説明

搬送装置、記録装置及び搬送方法

【課題】部品点数の増加の抑制を図りつつ、媒体から切り離された搬送方向における下流側部分の排出速度を向上させることができる搬送装置、記録装置及び搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送制御部は、切断ユニットによる長尺状のシートの切断時に、該シートから切り離される搬送方向における下流側部分が、切断の完了時点(第8のタイミングt8)で第1のローラー及び第2のローラーによって挟持されているように、挟持用モーターを制御し、切断完了後、下流側部分を挟持する各ローラーの回転によって下流側部分が搬送方向における下流側に排出されるように排出用モーターを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送方向における上流側から下流側に搬送する搬送装置及び搬送方法に関する。また、本発明は、搬送装置によって搬送される媒体に記録を施す記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送方向に搬送される媒体に対して記録を施す記録手段を備える記録装置として、例えば特許文献1に記載の記録装置が提案されている。この特許文献1に記載の記録装置は、軸部材に巻き重ねられた長尺状のシート(媒体)を、軸部材を回転させつつ送り出す搬送装置を備えている。こうした搬送装置には、搬送方向に沿って配置される複数のローラーと、搬送方向において記録手段よりも下流側に配置されるカッターを有する切断手段と、該切断手段よりも搬送方向における下流側に配置されるバッフルとが設けられている。
【0003】
このようにシートの切断機能を有する記録装置では、長尺状のシートにおいて記録が施された部分(以下、「記録済み部分」ともいう。)を切り離す処理が行われる。具体的には、記録済み部分が切断手段よりも搬送方向における下流側まで移動した場合には、シートの搬送が一時的に停止されてから、記録済み部分がバッフルによってニップされる。この状態で切断手段が駆動することにより、長尺状のシートから記録済み部分が切り離される。その後、バッフルによる記録済み部分のニップが解消されてから、シートの搬送が再開されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−91658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の方法では、シートの搬送という観点で見ると必要性の低いバッフルを設ける必要があり、部品点数が増加する問題があった。
また、バッフルによってシートの一部(この場合、記録済み部分)をニップする場合には、シートの搬送を完全に停止させる必要がある。また、シートの切断が完了した場合には、バッフルによる記録済み部分のニップを解消させた後、該記録済み部分を排出させるために排出用のローラーなどの搬送手段を駆動させることになる。すなわち、バッフルによって記録済み部分がニップされる間は、該記録済み部分を排出させるために排出手段を駆動させることができない。そのため、シートの切断機能を有する記録装置では、シートから切り離された部分の排出速度を向上させる点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の増加の抑制を図りつつ、媒体から切り離された搬送方向における下流側部分の排出速度を向上させることができる搬送装置、記録装置及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の搬送装置は、搬送方向に沿って搬送される媒体を切断する切断手段と、前記切断手段によって媒体から切り離された前記搬送方向における下流側部分を、前記搬送方向における下流側に排出する排出手段と、前記切断手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、前記排出手段は、媒体の裏面側に配置される第1のローラーと、媒体の表面側に配置される第2のローラーと、前記各ローラーを互いに接近させる方向及び離間させる方向に相対移動させるための駆動力を発生する駆動源と、接近状態にある前記各ローラーを回転させるための駆動力を発生する排出用モーターと、を有し、前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時に、該媒体から切り離される前記下流側部分が、切断の完了時点で前記各ローラーによって挟持されているように、前記駆動源を制御し、切断完了後、前記下流側部分を挟持する前記各ローラーの回転によって該下流側部分が前記搬送方向における下流側に排出されるように前記排出用モーターを制御する。
【0008】
上記構成によれば、切断手段によって媒体から切り離される下流側部分は、切断手段よりも搬送方向における下流側に位置する第1のローラー及び第2のローラーによって挟持される。この各ローラーは、切断時に媒体を挟持するだけではなく、媒体を搬送方向における下流側に搬送するためにも使用される。そのため、媒体を挟持するためのバッフルを、第1のローラー及び第2のローラーとは別に設ける従来の場合と比較して、搬送装置の部品点数の増加を抑制できる。
【0009】
また、切断処理後では、下流側部分を挟持する各ローラーを回転させることにより、媒体から切り離された下流側部分を排出させることができる。バッフルによって下流側部分を挟持していた従来の場合には、バッフルによる下流側部分の挟持を解消させた後に、下流側部分を排出させる必要があるのに対し、本発明では、各ローラーによる下流側部分の挟持を解消させる必要がない。そのため、媒体から切り離された下流側部分の挟持を解消させる処理の必要がない分、該下流側部分を速やかに排出させることができる。したがって、部品点数の増加の抑制を図りつつ、媒体から切り離された搬送方向における下流側部分の排出速度を向上させることができる。
【0010】
本発明の搬送装置において、前記切断手段は、媒体の幅方向における一端から他端に移動して該媒体を切断する刃部を有し、前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、前記刃部の移動開始後から、離間状態にある前記各ローラーを互いに接近させる方向に相対移動させると共に、媒体の前記幅方向における一端と他端との間となる中途位置が前記刃部によって切断される時点で前記各ローラーによる前記下流側部分の挟持が完了されるように、前記駆動源を制御する。
【0011】
媒体の切断時には、媒体の幅方向における他端が切断される時点、即ち媒体から下流側部分が切り離される時点で、下流側部分に幅方向への応力が付与される。その結果、下流側部分を各ローラーで挟持していないと、上記応力によって、下流側部分の意図しない幅方向への移動が発生することがある。そこで、本発明では、媒体の幅方向における中途位置が切断された時点で、各ローラーによる媒体の挟持が完了するように、各ローラーの相対移動タイミング及び速度のうち少なくとも一方が調整される。そのため、切断時に付与される応力によって、媒体から切り離された下流側部分の幅方向への意図しない移動の発生を抑制できる。
