説明

搬送用ハンガーおよびその搬送方法

【課題】搬送用ハンガーによって搬送される被処理物間の隙間を最大限小さくすることで、被処理物の生産性を高める。
【解決手段】被処理物保持部材90には、被処理物保持部材90の幅長さL0を搬送方向に延長するストッパー91が設けられる。ストッパー91を設けたことで、被処理物保持部材90の幅長さがL0’だけ延長され、隣接して搬送される被処理物W間の接触が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面処理装置などで被処理物の搬送に用いられる搬送用ハンガーの構造に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
まず、表面処理装置の構造について、図3、図4を用いて以下に説明する。図3は、表面処理装置100を上方からみた平面図である。図4は、図3に示す表面処理装置100をα方向から見た側面図である。
【0003】
図3および図4に示す表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式めっき装置であり、プリント基板などの被処理物Wを保持する搬送用ハンガー15、当該搬送用ハンガー15を摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12、当該搬送用ハンガー15を前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール11、13を備えており、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための各種前処理槽1、電気めっきを行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、被処理物Wの取り外しを行うためのアンロード部5、搬送用ハンガー15に付着しためっき皮膜等を剥離(ハンガー戻し工程)するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15の水洗を行う水洗槽7、被処理物Wの取り付けを行うロード部8が設けられている。
【0004】
図3に示す昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15に被処理物W(プリント基板など)の取り付け、取り外しを行ったり、搬送用ハンガー15を各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬する際に昇降するガイドレールである。固定ガイドレール11、13は、それぞれめっき槽2、剥離槽6等に降下した搬送用ハンガー15を搬送するために固定されたガイドレールである。図4に示す昇降ガイドレール10、12が降下した状態において、固定ガイドレール11、13と一体となって、ガイドレール10〜13が1つの環状ガイドレールを構成する。
【0005】
図3に示す表面処理装置100によって搬送される従来の搬送用ハンガー15の構造を、図5および図6を用いて以下に説明する(特許文献1を参照)。図5は、図4に示す搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図であり、図6は、搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【0006】
図5に示すように搬送用ハンガー15は、被処理物Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11に対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。
【0007】
図5に示すように、被処理物保持部材90は、連結部材44に連設されかつ搬送方向に略水平に伸びる水平杆部46と、この水平杆部46の所定箇所に垂下した状態で連設される複数の垂杆部49と、この垂杆部49の下端にクランプ48を配してなるものである。
【0008】
ここで、図5に示す被処理物保持部材90の幅長さL0は、被処理物Wの幅長さW0および挟みしろW1に対応して設定する。例えば、図5に示すように、被処理物W(幅長さW0)の両端に挟みしろW1を設ける場合、被処理物保持部材90の幅長さL0は、L0=W0−2×W1とする。
【0009】
また、図6に示すように、摺動部材35の上部には、一方向にだけ回転することが可能なワンウェイクラッチ方式のギヤ40が軸受36を介して取り付けられている。ワンウェイクラッチ方式のギア40は、固定ガイドレール搬送手段19(図3参照)を構成するチェーンベルト39に噛み合うとともに、固定ガイドレール11上を前後移動する位置決め搬送手段18の爪30(図3参照)が当接する爪当接部32を有する。
