径の最小の部位が、該ローラー本体の軸方向における中心からずれて配置されており、
前記従動ローラーは、その荷重の中心位置が、前記ローラー本体の外径の最小の部位に対応して配置されているのが好ましい。
このようにすれば、搬送ローラーは従動ローラーの荷重の中心位置において外径が最小になっており、したがって従動ローラーによる押圧力が十分に小さくなっているので、両面印刷装置において一方の面を印刷した後、他方の面を印刷する際、従動ローラーの押圧力によるインク等の転写が、より良好に防止されたものとなる。
【0020】
本発明の印刷装置は、前記搬送ローラーと、該搬送ローラーにより搬送された記録媒体に印刷処理を行う印刷部と、を有することを特徴としている。
この印刷装置によれば、前記搬送ローラーを備えているため、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに、両面印刷の際、転写に起因して用紙を汚すこともない優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
【図2】(A)は搬送ユニット部分の平面図、(B)は駆動系の側面図である。
【図3】搬送ローラー機構の概略構成図である。
【図4】(a)、(b)はローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図6】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図7】(a)(b)はローラー本体の正面図、(c)は繋ぎ目の側断面図である。
【図8】(a)〜(c)はローラー本体への高摩擦層の形成工程を示す図である。
【図9】高摩擦層を形成するための塗装ブースの概略構成図である。
【図10】ローラー本体の繋ぎ目とその近傍の要部拡大図である。
【図11】搬送ローラー(ローラー本体)の作用説明図である。
【図12】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は要部側断面図である。
【図13】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図14】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図15】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図16】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。
【図17】(a)、(c)は繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。
【図18】(a)はローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。
【図19】(a)はローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。
【図20】紙送りの際の搬送ローラーと用紙との関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
まず、図1、図2を参照して、本発明の搬送ローラーを備えた印刷装置について説明する。なお、図1は本発明に係る搬送ユニットを備えた両面印刷用の印刷装置(インクジェットプリンター)の要部を断面視した側面図、図2は同印刷装置の搬送経路の概要を示す側面図である。
【0023】
図1において符号110は、本発明の印刷装置の一実施形態となるインクジェットプリンターであり、反転用搬送路を備えた両面印刷が可能なインクジェットプリンターである。このインクジェットプリンター110は、駆動ローラー15及びこれに対向する従動ローラー17からなる搬送ローラー機構19と、この搬送ローラー機構19に用紙Pを供給するシート供給装置130と、搬送ローラー機構19により搬送される用紙Pの表面にインクを吐出して画像(文字を含む)を形成する印字ヘッド(印刷部)21と、印字済の用紙Pを排出する排紙ローラー機構27とを備えて構成されている。また、これらの装置等を取り付けるためのメインフレーム160と、第1のサブフレーム161と、第2のサブフレーム162と、図示しない一対のサイドフレーム等を備えている。
【0024】
搬送ローラー機構19の搬送ローラー15は、サイドフレーム(図示せず)に支持されており、モーター等の駆動装置(図示せず)によって回転駆動されるようになっている。従動ローラー17は、搬送ローラー15に対して従動回転可能に支持されている。
シート供給装置130は、給紙ローラー131と、この給紙ローラー131に向けて用紙Pを付勢するホッパ133と、給紙ローラー131との間で用紙Pを挟圧してこれを分離する分離パッド132とを備えている。用紙Pの供給時には、1回転する給紙ローラー131に向けて用紙Pがホッパより供給され、分離パッド132で分離されて、1枚の用紙Pのみが搬送ローラー機構19に向けて供給されるようになっている。供給された用紙Pは、第1サブフレーム161に取り付けられた下ガイド163と、メインフレーム160に取り付けられた上ガイド164とにより、搬送ローラー機構19に向けて案内されるようになっている。
【0025】
印字ヘッド21は、キャリッジ141に取り付けられている。キャリッジ141は、メインフレーム160の上端と、キャリッジガイド軸(図示せず)とにより、紙面と直交する方向に移動可能に取り付けられている。キャリッジ141にはインクタンク(図示せず)が搭載されている。
【0026】
印字ヘッド21の印字動作は、キャリッジ141が紙面と直交方向に移動しつつ、該印字ヘッド21からインクが吐出されることによって1行分の印字がなされる。そして、1行分の印字がなされる毎に、前記搬送ローラー機構19によって用紙Pが所定ピッチ(通常行間分)搬送され、さらにこれらの動作が繰り返されることにより、片面印刷が行なわれる。なお、符号144は印字時に用紙Pの下面を支持して用紙Pと印字ヘッド21との間隔を所定値に規定する規定部材である。
【0027】
排紙ローラー機構27は、排紙ローラー29と、これに向けて付勢されている排紙ギザローラー31とからなるもので、印字済の用紙Pを機外に排出するようになっている。排紙ギザローラー31は、第2サブフレーム162に取り付けられている。
【0028】
前記構成において、下ガイド163及び上ガイド164の対と、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15及び従動ローラー17の対と、印字ヘッド21及び規定部材144の対と、そして排紙ローラー機構27とは、印字ヘッド27上に用紙Pを前進方向(正送り方向)又は逆進方向(逆送り方向)に通過させるための共通搬送路(印刷搬送路)172を形成している。また、ホッパ133と、給紙ローラー131及び分離パッド132の対と、下ガイド163及び上ガイド164の対とは、ホッパ133上の用紙Pを給紙ローラー131及び分離パッド132間を経て、印字ヘッド21の手前で共通搬送路172へ合流させるための給紙用搬送路171を形成している。
【0029】
一方、この両面印刷用のインクジェットプリンター110には、前記給紙用搬送路171の一部を形成するシート供給装置130、正確には給紙トレイを兼ねる1ホッパ33を、印字ヘッド21の入口側に設けた搬送ローラー機構19に向けて下り傾斜させ、かつ後端が尻上がりにプリンター本体から突出するように配設してあり、その下方には、三角状の後方空間が形成されている。このシート供給装置130の下方、すなわち後方の三角状の後方空間には、閉ループ状の反転用搬送路181を備えた反転ユニット180が、その先端部を差し込んだ形で着脱可能に取り付けられている。
