説明

搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置

【課題】リニアモータを用いた場合に装置の傾斜に応じて可動子が移動することを防いで、装置の破損や搬送対象物の性能の劣化を防止することのできる搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の磁石5を備える固定子4と、電磁コイル9を備え固定子4に沿って移動可能に配設された可動子8とを備えるリニアモータ3と、リニアモータ3の駆動を制御する制御部16と、可動子8の移動方向Aの傾斜量を検知する傾斜検知機構15とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置に係り、特に、搬送手段としてリニアモータを備える搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器である画像形成装置や各種医療機器等の搬送手段としては、ネジ部をサーボモータやステッピングモータ等により回転させるボールネジ機構を用いた搬送手段が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、最近では、例えば、画像形成装置の印字ヘッド又は露光ヘッド等や各種医療機器における露光走査手段、放射線画像情報の読取装置等のように直線移動精度が要求される部位には、搬送手段としてリニアモータを利用することが提案されている。リニアモータを用いた搬送手段は、磁石で構成される固定子と電磁コイルを有し固定子に沿って移動する可動子とを備えるものであり、可動子に搬送対象物を固定し、可動子に電流を流すことにより可動子の電磁コイルと固定子の磁石との間に生じる吸引力及び反発力を利用して搬送対象物を搬送する。リニアモータは、ボールネジ機構等を用いた搬送手段に比べて搬送対象物を円滑に移動させることができ、各種OA機器や医療機器等における精密搬送を行うのに適している。
【特許文献1】特開2005−62047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種OA機器や医療機器等においては、搬送対象物は高精度の光学機器やセンサ等を搭載しているため、強い衝撃が加わると装置故障の原因となる。この点、ボールネジ機構を用いた搬送手段の場合、装置の電源がOFFとなっているときには搬送対象物が移動しないようにブレーキをかけるブレーキ機構が設けられているのが一般である。このため、装置が多少傾斜した状態で設置されても搬送対象物が移動してしまうことはない。
【0005】
しかしながら、リニアモータは、電源をOFFとすると可動子がフリー状態となるため、装置が傾斜した状態で設置されていると、可動子が自重により傾斜の高い側から低い側に向かって移動してしまう。リニアモータを用いた搬送装置では、搬送対象物をガイドするガイド部が設けられているが、ガイド部は摩擦抵抗が非常に少なく、可動子の移動にブレーキをかけることはできない。また、リニアモータを用いた搬送装置にはガイド部に油圧をかける等の手段によってブレーキ機構を備えるものも存在するが、このような搬送装置では、通常の搬送時にもブレーキ機構が抵抗となり、搬送性能に影響を及ぼす。このため、各種OA機器や医療機器等における精密搬送を行う必要がある場合には、このようなブレーキ機構等を設けず摩擦抵抗の少ないガイド部を採用するのが一般である。
【0006】
このため、装置が傾斜した状態で設置されていると、可動子が移動して可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突し、破損、故障するおそれがあるとの問題がある。
【0007】
また、リニアモータは、電源がONである間は可動子の停止位置を維持するように制御されているため、装置が傾斜した状態で設置されている場合には、可動子が傾斜の低い側に移動しようとする力と同等の駆動力を可動子が移動しようとする方向と逆の方向にかける必要がある。このため、可動子の電磁コイルに常に電流を流す必要があり、電磁コイルが発熱して高温となり、装置故障の原因となりうる。また、電磁コイルの発熱によって装置内の温度が上昇すると、搬送対象物である光学機器等の精密機器に影響を及ぼし、画像読取や画像形成の性能の劣化を生じる可能性があるとの問題もある。
【0008】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、リニアモータを用いた場合に装置の傾斜に応じて可動子が移動することを防いで、装置の破損や搬送対象物の性能の劣化を防止することのできる搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような問題を解決するため、請求項1に記載されている発明は、複数の磁石を備える固定子と、電磁コイルを備え前記固定子に沿って移動可能に配設された可動子とを備えるリニアモータと、
前記リニアモータの駆動を制御する制御部と、
前記可動子の移動方向の傾斜量を検知する傾斜検知機構とを設けたことを特徴としている。
【0010】
このような構成を有する請求項1に記載の発明は、制御部が制御することにより可動子が固定子に沿って移動するリニアモータを備える搬送装置の可動子移動方向の傾斜量を傾斜検知機構によって検知するようになっている。
【0011】
請求項2に記載されている発明は、請求項1に記載の搬送装置において、前記傾斜検知機構は、目視可能な位置に配置されることを特徴としている。
【0012】
このような構成を有する請求項2に記載の発明は、傾斜検知機構は、ユーザが目視にて確認することが可能となっている。
【0013】
請求項3に記載されている発明は、請求項1又は請求項2に記載の搬送装置において、前記傾斜検知機構が検知した検知結果を報知する報知手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
このような構成を有する請求項3に記載の発明は、傾斜検知機構が検知した検知結果を報知手段によって報知するようになっている。
【0015】
請求項4に記載されている発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置において、前記制御部は、前記傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときに、前記リニアモータを停止させるように制御することを特徴としている。
【0016】
このような構成を有する請求項4に記載の発明は、傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、制御部がリニアモータを停止させるように制御するようになっている。
【0017】
請求項5に記載されている発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置において、前記制御部は、前記傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、前記可動子を傾斜の高い位置から低い位置に向かって移動させるように前記リニアモータを制御することを特徴としている。
【0018】
このような構成を有する請求項5に記載の発明は、傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、制御部が可動子を傾斜の高い位置から低い位置に向かって移動させるようにリニアモータを制御するようになっている。
【0019】
請求項6に記載されている発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置において、前記リニアモータは、前記固定子が複数の前記磁石を互いに隣り合う前記磁石の同じ磁極が対向するように直列状に配置してシャフト状に形成され前記可動子が前記固定子の外周面に沿って移動可能に配設されたシャフト型であることを特徴としている。
【0020】
このような構成を有する請求項6に記載の発明は、複数の磁石を互いに隣り合う磁石の同じ磁極が対向するように直列状に配置してシャフト状に形成された固定子の外周面に沿って可動子が移動するシャフト型リニアモータによって搬送対象物を搬送するようになっている。
【0021】
請求項7に記載されている発明は、画像が記録された記録媒体を保持する記録媒体保持部と、
前記記録媒体に記録された画像を読み取る読取部と、
前記記録媒体保持部及び前記読取部のいずれか一方を他方に対して走査する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置とを備えることを特徴としている。