【0010】
上記のような構成により、搬送用ハンガー15は、図4に示す昇降ガイドレール10が降下して固定ガイドレール11に移し換えされる際、固定ガイドレール11に沿って独立に前後移動する位置決め搬送手段18(図3)によって所定間隔(図4の間隔L2)を空けた位置に前送りされ(つまり、隣接する搬送用ハンガー15の間隔が図4に示すL1からL2になる)、その後、その間隔L2を維持しつつチェーンベルト39(図3を参照)によってめっき槽2内を搬送されることになる。なお、剥離槽6側の固定ガイドレール13においても、上記と同様の動作により搬送用ハンガー15が搬送される。
【0011】
【特許文献1】特開2002−363796号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のような従来のプッシャー式の搬送機構においては、搬送時において以下のような問題点があった。
【0013】
被処理物の生産性を高めるためには、特に、めっき槽2内における被処理物Wの間隔L2(図4)をできるだけ狭くする必要があるが、搬送用ハンガー15間の隙間L2を狭く設定すると、搬送時の移動誤差やゆれ等により、隣接する搬送用ハンガー15に保持された被処理物W(図5)同士が衝突してしまうおそれがあった。このため、搬送用ハンガー15間の隙間を十分狭く設定することができず、当該装置全体が大きくなりがちであった。
【0014】
この発明は、上記各問題を解決すべく、搬送方向の長さを延長するストッパーを搬送用ハンガー15に設けて、搬送用ハンガー15間の隙間を十分狭く設定することができることを特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)この発明の搬送用ハンガーは、
被処理物を保持する被処理物保持部材、ガイドレールに対して摺動接触する摺動部材、前記被処理物保持部材および前記摺動部材を連結する連結部材、を備え、ガイドレールに沿って被処理物を順次搬送するための搬送用ハンガーであって、
当該搬送用ハンガーの搬送方向の長さを延長するためのストッパーを、被処理物保持部材、摺動部材、連結部材の少なくとも一つの部材に、設けたことを特徴とする。
【0016】
これにより、搬送用ハンガー間の隙間を限りなく小さく設定することが可能となり、めっき槽内に浸漬できる搬送用ハンガーの数を最大限に多くでき、しかも、被処理物W同士の接触が避けられる。また、特に電気めっきにおいては、めっき膜厚のばらつきをなくすことができ、装置全体の設置面積を小さくすることができる。
【0017】
(2)この発明の搬送用ハンガーは、
前記ストッパーを搬送用ハンガーの被処理物保持部材に設けたことを特徴とする。
【0018】
これにより、前送りしたときに、時に搬送用ハンガーによって搬送される被処理物間の隙間を限りなく小さくかつより正確に設定することが可能となり、めっき槽内に浸漬できる搬送用ハンガーの数を最大限に多くでき、しかも、被処理物W同士の接触がより確実に避けられる。また、特に電気めっきにおいては、めっき膜厚のばらつきをなくすことができ、被処理物の生産性を高めることができ、装置全体の設置面積を小さくすることができる。
【0019】
(3)この発明の搬送用ハンガーの搬送方法は、
被処理物を保持する被処理物保持部材、固定ガイドレールに対して摺動接触する摺動部材、前記被処理物保持部材および前記摺動部材を連結する連結部材、を備え、被処理物を保持した状態で処理槽に下降する複数の搬送用ハンガー、処理槽に下降した前記複数の搬送用ハンガーを前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール搬送手段、固定ガイドレールに沿って設けられ、処理槽に下降した搬送用ハンガーを、前記固定ガイドレール搬送手段によって搬送されている前の搬送用ハンガーに対して所定間隔を空けた位置まで前送りする位置決め搬送手段、を備えた表面処理装置における搬送用ハンガーの位置決め搬送方法であって、
搬送方向の長さを延長するストッパーを設けた前記搬送用ハンガーを、被処理物を保持した状態で処理槽に下降させ、ストッパーが当接するまで、処理槽に下降した搬送用ハンガーを前の搬送用ハンガーに対して前送りする、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、搬送用ハンガーを前送りした際に被処理物同士の接触が避けられ、表面処理装置において搬送される被処理物間の隙間を最大限小さく設定することが可能となり、搬送駆動用に使用されるチェーンやベルト等の伸びにより、搬送用ハンガーの移動誤差が大きくなった場合でも被処理物間の隙間を確保することが可能となり、被処理物の生産性を高めることができ、装置全体の設置面積を小さくすることができると共に、位置決め搬送制御を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