【0030】
この反転ユニット180は、図1に示したように離間して配置された反転用大ローラー182及び反転用小ローラー183が、反転ユニット180の左右フレーム(図示せず)に回転可能に支持されて構成されている。そして、用紙案内部材184は、反転用大ローラー182に対しては該反転用大ローラー182の軸をスナップフィット状態で軸支しており、また、反転用小ローラー183に対しては該反転用小ローラー183の軸に対して単に当接状態で軸支している。
【0031】
これら反転用大ローラー182、反転用小ローラー183及び用紙案内部材184の部分が、該反転ユニット180において、全体として先細状に形成された内側部材を構成している。なお、前記反転用大ローラー182と反転用小ローラー183及び用紙案内部材184は、軸方向に複数個並置して設けられている。そして、この反転ユニット180は、反転用大ローラー182及び反転用小ローラー183の両ローラー周面間を結ぶ直線、及びこれに続く反転用大ローラー182の周面を、ループ状の反転用搬送路181の一部としている。このような構成のもとに反転ユニット180は、その反転用小ローラー183側が先端側となるようにして前記三角状の後方空間内に差し込まれ、ここに着脱可能に添設されている。
【0032】
前記反転ユニット180には、その反転用小ローラー183が設けられている先端側に、用紙Pの流路を切り換えるための反転用フラップ190が、受入位置と排出位置とに切り換え可能に設けられている。この反転用フラップ190は、自重によって自由端が常時下位置つまり反転後の搬送路に進出した状態にあり、反転用搬送路181を一周した用紙Pが反転用フラップ190の下を通過するときに、用紙Pの送り力によって上側に押し上げられ、退避側に移行するように構成されている。なお、この反転用フラップ190に片面印刷された用紙Pを逆送りさせて引き渡す中継通路191も、反転用搬送路181の一部となっている。
【0033】
さらに、前記合流部173にはフラップ(第1のフラップ)200が配設されている。このフラップ200は、前記反転用搬送路181への入口通路、正確には中継通路191への入口通路を形成する開姿勢となるように自己復帰習性が付与され、かつ、給紙用搬送路171からの用紙Pに従動して回動し、用紙Pを補助レバー204に案内するように軸支されている。
そして、このフラップ200の共通搬送路172内の幅方向一側には、先端側からスリット状に切欠(図示せず)が設けられており、この切欠に、紙検出器202の主レバー203及び補助レバー204が通過され交差させられている。
【0034】
ここで、本発明に係る搬送ローラー15を備えてなる、前記の搬送ローラー機構19について詳しく説明する。
図3は、搬送ローラー15及び従動ローラー17からなる搬送ローラー機構19の概略構成を示す図である。
搬送ローラー15は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。なお、ローラー本体16は、後述するようにその軸方向の全長に亘って同一外径に形成されたものでなく、軸方向の両端部に対し、該両端部間の中央部が小径になるように形成されたものである。
【0035】
また、この搬送ローラー15は、その両端部が軸受け70に回転可能に保持されている。この搬送ローラー15の少なくとも一方の端部には、連結部品(図示せず)を連結するための係合部(図示せず)が形成されており、該係合部には、各種歯車(ギア)等の連結部品が空回りしないように係合した状態で取り付けられている。そして、これらの連結部品のうちの一つにはモーター等の駆動装置(図示せず)が接続されており、これによって搬送ローラー15は、駆動装置によって回転駆動させられるようになっている。
また、前記高摩擦層50は、この例ではローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。
【0036】
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向して該高摩擦層50に当接可能に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17は、搬送ローラー15とともに用紙Pを搬送する際、用紙Pを介して搬送ローラー15に接するようになっており、用紙Pの非搬送時には、搬送ローラー15から離間するようになっている。また、この従動ローラー17には付勢バネ(図示せず)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、用紙Pを介して搬送ローラー15に接した際、搬送ローラー15側に付勢されるようになっている。
【0037】
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力、本実施形態では各ローラー17aがそれぞれ500gf/mm程度の押圧力で接し、これによって搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するとともに、用紙Pに対する挟持力を発揮するようになっている。よって、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0038】
また、搬送ローラー機構19は、サイズの異なる用紙Pに対応するため、通常はその中央で搬送する用紙Pの位置決めを行うことなく、その一端側で位置決めを行う。したがって、この搬送ローラー機構19は、特に搬送領域に対応して配置される従動ローラー17(ローラー17a)については、図3に示したように搬送ローラー15の中央部に配置されることなく、その一端側に偏って配置される。よって、従動ローラー17の荷重(押圧力)の中心位置は、搬送ローラー15の軸方向における中央に対応することなく、この中央より一端側に偏った位置に対応している。なお、この搬送ローラー15においては、図3に示したように前記高摩擦層50も一端側に偏って形成配置されており、これによって高摩擦層50と従動ローラー17とは、互いに当接可能に配置されたものとなっている。
【0039】
また、前記ローラー本体16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端面が互いに近接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、前記一対の端面が僅かながら離間しており、これによって該端面間には繋ぎ目が形成されている。
【0040】
ここで、搬送ローラー15についての詳細な説明として、その製造方法について説明する。
搬送ローラー15を製造するには、まず、図4(a)に示すように矩形板状または帯状の大型金属板(第1金属板)65を用意する。この大型金属板65としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板65をプレス加工することにより、図4(b)に示すように前記ローラー本体16に対応する大きさの細長い矩形板状の金属板(第2金属板)60、すなわちローラー本体16の基材となる金属板60を形成する。
【0041】
次いで、金属板60を図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端面61a、61bを近接させる。