【0012】
ここで、記録手段などによって媒体に記録を施された場合には、媒体の表面及び裏面の少なくとも一方に、流体が付着している。そして、記録物の品質維持の観点からみると、媒体のうち流体が付着した部分に対するローラーなどの接触時間を、極力短くすることが好ましい。この点、本発明では、媒体の切断が開始される前から各ローラーによって媒体を挟持する場合と比較して、各ローラーによって媒体を挟持する時間を短くできる。したがって、本発明の搬送装置を、記録装置に搭載したとしても、該記録装置における記録品質の低下を抑制できる。
【0013】
本発明の搬送装置において、前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、前記各ローラーによる前記下流側部分の挟持が完了される前までに前記第1のローラーの回転が停止されるように、前記排出用モーターの制御停止のタイミング及び前記駆動源の制御開始のタイミングを調整する。
【0014】
各ローラーによって挟持される下流側部分に、搬送方向における下流側への引っ張り力が付与されたとすると、該引っ張り力によって、媒体から下流側部分を正確に切り離すことができないおそれがある。すなわち、媒体から切り離された下流側部分の形状が、所望する形状と異なるおそれがある。この点、本発明では、下流側部分が各ローラーによって挟持された場合には、搬送方向における下流側に搬送させる力が下流側部分に付与されない。すなわち、各ローラーによって挟持される下流側部分には、搬送方向における下流側への引っ張り力が付与されない。そのため、媒体から下流側部分を正確に切断させることができる。
【0015】
本発明の搬送装置において、前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、前記排出用モーターの制御を停止した時点又は該時点よりも後に、離間状態にある前記各ローラーの互いに接近する方向への相対移動が開始されるように前記駆動源を制御する。
【0016】
上記構成によれば、各ローラーによって挟持される下流側部分に、搬送方向における下流側への引っ張り力が付与される可能性を低減できる。
本発明の搬送装置は、媒体において前記切断手段によって切断される位置よりも前記搬送方向における上流側に配置される搬送ローラー、及び該搬送ローラーを回転させるための駆動力を発生する搬送モーターを有する搬送手段をさらに備え、前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、該切断手段の駆動開始前までに前記搬送ローラーの回転が停止されると共に、切断完了後には、媒体の搬送を再開させるべく前記搬送ローラーが回転するように、前記搬送モーターを制御する。
【0017】
上記構成によれば、媒体が切断される場合には、搬送ローラーの回転が停止されているため、搬送方向における下流側に押し込むような力が媒体に付与されることが回避される。そのため、切断される媒体に、切断するためには必要のない力が付与されることを回避でき、ひいては媒体から下流側部分を正確に切断させることができる。
【0018】
本発明の記録装置は、上記搬送装置と、流体を媒体に付着させる記録手段と、前記切断手段による媒体の切断時に、流体を用いた記録処理を停止させるべく前記記録手段を制御する記録制御手段と、を備える。
【0019】
上記構成によれば、媒体のうち記録済みとなった下流側部分を、速やかに排出させることができ、記録装置のスループットを向上させることができる。
本発明の搬送方法は、搬送方向における上流側から下流側に搬送される媒体の前記搬送方向における下流側部分を切断手段によって媒体から切り離し、媒体から切り離された前記下流側部分を前記搬送方向における下流側に排出する搬送方法であって、前記切断手段よりも前記搬送方向における下流側には、媒体の裏面側に配置される第1のローラーと、媒体の表面側に配置される第2のローラーとが設けられ、前記各ローラーは、互いに接近する方向及び離間する方向に相対移動するようになっており、前記切断手段による媒体の切断時に、媒体から切り離される前記下流側部分が、切断の完了時点で前記各ローラーによって挟持されているように、離間状態にある前記各ローラーを互いに接近させる方向に相対移動させる挟持ステップと、切断完了後に、前記下流側部分を挟持する前記各ローラーの回転によって該下流側部分を前記搬送方向における下流側に排出させる排出ステップと、を有する。
【0020】
上記構成によれば、上記搬送装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の記録装置を模式的に示す側面図。
【図2】切断ユニットを示す模式図。
【図3】記録装置の電気的構成の要部を示すブロック図。
【図4】コントローラーの機能構成の要部を示すブロック図。
【図5】長尺状のシートを切断する様子を説明するタイミングチャート。
【図6】切断処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の記録装置11は、シリアルタイプのインクジェット式のプリンターである。こうした記録装置11は、媒体の一例としての長尺状のシートSLをロール状に巻き重ねたロール紙RSの状態で収容する収容部12と、該収容部12内から長尺状のシートSLを少しずつ送り出すようにして搬送する搬送装置13とを備えている。また、長尺状のシートSLの搬送方向Y(「副走査方向」ともいう。)における中途位置には、長尺状のシートSLに対して記録を施す記録手段の一例としての記録ユニット14が設けられている。
【0023】
搬送装置13は、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける上流側(収容部12側)から下流側(記録ユニット14側)に向けて搬送する搬送手段の一例としての搬送ユニット15を備えている。また、搬送装置13には、記録ユニット14の搬送方向Yにおける下流側(図1では左側)の切断位置P1で長尺状のシートSLを切断する切断手段の一例としての切断ユニット16が設けられている。この切断ユニット16は、長尺状のシートSLにおいて記録済みとなった記録済み部分(下流側部分)SCを長尺状のシートSLから切り離す。また、切断位置P1の搬送方向Yにおける下流側には、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを搬送方向Yにおける最下流に位置する排出トレイ18に排出する排出手段の一例としての排出ユニット17が設けられている。
【0024】
本実施形態のロール紙RSは、搬送方向Yに直交する走査方向(本実施形態では、紙面と直交する方向であって、「主走査方向」ともいう。)に延びる軸部材20に長尺状のシートSLを巻き重ねてなる。ロール紙RSが収容部12内にセットされた場合、軸部材20には、第1のモーター21が動力伝達可能な状態で連結される。そして、第1のモーター21からの駆動力が軸部材20に伝達されると、軸部材20が所定の方向に回転し、結果として、ロール紙RSは、長尺状のシートSLとして収容部12から搬送経路に沿って送り出される。
【0025】