1.表面処理装置および搬送用ハンガーの構造
この発明の搬送用ハンガーを搬送する表面処理装置の構造は、前述の図3、図4に示すものと同じである。
【0022】
図3および図4に示すように、表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式めっき装置であり、プリント基板などの被処理物を保持する搬送用ハンガー15a、当該搬送用ハンガー15aを摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12、当該搬送用ハンガー15aを前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール11、13を備えており、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための前処理槽1、電気めっき工程を行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、被処理物の取り外しを行うためのアンロード部5、搬送用ハンガー15aに付着しためっき皮膜等を剥離(ハンガー戻し工程)するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15aの水洗を行う水洗槽7、被処理物の取り付けを行うロード部8が設けられている。
【0023】
図3又は図4に示すように、昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15aを間歇的に搬送し、当該搬送用ハンガー15aに被処理物W(プリント基板など)の取り付け(ロード)、取り外し(アンロード)を行ったり、被処理物Wを各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬等する際に昇降するものである。
【0024】
固定ガイドレール11、13は、それぞれめっき槽2、剥離槽6等の処理槽に降下した搬送用ハンガーを順次搬送するものである。
【0025】
図1などを用いて、この発明の搬送用ハンガー15aの構造について説明する。なお、図1に示す搬送用ハンガー15aの構造は、被処理物保持部材90の水平杆部46にストッパー91が設けられている以外は、図5に示す従来の搬送用ハンガー15と同じ構造となっており、搬送用ハンガー15aの一部中央断面図は図6に示すものと同じである。
【0026】
図1に示す搬送用ハンガー15aは、被処理物Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11に対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。摺動部材35および連結部材44の材質としては、銅、真ちゅうが用いられる。
【0027】
図6に示すように、摺動部材35は、断面で4角形の一角が切り欠かれた形状を有する。摺動部材35の上面には軸受36が固着されており、軸受36の搬送方向と反対側の面には、搬送手段17、22のプッシャー16、21(図4)の当接するプッシャー当接部37が備えられている。軸受36に固着されている軸38には、図6に示すように固定ガイドレール搬送手段19、24のチェーンベルト39と噛み合うワンウエイクラッチ方式のギヤ40が枢支されている。ギヤ40は図5中の矢印B方向(搬送方向)へは回転できるが、反対方向へは回転できないものである。チェーンベルト39は、図6に示すようにチェーン支持レール41によって支持される。
【0028】
図1に示すように、被処理物保持部材90は、連結部材44に連設されかつ搬送方向に略水平に伸びる水平杆部46と、この水平杆部46の所定箇所に垂下した状態で連設される複数の垂杆部49と、この垂杆部49の下端にクランプ48を配してなるものである。
【0029】
さらに、図1に示すように被処理物保持部材90には、搬送方向の幅長さL0を有する水平杆部46の前端に、ストッパー91が設けられている。図2Aは、図1に示す搬送用ハンガー15aをβ方向から見た矢視図である。図2Bは、ストッパー91の構造を示す図である。
【0030】
図2Aに示すように、被処理物保持部材90にストッパー91を設けたことで、被処理物保持部材90の幅長さがL0’だけ延長される。つまり、ストッパー91の端部91b(図1を参照)が前の搬送用ハンガー15aに接触した場合であっても、挟みしろW1がこの延長幅L0’より小さいため最低限の隙間が確保され、被処理物W同士の接触が避けられる。