【0022】
このような構成を有する請求項7に記載の発明は、傾斜検知機構を備えリニアモータによって搬送する搬送装置により、記録媒体を保持する記録媒体保持部又は記録媒体から画像を読み取る読取部のいずれか一方を他方に対して走査するようになっている。
【0023】
請求項8に記載されている発明は、記録媒体を保持する記録媒体保持部と、
前記記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記記録媒体保持部及び前記記録手段のいずれか一方を他方に対して走査する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置とを備えることを特徴としている。
【0024】
このような構成を有する請求項8に記載の発明は、
傾斜検知機構を備えリニアモータによって搬送する搬送装置により、記録媒体を保持する記録媒体保持部又は記録媒体に画像を記録する記録部のいずれか一方を他方に対して走査するとなっている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された発明によれば、搬送対象物をリニアモータによって搬送するので、ボールネジ機構等を用いた場合に比べて円滑で精度の高い搬送を行うことができる。また、搬送装置に傾斜検知機構を備えているので、搬送装置が傾斜した状態で設置されている場合にはユーザがこれに気付いて適宜対応することができる。このため、電源がONの場合に、可動子の位置を維持するため電磁コイルに電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイルや装置内部の温度上昇により搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突する等による装置の破損、故障等を防ぐことができる。
【0026】
請求項2に記載された発明によれば、ユーザが傾斜検知機構による検知結果を容易に確認することができるので、搬送装置が傾斜した状態で設置されているときには設置場所を変える等の対処をすることが可能となるとの効果を奏する。
【0027】
請求項3に記載された発明によれば、報知手段が報知することによりユーザが傾斜検知機構による検知結果を知ることができるので、搬送装置が傾斜した状態で設置されている場合にはすぐに気付くことができ、必要に応じて設置場所を変える等の対処をすることが可能となるとの効果を奏する。
【0028】
請求項4に記載された発明によれば、傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、リニアモータを停止させるので、搬送装置が傾斜した状態のまま使用されることを防止できる。これにより、電磁コイルに過剰に電流が流れて電磁コイルや装置内部の温度が上昇し、搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができるという効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載された発明によれば、傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、可動子を傾斜の高い位置から低い位置に向かって移動させるので、搬送装置が傾斜した状態で設置されている場合に、可動子の位置を維持するために電磁コイルに電流を流し続ける必要がない。このため、電磁コイルや装置内部の温度が上昇して、搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができるとの効果を奏する。また、可動子が傾斜の高い位置にある状態で装置が停止することがないため、電源をOFFとしたときに可動子が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動して可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突するおそれがなく、装置の破損、故障等を防止することができるとの効果を奏する。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、シャフト型のリニアモータによって搬送対象物を搬送するので、平板状磁石を用いたリニアモータと比較して、磁束の利用効率が良く、磁石をそれ程大型化しなくても大きな推力を得ることができる。このため、装置を小型化、低コスト化することができるとの効果を奏する。
【0031】
請求項7に記載された発明によれば、搬送装置にリニアモータを用いるので精度の高い搬送を行うことができ、高精細な画像の読み取りが可能となる。また、搬送装置に傾斜検知機構を備えているので、搬送装置が傾斜した状態で設置されている場合にはユーザがこれに気付いて適宜対応することができる。このため、電源がONの場合に、可動子の位置を維持するため電磁コイルに電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイルや装置内部の温度上昇により搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突する等による装置の破損、故障等を防ぐことができるとの効果を奏する。
【0032】
請求項8に記載された発明によれば、搬送装置にリニアモータを用いるので精度の高い搬送を行うことができ、高精細な画像形成が可能となる。また、搬送装置に傾斜検知機構を備えているので、搬送装置が傾斜した状態で設置されている場合にはユーザがこれに気付いて適宜対応することができる。このため、電源がONの場合に、可動子の位置を維持するため電磁コイルに電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイルや装置内部の温度上昇により搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突する等による装置の破損、故障等を防ぐことができるとの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図1から図3を参照しつつ、本発明の第一の実施形態に係る搬送装置について説明する。
【0034】
図1及び図2に示すように、搬送装置1には各部材を固定する装置架台2が設けられている。装置架台2には、リニアモータ3を構成する長尺なシャフト状の固定子4が設けられている。図1及び図2に示すように、固定子4は、ほぼ断面円形状の磁石5をN極同士あるいはS極同士が互いに対向するように複数連結したものを長尺なパイプ状部材6の内部に収納したものである。固定子4の両端は、装置架台2に固定された固定子支持部材7によって支持されている。
【0035】
固定子4に用いられる磁石5は磁束密度の大きい希土類磁石が好ましく、特に、希土類磁石としてネオジム系磁石、例えば、ネオジム-鉄-ボロン磁石(Nd-Fe-B磁石)等が好適に用いられる。このような希土類磁石リニアモータ3の固定子4に用いる場合は、他の磁石を用いる場合と比べて高い推力を得ることができる。なお、磁石5は、ここに例示したものに限定されず、他の磁石を用いることもできる。
【0036】
また、パイプ状部材6は、アルミニウム合金、銅合金、非磁性ステンレス鋼等の非磁性材料によって形成される。パイプ状部材6は、内部に収納される磁石5から生じる磁界を減少させないようにできるだけ薄いことが好ましい。例えば、パイプ状部材6は厚さ1mmのステンレス鋼で形成したものが適用される。なお、パイプ状部材6を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0037】
固定子4には、リニアモータ3を構成する可動子8が、固定子4の長手方向に沿って移動可能に嵌装されている。
【0038】
図1及び図2に示すように、可動子8は、電磁コイル9と電磁コイル9を保持するコイル保持部材10とを備えている。
【0039】
コイル保持部材10は、非磁性体により形成されており、一端側から他端側に貫通した貫通孔が設けられている。貫通孔の内周の径は電磁コイル9の外周の径よりもわずかに大きく貫通孔内に電磁コイル9を嵌装可能となっている。また、本実施形態においてコイル保持部材10は、外面が平板状に形成されたほぼ直方体形状であり、コイル保持部材10の外面に図示しない搬送対象物を固定できるようになっている。
【0040】
