説明

搬送用歯付ベルト

【課題】任意の歯の位置の背面側でアタッチメントの取り付けが簡単にできるとともに、アタッチメントの取付位置を変更しても物品の搬送に支障を生じるおそれのない搬送用歯付ベルトを提供する。
【解決手段】長手方向に沿って心線3を埋設したベルト本体2の一方の表面に所定のピッチで歯4を形成し且つ他方の表面にアタッチメント11を取り付ける搬送用歯付ベルト1において、ベルト本体2の各歯4の一部を横断方向に歯4の高さ分だけ切り欠いた切欠部7を設け、切欠部7の中心に有底穴8を設け、切欠部7は心線3の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に沿って心線を埋設したベルト本体の一方の表面に所定のピッチで歯を形成し且つ他方の表面にアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトとして、次のような搬送用歯付ベルトがある。すなわち、長手方向に沿って心線を埋設したベルト本体の一方の表面に所定のピッチで歯を形成し且つ他方の表面(背面)にアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトであって、ベルト本体の少なくとも歯の一つには、その歯の頂面からベルト本体を貫通してベルト本体の他方の表面(背面)まで延び且つその歯の頂面に広くされた領域を形成した少なくとも一つの開口が設けられており、この開口内にはアタッチメントを取り付ける働きをする保持要素が配置されており、この保持要素はウィング形のヘッドと細長本体とを有し、ウィング形のヘッドは歯に設けられた開口の広くされた領域に係合するとともにその表面は歯の頂面と同一面をなし、細長本体はその先端部がベルト本体の他方の表面(背面)から短い距離だけ突出している、搬送用歯付ベルトがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−163423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特開2001−163423号公報に開示された搬送用歯付ベルトにおいては、アタッチメントの取付位置を変更する場合、アタッチメントを取り外した元の取付位置には、保持要素を構成する細長本体はその先端部がベルト本体の他方の表面(背面)から短い距離だけ突出している。しかし、搬送用歯付ベルトはベルト本体の他方の表面(背面)に物品を載せて搬送するので、細長本体の先端部がベルト本体の他方の表面(背面)から短い距離だけ突出していると、細長本体の先端部の突出により物品の搬送に支障を生じる場合がある、という問題がある。また、ウィング形のヘッドはその表面が歯の頂面と同一面をなしているので、若干のベルト本体の歯の頂面の摩耗で、ウィング形のヘッドはその表面が露出し、搬送用歯付ベルトと噛み合う歯付プーリあるいは搬送用歯付ベルトを支持するガイドに接触し、これら歯付プーリあるいはガイドを摩耗させる、という問題もある。
【0004】
そこで、本発明は前記問題点を解決し、任意の歯の位置の背面側でアタッチメントの取り付けが簡単にできるとともに、アタッチメントの取付位置を変更しても物品の搬送に支障を生じるおそれのない搬送用歯付ベルトを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、前記問題点を解決するために、長手方向に沿って心線を埋設したベルト本体の一方の表面に所定のピッチで歯を形成し且つ他方の表面にアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトにおいて、前記ベルト本体の前記各歯の一部を横断方向に歯の高さ分だけ切り欠いた切欠部を設け、該切欠部の中心に有底穴を設けたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記問題点を解決するために、請求項1記載の搬送用歯付ベルトにおいて、前記切欠部は前記心線の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、ベルト本体の各歯の一部を横断方向に歯の高さ分だけ切り欠いた切欠部を設け、切欠部の中心に有底穴を設けたので、搬送用歯付ベルトのユーザが有底穴の底部にキリ等の簡単な工具で穴をあけ、ベルト本体の平坦面(背面)まで貫通する貫通穴を形成することが簡単にできる。そして、この形成された貫通穴に取付ねじを挿入し、取付ねじのねじ部をナットまたはアタッチメントにねじ込み、ベルト本体の平坦面(背面)にアタッチメントを取り付ける。そのため、アタッチメントの取付を現場で簡単に行うことができる。また、取付ねじを挿入する貫通穴は有底穴を下穴として形成されるため、アタッチメントの取付精度がよい。このように、任意の有底穴を取付ねじが挿入される貫通穴とすることにより、任意の歯の位置の背面側でアタッチメントを取り付けることができる。また、切欠部内に取付ねじとともに使用される座金と取付ねじの頭部が収容され、取付ねじの頭部は歯の頂面から突出しない。そのため、搬送用歯付ベルトと噛み合う図示しない歯付プーリの歯底と取付ねじの頭部が干渉するおそれはなく、標準の歯付プーリを使用することができる。また、ベルト本体の歯の頂面と取付ねじの頭部との間に隙間があるため、搬送用歯付ベルトの歪みや多少の摩耗があっても、歯付プーリ又はガイド等に接触して歯付プーリ又はガイドを摩耗させることはない。また、有底穴は底部があるため、アタッチメントを取り付ける以外のベルト本体の背面はフラットになっており、搬送される物品は貫通穴の場合のように貫通穴内に落ち込むことはない。また、アタッチメントを取付ねじにて取り付けるため、アタッチメントの材質が限定されない。また、取付ねじは市販の標準のねじが使用できる。