【0031】
図2Bに示すようにストッパー91は、ステンレス板を折り曲げて端部91bを設け、ネジ留め用の長孔62を空けて成形される。ストッパー91は、作業者によって、図2Aに示すワッシャ61およびネジ60で、延長幅がL0’となるように調整して固定される。
【0032】
図1に示す被処理物保持部材90の幅長さL0は、被処理物Wの幅長さW0と挟みしろW1に基づいて算出する。例えば、図1に示すように、被処理物W(幅長さW0)の両端に挟みしろW1を設ける場合、被処理物保持部材90の幅長さL0は、L0=W0−2×W1で算出する。また、ストッパー91による延長幅L0’は、L0’=T+2W1−t’で算出する。ここで、Tは前送り時における被処理物W間の距離(例えば、図4に示すL1、L2)である。
【0033】
被処理物Wの幅長さW0に対応するように当該被処理物保持部材90の幅長さL0を確保する方法は、各W0に対応する長さを有する一本の水平杆部46を予め準備して使用したり、前記した如く左右で分離した水平杆部46で長さが可変な構造としたり、水平杆部46に取り付ける複数の垂杆部49の間隔を調整可能な構造としたり、これらを組み合わせた構造とすればよい。
【0034】
各種処理槽で各処理液に浸漬される部分、すなわちクランプ48及び垂杆部49は、角部を極力少なくし、ブラスト処理を施した後に接点部を除いて厚さ200〜300μmの樹脂コーティングを施してある。
【0035】
これは、角部を少なくすることで前記樹脂のコーティング厚さを均一にすることができ、ブラスト処理によりコーティング樹脂との密着性をより向上させることができ、樹脂厚さを200〜300μmとしたこととあいまって、めっき皮膜ができにくく、剥離に長期間耐えるものであり、当該クランプ48の交換の手間を少なくし、効率よく搬送用ハンガー15aを使用できるものである。
【0036】
また、図6に示すように、摺動部材35の上部にはチェーンベルト39(図3に示す固定ガイドレール搬送手段19を構成)に噛み合うワンウェイクラッチ方式のギア40を有する軸受36が固着されている。このため、固定ガイドレール11,13上でチェーンベルト39に噛み合うギヤ40は、前送り時などにおいて図1に示すB方向へのみ回転することができる。
【0037】
図6に示すプッシャー当接面37は、搬送用ハンガー15aの搬送手段である間欠搬送手段17、22のプッシャー16、21(図4)が当接する部分である。図6の爪当接部32は、搬送用ハンガー15aの搬送手段である位置決め搬送手段18の搬送爪27(図3)が当接する部分である。これら搬送用ハンガー15aの各搬送手段について、以下に説明する。
【0038】
2.搬送用ハンガー15aの各搬送手段
図1に示す搬送用ハンガー15aは、表面処理装置100において、以下の間欠搬送手段17、22、位置決め搬送手段18、23、固定ガイドレール搬送手段19、24、および送り出し搬送手段20、25、によって搬送される(図3を参照)。
【0039】
まず、図4に示す昇降ガイドレール10、12の上部に設けられた間欠搬送手段17、22は、昇降ガイドレール10、12上に配設され、図7に示すようにプッシャー16a〜d、21a〜21dとで構成されており、上記プッシャー16a〜d、21a〜21dが搬送用ハンガー15aのプッシャー当接部37(図1参照)に当接して、昇降ガイドレール10の(c)〜(f)、昇降ガイドレール12の(h)〜(k)の位置(図3参照)にある搬送用ハンガー15aを、昇降ガイドレール10、12上を所定ピッチ毎に前送りする。図7は、昇降ガイドレール10、12の上部に設けられる間欠搬送手段17、22の構造を示す平面図である。
【0040】
図4に示す位置決め搬送手段18は、固定ガイドレール11に沿って設けられ、めっき槽2の上方の(x)位置から浸漬部2aへ下降した搬送用ハンガー15a(図4)を、固定ガイドレール11に移し換えて(b)の位置まで前送りすると共に、めっき槽2内での被処理物Wとその前(図5の左側)の(b)位置の被処理物Wとの間隔をL1からL2(例えば、L2=5mm)に調整する。このとき、図1に示すストッパー91の端部91bから前の搬送用ハンガーとの間隔t’は、被処理物の間隔L2以下(例えば、5mm以下)となっている。
【0041】