なお、コイル保持部材10は、電磁コイル9を保持するとともに搬送対象物を固定可能なものであればよく、その構成、形状はここに例示したものに限定されない。例えば、コイル保持部材10を一方側が電磁コイル9の外周面に沿う半円筒状に形成された部材2つから構成されるものとし、前記2つの部材によって電磁コイル9を挟み込むことにより電磁コイル9を保持するようにしてもよい。また、コイル保持部材10は、外面一端に搬送対象物を固定できるものであれば外面が平板状に形成されたものに限定されず、例えば外形が円筒形状のものであってもよい。さらに、コイル保持部材10は、電磁コイル9の全体を覆うものでなくてもよく、少なくとも電磁コイル9の一部を保持し得るものであればよい。
【0041】
なお、コイル保持部材10を形成する材料は非磁性体であれば特に限定されないが、熱伝導性のよいものであれば電磁コイル9から発生した熱を放熱することができるため好ましい。したがって、コイル保持部材10は、例えばアルミニウム等の非磁性体でありかつ熱伝導性のよい材料で形成されることが好ましい。
【0042】
電磁コイル9は図示しないコイル線を複数巻回した中空のコイル群であり、可動子8の中空部を固定子4に嵌装すると電磁コイル9の内周面が前記固定子4の外周面に対向するようになっている。図1及び図2に示すように、本実施形態において、電磁コイル9はコイル11U,コイル11V,コイル11Wの3相からなり、前記3相のコイル11U,コイル11V,コイル11Wは中空部の中心軸がほぼ一致するように互いに接着固定されている。なお、コイル1相分の幅は、磁石4の1個の長さのほぼ3分の1が好ましい。電磁コイル9の巻き数は、得たい推力以上の推力を得ることができるように、適当な巻き数、巻き線径を決めることが好ましい。
【0043】
なお、電磁コイル9はここに例示した構成のものに限定されず、例えば、各コイル11U,11V,11W毎にコイル線を巻回する巻線部材としての中空のボビンを備え、このボビンにそれぞれコイル線を巻回する構成としてもよい。ボビンを備える場合には、コイル線の巻き幅の調整等を容易に行うことができ、生産性を高めることが可能である。
【0044】
なお、本実施形態において電磁コイル9は3相のコイル11U,11V,11Wを1セットだけ備えるものとしたが、電磁コイル9を構成するコイルは、3相のコイル×n(n=整数)であればよく、電磁コイル9は、必要な推力に応じて、例えば、3相のコイルを2セットとして計6個のコイルで構成されていてもよいし、3相のコイルを3セットとして計9個のコイルで構成されていてもよい。
【0045】
リニアモータ3は、可動子8の電磁コイル9に図示しない電源から電流が流されることにより電磁コイル9に磁界(N極、S極)を発生させ、電磁コイル9と固定子4のパイプ状部材6内部に直線状に配置された磁石5との間に吸引力及び反発力を生じさせることにより推力を得て、可動子8を固定子4の長手方向(以下「移動方向A」と称する。)に往復移動させるようになっている。また、リニアモータ3は電磁コイル9を構成するコイル11各相に流れる電流の向きにより推力の向きが変化するようになっており、コイル11各相に流れる電流の向きを切り替えることにより可動子8の移動方向Aを切り替え可能となっている。さらに、リニアモータ3は電源から流される電流の大きさにより推力の大きさを変化させることができ、電流の大きさを変えることにより可動子8の移動速度を変更可能となっている。
【0046】
なお、固定子4の外周面と電磁コイル9の内周面との間には微小な間隙があり、電磁コイル9は固定子4の外周面を一部摺動してもよいし、摺動せずに間隙を保ったまま移動してもよい。
【0047】
本実施形態に示すような円柱形状の磁石5を用いることにより磁石5の製造コストを抑えることができるとともに、円柱形状の磁石5からなる固定子4を電磁コイル9に貫通させる構成とすることにより磁束の利用効率が良く、固定子4の大きさを必要以上に大きくしなくても大きな推力を得ることができる。
【0048】
さらに、装置架台2の上には、可動子8の位置等を検知するリニアエンコーダ12を構成するエンコーダスケール13が固定子4と平行するように固定子4の長手方向に延在して設けられている。また、可動子8の一面であってエンコーダスケール13に対向する位置には、エンコーダスケール情報を検出するための光センサ14がエンコーダスケール13に対向するように設けられている。
【0049】
エンコーダスケール13は、例えば光学式の反射式スケールであり、可動子8の移動方向Aに光高反射率面と光低反射率面とが交互に所定の間隔で並んでいる。
【0050】
また、光センサ14は、LED等の発光素子によって構成され前記エンコーダスケール13に対して光を照射する図示しない光源と、前記光源から照射されエンコーダスケール13により反射した光を集光するコンデンサレンズ(図示せず)と、フォトダイオードやフォトトランジスタ等により構成されコンデンサレンズによって集光された反射光を受光する受光素子(図示せず)とを備えている。光センサ14は、エンコーダスケール13に臨みつつ、可動子8と共に移動可能となっており、エンコーダスケール13の上を光センサ14が移動すると、受光素子は随時エンコーダスケール13からの反射光を受光し、その反射光の強度(光度、光量等)を検出して受光した光に応じたエンコーダ信号を生成するようになっている。
【0051】
なお、エンコーダスケール13は、ここに例示したものに限定されず、例えば可動子8の移動方向Aに光透過率が高い部分と低い部分とが交互に所定の間隔で並ぶ透過式のスケールを適用することも可能である。このような透過式のエンコーダスケールを用いる場合には、光センサによってエンコーダスケールを透過する透過光の強度を検出する。また、リニアエンコーダ12は可動子8の位置を確認できるものであればよく、リニアエンコーダ12を設ける位置等は図に示したものに限定されない。
【0052】
また、装置架台2の可動子8の移動方向Aにおける一端であって、外部から目視可能な位置には、搬送装置1の可動子8の移動方向Aにおける傾斜量を検知する傾斜検知機構15が設けられている。傾斜検知機構15は、例えば、図示しない密閉容器の中に液体を封入し、液体の傾斜による液面変化を静電容量変化として検知し、検知結果に応じた電気信号を出力する傾斜センサである。傾斜検知機構15は、密閉容器内の液体の液面変化を目視することにより、傾斜の有無を外部から目視にて確認することができるようになっている。
リニアモータ3の可動子8は、搬送装置1の傾斜量が0.5度程度になると、自重で移動してしまうため、可動子8が移動するおそれを事前に検知するためには、傾斜検知機構15は0.5度程度の傾斜量を検知可能な精度のものである必要がある。
【0053】
なお、傾斜検知機構15としての傾斜センサはここに例示したものに限定されない。例えば、密閉容器内に封入された導電性の液体と気泡から構成され、傾斜量の変化による気泡の移動を導電抵抗の変化として検知する構成のものでもよい。また、内面に複数の電極を有する円筒内に金属製のボールや水銀等を封入し、この金属製のボールや水銀等によって電気的導通がある電極を検出することにより傾斜量を検知する構成のもの等でもよい。
【0054】
また、本実施形態において傾斜検知機構15は搬送装置1の傾斜量を目視にて検知しうるものであれば検知結果に応じて電気信号を出力しないものでもよく、前記のような傾斜センサに限定されない。例えば、傾斜検知機構15として、図示しない密閉容器の中に水その他の液体を気泡とともに封入して構成された水準器等を用いてもよい。水準器はこのようなガラスや樹脂等からなる透明部材の中に液体を密封した構成のものの他、糸の先に錘を吊るした構成のもの等、各種の構成のものがありうるが、いずれの構成のものを適用してもよい。
【0055】
また、図3に示すように、搬送装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)17と、各種のプログラム等を格納する記憶手段としてのROM(Read Only Memory)18と、RAM(Random Access Memory)19とを有する制御部16を備えている。制御部16は、ROM18に格納される所定のプログラムを読み出してRAM19の作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPU17が各種処理を実行するようになっている。
【0056】
制御部16には、可動子8に設けられているリニアエンコーダ12の光センサ14からエンコーダ信号が送られるようになっており、制御部16は送られたエンコーダ信号から可動子8の位置を把握するようになっている。
【0057】
また、制御部16は、リニアモータ3の電磁コイル9に電流を流してリニアモータ3を駆動させ、可動子8を固定子4に沿って往復移動させるようになっている。
【0058】
次に、本実施形態に係る搬送装置1の作用について説明する。
【0059】
