説明

搬送・組付けシステム

【課題】 人共存型組付装置と作業者が共存する作業エリアを効率よく分配した搬送・組付けシステムを提供する。
【解決手段】 作業エリアには、人共存型組付装置Rと作業者SSとが協働して作業を行なうエリアA1と、人共存型組付装置が単独で移動するエリアA2と、人共存型組付装置Rが単独で移動している間に作業者が単独で作業するエリアA3及びA4の領域が存在する。またこの作業エリアには、車体Wが吊り下げられた状態で矢印方向(左方向)へ移動するメインラインML、人共存型組付装置Rが走行するサブラインSL、タンク載置台TB、タンク収納棚TT及び部品載置台BBが設けられ、前記メインラインMLはエリアA1と一部重複し、前記サブラインSLはメインラインMLに直交するとともに一部がメインラインMLと平行に設けられ、人共存型組付装置が単独で移動するエリアA2と重複している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業者と人共存型組付装置とが共存する搬送・組付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業者とロボットとが共存する搬送・組付けシステムとしては、特許文献1に開示される移動ロボットシステムが知られている。この先行技術には、ワークを受け取る設備1と、ワークを加工する設備2と、搬送コンベアからなる設備3との間にロボットを移動可能に配置し、設備1で受け取ったワークを設備2で加工し、加工後のワークを再びロボットによって設備3に受け渡すシステムが開示され、特に、前記設備1,3については作業者とロボットが共存するエリアとし、このエリアではロボットのモータ駆動回路にトルクリミッタ設け、ロボットのアームを駆動するモータの出力を80W以下とし、作業者の安全を図っている。
【0003】
また特許文献2には、車両組立ラインにおいて、車体を搬送しつつ、各種部品を取付けていく際に、部品が重量物である場合にはマニピュレータで当該重量物を支持し、作業者が重量物に間接的に加える力を力センサにより検出し、その情報をもとにマニピュレータを制御して人手にかかる負荷を軽減させる補助装置を用いて取付ける技術が知られている。
【特許文献1】特開2001−341086号公報
【特許文献2】特開2000−84881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるロボットは作業者と1つの作業を協働して行なうものではなく、作業者とロボットとは全く別の作業を行なっている。つまり、作業者とロボットが互いに相手の弱点(ロボットは細かな位置決めや部品の判別が苦手で、人間は重量物を持ち上げたり移動するのが苦手)をカバーし合って効率よく一連の作業を行なうというものではなく、したがって、1つの作業エリアをどのように配分すれば効率的かの開示や示唆がない。
【0005】
また特許文献2に開示されるロボットは、常に人手によって動かされ、人の手を離すとそこで作業は中断し、ロボットが単独で作業を行なうことがない。したがって、ロボットと作業者との間でエリアを分けて作業の効率化を図るという考えは出てこない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は人共存型組付装置、つまり一部の作業を作業者と協働して行い、他の作業は自動で行うロボットと作業者とが同一作業エリア内で効率よく作業を行なうことを目的として成したものである。
【0007】
このため、本発明に係る搬送・組付けシステムは、1つの作業エリアを、人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアと、人共存型組付装置が単独で移動するエリアと、人共存型組付装置が単独で移動している間に作業者が単独で作業するエリアとに分けた。
【0008】
一例を挙げると、前記人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアは車体に部品を組付けるエリアであり、前記人共存型組付装置が単独で移動するエリアは部品供給部から車体に部品を組付けるエリアに至るエリアであり、前記作業者が単独で作業するエリアは前記2つのエリアと関連性を有しないエリアである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つの作業領域内で必要なときだけロボットと作業者が協働で1つの作業を行い、それ以外のときはそれぞれ単独の作業を行なうので、作業効率が大幅に向上する。また、それぞれ単独の作業を行なうエリアを分けたため
互いに干渉することがなく安全も確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る搬送・組付けシステムを適用した作業エリアの平面図、図2は人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアの側面図である。
【0011】
図1に示すように、作業エリアには、人共存型組付装置Rと作業者SSとが協働して作業を行なうエリアA1と、人共存型組付装置が単独で移動するエリアA2と、人共存型組付装置Rが単独で移動している間に作業者が単独で作業するエリアA3及びA4の領域が存在する。