すなわち、まず、図5(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図5(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図5(b)、(c)、図6(a)〜(c)においても同様である。
【0042】
続いて、図5(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図5(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図5(c)に示すように、図5(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図5(c)に示す上型106と下型107とを用いて、図6(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面61a、61bを近接させる。
【0043】
ここで、図5(c)および図6(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図6(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0044】
すなわち、図5(c)に示す状態から、図6(a)に示すように右側の上型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図6(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図6(b)に示すように、芯型106を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の上型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0045】
その後、図6(c)に示すように、芯型105および一対の上型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。ただし、本発明では、このようにして形成する中空パイプとして、前述したようにその軸方向の全長に亘って同一外径に形成することなく、軸方向の両端部に対し、該両端部間の中央部が小径になるように形成する。
【0046】
このような形状(寸法)に中空パイプを形成するには、図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)の曲げ工程で用いる型101〜107として、形成する中空パイプの形状に対応した型を用いる。すなわち、型101〜104、106、107ではその内径(半径)が、また、芯型105ではその外径が、両端部に比べて中央部が小径に形成されたものを用いる。例えば、両端部に比べて中央部が、0.1mm〜0.2mm程度小径となるように形成されたものを用いる。このような型を用いて曲げ工程を行うことにより、得られた円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)は、その軸方向の全長に亘って同一の外径になることなくなく、軸方向の両端部に対し、該両端部間の中央部が0.1mm〜0.2mm程度小径に形成されたものとなる。
【0047】
このようにして形成された中空パイプは、左右両側の端面61a、61bが、僅かな隙間を介して十分に近接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端面61a、61bが互いに近接してなることでこれら両端面61a、61b間に繋ぎ目が形成され、したがってこの繋ぎ目は、両端面61a、61bが僅かながら離間していることによって隙間を有したものとなっている。
【0048】
なお、このようなプレス加工の後、必要に応じて従来公知のセンターレス研磨加工を行い、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高めるようにしてもよい。センターレス研磨加工によって前記中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨することにより、この中空パイプは、プレス加工直後の状態に比べてその真円度等がより良好になる。ただし、このセンターレス研磨加工においても、前記したようにその外径については、軸方向における両端部に比べ、その中央部が小径な状態に保持されるようにする。
【0049】
このようにプレス加工を行い、さらに必要に応じてセンターレス研磨加工を行うことにより、ローラー本体16は図7(a)、(b)に示すように両端部16e、16eに対して中央部16j(16k)が小径になり、さらに、前記の両端面61a、61b間に繋ぎ目80を有したものとなる。
ここで、形成するローラー本体16については、図7(a)に示すように両端部16eに対して中央部16jが小径になるよう、両端部16e、16eから中央部16jにかけて、外径が連続的に変化する外径変化部16gを有していてもよい。その場合には、中央部16jは両端部16e、16eに比べてその外径が小径になっているものの、中央部16j内ではほぼ均一な外径に形成されていてもよい。
【0050】
また、図7(b)に示すように、その両端部16e、16eから中央部16kにかけて、外径が漸次小径になるよう、両端部16e、16eから中央部16kに至るほぼ全域が、外径変化部16gとなっていてもよい。すなわち、図7(b)に示した例では、最小径となる中央部16kは軸方向においてほとんど長さ(幅)を有さない、線状(円周状)の領域となっていてもよい。
【0051】
なお、図7(a)に示した中央部16fや図7(b)に示した中央部16hとその近傍部には、後述するように高摩擦層50が形成されるようになり、したがって従動ローラー17(ローラー17a)が当接する領域となる。また、前記中央部16fや、前記中央部16hは、ローラー本体16においてその軸方向で外径が最大になる部位となり、したがって中央部16fの中心位置や中央部16hの位置は、本実施形態では前述した従動ローラー17の荷重の中心位置に対応する位置となる。
なお、図7(a)、(b)では、理解を容易にするためローラー本体16の外径をその両端部と中央部とで大きく変えているが、実際には外径差は前記したように0.1mm〜0.2mm程度であり、見掛け上はほとんど差がないものとなる。
【0052】
また、前記のプレス加工やセンターレス研磨加工では、金属板60の両端面61a、61b間の繋ぎ目80に隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られる中空パイプ(ローラー本体16)を所望の外径に形成し、かつ、その真円度を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは非常に困難であり、したがって、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
【0053】
この繋ぎ目80は、前記金属板60の外周面と内周面とが同じ寸法(幅)であることにより、図7(c)に示すように、一対の端面61a、61b間の距離が、ローラー本体16の外周面側で相対的に広く、内周面側で相対的に狭くなっている。すなわち、これら一対の端面61a、61b間の、ローラー本体16の外周面側での距離d1は、内周面側での距離d2に比べて大になっている。例えば、本実施形態では外周面側での距離d1は30μmとなり、内周面側での距離d2は10μmとなっている。
【0054】