次に、搬送ユニット15について説明する。
図1に示すように、搬送ユニット15は、収容部12内から長尺状のシートSLを少しずつ送り出すための送出し部22と、該送出し部22の搬送方向Yにおける下流側に配置される搬送ローラー対23とを備えている。送出し部22は、長尺状のシートSLの裏面側に配置される送出しローラー22aと、長尺状のシートSLの表面側に配置される従動ローラー22bとを有している。すなわち、従動ローラー22bは、長尺状のシートを挟んで送出しローラー22aに対向配置されている。送出しローラー22aには、第2のモーター24が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、第2のモーター24からの駆動力が送出しローラー22aに伝達された場合、送出しローラー22aが回転すると共に、従動ローラー22bが送出しローラー22aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、送出し部22によって搬送方向Yにおける下流側に送り出される。
【0026】
搬送ローラー対23は、長尺状のシートSLを挟んで対向配置されると共に、該シートSLを挟持する搬送ローラー23a及び従動ローラー23bとを有している。一例として、搬送ローラー23aは、長尺状のシートSLの裏面側に配置されると共に、従動ローラー23bは、長尺状のシートSLの表面側に配置されている。搬送ローラー23aには、搬送モーター25が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、搬送モーター25からの駆動力が搬送ローラー23aに伝達された場合、搬送ローラー23aが回転すると共に、従動ローラー23bが搬送ローラー23aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、搬送ローラー対23によって搬送方向Yにおける下流側に搬送される。
【0027】
なお、搬送ローラー対23よりも搬送方向Yにおける上流側には、長尺状のシートSLの先端を検出するための検出センサーSE1が設けられている。この検出センサーSE1からの検出信号は、記録装置11を制御する制御装置60に出力される。
【0028】
次に、切断ユニット16について説明する。
図1及び図2に示すように、切断ユニット16は、刃部の一例として、略円盤状のカッター30を備えている。また、図2において長尺状のシートSL(図2では一点鎖線で示す。)の下方側には、走査方向Xに延びるガイド部材31が設けられており、該ガイド部材31は、カッター30を走査方向Xに移動可能な状態で支持している。ガイド部材31に支持されるカッター30の一部(図2では上端部)は、長尺状のシートSLよりも図2における上方に位置している。そして、カッター30は、長尺状のシートSLの幅方向(走査方向X)における一端に位置する第1の位置と、幅方向(走査方向X)における他端に位置する第2の位置との間をガイド部材31によってガイドされつつ移動する。
【0029】
また、カッター30には、切断用モーター32が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、切断用モーター32からの駆動力がカッター30に伝達された場合、該カッター30は、ガイド部材31に案内されることにより走査方向Xに沿って移動される。すなわち、長尺状のシートSLは、第1の位置から第2の位置(又は第2の位置から第1の位置)にカッター30が移動することにより、その幅方向における一端から他端に徐々に切断される。
【0030】
次に、排出ユニット17について説明する。
図1に示すように、排出ユニット17は、搬送方向Yに沿って配置される複数(本実施形態では2つ)の排出ローラー対35,36を備えている。各排出ローラー対35,36のうち、搬送方向Yにおける下流側に配置される第2の排出ローラー対36は、記録済み部分SCを挟持する駆動ローラー36a及び従動ローラー36bを有している。一例として、駆動ローラー36aは、記録済み部分SCの裏面側に配置されると共に、従動ローラー36bは、記録済み部分SCの表面側に配置されている。
【0031】
また、各排出ローラー対35,36のうち、搬送方向Yにおける上流側に配置される第1の排出ローラー対35は、記録済み部分SCを挟んで対向配置される第1のローラー35a及び第2のローラー35bを有している。一例として、第1のローラー35aは、記録済み部分SCの裏面側に配置されると共に、第2のローラー35bは、記録済み部分SCの表面側に配置されている。また、第2のローラー35bには、駆動源の一例としての挟持用モーター37が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、第2のローラー35bは、挟持用モーター37からの駆動力によって、第1のローラー35aに対して接近する方向及び離間する方向(図1では上下方向)に移動する。すなわち、第2のローラー35bが第1のローラー35aを基準として相対的に離間する方向に移動した場合、即ち第2のローラー35bが図1にて破線で示す位置に位置する場合、第2の排出ローラー対36は、記録済み部分SCを挟持不能である。一方、第2のローラーが図1にて実線で示す位置に位置する場合、第2の排出ローラー対36は、記録済み部分SCを挟持可能である。
【0032】
また、各排出ローラー対35,36のうち、記録済み部分SCの裏面側に位置する第1のローラー35a及び駆動ローラー36aには、排出用モーター38が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、排出用モーター38の駆動が駆動ローラー36a及び第1のローラー35aに伝達されると、各排出ローラー対35,36によって、記録済み部分SCが搬送方向Yにおける下流側に排出される。
【0033】
次に、記録ユニット14について説明する。
図1及び図3に示すように、記録ユニット14は、搬送方向Yに直交する走査方向X(図1では紙面と直交する方向)に延びるガイド軸40を備えている。このガイド軸40は、その長手方向における両端が記録装置11の図示しない本体ケースに支持されると共に、長尺状のシートSLの表面側(図1では上側)に配置されている。こうしたガイド軸40には、該ガイド軸40の長手方向(即ち、走査方向X)に沿って往復移動可能な状態でキャリッジ41が連結されている。このキャリッジ41は、キャリッジモーター43から伝達される駆動力に基づき走査方向Xに沿って移動する。
【0034】
また、キャリッジ41は、記録ヘッド44を支持している。この記録ヘッド44には、記録装置11の図示しないホルダー部に着脱自在な状態で装着された図示しないインクカートリッジから流体の一例としてのインクが供給される。こうした記録ヘッド44には、複数のノズル(図示略)と、該各ノズルに対応付けられた駆動素子とが設けられている。そして、ノズルからは、対応する駆動素子が駆動することによりインクが長尺状のシートSLの表面(図1では上面)に向けて噴射される。なお、搬送方向Yにおいて記録ヘッド44と同一位置であって且つ長尺状のシートSLの裏面側には、該シートSLを支持する図示しない支持部材が設けられている。