【0008】
また、アタッチメントの取付位置を変更する場合、アタッチメントを取り外しても、上記従来例のようにベルト本体の他方の表面(背面)に保持要素が突出することがなく、ベルト本体の他方の表面(背面)は平坦面であるから、ベルト本体の他方の表面(背面)に物品を載せて搬送する場合に、物品の搬送に支障を生じるおそれがない。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の搬送用歯付ベルトにおいて、切欠部は心線の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形であるので、取付ねじとともに使用する略長方形座金が略長方形の切欠部内に収容される。したがって、取付ねじでアタッチメントを取り付ける際、略長方形座金で心線を挟み込むことにより、広い範囲で均等に力がかかり、アタッチメントの取付強度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の搬送用歯付ベルトは、長手方向に沿って心線を埋設したベルト本体の一方の表面に所定のピッチで歯を形成し且つ他方の表面にアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトにおいて、前記ベルト本体の各歯の一部を横断方向に歯の高さ分だけ切り欠いた切欠部を設け、切欠部の中心に有底穴を設け、切欠部は心線の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形である。その実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例を図1〜6に基づいて説明する。図1〜図3を参照して、本発明の実施例の搬送用歯付ベルトについて以下に説明する。図1は本発明の実施例の搬送用歯付ベルトの平面図である。図2は図1のX−X線断面図である。図3は図1のY−Y線断面図である。
【0012】
図1,2,3に示すように、本発明の実施例のアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルト1(以下、単に搬送用歯付ベルト1という。)のベルト本体2は、内部に、例えばアラミド、スチール製等の心線3が長手方向に沿って埋設されている。そして、ベルト本体2の一方の表面には所定のピッチで横断面が台形状の歯4を形成され、且つ他方の表面には後述するアタッチメント11を取り付ける平坦面(背面)5が形成されている。また、所定のピッチで形成された各歯4の間の歯底6の表面には、横断面が半円形ないしU字形の溝6aが形成され、この溝6aによりベルト本体2の屈曲性を向上させている。
【0013】
さらに、搬送用歯付ベルト1は、図1,2,3に示すように、ベルト本体2の各歯4の一部を横断方向に歯4の高さ分だけ切り欠いた切欠部7を設け、切欠部7の中心に有底穴8を設け、切欠部7は心線3の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形となっている。なお、本実施例においては、この切欠部7及び有底穴8を一つの歯4に2箇所設けているが、一つの歯4に設ける切欠部7及び有底穴8の数は2個に限定されるものではない。
【0014】
そして、切欠部7は、後述するように、搬送用歯付ベルト1にアタッチメント11を取り付ける際に用いる締結ボルト(取付ねじ)12の頭部12a及び略長方形座金13を収容する空間を提供するものであり、この切欠部7の深さ、すなわち歯4の高さは、締結ボルト12の頭部12aの高さと略長方形座金13の厚みの和より大きくなっている。
【0015】
また、有底穴8は、締結ボルト12を挿入するための貫通穴を形成するための下穴の役割をするもので、ベルト本体2の平坦面(背面)5と有底穴8の底部との間の厚みを薄く形成している。これにより、後述するように、締結ボルト12を挿入するための貫通穴の形成を容易にしている。
【0016】
次に、図4〜図6を参照して、上記のように構成される搬送用歯付ベルト1にアタッチメント11を取り付ける場合を以下に説明する。図4は本発明の実施例の搬送用歯付ベルトにアタッチメントを取り付けた状態を示す平面図である。図5は図4のX−X線断面図である。図6は図4のY−Y線断面図である。
【0017】
搬送用歯付ベルト1にアタッチメント11を取り付けるには、まず、アタッチメント11を取り付けようとする位置の歯4の有底穴8の底部をキリ等の簡単な工具で穴あけし、ベルト本体2の平坦面(背面)5まで貫通する貫通穴を形成する。その後、切欠部7に略長方形座金13を嵌め込み、形成された貫通穴に略長方形座金13を介して締結ボルト12を挿入する。そして、図5,6に示すように、締結ボルト12とナット14により、断面(ベルト本体の幅方向断面)形状が略コ字状のアタッチメント11をベルト本体2の平坦面(背面)5に取り付ける。すなわち、締結ボルト12のねじ部をアタッチメント11に設けた穴を通してナット14にねじ込み、ナット14と略長方形座金13により、ベルト本体2とアタッチメント11を挟み込むように締結する。なお、アタッチメント11の形状は断面形状が略コ字状のものに限定されるものではない。
【0018】
そして、アタッチメント11を取り付けた搬送用歯付ベルト1は、図示しない駆動側歯付プーリと被駆動側歯付プーリとの間に掛け渡され、これら両歯付プーリと噛み合った状態で走行する。その際、締結ボルト12の頭部12aは、略長方形座金13とともに切欠部7内に収容されており、締結ボルト12の頭部12aはベルト本体2の歯4の頂面から突出していない。そのため、図示しない歯付プーリの歯底と締結ボルト12の頭部12aが干渉するおそれはない。したがって、アタッチメント11を取り付けた搬送用歯付ベルト1は、標準の歯付プーリを使用することができる。