搬送装置1が所定の設置位置に設置されると、搬送装置1の傾斜量が傾斜検知機構15によって検知される。ユーザは、傾斜検知機構15を目視することにより、搬送装置1が水平に設置されているか否かを確認し、搬送装置1が傾斜して設置されている場合には、設置位置を変える等の対処をする。ユーザは、搬送装置1が水平に設置されたことを確認した後、搬送装置1の電源をONとする。
【0060】
電源がONとなると、制御部16は電源から電磁コイル9に電流を導通させる。これにより、電磁コイル9に磁界(N極、S極)が発生し、電磁コイル9と固定子4のパイプ状部材6内部に直列状に配置された磁石5との間に吸引力及び反発力が生じる。これにより可動子8は推力を得て、固定子4に沿って所定の移動方向Aに移動する。可動子8の位置はリニアエンコーダ12によって検出され、可動子8の位置情報がリニアエンコーダ12の光センサ14からエンコーダ信号として随時制御部16に送られる。制御部16は、可動子8の位置に応じて電磁コイル9に導通させる電流を適宜切り替える。これにより可動子8の移動方向及び移動速度が調整され、精度よく搬送が行われる。
【0061】
以上より、本実施形態によれば、リニアモータ3を用いた搬送装置1によって搬送対象物を搬送するので、円滑で高精度の搬送を行うことができる。特に、本実施形態においては、搬送対象物をシャフト型のリニアモータ3によって搬送するので、平板状磁石を用いたリニアモータよりも磁束の利用効率が良いため、固定子4を必要以上に大型化しなくても大きな推力を得ることができる。このため、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0062】
また、外部から目視可能な位置に傾斜検知機構15を備えているので、搬送装置1が傾斜した状態で設置されている場合にはユーザがこれに気付いて適宜対応することができる。このため、電源がONの場合に、可動子8の位置を維持するため電磁コイル9に電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイル9や装置内部の温度上昇により搬送装置1に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子8が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子8に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突する等による装置の破損、故障等を防ぐことができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、リニアモータ3は固定子4が複数の磁石5を直列状に配置してシャフト状に形成され可動子8が固定子4の外周面に沿って移動可能に配設されたシャフト型の構成のものを例として説明したが、リニアモータ3の構成はここに示したものに限定されない。例えば、平板状の磁石を複数配列したマグネットヨークの間を可動子が移動する構成としてもよい。
【0064】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【0065】
次に、図4を参照しつつ、本発明の第二の実施形態に係る搬送装置について説明する。なお、本実施形態における搬送装置は、第一の実施形態である搬送装置の変形例であり、制御構成が第一の実施形態と異なるものであるので、以下においては、特に第一の実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
本実施形態において搬送装置は、第一の実施形態と同様に、複数の磁石(図示せず)を直列状に配置してシャフト状に形成された固定子(図示せず)と、電磁コイルを備え固定子の外周面に沿って移動可能に配設された可動子(いずれも図示せず)とにより構成されるシャフト型のリニアモータ3を備えている。
【0067】
また、図4に示すように、搬送装置は、装置各部を制御する制御部21を備えている。制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)22と、各種のプログラム等を格納する記憶手段としてのROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)24とを備えている。制御部21は、ROM23に格納される所定のプログラムを読み出してRAM24の作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPU22が各種処理を実行するようになっている。
【0068】
制御部21は、図示しない電源からリニアモータ3の電磁コイルに電流を流してリニアモータ3を駆動させ、可動子を固定子に沿って往復移動させるようになっている。
【0069】
また、搬送装置の可動子の移動方向における一端には、搬送装置の可動子の移動方向における傾斜量を検知する傾斜検知機構15が設けられている。傾斜検知機構15は、例えば、図示しない密閉容器の中に液体を封入し、液体の傾斜による液面変化を静電容量変化として検知し、検知結果に応じた電気信号を出力する傾斜センサである。傾斜検知機構15から出力された電気信号は制御部21に送られるようになっている。
【0070】
なお、傾斜検知機構15としての傾斜センサはここに例示したものに限定されない。例えば、密閉容器内に封入された導電性の液体と気泡から構成され、傾斜量の変化による気泡の移動を導電抵抗の変化として検知する構成のものでもよい。また、内面に複数の電極を有する円筒内に金属製のボールや水銀等を封入し、この金属製のボールや水銀等によって電気的導通がある電極を検出することにより傾斜量を検知する構成のもの等でもよい。
【0071】
本実施形態においてROM23には、搬送装置の傾斜量が装置の安全性や精密性を維持する上で許容される範囲内か否かを判断するための所定の基準値である閾値が記憶されている。制御部21は、傾斜検知機構15から検知結果が送られると、この検知結果と前記閾値とを比較して閾値を超えているか否かを判断するようになっている。所定の基準値である閾値は、搬送装置を設置した状態で可動子が自重によって移動しない範囲であり、例えば、0.5度の傾斜量が閾値として設定された場合には、傾斜検知機構15による検知結果が0.5度を超えている場合に、制御部21は閾値を超えていると判断する。なお、閾値は予め定められROM23に格納されていてもよいし、ユーザが後から任意に設定できるようになっていてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態において制御部21は、検知結果が閾値を超えていると判断するときは、リニアモータ3の電磁コイルに電流を流してリニアモータ3を駆動させ、可動子を搬送装置の傾斜の低い側の端部まで固定子に沿って移動させた上で停止させるようになっている。
【0073】
また、搬送装置の一端であってユーザが外部から目視可能な位置には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備える表示部25が設けられている。表示部25は、制御部21から出力される表示信号の指示に従って、各種の情報等を表示するようになっている。特に、本実施形態において表示部25には、前記傾斜検知機構15によって検知された検知結果が閾値を超えている場合に、制御部21からその旨を表示するよう表示信号が送られるようになっており、表示部25は傾斜検知機構15によって検知された検知結果が閾値を超えている旨をユーザに報知する報知手段として、その旨を表示するようになっている。
【0074】
また、搬送装置には、第一の実施形態と同様に、可動子の位置等を検知するリニアエンコーダ12が設けられている。リニアエンコーダ12は、例えば、固定子と平行するように固定子の長手方向に延在して設けられた図示しないエンコーダスケールと、可動子の一面であってエンコーダスケールに対向する位置に設けられた図示しない光センサとから構成されている。光センサは、エンコーダスケールに臨みつつ、可動子と共に移動可能となっており、エンコーダスケールの上を光センサが移動すると、光センサは随時エンコーダスケールからの反射光を受光し、受光した光に応じたエンコーダ信号を生成するようになっている。エンコーダ信号は制御部21に送られるようになっており、制御部21は送られたエンコーダ信号から可動子の位置を把握するようになっている。
【0075】
なお、その他の構成は、第一実施形態のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
次に、本実施形態における搬送装置の動作について説明する。
【0077】