このようにしてローラー本体16を形成したら、図3に示したようにこのローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。
具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0055】
また、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子を用いるものとする。このアルミナ粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
【0056】
また、このアルミナ粒子としては、本実施形態では粒径が15μm以上90μm以下の範囲とされ、かつ、中心径となる加重平均の粒径(平均粒径)が、45μmとなるように調整されたものが用いられている。すなわち、本発明では、アルミナ粒子(無機粒子)としてその平均粒径(中心径)が、前記の繋ぎ目80の外周面側での距離d1(30μm)より大となるものが用いられる。また、特にその粒径分布(粒度範囲)については、前記繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子を含んでいるのが好ましく、さらに、その粒径分布における最小粒径が、前記繋ぎ目80における前記一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるのが好ましい。
【0057】
このような樹脂粒子と無機粒子とを用意したら、まず、前記ローラー本体16に前記樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(図示せず)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で例えば−(マイナス)電位にしておく。
そして、前記樹脂粒子を、静電塗装装置(図示せず)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
【0058】
ここで、樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3に示した高摩擦層50の形成領域に対応させて、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、例えばその両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図8(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部(例えば図7(a)に示した中央部16j、あるいは図7(b)に示した中央部16kとその近傍部)のみに行う。すなわち、ローラー本体16の中央部にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。この樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。
【0059】
なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。この樹脂膜51の膜厚については、前記のアルミナ粒子の粉径を勘案して、例えば10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、前記樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
また、図8(a)及び後述する図8(b)、(c)では、ローラー本体16の外径をその両端部と中央部とで変えることなく、同一外径に記載しているが、実際には、前記したように両端部に比べて中央部が小径になっている。
【0060】
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を前記塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット(図示せず)によって図9に示す別の塗装ブース90に移す。この塗装ブース90には、その下部に一対の回転駆動部材91、91が設けられており、これら回転駆動部材91、91には、前記ローラー本体16を略水平に支持するためのチャック92が設けられている。そして、前記ローラー本体16の両端部をチャック92、92に保持させて固定し、さらに回転駆動部材91によってチャック92、92を回転させる。これにより、ローラー本体16をその軸廻りに、例えば100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。なお、ローラー本体16については、若干斜めに支持してもよいのはもちろんである。
【0061】
また、塗装ブース90には、その上部にコロナガン93が配置されており、このコロナガン93は、シャフト94上を図9中左右方向に移動するようになっている。また、塗装ブース90の底部には排気機構94が設けられており、これによって塗装ブース90内には下方に向かうゆっくりとした気流が形成されるようになっている。なお、この排気機構94の吸引風量は適宜に設定されるようになっている。
【0062】
このような構成のもとに、ローラー本体16をその軸廻りに回転させつつ、コロナガン93から前記のアルミナ粒子95を噴霧し吹き付けることにより、前記ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子95を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子を前記樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
【0063】
この静電塗装時には、チャック92及び回転駆動部材91の表面電位が、ローラー本体16の電位とほぼ等しくなり、しかも塗装ブース90の内面電位が、電気的に中立で略零電位となるように設定する。コロナガン93からのアルミナ粒子95が、ローラー本体16以外の部位に吸着されないようにするためである。この塗装ブース90の内表面電位を電気的に中立に保持するためには、塗装ブース90を、内表面電気抵抗が例えば1011Ω程度の鋼板を用いて製造するのが望ましい。
【0064】
そして、コロナガン93にかける電位を零Vとし、さらにこのコロナガン93に供給するエアーの圧力を0.2Mpa程度に低く設定して、このコロナガン93を図9中の左右方向に移動させつつ、上方より略零電位のアルミナ粒子95を吹き出させ、アルミナ粒子95を自重で鉛直方向に自然落下させる。すると、前記したようにローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子95が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子95は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
【0065】
ここで、本実施形態では塗装ブース90の内面電位が電気的に中立で略零電位となっており、しかも塗装ブース90内の気流が下向きにゆっくりとした流れに形成されているので、アルミナ粒子95はその自重によって鉛直方向下方に自然落下する。落下方向の下方には、水平支持されたローラー本体16がその軸廻りにゆっくり回転しているので、このローラー本体16の外周面には、アルミナ粒子95がほぼ均一に散布される。
【0066】