【0035】
次に、記録装置11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、記録装置11は、該記録装置11全体を制御する制御装置60を備えている。この制御装置60は、インターフェイス61を介してホスト装置HCのプリンタードライバーPDとの間で印刷データなどの各種情報を送受信可能とされている。
【0036】
制御装置60は、CPU62、ASIC63((Application Specific IC(特定用途向けIC))、ROM64、不揮発性メモリー65及びRAM66を有するコントローラー67を備えている。このコントローラー67は、バス68を介して各種ドライバー69,70,71,72,73,74,75,76に電気的に接続されている。そして、コントローラー67は、モータードライバー69〜75を介してモーター21,24,25,32,37,38,43を制御すると共に、ヘッド用ドライバー76を介して記録ヘッド44内の各駆動素子を個別に制御する。
【0037】
ROM64には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー65には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM66には、ホスト装置HCから受信した印刷データ、該印刷データの処理途中のデータ及び処理後のデータが格納される画像領域66aが設けられている。
【0038】
次に、本実施形態のコントローラー67について説明する。なお、図4では、明細書の説明理解の便宜上、各種ドライバー69〜76の図示を省略している。
図4に示すように、コントローラー67は、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部分として、データ処理部80、記録制御手段としての記録制御部81、切断制御部82、カウンター83及び搬送制御手段としての搬送制御部84を備えている。
【0039】
データ処理部80は、インターフェイス61を介して受信した印刷データのうちコマンドを除いたデータを、印刷ドットが階調値で示されたビットマップデータに変換し、該ビットマップデータを展開する。そして、データ処理部80は、展開したデータに基づき、1パス分のビットマップデータを生成し、該1パス分のビットマップデータを記録制御部81に出力する。なお、「1パス」とは、インク噴射を伴う記録ヘッド44(即ち、キャリッジ41)の一回の走査方向Xへの移動のことを示している。
【0040】
また、データ処理部80は、インターフェイス61を介して受信した印刷データに含まれるコマンドを解析し、記録モード及び記録処理時における長尺状のシートSLの単位搬送量、即ち紙送り量を取得する。そして、データ処理部80は、取得した記録モードに関する情報を記録制御部81に出力すると共に、取得した単位搬送量に関する情報を搬送制御部84に出力する。なお、記録モードとしては、一例として、印刷速度を重視したドラフト印刷モード及び印刷精度を重視した高詳細印刷モードが挙げられる。
【0041】
記録制御部81は、キャリッジ制御部85及びヘッド制御部86を有している。キャリッジ制御部85は、データ処理部80から入力された記録モードに基づき、記録処理時におけるキャリッジ41の移動速度、移動開始位置及び停止位置などの移動制御情報を設定する。そして、キャリッジ制御部85は、設定した移動制御情報に基づきキャリッジモーター43の駆動を制御する。
【0042】
ヘッド制御部86は、入力された1パス分のビットマップデータに基づき、記録ヘッド44に搭載される各駆動素子(図示略)の駆動を個別に制御する。すなわち、本実施形態では、記録制御部81は、キャリッジ41の走査方向Xへの移動と記録ヘッド44の駆動とを連動させることにより、長尺状のシートSLに記録を施す。そして、記録制御部81は、1パス分の記録が完了すると、その旨を搬送制御部84に出力する。
【0043】
切断制御部82は、長尺状のシートSLの切断時に、カッター30を第1の位置から第2の位置(又は第2の位置から第1の位置)に移動させるべく切断用モーター32の駆動を制御する。こうした切断制御部82は、カッター30の第1の位置から第2の位置への移動(又は第2の位置から第1の位置への移動)が完了すると、長尺状のシートSLの切断が完了したと判断し、切断用モーター32の駆動を停止させる。
【0044】
また、図5のタイミングチャートに示すように、切断制御部82は、長尺状のシートSLの切断時には、カッター30の移動開始時点(第1のタイミングt1)からの経過時間を取得する。そして、切断制御部82は、取得した経過時間が予め設定された時間閾値Tcとなった場合に、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されたと判定する(第2のタイミングt2)。このタイミングで、切断制御部82は、カウンター83にリセット信号を出力する。
【0045】
図4に示すように、カウンター83は、周期的な信号、即ちクロック信号を生成するクロック発生回路(図示略)を有している。そして、カウンター83は、生成されるクロック信号のパルスを検出する毎に、計時する計測時間CTを更新する。また、カウンター83は、切断制御部82からリセット信号が入力されると、計測時間CTを「0(零)」にリセットして計時を行う。
【0046】
搬送制御部84には、データ処理部80から単位搬送量に関する情報が入力されると共に、検出センサーSE1からの検出信号が入力される。こうした搬送制御部84は、紙送り制御部87、排出制御部88及び挟持制御部89を有している。紙送り制御部87は、検出センサーSE1からの検出信号に基づき長尺状のシートSLの先端を検知した場合、該検知結果に基づき、第1のモーター21、第2のモーター24及び搬送モーター25の駆動、即ち長尺状のシートSLの搬送量を制御する。
【0047】
また、紙送り制御部87は、記録処理時に、記録制御部81から1パス分の記録が完了した旨が入力されると、単位搬送量だけ長尺状のシートSLが搬送されるように搬送モーター25の駆動を制御する。そして、紙送り制御部87は、長尺状のシートSLの紙送りが完了すると、その旨を記録制御部81に出力する。すなわち、本実施形態では、長尺状のシートSLの紙送りと記録ヘッド44によるインク噴射とが交互に行われることにより、長尺状のシートSLに画像が記録される。
【0048】
排出制御部88は、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを排出するために排出用モーター38の駆動を制御する。本実施形態の排出制御部88は、長尺状のシートSLの切断時には、カウンター83から計測時間CTを取得し、該計測時間CTに基づき排出用モーター38の制御停止タイミングを決定する。また、排出制御部88は、切断が完了した場合には、排出用モーター38の駆動を再開させる。そして、排出制御部88は、排出用モーター38の駆動量に基づき、記録済み部分SCの後端が第1の排出ローラー対35よりも搬送方向Yにおける下流側まで移動したタイミングを取得し、その旨を挟持制御部89に出力する。