搬送装置が所定の設置位置に設置され搬送装置の電源がONとなると、搬送装置の傾斜量が傾斜検知機構15によって検知され、検知結果が電気信号として制御部21に送られる。
【0078】
制御部21は、ROM23に格納された閾値を読み出して送られた検知結果と閾値との比較を行い、検知結果の値が閾値内であると制御部21が判断した場合には、制御部21は電源から電磁コイルに電流を導通させる。これにより、電磁コイルに磁界(N極、S極)が発生し、可動子の電磁コイルと固定子の磁石との間に吸引力及び反発力が生じる。これにより可動子は推力を得て、固定子に沿って所定の方向に移動する。可動子の位置はリニアエンコーダ12によって検出され、可動子の位置情報がリニアエンコーダ12からエンコーダ信号として随時制御部21に送られる。制御部21は、可動子の位置に応じて電磁コイルに導通させる電流を適宜切り替える。これにより可動子の移動方向及び移動速度が調整され、精度よく搬送が行われる。
【0079】
検知結果の値が閾値を超えていると制御部21が判断した場合には、制御部21は表示部25に表示信号を送って搬送装置の傾斜量が所定の基準値以上である旨を表示させてユーザにその旨を報知する。さらに、制御部21はリニアエンコーダ12から送られるエンコーダ信号に基づいて可動子の位置を把握し、可動子が搬送装置の傾斜の高い側に位置している場合には、電源から電磁コイルに電流を導通させて、可動子を搬送装置の傾斜の低い側の端部まで固定子に沿って移動させた上で停止させる。他方、可動子が傾斜の低い側の端部に位置している場合には、そのままの状態で電源をOFFとする。
【0080】
以上より、本実施形態によれば、リニアモータ3を用いた搬送装置によって搬送対象物を搬送するので、精度の高い搬送を行うことができる。特に、本実施形態においては、円筒状に形成された電磁コイルをシャフト状の固定子に嵌装するようになっているため、磁束の利用効率が良く、大きい推力を得たい場合にも、固定子の大きさを必要以上に大きくせずにすむことから、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0081】
そして、このように搬送装置にリニアモータ3を用いた場合でも、搬送装置が傾斜した状態で設置されていることを傾斜検知機構15が検知した場合には表示部25にその旨が表示されるので、ユーザがこれに気付いて適宜対応することができる。
【0082】
また、傾斜検知機構15が検知した搬送装置の傾斜量が一定の閾値を超えている場合には、可動子を搬送装置の傾斜の高い側から低い側の端部まで移動させた上で停止させる。このため、電源がONの場合に、可動子の位置を維持するため電磁コイルに電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイルや装置内部の温度上昇により搬送装置に搭載されている光学機器等の各種精密機器が影響を受けて故障したり性能が劣化したりするのを防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子に固定されている搬送対象物が装置端部に衝突する等による装置の破損、故障等を防ぐことができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、傾斜検知機構15の検知結果の値が閾値を超えている場合には、表示部25にその旨を表示させるとともに、可動子の位置に応じて、可動子が搬送装置の傾斜の低い側の端部に位置するように移動又は停止させるようにしたが、傾斜検知機構15の検知結果の値が閾値を超えている場合の対応はここに例示したものに限定されない。
例えば、検知結果の値が閾値を超えている場合には、可動子を移動させず、直ちに装置を停止させ、又は電源がONとならないようにしてもよい。装置を停止させることにより可動子の位置を維持するために電磁コイルに過度の電流が流れることを防止して、電磁コイル及び搬送装置自体の温度が上昇するのを防ぎ、搬送対象物が温度の上昇により破損、劣化等するのを回避できる。
さらに、単に表示部25にその旨を表示させてユーザに注意を喚起するに留めてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、検知結果の値が閾値を超えていることをユーザに報知する報知手段として表示部25を備えるものとしたが、報知手段は、ユーザに注意を喚起しうるものであれば足り、ここに例示したものに限定されない。例えば、報知手段として音声を出力可能なスピーカ等を備え、音声やブザー等によって報知するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、傾斜量が一定の範囲内か否かの閾値を定めて、検知結果の値が閾値を超えた場合のみ表示部25に表示させてユーザに報知するようにしたが、傾斜検知機構15によって検知された結果は随時表示部25に表示されるようにしてもよい。
【0086】
また、表示部25を設けずに、傾斜検知機構15が報知手段を兼ねる構成としてもよい。この場合には、ユーザが目視にて傾斜の有無を確認することのできる構成の傾斜検知機構15を用い、傾斜検知機構15をユーザが目視にて確認できる位置に配置する。
【0087】
なお、本発明が本実施の形態に限られないことは、第一の実施形態と同様である。
【0088】
次に、図5及び図6を参照しつつ、本発明の第三の実施形態である画像読取装置について説明する。なお、本実施形態における画像読取装置は、前記第二の実施形態における搬送装置と同様の搬送装置を搭載するものであるので、搬送装置の構成については、第二の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態において、画像読取装置30は、放射線画像の情報が蓄積された記録媒体としての輝尽性蛍光体シート31から画像情報を読み取る装置である。
輝尽性蛍光体シート31とは、撮影時に被写体を透過した放射線が吸収され、そのエネルギーの一部が輝尽性蛍光体中に放射線画像の情報として蓄積されるものである。輝尽性蛍光体シート31は単体では剛性が無く、装置内での取り扱いが難しいため、輝尽性蛍光体シート31を単体で扱うことは少なく、多くの場合はいわゆる輝尽性蛍光体シート31を金属板や樹脂板などの図示しない支持体に貼付したり、カセッテ(図示せず)と呼ばれる着脱自在のケースに収納してカセッテ内面に接着するなどして支持されている。以下の説明では、輝尽性蛍光体シート31を支持する支持体やカセッテをシート支持部材32と称し、輝尽性蛍光体シート31が上記シート支持部材32に支持された構成を輝尽性蛍光体プレート33と称することとする。
【0090】
図5及び図6に示すように、画像読取装置30には、画像読取を行うための各部材を固定する装置架台34が設けられている。装置架台34には、第一実施形態及び第二実施形態と同様のリニアモータ3を備える搬送装置35が設けられている。リニアモータ3は第一実施形態及び第二実施形態と同様に複数の図示しない磁石を備える長尺なシャフト状の固定子4と固定子4に嵌装され固定子4の長手方向(以下「移動方向X」と称する。)に沿って移動可能に構成された可動子8を備えている。
【0091】
第一実施形態及び第二実施形態と同様、可動子8は、電磁コイル9と電磁コイル9を保持するコイル保持部材10とを備えている。コイル保持部材10には、輝尽性蛍光体プレート33を保持する平板状のプレート保持部材36が設けられている。この輝尽性蛍光体プレート33は、前記シート支持部材32の側がプレート保持部材36に接するように固定されている。
【0092】
また、装置架台34の上には、可動子8の位置等を検知するリニアエンコーダ12を構成するエンコーダスケール13が固定子4と平行するように固定子4の長手方向に延在して設けられている。また、可動子8の一面であってエンコーダスケール13に対向する位置には、エンコーダスケール情報を検出するための光センサ14がエンコーダスケール13に対向するように設けられている。
【0093】
さらに、装置架台34の上には、可動子8に固定されたプレート保持部材36を案内するガイドレール37が前記固定子4及びエンコーダスケール13と平行するように固定子4の長手方向に延在して設けられている。また、プレート保持部材36の一面であってガイドレール37に対向する位置には、ガイドレール37に案内される断面コ字形状のガイド部材38が設けられている。
【0094】
また、装置架台34の可動子8の移動方向Xにおける一端には、第一実施形態及び第二実施形態と同様、搬送装置35の可動子8の移動方向Xにおける傾斜量を検知する傾斜検知機構15が設けられている。傾斜検知機構15は検知結果を電気信号として出力するようになっている。
【0095】