したがって、特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子95が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図8(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子95は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子95はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子95は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
【0067】
したがって、アルミナ粒子95は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。なお、アルミナ粒子95が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子95の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
なお、このアルミナ粒子95の塗布(散布)については、アルミナ粒子95が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、例えばスプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
【0068】
このようにしてアルミナ粒子95を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂層51を焼成し硬化させることにより、アルミナ粒子95をローラー本体16に固着する。これにより、図8(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、本発明に係る搬送ローラー15が得られる。
なお、前記実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよいのはもちろんである。
【0069】
このようにして高摩擦層50を形成すると、特に図7(a)〜(c)に示した繋ぎ目80には、金属板60の端面61a、61b間の隙間に起因する溝が形成されることなく、端面61a、61b間の隙間が主にアルミナ粒子95によって埋め込まれる。
すなわち、アルミナ粒子95としてその平均粒径が、繋ぎ目80の、外周面側での距離d1より大となるものを用いているので、アルミナ粒子95はその大半が繋ぎ目80内に入り込むことなく、図10に示すようにローラー本体16の外周面上に樹脂膜51を介して付着している。したがって、繋ぎ目80には金属板60の端面61a、61b間に隙間が形成されているにもかかわらず、アルミナ粒子95がこの隙間上を覆うことにより、この隙間に起因する溝が実質的に形成されなくなる。
【0070】
また、アルミナ粒子95として、前記繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子95aを含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95aが前記繋ぎ目80に形成された隙間に入り込んでここに留まることにより、繋ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。また、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラー15)に前記隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95aがこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラー15)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラー15を備えた搬送ローラー機構19にあっては、搬送ローラー15の変形に起因する搬送ムラが防止される。
【0071】
さらに、アルミナ粒子95として、その粒径分布における最小粒径が、前記繋ぎ目80における前記一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるものを用いているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、前記繋ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無い。したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性を向上することができる。
【0072】
このような高摩擦層50を形成してなる搬送ローラー15は、図7(a)、(b)に示したようにローラー本体16が、その両端部16eに対して該両端部16e、16e間の中央部16j(16k)が小径になるよう、少なくとも両端部16e、16eから中央部16j(16k)にかけて外径が連続的に変化する外径変化部16gを有しているので、一方の面を印刷した用紙Pを介して、搬送ローラー15にインク等が転写されるのが防止される。
【0073】
すなわち、この両面印刷用のインクジェットプリンター110では、用紙Pの一方の面を印刷した後、他方の面にも印刷する際、図11に示すように既に印刷されている一方の面P1が従動ローラー17によって搬送ローラー15側に押し付けられる。しかして、この搬送ローラー15は、用紙Pとの当接面となる中央部(中央部16jあるいは中央部16kとその近傍部)が、両端部16eに対して小径になっているので、この中央部16j(16k)では従動ローラー17による押圧力が相対的に小となる。したがって、この搬送ローラー15は、従動ローラー17の押圧力により用紙Pからインク等が転写されるのが抑えられ、防止されたものとなる。なお、図11では理解を容易にするため、用紙Pと搬送ローラー15との間に隙間をあけているが、実際には、この搬送ローラー15の中央部16J(あるいは16kとのその近傍部)と用紙Pの一方の面P1との間には隙間がほとんど形成されず、一方の面P1は搬送ローラー15に近接しあるいは軽く当接するようになる。
また、一般に両面印刷を行う場合には、用紙Pの縁部(搬送方向と直交する方向での両側の縁部)には印刷しないので、中央部に16j(16k)に比べて相対的に大径になっている端部16e側でも、用紙Pからの転写が起こらないようになっている。
【0074】
また、搬送ローラー15を用いた一般的な搬送ローラー機構では、異なるサイズの用紙Pに対応させることなどにより、搬送ローラー15の片側(一端側)を基準にして用紙Pをセットする。したがって、従動ローラー17の荷重の中心位置も、通常は搬送ローラー15の中心位置に対応させることなく、基準となる側にずれている。そこで、本実施形態では、ローラー本体16の外径が最小の部位(16j、16k)を、その軸方向における中心からずれて配し、従動ローラー17の荷重の中心位置に対応させている。
【0075】
すなわち、図3において従動ローラー17の中心位置(例えば、中央の二つのローラー本体17aの中間点)が荷重の中心位置であるとすると、この位置に対応した搬送ローラー15(ローラー本体16)の部位を、ローラー本体16の外径が最小の部位とする。すると、一方の面を印刷した用紙Pが従動ローラー17の荷重を受けた際、従動ローラー17の荷重の中心位置であり、したがって従動ローラー17による押圧力が最も強くかかる位置において、搬送ローラー15はその外径が最小になっているので、この部位において従動ローラー17による押圧力が十分に小さくなる。よって、この搬送ローラー15は、従動ローラー17の押圧力により用紙Pからインク等が転写されるのが、より良好に防止されたものとなる。