図8に、位置決め搬送手段18の構造および動作を示す。図8A〜Cに示す位置決め搬送手段18は、固定ガイドレール11に沿って別途設けられたレールに沿ってX、Y方向に前後移動が可能であり、図8Aに示す状態でばねによってZ方向に付勢される搬送爪31を有する。これにより、搬送用ハンガー15aを搬送する際には、まずX方向に移動する際にはばねが縮んで図6に示す爪当接部32上を通過した後(図8BからCの状態となった後)、逆方向(図8CのY方向)に移動して搬送爪31が搬送用ハンガー15aの爪当接部32を引掛けて搬送用ハンガー15aを図3に示すC方向に搬送する。このとき、位置決め搬送手段18の移動速度は、固定ガイドレール搬送手段19で搬送される前の搬送用ハンガー15aに追いつくように、固定ガイドレール搬送手段19の移動速度(つまり、チェーンベルト39の移動速度)よりも速いことが必要である。なお、剥離槽6側の位置決め搬送手段23も、図8に示す上記めっき槽2側の位置決め搬送手段13と同様の構造および動作を行う。
【0042】
めっき槽2内で被処理物の間隔を狭くして搬送するように設定すると、従来は、この搬送用ハンガーの前送りの際に、前搬送用ハンガーの進行速度より前送りされる後搬送用ハンガーの進行速度の方が速いため、慣性、移動距離の遊び量、ベルトの伸び等により、前方被処理物に前送りされた後方被処理物が衝突することがあった。しかし、この前送りの際に、本発明の構成により、前の搬送用ハンガーの被処理物保持部材90の水平杆部46後端に、前記ストッパー91が接当することで、被処理物の間隔を狭く設定しても、被処理物同士の衝突を確実に防止することができるものである。また、めっき槽内において、搬送される被処理物の間隔を一定にすることができるため、均一なめっき膜厚を確保することができる。
【0043】
固定ガイドレール搬送手段19、24は、位置決め搬送手段18、23で前送りされた搬送用ハンガー15aを、所定の間隔(図4のL2)を維持しつつ(図3の矢印Cの方向)へ搬送する。
【0044】
図4に示す固定ガイドレール搬送手段19は、図6に示すように固定ガイドレール11、13の内側に沿って配設されるチェーンベルト39と、これを周回駆動するプーリー(図示せず)とで構成される。図3に示すように、めっき槽2に設けられる固定ガイドレール側搬送手段19の始端は被処理物浸漬部2aの搬送用ハンガー15aが浸漬される位置(図3の(x)位置)よりも左側に位置している。一方、固定ガイドレール側搬送手段19の終端は、搬送用ハンガー15aが引上げられる位置(図3の(h)位置)よりも左側に延びている。
【0045】
送り出し搬送手段20、25は、固定ガイドレール搬送手段19、24でそれぞれ図3に示す(g)、(o)位置まで搬送された搬送用ハンガー15aを、それぞれ昇降ガイドレール12、10の(h)、(f)位置に送り出して移し換える。なお、送り出し搬送手段20、25の構造および動作は、図8に示す位置決め搬送手段18、23と同じである。
【0046】
3.その他の実施形態
上記実施形態においては、図1に示すように搬送用ハンガー15aの被処理物保持部材90の水平杆部46前端にストッパー91を設けた例で説明したが、被処理物保持部材90の幅長さを搬送方向に延長するように、垂杆部49(例えば、図1に示すクランプ48付近)にストッパー91を設けるようにしても良い。
【0047】
なお、上記実施形態においては、図1に示すように搬送用ハンガー15aの搬送方向前方向にストッパー91を設けた例で説明したが、搬送方向の両側または後端にストッパー91を設けるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、上面視上略L字状のストッパーで説明したが、ストッパーの形状は特に限定するものではない。
【0049】
上記実施形態においては、被処理物保持部材90の水平杆部46を左右対称長さとし、当該水平杆部の前端にストッパーを配した例で説明したが、一方の水平杆部の長さを長くするようにして、当該ストッパーに代えてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、ストッパー91を搬送用ハンガー15aの被処理物保持部材90に配した例で説明したが、摺動部材35、連結部材44の搬送方向に設けるようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、ストッパー91の延長幅を作業者がねじ留め作業を行うことにより調節するようにした例で説明したが、電磁的または機械的に連動して伸長するような構造を採用し、被処理物保持部材90の幅長さL0に応じて自動的に移動するような構成としてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、処理液に対する耐性を考慮してストッパー91の材質にステンレスを用いた例で説明したが、銅、真ちゅうなどその他の金属を用いても良い。
【0053】