【0019】
上記のように構成される上記実施例によれば、長手方向に沿って心線3を埋設したベルト本体2の一方の表面に所定のピッチで歯4を形成し且つ他方の表面にアタッチメント11を取り付ける搬送用歯付ベルト1において、ベルト本体2の各歯4の一部を横断方向に歯4の高さ分だけ切り欠いた切欠部7を設け、切欠部7の中心に有底穴8を設け、切欠部7は心線3の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形であるので、搬送用歯付ベルトのユーザが有底穴8の底部にキリ等の簡単な工具で穴をあけ、ベルト本体2の平坦面(背面)5まで貫通する貫通穴を形成することが簡単にできる。そして、切欠部7に略長方形座金13を嵌め込み、略長方形座金13を介してこの形成された貫通穴に締結ボルト12を挿入し、締結ボルト12のねじ部をナット14にねじ込み、ベルト本体2の平坦面(背面)5にアタッチメント11を取り付ける。そのため、アタッチメント11の取付を現場で簡単に行うことができる。また、締結ボルト12を挿入する貫通穴は有底穴8を下穴として形成されるため、アタッチメント11の取付精度がよい。このように、ユーザが任意の有底穴8を締結ボルト12が挿入される貫通穴とすることにより、任意の歯4の位置の背面5側でアタッチメント11を取り付けることができる。また、略長方形の切欠部7内に略長方形座金13と締結ボルト12の頭部12aが収容されており、締結ボルト12の頭部12aは歯4の頂面から突出していない。そのため、図示しない歯付プーリの歯底と締結ボルト12の頭部12aが干渉するおそれはなく、標準の歯付プーリを使用することができる。また、ベルト本体2の歯4の頂面5と締結ボルト12の頭部12aとの間に隙間があるため、搬送用歯付ベルト1の歪みや多少の摩耗があっても、歯付プーリ又はガイド等に接触して歯付プーリ又はガイドを摩耗させることはない。また、締結ボルト12とともに使用する略長方形座金13が略長方形の切欠部7内に収容されているので、締結ボルト12で締結する際、略長方形座金13で心線3を挟み込むことにより、広い範囲で均等に締結力がかかり、アタッチメント11の取付強度を高くすることができる。また、略長方形座金13はプレス等で容易に且つ安価に製作できる。また、有底穴(下穴)8は底部があるため、アタッチメント11を取り付ける以外のベルト本体2の背面5はフラットになっており、搬送される物品は貫通穴の場合のように貫通穴内に落ち込むことはない。また、アタッチメント11を締結ボルト12にて取り付けるため、アタッチメント11の材質が限定されない。また、締結ボルト12は市販の標準ボルトが使用できる。
【0020】
また、アタッチメント11の取付位置を変更する場合、アタッチメント11を取り外しても、上記従来例のようにベルト本体2の他方の表面(背面)5に保持要素が突出することがなく、ベルト本体2の他方の表面(背面)5は平坦面であるから、ベルト本体2の他方の表面(背面)5に物品を載せて搬送する場合に、物品の搬送に支障を生じるおそれがない。
【0021】
なお、上記実施例においては、締結ボルト12のねじ部をナット14にねじ込んで搬送用歯付ベルト1のベルト本体2にアタッチメント11を取り付ける例を示しているが、請求項1,2記載の発明においては、アタッチメントにねじ穴を設けておき、このねじ穴に取付ねじのねじ部をねじ込んで取り付けることも可能であり、また、合成樹脂製アタッチメントの場合は、合成樹脂製アタッチメントに下穴を形成しておき、取付ねじとしてタッピングねじを使用し、この下穴にタッピングねじをねじ込んで取り付けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の搬送用歯付ベルトの平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のY−Y線断面図である。
【図4】本発明の実施例の搬送用歯付ベルトにアタッチメントを取り付けた状態を示す平面図である。
【図5】図4のX−X線断面図である。
【図6】図4のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 搬送用歯付ベルト
2 ベルト本体
3 心線
4 歯
5 平坦面(背面)
6 歯底
6a 溝
7 切欠部
8 有底穴
11 アタッチメント
12 締結ボルト(取付ねじ)
12a 頭部
13 略長方形座金
14 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って心線を埋設したベルト本体の一方の表面に所定のピッチで歯を形成し且つ他方の表面にアタッチメントを取り付ける搬送用歯付ベルトにおいて、
前記ベルト本体の前記各歯の一部を横断方向に歯の高さ分だけ切り欠いた切欠部を設け、該切欠部の中心に有底穴を設けたことを特徴とする搬送用歯付ベルト。
【請求項2】
前記切欠部は前記心線の長手方向と直交する方向を長辺とする略長方形であることを特徴とする請求項1記載の搬送用歯付ベルト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−27884(P2006−27884A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213195(P2004−213195)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】