【0076】
また、本実施形態では、前述したように繋ぎ目80による溝がないことにより、この溝に起因する搬送ムラも防止されたものとなる。
さらに、一般にローラー本体16(搬送ローラー15)の両端部は、歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための部位となり、用紙P(記録媒体)に直接接触するのは、ローラー本体16の中央部となる。したがって、本実施形態では、前記高摩擦層50をローラー本体16の両端部を除く中央部に設けているので、用紙Pの搬送性能を低下させることなく、高摩擦層50の材料コストを最小限に抑えることができる。
【0077】
ここで、ローラー本体16(搬送ローラー15)の両端部(16a、16e)には、その一方あるいは両方に、前述したように各種ギアなどの連結部品に連結するための係合部が形成可能になっている。例えば、図12(a)、(b)に示すように、円筒状のパイプ(中空パイプ)からなるローラー本体16の相対向する位置、すなわちローラー本体16の直径を規定する二点の形成面に、それぞれ貫通孔71a、71aを形成し、これら一対の貫通孔71a、71aを含んでなる係合孔(係合部)71を形成することができる。この係合孔71によれば、歯車等の連結部品72を軸やピン等(図示せず)によって固定することができる。
【0078】
また、図13(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部にDカット状の係合部73を形成することもできる。この係合部73は、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)の端部に形成されたもので、図13(a)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれて開口73aを形成し、これによって図13(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0079】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体16)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0080】
また、図14(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体16の外端に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図14(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図14(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体16の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体16の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
【0081】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0082】
また、図15(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体16の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図15(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体16の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図15(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0083】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図13(a)、(b)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
【0084】
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、金属板60をプレス加工して得られたローラー本体16に対して、さらに切削加工等を施すことで行うことができる。例えば、図13(a)、(b)に示した係合部73については、その端部を切削加工して開口73aを形成することにより、見掛け上D状の係合部73を形成することができる。また、図12(a)、(b)に示した係合孔71についても、ローラー本体16に対して孔開け加工することで、一対の貫通孔71a、71aをより良好に対向させることができる。
【0085】
しかしながら、このようにローラー本体16に対してさらに加工を施すのでは、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、ローラー本体16にプレス加工する前に、別のプレス加工によって係合部となる展開係合部を金属板に形成しておき、この金属板をプレス加工してローラー本体16とする際に、係合部も同時に形成するのが好ましい。
【0086】
具体的には、図4(a)に示した大型の金属板(第1金属板)65を図4(b)に示したような細長い矩形板状の金属板(第2金属板)60にプレス加工する際、この大型金属板65から小型の金属板60への加工と同時に、得られる金属板60の端部に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。例えば、図16(a)に示すように金属板60の端部の所定位置に一対の貫通孔71a、71aを加工し、これらを展開係合部76aとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで前記一対の貫通孔71a、71aを対向させ、図12(a)、(b)に示した係合孔71を形成することができる。
【0087】
また、図16(b)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図14(a)、(b)に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板60をプレス加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折り曲げ加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分であるとも言える。
【0088】
そこで、図16(c)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図15(a)、(b)に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板60をプレス加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に図15(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、プレス加工によって形成したローラー本体16に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