【0049】
挟持制御部89は、挟持用モーター37の駆動を制御する。すなわち、挟持制御部89は、長尺状のシートSLの切断時には、カウンター83から計測時間CTを取得し、該計測時間CTに基づき、第1の排出ローラー対35によって長尺状のシートSLを挟持させるための挟持用モーター37の駆動開始タイミングを決定する。また、挟持制御部89は、記録済み部分SCの後端が第1の排出ローラー対35よりも搬送方向Yにおける下流側まで移動した旨が排出制御部88から入力されると、第2のローラー35bを第1のローラー35aから離間させる方向に移動させるべく挟持用モーター37の駆動を制御する。
【0050】
次に、本実施形態の記録装置11での長尺状のシートSLの切断方法について、図5に示すタイミングチャートに基づき説明する。
図5のタイミングチャートに示すように、記録済み部分SCの搬送方向Yにおける後端が切断位置P1まで移動すると、搬送ユニット15による長尺状のシートSLの搬送が停止される。すなわち、搬送モーター25の駆動は、カッター30による長尺状のシートSLの切断が開始される前に停止される。そして、カッター30の移動が開始された第1のタイミングt1からの経過時間が時間閾値Tcとなると、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始される(第2のタイミングt2)。この時点では、排出用モーター38は駆動しており、排出ユニット17による記録済み部分SCの排出は行われている。このとき、長尺状のシートSLから切り離される記録済み部分SCには、排出ユニット17(具体的には、第2の排出ローラー対36)によって搬送方向Yにおける下流側への引っ張り力が付与されている。しかし、カッター30による長尺状のシートSLの切断開始直後では、カッター30によるシートSLの切断量が少ないため、上記引っ張り力の作用によって長尺状のシートSLが破れてしまうことはない。
【0051】
また、第2のタイミングt2では、挟持用モーター37の駆動は停止しており、第2のローラー35bは、第1のローラー35aから離間している。すなわち、記録済み部分SCは、第1の排出ローラー対35によって挟持されていない。なお、本実施形態では、第1の排出ローラー対35によって記録済み部分SCが挟持されていない状態を「レリース状態」といい、第1の排出ローラー対35によって記録済み部分SCが挟持される状態を「ニップ状態」という。
【0052】
そして、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始される第2のタイミングt2以降の第3のタイミングt3で、排出用モーター38の制御が停止される。すると、排出用モーター38の回転速度が次第に低速になる。そして、排出用モーター38の回転速度が「0(零)」となる第5のタイミングt5よりも前の第4のタイミングt4から、挟持用モーター37の駆動が開始される。すなわち、第1の排出ローラー対35において、第2のローラー35bの第1のローラー35aへの接近が開始される。
【0053】
そして、第5のタイミングt5よりも後の第6のタイミングt6で、第1の排出ローラー対35がニップ状態となり、その後の第7のタイミングt7で、挟持用モーター37の駆動が停止される。さらに第7のタイミングt7よりも後の第8のタイミングt8で、カッター30による長尺状のシートSLの切断が完了し、その後の第9のタイミングt9で、切断用モーター32の回転速度が「0(零)」となる。
【0054】
本実施形態では、第2のタイミングt2では第1の排出ローラー対35がレリース状態である一方、第8のタイミングt8では第1の排出ローラー対35がニップ状態となっているように、第1余裕時間α1が設定される。この第1余裕時間α1は、第2のタイミングt2から第8のタイミングt8までの時間、即ち長尺状のシートSLの切断に要する切断所要時間TTよりも短い時間に設定されている。そのため、カッター30が、長尺状のシートSLの幅方向における中途位置を切断している段階で、第1の排出ローラー対35がニップ状態になる。
【0055】
また、本実施形態では、排出用モーター38の回転速度が「0(零)」になった後に、第1の排出ローラー対35がニップ状態となるように、第2余裕時間α2が設定されている。ここで、排出用モーター38の回転速度が未だ「0(零)」ではないタイミングで第1の排出ローラー対35がニップ状態になると、第1の排出ローラー対35に挟持されている記録済み部分SCが、第2の排出ローラー対36によって搬送方向Yにおける下流側に引っ張られることになる。すると、切断途中の記録済み部分SCに不必要な応力が加わり、カッター30による切断精度が低下するおそれがある。こうした事態の発生を抑制するために、第2余裕時間α2が「0(零)」よりも大きな値に設定される。
【0056】
しかし、第2余裕時間α2を大きな値にし過ぎると、以下に示す問題が発生する。すなわち、排出用モーター38の制御を停止させる第3のタイミングt3が、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始される第2のタイミングt2よりも前になる。すると、排出ユニット17による記録済み部分SCの排出が停止される期間が、第2余裕時間α2を大きな値にするほど長くなり、結果として、記録済み部分SCの排出速度が低下するおそれがある。そのため、本実施形態では、第2余裕時間α2は、第3のタイミングt3が第2のタイミングt2よりも後になるように設定されている。
【0057】
なお、第3の時間T3は、排出用モーター38の制御が停止されてから、排出用モーター38の回転速度が「0(零)」になるまでの時間を示している。また、第4の時間T4は、排出用モーター38の制御が停止されてから、挟持用モーター37の駆動を開始させるまでの時差を規定するための時間である。この第4の時間T4は、第2の時間T2が第3の時間T3と第2余裕時間α2との合計時間未満である場合には、該合計時間(=T3+α2)と第2の時間T2との差分に等しい時間に設定される。
【0058】
次に、本実施形態のコントローラー67が実行する各種制御処理ルーチンのうち切断処理ルーチンについて、図6に示すフローチャート及び図5に示すタイミングチャートに基づき説明する。この切断処理ルーチンは、図5に示すタイミングチャートを用いて説明した切断方法を実行するための処理ルーチンである。また、切断処理ルーチンは、長尺状のシートSLにおいて画像が記録された記録済み部分SCが搬送方向Yにおいて切断位置P1よりも下流側に移動したタイミングで実行される。
【0059】
さて、切断処理ルーチンにおいて、切断制御部82は、第1の位置(又は第2の位置)に位置するカッター30を第2の位置(又は第1の位置)に向けて移動させるべく、切断用モーター32の駆動を開始させる(ステップS10)。続いて、切断制御部82は、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されたか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、図5のタイミングチャートに示すように、切断制御部82は、カッター30の移動が開始された第1のタイミングt1からの経過時間が時間閾値Tcとなった場合に、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されたと判定する(第2のタイミングt2)。