【0012】
また作業エリアには、車体Wが吊り下げられた状態で矢印方向(左方向)へ移動するメインラインML、人共存型組付装置Rが走行するサブラインSL、タンク載置台TB、タンク収納棚TT及び部品載置台BBが設けられ、前記メインラインMLはエリアA1と一部重複し、前記サブラインSLはメインラインMLに直交するとともに一部がメインラインMLと平行に設けられ、人共存型組付装置が単独で移動するエリアA2と重複している。
【0013】
前記エリアA3では人共存型組付装置Rが単独で移動している間に作業者SSがタンクTをタンク収納棚TTからタンク載置台TBに移す。また前記エリアA4では同じ作業者SSがタンクTをタンク収納棚TTからタンク載置台TBに載置した後、人共存型組付装置Rが単独で移動している間に、部品を取り出して車体Wに取付ける。
【0014】
また、タンク載置台TBからタンクTを取り上げた人共存型組付装置RがサブラインSLを走行し、図2に示すように、車体Wの下方、即ち人共存型組付装置Rと作業者SSとが協働して作業を行なうエリアA1まで移動してきたら、作業者SSは他の作業を中断してエリアA1において人共存型組付装置Rと協働してタンクTを車体Wに取付ける。
【0015】
具体的には、人共存型組付装置Rのアームは作業者が小さな力で移動できる構造になっているので、作業者SSがタンクTを保持しているアームを移動して車体Wの取付け位置に一致せしめ、この後、自動で人共存型組付装置RがタンクTを車体Wに取付ける。つまり、この実施例の場合はタンクTの取付け作業を人とロボットが協働して行い、タンクTをタンク収納棚TTからタンク載置台TBに移す作業は作業者が行い、タンクTを車体下方まで移送する作業はロボットが行なうようにしている。尚、タンクTを車体Wに取付ける作業は手動でおこなってもよい。
【0016】
そして、人共存型組付装置Rとの協働作業(アームの位置決め)が終了した作業者はエリアA3まで戻り、人共存型組付装置RがエリアA2を走行して戻ってくる間に新たなタンクTをタンク載置台TBに移し、前記同様、エリアA4に移動して部品を取り出し、その部品を車体に取付け、その作業が終了したら、エリアA1において、再び人共存型組付装置Rと協働してタンクTを車体Wに取付ける。
【0017】
尚、実施例では作業者が1人の場合を説明したが、人共存型組付装置Rの作業時間及び走行時間が短い場合には、作業者を2人としてタンクTの取り出しと部品の取付けを別々に行なうようにしてもよい。
【0018】
図3は人共存型組付装置の別実施例を示す側面図であり、この実施例にあっては、人共存型組付装置RはクリップCを有し、作業者はこのクリップCを車体Wの一部に連結し、車体Wの走行と同期して人共存型組付装置Rを移動せしめ、この間に作業者はタンクの取付け位置に人共存型組付装置Rのアームを移動せしめる。このようにすることで、車体Wを移動しつつ取付け作業を行えるので、作業のトータル時間が短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る搬送・組付けシステムを適用した作業エリアの平面図
【図2】人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアの側面図
【図3】人共存型組付装置の別実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0020】
A1…人共存型組付装置と作業者が協働して作業を行なうエリア
A2…人共存型組付装置が単独で移動するエリア
A3,A4…人共存型組付装置が単独で移動している間に作業者が単独で作業するエリア
R…人共存型組付装置
SS…作業者
W…車体
T…タンク
ML…メインライン
SL…サブライン
TB…タンク載置台
TT…タンク収納棚
BB…部品載置台、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアを、人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアと、人共存型組付装置が単独で移動するエリアと、人共存型組付装置が単独で移動している間に作業者が単独で作業するエリアとに分けたことを特徴とする搬送・組付けシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送・組付けシステムにおいて、前記人共存型組付装置と作業者とが協働して作業を行なうエリアは車体に部品を組付けるエリアであり、前記人共存型組付装置が単独で移動するエリアは部品供給部から
車体に部品を組付けるエリアに至るエリアであり、前記作業者が単独で作業するエリアは前記2つのエリアと関連性を有しないエリアであることを特徴とする搬送・組付けシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−44601(P2006−44601A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231956(P2004−231956)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】