【0089】
また、図7(a)、(b)に示したように本実施形態に係る搬送ローラー15(ローラー本体16)では、その繋ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板60の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、前記円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0090】
具体的には、図17(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16aに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。なお、図17(a)、及び後述する各図においては、ローラー本体16の外径をその両端部と中央部とで変えることなく、同一外径に記載しているが、実際には、前記したように両端部に比べて中央部が小径になっている。
【0091】
このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、図4(b)に示したような細長い矩形状の金属板60でなく、図17(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板60aを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図17(a)に示したローラー本体16が得られ、繋ぎ目81が中心軸16aに対して非平行となる。
【0092】
なお、図17(a)に示したローラー本体16では、その繋ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図17(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図17(b)に示した細長い平行四辺形の金属板60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
【0093】
また、図18(a)に示すように繋ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図18(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された金属板60bを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、プレス加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、繋ぎ目83の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、この繋ぎ目83の中心線も、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図17(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
【0094】
また、図19(a)に示すように繋ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図19(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された金属板60cを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。この金属板60cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、繋ぎ目84の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、前記繋ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
【0095】
また、繋ぎ目については、図17〜図19に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図18(a)に示した曲線からなる波線と、図19(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図17に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
【0096】
このように繋ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬送ローラー15は、従動ローラー17と協働して用紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0097】
すなわち、図20に示すように搬送ローラー15が紙送りの際に用紙Pと接する箇所は、基本的には平面視した状態でその外周面上の直線L(側面視では湾曲した線となる)、つまり中心軸16aと略平行な直線Lとなる。したがって、図7(a)、(b)に示したように搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目80がローラー本体16の中心軸16aと平行である場合、この搬送ローラー15はその繋ぎ目80全体が一時的(瞬間的)に用紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー15では前述したようにその繋ぎ目80に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目80に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に用紙Pに接し、したがって用紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目80に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー15の他の外周面に比べて凹みがあり、用紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、用紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
【0098】
しかして、図17(a)、(c)、図18(a)、図19(a)に示したように繋ぎ目81〜84を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に用紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー15の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
【0099】
次に、前記搬送ローラー機構19を備えてなるインクジェットプリンター(印刷装置)110の搬送動作について、図2を参照して説明する。
このインクジェットプリンター110では、用紙Pを、前記給紙用搬送路171から前記反転用搬送路181との合流部173に向かって送り、この合流部73に続く共通搬送路172の印字ヘッド21に向かって用紙Pを正送りで通過させることにより、片面(一方の面)に印刷を行う。そして、この片面印刷された用紙Pを逆送りし、中継通路91及び反転用フラップ90を経て反転用搬送路81に導く。この反転用搬送路81では反転させた用紙Pを、再度正送りで共通搬送路72へ送り出し、印字ヘッド21で裏面の印刷を行う。