【0060】
図6のフローチャートに戻り、ステップS11の判定結果が否定である場合、切断制御部82は、第1のタイミングt1からの経過時間が時間閾値TcになるまでステップS11の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS11の判定結果が肯定である場合、切断制御部82は、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されたため、リセット信号をカウンター83に出力し、該カウンター83に計測時間CTを「0(零)」にリセットさせる。
【0061】
続いて、搬送制御部84は、カウンター83から計測時間CTを取得し、該計測時間CT及び切断所要時間TTに基づき、切断が完了するまでに要する第1の時間T1(=TT−CT)を取得する(ステップS12)。なお、切断所要時間TTは、長尺状のシートSLの幅方向における長さに応じた時間であって、不揮発性メモリー65に予め記憶されている。そして、搬送制御部84は、ステップS12で取得した第1の時間T1が、第2の時間T2、第4の時間T4及び第1余裕時間α1の合計時間未満であるか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、ステップS13では、排出用モーター38の制御を停止させるタイミング(図5で示す第3のタイミングt3)になったか否かが判定される。この判定結果が否定(T1≧(T2+T4+α1))である場合、搬送制御部84は、図5で示す第3のタイミングt3になっていないため、その処理を前述したステップS12に移行する。一方、ステップS13の判定結果が肯定(T1<(T2+T4+α1))である場合、図5で示す第3のタイミングt3になったため、排出用モーター38の制御を停止させる(ステップS14)。
【0062】
続いて、搬送制御部84は、排出用モーター38の制御が停止されてからの経過時間が第4の時間T4(図5参照)以上になったか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、ステップS15では、図5に示す第4のタイミングt4になったか否かが判定される。この判定結果が否定である場合、搬送制御部84は、図5に示す第4のタイミングt4になっていないため、図5に示す第4のタイミングt4になるまでステップS15の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS15の判定処理が肯定である場合、搬送制御部84は、図5に示す第4のタイミングt4になったため、第1の排出ローラー対35をレリース状態からニップ状態にすべく挟持用モーター37の駆動を開始させる(ステップS16)。
【0063】
そして、搬送制御部84は、上記ステップS12と同様の方法で第1の時間T1を取得し(ステップS17)、該第1の時間T1が第1余裕時間α1未満であるか否かを判定する(ステップS18)。すなわち、ステップS17及びステップS18では、第1の排出ローラー対35がニップ状態になったか否かが判定される。そして、ステップS18の判定結果が否定(T1≧α1)である場合、搬送制御部84は、その処理を前述したステップS17に移行する。一方、ステップS18の判定結果が肯定(T1<α1)である場合、搬送制御部84は、第1の排出ローラー対35がニップ状態になったため、挟持用モーター37の駆動を停止させる(ステップS19)。したがって、本実施形態では、ステップS16,S17,S18,S19により、挟持ステップが構成される。
【0064】
続いて、搬送制御部84は、上記ステップS12,S17と同様の方法で第1の時間T1を取得する(ステップS20)。そして、搬送制御部84は、切断が完了したか否かを判定するために、ステップS20で取得した第1の時間T1が「0(零)」以下であるか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果が否定(T1>0)である場合、搬送制御部84は、切断が未だ完了していないため、その処理を前述したステップS20に移行する。一方、ステップS21の判定結果が肯定(T1≦0)である場合、搬送制御部84は、切断が完了したため、長尺状のシートSLからカッター30によって切断された記録済み部分SCを排出させるべく排出用モーター38の駆動を開始させ(ステップS22)、その後、切断処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ステップS22が、排出ステップに相当する。
【0065】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)長尺状のシートSLからカッター30によって切断される記録済み部分SCは、切断位置P1よりも搬送方向Yにおける下流側に位置する第1の排出ローラー対35を構成する第1のローラー35a及び第2のローラー35bによって挟持される。このローラー35a,35bは、カッター30による長尺状のシートSLの切断時に記録済み部分SCを挟持するためだけではなく、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを排出するためにも使用される。そのため、カッター30による長尺状のシートSLの切断時に記録済み部分SCを挟持するための部材(例えば、バッフル)を、排出用のローラーとは別に設ける場合と比較して、搬送装置13の部品点数の増加を抑制できる。
【0066】
(2)また、切断処理後では、長尺状のシートSLから切断された記録済み部分SCを挟持する各ローラー35a,35bを回転させることにより、記録済み部分SCを排出トレイ18側に排出させることができる。バッフルによって記録済み部分SCを挟持していた従来の場合には、バッフルによる記録済み部分SCの挟持を解消させた後に、該記録済み部分SCを排出させる必要がある。これに対し、本実施形態では、各ローラー35a,35bによる記録済み部分SCの挟持を解消させる必要がない。そのため、記録済み部分SCを挟持する部材による挟持を解消させる必要がない分、記録済み部分SCを速やかに排出させることができる。
【0067】
(3)長尺状のシートSLの幅方向における他端が切断される時点、即ち長尺状のシートSLから記録済み部分SCが切り離される時点で、記録済み部分SCに幅方向への応力が付与される。そのため、このタイミングで記録済み部分SCを各ローラー35a,35bによって挟持しておかないと、切断時に加わる応力によって、記録済み部分SCの意図しない移動が発生するおそれがある。言い換えると、長尺状のシートSLから記録済み部分SCが切り離される時点で、該記録済み部分SCが各ローラー35a,35bによって挟持されていれば、記録済み部分SCの意図しない移動が発生しにくい。
【0068】