プレート保持部材36の可動範囲内であってプレート保持部材36に保持された輝尽性蛍光体プレート33と対向する位置には、輝尽性蛍光体シート31に蓄積、記録された放射線エネルギーを読み取る読取部である光学ユニット40が設けられている。
【0096】
光学ユニット40は、プレート保持部材36の移動方向Xと直交する方向にレーザ光を走査させながら輝尽性蛍光体シート31に対してレーザ光L1を照射するレーザ光照射装置41と、レーザ光照射装置41により輝尽性蛍光体シート31にレーザ光L1が照射されることで励起された輝尽発光光L2を導く導光板42と、導光板42により導かれた輝尽発光光L2を集光する集光管43と、集光管43により集光された輝尽発光光L2を電気信号に変換する光電変換器44とを有している。
【0097】
光学ユニット40の下方には、光学ユニット40により放射線エネルギーの読取処理がなされた後、輝尽性蛍光体シート31に残留する放射線エネルギーを放出させるために輝尽性蛍光体シート31に対して消去光を照射する図示しない消去装置が設けられている。
【0098】
画像読取装置30の一端であってユーザが外部から目視可能な位置には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備える表示部(図示せず)が設けられている。表示部は各種の情報等を表示するようになっており、特に、本実施形態において表示部には、前記傾斜検知機構15によって検知された検知結果が後述する閾値を超えている場合に、その旨を表示してユーザに報知する報知手段として機能するようになっている。
【0099】
画像読取装置30は、例えば、CPUと、ROMと、RAM(いずれも図示しない)とを有し、装置各部を制御する制御部(図示せず)を備えている。制御部は、ROMに格納される所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPUが各種処理を実行するようになっている。
【0100】
特に、本実施形態において制御部にはリニアエンコーダ12からのエンコーダ信号及び傾斜検知機構15からの検知結果が送られるようになっており、制御部は、これら送られた情報に基づいてリニアモータ3を制御するようになっている。
【0101】
すなわち、本実施形態においてROMには、画像読取装置30に搭載された搬送装置35の傾斜量が装置の安全性や精密性を維持する上で許容される範囲内か否かを判断するための所定の基準値である閾値が記憶されており、制御部は、傾斜検知機構15から検知結果が送られると、この検知結果と前記閾値とを比較して閾値を超えているか否かを判断するようになっている。所定の基準値である閾値は、画像読取装置30を設置した状態でプレート保持部材36が自重によって移動しない範囲であり、例えば、0.5度の傾斜量が閾値として設定された場合には、傾斜検知機構15による検知結果が0.5度を超えている場合に、制御部は閾値を超えていると判断する。
【0102】
さらに、本実施形態において制御部は、検知結果の値が閾値を超えていると判断するときは、リニアモータ3の電磁コイル9に電流を流してリニアモータ3を駆動させ、プレート保持部材36が固定された可動子8を搬送装置35の傾斜の低い側の端部まで固定子4に沿って移動させた上で停止させるようになっている。
【0103】
なお、搬送装置35についてのその他の構成は、第一の実施形態及び第二の実施形態のものと同様であるので、同一箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
次に、上述の構成からなる画像読取装置30の動作について説明する。
【0105】
搬送装置35を搭載した画像読取装置30が所定の設置位置に設置され画像読取装置30の電源がONとなると、搬送装置35の傾斜量が傾斜検知機構15によって検知され、検知結果が電気信号として制御部に送られる。
【0106】
制御部は、ROMに格納された閾値を読み出して送られた検知結果と閾値との比較を行い、検知結果の値が閾値を超えていると制御部が判断した場合には、制御部は表示部に表示信号を送って搬送装置35の傾斜量が所定の基準値以上である旨を表示させてユーザにその旨を報知する。さらに、制御部はリニアエンコーダ12から送られるエンコーダ信号に基づいて可動子8の位置を把握し、可動子8が搬送装置35の傾斜の高い側に位置している場合には、図示しない電源から電磁コイル9に電流を導通させてリニアモータ3を駆動させ、可動子8を搬送装置35の傾斜の低い側の端部まで固定子4に沿って移動させた上で停止させる。他方、可動子8が傾斜の低い側の端部に位置している場合には、そのままの状態で可動子8を停止させる。
【0107】
検知結果の値が閾値内であると制御部が判断した場合には、制御部は電源から電磁コイル9に電流を導通させることによってリニアモータ3を駆動させ、画像の読取処理を開始させる。
【0108】
具体的には、まず、リニアモータ3を駆動させて、輝尽性蛍光体プレート33を支持するプレート保持部材36をガイドレール37に沿って所定の移動方向Xに移動させる。輝尽性蛍光体プレート33が光学ユニット40のレーザ光照射装置41のレーザ光照射面に対向する位置まで移動すると、プレート保持部材36をさらに移動方向Xに移動させながらレーザ光照射装置からレーザ光L1を照射する。これにより、レーザ光L1は輝尽性蛍光体シート31の移動方向Xと直交する方向に順次走査される。その結果、励起された輝尽発光光L2が導光板42により導かれて集光管43に集光され、光電変換器44によって電気信号に変換される。
【0109】
プレート保持部材36の位置はリニアエンコーダ12によって随時検知され、エンコーダ信号が制御部に出力される。制御部はエンコーダ信号に基づいてリニアモータ3の駆動を制御する。
【0110】
輝尽性蛍光体シート31の一方の端部まで光学ユニット40による読取処理が完了すると、制御部はリニアモータ3を停止させる。
【0111】
その後、図示しない消去装置によって、輝尽性蛍光体シート31に対して消去光を照射させ、これにより輝尽性蛍光体シート31に残存する放射線画像を消去させる。そして、さらに搬送手段によってプレート保持部材36に保持させたまま輝尽性蛍光体プレート33を画像読取装置30の外部へと搬送させる。
【0112】
以上より、本実施形態によれば、リニアモータ3を用いた搬送装置35によって読み取り対象物である輝尽性蛍光体シート31を搬送するので、精度の高い搬送を行うことができ、高精細な画像の読み取りが可能となる。
【0113】
また、円筒状に形成された電磁コイル9をシャフト状の固定子4に嵌装するシャフト型のリニアモータ3を用いているため、磁束の利用効率が良く、大きい推力を得たい場合にも、固定子4の大きさを必要以上に大きくせずにすむことから、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0114】
また、本実施形態では搬送装置35に傾斜検知機構15を備え、傾斜検知機構15の検知結果の値が一定の閾値を超えている場合には、その旨を表示部に表示させてユーザに注意を喚起するとともに、可動子8に固定されたプレート保持部材36を傾斜の高い側から低い側の端部まで移動させてから装置を停止させるようになっている。このため、リニアモータ3により搬送する搬送装置35を用いた場合でも、電源がONの場合に、可動子8の位置を維持するため電磁コイル9に電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイル9や装置内部の温度上昇により搬送装置35の搬送対象物であるプレート保持部材36に保持された輝尽性蛍光体シート31が影響を受けて性能が劣化する等を防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子8が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子8に固定されているプレート保持部材36が装置端部に衝突する等による輝尽性蛍光体シート31の破損等を防ぐことができる。
【0115】
なお、本実施形態においては、搬送装置35によってプレート保持部材36に保持された輝尽性蛍光体シート31を搬送するものとしたが、輝尽性蛍光体シート31を画像読取装置30内に固定し、読取部である光学ユニット40を可動子8に固定することにより移動方向Xに移動させるようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態においては、搬送装置35として第二の実施形態における搬送装置を搭載するものとしたが、搬送装置35はこれに限定されず、第一の実施形態における搬送装置を搭載してもよい。この場合には、傾斜検知機構15をユーザの目視可能な位置に設けて、搬送装置15の傾斜の有無をユーザが目視にて確認できるようにする。