【0100】
その際、このインクジェットプリンター110では、前述したように搬送ローラー15(ローラー本体16)の中央部16j(16k)を両端部16eに比べて小径になるようにしたので、一方の面を印刷した用紙Pを介して搬送ローラー15にインク等が転写されるのを防止することができる。
また、特に搬送ローラー15(ローラー本体16)の外径が最小の部位(16j、16k)を、その軸方向における中心からずれて配し、従動ローラー17の荷重の中心位置に対応させているので、この部位において従動ローラー17による押圧力が十分に小さくなり、したがって、従動ローラー17の押圧力により用紙Pから搬送ローラー15にインク等が転写されるのを、より良好に防止することができる。
【0101】
さらに、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。また、特に搬送ローラー15は、高摩擦層50の形成の際に所定粒径のアルミナ粒子を用いたことで繋ぎ目80による溝がないため、この溝に起因する搬送ムラも防止されている。よって、この搬送ローラー機構19は、より正確で安定した紙送り(搬送)を行うようになっている。
【0102】
以上説明したように、本実施形態の搬送ローラー15にあっては、金属板が円筒状にプレス加工されてなるローラー本体16を用いることにより、中実の丸棒材を用いた場合に比べてコストダウン及び軽量化を図ることができる。また、ローラー本体16の表面に、アルミナ粒子(無機粒子)を含有してなる高摩擦層50を設けているので、この高摩擦層50によって良好な搬送力を発揮することができる。
【0103】
さらに、中央部16j(16k)を両端部16eに比べて小径に形成したので、一方の面を印刷した用紙Pを介して搬送ローラー15にインク等が転写されるのを防止することができる。特に、外径が最小の部位(16j、16k)を、その軸方向における中心からずれて配し、従動ローラー17の荷重の中心位置に対応させているので、従動ローラー17の押圧力により用紙Pから搬送ローラー15にインク等が転写されるのを、より良好に防止することができる。
【0104】
また、ローラー本体16の両端部を除いた中央部、すなわち用紙P(記録媒体)に直接接触する中央部に高摩擦層50を選択的に設けているので、用紙Pの搬送性能を低下させることなく、高摩擦層50の材料コストを最小限に抑えることができる。ただし、本発明の搬送ローラーはこれに限定されることなく、ローラー本体16の全長に亘って高摩擦層50を形成することもできる。
【0105】
また、本実施形態の搬送ユニットにあっては、前述したようにコストダウン及び軽量化が可能であり、良好な搬送力を発揮し、さらには従動ローラー17の押圧力に起因するインク等の転写が防止された搬送ローラー15を備えているので、この搬送ユニット自体のコストダウン及び軽量化が可能になり、さらには、両面印刷の際、転写に起因して用紙を汚すこともない、優れたものとなる。
【0106】
また、本実施形態のインクジェットプリンター(印刷装置)1は、前記搬送ユニットを備えているため、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに両面印刷の際、転写に起因して用紙を汚すこともない優れたものとなる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、前記実施形態では本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー15に適用したが、排紙ローラー機構27における排紙ローラー29や排紙ギザローラー31に適用することもでき、さらには、搬送ローラー機構19における従動ローラー17(ローラー17a)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0107】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、15…搬送ローラー、16…ローラー本体、16a…中心軸、16e…端部(両端部)、16g…外径変化部、16j…中央部、16k…中央部、17…従動ローラー、17a…ローラー、19…搬送ローラー機構、21…印字ヘッド(印刷部)、50…高摩擦層、51…樹脂膜、60…金属板(第2の金属板)、61a、61b…端面(端部)、62a、62b…側部、65…大型の金属板(第1の金属板)、71…係合孔(係合部)、72…連結部品、73、74、75…係合部、76a、76b、76c…展開係合部、80、81、82、83、84…繋ぎ目、90…塗装ブース、95…アルミナ粒子(無機粒子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体を有し、
前記ローラー本体は、その両端部に対して該両端部間の中央部が小径になるよう、前記両端部から前記中央部にかけて外径が連続的に変化していることを特徴とする搬送ローラー。
【請求項2】
プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体を有し、
前記ローラー本体は、その両端部から中央部にかけて、外径が漸次小径になるよう、連続的に変化していることを特徴とする搬送ローラー。
【請求項3】
前記ローラー本体の外径が最小の部位が、前記ローラー本体の軸方向における中心からずれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送ローラー。
【請求項4】
前記ローラー本体の表面に設けられ、無機粒子を含有した高摩擦層をさらに有し、
前記高摩擦層は、前記ローラー本体の両端部を除く中央部に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送ローラー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ローラーと、
前記搬送ローラーに従動する従動ローラーと、
前記搬送ローラーを回転駆動する駆動装置と、を備えたことを特徴とする搬送ユニット。
【請求項6】
前記従動ローラーの表面に低摩耗処理が施されていることを特徴とする請求項5記載の搬送ユニット。
【請求項7】
前記従動ローラーは、前記搬送ローラーの前記高摩擦層に当接する位置に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の搬送ユニット。
【請求項8】
前記ローラー本体は、その外径の最小の部位が、該ローラー本体の軸方向における中心からずれて配置されており、
前記従動ローラーは、その荷重の中心位置が、前記ローラー本体の外径の最小の部位に対応して配置されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の搬送ユニット。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送ローラーと、
前記搬送ローラーにより搬送された記録媒体に印刷処理を行う印刷部と、を有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−184482(P2010−184482A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31837(P2009−31837)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】