上記実施形態においては、図8に示す位置決め搬送手段18によってストッパー91が前の搬送用ハンガー15aとの間に所定の隙間を空けた位置で停止するように前送りを行った例で説明したが、隙間を空けることなくストッパー91が前の搬送用ハンガー15aに当接する位置まで前送りを行うにしてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、搬送用ハンガー15aに設けたワンウェイクラッチ方式のギア40をチェーンベルト39にかませて、搬送用ハンガー15aを搬送するようにしたが、当該搬送用ハンガー15aに爪部を設け、この爪部がタイミングベルトにかむようにして搬送するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の搬送用ハンガー15aの構造を示す図である。
【図2】図1に示す搬送用ハンガー15aをβ方向から見た矢視図である。
【図3】表面処理装置100を上方からみた平面図である。
【図4】図3に示す表面処理装置100をα方向から見た側面図である。
【図5】図4に示す搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図である
【図6】搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【図7】昇降ガイドレール10の上部に設けられる平面間欠搬送手段17の構造を示す平面図である。
【図8】位置決め搬送手段18の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・前処理槽
2・・・・めっき槽
3・・・・回収槽
4、7・・・・水洗槽
5・・・・アンロード部
6・・・・剥離槽
8・・・・ロード部
10、12・・・・昇降ガイドレール
11、13・・・・固定ガイドレール
15、15a・・・・搬送用ハンガー
17、22・・・・間欠搬送手段
18、23・・・・位置決め搬送手段
19、24・・・・固定ガイドレール搬送手段
20、25・・・・送り出し搬送手段
35・・・・摺動部材
44・・・・連結部材
46・・・・水平杆部
48・・・・クランプ
49・・・・垂杆部
90・・・・被処理物保持部材
91・・・・ストッパー
100・・・・表面処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を保持する被処理物保持部材、
ガイドレールに対して摺動接触する摺動部材、
前記被処理物保持部材および前記摺動部材を連結する連結部材、
を備え、ガイドレールに沿って被処理物を順次搬送するための搬送用ハンガーであって、
当該搬送用ハンガーの搬送方向の長さを延長するためのストッパーを、被処理物保持部材、摺動部材、連結部材の少なくとも一つの部材に、設けたことを特徴とする搬送用ハンガー。
【請求項2】
前記ストッパーを前記被処理物保持部材に、当該搬送用ハンガーの搬送方向の幅長さを延長するように設けたことを特徴とする請求項1記載の搬送用ハンガー。
【請求項3】
被処理物を保持する被処理物保持部材、固定ガイドレールに対して摺動接触する摺動部材、前記被処理物保持部材および前記摺動部材を連結する連結部材、を備え、被処理物を保持した状態で処理槽に下降する複数の搬送用ハンガー、
処理槽に下降した前記複数の搬送用ハンガーを前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール搬送手段、
固定ガイドレールに沿って設けられ、処理槽に下降した搬送用ハンガーを、前記固定ガイドレール搬送手段によって搬送されている前の搬送用ハンガーに対して所定間隔を空けた位置まで前送りする位置決め搬送手段、
を備えた表面処理装置における搬送用ハンガーの位置決め搬送方法であって、
搬送方向の長さを延長するストッパーを設けた前記搬送用ハンガーを、被処理物を保持した状態で処理槽に下降させ、
ストッパーが当接するまで、処理槽に下降した搬送用ハンガーを前の搬送用ハンガーに対して前送りする、
ことを特徴とする搬送用ハンガーの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−107061(P2007−107061A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300248(P2005−300248)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(591005394)株式会社太洋工作所 (7)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】