【0117】
なお、本発明が本実施の形態に限られないことは、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様である。
【0118】
次に、図7及び図8を参照しつつ、本発明の第四の実施形態である画像形成装置について説明する。なお、本実施形態における画像形成装置は、前記第二の実施形態における搬送装置と同様の搬送装置を搭載するものであるので、搬送装置の構成については、第二の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
図7及び図8は、本発明に係る画像形成装置50の実施の一形態を示したもので、この画像形成装置50の内部には、複数の記録媒体51を積層して収容する収容トレイ52が設けられており、この収容トレイ52の一端部上側には、画像を記録しようとする記録媒体51を一枚ずつ収容トレイ52から取り出す取出し装置53が設けられている。
【0120】
なお、記録媒体51としては、例えば、色材層を有する第1シートとベース層を有する第2シートとから形成され、レーザ光を照射することにより色材層とベース層との間で材料のアブレーションを発生させ、色材層を第2シートに転写することにより画像を形成可能な記録媒体51が適用されるが、記録媒体51はここに例示したものに限定されない。
【0121】
この収容トレイ52下側方には、記録媒体51を支持する円筒状の支持ドラム54が回転自在に配設されており、この支持ドラム54は、図示しないドラム駆動機構によって回転駆動されるようになっている。また、支持ドラム54の周面には、記録媒体51の前端部を全幅にわたって把持する前端把持部55a及び記録媒体51の後端部を全幅にわたって把持する後端把持部55bが、支持ドラム54の軸方向に延在して設けられている。
【0122】
支持ドラム54の側方には、支持ドラム54に摺接して従動回転する従動ローラ56が、支持ドラム54に対して接離可能に設けられている。
【0123】
画像形成装置50の上部には、画像が記録された記録媒体51を排出する排出トレイ57が設けられている。
【0124】
画像形成装置50の内部には、収容トレイ52から供給された記録媒体51を、支持ドラム54の周面上部へ搬送し、記録媒体51が支持ドラム54の周面に沿って搬送された後に、支持ドラム54の周面上部から排出トレイ57へ排出させる搬送経路が設けられている。この搬送経路の所定位置には、搬送方向Yに記録媒体51を搬送するための複数対の搬送ローラ58が設けられている。
【0125】
支持ドラム54の周面側方には、支持ドラム54に支持された記録媒体51に対してレーザ光を照射する記録部としてのレーザ光照射装置59が設けられており、レーザ光照射装置59は、板状の照射装置保持部材61に固定され保持されている。照射装置保持部材61の下方には、記録媒体51の搬送方向Yと直交する方向に延在して、板状の装置基台62が設けられている。
装置架台62には、第一実施形態及び第二実施形態と同様のリニアモータ3を備える搬送装置60が設けられている。リニアモータ3は第一実施形態及び第二実施形態と同様に複数の図示しない磁石を備える長尺なシャフト状の固定子4と固定子4に嵌装され固定子4の長手方向(以下「移動方向Z」と称する。)に沿って移動可能に構成された可動子8を備えている。
【0126】
第一実施形態及び第二実施形態と同様、可動子8は、電磁コイル9と電磁コイル9を保持するコイル保持部材10とを備えている。コイル保持部材10には、前記照射装置保持部材61が固定されており、可動子8が固定子4に沿って移動するのに応じて移動方向Zに往復移動するようになっている。
【0127】
また、装置架台62の上には、可動子8の位置等を検知するリニアエンコーダ12を構成するエンコーダスケール13が固定子4と平行するように固定子4の長手方向に延在して設けられている。また、可動子8の一面であってエンコーダスケール13に対向する位置には、エンコーダスケール情報を検出するための光センサ14がエンコーダスケール13に対向するように設けられている。
【0128】
さらに、装置架台62の上には、可動子8に固定された照射装置保持部材61を案内するガイドレール63が前記固定子4及びエンコーダスケール13と平行するように固定子4の長手方向に延在して設けられている。また、照射装置保持部材61の一面であってガイドレール63に対向する位置には、ガイドレール63に案内される断面コ字形状のガイド部材64が設けられている。
【0129】
また、装置架台62の可動子8の移動方向Zにおける一端には、第一実施形態及び第二実施形態と同様、搬送装置60の可動子8の移動方向Zにおける傾斜量を検知する傾斜検知機構15が設けられている。傾斜検知機構15は検知結果を電気信号として出力するようになっている。
【0130】
画像形成取装置50の一端であってユーザが外部から目視可能な位置には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備える表示部(図示せず)が設けられている。表示部は各種の情報等を表示するようになっており、特に、本実施形態において表示部には、前記傾斜検知機構15によって検知された検知結果が後述する閾値を超えている場合に、その旨を表示してユーザに報知する報知手段として機能するようになっている。
【0131】
支持ドラム54より搬送経路下流側には、レーザ光照射装置59により露光された記録媒体51の第1シートと第2シートとを剥離する剥離装置65が設けられており、排出トレイ57の下方には、剥離装置65により第2シートと剥離された第1シートを巻き取って回収する回収ロール66が設けられている。また、剥離装置65より搬送経路下流側には、画像が形成された第2シートを排出トレイ57に排出させる排出ローラ67が設けられている。
【0132】
画像形成装置50は、例えば、CPUと、ROMと、RAM(いずれも図示しない)とを有し、装置各部を制御する制御部(図示せず)を備えている。制御部は、ROMに格納される所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPUが各種処理を実行するようになっている。
【0133】
特に、本実施形態において制御部にはリニアエンコーダ12からのエンコーダ信号及び傾斜検知機構15からの検知結果が送られるようになっており、制御部は、これら送られた情報に基づいてリニアモータ3を制御するようになっている。
【0134】
すなわち、本実施形態においてROMには、画像形成装置50に搭載された搬送装置60の傾斜量が装置の安全性や精密性を維持する上で許容される範囲内か否かを判断するための所定の基準値である閾値が記憶されており、制御部は、傾斜検知機構15から検知結果が送られると、この検知結果と前記閾値とを比較して閾値を超えているか否かを判断するようになっている。所定の基準値である閾値は、画像形成装置50を設置した状態で可動子8に固定された照射装置保持部材61が自重によって移動しない範囲であり、例えば、0.5度の傾斜量が閾値として設定された場合には、傾斜検知機構15による検知結果が0.5度を超えている場合に、制御部は閾値を超えていると判断する。
【0135】
さらに、本実施形態において制御部は、検知結果の値が閾値を超えていると判断するときは、リニアモータ3の電磁コイル9に電流を流してリニアモータ3を駆動させ、照射装置保持部材61が固定された可動子8を搬送装置60の傾斜の低い側の端部まで固定子4に沿って移動させた上で停止させるようになっている。
【0136】
なお、搬送装置60についてのその他の構成は、第一の実施形態及び第二の実施形態のものと同様であるので、同一箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0137】
次に、上述の構成からなる画像形成装置50の動作について説明する。
【0138】
搬送装置60を搭載した画像形成装置50が所定の設置位置に設置され画像形成装置50の電源がONとなると、搬送装置60の傾斜量が傾斜検知機構15によって検知され、検知結果が電気信号として制御部に送られる。
【0139】
制御部は、ROMに格納された閾値を読み出して送られた検知結果と閾値との比較を行い、検知結果の値が閾値を超えていると制御部が判断した場合には、制御部は表示部に表示信号を送って搬送装置60の傾斜量が所定の基準値以上である旨を表示させてユーザにその旨を報知する。さらに、制御部はリニアエンコーダ12から送られるエンコーダ信号に基づいて可動子8の位置を把握し、可動子8が搬送装置60の傾斜の高い側に位置している場合には、図示しない電源から電磁コイル9に電流を導通させてリニアモータ3を駆動させ、可動子8を搬送装置60の傾斜の低い側の端部まで固定子4に沿って移動させた上で停止させる。他方、可動子8が傾斜の低い側の端部に位置している場合には、そのままの状態で可動子8を停止させる。