また、記録済み部分SCの表面には、記録ヘッド44から噴射されたインクが付着しており、記録物の品質維持の観点から見ると、記録済み部分SCの表面に第2のローラー35bが接触する時間を極力短くすることが好ましい。これは、長尺状のシートSLの表面に付着したインクが未だ乾燥しきっていない状態で、該表面にローラーなどが接触すると、シートSLに記録された画像がぼやけてしまうおそれがあるためである。この点、本実施形態では、カッター30による長尺状のシートSLの切断途中で、第1の排出ローラー対35がニップ状態となるように挟持用モーター37の駆動開始タイミングが調整される。その結果、カッター30による長尺状のシートSLの切断が開始される前から記録済み部分SCが各ローラー35a,35bによって挟持される場合と比較して、記録済み部分SCの表面への第2のローラー35bの接触時間を短くできる。そのため、記録装置11で記録された記録済み部分SCの記録品質の低下を抑制できる。
【0069】
(4)しかも、本実施形態では、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されてからも、長尺状のシートSLから既に切り離された記録済み部分SCを排出させるべく排出用モーター38が駆動している。この排出用モーター38の駆動は、第1の排出ローラー対35がニップ状態となる直前に停止する。そのため、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始される前までに、排出用モーター38の駆動を停止させる場合と比較して、記録済み部分SCの排出トレイ18への排出速度を向上させることができる。
【0070】
(5)また、第1の排出ローラー対35がニップ状態になった時点では、排出用モーター38の駆動が完全に停止している。そのため、第1の排出ローラー対35がニップ状態になった時点で排出用モーター38が未だ駆動している場合とは異なり、カッター30によって長尺状のシートSLから切り離される記録済み部分SCに、排出用モーター38の回転に基づく不要な応力が付与されることを回避できる。その結果、長尺状のシートSLから記録済み部分SCを正確に切断させることができる。
【0071】
(6)カッター30によって長尺状のシートSLから記録済み部分SCが切り離される場合には、搬送ローラー23aの回転が停止されている。そのため、切断時に長尺状のシートSLに、搬送ローラー23aの回転に基づく不要な応力が付与されることが回避される。したがって、長尺状のシートSLから記録済み部分SCを正確に切断させることができる。
【0072】
(7)また、カッター30による長尺状のシートSLの切断時において、該シートSLは搬送ローラー対23の各ローラー23a,23bによって挟持される。そのため、長尺状のシートSLから記録済み部分SCが切り離される際に、シートSLに応力が付与されたとしても、該シートが走査方向Xに不要に移動することを抑制できる。
【0073】
(8)本実施形態の搬送装置13を備えた記録装置11では、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを、速やかに排出させることができる。よって、記録装置11のスループットを向上させることができる。
【0074】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・実施形態において、搬送ローラー対23は、搬送方向Yにおいて記録ユニット14と切断位置P1との間に配置してもよい。
【0075】
・実施形態において、排出用モーター38の駆動を停止させるタイミングが、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始されるタイミングと同一、又は該タイミングよりも後に設定されるのであれば、第4の時間T4を、第3の時間T3と第2余裕時間α2との合計時間と、第2の時間T2との差分(=(T3+α2)−T2)よりも大きな値に設定してもよい。
【0076】
・実施形態において、第2の時間T2が第3の時間T3と第2余裕時間α2との合計時間以上となるように、第2余裕時間α2が設定される場合には、第4の時間T4を「0(零)」に設定してもよい。この場合、レリース状態にある第1の排出ローラー対35をニップ状態にすべく挟持用モーター37の駆動を開始させるタイミングは、排出用モーター38の駆動を停止させるタイミングと一致、又は該タイミングよりも早くなる。
【0077】
・実施形態において、第2余裕時間α2を「0(零)」としてもよい。この場合、排出用モーター38の回転速度が「0(零)」となるタイミングが、第1の排出ローラー対35がニップ状態になるタイミングとほぼ一致することになる。
【0078】
・実施形態において、レリース状態にある第1の排出ローラー対35がニップ状態になるタイミングを、カッター30による長尺状のシートSLの切断が実際に開始される第2のタイミングt2と一致させてもよい。また、レリース状態にある第1の排出ローラー対35がニップ状態になるタイミングを、切断用モーター32の駆動が開始される第1のタイミングt1と一致させてもよい。ただし、第1の排出ローラー対35がニップ状態になる前までに、排出用モーター38の回転速度を「0(零)」とすることが好ましい。このように構成しても、長尺状のシートSLから記録済み部分SCが切り離される直前には、該記録済み部分SCが第1の排出ローラー対35によって挟持されるため、切り離された記録済み部分SCの不必要な移動の発生を抑制できる。
【0079】
・実施形態において、カッター30の形状は、第1の位置から第2の位置への移動時、及び第2の位置から第1の移動時に長尺状のシートSLを切断できる形状であれば、任意の形状であってもよい。例えば、カッター30は、略矩形板状をなすものであってもよい。
【0080】
・実施形態において、第1の排出ローラー対35は、第1のローラー35a及び第2のローラー35bが接近する方向及び離間する方向に相対移動可能な構成であれば、第1のローラー35aが、第2のローラー35bに対して接近する方向及び離間する方向に移動する構成であってもよい。また、第1の排出ローラー対35は、第1のローラー35a及び第2のローラー35bが共に図1における上下方向に移動可能な構成であってもよい。
【0081】
・実施形態において、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを排出する場合には、該記録済み部分SCが第2の排出ローラー対36に挟持されたタイミングで、第1の排出ローラー対35をレリース状態としてもよい。
【0082】
・実施形態において、切断位置P1を、記録ヘッド44よりも搬送方向Yにおける上流側に配置してもよい。この場合、記録ユニット14は、長尺状のシートSLから切り離された下流側部分に対して記録を施すことになる。
【0083】
・実施形態において、記録ユニット14を、キャリッジ41を搬送方向Yに移動させつつ記録ヘッド44からインクを噴射させる所謂ラテラルタイプの記録ユニットに具体化してもよい。また、記録ユニット14を、記録処理中に記録ヘッド44が移動しない所謂ラインヘッドタイプの記録ユニットに具体化してもよい。