【0140】
検知結果の値が閾値内であると制御部が判断した場合には、制御部は電源から電磁コイル9に電流を導通させることによってリニアモータ3を駆動させ、画像の記録動作を開始させる。
【0141】
具体的には、まず、画像形成装置50に画像情報が送られると、取出し装置53が作動して、収容トレイ52に収容された最上位の記録媒体51を取出し、搬送ローラ58が回転動作して、この取出された記録媒体51を搬送させる。
【0142】
記録媒体51が支持ドラム54の上部周面近傍まで到達したら、ドラム駆動機構により支持ドラム54が、記録媒体51の前端部を前端把持部55aに把持した状態で、図7において時計方向に回転動作する。支持ドラム54の回転に伴って前端把持部55aが従動ローラ56の位置を通過すると、従動ローラ56が支持ドラム54に対して当接して、記録媒体51を支持ドラム54の周面に保持させる。そして、支持ドラム54の回転に伴って後端把持部55bが、記録媒体51の後端部位置まで移動して、記録媒体51の後端部を把持すると、従動ローラ56が支持ドラム54から離間する。
【0143】
その後、支持ドラム54が図7において時計方向と反対方向に回転動作し、支持ドラム54の回転に伴って記録媒体51がレーザ光照射装置59の位置まで送られると、画像情報に基づいてレーザ光照射装置59により記録媒体51に対してレーザ光が照射される。このとき、レーザ光照射装置59は、可動子8がリニアモータ3の駆動により記録媒体51の搬送方向Yと直交する所定の移動方向Zに往復移動するのに伴って、記録媒体51に対してレーザ光を走査させる。
【0144】
レーザ光照射装置59によるレーザ光の照射が完了すると、記録媒体51を搬送ローラ58により搬送経路に沿って搬送させる。
【0145】
記録媒体51は、剥離装置65の位置まで搬送されると、剥離装置65により第1シートと第2シートとに剥離される。そして、第1シートは回収ロール66に回収され、第2シートは、搬送ローラ58及び排出ローラ67により、排出トレイ57に排出される。
【0146】
以上より、本実施形態によれば、リニアモータ3を用いた搬送装置60によってレーザ光照射装置59を搬送するので、レーザ光照射装置59が滑らかに搬送され、搬送に伴う振動も発生しないため、高精細な画像を得ることができる。
【0147】
また、円筒状に形成された電磁コイル9をシャフト状の固定子4に嵌装するシャフト型のリニアモータ3を用いているため、磁束の利用効率が良く、大きい推力を得たい場合にも、固定子4の大きさを必要以上に大きくせずにすむことから、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0148】
また、本実施形態では搬送装置60に傾斜検知機構15を備え、傾斜検知機構15の検知結果が一定の閾値を超えている場合には、その旨を表示部に表示させてユーザに注意を喚起するとともに、可動子8に固定されたレーザ光照射装置59を傾斜の高い側から低い側の端部まで移動させてから装置を停止させるようになっている。このため、リニアモータ3により搬送する搬送装置60を用いた場合でも、電源がONの場合に、可動子8の位置を維持するため電磁コイル9に電流を流し続ける事態を防止して、電磁コイル9や装置内部の温度上昇により搬送装置60の搬送対象物であるレーザ光照射装置59内の各種精密機器が影響を受けて故障したり、性能が劣化する等を防ぐことができる。また、電源をOFFとしたときに可動子8が傾斜の高い位置から低い位置に急激に移動する事態を防止して、可動子8に固定されている照射装置保持部材61が装置端部に衝突する等によるレーザ光照射装置59の故障や破損等を防ぐことができる。
【0149】
なお、本実施形態においては、搬送装置60によってレーザ光照射装置59を搬送するものとしたが、記録媒体51の搬送にリニアモータ3を用いた搬送装置60を適用してもよい。
【0150】
また、本実施形態においては、搬送装置60として第二の実施形態における搬送装置を搭載するものとしたが、搬送装置60はこれに限定されず、第一の実施形態における搬送装置を搭載してもよい。この場合には、傾斜検知機構15をユーザの目視可能な位置に設けて、搬送装置15の傾斜の有無をユーザが目視にて確認できるようにする。
【0151】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明に係る搬送装置の第一実施形態の要部を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1に示す搬送装置の要部の側面図である。
【図3】図1に示す搬送装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【図4】第二実施形態に係る搬送装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【図5】本発明に係る画像読取装置の一実施形態の要部を模式的に示した斜視図である。
【図6】図5に示す画像読取装置の正面図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の一実施形態の要部を模式的に示した斜視図である。
【図8】図7に示す画像形成装置に適用される搬送装置の要部を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0153】
1 搬送装置
3 リニアモータ
4 固定子
5 磁石
8 可動子
9 電磁コイル
12 リニアエンコーダ
13 エンコーダスケール
14 光センサ
15 傾斜検知機構
16 制御部
25 表示部
30 画像読取装置
50 画像形成装置
A 移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石を備える固定子と、電磁コイルを備え前記固定子に沿って移動可能に配設された可動子とを備えるリニアモータと、
前記リニアモータの駆動を制御する制御部と、
前記可動子の移動方向の傾斜量を検知する傾斜検知機構とを設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記傾斜検知機構は、目視可能な位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記傾斜検知機構が検知した検知結果を報知する報知手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときに、前記リニアモータを停止させるように制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記傾斜検知機構が検知した検知結果が所定の基準値以上であるときには、前記可動子を傾斜の高い位置から低い位置に向かって移動させるように前記リニアモータを制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記リニアモータは、前記固定子が複数の前記磁石を互いに隣り合う前記磁石の同じ磁極が対向するように直列状に配置してシャフト状に形成され前記可動子が前記固定子の外周面に沿って移動可能に配設されたシャフト型であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
画像が記録された記録媒体を保持する記録媒体保持部と、
前記記録媒体に記録された画像を読み取る読取部と、
前記記録媒体保持部及び前記読取部のいずれか一方を他方に対して走査する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
記録媒体を保持する記録媒体保持部と、
前記記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記記録媒体保持部及び前記記録手段のいずれか一方を他方に対して走査する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−13758(P2007−13758A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193481(P2005−193481)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】