【0084】
・実施形態において、媒体は、カッター30などの刃部によって切断可能な媒体であれば、布や樹脂フィルム、樹脂シート、金属シートなどの任意の媒体であってもよい。
・実施形態において、記録装置11を、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化してもよい。また、記録装置11を、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に具体化してもよい。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。
【0085】
なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。また、本明細書でいう記録は、用紙などのシートへの印刷であることに限定されず、例えば電気回路を製造する際に、素子や配線用の材料で調製されたインク(又はペースト)を基板(記録媒体)上に付着させて回路を記録によって形成することも含んだ概念である。
【0086】
・実施形態において、記録装置11は、ドットインパクト方式、レーザー方式などの他の記録方式で媒体に記録を施す記録装置でもよい。
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0087】
(イ)前記搬送手段は、前記搬送ローラーの回転に追随して回転し且つ該搬送ローラーと共に媒体を挟持する従動ローラーをさらに有し、
前記搬送ローラーは、媒体の裏面側及び表面側のうち一方側に配置されると共に、前記従動ローラーは、媒体の裏面側及び表面側のうち他方側に配置されることを特徴とする搬送装置。
【符号の説明】
【0088】
11…記録装置、13…搬送装置、14…記録手段としての記録ユニット、15…搬送手段としての搬送ユニット、16…切断手段としての切断ユニット、17…排出手段としての排出ユニット、23a…搬送ローラー、23b…従動ローラー、25…搬送モーター、30…刃部の一例としてのカッター、35a…第1のローラー、35b…第2のローラー、37…駆動源の一例としての挟持用モーター、38…排出用モーター、81…記録制御手段としての記録制御部、84…搬送制御手段としての搬送制御部、SC…下流側部分の一例としての記録済み部分、SL…媒体の一例としてのシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って搬送される媒体を切断する切断手段と、
前記切断手段によって媒体から切り離された前記搬送方向における下流側部分を、前記搬送方向における下流側に排出する排出手段と、
前記切断手段及び前記排出手段を制御する搬送制御手段と、を備え、
前記排出手段は、媒体の裏面側に配置される第1のローラーと、媒体の表面側に配置される第2のローラーと、前記各ローラーを互いに接近させる方向及び離間させる方向に相対移動させるための駆動力を発生する駆動源と、接近状態にある前記各ローラーを回転させるための駆動力を発生する排出用モーターと、を有し、
前記搬送制御手段は、
前記切断手段による媒体の切断時に、該媒体から切り離される前記下流側部分が、切断の完了時点で前記各ローラーによって挟持されているように、前記駆動源を制御し、
切断完了後、前記下流側部分を挟持する前記各ローラーの回転によって該下流側部分が前記搬送方向における下流側に排出されるように前記排出用モーターを制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記切断手段は、媒体の幅方向における一端から他端に移動して該媒体を切断する刃部を有し、
前記搬送制御手段は、
前記切断手段による媒体の切断時には、前記刃部の移動開始後から、離間状態にある前記各ローラーを互いに接近させる方向に相対移動させると共に、媒体の前記幅方向における一端と他端との間となる中途位置が前記刃部によって切断される時点で前記各ローラーによる前記下流側部分の挟持が完了されるように、
前記駆動源を制御することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、前記各ローラーによる前記下流側部分の挟持が完了される前までに前記第1のローラーの回転が停止されるように、前記排出用モーターの制御停止のタイミング及び前記駆動源の制御開始のタイミングを調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送制御手段は、前記切断手段による媒体の切断時には、前記排出用モーターの制御を停止した時点又は該時点よりも後に、離間状態にある前記各ローラーの互いに接近する方向への相対移動が開始されるように前記駆動源を制御することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
媒体において前記切断手段によって切断される位置よりも前記搬送方向における上流側に配置される搬送ローラー、及び該搬送ローラーを回転させるための駆動力を発生する搬送モーターを有する搬送手段をさらに備え、
前記搬送制御手段は、
前記切断手段による媒体の切断時には、該切断手段の駆動開始前までに前記搬送ローラーの回転が停止されると共に、切断完了後には、媒体の搬送を再開させるべく前記搬送ローラーが回転するように、
前記搬送モーターを制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の搬送装置と、
流体を媒体に付着させる記録手段と、
前記切断手段による媒体の切断時に、流体を用いた記録処理を停止させるべく前記記録手段を制御する記録制御手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
搬送方向における上流側から下流側に搬送される媒体の前記搬送方向における下流側部分を切断手段によって媒体から切り離し、媒体から切り離された前記下流側部分を前記搬送方向における下流側に排出する搬送方法であって、
前記切断手段よりも前記搬送方向における下流側には、媒体の裏面側に配置される第1のローラーと、媒体の表面側に配置される第2のローラーとが設けられ、
前記各ローラーは、互いに接近する方向及び離間する方向に相対移動するようになっており、
前記切断手段による媒体の切断時に、媒体から切り離される前記下流側部分が、切断の完了時点で前記各ローラーによって挟持されているように、離間状態にある前記各ローラーを互いに接近させる方向に相対移動させる挟持ステップと、
切断完了後に、前記下流側部分を挟持する前記各ローラーの回転によって該下流側部分を前記搬送方向における下流側に排出させる排出ステップと、を有する搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46299(P2012−46299A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189190(P2010−189190)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】